JP2004265924A - 固体電解コンデンサ - Google Patents

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Abstract

【課題】コンデンサの大容量化、低ESR化、小型化を達成しつつ、陽極箔と陰極箔の接触不良を低減する。
【解決手段】固体電解コンデンサ1は、陽極箔4と陰極箔5をセパレータ6を介して巻き取って構成され、内部に固体電解質層又は導電性ポリマー層が形成されたコンデンサ素子2を具えている。陰極箔5上には金属窒化物又は非弁作用金属からなる被膜が形成されている。陰極箔5の幅は、陽極箔4の幅よりも狭く形成され、陽極箔4はセパレータ6と略同じ幅に形成されている。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、陽極箔と陰極箔を巻き取った固体電解コンデンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
図2は、従来の固体電解コンデンサ(1)の断面正面図であり、図3は、コンデンサ素子(2)の斜視図である(例えば、特許文献1参照)。
これは、上面が開口したアルミニウム製のケース(3)内に、コンデンサ素子(2)を収納して、ゴム製のパッキング(30)にてケース(3)の開口を封止している。ケース(3)の上端部をカールしてパッキング(30)を固定し、ケース(3)の上面には、プラスチック製の座板(31)が取り付けられている。コンデンサ素子(2)から延びたリード線(21)(21)はパッキング(30)及び座板(31)を貫通した後、横向きに折曲されている。
コンデンサ素子(2)は、図3に示すように、誘電体酸化被膜を形成したアルミニウム箔である陽極箔(4)と、アルミニウム箔である陰極箔(5)とを、紙等の絶縁体であるセパレータ(6)を介してロール状に巻回し、テープ(26)で止めた巻取り素子(20)から構成され、内部にTCNQ(7、7、8、8−テトラシアノキノジメタン)錯塩等の固体電解質を含浸するか、又は導電性ポリマー層が形成されている。陽極箔(4)と陰極箔(5)からは一対のリードタブ(25)(25)が引き出され、該リードタブ(25)(25)から前記リード線(21)(21)が延びている。
【0003】
かかる固体電解コンデンサ(1)は、広く用いられているが、市場からは大容量且つ小型のコンデンサが所望されている。そこで、以下のように陰極箔(5)に金属窒化物からなる被膜を形成したものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
陰極箔(5)に金属窒化物からなる被膜を形成して、コンデンサを大容量化する原理を説明する。一般に、陰極箔(5)上には誘電体酸化被膜を意図的には形成しないが、実際には自然酸化により酸化被膜が形成される。従って、コンデンサの静電容量Cは、陽極箔(4)側の静電容量Caと陰極箔(5)側の静電容量Ccとが直列に接続された容量となり、以下の式で示される。
【数1】
Figure 2004265924
即ち、陰極箔(5)が静電容量Ccを有すれば、コンデンサの静電容量Cは陽極箔(4)側の静電容量Caよりも小さくなる。
【0004】
しかし、図4に示すように、陰極箔(5)にスパッタリング法や蒸着により、TiN等の金属窒化物の被膜(50)を形成すれば、金属窒化物の分子が酸化被膜(51)を突き破って、陰極箔(5)のアルミニウム基材に接すると推測される。従って、基材と金属窒化物が導通し、陰極箔(5)は容量を有さない。これにより、コンデンサの外形を大きくすることなく、静電容量を大きくしている。
尚、金属窒化物に代えて非弁作用金属から被膜を形成してもよい。ここで、弁作用金属とは、その表面が酸化被膜で覆われる金属を指し、アルミニウムの他に、タンタル、ニオブ等が該当する。
【0005】
【特許文献1】
特公平4−19695号(第2図)
【0006】
【特許文献2】
特開2000−114108号(明細書『0012』)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
斯種コンデンサは、大容量化に加えてESR(等価直列抵抗)が低いことも求められており、この為には、陽極箔(4)又は陰極箔(5)の上下幅を広くすればよい。しかし、陽極箔(4)及び陰極箔(5)の両方の上下幅は、セパレータ(6)よりも広くできない。セパレータ(6)を広くすることは、コンデンサの小型化に反する。
更に、陽極箔(4)及び陰極箔(5)の上下幅が、セパレータ(6)と同じ又は稍狭い場合は、箔(4)(5)の巻きズレにより、両箔(4)(5)が接触して、漏れ電流が大きい又はショート不良となる可能性が高い。故に、両箔(4)(5)は、セパレータ(6)の幅よりも0.5−1mm程度幅狭にしている。
出願人は、上記の如く、陰極箔(5)に金属窒化物の被膜を形成すれば、陰極箔(5)の静電容量がなくなることに鑑みて、金属窒化物の被膜を形成した陰極箔(5)を幅狭にして、両箔(4)(5)が接触することを防止することを着想した。
本発明の目的は、コンデンサの大容量化、低ESR化、小型化を達成しつつ、両箔(4)(5)の接触不良を低減することにある。
【0008】
【課題を解決する為の手段】
固体電解コンデンサ(1)は、陽極箔(4)と陰極箔(5)をセパレータ(6)を介して巻き取って構成され、内部に固体電解質層又は導電性ポリマー層が形成されたコンデンサ素子(2)を具えている。陰極箔(5)上には金属窒化物又は非弁作用金属からなる被膜(50)が形成されている。陰極箔(5)の幅は、陽極箔(4)の幅よりも狭く形成され、陽極箔(4)はセパレータ(6)と略同じ幅に形成されている。
【0009】
【作用及び効果】
陰極箔(5)上には金属窒化物又は非弁作用金属からなる被膜が形成されており、陰極箔(5)は容量を有さない。従って、コンデンサの静電容量は、陽極箔(4)の静電容量で決定される。
かかる陽極箔(4)はセパレータ(6)と略同じ幅に形成されているから、陽極箔(4)のESRは小さくでき、且つ静電容量を大きくできる。陰極箔(5)は陽極箔(4)よりも狭く形成されているから、両箔(4)(5)の接触不良を防止でき、漏れ電流が大きくなったり、ショート不良品が発生することを防止できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一例を図を用いて詳述する。
固体電解コンデンサ(1)の全体形状は、図2に示す従来品と同様である。コンデンサ素子(2)は、図1に示すように、化成被膜を形成したアルミニウム箔である陽極箔(4)と、アルミニウム箔である陰極箔(5)を、絶縁体であるセパレータ(6)を介してロール状に巻回し、テープ(26)で止めた巻取り素子(20)から構成される。巻取り素子(20)の内部にTCNQ錯塩等の固体電解質が含浸され、又は導電性ポリマー層が形成されている。巻取り素子(20)からは一対のリード線(21)(21)が延びている。
陰極箔(5)上には、チタン(Ti)薄膜と窒化チタン薄膜である被膜が形成され、前記の如く、これにより陰極箔(5)は静電容量を有さない、または有しても無視できるほど小さい。従って、陰極箔(5)の幅は、コンデンサの静電容量には全く影響を与えない。尚、被膜を前記の如く、非弁作用金属から形成してもよい。
陽極箔(4)の上下幅は、セパレータ(6)と略同じ幅に形成される。また、陰極箔(5)の幅は、陽極箔(4)幅の50%を越え100%未満の幅である。
【0011】
コンデンサ素子(2)は、以下の手順で形成される。陽極箔(4)は、アルミニウム製シートから切り出されて作成されるので、陽極箔(4)の端面には、誘電体酸化被膜が形成されていない。従って、先ず、巻取り素子(20)の切り口化成を行って、陽極箔(4)の端面に誘電体酸化被膜を形成する。この後、巻取り素子(20)を280℃で熱処理して、誘電体酸化被膜の特性を安定させる。
次に、希釈剤としてn−ブチルアルコールを含む3,4−エチレンジオキシチオフェン及びp−トルエンスルホン酸鉄(iii)の混合溶液に、巻取り素子(20)を浸漬後、熱重合して両箔(4)(5)間に導電性ポリマー層を形成し、コンデンサ素子(2)が完成する。コンデンサ素子(2)を前記ケース(3)に封入して、固体電解コンデンサ(1)が完成する。
本例では、ポリチオフェン系の導電性ポリマーで電解質層を形成しているが、ポリピロール系又はポリアニリン系の機能性高分子を用いてもよい。また、導電性ポリマー層に代えて、TCNQ錯塩等の固体電解質層を形成してもよい。
【0012】
出願人は、陰極箔(5)の幅を陽極箔(4)の90%、80%、60%の幅に形成したコンデンサ素子(2)を40ケずつ作成し、これらで固体電解コンデンサ(1)を作成し、夫々実施例1、2、3とした。陽極箔(4)の上下幅は、前記の如く、セパレータ(6)と略同じ幅であり、セパレータ(6)の幅を越えない。
また、陰極箔(5)及び陽極箔(4)の幅を、夫々セパレータ(6)の幅の75%、100%とした従来のコンデンサ素子(2)を40ケずつ作成し、これらで固体電解コンデンサ(1)を作成し、従来例1、2とした。従来例1、2のコンデンサ素子(2)の陰極箔(5)上には、金属窒化物の被膜が作成されていない。試作したのは、定格電圧4Vで、ケース(3)の外形寸法が直径8.0mmで高さ17.0mmのコンデンサである。
実施例1、2、3と従来例1、2との巻き取り工程での不良率、コンデンサ完成後の不良率、漏れ電流(LC)不良率を表1に示す(単位:%)。
【表1】
Figure 2004265924
【0013】
上記の表1から、陰極箔(5)及び陽極箔(4)の幅を、セパレータ(6)の幅と同じにした従来例2のコンデンサでは、巻取り工程及び検査工程でのショート不良率、漏れ電流不良率が著しく上昇し、大量生産に適さないことが判る。
次に、120Hzの交流定格電圧を印加して、静電容量(Cap、単位:μF)、誘電損失(tanδ、単位:%)を測定し、100kHzの交流定格電圧を印加して、等価直列抵抗(ESR、単位:mΩ)を測定した。また、直流定格電圧を2分印加した後に、漏れ電流(LC、単位:μA)を測定した。測定結果の平均値を表2に示す。
【表2】
Figure 2004265924
【0014】
上記の表2から、陽極箔(4)の幅を、セパレータ(6)の幅の75%にした従来例1のコンデンサでは、静電容量が著しく低下する。従って、コンデンサの大容量化を達成するには、陽極箔(4)の幅をセパレータ(6)とほぼ同じにしておく必要がある。
上記表1及び2から、陰極箔(5)の幅を、陽極箔(4)の50%を越え100%未満の幅とし、陽極箔(4)をセパレータ(6)と略同じ幅に形成すれば、従来の工程不良率(ショート不良率、漏れ電流不良率)を維持したまま、コンデンサの大容量化、低ESR化を達成することができた。
【0015】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】コンデンサ素子の斜視図である。
【図2】従来の固体電解コンデンサの断面正面図である。
【図3】従来のコンデンサ素子の斜視図である。
【図4】金属窒化物の被膜が酸化被膜を突き破って基材に達する状態を示す断面図である。
【符号の説明】
(2) コンデンサ素子
(4) 陽極箔
(5) 陰極箔
(6) セパレータ

Claims (3)

  1. 陽極箔(4)と陰極箔(5)をセパレータ(6)を介して巻き取って構成され、内部に固体電解質層又は導電性ポリマー層が形成されたコンデンサ素子(2)を具え、陰極箔(5)上には金属窒化物又は非弁作用金属からなる被膜(50)が形成された固体電解コンデンサに於いて、
    陰極箔(5)の幅は、陽極箔(4)の幅よりも狭く形成され、陽極箔(4)はセパレータ(6)と略同じ幅に形成されたことを特徴とする固体電解コンデンサ。
  2. 陰極箔(5)の幅は、陽極箔(4)の幅の50%を越え100%未満である請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
  3. コンデンサ素子(2)内の電解質は、ポリチオフェン系導電性高分子を用いる請求項1又は2に記載の固体電解コンデンサ。
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