JP4152161B2 - エポキシ樹脂用硬化剤組成物、該硬化剤組成物を用いたエポキシ樹脂組成物および半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エポキシ樹脂用硬化剤組成物、エポキシ樹脂組成物および半導体装置に関するものである。更に詳しくは、エポキシ樹脂組成物に有用な硬化剤組成物、かかる硬化剤組成物を含み、硬化性、保存性、流動性が良好で、電気・電子材料分野に好適に使用されるエポキシ樹脂組成物、および、耐半田クラック性、耐湿信頼性に優れた半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
IC、LSI等の半導体素子を封止して半導体装置を得る方法としては、エポキシ樹脂組成物のトランスファー成形が低コスト、大量生産に適しているという点で広く用いられている。また、エポキシ樹脂や、硬化剤であるフェノール樹脂の改良により、半導体装置の特性、信頼性の向上が図られている。
【0003】
しかしながら、昨今の電子機器の小型化、軽量化、高性能化の市場動向において、半導体の高集積化も年々進んでおり、また、半導体装置の表面実装化も促進されている。これに伴い、半導体素子の封止に用いられるエポキシ樹脂組成物への要求は、益々厳しいものとなってきている。このため、従来からのエポキシ樹脂組成物では、解決できない(対応できない)問題も生じている。
【0004】
近年、半導体素子の封止に用いられる材料には、生産効率の向上を目的とした速硬化性の向上と、物流・保管時の取扱い性の向上を目的とした保存性の向上が求められるようになってきている。
【0005】
電気・電子材料分野向けのエポキシ樹脂組成物には、硬化時における樹脂の硬化反応を促進する目的で、ホスホニウム分子化合物などを硬化促進剤として、一般的に添加している(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
ところで、かかる硬化促進剤は、硬化促進効果を示す温度領域が、比較的低温にまで及ぶ。このため、例えば、硬化前のエポキシ樹脂組成物と他の成分とを混合する際にも、系内に発生する熱や外部から加えられる熱により、エポキシ樹脂組成物の硬化反応は一部進行する。また、混合終了後、このエポキシ樹脂組成物を常温で保管するにあたって、反応はさらに進行する。
【0007】
この部分的な硬化反応の進行は、エポキシ樹脂組成物が液体の場合には、粘度の上昇や流動性の低下をもたらし、また、エポキシ樹脂組成物が固体の場合には、粘性を発現させる。このような状態の変化は、エポキシ樹脂組成物内に厳密な意味で均一に生じるわけではない。このため、エポキシ樹脂組成物の各部分の硬化性には、ばらつきが生じる。
【0008】
これが原因となり、更に、高温で硬化反応を進行させ、エポキシ樹脂組成物を成形(その他賦形という概念も含んで、以下「成形」と記す)する際に、流動性低下による成形上の障害や、成形品の機械的、電気的あるいは化学的特性の低下をもたらす。
【0009】
したがって、このようにエポキシ樹脂組成物の保存性を低下させる原因となる硬化促進剤を用いる際には、諸成分混合時の厳密な品質管理、低温での保管や運搬、更に成形条件の厳密な管理が必須であり、取扱いが非常に煩雑である。
【0010】
この問題を解決する硬化促進剤として、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレートと、一分子中にフェノール性水酸基を2個以上含有するフェノール樹脂を、フェノール樹脂の軟化点以上の温度で加熱混合することで、良好な保存安定性と流動性、硬化性を両立する技術が公開されている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレートをフェノール樹脂の軟化点以上の温度で加熱混合した硬化剤を用いても、近年求められる速硬化性、保存性、流動性に対応できず、決定的な技術であるとはいえなかった。
【0011】
【特許文献1】
特開2001−98053号公報(第6−9頁)
【特許文献2】
特許第2792395号公報(第4−6頁)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、エポキシ樹脂組成物に特に優れた保存性を示し良好な硬化性、流動性を与えることができる硬化剤組成物、該特性が良好なエポキシ樹脂組成物、および、耐半田クラック性や耐湿信頼性に優れる半導体装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(6)の本発明により達成される。
【0014】
(1)1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(A)と、下記一般式(1)で表される硬化促進剤(B)とからなり、前記成分(A)100重量部に対し、前記成分(B)2〜50重量部を、前記成分(A)の軟化点以上の温度で加熱混合して得られるエポキシ樹脂用硬化剤組成物。
【化7】
[式中、R1,R2およびR3は、それぞれ、置換もしくは無置換の1価の芳香族基、または、置換もしくは無置換の1価のアルキル基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。Arは、水酸基以外の置換基により置換もしくは無置換の2価の芳香族基を表す。Aは、芳香環または複素環を含むp価の有機基を表し、pは2〜8の整数、qは0〜2の値を表す。]
【0015】
(2) 前記硬化促進剤(B)が、下記一般式(2)で表されるものである、第(1)項記載のエポキシ樹脂用硬化剤組成物。
【化8】
[式中、R4,R5およびR6は、それぞれ、水素原子、メチル基、メトキシ基および水酸基から選択される1種を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。Aは、芳香環または複素環を含むp価の有機基を表し、pは2〜8の整数、qは0〜2の値を表す。]
【0016】
(3) 前記硬化促進剤(B)が、下記一般式(3)または一般式(4)で表されるものである、第(1)項記載のエポキシ樹脂用硬化剤組成物。
【化9】
【化10】
[式中、R7,R8およびR9は、それぞれ、水素原子、メチル基、メトキシ基および水酸基から選択される1種を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。R10,R11,R12およびR13は水素原子またはハロゲン原子または炭素数1〜6で構成される1価の有機基を表す。Xは単結合、またはエーテル基、スルホン基、スルフィド基、カルボニル基から選ばれる2価置換基、または炭素原子数1〜13で構成される2価の有機基を表す。qは、0〜2の値を表す。]
【0017】
(4) 前記1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(A)は、下記一般式(5)で表されるフェノール樹脂および下記一般式(6)で表されるフェノール樹脂の少なくとも一方を主成分とする、第(1)項ないし第(3)項のいずれかに記載のエポキシ樹脂用硬化剤組成物。
【化11】
[式中、R14〜R17は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基およびハロゲン原子から選択される1種を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、aは、1以上の整数である。]
【化12】
[式中、R18〜R25は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基およびハロゲン原子から選択される1種を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、bは、1以上の整数である。]
【0018】
(5) 1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物と、第(1)項ないし第(4)項のいずれかに記載のエポキシ樹脂用硬化剤組成物と、必要に応じさらに1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物とを含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【0019】
(6) 第(5)項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物により電子部品を封止してなることを特徴とする半導体装置。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明者は、前記問題点を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、特定構造のホスホニウム化合物からなる硬化促進剤が、1分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物と、特定の比率で、かつ、前記フェノール性水酸基を有する化合物の軟化点以上の温度で溶融混合することで、より優れた保存安定性、流動性、および硬化性を発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0021】
以下、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物、エポキシ樹脂組成物および半導体装置の好適実施形態について説明する。
【0022】
本実施形態のエポキシ樹脂用硬化剤組成物は、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(A)と、一般式(1)で表される硬化促進剤(B)とを含むものである。かかる硬化剤組成物では、エポキシ樹脂組成物に用いた場合、良好な硬化性、保存性、および流動性を発揮する。
【0023】
以下、各成分について順次説明する。
本発明で用いられる、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(A)は、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物であればその種類に制限はなく、従来公知の化合物を用いることができる。
この化合物(A)としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノール樹脂、トリスフェノール樹脂、キシリレン変性ノボラック樹脂、テルペン変性ノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、特に、一般式(5)で表されるフェノールアラルキル樹脂および一般式(6)で表されるビフェニルアラルキル樹脂のいずれか一方または双方を主成分とするものを用いるのが好ましい。これにより、エポキシ樹脂組成物に使用した際の、成形時の流動性が向上し、特に、半導体装置に用いた場合、得られた半導体装置の耐半田クラック性や耐湿信頼性が、より向上する。
【0024】
一般式(5)および一般式(6)における置換基R14〜R17およびR18〜R25の具体例としては、それぞれ、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、塩素原子、臭素原子等が挙げられるが、これらの中でも、特に、水素原子またはメチル基であるのが好ましい。かかるフェノール樹脂は、それ自体の溶融粘度が低いため、エポキシ樹脂組成物中に含有しても、エポキシ樹脂組成物の溶融粘度を低く保持することができ、その結果、例えば半導体装置の製造時等に、その取り扱いが容易となる。また、エポキシ樹脂組成物の硬化物(得られる半導体装置)の吸水性(吸湿性)が低減して耐湿信頼性がより向上するとともに、耐半田クラック性もより向上する。
また、前記一般式(5)中におけるa、および、前記一般式(6)中におけるbは、それぞれ、1以上の整数であれば、特に限定されず、1〜10程度であるのが好ましく、1〜5程度であるのがより好ましい。aおよびbを、それぞれ、前記範囲とすることにより、エポキシ樹脂組成物に添加した際に、好適な流動性を得ることができる。
【0025】
本発明で用いられる硬化促進剤(B)は、エポキシ樹脂組成物の硬化反応を促進し得る作用(機能)を有し、前記一般式(1)で表されるものであり、前記一般式(2)で表されるものであるのが好ましく、さらに好ましくは前記一般式(3)または前記一般式(4)で表されるものである。
ここで、前記一般式(1)において、リン原子に結合する置換基R1,R2およびR3の具体例としては、例えば、ベンジル基、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基、シクロヘキシル基、ナフチル基、p−ターシャリーブチルフェニル基、2,6−ジメトキシフェニル基、フェニル基、メチルフェニル基の各種異性体、メトキシフェニル基の各種異性体、ヒドロキシフェニル基の各種異性体等が挙げられるが、これらの中でも、ナフチル基、p−ターシャリーブチルフェニル基、2,6−ジメトキシフェニル基、フェニル基、メチルフェニル基の各種異性体、メトキシフェニル基の各種異性体、ヒドロキシフェニル基の各種異性体等の置換もしくは無置換の1価の芳香族基であるのが好ましく、特にフェニル基、メチルフェニル基の各種異性体、メトキシフェニル基の各種異性体、ヒドロキシフェニル基の各種異性体等であるのが好ましい。
また、前記一般式(1)において、Arは、水酸基以外の置換基により置換もしくは無置換の2価の芳香族基を表す。
このArの具体例としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、または、これらにハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜12のアルキル基やアルコキシ基等の水酸基以外の置換基により置換された芳香族基が挙げられる。
【0026】
また、前記一般式(1)ないし一般式(4)において、ホスホニウム分子化合物を形成するもう一方のアニオン成分は、フェノール化合物からなり、フェノール化合物としては、ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)、ビスフェノールF(4,4−メチレンビスフェノール、2,4−メチレンビスフェノール、2,2−メチレビスフェノール)、ビスフェノールS(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン)、ビスフェノールE(4,4−エチリデンビスフェノール)、ビスフェノールフルオレン(4,4−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール)4,4−メチリデンビス(2,6−ジメチルフェノール)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタノンなどのビスフェノール類、4,4−ビフェノール、2,2−ビフェノール、3,3,5,5−テトラメチルビフェノールなどのビフェノール類、ヒドロキノン、レゾシノール、カテコール、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,1−ビ−2−ナフトール、1,4−ジヒドロキシアントラキノンなどが例示されるが硬化物物性の点で、pが2である2価のフェノール化合物でありqは0.5〜2であることが好ましく、ビスフェノールA、ビスフェノールF(4,4−メチレンビスフェノール、2,4−メチレンビスフェノール、2,2−メチレビスフェノールや、本州化学製ビスフェノールF−Dのようなこれらの異性体混合物を含む)、ビスフェノールS、4,4−ビフェノール、2,6−ジヒドロキシナフタレンが、より好ましい。
総じて、前記一般式(1)において、置換基R1,R2およびR3ならびにArの組み合わせとしては、置換基R1,R2およびR3が、それぞれフェニル基であり、Arがフェニレン基であるものが好適である。このものは、熱安定性、硬化促進能に特に優れ、製造コストが安価である。
【0027】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物に用いる、硬化促進剤成分は、公知の手法で合成することができる。ここで、本発明の硬化促進剤であるホスホニウム分子化合物の製造方法の一例について、下記化13を参照しつつ説明する。
【0028】
【化13】
[式中、Rは、水素原子、または、適宜選択される残基を表す。]
【0029】
工程[1]
まず、例えば、アルコキシ置換芳香族アミンを、酸性条件下で亜硝酸ナトリウム等のジアゾ化試薬と反応させてジアゾニウム塩化する。用いるアルコキシ置換芳香族アミンとしては、o−メトキシアニリン、m−メトキシアニリン、p−メトキシアニリン、2−メトキシ−5−メチルアニリなどが挙げられる。
次いで、このジアゾニウム塩と第三ホスフィン類とを接触させる。これにより、N2を脱離させるとともに、第三ホスフィンのリン原子にアルコキシ置換芳香族基を導入して、第四ホスホニウム塩を生成させる。すなわち、本工程[1]において、第三ホスフィンとジアゾニウム塩が有するジアゾニウム基との置換が起こる。用いる第三ホスフィン類としては、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリ(4−メトキシフェニル)ホスフィンなどが挙げられる。
【0030】
この置換反応は、好ましくはアルカリ存在下で行われる。これにより、置換反応を、より効率よく進行させることができる。用いるアルカリとしては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水素化ナトリウム、水素化リチウム、水素化カルシウム、水素化アルミニウムリチウムのような無機塩基、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ピペリジン、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、ジアミノオクタン、トリエタノールアミンのような有機塩基等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
置換反応における反応温度は、特に限定されないが、−10〜10℃程度であるのが好ましく、0〜5℃程度であるのが、より好ましい。反応温度が低すぎると、置換反応が十分に進行しない場合があり、一方、反応温度が高すぎると、第三ホスフィンおよびジアゾニウム塩の種類等によっては、これらに分解が生じる場合がある。
また、置換反応における反応時間も、第三ホスフィンおよびジアゾニウム塩の種類等によって適宜設定され、特に限定されないが、20〜120分程度であるのが好ましく、40〜80分程度であるのがより好ましい。反応時間が短すぎると、置換反応が十分に進行しない場合があり、一方、反応時間を、前記上限値を超えて長くしても、それ以上の収率の増大が期待できない。
【0032】
工程[2]、工程[3]
次に、アルコキシ基を一般的な脱保護方法により、ヒドロキシル基に変換[2]した後、フェノール化合物を加え、水酸化ナトリウム等の塩基による脱HXの反応[3]により、ホスホニウム分子化合物を得る。
なお、本発明の硬化促進剤の製造方法、すなわち、第三ホスフィンとジアゾニウム塩が有するジアゾニウム基との置換反応による、前記一般式(1)〜一般式(4)で表される硬化促進剤の製造方法では、ジアゾ化の条件やジアゾ化試薬の種類、保護基の使用の有無、保護基の種類や脱保護方法等は、適宜選択され得るものであり、何ら限定されるものではない。
【0033】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物に用いる硬化促進剤は、フェノール性水酸基を有する化合物を溶融させると、フェノール性水酸基の効果により、硬化促進剤が良好に硬化剤組成物中に分散すると考えられ、硬化促進剤をエポキシ樹脂組成物に直接投入した場合に比べ、樹脂組成物にした際の分散性に優れる。
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物への、前記硬化促進剤(B)の含有量(配合量)は、前記一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(A)100重量部に対し、2〜50重量部を添加することが好ましい。硬化促進剤の含有量が前記範囲を上回る場合、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物をエポキシ樹脂組成物に添加する際に、分散性が十分に発揮されなくなり、流動性や保存安定性を損なう場合がある。また、前記範囲を下回る場合、十分な硬化性を得るために必要な添加量が極めて多くなり、エポキシ樹脂組成物にした際の、エポキシ樹脂成分と硬化剤成分のバランスが悪くなり、硬化物の特性を低下させる場合がある。
【0034】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物の製法としては、前記各成分を、フェノール性水酸基を2個以上有する化合物(A)の軟化点以上の温度で、加熱混合することにより行われる。これにより、硬化促進剤成分を、十分に、硬化剤組成物中に均一分散させることができ、硬化性および保存安定性が好適に発揮される。フェノール性水酸基を2個以上有する化合物の、軟化点を測定する方法としては、具体的には、温度傾斜をつけた金属板上に、該化合物の粉末を散布し、1分後に、該化合物粉末を刷毛で払ったときに、金属板に溶融付着する点の、表面温度から測定されるコフラーベンチ法などの方法により、測定することができる。また、フェノール性水酸基を2個以上有する化合物として、複数の化合物を混合したものを使用する場合は、予め、これらの化合物を、均一に溶融混合した後に、前述のコフラーベンチ法などにより、軟化点を測定することができる。
【0035】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物の製法において、具体的に各成分を溶融混合する条件としては、フェノール性水酸基を2個以上有する化合物の軟化点より10〜150℃高い温度で、20〜200分間混合するのが良い。このような溶融混合には、従来公知の装置および手法を使用することができる。具体的には、各成分を混合した物を、加熱ニーダーや、加熱ロール等の器具を用い、溶融混合し、硬化剤組成物を得ることができる。
また、前記溶融混合の際に、各成分を添加する順番を、添加する化合物に応じて、適宜調整することは何ら問題無い。例えば、フェノール性水酸基を有する化合物を、初めに加熱溶融し、その後に、硬化促進剤成分を加えることができる。また、複数のフェノール性水酸基を有する化合物を利用する場合に、予め、そのうちの一成分を加熱溶融した後、その他の成分を加えることもできる。
【0036】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、1分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物と、前記本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物と、必要により、さらに、前記エポキシ樹脂用硬化剤組成物に用いた成分(A)とは別の1分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物とを用いることにより得られる。
【0037】
本発明に用いる1分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物としては、従来公知の化合物が利用できる。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂など、フェノール類やフェノール樹脂、ナフトール類などの水酸基にエピクロロヒドリンを反応させて製造するエポキシ樹脂、エポキシ化合物、または、その他、脂環式エポキシ樹脂のように、オレフィンを、過酸を用いて酸化させ、エポキシ化したエポキシ樹脂や、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
また、必要に応じて、さらに添加される1分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物としては、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物を得るために用いたものと同じ化合物でもよく、また、異なっていてもよい。この追加のフェノール性水酸基を有する化合物は、エポキシ樹脂組成物における、エポキシ基と、フェノール性水酸基の比を調整する目的で使用される。
【0039】
本発明のエポキシ樹脂組成物における、エポキシ基とフェノール性水酸基の配合比は、エポキシ基1モルに対し、硬化剤組成物、および、追加で用いたフェノール性水酸基を有する化合物のフェノール性水酸基の総量が0.5〜2モル程度となるように用いるのが好ましく、0.7〜1.5モル程度となるように用いるのが、より好ましい。これにより、エポキシ樹脂組成物の諸特性のバランスを好適なものに維持しつつ、諸特性がより向上する。
【0040】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物中には、前記成分の他に、必要に応じて、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のカップリング剤、カーボンブラック等の着色剤、臭素化エポキシ樹脂、酸化アンチモン、リン化合物等の難燃剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力成分、天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸またはその金属塩類、パラフィン等の離型剤、酸化防止剤等の各種添加剤を配合(混合)するようにしてもよい。
【0041】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記成分、および、必要に応じて、その他の添加剤等を、ミキサーを用いて、常温混合し、熱ロール、加熱ニーダー等を用いて加熱混練し、冷却、粉砕することにより得られる。
【0042】
得られたエポキシ樹脂組成物をモールド樹脂として用いて、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の成形方法で硬化成形することにより、半導体素子等の電子部品を封止する。これにより、本発明の半導体装置が得られる。
このようにして得られた本発明の半導体装置は、耐半田クラック性および耐湿信頼性が良好であり、特に樹脂組成物の保存性に優れ、硬化性、流動性は良好である。
【0043】
以上、本発明のエポキシ樹脂用硬化促進剤、硬化促進剤の製造方法、エポキシ樹脂組成物および半導体装置の好適実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0044】
【実施例】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0045】
まず、硬化促進剤として使用する化合物B1〜B7を用意した。
[硬化促進剤の合成]
各化合物B1〜B7は、それぞれ、以下のようにして合成した。
【0046】
(化合物B1の合成)
冷却管および撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、o−メトキシアニリン12.3g(0.100mol)と、予め、濃塩酸(37%)25mLを200mLの純水に溶解した塩酸水溶液とを供給し、攪拌下で溶解した。
その後、セパラブルフラスコを氷冷して、内温を0〜5℃に保ちながら、亜硝酸ナトリウム7.2g(0.104mol)の水溶液20mLを、前記溶液にゆっくりと滴下した。
次に、セパラブルフラスコ内に、トリフェニルホスフィン20.0g(0.076mol)の酢酸エチル溶液150mLを滴下し、20分攪拌した。
その後、セパラブルフラスコ内に、水酸化ナトリウム8.0g(0.200mol)の水溶液20mLをゆっくり滴下し、約1時間激しく攪拌した。
次に、窒素の発泡がおさまった後、pH3以下になるまで希塩酸を加え、ヨウ化ナトリウム30g(0.200mol)を添加して、生成した沈殿を濾過、乾燥し、2−メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムヨーダイドの赤褐色結晶29.7gを得た。
次に、冷却管および撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、前記2−メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムヨーダイド29.7g(0.060mol)と、ピリジン塩酸塩88.7g(0.769mol)と、無水酢酸12.0g(0.118mol)とを供給し、還流・攪拌下200℃で5時間加熱した。
反応終了後、反応物を室温まで冷却し、セパラブルフラスコ内へヨウ化ナトリウム3.3g(0.022mol)の水溶液250mLを投入した。析出した固形物を濾過、乾燥し、2−ヒドロキシフェニルトリフェニルホスホニウムヨーダイドの褐色固形物24.1gを得た。
次に、ビーカー(容量:500mL)に2−ヒドロキシフェニルトリフェニルホスホニウムヨーダイド24.1g(0.050mmol)とビスフェノールS(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン)12.5g(0.050mmol)と、メタノール180mLとを供給し、攪拌した。
その後、ビーカー内に水酸化ナトリウム2g(0.050mmol)のメタノール溶液200mLを滴下し、30分間攪拌した。
次に、反応物を純水2000mLに滴下し、析出した固形物を濾過、乾燥し、2−ヒドロキシフェニルトリフェニルホスホニウム−ビスフェノールS塩の褐色固形物10.2gを得た。
この化合物をB1とした。化合物B1を、1H−NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、下記式(7)で表される目的のホスホニウム化合物であることが確認された。得られた化合物B1の収率は、22%であった。
【0047】
【化14】
【0048】
(化合物B2の合成)
ビスフェノールS(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン)に代わり、2,6−ジヒドロキシナフタレン16.0g(0.100mmol)を用い、水酸化ナトリウムの添加量を4.0g(0.100mmol)とした以外は、前記化合物B1の合成と同じ手順で合成を行い、最終的に褐色の結晶21.4gを得た。
この化合物をB2とした。化合物B2を、1H−NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、下記式(8)で表される目的のホスホニウム化合物であることが確認された。得られた化合物B2の収率は、42%であった。
【0049】
【化15】
【0050】
(化合物B3の合成)
o−メトキシアニリンに代わり、p−メトキシアニリン12.3g(0.100mol)を用い、また、ビスフェノールS(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン)12.5g(0.050mmol)を18.8g(0.075mmol)とし、水酸化ナトリウムの添加量を3.0g(0.075mmol)とした以外は、前記化合物B1の合成と同じ手順で合成を行い、最終的に褐色の結晶12.2gを得た。
この化合物をB3とした。化合物B3を、1H−NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、下記式(9)で表される目的のホスホニウム化合物であることが確認された。得られた化合物B3の収率は、22%であった。
【0051】
【化16】
【0052】
(化合物B4の合成)
o−メトキシアニリンに代わり、2−メトキシ−5−メチルアニリン13.7g(0.100mol)を用い、また、トリフェニルホスフィンに代わり、トリ−p−トリルホスフィン23.1g(0.076mol)を用いた以外は、前記化合物B2の合成と同じ手順で合成を行い、最終的に淡黄白色の結晶28.1gを得た。
この化合物をB4とした。化合物B4を、1H−NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、下記式(10)で表される目的のホスホニウム化合物であることが確認された。得られた化合物B4の収率は、51%であった。
【0053】
【化17】
【0054】
(化合物B5の合成)
o−メトキシアニリンに代わり、2−メトキシ−5−メチルアニリン13.7g(0.100mol)を用い、トリフェニルホスフィンに代わり、トリ−p−トリルホスフィン23.1g(0.076mol)を用い、またビスフェノールS(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン)12.5g(0.050mmol)を25.0g(0.100mmol)とし、水酸化ナトリウムの添加量を4.0g(0.100mmol)とした以外は、前記化合物B1の合成と同じ手順で合成を行い、最終的に黄色結晶35.6gを得た。
この化合物をB5とした。化合物B5を、1H−NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、下記式(11)で表される目的のホスホニウム化合物であることが確認された。得られた化合物B5の収率は、51%であった。
【0055】
【化18】
【0056】
(化合物B6の合成)
トリフェニルホスフィンに代わり、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン26.8g(0.076mol)を用い、また、ビスフェノールS(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン)に代わり、ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)22.8g(0.100mmol)を用い、水酸化ナトリウムの添加量を4.0g(0.100mmol)にした以外は、前記化合物B1と同じ手順で合成を行い、最終的に、白色結晶11.9gを得た。
この化合物をB6とした。化合物B6を、1H−NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、下記式(12)で表される目的のホスホニウム化合物であることが確認された。得られた化合物B6の収率は、18%であった。
【0057】
【化19】
【0058】
(化合物B7の合成)
攪拌装置付きの1リットルセパラブルフラスコに、本州化学工業(株)製ビスフェノールF−D(ビスフェノールF異性体混合物)40.0g(0.2mol)、メタノール50mlを仕込み、室温で攪拌溶解し、さらに、攪拌しながら、水酸化ナトリウム4.0g(0.1mol)を、予め、50mlのメタノールで溶解した溶液を添加した。次いで、予め、テトラホスホニウムブロミド41.9g(0.1mol)を150mlのメタノールに溶解した溶液を加えた。しばらく攪拌を継続し、300mlのメタノールを追加した後、フラスコ内の溶液を大量の水に攪拌しながら滴下し、白色沈殿を得た。
この化合物をB7とした。化合物B7を、1H−NMR、マススペクトル、元素分析で分析した結果、下記式(13)で表される目的のホスホニウム化合物であることが確認された。得られた化合物B7の収率は、57%であった。
【0059】
【化20】
【0060】
[硬化剤の合成]
本発明の硬化剤1〜6、および比較用の硬化剤7は、以下のようにして合成した。
【0061】
(硬化剤1の合成)
1分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物として下記式(14)の化合物(明和化成製、商品名MEH−7851SS。軟化点68℃、水酸基当量199)を100重量部、硬化促進剤成分として、上記で得た化合物B1の10重量部を、温度計および冷却管付きの5Lセパラブルフラスコに入れ、120℃のオイルバス中、30分間加熱溶融混合し、得られた溶融混合物を冷却後、粉砕して、本発明の硬化剤組成物である硬化剤1を得た。
【0062】
【化21】
【0063】
(硬化剤2の合成)
1分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物として前記式(14)の化合物(明和化成製、商品名MEH−7851SS。軟化点68℃、水酸基当量199)を100重量部、硬化促進剤成分として、上記で得た化合物B2の10重量部を用い、130℃のオイルバス中、20分間加熱溶融混合した他は、硬化剤1を得た方法と同様にして、本発明の硬化剤組成物である硬化剤2を得た。
【0064】
(硬化剤3の合成)
1分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物として前記式(14)の化合物(明和化成製、商品名MEH−7851SS。軟化点68℃、水酸基当量199)を100重量部、硬化促進剤成分として、上記で得た化合物B3の10重量部を用い、125℃のオイルバス中、40分間加熱溶融混合した他は、硬化剤1を得た方法と同様にして、本発明の硬化剤組成物である硬化剤3を得た。
【0065】
(硬化剤4の合成)
1分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物として、下記式(15)の化合物(三井化学製、商品名XLC−LL。軟化点77℃、水酸基当量172)を100重量部、硬化促進剤成分として、上記で得た化合物B4の10重量部を、温度計および冷却管付きの5Lセパラブルフラスコに入れ、120℃のオイルバス中、30分間加熱溶融混合し、得られた溶融混合物を冷却後、粉砕して、本発明の硬化剤組成物である硬化剤4を得た。
【0066】
【化22】
【0067】
(硬化剤5の合成)
1分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物として、前記式(15)の化合物(三井化学製、商品名XLC−LL。軟化点77℃、水酸基当量172)を100重量部、硬化促進剤成分として、上記で得た化合物B5の10重量部を用い、110℃のオイルバス中、45分間加熱溶融混合した他は、硬化剤4を得た方法と同様にして、本発明の硬化剤組成物である硬化剤5を得た。
【0068】
(硬化剤6の合成)
1分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物として、前記式(15)の化合物(三井化学製、商品名XLC−LL。軟化点77℃、水酸基当量172)を100重量部、硬化促進剤成分として、上記で得た化合物B6の10重量部を用い、130℃のオイルバス中、30分間加熱溶融混合した他は、硬化剤4を得た方法と同様にして、本発明の硬化剤組成物である硬化剤6を得た。
【0069】
(硬化剤7の合成)
特許2792395号公報記載の手法により、1分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物として、前記式(14)の化合物(明和化成製、商品名MEH−7851SS。軟化点68℃、水酸基当量199)を100重量部、硬化促進剤成分として、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレー(以下TPP-Kと略す)10.0重量部を、温度計および冷却管付きの5Lセパラブルフラスコに入れ、150℃のオイルバス中、30分間加熱した後、60分間混合し、得られた溶融混合物を冷却後、粉砕して、比較用の硬化剤である硬化剤7を得た。
【0070】
[エポキシ樹脂組成物の調製および半導体装置の製造]
(実施例1〜6、比較例1〜3)
前記硬化剤1〜9、エポキシ樹脂、および必要に応じその他の硬化剤、その他の成分を、表1に記載の比率で、室温で混合し、さらに、熱ロールを用いて、95℃で8分間混練した後、冷却粉砕して、エポキシ樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を得た。
このエポキシ樹脂組成物をモールド樹脂として用い、100ピンTQFP(Thin Quad Flat Package)のパッケージ(半導体装置)を8個、および、16ピンDIP(Dual Inline Package)のパッケージ(半導体装置)を15個、それぞれ製造した。
100ピンTQFPは、金型温度175℃、注入圧力7.4MPa、硬化時間2分でトランスファーモールド成形し、175℃8時間で、後硬化させることにより製造した。
なお、この100ピンTQFPのパッケージサイズは、14×14mm、厚み1.4mm、シリコンチップ(半導体素子)サイズは、8.0×8.0mm、リードフレームは、42アロイ製とした。
また、16ピンDIPは、金型温度175℃、注入圧力6.8MPa、硬化時間2分でトランスファーモールド成形し、175℃8時間で、後硬化させることにより製造した。
なお、この16ピンDIPのパッケージサイズは、6.4×19.8mm、厚み3.5mm、シリコンチップ(半導体素子)サイズは、3.5×3.5mm、リードフレームは、42アロイ製とした。
【0071】
[特性評価]
各実施例および各比較例で得られたエポキシ樹脂組成物の特性評価▲1▼〜▲3▼、および、各実施例および各比較例で得られた半導体装置の特性評価▲4▼および▲5▼を、それぞれ、以下のようにして行った。
▲1▼:スパイラルフロー
EMMI−I−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用い、金型温度175℃、注入圧力6.8MPa、硬化時間2分で測定した。
このスパイラルフローは、流動性のパラメータであり、数値が大きい程、流動性が良好であることを示す。
▲2▼:硬化トルク
キュラストメーター(オリエンテック(株)製、JSRキュラストメーターIVPS型)を用い、175℃、45秒後のトルクを測定した。
この硬化トルクは、数値が大きい程、硬化性が良好であることを示す。
▲3▼:フロー残存率
得られたエポキシ樹脂組成物を、大気中40℃で1週間保存した後、前記▲1▼と同様にしてスパイラルフローを測定し、調製直後のスパイラルフローに対する百分率(%)を求めた。
このフロー残存率は、数値が大きい程、保存性が良好であることを示す。
▲4▼:耐半田クラック性
100ピンTQFPを85℃、相対湿度85%の環境下で168時間放置し、その後、260℃の半田槽に10秒間浸漬した。
その後、顕微鏡下に、外部クラックの発生の有無を観察し、クラック発生率=(クラックが発生したパッケージ数)/(全パッケージ数)×100として、百分率(%)で表示した。
また、シリコンチップとエポキシ樹脂組成物の硬化物との剥離面積の割合を、超音波探傷装置を用いて測定し、剥離率=(剥離面積)/(シリコンチップの面積)×100として、8個のパッケージの平均値を求め、百分率(%)で表示した。
これらのクラック発生率および剥離率は、それぞれ、数値が小さい程、耐半田クラック性が良好であることを示す。
▲5▼:耐湿信頼性
16ピンDIPに、125℃、相対湿度100%の水蒸気中で、20Vの電圧を印加し、断線不良を調べた。15個のパッケージのうち8個以上に不良が出るまでの時間を不良時間とした。
なお、測定時間は、最長で500時間とし、その時点で不良パッケージ数が8個未満であったものは、不良時間を500時間超(>500)と示す。
この不良時間は、数値が大きい程、耐湿信頼性に優れることを示す。
各特性評価▲1▼〜▲5▼の結果を、表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
表1に示すように、各実施例で得られたエポキシ樹脂組成物(本発明のエポキシ樹脂組成物)は、いずれも、硬化性、保存性、流動性が極めて良好であり、さらに、この硬化物で封止された各実施例のパッケージ(本発明の半導体装置)は、いずれも、耐半田クラック性、耐湿信頼性が良好なものであった。
これに対し、比較例1は硬化促進剤成分がTPP-Kであり、硬化性、流動性、保存性、耐半田性、耐湿信頼性のすべてにおいて、実施例に比べ劣り、比較例2および比較例3で得られたエポキシ樹脂組成物は、硬化性、流動性、耐半田性、耐湿信頼性において劣り、特に保存性は著しく劣っていた。比較例3においては、硬化性、流動性、耐半田性、耐湿信頼性亜において問題ない性能であるが、有用な保存性を得るには至らなかった。
【0074】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の硬化剤組成物によれば、硬化促進剤を従来通りに添加した場合に比べ、常温での保存性に優れ、該硬化性樹脂組成物は成形時に高い流動性を得ることができ、また、該硬化性樹脂組成物を用いて作成されたパッケージは、高温に曝された場合であっても、この硬化物に欠陥が生じるのを好適に防止することができ、良好な信頼性を発揮することができる。
Claims (6)
- 1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(A)と、下記一般式(1)で表される硬化促進剤(B)とからなり、前記成分(A)100重量部に対し、前記成分(B)2〜50重量部を、前記成分(A)の軟化点以上の温度で加熱混合して得られるエポキシ樹脂用硬化剤組成物。
- 前記1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(A)は、下記一般式(5)で表されるフェノール樹脂および下記一般式(6)で表されるフェノール樹脂の少なくとも一方を主成分とする請求項1ないし3のいずれかに記載のエポキシ樹脂用硬化剤組成物。
- 1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物と、請求項1ないし4のいずれかに記載のエポキシ樹脂用硬化剤組成物を含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
- 請求項5に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物により電子部品を封止してなることを特徴とする半導体装置。
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