JP2004269586A - 硬化促進剤、エポキシ樹脂組成物および半導体装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】硬化性樹脂組成物に混合され、該硬化性樹脂組成物の硬化反応を促進しうる硬化促進剤であって、下記一般式(1)で表されることを特徴とする硬化促進剤。
【化1】
[式中、R1、R2およびR3は、それぞれ、置換もしくは無置換の1価の芳香族基、または、置換もしくは無置換の1価のアルキル基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。Arは、水酸基以外の置換基により置換もしくは無置換の2価の芳香族基を表す。Aは、芳香環または複素環を含む(p+1)価の有機基を表し、pは2〜7の整数、qは0〜2の値を表す。]
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、硬化促進剤、エポキシ樹脂組成物および半導体装置に関するものである。更に詳しくは、熱硬化性樹脂組成物に有用な硬化促進剤、かかる硬化促進剤を含み、硬化性、保存性、流動性が良好で、電気・電子材料分野に好適に使用されるエポキシ樹脂組成物、および耐半田クラック性、耐湿信頼性に優れた半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
IC、LSI等の半導体素子を封止して半導体装置を得る方法としては、エポキシ樹脂組成物のトランスファー成形が低コスト、大量生産に適しているという点で広く用いられている。また、エポキシ樹脂や、硬化剤であるフェノール樹脂の改良により、半導体装置の特性、信頼性の向上が図られている。
しかしながら、昨今の電子機器の小型化、軽量化、高性能化の市場動向において、半導体の高集積化も年々進んでおり、また、半導体装置の表面実装化も促進されている。これに伴い、半導体素子の封止に用いられるエポキシ樹脂組成物への要求は、益々厳しいものとなってきている。このため、従来からのエポキシ樹脂組成物では、解決できない(対応できない)問題も生じている。
【0003】
近年、半導体素子の封止に用いられる材料には、生産効率の向上を目的とした速硬化性の向上と、物流・保管時の取扱い性の向上を目的とした保存性の向上が求められるようになってきている。
従来、電子電気分野向けエポキシ樹脂には、硬化促進剤として、アミン類、イミダゾール系化合物、ジアザビシクロウンデセンなどの含窒素複素環式化合物、第4級アンモニウム、ホスホニウムあるいはアルミニウム化合物などの種々の化合物が使用されている。しかし、これらの硬化促進剤は、硬化促進効果を示す温度領域が、比較的低温にまで及ぶ。このため、例えば、硬化前のエポキシ樹脂組成物と他の成分とを混合する際にも、系内に発生する熱や外部から加えられる熱により、エポキシ樹脂組成物の硬化反応は一部進行する。また、混合終了後、このエポキシ樹脂組成物を常温で保管するにあたって、反応はさらに進行する。
【0004】
この部分的な硬化反応の進行は、エポキシ樹脂組成物が液体の場合には、粘度の上昇や流動性の低下をもたらし、また、エポキシ樹脂組成物が固体の場合には、粘性を発現させる。このような状態の変化は、エポキシ樹脂組成物内に厳密な意味で均一に生じるわけではない。このため、エポキシ樹脂組成物の各部分の硬化性には、ばらつきが生じる。
【0005】
これが原因となり、更に、高温で硬化反応を進行させ、エポキシ樹脂組成物を成形(その他賦形という概念も含んで、以下「成形」と記す)する際に、流動性低下による成形上の障害や、成形品の機械的、電気的あるいは化学的特性の低下をもたらす。
【0006】
したがって、このようにエポキシ樹脂組成物の保存性を低下させる原因となる硬化促進剤を用いる際には、諸成分混合時の厳密な品質管理、低温での保管や運搬、更に成形条件の厳密な管理が必須であり、取扱いが非常に煩雑である。
【0007】
この問題を解決すべく、低温での粘度、流動性の経時変化を抑え、賦形、成形時の加熱によってのみ、硬化反応を起こすような、いわゆる潜伏性硬化促進剤の研究が盛んになされている。その手段として、硬化促進剤の活性点をイオン対により保護することで、潜伏性を発現する研究がなされており、種々の有機酸とホスホニウムイオンとの塩構造を有する潜伏性硬化促進剤が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、このホスホニウム塩は、半導体装置の表面実装の採用により、耐半田クラック性、耐湿信頼性の低下という問題も生じる恐れがある。これは、次のような理由からである。成形温度における弾性率が高いため、半導体装置における密着が不十分となる可能性がある。すなわち、半導体装置は、半田浸漬あるいは半田リフロー工程で、急激に200℃以上の高温に曝される。このため、エポキシ樹脂組成物の硬化物と半導体装置内部に存在する半導体素子やリードフレーム等の基材との界面の密着性が不十分であると、この界面で剥離が生じる。この剥離が生じると、半導体装置にクラックを誘起するとともに、耐湿信頼性の低下も招く。また、エポキシ樹脂組成物中に揮発成分が存在すれば、それが爆発的に気化する際の応力により、半導体装置にクラックが発生しやすい。
【0008】
また、別の潜伏性硬化促進剤として、種々のホスホニウムベタインの塩構造を有する潜伏性硬化促進剤が提示されている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、このホスホニウムベタインの塩は、近年の低分子エポキシ樹脂やフェノールアラルキル樹脂のような硬化剤を用いる半導体封止材料では、硬化が不十分であるという問題が生じている。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−98053号公報(第5頁)
【特許文献2】
米国特許第4171420号公報(第2−4頁)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、各種硬化性樹脂組成物に有用な硬化促進剤、硬化性、保存性、流動性や密着性が良好なエポキシ樹脂組成物、および、耐半田クラック性や耐湿信頼性に優れる半導体装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(17)の本発明により達成される。
【0012】
(1) 硬化性樹脂組成物に混合され、該硬化性樹脂組成物の硬化反応を促進しうる硬化促進剤であって、
下記一般式(1)で表されることを特徴とする硬化促進剤。
【化9】
[式中、R1、R2およびR3は、それぞれ、置換もしくは無置換の1価の芳香族基、または、置換もしくは無置換の1価のアルキル基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。Arは、水酸基以外の置換基により置換もしくは無置換の2価の芳香族基を表す。Aは、芳香環または複素環を含む(p+1)価の有機基を表し、pは2〜7の整数、qは0〜2の値を表す。]
【0013】
(2) 硬化性樹脂組成物に混合され、該硬化性樹脂組成物の硬化反応を促進しうる硬化促進剤であって、
下記一般式(2)で表されることを特徴とする硬化促進剤。
【化10】
[式中、R4、R5およびR6は、それぞれ、置換もしくは無置換の1価の芳香族基、または、置換もしくは無置換の1価のアルキル基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。Aは、芳香環または複素環を含む(s+u)価の有機基を表し、Xは水素原子または一価の有機基を表す。sは3〜5の整数、uは1〜3の整数、tは0〜2の値を表す。]
【0014】
(3) 硬化性樹脂組成物に混合され、該硬化性樹脂組成物の硬化反応を促進しうる硬化促進剤であって、
下記一般式(3)で表されることを特徴とする上記(2)項記載の硬化促進剤。
【化11】
[式中、R7、R8およびR9は、それぞれ、水素原子、メチル基、メトキシ基および水酸基から選択される1種を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。xは0〜2の値を表す。]
【0015】
(4)硬化性樹脂組成物に混合され、該硬化性樹脂組成物の硬化反応を促進しうる硬化促進剤であって、
下記一般式(4)で表されることを特徴とする上記(2)項記載の硬化促進剤。
【化12】
[式中、R10、R11およびR12は、それぞれ、水素原子、メチル基、メトキシ基および水酸基から選択される1種を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。R13は水素原子または炭素原子数1〜18で構成される1価のアルキル基を表す。yは0〜2の値を表す。]
【0016】
(5)1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物と、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物と、上記第(1)項ないし第(4)項のいずれかに記載の硬化促進剤とを含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【0017】
(6) 前記1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物は、下記一般式(5)で表されるエポキシ樹脂および下記一般式(6)で表されるエポキシ樹脂の少なくとも一方を主成分とする上記第(5)項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【化13】
[式中、R14、R15、R16およびR17は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜6の鎖状もしくは環状アルキル基、フェニル基およびハロゲン原子から選択される1種を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【化14】
[式中、R18〜R25は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、およびハロゲン原子から選択される1種を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、aは1以上の整数である。]
【0018】
(7) 前記aは、1〜10である上記第(6)項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0019】
(8) 前記1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物は、下記一般式(7)で表されるフェノール樹脂および下記一般式(8)で表されるフェノール樹脂の少なくとも一方を主成分とする上記第(5)項ないし第(7)項のいずれかに記載のエポキシ樹脂。
【化15】
[式中、R26〜R29は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、およびハロゲン原子から選択される1種を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、bは、1以上の整数である。]
【化16】
[式中、R30〜R37は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、およびハロゲン原子から選択される1種を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、cは、1以上の整数である。]
【0020】
(9) 前記bは、1〜10である上記第(8)項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0021】
(10) 前記cは、1〜10である上記第(8)項または第(9)項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0022】
(11) 前記硬化促進剤の含有量は、0.01〜10重量%である上記第(5)項ないし第(10)項のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0023】
(12) 無機充填材を含む上記第(5)項ないし第(11)項のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0024】
(13) 前記無機充填材は、溶融シリカである上記第(12)項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0025】
(14) 前記無機充填材は、粒状をなしている上記第(12)項または第(13)項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0026】
(15) 前記無機充填材の平均粒径は、1〜100μmである上記第(14)項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0027】
(16) 前記無機充填材の含有量は、前記1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物と、前記1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物との合計量100重量部あたり、200〜2400重量部である上記第(12)項ないし第(15)項のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0028】
(17) 上記第(12)項ないし第(16)項のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物により半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。
【0029】
【発明の実施の形態】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物(A)と、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(B)と、本発明の硬化促進剤(C)と、無機充填材(D)とを含むものである。かかるエポキシ樹脂組成物は、硬化性、保存性、流動性および密着性に優れたものである。
【0030】
以下、各成分について、順次説明する。
[化合物(A)]
1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物(A)は、1分子内にエポキシ基を2個以上有するものであれば、何ら制限はない。
この化合物(A)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂など、フェノール類やフェノール樹脂、ナフトール類などの水酸基にエピクロロヒドリンを反応させて製造するエポキシ樹脂、エポキシ化合物、または、その他、脂環式エポキシ樹脂のように、オレフィンを、過酸を用いて酸化させエポキシ化したエポキシ樹脂や、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
これらの中でも、前記化合物(A)は、特に、前記一般式(5)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂および前記一般式(6)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂のいずれか一方または双方を主成分とするものを用いるのが好ましい。これにより、エポキシ樹脂組成物の成形時(例えば半導体装置の製造時等)の流動性が向上するとともに、得られた半導体装置の耐半田クラック性が、より向上する。
【0032】
ここで、「耐半田クラック性の向上」とは、得られた半導体装置が、例えば半田浸漬や半田リフロー工程等において、高温に曝された場合であっても、クラックや剥離等の欠陥の発生が生じ難くなることを言う。
【0033】
ここで、前記一般式(5)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂における置換基R14〜R17は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜6の鎖状もしくは環状アルキル基、フェニル基およびハロゲン原子から選択される1種であり、前記アルキル基およびハロゲン原子の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、塩素原子、臭素原子等が挙げられるが、これらの中でも、特に、メチル基であるのが好ましい。これにより、エポキシ樹脂組成物の溶融粘度が低下し、例えば半導体装置の製造時等に、その取扱いが容易となる。また、その硬化物は、吸水性が低減するので、得られた半導体装置は、その内部の部材の経時劣化(例えば断線の発生等)が好適に防止され、その耐湿信頼性が、より向上する。
【0034】
また、前記一般式(6)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂における置換基R18〜R25は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、およびハロゲン原子から選択される1種であり、前記アルキル基およびハロゲン原子の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、塩素原子、臭素原子等が挙げられるが、これらの中でも、特に、水素原子またはメチル基であるのが好ましい。これにより、エポキシ樹脂組成物の溶融粘度が低下し、例えば半導体装置の製造時等に、その取扱いが容易となるとともに、半導体装置の耐湿信頼性が、より向上する。
【0035】
また、前記一般式(6)におけるaは、エポキシ樹脂単位の平均の繰り返し数を表している。すなわち、aは、1以上の整数であれば、特に限定されず、1〜10程度であるのが好ましく、1〜5程度であるのがより好ましい。aを前記範囲とすることにより、エポキシ樹脂組成物の流動性がより向上する。
【0036】
[化合物(B)]
1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(B)は、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するものであれば制限はなく、前記化合物(A)の硬化剤として作用(機能)するものである。
【0037】
この化合物(B)としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノール樹脂、トリスフェノール樹脂、キシリレン変性ノボラック樹脂、テルペン変性ノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
これらの中でも、前記化合物(B)は、特に、前記一般式(7)で表されるフェノールアラルキル樹脂および前記一般式(8)で表されるビフェニルアラルキル樹脂のいずれか一方または双方を主成分とするものを用いるのが好ましい。これにより、エポキシ樹脂組成物の成形時(例えば半導体装置の製造時等)の流動性が向上するとともに、得られた半導体装置の耐半田クラック性や耐湿信頼性が、より向上する。
【0039】
ここで、前記一般式(7)で表されるフェノールアラルキル樹脂における置換基R26〜R29、および、前記一般式(8)で表されるビフェニルアラルキル樹脂における置換基R30〜R37は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、およびハロゲン原子から選択される1種であり、前記アルキル基およびハロゲン原子の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、塩素原子、臭素原子等が挙げられるが、これらの中でも、特に、水素原子またはメチル基であるのが好ましい。かかるフェノール樹脂は、それ自体の溶融粘度が低いため、エポキシ樹脂組成物中に含有しても、エポキシ樹脂組成物の溶融粘度を低く保持することができ、その結果、例えば半導体装置の製造時等に、その取扱いが容易となる。また、エポキシ樹脂組成物の硬化物(得られる半導体装置)の吸水性(吸湿性)が低減して耐湿信頼性がより向上するとともに、耐半田クラック性もより向上する。
【0040】
また、前記一般式(7)におけるb、および、前記一般式(8)におけるcは、それぞれ、フェノール樹脂単位の平均の繰り返し数を表している。すなわち、bおよびcは、それぞれ、1以上の整数であれば、特に限定されず、1〜10程度であるのが好ましく、1〜5程度であるのがより好ましい。bおよびcを、それぞれ、前記範囲とすることにより、エポキシ樹脂組成物の流動性の低下が好適に防止または抑制される。
【0041】
[硬化促進剤(C)]
硬化促進剤(C)は、エポキシ樹脂組成物の硬化反応を促進し得る作用(機能)を有し、前記一般式(1)または(2)で表されるものであり、前記一般式(3)で表されるものであるのが好ましく、前記一般式(4)で表されるものであるのがより好ましい。
【0042】
ここで、前記一般式(1)における、リン原子に結合する置換基R1、R2、R3、および、前記一般式(2)における、リン原子に結合する置換基R4、R5、R6は、それぞれ置換もしくは無置換の1価の芳香族基または置換もしくは無置換の1価のアルキル基であり、その具体例としては、ベンジル基、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基、シクロヘキシル基等が挙げられるが、これらの中でも、ナフチル基、p−ターシャリーブチルフェニル基、2,6−ジメトキシフェニル基等の置換もしくは無置換の1価の芳香族基であるのが好ましい。前記一般式(1)において、Arは、水酸基以外の置換基により置換もしくは無置換の2価の芳香族基を表す。このArの具体例としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、または、これらにハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜12のアルキル基やアルコキシ基等の水酸基以外の置換基により置換された芳香族基が挙げられる。総じて、前記一般式(1)における、置換基R1、R2、R3および前記一般式(2)における置換基R4、R5、R6と、Arの組み合わせとしては、置換基R1、R2、R3および置換基R4、R5、R6が、それぞれフェニル基であり、Arがフェニレン基であるものが好ましい。また、特に前記一般式(3)ないし(4)で表されるように、フェニル基、メチルフェニル基の各種異性体、メトキシフェニル基の各種異性体、ヒドロキシフェニル基の各種異性体等であるのが、より好ましい。
【0043】
また、前記一般式(1)ないし(4)において、硬化促進剤(C)を形成するもう一方のアニオン成分としては、多価プロトン供与体からなるものであり、多価プロトン供与体としては、サリチル酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシアセトフェノン、2,4,6−トリヒドロキシプロピオンフェノン、1,8,9−トリヒドロキシアントラセン、1,2,4−トリヒドロキシアントラキノン、1,4,9,10−テトラヒドロアントラセン、1,3,4,4’−テトラヒドロキシフェニルメタン、没食子酸、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸−n−ブチル、没食子酸−n−オクチル、没食子酸−n−ラウリル、没食子酸ステアリル等が挙げられるが、硬化促進剤としての安定性、硬化性、流動性、保存性、密着性、硬化物物性の観点から、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン等が好適である
【0044】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、硬化促進剤(C)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、0.01〜10重量%程度であるのが好ましく、0.1〜1重量%程度であるのが、より好ましい。これにより、エポキシ樹脂組成物の硬化性、保存性、流動性、他特性がバランスよく発揮される。
【0045】
また、1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物(A)と、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(B)との配合比率も、特に限定されないが、前記化合物(A)のエポキシ基1モルに対し、前記化合物(B)のフェノール性水酸基が0.5〜2モル程度となるように用いるのが好ましく、0.7〜1.5モル程度となるように用いるのがより好ましい。これにより、エポキシ樹脂組成物の諸特性のバランスを好適なものに維持しつつ、諸特性が、より向上する。
【0046】
ここで、本発明の硬化促進剤である硬化促進剤(C)の製造方法の一例について下記化17を参照しつつ説明する。
【0047】
【化17】
[式中、Rは、水素原子、または、適宜選択される残基を表す。Arは、水酸基以外の置換基により置換もしくは無置換の2価の芳香族基を表す。また、Aは芳香環または複素環を含む有機基を表し、Xはハロゲン原子を表す。]
【0048】
工程[1]
まず、例えば、アルコキシ置換芳香族アミンを、酸性条件下で亜硝酸ナトリウム等のジアゾ化試薬と反応させてジアゾニウム塩化する。用いるアルコキシ置換芳香族アミンとしては、o−メトキシアニリン、m−メトキシアニリン、p−メトキシアニリン、2−メトキシ−5−メチルアニリンなどが挙げられる。
【0049】
次いで、このジアゾニウム塩と第三ホスフィン類とを接触させる。これにより、N2を脱離させるとともに、第三ホスフィンのリン原子にアルコキシ置換芳香族基を導入して、第四ホスホニウム塩を生成させる。すなわち、本工程[1]において、第三ホスフィンとジアゾニウム塩が有するジアゾニウム基との置換が起こる。用いる第三ホスフィン類としては、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリ(4−メトキシフェニル)ホスフィンなどが挙げられる。
【0050】
この置換反応は、好ましくはアルカリ存在下で行われる。これにより、置換反応をより効率よく進行させることができる。用いるアルカリとしては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水素化ナトリウム、水素化リチウム、水素化カルシウム、水素化アルミニウムリチウムのような無機塩基、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ピペリジン、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、ジアミノオクタン、トリエタノールアミンのような有機塩基等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
置換反応における反応温度は、特に限定されないが、−10〜10℃程度であるのが好ましく、0〜5℃程度であるのがより好ましい。反応温度が低すぎると、置換反応が十分に進行しない場合があり、一方、反応温度が高すぎると、第三ホスフィンおよびジアゾニウム塩の種類等によっては、これらに分解が生じる場合がある。
【0052】
また、置換反応における反応時間も、第三ホスフィンおよびジアゾニウム塩の種類等によって適宜設定され、特に限定されないが、20〜120分程度であるのが好ましく、40〜80分程度であるのがより好ましい。反応時間が短すぎると、置換反応が十分に進行しない場合があり、一方、反応時間を、前記上限値を超えて長くしても、それ以上の収率の増大が期待できない。
【0053】
工程[2]、工程[3]
次に、アルコキシ基を一般的な脱保護方法によりヒドロキシル基に変換[2]した後、前記多価プロトン供与体を加え、水酸化ナトリウム等の塩基による脱HXの反応[3]により、硬化促進剤(C)を得る。
【0054】
なお、本発明の硬化促進剤の製造方法、すなわち、第三ホスフィンとジアゾニウム塩が有するジアゾニウム基との置換反応による、前記一般式(1)〜一般式(4)で表される硬化促進剤の製造方法では、ジアゾ化の条件やジアゾ化試薬の種類、保護基の使用の有無、保護基の種類や脱保護方法等は、適宜選択され得るものであり、何ら限定されるものではない。
【0055】
[無機充填材(D)]
無機充填材(D)は、得られる半導体装置の補強を目的として、エポキシ樹脂組成物中に配合(混合)されるものであり、その種類については、特に制限はなく、一般に封止材料に用いられているものを使用することができる。
【0056】
この無機充填材(D)としては、例えば、溶融破砕シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、2次凝集シリカ、アルミナ、チタンホワイト、水酸化アルミニウム、タルク、クレー、ガラス繊維等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、無機充填材(D)としては、特に、溶融シリカであるのが好ましい。溶融シリカは、本発明の硬化促進剤との反応性に乏しいので、後述するようにエポキシ樹脂組成物中に多量に配合(混合)した場合でも、エポキシ樹脂組成物の硬化反応が阻害されるのを防止することができる。また、無機充填材(D)として溶融シリカを用いることにより、得られる半導体装置の補強効果が向上する。
【0057】
また、無機充填材(D)の形状としては、例えば、粒状、塊状、鱗片状等のいかなるものであってもよいが、粒状(特に、球状)であるのが好ましい。
この場合、無機充填材(D)の平均粒径は、1〜100μm程度であるのが好ましく、5〜35μm程度であるのがより好ましい。また、この場合、粒度分布は、広いものであるのが好ましい。これにより、無機充填材(D)の充填量(使用量)を多くすることができ、得られる半導体装置の補強効果がより向上する。
【0058】
この無機充填材(D)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、前記化合物(A)と前記化合物(B)との合計量100重量部あたり、200〜2400重量部程度であるのが好ましく、400〜1400重量部程度であるのがより好ましい。無機充填材(D)の含有量が前記下限値未満の場合、無機充填材(D)による補強効果が充分に発現しないおそれがあり、一方、無機充填材(D)の含有量が前記上限値を超えた場合、エポキシ樹脂組成物の流動性が低下し、エポキシ樹脂組成物の成形時(例えば半導体装置の製造時等)に、充填不良等が生じるおそれがある。
【0059】
なお、無機充填材(D)の含有量(配合量)が、前記化合物(A)と前記化合物(B)との合計量100重量部あたり、400〜1400重量部であれば、エポキシ樹脂組成物の硬化物の吸湿率が低くなり、半田クラックの発生を防止することができる。また、かかるエポキシ樹脂組成物は、加熱溶融時の流動性も良好であるため、半導体装置内部の金線変形を引き起こすことが好適に防止される。また、無機充填材(D)の含有量(配合量)は、前記化合物(A)、前記化合物(B)や無機充填材(D)自体の比重を、それぞれ考慮し、重量部を体積%に換算して取り扱うようにしてもよい。
【0060】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物中には、前記(A)〜(D)の化合物(成分)の他に、必要に応じて、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のカップリング剤、カーボンブラック等の着色剤、臭素化エポキシ樹脂、酸化アンチモン、リン化合物等の難燃剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力成分、天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸またはその金属塩類、パラフィン等の離型剤、酸化防止剤等の各種添加剤を配合(混合)するようにしてもよい。
【0061】
また、本発明の硬化促進剤の特性を損なわない範囲で、エポキシ樹脂組成物中には、例えば、トリフェニルホスフィン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン、2−メチルイミダゾール等の、他の公知の触媒を配合(混合)するようにしても、何ら問題はない。
【0062】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記(A)〜(D)の化合物(成分)、および、必要に応じて、その他の添加剤等を、ミキサーを用いて常温混合し、熱ロール、加熱ニーダー等を用いて加熱混練し、冷却、粉砕することにより得られる。
【0063】
得られたエポキシ樹脂組成物をモールド樹脂として用いて、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の成形方法で硬化成形することにより、半導体素子等の電子部品を封止する。これにより、本発明の半導体装置が得られる。
【0064】
本発明の半導体装置の形態としては、特に限定されないが、例えば、SIP(Single Inline Package)、HSIP(SIP with Heatsink)、ZIP(Zig−zag Inline Package)、DIP(Dual Inline Package)、SDIP(Shrink Dual Inline Package)、SOP(Small Outline Package)、SSOP(Shrink Small Outline Package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J−leaded Package)、QFP(Quad Flat Package)、QFP(FP)(QFP Fine Pitch)、TQFP(Thin Quad Flat Package)、QFJ(PLCC)(Quad Flat J−leaded Package)、BGA(Ball Grid Array)等が挙げられる。
【0065】
このようにして得られた本発明の半導体装置は、耐半田クラック性および耐湿信頼性に優れる。その理由は、本発明の硬化促進剤(C)を添加した樹脂組成物は、成形温度における弾性率が低いため、半導体装置における密着が十分であることが関係してくる。すなわち、半導体装置は、半田浸漬あるいは半田リフロー工程で、急激に200℃以上の高温に曝される。このため、エポキシ樹脂組成物の硬化物と半導体装置内部に存在する半導体素子やリードフレーム等の基材との界面の密着性が不十分であると、この界面で剥離が生じる。この剥離が生じると、半導体装置にクラックを誘起するとともに、耐湿信頼性の低下も招く。
【0066】
なお、本実施形態では、本発明の硬化促進剤(前記一般式(1)〜一般式(4))(C)を、エポキシ樹脂組成物に用いる場合を代表して説明したが、本発明の硬化促進剤は、ホスフィンまたはホスホニウム塩を硬化促進剤として好適に使用し得る熱硬化性樹脂組成物に対して使用可能である。かかる熱硬化性樹脂組成物としては、例えばエポキシ化合物、マレイミド化合物、シアネート化合物、イソシアネート化合物、アクリレート化合物、または、アルケニルおよびアルキニル化合物等を含む樹脂組成物が挙げられる。
【0067】
また、本発明の硬化促進剤は、熱硬化性樹脂組成物の他、例えば反応硬化性樹脂組成物、光硬化性樹脂組成物、嫌気硬化性樹脂組成物等の各種硬化性樹脂組成物に対しても使用可能である。
【0068】
また、本実施形態では、本発明のエポキシ樹脂組成物を、半導体装置の封止材料として用いる場合について説明したが、本発明のエポキシ樹脂組成物の用途としては、これに限定されるものではない。また、エポキシ樹脂組成物の用途等に応じて、本発明のエポキシ樹脂組成物では、無機充填材の混合(配合)を省略することもできる。
【0069】
以上、本発明の硬化促進剤、硬化促進剤の製造方法、エポキシ樹脂組成物および半導体装置の好適実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0070】
【実施例】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0071】
まず、硬化促進剤として使用する化合物C1〜C9を用意した。
【0072】
[硬化促進剤の合成]
各化合物C1〜C9は、それぞれ、以下のようにして合成した。
【0073】
(化合物C1の合成)
冷却管および撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、o−メトキシアニリン12.3g(0.100mol)と、予め濃塩酸(37%)25mLを200mLの純水に溶解した塩酸水溶液とを供給し、攪拌下で溶解した。
その後、セパラブルフラスコを氷冷して、内温を0〜5℃に保ちながら、亜硝酸ナトリウム7.2g(0.104mol)の水溶液20mLを、前記溶液にゆっくりと滴下した。
【0074】
次に、セパラブルフラスコ内に、トリフェニルホスフィン20.0g(0.076mol)の酢酸エチル溶液150mLを滴下し、20分攪拌した。
その後、セパラブルフラスコ内に、水酸化ナトリウム8.0g(0.200mol)の水溶液20mLをゆっくり滴下し、約1時間激しく攪拌した。
【0075】
次に、窒素の発泡がおさまった後、pH3以下になるまで希塩酸を加え、ヨウ化ナトリウム30g(0.200mol)を添加して、生成した沈殿を濾過、乾燥し、2−メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムヨーダイドの赤褐色結晶29.7gを得た。
【0076】
次に、冷却管および撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、前記2−メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムヨーダイド29.7g(0.060mol)と、ピリジン塩酸塩88.7g(0.769mol)と、無水酢酸12.0g(0.118mol)とを供給し、還流・攪拌下200℃で5時間加熱した。
【0077】
反応終了後、反応物を室温まで冷却し、セパラブルフラスコ内へヨウ化ナトリウム3.3g(0.022mol)の水溶液250mLを投入した。析出した固形物を濾過、乾燥し、2−ヒドロキシフェニルトリフェニルホスホニウムヨーダイドの褐色固形物24.1gを得た。
【0078】
次に、ビーカー(容量:500mL)に2−ヒドロキシフェニルトリフェニルホスホニウムヨーダイド24.1g(0.050mmol)と1,2,3−トリヒドロキシベンゼン3.2g(0.025mmol)と、メタノール180mLとを供給し、攪拌した。
その後、ビーカー内に水酸化ナトリウム2g(0.050mmol)のメタノール溶液200mLを滴下し、30分間攪拌した。
【0079】
次に反応物を純水2000mLに滴下し、析出した固形物を濾過、乾燥し、2−ヒドロキシフェニルトリフェニルホスホニウム−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン塩の褐色固形物4.80gを得た。
この化合物をC1とした。化合物C1を、1H−NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、下記式(9)で表される目的のホスホニウム化合物であることが確認された。得られた化合物C1の収率は、23%であった。
【0080】
【化18】
【0081】
(化合物C2の合成)
o−メトキシアニリンに代わり、p−メトキシアニリン12.3g(0.100mol)を用い、またトリヒドロキシベンゼンに代わり、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン11.5g(0.05mmol)とした以外は、前記化合物C1の合成と同じ手順で合成を行い、最終的に白色の結晶7.6gを得た。この化合物をC2とした。化合物C2を、1H−NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、下記式(10)で表される目的のホスホニウム化合物であることが確認された。得られた化合物C2の収率は、26%であった。
【0082】
【化19】
【0083】
(化合物C3の合成)
o−メトキシアニリンに代わり、m−メトキシアニリン12.3g(0.100mol)を用い、また1,2,3−トリヒドロキシベンゼン3.2g(0.025mmol)を6.4g(0.050mmol)とした以外は、前記化合物C1の合成と同じ手順で合成を行い、最終的に白色の結晶6.24gを得た。
この化合物をC3とした。化合物C3を、1H−NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、下記式(11)で表される目的のホスホニウム化合物であることが確認された。得られた化合物C3の収率は、29%であった。
【0084】
【化20】
【0085】
(化合物C4の合成)
1,2,3−トリヒドロキシベンゼン6.4g(0.050mmol)を没食子酸8.5g(0.050mmol)とした以外は、前記化合物C3の合成と同じ手順で合成を行い、最終的に白色の結晶7.86gを得た。
この化合物をC4とした。化合物C4を、1H−NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、下記式(12)で表される目的のホスホニウム化合物であることが確認された。得られた化合物C4の収率は、30%であった。
【0086】
【化21】
【0087】
(化合物C5の合成)
トリフェニルホスフィンに代わり、トリ(4−メトキシフェニル)ホスフィン26.8g(0.076mol)を用い、また1,2,3−トリヒドロキシベンゼン3.2g(0.025mmol)に代わり、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン12.6g(0.100mmol)とした以外は、前記化合物C1の合成と同じ手順で合成を行い、最終的に黄色結晶11.4gを得た。
この化合物をC5とした。化合物C5を、1H−NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、下記式(13)で表される目的のホスホニウム化合物であることが確認された。得られた化合物C5の収率は、35%であった。
【0088】
【化22】
【0089】
(化合物C6の合成)
o−メトキシアニリンに代わり、2−メトキシ−5−メチルアニリン13.7g(0.100mol)を用い、またトリフェニルホスフィンに代わり、トリ−p−トリルホスフィン23.1g(0.076mol)を用い、また1,2,3−トリヒドロキシベンゼン3.2g(0.025mmol)に代わり、没食子酸メチル18.4g(0.100mmol)とした以外は、前記化合物C1と同じ手順で合成を行い、最終的に白色結晶8.22gを得た。
この化合物をC6とした。化合物C6を、1H−NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、下記式(14)で表される目的のホスホニウム化合物であることが確認された。得られた化合物C6の収率は、21%であった。
【0090】
【化23】
【0091】
(化合物C7の合成)
トリフェニルホスフィンに代わり、トリ−p−トリルホスフィン23.1g(0.076mol)を用い、また1,2,3−トリヒドロキシベンゼン6.4g(0.050mmol)を12.6g(0.100mmol)とした以外は、前記化合物C3の合成と同じ手順で合成を行い、最終的に白色の結晶13.72gを得た。
この化合物をC7とした。化合物C7を、1H−NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、下記式(15)で表される目的のホスホニウム化合物であることが確認された。得られた化合物C7の収率は、42%であった。
【0092】
【化24】
【0093】
(化合物C8の合成)
攪拌装置付きの1リットルセパラブルフラスコに、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン12.6g(0.1mol)、メタノール50mlを仕込み室温で攪拌溶解し、さらに攪拌しながら水酸化ナトリウム4.0g(0.1mol)を、予め50mlのメタノールで溶解した溶液を添加した。次いで、予めテトラホスホニウムブロミド41.9g(0.1mol)を150mlのメタノールに溶解した溶液を加えた。しばらく攪拌を継続し、300mlのメタノールを追加した後、フラスコ内の溶液を大量の水に攪拌しながら滴下し、白色沈殿を得た。
この化合物をC8とした。化合物C8を、1H−NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、下記式(16)で表される目的のホスホニウム化合物であることが確認された。得られた化合物C8の収率は、65%であった。
【0094】
【化25】
【0095】
(化合物C9の合成)
トリフェニルホスフィン26.2g(0.100mol)をビーカー(容量:500mL)中で、75mLのアセトンに室温で溶解させた。
次に、この溶液中に、p−ベンゾキノン10.8g(0.100mol)をアセトン45mLに溶解した溶液を、撹拌下ゆっくり滴下した。このとき、滴下を続けると、しだいに析出物が現われた。
滴下終了後、約1時間撹拌を継続した後、約30分静置した。
その後、析出した結晶を濾過、乾燥し、緑褐色粉末27.75gを得た。
【0096】
次に、ビーカー(容量:500mL)にこの緑褐色粉末27.75g(0.075mmol)とギ酸4.8g(0.075mmol)と、メタノール180mLとを供給し、攪拌した。
その後、ビーカー内に水酸化ナトリウム3g(0.075mmol)のメタノール溶液200mLを滴下し、30分間攪拌した。
【0097】
次に反応物を純水2000mLに滴下し、析出した固形物を濾過、乾燥し、褐色固形物13.4gを得た。
この化合物をC9とした。化合物C1を、1H−NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、下記式(17)で表される目的のホスホニウム化合物であることが確認された。得られた化合物C9の収率は、25%であった。
【0098】
【化26】
【0099】
(化合物C10の合成)
ギ酸4.8g(0.075mmol)に代わり、没食子酸25.5g(0.150mmol)を用いた以外は、前記化合物C9の合成と同じ手順で合成を行い、最終的に褐色の結晶28.9gを得た。
この化合物をC10とした。化合物C10を、1H−NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、下記式(18)で表される目的のホスホニウム化合物であることが確認された。得られた化合物C10の収率は、55%であった。
【0100】
【化27】
【0101】
[エポキシ樹脂組成物の調製および半導体装置の製造]
以下のようにして、前記化合物C1〜C10を含むエポキシ樹脂組成物を調製し、半導体装置を製造した。
【0102】
(実施例1)
まず、化合物(A)として下記式(19)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂、化合物(B)として下記式(20)で表されるフェノールアラルキル樹脂(ただし、繰り返し単位数:3は、平均値を示す。)、硬化促進剤(C)として化合物C1、無機充填材(D)として溶融球状シリカ(平均粒径15μm)、その他の添加剤としてカーボンブラック、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびカルナバワックスを、それぞれ用意した。
【0103】
【化28】
<式(19)の化合物の物性>
融点 :105℃
エポキシ当量 :193
150℃のICI溶融粘度:0.15poise
【0104】
【化29】
<式(20)の化合物の物性>
軟化点 :77℃
水酸基当量 :172
150℃のICI溶融粘度:3.6poise
【0105】
次に、ビフェニル型エポキシ樹脂:52重量部、フェノールアラルキル樹脂:48重量部、化合物C1:2.09重量部、溶融球状シリカ:730重量部、カーボンブラック:2重量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂:2重量部、カルナバワックス:2重量部を、まず室温で混合し、次いで熱ロールを用いて95℃で8分間混練した後、冷却粉砕して、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得た。
【0106】
次に、このエポキシ樹脂組成物をモールド樹脂として用い、100ピンTQFPのパッケージ(半導体装置)を8個、および、16ピンDIPのパッケージ(半導体装置)を15個、それぞれ製造した。
【0107】
100ピンTQFPは、金型温度175℃、注入圧力7.4MPa、硬化時間2分でトランスファーモールド成形し、175℃、8時間で後硬化させることにより製造した。
なお、この100ピンTQFPのパッケージサイズは、14×14mm、厚み1.4mm、シリコンチップ(半導体素子)サイズは、8.0×8.0mm、リードフレームは、42アロイ製とした。
【0108】
また、16ピンDIPは、金型温度175℃、注入圧力6.8MPa、硬化時間2分でトランスファーモールド成形し、175℃、8時間で後硬化させることにより製造した。
なお、この16ピンDIPのパッケージサイズは、6.4×19.8mm、厚み3.5mm、シリコンチップ(半導体素子)サイズは、3.5×3.5mm、リードフレームは、42アロイ製とした。
【0109】
(実施例2)
まず、化合物(A)として下記式(21)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(ただし、繰り返し単位数:3は、平均値を示す。)、化合物(B)として下記式(22)で表されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(ただし、繰り返し単位数:3は、平均値を示す。)、硬化促進剤(C)として化合物C1、無機充填材(D)として溶融球状シリカ(平均粒径15μm)、その他の添加剤としてカーボンブラック、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびカルナバワックスを、それぞれ用意した。
【0110】
【化30】
<式(21)の化合物の物性>
軟化点 :60℃
エポキシ当量 :272
150℃のICI溶融粘度:1.3poise
【0111】
【化31】
<式(22)の化合物の物性>
軟化点 :68℃
水酸基当量 :199
150℃のICI溶融粘度:0.9poise
【0112】
次に、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂:57重量部、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂:43重量部、化合物C1:2.09重量部、溶融球状シリカ:650重量部、カーボンブラック:2重量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂:2重量部、カルナバワックス:2重量部を、まず室温で混合し、次いで熱ロールを用いて105℃で8分間混練した後、冷却粉砕して、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得た。
次に、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例1と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0113】
(実施例3)
化合物C1に代わり、化合物C2:2.92重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例1と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0114】
(実施例4)
化合物C1に代わり、化合物C2:2.92重量部を用いた以外は、前記実施例2と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例2と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0115】
(実施例5)
化合物C1に代わり、化合物C3:2.15重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例1と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0116】
(実施例6)
化合物C1に代わり、化合物C3:2.15重量部を用いた以外は、前記実施例2と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例2と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0117】
(実施例7)
化合物C1に代わり、化合物C4:2.62重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例1と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0118】
(実施例8)
化合物C1に代わり、化合物C4:2.62重量部を用いた以外は、前記実施例2と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例2と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0119】
(実施例9)
化合物C1に代わり、化合物C5:3.27重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例1と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0120】
(実施例10)
化合物C1に代わり、化合物C5:3.27重量部を用いた以外は、前記実施例2と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例2と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0121】
(実施例11)
化合物C1に代わり、化合物C6:3.92重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例1と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0122】
(実施例12)
化合物C1に代わり、化合物C6:3.92重量部を用いた以外は、前記実施例2と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例2と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0123】
(実施例13)
化合物C1に代わり、化合物C7:3.27重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例1と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0124】
(実施例14)
化合物C1に代わり、化合物C7:3.27重量部を用いた以外は、前記実施例2と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例2と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0125】
(比較例1)
化合物C1に代わり、化合物C8:1.94重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例1と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0126】
(比較例2)
化合物C1に代わり、化合物C8:1.94重量部を用いた以外は、前記実施例2と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例2と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0127】
(比較例3)
化合物C1に代わり、化合物C9:4.34重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例1と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0128】
(比較例4)
化合物C1に代わり、化合物C9:4.34重量部を用いた以外は、前記実施例2と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例2と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0129】
(比較例5)
化合物C1に代わり、化合物C10:3.50重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例1と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0130】
(比較例6)
化合物C1に代わり、化合物C10:3.50重量部を用いた以外は、前記実施例2と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例2と同様にしてパッケージ(半導体装置)を製造した。
【0131】
[特性評価]
各実施例および各比較例で得られたエポキシ樹脂組成物の特性評価▲1▼〜▲5▼、および、各実施例および各比較例で得られた半導体装置の特性評価▲5▼および▲6▼を、それぞれ、以下のようにして行った。
【0132】
▲1▼:スパイラルフロー
EMMI−I−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用い、金型温度175℃、注入圧力6.8MPa、硬化時間2分で測定した。
このスパイラルフローは、流動性のパラメータであり、数値が大きい程、流動性が良好であることを示す。
【0133】
▲2▼:硬化トルク
キュラストメーター(オリエンテック(株)製、JSRキュラストメーターIV PS型)を用い、175℃、45秒後のトルクを測定した。
この硬化トルクは、数値が大きい程、硬化性が良好であることを示す。
【0134】
▲3▼:フロー残存率
得られたエポキシ樹脂組成物を、大気中30℃で1週間保存した後、前記▲1▼と同様にしてスパイラルフローを測定し、調製直後のスパイラルフローに対する百分率(%)を求めた。
このフロー残存率は、数値が大きい程、保存性が良好であることを示す。
【0135】
▲4▼:弾性率
化合物(A)として、前記式(18)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂:52重量部、および、化合物(B)として、前記式(19)で表されるフェノールアラルキル樹脂:48重量部、化合物(C)として、C1ないしC9を表1に記してある触媒量を配合し、まず室温で混合し、次いで熱ロールを用いて95℃で8分間混練した後、冷却粉砕して、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得た。
次に、このエポキシ樹脂組成物をモールド樹脂として用い、金型温度175℃、注入圧力7.4MPa、硬化時間2分でトランスファーモールド成形し、175℃、8時間で後硬化させることにより製造した。
この硬化物をレオバイブロン DDV−25FP型(オリエンテック(株)製)を用い、175℃での貯蔵弾性率を測定した。
【0136】
▲5▼:耐半田クラック性
100ピンTQFPを85℃、相対湿度85%の環境下で168時間放置し、その後、260℃の半田槽に10秒間浸漬した。
その後、顕微鏡下に、外部クラックの発生の有無を観察し、クラック発生率=(クラックが発生したパッケージ数)/(全パッケージ数)×100として、百分率(%)で表示した。
また、シリコンチップとエポキシ樹脂組成物の硬化物との剥離面積の割合を、超音波探傷装置を用いて測定し、剥離率=(剥離面積)/(シリコンチップの面積)×100として、8個のパッケージの平均値を求め、百分率(%)で表示した。
これらのクラック発生率および剥離率は、それぞれ、数値が小さい程、密着性、耐半田クラック性が良好であることを示す。
【0137】
▲6▼:耐湿信頼性
16ピンDIPに、125℃、相対湿度100%の水蒸気中で、20Vの電圧を印加し、断線不良を調べた。15個のパッケージのうち8個以上に不良が出るまでの時間を不良時間とした。
なお、測定時間は、最長で500時間とし、その時点で不良パッケージ数が8個未満であったものは、不良時間を500時間超(>500)と示す。
この不良時間は、数値が大きい程、耐湿信頼性に優れることを示す。
【0138】
各特性評価▲1▼〜▲6▼の結果を、表1に示す。
【表1】
【0139】
表1に示すように、各実施例で得られたエポキシ樹脂組成物(本発明のエポキシ樹脂組成物)は、いずれも、硬化性、保存性、流動性、密着性が極めて良好であり、さらに、この硬化物で封止された各実施例のパッケージ(本発明の半導体装置)は、樹脂硬化物の弾性率が低いという結果に反映して、いずれも、耐半田クラック性、耐湿信頼性が良好なものであった。
【0140】
これに対し、比較例1および比較例2で得られたエポキシ樹脂組成物は、いずれも、保存性、密着性に劣り、これらの比較例で得られたパッケージは、樹脂硬化物の弾性率が高いという結果に反映して、いずれも、耐半田クラック性に極めて劣るものであった。また、比較例3および4で得られたエポキシ樹脂組成物は、いずれも、硬化性、保存性、流動性が極めて悪く、これらの比較例で得られたパッケージは、樹脂硬化物の弾性率が高いという結果に反映して、いずれも、耐半田クラック性に劣るものであった。また、比較例5および6で得られたエポキシ樹脂組成物は、いずれも、流動性に劣り、これらの比較例で得られたパッケージは、硬化物の弾性率が高いという結果に反映して、いずれも、耐半田クラック性に劣るものであった。
【0141】
(実施例15〜21、比較例7〜9)
化合物(A)として、前記式(19)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂:26重量部、前記式(21)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂:28.5重量部、および、化合物(B)として、前記式(20)で表されるフェノールアラルキル樹脂:45.5重量部を配合した以外は、それぞれ、前記実施例1、3、5、7、9、11、13、比較例1、3、5と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、パッケージ(半導体装置)を製造した。
各実施例15〜21、比較例7〜9で得られたエポキシ樹脂組成物およびパッケージの特性評価を、前記と同様にして行ったところ、前記表1とほぼ同様の結果が得られた。
【0142】
(実施例22〜28、比較例10〜12)
化合物(A)として、前記式(19)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂:54.5重量部、化合物(B)として、前記式(20)で表されるフェノールアラルキル樹脂:24重量部、および、前記式(22)で表されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂:21.5重量部を配合した以外は、それぞれ、前記実施例1、3、5、7、9、11、13、比較例1、3、5と同様にして、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得、このエポキシ樹脂組成物を用いて、パッケージ(半導体装置)を製造した。
各実施例22〜28、比較例10〜12で得られたエポキシ樹脂組成物およびパッケージの特性評価を、前記と同様にして行ったところ、前記表1とほぼ同様の結果が得られた。
【0143】
(実施例29〜35、比較例13)
ジアミノジフェニルメタンのビスマレイミド樹脂(ケイ・アイ化成製BMI−H)100重量部に、硬化促進剤として化合物C1〜C8およびC9を、それぞれ、表2に示す配合比で配合し、これらを均一に混合した樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得た。
実施例29〜35および比較例13で得られた樹脂組成物に対して、175℃におけるゲル化時間を測定した。
この結果を、各硬化促進剤の配合比と合わせて、表2に示す。
【0144】
【表2】
【0145】
表2に示すように、各実施例で得られた樹脂組成物は、いずれも、速やかに硬化に至るものであった。これに対し、比較例で得られた樹脂組成物は、硬化が遅く、不十分であった。
【0146】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の硬化促進剤によれば、硬化性樹脂組成物を速やかに硬化させることができ、硬化性樹脂組成物の硬化物が、高温に曝された場合であっても、この硬化物に欠陥が生じるのを好適に防止することができる。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化性、保存性、流動性、密着性に優れる。
また、本発明の半導体装置は、高温に曝された場合であっても、クラックや剥離等の欠陥が生じ難く、また、吸湿に伴う経時劣化も発生し難い。
Claims (17)
- 1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物と、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物と、請求項1ないし4のいずれかに記載の硬化促進剤とを含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
- 前記aは、1〜10である請求項6に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物は、下記一般式(7)で表されるフェノール樹脂および下記一般式(8)で表されるフェノール樹脂の少なくとも一方を主成分とする請求項5ないし7のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記bは、1〜10である請求項8に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記cは、1〜10である請求項8または請求項9に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記硬化促進剤の含有量は、0.01〜10重量%である請求項5ないし10のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 無機充填材を含む請求項5ないし11のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記無機充填材は、溶融シリカである請求項12に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記無機充填材は、粒状をなしている請求項12または13に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記無機充填材の平均粒径は、1〜100μmである請求項14に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記無機充填材の含有量は、前記1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物と、前記1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物との合計量100重量部あたり、200〜2400重量部である請求項12ないし15のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 請求項12ないし16のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物により半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。
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