JP2004262999A - アルカリ溶解性カルボン酸エステル系セルロース誘導体及び該誘導体からなるフィルム - Google Patents
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Abstract
【効果】本発明によれば、従来よりも強度が高く、透明性に優れた腸溶性の保護コーティング剤、アルカリ可溶性のフィルム基材等となり得る高重合度のアルカリ可溶性カルボン酸エステル系セルロース誘導体を得ることができる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、腸溶性の保護コーティング剤、アルカリ可溶性のフィルム基材、マイクロカプセル用のカプセル基材等として利用することができるアルカリ可溶性カルボン酸エステル系セルロース誘導体及び該誘導体からなるフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
カルボン酸エステル系セルロース誘導体は、酸性及び中性の水には溶解せず、アルカリ性の水に溶解する性質を有しており、このようなカルボン酸エステル系セルロース誘導体は、従来、医薬用の腸溶性コーティング剤の他、アンチハレーション用バインダーや写真フィルムとして使用されている(例えば、特許文献1:特公昭43−42970号公報参照)。
【0003】
これらのカルボン酸エステル系セルロース誘導体の製造方法としては、例えばセルロースアセテートヘキサヒドロフタレートにあっては特許文献2(特公昭43−34080号公報)に、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースのフタル酸エステルにあっては特許文献3,4(特公昭47−6436号公報、特公昭48−43808号公報)に、セルロースエーテルのテトラヒドロフタル酸エステル及びヘキサヒドロフタル酸エステルにあっては特許文献5(特公昭46−29743号公報)に、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの酸性サクシニル及び脂肪族モノアシル混成エステルにあっては特許文献6(特公昭57−25998号公報)にそれぞれ開示されている。
【0004】
これらのカルボン酸エステル系セルロース誘導体の製造方法には、各種反応溶媒と反応試薬について詳しい記載がなされているが、製造されるカルボン酸エステル系セルロース誘導体の重合度についての記載はない。また、各種エステル反応に用いるセルロース誘導体についての重合度にかかる記載もなされてない。
【0005】
一般に、これらのカルボン酸エステル系セルロース誘導体の用途にあっては、フィルムとして利用されることが多く、一度溶剤に溶かした後、フィルム化することが一般的であることから、溶解時に粘性が高くなりやすい高重合度のカルボン酸エステル系セルロース誘導体は敬遠されてきた。従って、フィルム化のためのコーティング用溶液の粘性を低くするために、特許文献7(特公昭43−43104号公報)では、製造においてかかる誘導体の加水分解を進めるべく、塩素酸カリウムや塩素酸ナトリウム等のMXOn(Mは金属、Xはハロゲン原子、nは2〜4の整数)で表される化合物を加えて製造することが提案されている。
【0006】
しかしながら、近年医薬用のフィルムコーティングに関しても、一度も溶剤に溶解することなく、直接粉体を医薬品や可塑剤ととともに混合しながらフィルムコーティングする手法が開示されており(特許文献8:特開平9−132523号公報)、必ずしも重合度が低いカルボン酸エステル系セルロース誘導体が必要でなくなってきている。むしろ重合度が高く、コーティングフィルムの強度が高くなるアルカリ溶解性のカルボン酸エステル系セルロース誘導体が、強度あるフィルムを形成する上で望まれている。
【0007】
【特許文献1】
特公昭43−42970号公報
【特許文献2】
特公昭43−34080号公報
【特許文献3】
特公昭47−6436号公報
【特許文献4】
特公昭48−43808号公報
【特許文献5】
特公昭46−29743号公報
【特許文献6】
特公昭57−25998号公報
【特許文献7】
特公昭43−43104号公報
【特許文献8】
特開平9−132523号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、重合度が高く、コーティングフィルムとした場合、フィルム強度が高いアルカリ溶解性カルボン酸エステル系セルロース誘導体及び該誘導体からなるフィルムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、重量平均重合度が280以上であるヒドロキシアルキルアルキルセルロース又はセルロースアセテートと多価カルボン酸無水物とを反応させて得られる重量平均重合度280以上のアルカリ溶解性カルボン酸エステル系セルロース誘導体が、これをコーティングフィルムとした場合、従来よりフィルム強度が高く、透明性に優れていることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0010】
従って、本発明は、重量平均重合度が280以上であるヒドロキシアルキルアルキルセルロース又はセルロースアセテートと多価カルボン酸無水物とを反応させて得られる重量平均重合度280以上のアルカリ溶解性カルボン酸エステル系セルロース誘導体を提供する。また、本発明は、該誘導体からなるフィルムを提供する。
【0011】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明のアルカリ溶解性カルボン酸エステル系セルロース誘導体を製造するにあたって用いられるセルロースエーテル類は、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース又はセルロースアセテートである。これらのセルロースエーテル類は、セルロースに対して比較的均一に置換反応がなされ、溶剤に対しても溶解性がよく、エステル化した後も透明性に優れ、かつ本発明の目的とする強靱なフィルムを形成させることができる。
【0012】
本発明に用いられるヒドロキシアルキルアルキルセルロース又はセルロースアセテートは、重量平均重合度が280以上、好ましくは300以上であることが必要である。重量平均重合度が280未満であると強度の高いフィルムが得られないためである。なお、その上限は適宜選定されるが、通常500以下である。
【0013】
本発明において、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースとしては、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
【0014】
このヒドロキシアルキルアルキルセルロース又はセルロースアセテートは、置換度が不足していたり、均一な置換が行われずに製造された場合、水に溶解しようとした時に8〜200μm程度の未溶解な繊維状物が多数残存してしまうことになる。本発明においては、前記ヒドロキシアルキルアルキルセルロース又はセルロースアセテートの0.1重量%水溶液の2ml中に存在する8〜200μmの未溶解繊維の数が、2,000個以下、特に1,800個以下であることが好ましい。この値が2,000個を超えていると極めて反応が不均一で、これを原料としてエステル反応を実施しても、得られるカルボン酸エステル系セルロース誘導体は、均一に溶媒に溶解しなかったり、均一なフィルムを形成できず、十分な強度を有するフィルムにならない場合がある。なお、未溶解繊維の数は0個であることが最も好ましいが、通常は50個以上である。
【0015】
なお、この未溶解繊維状物の数は、このヒドロキシアルキルアルキルセルロースが0.1重量%水溶液となるようにコールターカウンター用電解質水溶液ISOTONII(ベックマン・コールター社製)に20℃の恒温槽内で溶解し、この溶液2ml中に存在する8〜200μmの未溶解繊維数を径400μmのアパーチャーチューブを用いてコールターカウンターマルチサイザーII型機(ベックマン・コールター社製)により測定することができる。
【0016】
一方、セルロースアセテートは、アセチル基の置換度が高くなりすぎるとエステル反応が早く進まないことがあるため、予め硫酸等で置換度を減じておいてエステル化すると効率よく均一なエステル化を行うことができる。本発明において、セルロースアセテートのアセチル基置換度としては、29〜37重量%、特に32〜35重量%程度とすることが好ましい。
【0017】
次に、上記ヒドロキシアルキルアルキルセルロース又はセルロースアセテートとエステル反応を行わせる多価カルボン酸無水物としては、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらは反応中に無水酢酸のような無水脂肪族モノカルボン酸と混在させて反応してもよい。
【0018】
多価カルボン酸無水物の使用量は、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース又はセルロースアセテートとの反応効率、アルカリ溶解性となるエステル置換度を考慮して任意に選択すればよく、特に限定されるものではないが、好ましくはヒドロキシアルキルアルキルセルロース又はセルロースアセテーの0.1〜1倍重量である。
【0019】
本発明においては、反応触媒や反応溶媒を用いることができる。反応触媒としては、カルボン酸アルカリ金属塩が好ましく、特に酢酸ナトリウムが安価で好ましい。また、反応溶媒としては、酢酸を用いることが好ましい。
【0020】
反応触媒の使用量は、酢酸溶媒の仕込み量及びヒドロキシアルキルアルキルセルロース又はセルロースアセテートとの反応物である酸無水物の種類あるいは仕込み量によって異なるが、反応効率、アルカリ可溶性となるエステル置換度を考慮して任意に選択でき、原料であるヒドロキシアルキルアルキルセルロース又はセルロースアセテートの0.2〜0.8倍重量、特に0.2〜0.6倍重量が好ましい。
【0021】
また、本発明においては、攪拌反応器をニーダー式にする等して反応溶媒の使用量を減らして反応することも可能であるが、あまり溶媒を減らして原料を混練すると、機械的攪拌によりヒドロキシアルキルアルキルセルロース又はセルロースアセテートの重合度が下がるので、重合度が下がらない程度の溶媒を用いることが好ましく、従って、反応溶媒の使用量は、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース又はセルロースアセテートの1〜6倍重量が好ましく、より好ましくは1〜4倍重量である。
【0022】
本発明において、エステル反応する際の反応方法としては特に限定されるものではないが、攪拌混合を行う装置を持った反応器内で原料であるヒドロキシアルキルアルキルセルロース又はセルロースアセテート及び多価カルボン酸無水物を反応溶媒に攪拌溶解し、反応触媒を添加して混合しながら行うことができる。また、反応条件としては、50℃以上の温度、好ましくは70〜90℃の温度下で2〜8時間行うことができる。
【0023】
上記反応において、攪拌混合を行う装置としては特に限定されないが、例えば、攪拌翼を備えた竪型の反応器等を用いることができ、ニーダー式の反応器も利用できる。
【0024】
上記反応により得られた反応物は、大量の水又は塩酸によって晶出し、アルカリで中和するか、多量の水で洗浄後、乾燥させることが好ましい。乾燥後、必要に応じて粉砕してもよいが、粉砕によって重合度が低下しないようにすることが望ましい。
【0025】
このようにして得られたアルカリ溶解性カルボン酸エステル系セルロース誘導体の重量平均重合度は、280以上と高分子量なものである。
【0026】
また、得られたアルカリ溶解性カルボン酸エステル系セルロース誘導体として、具体的には、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースヘキサヒドロキシフタレートなどを例示することができる。これらのエステル基の置換率は、アルカリ溶解性カルボン酸エステル系セルロース誘導体に対して5〜50重量%である。
【0027】
本発明のアルカリ溶解性カルボン酸エステル系セルロース誘導体は、アセトン、メタノール、塩化メチレン等の単独及びこれらの混合溶剤に溶解する等して種々の形状に調製することができ、例えば、腸溶性の保護コーティング剤、アルカリ可溶性のフィルム基材、マイクロカプセル用のカプセル基材等として好適に利用することができる。本発明のアルカリ溶解性カルボン酸エステル系セルロース誘導体を溶剤に溶解し、ガラス板上にキャストして調製されるフィルムは、膜厚30μmにおいて25℃,50%RH下で引っ張り強度を測定すると40MPa以上の強度があり、透明性の高いものである。なお、このようにして得られるフィルムの厚さは、通常20〜40μmであることが、使用性等の点から好ましい。
【0028】
【実施例】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0029】
[実施例1]
高分子論文集vol.39,No.4 p293−298に準じた分子量測定方法によって得られた重合度が300であり、2重量%水溶液の20℃での粘度が100MPa・sであり、0.1重量%水溶液となるようにコールターカウンター用電解質水溶液ISOTONII(ベックマン・コールター社製)に20℃恒温槽内で溶解した溶液2ml中に存在する8〜200μmの未溶解繊維数として、径400μmのアパーチャーチューブを用いてコールターカウンターマルチサイザーII型機(ベックマン・コールター社製)により測定した値が1,700個であるヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトキシル基29重量%、ヒドロキシプロポキシル基12重量%)50重量部を酢酸200重量部に溶解し、これと、無水フタル酸60重量部と、無水酢酸ソーダ50重量部を攪拌機付き反応器内で混合し、80℃の反応温度で5時間反応させた後、攪拌しながらこの反応系に800重量部の純水を注入し、沈殿した反応物を濾別した。更にこれを1,000重量部の純水で水洗後、60℃で5時間乾燥してフタリル基36重量%のヒドロキシプロピルメチルセロースフタレートを得た。このヒドロキシプロピルメチルセロースフタレートの分子量を、テトラヒドロフラン溶媒中でDOWN型GPC−MALLS分子量測定装置(昭光通商社製)で40℃にて測定したところ、重量平均重合度は280であった。
【0030】
このヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートをアセトンに溶解して、ガラス板状で30μm厚みのシートを成形し、10mm幅に切って、25℃,50%RH下で調湿を行い、測定用試料とした。この試料をテンシロン万能試験機RTC−1310A(オリエンテックス社製)に初期試料長さ40mmで装着し、25℃,50%RH下で速度10mm/minで引っ張り強度を測定したところ、40MPaを超えており、強度のあるフィルムとなっていた。このフィルムは、pH8.3の人工腸液中で15分以内に溶解した。
【0031】
[比較例1]
実施例1と同様に測定した未溶解繊維が2,500個である重合度が200のヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトキシル基29重量%、ヒドロキシプロポキシル基12重量%)を用いた以外は、実施例1と同様にして重量平均重合度が180で、フタリル基が36重量%であるヒドロキシプロピルメチルセロースフタレートを調製した。
【0032】
実施例1と同様にシートを作製してフィルム強度を測定したところ、28MPaと実施例1より強度の低いフィルムとなった。フィルムは手で引っ張ることで容易に引き裂けた。
【0033】
[実施例2]
実施例1と同様に測定した重合度が320であり、2重量%水溶液の20℃での粘度が100MPa・sであり、0.1重量%水溶液となるようにコールターカウンター用電解質水溶液ISOTONII(ベックマン・コールター社製)に20℃恒温槽内で溶解した溶液2ml中に存在する8〜200μmの未溶解繊維数として、径400μmのアパーチャーチューブを用いてコールターカウンターマルチサイザーII型機(ベックマン・コールター社製)により測定した値が1,700個であるヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトキシル基29重量%、ヒドロキシプロポキシル基12重量%)50重量部を酢酸200重量部に溶解し、これと、無水フタル酸60重量部と、無水酢酸ソーダ50重量部を攪拌機付き反応器内で混合し、80℃の反応温度で5時間反応させた後、攪拌しながらこの反応系に800重量部の純水を注入し、沈殿した反応物を濾別した。更にこれを1,000重量部の純水で水洗後、60℃で5時間乾燥してフタリル基36重量%のヒドロキシプロピルメチルセロースフタレートを得た。このヒドロキシプロピルメチルセロースフタレートの分子量を、テトラヒドロフラン溶媒中でDOWN型GPC−MALLS分子量測定装置(昭光通商社製)で40℃にて測定したところ、重量平均重合度は290であった。
【0034】
この高分子量のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートをアセトンに溶解して、ガラス板状で30μm厚みのシートを成形し、実施例1と同様に引っ張り強度を測定したところ、40MPaを超えており、強度のある透明度の高いフィルムとなっていた。このフィルムは、pH8.3の人工腸液中で15分以内に溶解した。
【0035】
[比較例2]
実施例2と同様に測定された未溶解繊維が3,000個である重合度180のヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトキシル基29重量%、ヒドロキシプロポキシル基12重量%)を用いた以外は、実施例2と同様にして重量平均重合度が170で、フタリル基が36重量%であるヒドロキシプロピルメチルセロースフタレートを調製し、実施例2と同様にシートを作製して引っ張り強度を測定したところ、30MPaの強度であり、シートは透明性がなく、濁っていた。
【0036】
[実施例3]
実施例2のヒドロキシプロピルメチルセルロース50重量部を酢酸200重量部に溶解し、これと、無水コハク酸60重量部と、酢酸ソーダ50重量部と、無水酢酸25重量部を攪拌機付き反応器内で混合し、85℃の反応温度で3時間反応させ、攪拌しながらこの反応系に800重量部の純水を注入し、沈殿した反応物を濾別し、更にこれを5,000重量部の純水で水洗後、60℃で5時間乾燥してサクシニル基16重量%、アセチル基7重量%のヒドロキシプロピルメチルセロースアセテートサクシネートを得た。このヒドロキシプロピルメチルセロースアセテートサクシネートの分子量を、テトラヒドロフラン溶媒中でDOWN型GPC−MALLS分子量測定装置(昭光通商社製)で40℃にて測定したところ、重量平均重合度は290であった。
【0037】
この高分子量のヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートをアセトンに溶解して、ガラス板状で30μm厚みのシートを成形し、実施例1と同様に引っ張り強度を測定したところ、40MPaを超えており、強度のある透明度の高いフィルムとなっていた。このフィルムは、pH8.3の人工腸液中で15分以内に溶解した。
【0038】
[実施例4]
実施例2のヒドロキシプロピルメチルセルロース50重量部を酢酸230重量部に溶解して攪拌機付き反応器に仕込み、ジャケットにて70℃として、無水ヘキサヒドロフタル酸50重量部、酢酸ソーダ50重量部を仕込み、更に酢酸を40重量部仕込んで攪拌し、85℃の反応温度で10時間反応させた後、攪拌しながらこの反応系に15重量部の純水を注入した。更に20重量%の塩酸水を200重量部添加して攪拌し、NaOHで中和した後、沈殿した反応物を濾別した。これを5,000重量部の純水で水洗後、60℃で5時間乾燥してヘキサヒドロフタリル基38重量%のヒドロキシプロピルメチルセロースヘキサヒドロキシフタレートを得た。このヒドロキシプロピルメチルセロースヘキサヒドロキシフタレートの分子量を、テトラヒドロフラン溶媒中でDOWN型GPC−MALLS分子量測定装置(昭光通商社製)で40℃にて測定したところ、重量平均重合度は285であった。
【0039】
このヒドロキシプロピルメチルセロースヘキサヒドロキシフタレートをアセトンに溶解して、ガラス板状で30μm厚みのシートを成形し、実施例1と同様に引っ張り強度を測定したところ、40MPaを超えており、強度のある透明度の高いフィルムとなっていた。このフィルムは、pH11のアルカリ水溶液中で15分以内に溶解した。
【0040】
[実施例5]
実施例2のヒドロキシプロピルメチルセルロース50重量部を酢酸210重量部に溶解して攪拌機付き反応器に仕込み、ジャケットにて70℃として、無水フタル酸60重量部、無水酢酸31重量部、酢酸ソーダ50重量部を仕込み、85℃の反応温度で10時間反応させた。攪拌しながらこの反応系に140重量部の純水を注入し、更に20重量%の塩酸水を210重量部添加して攪拌し、NaOHで中和した後、沈殿した反応物を濾別した。更にこれを5,000重量部の純水で水洗後、60℃で5時間乾燥してフタリル基30重量%、アセチル基8重量%のヒドロキシプロピルメチルセロースアセテートフタレートを得た。このヒドロキシプロピルメチルセロースアセテートフタレートの分子量を、テトラヒドロフラン溶媒中でDOWN型GPC−MALLS分子量測定装置(昭光通商社製)で40℃にて測定したところ、重量平均重合度は300であった。
【0041】
このヒドロキシプロピルメチルセロースアセテートフタレートをアセトンに溶解して、ガラス板状で30μm厚みのシートを成形し、実施例1と同様に引っ張り強度を測定したところ、40MPaを超えており、強度のある透明度の高いフィルムとなっていた。このフィルムは、pH11のアルカリ水溶液中で15分以内に溶解した。
【0042】
[実施例6]
テトラヒドロフラン溶液中に溶解してDOWN型GPC−MALLS分子量測定装置(昭光通商社製)で40℃にて測定された重量平均重合度が450であり、アセチル基が39重量%であるアセチルセルロース50重量部に酢酸210重量部を加えて攪拌溶解した後、45〜50℃の反応温度となるようにジャケット温度を調整して濃硫酸3.5重量部を滴下し、50℃で9時間反応を行った。これに酢酸ソーダ50重量部を添加し、無水ヘキサヒドロフタル酸120重量部、無水酢酸70重量部を仕込んで反応器のジャケットを90℃として3時間攪拌しながら反応させた後、70℃に冷却して25重量部の純水を注入した。更に20重量%の塩酸水を70重量部添加して攪拌し、NaOHで中和した後、沈殿した反応物を濾別し、更にこれを5,000重量部の純水で水洗し、60℃で5時間乾燥してヘキサヒドロフタリル基35重量%、アセチル基22重量%のセルロースアセテートヘキサヒドロフタレートを得た。このセルロースアセテートヘキサヒドロフタレートの分子量を、テトラヒドロフラン溶媒中でDOWN型GPC−MALLS分子量測定装置(昭光通商社製)で40℃にて測定したところ、重量平均重合度は295であった。
【0043】
このセルロースアセテートヘキサヒドロフタレートをアセトンに溶解して、ガラス板状で30μm厚みのシートを成形し、実施例1と同様に引っ張り強度を測定したところ、40MPaを超えており、強度のある透明度の高いフィルムとなっていた。このフィルムは、pH11のアルカリ水溶液中で15分以内に溶解した。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、従来よりも強度が高く、透明性に優れた腸溶性の保護コーティング剤、アルカリ可溶性のフィルム基材等となり得る高重合度のアルカリ可溶性カルボン酸エステル系セルロース誘導体を得ることができる。
Claims (4)
- 重量平均重合度が280以上であるヒドロキシアルキルアルキルセルロース又はセルロースアセテートと多価カルボン酸無水物とを反応させて得られる重量平均重合度280以上のアルカリ溶解性カルボン酸エステル系セルロース誘導体。
- 前記ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの0.1重量%水溶液2ml中に存在する8〜200μmの未溶解繊維の数が、2,000個以下である請求項1記載のアルカリ溶解性カルボン酸エステル系セルロース誘導体。
- アルカリ溶解性カルボン酸エステル系セルロース誘導体が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート又はヒドロキシプロピルメチルセルロースヘキサヒドロキシフタレートである請求項1又は2記載のアルカリ溶解性カルボン酸エステル系セルロース誘導体。
- 請求項1、2又は3記載のアルカリ溶解性カルボン酸エステル系セルロース誘導体からなるフィルム。
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