JP4128430B2 - 硬化促進剤、エポキシ樹脂組成物および半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、硬化促進剤、エポキシ樹脂組成物および半導体装置に関するものである。更に詳しくは、熱硬化性樹脂組成物に有用な硬化促進剤、かかる硬化促進剤を含み、硬化性、保存性、流動性が良好で、電気・電子材料分野に好適に使用されるエポキシ樹脂組成物、および、耐半田クラック性、耐湿信頼性に優れた半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
IC、LSI等の半導体素子を封止して半導体装置を得る方法としては、エポキシ樹脂組成物のトランスファー成形が低コスト、大量生産に適しているという点で広く用いられている。また、エポキシ樹脂や、硬化剤であるフェノール樹脂の改良により、半導体装置の特性、信頼性の向上が図られている。
【0003】
しかしながら、昨今の電子機器の小型化、軽量化、高性能化の市場動向において、半導体の高集積化も、年々進んでおり、また、半導体装置の表面実装化も促進されている。これに伴い、半導体素子の封止に用いられるエポキシ樹脂組成物への要求は、益々厳しいものとなってきている。このため、従来からのエポキシ樹脂組成物では解決出来ない(対応できない)問題点も生じている。
【0004】
近年、半導体素子の封止に用いられる材料には、生産効率の向上を目的とした速硬化性の向上と、物流・保管時の取扱い性向上を目的とした、保存性の向上が求められるようになってきている
【0005】
電気・電子材料分野向けのエポキシ樹脂組成物には、硬化時における樹脂の硬化反応を促進し、電子部品の樹脂封止において、樹脂硬化物中のボイドを低減する目的で、第三ホスフィンとキノン類の付加反応物が硬化促進剤として、用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
かかる硬化促進剤は、硬化促進効果を示す温度領域が比較的低温にまで及ぶため、例えば硬化前のエポキシ樹脂組成物と他の成分とを混合する際にも、系内に発生する熱や外部から加えられる熱により、エポキシ樹脂組成物の硬化反応は一部進行する。また、混合終了後、このエポキシ樹脂組成物を常温で保管するにあたって、反応はさらに進行する。
【0007】
この部分的な硬化反応の進行は、エポキシ樹脂組成物が液体の場合には、粘度の上昇や流動性の低下をもたらし、また、エポキシ樹脂組成物が固体の場合には、粘性を発現させる。このような状態の変化は、エポキシ樹脂組成物内に厳密な意味で均一に生じるわけではない。このため、エポキシ樹脂組成物の各部分の硬化性には、ばらつきが生じる。
【0008】
これが原因となり、更に、高温で硬化反応を進行させ、エポキシ樹脂組成物を成形(その他賦形という概念も含んで、以下「成形」と記す)する際に、流動性低下による成形上の障害や、成形品の機械的、電気的あるいは化学的特性の低下をもたらす。
【0009】
したがって、このようにエポキシ樹脂組成物の保存性を低下させる原因となる硬化促進剤を用いる際には、諸成分混合時の厳密な品質管理、低温での保管や運搬、更に成形条件の厳密な管理が必須であり、取扱いが非常に煩雑である。
【0010】
また、半導体装置の表面実装の採用により、耐半田クラック性、耐湿信頼性の低下という問題も生じている。これは、次のような理由からである。すなわち、半導体装置は、半田浸漬あるいは半田リフロー工程で、急激に200℃以上の高温に曝される。このため、エポキシ樹脂組成物の硬化物と半導体装置内部に存在する半導体素子やリードフレーム等の基材との界面の密着性が不十分であると、この界面で剥離が生じる。この剥離が生じると、半導体装置にクラックを誘起するとともに、耐湿信頼性の低下も招く。また、エポキシ樹脂組成物中に揮発成分が存在すれば、それが爆発的に気化する際の応力により、半導体装置にクラックが発生しやすい。
【0011】
ところが、前述したような硬化促進剤(第三ホスフィンとキノン類との付加反応物)を用いたエポキシ樹脂組成物の硬化物により、半導体素子等を封止してなる半導体装置では、十分なレベルの耐半田クラック性、耐湿信頼性が得られていないのが現状である。
【0012】
【特許文献1】
特開平10−25335号公報(段落番号0006)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、各種硬化性樹脂組成物に有用な硬化促進剤、硬化性、保存性や流動性が良好なエポキシ樹脂組成物、および、耐半田クラック性や耐湿信頼性に優れる半導体装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(14)項の本発明により達成される。
【0015】
(1)硬化性樹脂組成物に混合され、該硬化性樹脂組成物の硬化反応を促進し得る硬化促進剤であって、
下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表される水酸基とオキシドを有するホスホニウム分子内塩であることを特徴とする硬化促進剤。
【化6】
[式中、R1およびR2は、それぞれ、水素、水酸基、アルキル基およびアリール基の中から選ばれ、R1およびR2の少なくともどちらか一方は水酸基である。R3〜R6は、水素、アルキル基、アラルキル基およびアリール基の中から選ばれる置換基である。R0はアルキル基、アラルキル基およびアリール基の中から選ばれる置換基である。]
【0020】
(2)1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物と、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物と、第(1)項記載の硬化促進剤とを含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【0021】
(3)前記1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物は、下記一般式(3)で表されるエポキシ樹脂および下記一般式(4)で表されるエポキシ樹脂の少なくとも一方を主成分とする第(2)項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【化7】
[式中、R7、R8、R9、およびR10は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜6の鎖状もしくは環状アルキル基、フェニル基およびハロゲン原子から選択される1種を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【化8】
[式中、R11〜R18は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、およびハロゲン原子から選択される1種を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、aは1以上の整数である。]
【0022】
(4)前記aは、1〜10である第(3)項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0023】
(5)前記1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物は、下記一般式(5)で表されるフェノール樹脂および下記一般式(6)で表されるフェノール樹脂の少なくとも一方を主成分とする第(2)項ないし第(4)項のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【化9】
[式中、R19〜R22は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、およびハロゲン原子から選択される1種を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、bは、1以上の整数である。]
【化10】
[式中、R23〜R30は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、およびハロゲン原子から選択される1種を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、cは、1以上の整数である。]
【0024】
(6)前記bは、1〜10である第(5)項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0025】
(7)前記cは、1〜10である第(5)項または第(6)項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0026】
(8)前記硬化促進剤の含有量は、0.01〜10重量%である第(2)項ないし第(7)項のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0027】
(9)無機充填材を含む第(2)項ないし第(8)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0028】
(10)前記無機充填材は、溶融シリカである第(9)項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0029】
(11)前記無機充填材は、粒状をなしている第(9)項または第(10)項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0030】
(12)前記無機充填材の平均粒径は、1〜100μmである第(11)項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0031】
(13)前記無機充填材の含有量は、前記1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物と、前記1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物との合計量100重量部あたり、200〜2400重量部である第(9)項ないし第(12)項のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0032】
(14)第(9)項ないし第(13)項のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物により電子部品を封止してなることを特徴とする半導体装置。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、前述したような問題点を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、次のような▲1▼〜▲3▼の事項を見出し、本発明を完成するに至った。
【0034】
すなわち、▲1▼:特定構造のホスホニウム分子内塩が、各種硬化性樹脂組成物の硬化反応を促進する硬化促進剤として極めて有用であることを見出した。
【0035】
▲2▼:かかるホスホニウム分子内塩を、硬化性樹脂組成物、特に、エポキシ樹脂組成物に硬化促進剤として、混合することにより、エポキシ樹脂組成物が、硬化性、保存性および流動性に優れたものとなることを見出した。
【0036】
▲3▼:かかるエポキシ樹脂組成物の硬化物により、電子部品を封止してなる半導体装置が、高温に曝された場合であっても、クラックや剥離等の欠陥が発生し難いことを見出した。
【0037】
以下、本発明の硬化促進剤、エポキシ樹脂組成物および半導体装置の好適実施形態について説明する。
【0038】
本発明の硬化促進剤は、各種硬化性樹脂組成物の硬化促進剤として適用可能であるが、以下では、熱硬化性樹脂組成物の1種であるエポキシ樹脂組成物に適用した場合を代表して説明する。
【0039】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物(A)と、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(B)と、本発明の一般式(1)または一般式(2)で表される硬化促進剤(C)と、無機充填剤(D)とを含むものである。かかるエポキシ樹脂組成物は、硬化性、保存性および流動性に優れたものである。
【0040】
以下、各成分について、順次説明する。
[化合物(A)]
1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物(A)は、1分子内にエポキシ基を2個以上有するものであれば、何ら制限はない。
【0041】
この化合物(A)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂など、フェノール類やフェノール樹脂、ナフトール類などの水酸基にエピクロロヒドリンを反応させて製造するエポキシ樹脂、エポキシ化合物、または、その他、脂環式エポキシ樹脂のように、オレフィンを、過酸を用いて、酸化させエポキシ化したエポキシ樹脂や、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
これらの中でも、前記化合物(A)は、特に、一般式(3)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂および一般式(4)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂のいずれか一方または双方を主成分とするものを用いるのが好ましい。これにより。エポキシ樹脂組成物の成形時、例えば、半導体装置の製造時等における流動性が向上するとともに、得られた半導体装置の耐半田クラック性がより向上する。
【0043】
ここで、「耐半田クラック性の向上」とは、得られた半導体装置が、例えば、半田浸漬や半田リフロー工程等において、高温に曝された場合であっても、クラックや剥離等の欠陥の発生が生じ難くなることを言う。
【0044】
ここで、前記一般式(3)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂において、置換基R7〜R10は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜6の鎖状もしくは環状アルキル基、フェニル基およびハロゲン原子から選択される1種を表し、これらは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0045】
これらの置換R7〜R10の具体例としては、それぞれ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、塩素原子、臭素原子等が挙げられるが、これらの中でも、特に、メチル基であるのが好ましい。これにより、エポキシ樹脂組成物の溶融粘度が低下し、例えば、半導体装置の製造時等に、その取り扱いが容易となる。また、その硬化物は、吸水性が低減するので、得られた半導体装置は、その内部の部材の経時劣化、例えば、電子部品の断線の発生等が好適に防止され、その耐湿信頼性が、より向上する。
【0046】
また、前記一般式(4)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂において、置換基R11〜R18は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、およびハロゲン原子から選択される1種を表し、これらは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0047】
これらの置換基R11〜R18の具体例としては、それぞれ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、塩素原子、臭素原子等が挙げられるが、これらの中でも、特に、水素原子またはメチル基であるのが好ましい。これにより、エポキシ樹脂組成物の溶融粘度が低下し、例えば、半導体装置の製造時等に、その取り扱いが容易となるとともに、半導体装置の耐湿信頼性が、より向上する。
【0048】
また、前記一般式(4)の中のaは、エポキシ樹脂単位の平均の繰り返し数を表している。すなわち、aは、1以上の整数であれば、特に限定されず、1〜10程度であるのが好ましく、1〜5程度であるのがより好ましい。aを前記範囲とすることにより、エポキシ樹脂組成物の流動性が、より向上する。
【0049】
[化合物(B)]
1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(B)は、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するものであり、前記化合物(A)の硬化剤として作用(機能)するものである。
【0050】
この化合物(B)としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノール樹脂、トリスフェノール樹脂、キシリレン変性ノボラック樹脂、テルペン変性ノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
これらの中でも、前記化合物(B)は、特に、一般式(5)で表されるフェノールアラルキル樹脂および一般式(6)で表されるビフェニルアラルキル樹脂のいずれか一方または双方を主成分とするものを用いるのが好ましい。これにより、エポキシ樹脂組成物の成形時、例えば、半導体装置の製造時等における流動性が向上するとともに、得られた半導体装置の耐半田クラック性や耐湿信頼性が、より向上する。
【0052】
ここで、前記一般式(5)で表されるフェノールアラルキル樹脂における置換基R19〜R22、および、前記一般式(6)で表されるビフェニルアラルキル樹脂における置換基R23〜R30は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基およびハロゲン原子から選択される1種を表し、これらは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0053】
これらの置換基R19〜R22およびR23〜R30の具体例としては、それぞれ、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、塩素原子、臭素原子等が挙げられるが、これらの中でも、特に、水素原子またはメチル基であるのが好ましい。かかるフェノール樹脂は、それ自体の溶融粘度が低いため、エポキシ樹脂組成物中に含有しても、エポキシ樹脂組成物の溶融粘度を低く保持することができ、その結果、例えば、半導体装置の製造時等に、その取り扱いが容易となる。また、エポキシ樹脂組成物の硬化物(得られる半導体装置)の吸水性(吸湿性)が低減して、耐湿信頼性が、より向上するとともに、耐半田クラック性も、より向上する。
【0054】
また、前記一般式(5)中のb、および、前記一般式(6)中のcは、それぞれ、フェノール樹脂単位の平均の繰り返し数を表している。すなわち、bおよびcは、それぞれ、1以上の整数であれば、特に限定されず、1〜10程度であるのが好ましく、1〜5程度であるのが、より好ましい。bおよびcを、それぞれ、前記範囲とすることにより、エポキシ樹脂組成物の流動性の低下が好適に防止または抑制される。
【0055】
[硬化促進剤(C):本発明の硬化促進剤]
硬化促進剤(C)は、ホスホニウム分子内塩であり、エポキシ樹脂組成物の硬化反応を促進し得る作用(機能)を有し、一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物であり、下記一般式(7)〜(9)で表される化合物が、より好ましい。
【0056】
【化11】
[式中、Arは、置換、無置換の、フェニル基、ナフチル基などの芳香族基を示す]
【0057】
ここで、前記一般式(1)および一般式(2)において、R1およびR2は、それぞれ、水素、水酸基、アルキル基およびアリール基の中から選ばれ、R1およびR2の少なくともどちらか一方は水酸基である。R3〜R6は、水素、アルキル基、アラルキル基およびアリール基の中から選ばれる置換基である。R0はアルキル基、アラルキル基およびアリール基の中から選ばれる置換基である。
【0058】
これらの置換基Rの具体例としては、例えば、ベンジル基、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基、シクロヘキシル基等が挙げられるが、これらの中でも、前記一般式(7)〜(9)において、置換基Arで表されるように、ナフチル基、p−ターシャリーブチルフェニル基、2,6−ジメトキシフェニル基等の置換もしくは無置換の1価の芳香族基であるのが好ましく、特に、フェニル基、メチルフェニル基の各種異性体、メトキシフェニル基の各種異性体、ヒドロキシフェニル基の各種異性体等であるのが、より好ましい。
【0059】
一般式(7)〜(9)における置換基Arの具体例としては、フェニル基、ナフチル基、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等の芳香族基、更には、これらの芳香族基に、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜12のアルキル基やアルコキシ基等の水酸基以外の置換基により置換された芳香族基が挙げられる。
【0060】
この硬化促進剤(C)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、0.01〜10重量%程度であるのが好ましく、0.1〜1重量%程度であるのが、より好ましい。これにより、エポキシ樹脂組成物の硬化性、保存性、流動性、他特性がバランスよく発揮される。
【0061】
また、1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物(A)と、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(B)との配合比率も、特に限定されないが、前記化合物(A)のエポキシ基1モルに対し、前記化合物(B)のフェノール性水酸基が0.5〜2モル程度となるように用いるのが好ましく、0.7〜1.5モル程度となるように用いるのがより好ましい。これにより、エポキシ樹脂組成物の諸特性のバランスを好適なものに維持しつつ、諸特性が、より向上する。
【0062】
このような硬化促進剤(C)、すなわち、本発明の硬化促進剤は、第三ホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物(下記式(100)の化合物:従来の硬化促進剤)と比較し、硬化促進剤としての特性、特に保存性が極めて優れるものである。その理由としては、本発明の硬化促進剤は、オキシアニオンのp位に電子供与性基である水酸基がないために、オキシアニオンが安定化し、低温における不必要な反応が起こらなくなるためである。これに対し、第三ホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物(下記式(100)の化合物)のように、オキシアニオンのパラ位に水酸基が存在すると、オキシアニオンの電荷の状態が不安定化し、安定な分子内イオン対を形成しにくいものと考えられる。
また、第三ホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加反応によって合成されるものは、高温にて容易に分解反応が起こるのに対し、本発明における方法により合成された化合物は、付加反応によって合成されるものではないので、分解反応が起きず、耐半田性に優れる。
【0063】
【化12】
【0064】
ここで、硬化促進剤(C)の製造方法、すなわち、前記一般式(1)〜一般式(2)で表される化合物の製造方法について説明する。
【0065】
本発明の硬化促進剤の製造方法は、第三ホスフィンとジアゾニウム塩とを接触させることにより、第三ホスフィンとジアゾニウム塩が有するジアゾニウム基とを置換する工程を有することを特徴とするものである。かかる製造方法によれば、極めて安定な化合物を、容易かつ高収率で得ることができる。
【0066】
なお、本発明の硬化促進剤の製造方法では、第三ホスフィンとジアゾニウム塩が有するジアゾニウム基との置換反応の工程を有しておれば、その他の製造工程、製造条件については、何ら限定されるものではない。以下に、本発明の硬化促進剤の製造方法の一例について、下記化13を参照しつつ説明する。
【0067】
【化13】
[式中、Rは、水素原子、または、適宜選択される残基を表す。Arは芳香族、Xはハロゲン原子を表す。]
【0068】
工程[1]
まず、例えば、ジメトキシアニリンやトリメトキシアニリン等の複数アルコキシ置換芳香族アミンを、酸性条件下で亜硝酸ナトリウム等のジアゾ化試薬と反応させてジアゾニウム塩化する。
【0069】
ついで、このジアゾニウム塩とトリフェニルホスフィン、トリアルキルホスフィン等の第三ホスフィン類とを接触させる。これにより、N2を脱離させるとともに、第三ホスフィンのリン原子にアルコキシ置換芳香族基を導入して、第四ホスホニウム塩を生成させる。すなわち、本工程[1]において、第三ホスフィンとジアゾニウム塩が有するジアゾニウム基との置換が起こる。
【0070】
この置換反応は、好ましくはアルカリ存在下で行われる。これにより、置換反応を、より効率良く進行させることができる。用いるアルカリとしては、特に限定はされないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水素化ナトリウム、水素化リチウム、水素化カルシウム、水素化アルミニウムリチウムのような無機塩基、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ピペリジン、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、ジアミノオクタン、トリエタノールアミンのような有機塩基等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
置換反応における反応温度は、特に限定されないが、−10〜10℃程度であるのが好ましく、0〜5℃程度であるのが、より好ましい。反応温度が低すぎると、置換反応が十分に進行しない場合があり、一方、反応温度が高すぎると、第三ホスフィンおよびジアゾニウム塩の種類等によっては、これらに分解が生じる場合がある。
【0072】
また、置換反応における反応時間も、第三ホスフィンおよびジアゾニウム塩の種類等によって適宜設定され、特に限定されないが、20〜120分程度であるのが好ましく、40〜80分程度であるのが、より好ましい。反応時間が短すぎると、置換反応が十分に進行しない場合があり、一方、反応時間を、前記上限値を超えて長くしても、それ以上の収率の増大が期待できない。
【0073】
工程[2]
次に、この第四ホスホニウム塩からの脱RXの反応、または、一旦、アルコキシ基を、一般的な脱保護方法により、ヒドロキシル基に変換した後、水酸化ナトリウム等の塩基による脱HXの反応により、ホスホニウム分子内塩を得る。
【0074】
なお、本発明の硬化促進剤の製造方法、すなわち、第三ホスフィンとジアゾニウム塩が有するジアゾニウム基との置換反応による、前記一般式(1)および一般式(2)で表される硬化促進剤の製造方法では、ジアゾ化の条件やジアゾ化試薬の種類、保護機の使用の有無、保護機の種類や脱保護方法等は、適宜選択され得るものであり、何ら限定されるものではない。
【0075】
ここで、一般的なホスホニウム分子内塩としては、第三ホスフィンとキノン類との付加反応で得られる化合物が知られている。最も代表的なホスホニウム分子内塩としては、第三ホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物(前記式(100)の化合物)が挙げられる。
【0076】
このホスホニウム分子内塩は、オキシアニオンのパラ位に水酸基を有するのが特徴であり、オキシアニオンのメタ位に水酸基を有する本発明におけるホスホニウム分子内塩(本発明の硬化促進剤)とは決定的に構造が異なる。
【0077】
この構造上の特徴は、第三ホスフィンとキノン類(「キノンとは、芳香族炭化水素のベンゼン環に結合する水素2原子が酸素2原子で置換された形の化合物」、出典:共立出版(株)化学大辞典)との付加反応物であるホスホニウム分子内塩に共通した物である。すなわち、原料キノンが有する2つのカルボニル基は、それぞれ、ホスホニウム分子内塩が有するオキシアニオンと水酸基に転化する。ここで原料となるキノン類はカルボニル基がパラ位に存在するものとオルソ位に存在するものの2種類しか存在しない。
【0078】
したがって、本発明におけるオキシアニオンのメタ位に水酸基を有するホスホニウム分子内塩は、第三ホスフィンとキノン類との付加反応から得ることは不可能である。
【0079】
[無機充填材(D)]
無機充填材(D)は、得られる半導体装置の強度の補強を目的として、エポキシ樹脂組成物中に配合(混合)される物であり、その種類については、特に制限はなく、一般に封止材料に用いられているものを使用することができる。
【0080】
この無機充填材(D)の具体例としては、例えば、溶融破砕シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、2次凝集シリカ、アルミナ、チタンホワイト、水酸化アルミニウム、タルク、クレー、ガラス繊維等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、無機充填材(D)としては、特に、溶融シリカであるのが好ましい。溶融シリカは、本発明の硬化促進剤との反応性に乏しいので、後述するようにエポキシ樹脂組成物中に多量に配合(混合)した場合でも、エポキシ樹脂組成物の硬化反応が阻害されるのを防止することができる。また、無機充填材(D)として溶融シリカを用いることにより、得られる半導体装置内の補強効果が向上する。
【0081】
また、無機充填材(D)の形状としては、例えば、粒状、塊状、鱗片状等のいかなるものであってもよいが、粒状(特に、球状)であるのが好ましい。
【0082】
この場合、無機充填材(D)の平均粒径は、1〜100μm程度であるのが好ましく、5〜35μm程度であるのがより好ましい。また、この場合、粒度分布は、広いものであるのが好ましい。これにより、無機充填材(D)の充填量(使用量)を多くすることができ、得られる半導体装置の補強効果がより向上する。
【0083】
この無機充填材(D)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、前記化合物(A)と前記化合物(B)との合計量100重量部あたり、200〜2400重量部程度であるのが好ましく、400〜1400重量部程度であるのが、より好ましい。無機充填材(D)の含有量が、前記下限値未満の場合、無機充填材(D)による補強効果が充分に発現しないおそれがあり、一方、無機充填材(D)の含有量が、前記上限値を超えた場合、エポキシ樹脂組成物の流動性が低下し、エポキシ樹脂組成物の成形時、例えば、半導体装置の製造時等において、充填不良等が生じるおそれがある。
【0084】
なお、無機充填材(D)の含有量(配合量)が、前記化合物(A)と前記化合物(B)との合計量100重量部あたり、400〜1400重量部であれば、エポキシ樹脂組成物の硬化物の吸湿率が低くなり、半田クラックの発生を防止することができる。また、かかるエポキシ樹脂組成物は、加熱溶融時の流動性も良好であるため、半導体装置内部の金線変形を引き起こすことが好適に防止される。
【0085】
また、無機充填材(D)の含有量(配合量)は、前記化合物(A)、前記化合物(B)や無機充填材(D)自体の比重を、それぞれ考慮し、重量部を体積%に換算して取り扱うようにしてもよい。
【0086】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物中には、前記(A)〜(D)の成分の他に、必要に応じて、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のカップリング剤、カーボンブラック等の着色剤、臭素化エポキシ樹脂、酸化アンチモン、リン化合物等の難燃剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力成分、天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸もしくはその金属塩類、パラフィン等の離型剤、酸化防止剤等の各種添加剤を配合(混合)するようにしてもよい。
【0087】
また、本発明において、前記硬化促進剤(C)の特性を損なわない範囲で、エポキシ樹脂組成物中には、例えば、トリフェニルホスフィン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン、2−メチルイミダゾール等の、他の公知の触媒を配合(混合)するようにしても、何ら問題はない。
【0088】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記(A)〜(D)の成分、および、必要応じて、その他の添加剤等を、ミキサーを用いて常温混合し、熱ロール、加熱ニーダー等を用いて、加熱混練し、冷却、粉砕することにより得られる。
【0089】
得られたエポキシ樹脂組成物をモールド樹脂として用いて、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の成形方法で硬化成形することにより、半導体素子等の電子部品を封止する。これにより、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物により電子部品を封止してなる半導体装置が得られる。
【0090】
本発明の一般式(1)、および一般式(2)で表される硬化促進剤は、前述の特定のエポキシ樹脂組成物のみならず、ホスフィンまたはホスホニウム塩が有効である熱硬化性樹脂に対しては、常に硬化促進剤として有効である。熱硬化性樹脂としては、エポキシ化合物、マレイミド化合物、シアネート化合物、イソシアネート化合物、アクリレート化合物、並びにアルケニル及びアルキニル化合物等が挙げられる。
【0091】
本発明における半導体装置は、耐半田クラック性ならびに耐湿信頼性に優れる。その理由は、本発明におけるホスホニウム分子内塩の半田条件における安定性に関係すると考えられる。第三ホスフィンとキノン類の付加物を硬化促進剤として用いると、高温にさらされた際、一定の割合で付加反応の逆反応が生じ、第三ホスフィンとキノン類への分解が生じる。この第三ホスフィンおよびキノン類、あるいはこれらが硬化物中の他の成分と反応したものが揮発分となり、クラックを誘起する可能性がある。これに対し、本発明におけるホスホニウム分子内塩は、付加反応から生成するものではないため、上記のような逆反応が生じることはなく、分解には、より高いエネルギーが必要となる。従って、本発明における半導体装置は、第三ホスフィンとキノン類の付加反応物を硬化促進剤として用いたエポキシ樹脂組成物の硬化物にて封止された半導体装置と比較して、耐半田クラック性ならびに耐湿信頼性に優れる。
【0092】
【実施例】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0093】
まず、硬化促進剤として使用する化合物C1〜C5を用意した。
【0094】
[硬化促進剤の合成]
各化合物C1〜C5は、それぞれ、以下のようにして合成した。
【0095】
(化合物C1の合成)
冷却管および撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に2,4−ジメトキシアニリン15.3g(0.100mol)と、予め濃塩酸(37%)25mLを200mLの純水に溶解した塩酸水溶液とを供給し、攪拌下で溶解した。
【0096】
その後、セパラブルフラスコを氷冷して、内温を0〜5℃に保ちながら、亜硝酸ナトリウム7.2g(0.104mol)の水溶液20mLを、前記溶液にゆっくりと滴下した。
【0097】
次に、セパラブルフラスコ内に、トリフェニルホスフィン20.0g(0.076mol)の酢酸エチル溶液150mLを滴下し、20分攪拌した。
【0098】
その後、セパラブルフラスコ内に、水酸化ナトリウム8.0g(0.200mol)の水溶液20mLをゆっくり滴下し、約1時間激しく攪拌した。
【0099】
次に、窒素の発泡がおさまった後に、pH3以下になるまで希塩酸を加え、ヨウ化ナトリウム30g(0.200mol)を添加して、生成した沈殿を濾過、乾燥し、2−メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムヨーダイドの赤褐色結晶29.7gを得た。
【0100】
次に、冷却管および撹拌装置付きの500mLのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、前記2−メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムヨーダイド29.7g(0.060mol)、ピリジン塩酸塩88.7g(0.769mol)、無水酢酸12.0g(0.118mol)とを供給し、還流・攪拌下200℃で5時間加熱した。
【0101】
反応終了後、反応物を室温まで冷却し、セパラブルフラスコ内へヨウ化ナトリウム3.3g(0.022mol)の水溶液250mLを投入した。析出した固形物を濾過・乾燥し、2−ヒドロキシフェニルトリフェニルホスホニウムヨーダイドの褐色固形物24.1gを得た。
【0102】
次に、冷却管および撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量500mL)に、前記2−ヒドロキシフェニルトリフェニルホスホニウムヨーダイド24.1g(0.050mol)と、メタノール100mLとを供給し、攪拌下で溶解し、10%の炭酸水素ナトリウム水溶液125mLを、撹拌下ゆっくり攪拌した。
【0103】
その後、炭酸ガスの発泡がおさまったら、約70℃で2分間程度加温し、冷却後、析出した結晶を濾過・乾燥し、黄褐色の結晶15.9gを得た。
【0104】
この化合物をC1とする。化合物C1を、1H−NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、式(10)で表される目的のホスホニウム分子内塩であることが確認された。得られた化合物C1の収率は、59%であった。
【0105】
【化14】
【0106】
(化合物C2の合成)
2,4−ジメトキシアニリンに代わり、2,6−ジメトキシアニリン15.3g(0.100mol)を用いた以外は、前記化合物C1の合成と同じ手順で合成を行い、最終的に褐色の結晶12.0gを得た。
【0107】
この化合物をC2とした。化合物C2を、1H−NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、下記式(11)で表される目的のホスホニウム分子内塩であることが確認された。得られた化合物C2の収率は、45%であった。
【0108】
【化15】
【0109】
(化合物C3の合成)
2,4−ジメトキシアニリンに代わり、1,4−ジメトキシアニリン15.7g(0.100mol)を用いた以外は、前記化合物C1の合成と同じ手順で合成を行い、最終的に褐色の結晶17.0gを得た。
【0110】
この化合物をC3とする。化合物C3を、1H−NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、下記式(12)で表される目的のホスホニウム分子内塩であることが確認された。得られた化合物C3の収率は、55%であった。
【0111】
【化16】
【0112】
(化合物C4の合成)
2,4−ジメトキシアニリンに代わり、2,4,6−トリメトキシアニリン18.2g(0.100mol)を用いた以外は、前記化合物C1の合成と同じ手順で合成を行い、最終的に褐色の結晶13.5gを得た。
【0113】
この化合物をC4とした。化合物C4を、1H−NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、下記式(13)で表される目的のホスホニウム分子内塩であることが確認された。得られた化合物C4の収率は、39%であった。
【0114】
【化17】
【0115】
(化合物C5の合成)
2,4−ジメトキシアニリンに代わり、3,5,6−トリメトキシアニリン18.2g(0.100mol)を用いた以外は、前記化合物C1の合成と同じ手順で合成を行い、最終的に褐色の結晶14.1gを得た。
【0116】
この化合物をC5とした。化合物C5を、1H−NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、下記式(14)で表される目的のホスホニウム分子内塩であることが確認された。得られた化合物C5の収率は、48%であった。
【0117】
【化18】
【0118】
次いで、この化合物を用いエポキシ樹脂組成物を調製し、その特性評価のため、スパイラルフロー、硬化トルク、フロー残存率を測定した。また、このエポキシ樹脂組成物の硬化物にて封止された半導体装置の耐半田クラック性、耐湿信頼性試験を行った。各特性の測定方法および試験方法は、下記の通りとした。
【0119】
[評価方法]
(1)スパイラルフロー
EMMI−I−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用い、金型温度175℃、注入圧力6.8MPa、硬化時間2分で測定した。スパイラルフローは、流動性のパラメータであり、数値が大きい方が、流動性が良好である。
【0120】
(2)硬化トルク
キュラストメーター(オリエンテック(株)製、JSRキュラストメーターIVPS型)を用い、175℃、45秒後のトルクを測定した。この値の大きい方が、硬化性は良好である。
【0121】
(3)フロー残存率
得られた樹脂組成物を、30℃の雰囲気で1週間保存した後、スパイラルフローを測定し、調整直後のスパイラルフローに対する百分率(%)を求めた。この値が大きいほど、保存性が、よいことを示す。
【0122】
(4)耐半田クラック性
100ピンTQFP(Thin Quad Flat Package)(パッケージサイズは14×14mm、厚み1.4mm、シリコンチップサイズは8.0×8.0mm、リードフレームは42アロイ製)を、トランスファー成形機により、金型温度175℃、注入圧力7.4MPa、硬化時間2分の成形条件で、成形し、175℃、8時間で、後硬化させた。得られた半導体パッケージを、85℃、相対湿度85%の環境下で、168時間放置し、その後、260℃の半田槽に10秒間浸漬した。顕微鏡で外部クラックを観察し、クラック発生率[(クラック発生パッケージ数)/(全パッケージ数)×100]を%で表示した。又、チップと樹脂組成物の硬化物との剥離面積の割合を、超音波探傷装置を用いて測定し、剥離率[(剥離面積)/(チップ面積)×100]として、5個のパッケージの平均値を求め、%で表示した。クラック数、剥離率が少ないほど、耐半田クラック性は良好である。
【0123】
(5)耐湿信頼性
トランスファー成形機により、金型温度175℃、圧力6.8MPa、硬化時間2分の成形条件で、16ピンDIP(Dual Inline Package)を成形し、この成形物を、175℃8時間で、後硬化した後、125℃、相対湿度100%の水蒸気中で、20Vの電圧を16pDIPに印加し、断線不良を調べた。15個のパッケージの内、8個以上に不良が出るまでの時間を、不良時間とした。単位は時間。なお、測定時間は、最長で500時間とし、その時点で不良パッケージ数が8個未満であったものは、不良時間を500時間以上と示した。不良時間が長いほど、耐湿信頼性に優れる。
【0124】
(実施例1)
ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製YX4000HK、融点105℃、エポキシ当量193、150℃のICI溶融粘度0.15poise)を52重量部、フェノールアラルキル樹脂(三井化学(株)製XLC−LL、軟化点77℃、水酸基当量172、150℃のICI溶融粘度3.6poise)を48重量部、硬化促進剤として化合物C1を1.77重量部、さらに溶融球状シリカ(平均粒径15μm)を730重量部、カーボンブラックを2重量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂を2重量部、カルナバワックスを2重量部を、まず、室温で混合し、ついで、熱ロールを用いて、95℃で8分間混練し、冷却粉砕して、熱硬化性樹脂組成物を得た。得られた組成物を、各特性の評価に供した。評価結果は表1に示した通りであった。
【0125】
(実施例2)
ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製NC−3000P、軟化点60℃、エポキシ当量272、150℃のICI溶融粘度1.3poise)を57重量部、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(明和化成(株)製MEH−7851ss、軟化点68℃、水酸基当量199、150℃のICI溶融粘度0.9poise)を43重量部、硬化促進剤として化合物C1を1.77重量部のほか、さらに、溶融球状シリカを650重量部、カーボンブラックを2重量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂を2重量部、カルナバワックスを2重量部を、まず、室温で混合し、ついで、熱ロールを用いて、105℃で8分間混練し、冷却粉砕して、熱硬化性樹脂組成物を得た。得られた組成物を、各特性の評価に供した。評価結果は表1に示した通りであった。
【0126】
【表1】
【0127】
上記で用いたビフェニル型エポキシ樹脂を式(15)に、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂を式(16)に、フェノールアラルキル樹脂を式(17)に、ビフェニルアラルキル樹脂を式(18)に示す。(ここでnは1〜5である。)
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【0128】
(実施例3〜10、比較例1〜4)
実施例3〜10および比較例1〜4についても、表1に示した配合処方に従い、実施例1又は2と同様にして、エポキシ樹脂組成物を調製し評価した。比較例1、2では、硬化促進剤として、トリフェニルホスフィンとp−ベンゾキノンの付加反応物を、比較例3、4ではトリフェニルホスフィンを用いた。結果をまとめて表1に示す。
【0129】
比較例1、2で用いた、トリフェニルホスフィンとp−ベンゾキノンの付加反応物は、次のようにして合成した。トリフェニルホスフィン26.2g(0.100mol)を500mLのビーカー中で、75mLのアセトンに室温で溶解させた。そこへ、p−ベンゾキノン10.8g(0.100mol)をアセトン45mLに溶解した溶液を、撹拌しながらゆっくり滴下した。滴下が進行すると、しだいに析出が現われた。滴下後、約1時間撹拌を続けたのち、30分ほど静置した。析出した結晶を濾過・乾燥し、緑褐色粉末27.75gを得た。
この化合物を1H−NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、式(19)で表される目的のトリフェニルホスフィンとp−ベンゾキノン付加反応物であることが確認された。合成の収率は75%であった。
【0130】
【化23】
【0131】
実施例1〜10の本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化性、保存性、流動性が、きわめて良好であり、さらに、この硬化物で封止された半導体装置は、耐半田クラック性、耐湿信頼性が良好であることがわかる。比較例1〜4では、硬化性、保存性、流動性、耐半田クラック性、信頼性を同時に満たすことができなかった。
【0132】
(実施例11〜15および比較例5)
次に、ジアミノジフェニルメタンのビスマレイミド樹脂(ケイ・アイ化成製BMI−H)100重量部に、硬化促進剤として化合物C1を1.77重量部配合し、これを均一に混合したものを用いて、175℃におけるゲル化時間を測定した。その結果、ゲル化時間は38秒であった。
【0133】
化合物C2、C3、C4、C5およびトリフェニルホスフィンについても、同様の評価を行ったところ、化合物C1同様に化合物C2〜C5は、ビスマレイミド樹脂に対し硬化促進剤として有効であった。結果をまとめて表2に示す。
【0134】
【表2】
【0135】
【発明の効果】
本発明によれば、
▲1▼各種硬化性樹脂組成物の硬化反応を促進する、極めて有用な硬化促進剤を提供できる。
▲2▼かかる硬化促進剤を硬化性樹脂組成物、特にエポキシ樹脂組成物に混合することにより、硬化性、保存性および流動性に優れた硬化性樹脂組成物を提供できる。
▲3▼かかるエポキシ樹脂組成物の硬化物により半導体素子を封止することにより、高温に曝された場合であっても、クラックや剥離等の欠陥が発生し難い半導体装置を提供できる。
Claims (14)
- 1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物と、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物と、請求項1記載の硬化促進剤とを含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
- 前記aは、1〜10である請求項3に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物は、下記一般式(5)で表されるフェノール樹脂および下記一般式(6)で表されるフェノール樹脂の少なくとも一方を主成分とする請求項2ないし4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記bは、1〜10である請求項5に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記cは、1〜10である請求項5または請求項6に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記硬化促進剤の含有量は、0.01〜10重量%である請求項2ないし7のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 無機充填材を含む請求項2ないし8のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記無機充填材は、溶融シリカである請求項9に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記無機充填材は、粒状をなしている請求項9または10に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記無機充填材の平均粒径は、1〜100μmである請求項11に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記無機充填材の含有量は、前記1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物と、前記1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物との合計量100重量部あたり、200〜2400重量部である請求項9ないし12のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 請求項9ないし13のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物により電子部品を封止してなることを特徴とする半導体装置。
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