JP2004276715A - 二輪自動車用タイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】ハンドリング性能を向上させた、1プライバイアス(クロスプライ)センターラップ構造の二輪自動車用タイヤの提供。
【解決手段】左右一対のビード部1,1に1枚のカーカス2を装架し、ビード部1,1におけるビードコア3,3の廻りにカーカス2の端部をそれぞれタイヤ内側から外側に折り返して巻き上げ、その巻き上げ端部4,4´をクラウン部5で互いにオーバーラップさせたバイアス構造の二輪自動車用タイヤにおいて、カーカス2を有機繊維コードからエンド数25〜40本/50mmで構成すると共に、タイヤサイド部6,6にJISA硬度65度〜90度のゴム補強層7を配設したこと。
【選択図】 図1
【解決手段】左右一対のビード部1,1に1枚のカーカス2を装架し、ビード部1,1におけるビードコア3,3の廻りにカーカス2の端部をそれぞれタイヤ内側から外側に折り返して巻き上げ、その巻き上げ端部4,4´をクラウン部5で互いにオーバーラップさせたバイアス構造の二輪自動車用タイヤにおいて、カーカス2を有機繊維コードからエンド数25〜40本/50mmで構成すると共に、タイヤサイド部6,6にJISA硬度65度〜90度のゴム補強層7を配設したこと。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハンドリング性能(直進安定性、旋回安定性、制動時の安定性)を向上させた二輪自動車用タイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、二輪自動車用タイヤ(モーターサイクル用タイヤ)のタイヤ構造としては図2に示されるような1プライバイアス(クロスプライ)センターラップ構造、又は図3に示されるような2プライバイアス(クロスプライ)ターンナップ構造がとられている。
【0003】
図2では、左右一対のビード部1,1に1枚のカーカス2が装架され、ビード部1,1におけるビードコア3,3の廻りにカーカス2のそれぞれの端部をタイヤ内側から外側に折り返して巻き上げ、その巻き上げ端部4,4´をクラウン部5(タイヤセンター部)で互いにオーバーラップさせている。カーカス2ではカーカス2を構成するカーカスコードがタイヤ周方向に対して90度未満の角度で傾斜しており(バイアス)、このためタイヤサイド部6,6では巻き上げられていないカーカス部と巻き上げられたカーカス部との2枚が重なってそれぞれのカーカス部のカーカスコードが互いに交差することになり(クロスプライ)、また、クラウン部5では巻き上げられていないカーカス部と巻き上げ端部4,4´との3枚が重なってそれぞれのカーカスコードが互いに交差することになる(クロスプライ、センターラップ)。図2に示されるこのようなタイヤ構造を1プライバイアス(クロスプライ)センターラップ構造という。
【0004】
図3では、左右一対のビード部1,1に2枚のカーカス2,2´が装架され、ビード部1,1におけるビードコア3,3の廻りにカーカス2,2´のそれぞれの端部をタイヤ内側から外側に折り返して巻き上げている(ターンアップ)。カーカス2,2´ではそれぞれカーカスコードがタイヤ周方向に対して90度未満の角度で傾斜しており(バイアス)、このためタイヤサイド部6,6では巻き上げられていないカーカス部と巻き上げられたカーカス部との4枚が重なってそれぞれのカーカス部のカーカスコードが互いに交差することになり(クロスプライ)、また、クラウン部5ではカーカス2,2´の2枚が重なってそれぞれのカーカスコードが互いに交差することになる(クロスプライ)。図3に示されるこのようなタイヤ構造を2プライバイアス(クロスプライ)ターンナップ構造という。
【0005】
図2および図3に示される各タイヤ構造の利点および欠点を表1に示す。
【0006】
【表1】
【0007】
表1から判るように、図2のタイヤ構造は図3に比して生産性がよく、かつ廉価であるので非常に有利な構造であるが、反面、タイヤサイド部と接地部(クラウン部)との剛性差が大きく、このためハンドリング性能を阻害するという欠点がある。
【0008】
【特許文献1】
特開昭59−227510号公報
【特許文献2】
特開平7−215008号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ハンドリング性能を向上させた、1プライバイアス(クロスプライ)センターラップ構造の二輪自動車用タイヤを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、左右一対のビード部に1枚のカーカスを装架し、該ビード部におけるビードコアの廻りに前記カーカスの端部をそれぞれタイヤ内側から外側に折り返して巻き上げ、その巻き上げ端部をクラウン部で互いにオーバーラップさせたバイアス構造の二輪自動車用タイヤにおいて、前記カーカスを有機繊維コードからエンド数25〜40本/50mmで構成すると共に、タイヤサイド部にJISA硬度65度〜90度のゴム補強層を配設したことを特徴とする。
【0011】
このように本発明では、左右一対のビード部に1枚のカーカスを装架し、該ビード部におけるビードコアの廻りに前記カーカスの端部をそれぞれタイヤ内側から外側に折り返して巻き上げ、その巻き上げ端部をクラウン部で互いにオーバーラップさせたバイアス構造の二輪自動車用タイヤ、すなわち1プライバイアス(クロスプライ)センターラップ構造の二輪自動車用タイヤにおいて、エンド数を25〜40本/50mmと小さくして接地部の剛性を下げると共に(従来ではエンド数は40本/50mm超)、これに伴うタイヤサイド部の剛性低下をJISA硬度65度〜90度という高硬度のゴム補強層をタイヤサイド部に配設することにより補うようにして、接地部とタイヤサイド部との剛性のバランスをとるようにしたので、ハンドリング性能の向上をはかることが可能となる。
【0012】
ここで、エンド数とは、カーカスにおいて「幅方向50mm当たりのコード埋め込み本数」をいう(すなわち、カーカスを構成するコートゴムシートの幅方向50mmにつき何本のコードが埋め込まれているかということ)。
【0013】
【発明の実施の形態】
従来、1プライバイアス(クロスプライ)センターラップ構造の二輪自動車用タイヤでは、カーカスコードとしてナイロンコードを使用しているが、タイヤサイド部の剛性を確保するためにはそのコードを940dtex(デシテックス)/2(840d/2)×42E以下では使用できなかった(Eはエンド数)。これ以下のエンド数のコードを使用すれば、タイヤサイド部の剛性が確保できないからである。しかし、逆にエンド数を高めるとタイヤセンター部(クラウン部)ではカーカスが3枚になるため、タイヤセンター部の剛性が高くなり過ぎて、タイヤサイド部とタイヤセンター部との剛性差が大となり、ハンドリング性能が悪くなる。
【0014】
通常、タイヤセンター部に必要な剛性値としてプランジャー値がある。JATMA安全規格の数値「幅62mm以下のサイズでプランジャー値29J(ジュール)(296kgf・cm)以上、幅62mm超のサイズでプランジャー値34J(347kgf・cm)以上」を満足するために必要な構造は、ナイロンコード940dtex/2では幅62mm以下のサイズで42E×2枚、幅62mm超のサイズで46E×2枚である。しかし、1プライバイアス(クロスプライ)センターラップ構造ではタイヤセンター部のカーカスが3枚構造となることから、剛性面では過剰品質となる。
【0015】
参考までに、ナイロンコード940dtex/2×42Eを使用した場合の従来タイヤ構造である1プライバイアス(クロスプライ)センターラップ構造(図2)と2プライバイアス(クロスプライ)ターンナップ構造(図3)のそれぞれの二輪自動車用タイヤのプランジャー値を表2に示す。表2から判るように、1プライバイアス(クロスプライ)センターラップ構造の場合、プランジャー値が規格値の約2倍の数値となり、タイヤセンター部の剛性は明らかに過剰品質になっている。
【0016】
【表2】
【0017】
図1は本発明の二輪自動車用タイヤの一例のタイヤ子午線方向断面説明図である。図1においては、図2におけると同様に、左右一対のビード部1,1に1枚のカーカス2が装架され、ビード部1,1におけるビードコア3,3の廻りにカーカス2のそれぞれの端部をタイヤ内側から外側に折り返して巻き上げ、その巻き上げ端部4,4´をクラウン部5で互いにオーバーラップさせている。カーカス2ではカーカス2を構成するカーカスコードがタイヤ周方向に対して90度未満の角度で傾斜しており(バイアス)、このためタイヤサイド部6,6では巻き上げられていないカーカス部と巻き上げられたカーカス部との2枚が重なってそれぞれのカーカス部のカーカスコードが互いに交差することになり(クロスプライ)、また、クラウン部5では巻き上げられていないカーカス部と巻き上げ端部4,4´との3枚が重なってそれぞれのカーカスコードが互いに交差することになる(クロスプライ、センターラップ)。
【0018】
本発明では、このような1プライバイアス(クロスプライ)センターラップ構造の二輪自動車タイヤにおいて、カーカス2をナイロンコード、ポリエステルコードなどの有機繊維コードからエンド数25〜40本/50mmで構成する。エンド数を25〜40本/50mmとしたのは、タイヤセンター部の剛性値(プランジャー値)を最適化するためである(従来に比してタイヤセンター部の剛性を下げる)。エンド数が25本/50mm未満ではタイヤセンター部の剛性値を満足することができず、一方、40本/50mm超では従来の場合に近似して、その剛性値が最適化しなくなる。しかし、このようにタイヤセンター部の剛性値を最適化すると、これに伴ってタイヤサイド部の剛性が低下するから、本発明では、タイヤサイド部6にJISA硬度65度〜90度のゴム補強層7を配設して、その剛性低下を補うようにしている。なお、図1では、ゴム補強層7をビードコア3の廻りに巻き上げ配置しているが、カーカス2の巻き上げ部の外側又はカーカス2の未巻上げ部の内側のいずれでもよく、タイヤサイド部6であればゴム補強層7をどのように配置してもよい。
【0019】
また、ゴム補強層7については、タイヤ断面高さをH、ゴム補強層7の断面高さをhとしたとき、h/H=0.5〜0.3の範囲とするのが好ましい。h/Hが0.3未満の場合には補強の効果が十分でなく、0.5を越えるとタイヤサイド部6の剛性が高くなり過ぎてハンドリング性能が悪くなるからである。ここで、高さとは、リム径相当位置からの高さである。したがって、タイヤ断面高さHとは、リム径相当位置からクラウン部5の頂部までの高さをいう。ゴム補強層7は、タイヤ製造工程で成形前に予めカーカス2にプレアッシー(組み込む)しておくことにより、成形生産性を低下させないことが可能となる。また、予めビードコアにプレアッシーしておく方法もあるが、この場合、ビード生産性、成形生産性を低下させるのでカーカス2にプレアッシーしておく方がよい。
【0020】
センターラップ幅aは、必要とされるハンドリング性能により自由に設定可能であり、例えば、タイヤサイズ2.25−17 4PRでは35mmである。
【0021】
【実施例】
下記内容の二輪自動車用タイヤを作製した(実施例1、従来例1〜2、比較例1)。なお、これらの内容をまとめて表3に示す。
【0022】
実施例1
図1に示すタイヤ構造。タイヤサイズ2.25−17 4PR。ビード構造2列×2層。カーカス材はナイロンコード940dtex/2×30E。ゴム補強層はJISA硬度70度、タイヤ断面高さH=66mm、ゴム補強層の断面高さh=30mm。センターラップ幅a=35mm。
【0023】
従来例1
図2に示すタイヤ構造。タイヤサイズ2.25−17 4PR。ビード構造2列×2層。カーカス材はナイロンコード940dtex/2×42E。センターラップ幅a=35mm。
【0024】
比較例1
図2に示すタイヤ構造。タイヤサイズ2.25−17 4PR。ビード構造2列×2層。カーカス材はナイロンコード940dtex/2×30E。センターラップ幅a=35mm。
【0025】
従来例2
図3に示すタイヤ構造。タイヤサイズ2.25−17 4PR。ビード構造2列×2層。カーカス材はナイロンコード940dtex/2×42E。カーカス巻き上げ高さh1(1プライ目)=30mm、h2(2プライ目)=15mm。
【0026】
【表3】
【0027】
表3から判るように、実施例1は本発明タイヤであり、従来例1は従来の1プライバイアス(クロスプライ)センターラップ構造のタイヤであり、比較例1は本発明タイヤに比してエンド数は満足するがゴム補強層のない1プライバイアス(クロスプライ)センターラップ構造のタイヤであり、従来例2は従来の2プライバイアス(クロスプライ)ターンナップ構造のタイヤである。
【0028】
これらのタイヤのうち実施例1、従来例1〜2のプランジャー値を表4に示す。なお、このプランジャー値はJIS K6366により測定した。
【0029】
【表4】
表4から判るように、実施例1のプランジャー値は従来例2とほぼ同等である。
【0030】
つぎに、実施例1、従来例1、比較例1のタイヤをそれぞれ排気量50ccの二輪自動車用タイヤの前輪に装着し、下記によりハンドリング性能(直進安定性、旋回安定性、制動時の安定性)につきフィーリング評価した。この結果を表5に示す。
【0031】
直進安定性
直線路において0〜60km/hに加速し、その後60km/hにての定常走行時の振動、振れを従来例1を100とする指数で比較指数評価した。指数値の大きい方が優れている。
【0032】
旋回安定性
半径約20mの円内を40km/hにて定常走行し、その時の安定性(腰砕け感等)を従来例1を100とする指数で比較指数評価した。指数値の大きい方が優れている。
【0033】
制動時の安定性
直進路にて初速50km/hから一般路を想定した制動をかけ、その時の安定性(剛性感、振れ)を従来例1を100とする指数で比較指数評価した。指数値の大きい方が優れている。
【0034】
【表5】
表5から明らかなように、本発明タイヤ(実施例1)はハンドリング性能に優れていることが判る。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、左右一対のビード部に1枚のカーカスを装架し、該ビード部におけるビードコアの廻りに前記カーカスの端部をそれぞれタイヤ内側から外側に折り返して巻き上げ、その巻き上げ端部をクラウン部で互いにオーバーラップさせたバイアス構造の二輪自動車用タイヤにおいて、前記カーカスを有機繊維コードからエンド数25〜40本/50mmで構成すると共に、タイヤサイド部にJISA硬度65度〜90度のゴム補強層を配設したために、1プライバイアス(クロスプライ)センターラップ構造の利点である成形生産性を損なうことなしに、接地部(クラウン部)とタイヤサイド部との剛性差を小さくして接地部とタイヤサイド部との剛性のバランスをとるようにしたので、ハンドリング性能の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の二輪自動車用タイヤの一例のタイヤ子午線方向断面説明図である。
【図2】従来の二輪自動車用タイヤの一例のタイヤ子午線方向断面説明図である。
【図3】従来の二輪自動車用タイヤの別例のタイヤ子午線方向断面説明図である。
【符号の説明】
1 ビード部
2 カーカス
3 ビードコア
4 巻き上げ端部
4´ 巻上げ端部
5 クラウン部
6 タイヤサイド部
7 ゴム補強層
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハンドリング性能(直進安定性、旋回安定性、制動時の安定性)を向上させた二輪自動車用タイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、二輪自動車用タイヤ(モーターサイクル用タイヤ)のタイヤ構造としては図2に示されるような1プライバイアス(クロスプライ)センターラップ構造、又は図3に示されるような2プライバイアス(クロスプライ)ターンナップ構造がとられている。
【0003】
図2では、左右一対のビード部1,1に1枚のカーカス2が装架され、ビード部1,1におけるビードコア3,3の廻りにカーカス2のそれぞれの端部をタイヤ内側から外側に折り返して巻き上げ、その巻き上げ端部4,4´をクラウン部5(タイヤセンター部)で互いにオーバーラップさせている。カーカス2ではカーカス2を構成するカーカスコードがタイヤ周方向に対して90度未満の角度で傾斜しており(バイアス)、このためタイヤサイド部6,6では巻き上げられていないカーカス部と巻き上げられたカーカス部との2枚が重なってそれぞれのカーカス部のカーカスコードが互いに交差することになり(クロスプライ)、また、クラウン部5では巻き上げられていないカーカス部と巻き上げ端部4,4´との3枚が重なってそれぞれのカーカスコードが互いに交差することになる(クロスプライ、センターラップ)。図2に示されるこのようなタイヤ構造を1プライバイアス(クロスプライ)センターラップ構造という。
【0004】
図3では、左右一対のビード部1,1に2枚のカーカス2,2´が装架され、ビード部1,1におけるビードコア3,3の廻りにカーカス2,2´のそれぞれの端部をタイヤ内側から外側に折り返して巻き上げている(ターンアップ)。カーカス2,2´ではそれぞれカーカスコードがタイヤ周方向に対して90度未満の角度で傾斜しており(バイアス)、このためタイヤサイド部6,6では巻き上げられていないカーカス部と巻き上げられたカーカス部との4枚が重なってそれぞれのカーカス部のカーカスコードが互いに交差することになり(クロスプライ)、また、クラウン部5ではカーカス2,2´の2枚が重なってそれぞれのカーカスコードが互いに交差することになる(クロスプライ)。図3に示されるこのようなタイヤ構造を2プライバイアス(クロスプライ)ターンナップ構造という。
【0005】
図2および図3に示される各タイヤ構造の利点および欠点を表1に示す。
【0006】
【表1】
【0007】
表1から判るように、図2のタイヤ構造は図3に比して生産性がよく、かつ廉価であるので非常に有利な構造であるが、反面、タイヤサイド部と接地部(クラウン部)との剛性差が大きく、このためハンドリング性能を阻害するという欠点がある。
【0008】
【特許文献1】
特開昭59−227510号公報
【特許文献2】
特開平7−215008号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ハンドリング性能を向上させた、1プライバイアス(クロスプライ)センターラップ構造の二輪自動車用タイヤを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、左右一対のビード部に1枚のカーカスを装架し、該ビード部におけるビードコアの廻りに前記カーカスの端部をそれぞれタイヤ内側から外側に折り返して巻き上げ、その巻き上げ端部をクラウン部で互いにオーバーラップさせたバイアス構造の二輪自動車用タイヤにおいて、前記カーカスを有機繊維コードからエンド数25〜40本/50mmで構成すると共に、タイヤサイド部にJISA硬度65度〜90度のゴム補強層を配設したことを特徴とする。
【0011】
このように本発明では、左右一対のビード部に1枚のカーカスを装架し、該ビード部におけるビードコアの廻りに前記カーカスの端部をそれぞれタイヤ内側から外側に折り返して巻き上げ、その巻き上げ端部をクラウン部で互いにオーバーラップさせたバイアス構造の二輪自動車用タイヤ、すなわち1プライバイアス(クロスプライ)センターラップ構造の二輪自動車用タイヤにおいて、エンド数を25〜40本/50mmと小さくして接地部の剛性を下げると共に(従来ではエンド数は40本/50mm超)、これに伴うタイヤサイド部の剛性低下をJISA硬度65度〜90度という高硬度のゴム補強層をタイヤサイド部に配設することにより補うようにして、接地部とタイヤサイド部との剛性のバランスをとるようにしたので、ハンドリング性能の向上をはかることが可能となる。
【0012】
ここで、エンド数とは、カーカスにおいて「幅方向50mm当たりのコード埋め込み本数」をいう(すなわち、カーカスを構成するコートゴムシートの幅方向50mmにつき何本のコードが埋め込まれているかということ)。
【0013】
【発明の実施の形態】
従来、1プライバイアス(クロスプライ)センターラップ構造の二輪自動車用タイヤでは、カーカスコードとしてナイロンコードを使用しているが、タイヤサイド部の剛性を確保するためにはそのコードを940dtex(デシテックス)/2(840d/2)×42E以下では使用できなかった(Eはエンド数)。これ以下のエンド数のコードを使用すれば、タイヤサイド部の剛性が確保できないからである。しかし、逆にエンド数を高めるとタイヤセンター部(クラウン部)ではカーカスが3枚になるため、タイヤセンター部の剛性が高くなり過ぎて、タイヤサイド部とタイヤセンター部との剛性差が大となり、ハンドリング性能が悪くなる。
【0014】
通常、タイヤセンター部に必要な剛性値としてプランジャー値がある。JATMA安全規格の数値「幅62mm以下のサイズでプランジャー値29J(ジュール)(296kgf・cm)以上、幅62mm超のサイズでプランジャー値34J(347kgf・cm)以上」を満足するために必要な構造は、ナイロンコード940dtex/2では幅62mm以下のサイズで42E×2枚、幅62mm超のサイズで46E×2枚である。しかし、1プライバイアス(クロスプライ)センターラップ構造ではタイヤセンター部のカーカスが3枚構造となることから、剛性面では過剰品質となる。
【0015】
参考までに、ナイロンコード940dtex/2×42Eを使用した場合の従来タイヤ構造である1プライバイアス(クロスプライ)センターラップ構造(図2)と2プライバイアス(クロスプライ)ターンナップ構造(図3)のそれぞれの二輪自動車用タイヤのプランジャー値を表2に示す。表2から判るように、1プライバイアス(クロスプライ)センターラップ構造の場合、プランジャー値が規格値の約2倍の数値となり、タイヤセンター部の剛性は明らかに過剰品質になっている。
【0016】
【表2】
【0017】
図1は本発明の二輪自動車用タイヤの一例のタイヤ子午線方向断面説明図である。図1においては、図2におけると同様に、左右一対のビード部1,1に1枚のカーカス2が装架され、ビード部1,1におけるビードコア3,3の廻りにカーカス2のそれぞれの端部をタイヤ内側から外側に折り返して巻き上げ、その巻き上げ端部4,4´をクラウン部5で互いにオーバーラップさせている。カーカス2ではカーカス2を構成するカーカスコードがタイヤ周方向に対して90度未満の角度で傾斜しており(バイアス)、このためタイヤサイド部6,6では巻き上げられていないカーカス部と巻き上げられたカーカス部との2枚が重なってそれぞれのカーカス部のカーカスコードが互いに交差することになり(クロスプライ)、また、クラウン部5では巻き上げられていないカーカス部と巻き上げ端部4,4´との3枚が重なってそれぞれのカーカスコードが互いに交差することになる(クロスプライ、センターラップ)。
【0018】
本発明では、このような1プライバイアス(クロスプライ)センターラップ構造の二輪自動車タイヤにおいて、カーカス2をナイロンコード、ポリエステルコードなどの有機繊維コードからエンド数25〜40本/50mmで構成する。エンド数を25〜40本/50mmとしたのは、タイヤセンター部の剛性値(プランジャー値)を最適化するためである(従来に比してタイヤセンター部の剛性を下げる)。エンド数が25本/50mm未満ではタイヤセンター部の剛性値を満足することができず、一方、40本/50mm超では従来の場合に近似して、その剛性値が最適化しなくなる。しかし、このようにタイヤセンター部の剛性値を最適化すると、これに伴ってタイヤサイド部の剛性が低下するから、本発明では、タイヤサイド部6にJISA硬度65度〜90度のゴム補強層7を配設して、その剛性低下を補うようにしている。なお、図1では、ゴム補強層7をビードコア3の廻りに巻き上げ配置しているが、カーカス2の巻き上げ部の外側又はカーカス2の未巻上げ部の内側のいずれでもよく、タイヤサイド部6であればゴム補強層7をどのように配置してもよい。
【0019】
また、ゴム補強層7については、タイヤ断面高さをH、ゴム補強層7の断面高さをhとしたとき、h/H=0.5〜0.3の範囲とするのが好ましい。h/Hが0.3未満の場合には補強の効果が十分でなく、0.5を越えるとタイヤサイド部6の剛性が高くなり過ぎてハンドリング性能が悪くなるからである。ここで、高さとは、リム径相当位置からの高さである。したがって、タイヤ断面高さHとは、リム径相当位置からクラウン部5の頂部までの高さをいう。ゴム補強層7は、タイヤ製造工程で成形前に予めカーカス2にプレアッシー(組み込む)しておくことにより、成形生産性を低下させないことが可能となる。また、予めビードコアにプレアッシーしておく方法もあるが、この場合、ビード生産性、成形生産性を低下させるのでカーカス2にプレアッシーしておく方がよい。
【0020】
センターラップ幅aは、必要とされるハンドリング性能により自由に設定可能であり、例えば、タイヤサイズ2.25−17 4PRでは35mmである。
【0021】
【実施例】
下記内容の二輪自動車用タイヤを作製した(実施例1、従来例1〜2、比較例1)。なお、これらの内容をまとめて表3に示す。
【0022】
実施例1
図1に示すタイヤ構造。タイヤサイズ2.25−17 4PR。ビード構造2列×2層。カーカス材はナイロンコード940dtex/2×30E。ゴム補強層はJISA硬度70度、タイヤ断面高さH=66mm、ゴム補強層の断面高さh=30mm。センターラップ幅a=35mm。
【0023】
従来例1
図2に示すタイヤ構造。タイヤサイズ2.25−17 4PR。ビード構造2列×2層。カーカス材はナイロンコード940dtex/2×42E。センターラップ幅a=35mm。
【0024】
比較例1
図2に示すタイヤ構造。タイヤサイズ2.25−17 4PR。ビード構造2列×2層。カーカス材はナイロンコード940dtex/2×30E。センターラップ幅a=35mm。
【0025】
従来例2
図3に示すタイヤ構造。タイヤサイズ2.25−17 4PR。ビード構造2列×2層。カーカス材はナイロンコード940dtex/2×42E。カーカス巻き上げ高さh1(1プライ目)=30mm、h2(2プライ目)=15mm。
【0026】
【表3】
【0027】
表3から判るように、実施例1は本発明タイヤであり、従来例1は従来の1プライバイアス(クロスプライ)センターラップ構造のタイヤであり、比較例1は本発明タイヤに比してエンド数は満足するがゴム補強層のない1プライバイアス(クロスプライ)センターラップ構造のタイヤであり、従来例2は従来の2プライバイアス(クロスプライ)ターンナップ構造のタイヤである。
【0028】
これらのタイヤのうち実施例1、従来例1〜2のプランジャー値を表4に示す。なお、このプランジャー値はJIS K6366により測定した。
【0029】
【表4】
表4から判るように、実施例1のプランジャー値は従来例2とほぼ同等である。
【0030】
つぎに、実施例1、従来例1、比較例1のタイヤをそれぞれ排気量50ccの二輪自動車用タイヤの前輪に装着し、下記によりハンドリング性能(直進安定性、旋回安定性、制動時の安定性)につきフィーリング評価した。この結果を表5に示す。
【0031】
直進安定性
直線路において0〜60km/hに加速し、その後60km/hにての定常走行時の振動、振れを従来例1を100とする指数で比較指数評価した。指数値の大きい方が優れている。
【0032】
旋回安定性
半径約20mの円内を40km/hにて定常走行し、その時の安定性(腰砕け感等)を従来例1を100とする指数で比較指数評価した。指数値の大きい方が優れている。
【0033】
制動時の安定性
直進路にて初速50km/hから一般路を想定した制動をかけ、その時の安定性(剛性感、振れ)を従来例1を100とする指数で比較指数評価した。指数値の大きい方が優れている。
【0034】
【表5】
表5から明らかなように、本発明タイヤ(実施例1)はハンドリング性能に優れていることが判る。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、左右一対のビード部に1枚のカーカスを装架し、該ビード部におけるビードコアの廻りに前記カーカスの端部をそれぞれタイヤ内側から外側に折り返して巻き上げ、その巻き上げ端部をクラウン部で互いにオーバーラップさせたバイアス構造の二輪自動車用タイヤにおいて、前記カーカスを有機繊維コードからエンド数25〜40本/50mmで構成すると共に、タイヤサイド部にJISA硬度65度〜90度のゴム補強層を配設したために、1プライバイアス(クロスプライ)センターラップ構造の利点である成形生産性を損なうことなしに、接地部(クラウン部)とタイヤサイド部との剛性差を小さくして接地部とタイヤサイド部との剛性のバランスをとるようにしたので、ハンドリング性能の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の二輪自動車用タイヤの一例のタイヤ子午線方向断面説明図である。
【図2】従来の二輪自動車用タイヤの一例のタイヤ子午線方向断面説明図である。
【図3】従来の二輪自動車用タイヤの別例のタイヤ子午線方向断面説明図である。
【符号の説明】
1 ビード部
2 カーカス
3 ビードコア
4 巻き上げ端部
4´ 巻上げ端部
5 クラウン部
6 タイヤサイド部
7 ゴム補強層
Claims (2)
- 左右一対のビード部に1枚のカーカスを装架し、該ビード部におけるビードコアの廻りに前記カーカスの端部をそれぞれタイヤ内側から外側に折り返して巻き上げ、その巻き上げ端部をクラウン部で互いにオーバーラップさせたバイアス構造の二輪自動車用タイヤにおいて、前記カーカスを有機繊維コードからエンド数25〜40本/50mmで構成すると共に、タイヤサイド部にJISA硬度65度〜90度のゴム補強層を配設した二輪自動車用タイヤ。
- タイヤ断面高さをH、前記補強層の断面高さをhとしたとき、h/H=0.5〜0.3の範囲とした請求項1記載の二輪自動車用タイヤ。
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- 2003-03-14 JP JP2003069882A patent/JP2004276715A/ja active Pending
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