本発明は、反応生成物混合物からセルロースエーテルのエステルを回収する改良された方法に関する。
セルロースエーテルのエステル、それらの使用及びそれらの調製方法は、当技術分野において概して公知である。
エステル化セルロースエーテルを製造する一般的な方法は、国際公開第2013/148154号パンフレットに記載されている。典型的には、セルロースエーテルは、脂肪族カルボン酸及び任意選択的にエステル化触媒の存在下で脂肪族モノカルボン酸無水物又はジ−若しくはトリカルボン酸無水物或いは脂肪族モノカルボン酸無水物及びジ−又はトリカルボン酸無水物の組み合わせと反応される。
いくつかのエステル化セルロースエーテルは、重要な用途を有する。ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート(HPMCA)及びヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)は、医薬剤形において有用である。HPMCASは、医薬剤形のための腸溶性ポリマーとして有用である。腸溶性ポリマーは、胃の酸性環境で無傷のままであるものである。そのようなポリマーでコートされた剤形は、酸性環境での不活性化若しくは分解から薬物を保護するか又は薬物による胃の炎症を防ぐ。
エステル化後のその反応生成物混合物からHPMCAS、HPMCA又はHPMCPなどのエステル化セルロースエーテルを回収する従来の方法では、生成物の沈澱を開始させ、且つ不純物を希釈及び除去するために冷水が反応生成物混合物に注がれる。しかしながら、この方法を適用すると、粒子間凝集が非常に大きく起こるため、微細粉末又は顆粒の形態でのセルロースエーテルのエステルを得ることができない。HPMCAS又はHPMCAなどのエステル化セルロースエーテルは、酢酸などの脂肪族カルボン酸及び酢酸ナトリウムなどのアルカリ金属カルボキシレートの存在下での反応生成物混合物において非常に粘着な性質を示す傾向がある。粒子間凝集は、水が粒子間に浸透することを阻み、その結果、酢酸、酢酸ナトリウム、コハク酸、フタル酸、未反応ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等のような不純物を効果的に除去することが困難になる。更に、粒状生成物を得るために生成物の追加の粉砕又は破砕が必要とされる。
この問題に対処するために幾つかの方法が提案されている。
米国特許第4,226,981号明細書及び国際特許出願国際公開第2005/115330号パンフレットは、エステル化触媒としての酢酸ナトリウムなどのアルカリカルボキシレート及び反応媒体としての酢酸の存在下において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを無水コハク酸及び無水酢酸でエステル化することにより、HPMCAS又はHPMCAなどのセルロースエーテルの混合エステルを調製する方法を開示している。エステル化反応の完了後、反応生成物が沈澱するように大量の水、具体的には10倍容量の水が反応生成物混合物に添加される。沈澱した生成物は、次に、不純物を除去するために水での十分な洗浄にかけられ、乾燥されて、粉末状又は粒状形態での混合エステルを生成する。
欧州特許出願第0 219 426号明細書は、反応生成物混合物への大量の水の添加が続き、混合物中に形成された沈澱物が濾過によって集められ、洗浄する沈澱物がもはや酸性でなくなるまで水で繰り返し洗浄される、HPMCP又はHPMCASを製造する方法を開示している。
米国特許出願公開第2004/0152886号明細書は、粒子間に存在するフタル酸及び酢酸のような不純物が水と接触し、洗い流され得るようにHPMCP粒子の凝集を防ぐという必要性に取り組んでいる。米国特許出願公開第2004/0152886号明細書は、後処理プロセスとして流動化溶媒を添加することによって反応生成物混合物の流動性を増加させ、スプレーノズルを通してそれを水中に噴霧することを提案している。
国際特許出願国際公開第2013/148154号パンフレットにおいて、その反応生成物混合物からエステル化セルロースエーテルを沈澱させる改良された方法が記載されている。この方法によれば、エステル化セルロースエーテルを含む反応生成物混合物は、水と接触され、水及び反応生成物混合物の組み合わせは、少なくとも800s−1のせん断速度にかけられる。エステル化セルロースエーテルの沈澱中又沈澱後及び洗浄中のエステル化セルロースエーテルの粒子の実質的な凝集が防がれ得る。非粘着性の微細粉末状セルロースエーテルのエステルが得られる。
国際特許出願国際公開第2015/041973号パンフレットは、エステル化セルロースエーテルが、それが沈澱され、反応生成物混合物から分離された後に精製目的のために懸濁される、洗浄液体からのエステル化セルロースエーテルの分離可能性を改善する方法を開示している。
不十分に水溶性の薬物のバイオアベイラビリティ、すなわち摂取時の個体によるそのような薬物の生体内吸収を増加させるために有用であるそれらのエステル化セルロースエーテルに関して、多くの研究努力が当業者によって費やされてきた。一般的な手順は、エステル化セルロースエーテル中の薬物の固体分散系を形成することであり、エステル化セルロースエーテルは、薬物の結晶化度を下げることを目的としている。そのような固体分散系を調製する公知の方法は、噴霧乾燥又は溶融押出による。溶融押出法では、エステル化セルロースエーテルと、薬物と、任意選択的な添加剤とがブレンドされ、射出成形、溶融キャスティング又は圧縮成形などの溶融押出にかけられる。溶融押出は、噴霧乾燥と異なって有機溶媒を全く必要としないために非常に望ましい。溶融押出に特に好適であるエステル化セルロースエーテルは、それらの低い粘度及び/又は特殊な程度のエーテル若しくはエステル置換のために低いガラス転移温度Tgを有する。そのようなエステル化セルロースエーテルは、国際特許出願国際公開第2014/137778号パンフレット、国際公開第2014/137777号パンフレット及び同第2014/137789号パンフレットに並びに米国特許出願公開第2014/0357681号明細書及び同第2016/0095928号明細書に開示されている。残念ながら、そのようなエステル化セルロースエーテルは、酢酸などの脂肪族カルボン酸及び酢酸ナトリウムなどのアルカリ金属カルボキシレートの存在下での反応生成物混合物において、他のエステル化セルロースエーテルよりも更に多い粘着な性質を示す。
そのため、その反応生成物混合物からエステル化セルロースエーテルを回収する改良された方法を見出すことが依然として緊急に必要とされている。したがって、本発明の目的は、反応生成物混合物からの沈澱後のエステル化セルロースエーテルの粒子の実質的な凝集を防ぐことができる方法を提供することである。本発明の別の目的は、精製プロセス中のそのハンドリング、輸送可能性及び洗浄性を改善するために、エステル化セルロースエーテルの洗浄中のエステル化セルロースエーテルの粒子の実質的な凝集及び粘着性を防ぐことができる方法を提供することである。本発明の更に別の目的は、非粘着性の微細粉末状エステル化セルロースエーテルを得ることができる方法を提供することである。反応生成物混合物からの沈澱後に特に粘着性であるエステル化セルロースエーテルについて、本発明の1つ又は全てのこれらの目的が更に達成される場合、特に望ましいであろう。
意外にも、i)沈澱中又は沈澱後のエステル化セルロースエーテルの粒子の凝集及び粘着性を低減することができ、ii)エステル化セルロースエーテルの洗浄中のエステル化セルロースエーテルの粒子の凝集及び粘着性を低減することができ、それによって精製プロセス中のそのハンドリング、輸送可能性及び洗浄性が改善され、且つiii)非粘着性の微細粉末状セルロースエーテルのエステルを得ることができる方法が見出された。
したがって、本発明の一態様は、(a)セルロースエーテルと、(b)脂肪族モノカルボン酸無水物又はジ−若しくはトリカルボン酸無水物或いは脂肪族モノカルボン酸無水物及びジ−又はトリカルボン酸無水物の組み合わせとの反応から得られた反応生成物混合物からエステル化セルロースエーテルを回収する方法であって、(i)反応生成物混合物を水性液体と接触させ、且つ反応生成物混合物からエステル化セルロースエーテルを沈澱させる工程と、(ii)工程(i)において得られた混合物から沈澱したエステル化セルロースエーテルを単離する工程とを含み、セルロースエーテルは、反応生成物混合物、水性液体又はそれらの組み合わせに工程(i)前又は工程(i)において添加される、方法である。
本発明の別の態様は、エステル化セルロースエーテルを調製する方法であって、(a)セルロースエーテルは、(b)脂肪族モノカルボン酸無水物又はジ−若しくはトリカルボン酸無水物或いは脂肪族モノカルボン酸無水物及びジ−又はトリカルボン酸無水物の組み合わせと(c)脂肪族カルボン酸の存在下で反応され、及びエステル化セルロースエーテルは、生成された反応生成物混合物から上述の方法に従って回収される、方法である。
本発明の更に別の態様は、エステル化セルロースエーテルの粘着性を、(a)セルロースエーテルと、(b)脂肪族モノカルボン酸無水物又はジ−若しくはトリカルボン酸無水物或いは脂肪族モノカルボン酸無水物及びジ−又はトリカルボン酸無水物の組み合わせとの反応から得られた反応生成物混合物からエステル化セルロースエーテルを回収する方法において低減する方法であって、(i)反応生成物混合物を水性液体と接触させ、且つ反応生成物混合物からエステル化セルロースエーテルを沈澱させる工程と、(ii)工程(i)において得られた混合物から沈澱したエステル化セルロースエーテルを単離する工程とを含み、セルロースエーテルは、反応生成物混合物、水性液体又はそれらの組み合わせに工程(i)前又は工程(i)において添加される、方法である。
本発明の方法によれば、エステル化セルロースエーテルは、(a)セルロースエーテルと、(b)脂肪族モノカルボン酸無水物又はジ−若しくはトリカルボン酸無水物或いは脂肪族モノカルボン酸無水物及びジ−又はトリカルボン酸無水物の組み合わせとの、任意選択的に(c)脂肪族カルボン酸及び任意選択的に(d)アルカリ金属カルボキシレートの存在下での反応から得られた反応生成物混合物から以下に更に記載されるように回収される。
エステル化反応のための出発原料として使用されるセルロースエーテル(a)は、好ましくは、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース又はヒドロキシアルキルアルキルセルロースである。ヒドロキシアルコキシ基は、典型的には、ヒドロキシメトキシ、ヒドロキシエトキシ及び/又はヒドロキシプロポキシ基である。ヒドロキシエトキシ及び/又はヒドロキシプロポキシ基が好ましい。好ましくは、単一種のヒドロキシアルコキシ基、より好ましくはヒドロキシプロポキシがセルロースエーテル中に存在する。アルコキシ基は、典型的には、メトキシ、エトキシ及び/又はプロポキシ基である。メトキシ基が好ましい。メチルセルロース、エチルセルロース及びプロピルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース及びヒドロキシブチルエチルセルロースは、上に定義されたセルロースエーテルを例証するものである。特に好ましいセルロースエーテルは、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースなど、水中で熱フロキュレーション点を有するものである。セルロースエーテルは、好ましくは、水溶性であり、これは、25℃及び1気圧で蒸留水の100グラムへの少なくとも1グラム、より好ましくは少なくとも2グラム、最も好ましくは少なくとも5グラムの水溶解度をそれが有することを意味するより好ましくは、セルロースエーテルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
エステル化反応のための出発原料として使用されるセルロースエーテルは、一般に、ASTM D2363−79(再認可2006)に従って20℃で2重量%水溶液として測定される1.20〜400mPa・s又は1.20〜100mPa・s、好ましくは1.5〜50mPa・s、より好ましくは1.5〜30mPa・s、最も好ましくは1.5〜20mPa・s、特に1.5〜10mPa・sの粘度を有する。本発明の方法は、エステル化反応のための出発原料として使用されるセルロースエーテルが、上に示されたように測定される1.5〜8.0mPa・sの粘度を有する場合に特に有用である。本発明の1つの好ましい実施形態において、エステル化反応のための出発原料として使用されるセルロースエーテルは、4.0〜8.0mPa・sの粘度を有し、別の好ましい実施形態において、セルロースエーテルは、上に示されたように測定される1.5〜2.5mPa・sの粘度を有する。後者のセルロースエーテルから製造されたエステル化セルロースエーテルは、特に粘着性である。これらのエステル化セルロースエーテルについては、粘着性を低減することが特別に必要である。
MS(ヒドロキシアルコキシル)は、アンヒドログルコース単位当たりのヒドロキシアルコキシル基の平均のモル数である。用語「ヒドロキシアルコキシル基」は、単一ヒドロキシアルコキシル基又は側鎖のいずれかを含む、ヒドロキシアルコキシル置換基の構成単位としてのヒドロキシアルコキシル基を意味し、ここで、2つ以上のヒドロキシアルコキシ単位は、エーテル結合によって互いに共有結合している。この定義内において、ヒドロキシアルコキシル置換基の末端ヒドロキシル基が更にアルキル化、例えばメチル化されているか又はされていないかは、重要ではなく、アルキル化及び非アルキル化ヒドロキシアルコキシル置換基の両方がMS(ヒドロキシアルコキシル)の測定のために含まれる。アンヒドログルコース単位当たりの、メトキシ基などのアルコキシ基で置換されたヒドロキシル基の平均数は、アルコキシ基の置換度(DS)と称される。DSの上に与えられた定義において、用語「アルコキシ基で置換されたヒドロキシル基」は、セルロース主鎖の炭素原子に直接結合したアルキル化ヒドロキシル基のみならず、セルロース主鎖に結合したヒドロキシアルコキシ置換基のアルキル化ヒドロキシル基も含む。
本発明の好ましい実施形態において、セルロースエーテルは、1.0〜2.7、好ましくは1.0〜2.5、より好ましくは1.0〜2.3、最も好ましくは1.1〜2.2、特に1.6〜2.2のDSメトキシル及び0.05〜1.30、好ましくは0.10〜1.20、より好ましくは0.15〜1.10のMSヒドロキシプロポキシルを有するヒドロキシプロピルメチルセルロースである。1つの好ましい実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、0.15〜0.50、より好ましくは0.20〜0.40のMSヒドロキシプロポキシルを有する。別の好ましい実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、0.40〜1.30、より好ましくは0.60〜1.00のMSヒドロキシプロポキシルを有する。DSメトキシル及びMSヒドロキシプロポキシルは、United States Pharmacopeia and National Formulary,Hypromellose(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)に従って測定される。
本発明の方法は、エステル化反応のための出発原料として使用されるセルロースエーテルが、1.0〜2.7、好ましくは1.0〜2.5、より好ましくは1.0〜2.3、最も好ましくは1.1〜2.2、特に1.6〜2.2のDSメトキシル及び0.40〜1.30、好ましくは0.40〜1.20、より好ましくは0.50〜1.10、最も好ましくは0.60〜1.10、特に0.60〜1.00のMSヒドロキシプロポキシルを有するヒドロキシプロピルメチルセルロースである場合に特に有用である。本発明のこの実施形態において、DSメトキシルとMSヒドロキシプロポキシルとの合計は、好ましくは、少なくとも1.8、より好ましくは少なくとも1.9、最も好ましくは少なくとも2.5及び好ましくは3.3以下、より好ましくは3.2以下、最も好ましくは3.1以下である。そのようなセルロースエーテルから製造されるエステル化セルロースエーテルは、特に粘着性であり、それらの粘着性を低減することが特別に必要とされる。DSメトキシル及びMSヒドロキシプロポキシルは、上に示されたように測定される。
セルロースエーテル(a)は、(b)脂肪族モノカルボン酸無水物又はジ−若しくはトリカルボン酸無水物或いは脂肪族モノカルボン酸無水物及びジ−又はトリカルボン酸無水物の組み合わせと反応される。好ましい脂肪族モノカルボン酸無水物は、無水酢酸、無水酪酸及び無水プロピオン酸からなる群から選択される。好ましいジカルボン酸無水物は、無水コハク酸、無水マレイン酸及び無水フタル酸からなる群から選択される。好ましいトリカルボン酸無水物は、無水トリメリット酸である。好ましい脂肪族モノカルボン酸無水物を単独で使用することができるか、又は好ましいジ−若しくはトリカルボン酸無水物を単独で使用することができるか、又は好ましい脂肪族モノカルボン酸無水物を好ましいジ−若しくはトリカルボン酸無水物と組み合わせて使用することができる。
上述のセルロースエーテル、脂肪族モノカルボン酸無水物及びジ−又はトリカルボン酸無水物からの以下のエステル化セルロースエーテル:
i)HPMC−XY及びHPMC−X(式中、HPMCは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、Xは、A(アセテート)であるか、又はXは、B(ブチレート)であるか、又はXは、Pr(プロピオネート)であり、Yは、S(スクシネート)であるか、Yは、P(フタレート)であるか、Yは、M(マレエート)であるか、又はYは、T(トリメリテート)である)、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート(HPMCAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートトリメリテート(HPMCAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートマレエート(HPMCAM)又はヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)など;又は
ii)ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP);ヒドロキシプロピルセルロースアセテートスクシネート(HPCAS)、ヒドロキシブチルメチルセルロースプロピオネートスクシネート(HBMCPrS)、ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロースプロピオネートスクシネート(HEHPCPrS);及びメチルセルロースアセテートスクシネート(MCAS)
の製造が特に好ましい。
ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)は、最も好ましいエステル化セルロースエーテルである。HPMCASは、好ましくは、1.0〜2.7、より好ましくは1.0〜2.5、更により好ましくは1.0〜2.3、最も好ましくは1.1〜2.2、特に1.6〜2.2のDSメトキシル及び0.05〜1.30、好ましくは0.10〜1.20、より好ましくは0.15〜1.10のMSヒドロキシプロポキシルを有する。1つの好ましい実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、0.15〜0.50、より好ましくは0.20〜0.40のMSヒドロキシプロポキシルを有する。別の好ましい実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、0.40〜1.30、より好ましくは0.60〜1.00のMSヒドロキシプロポキシルを有する。
本発明の方法は、製造されるHPMCASが1.0〜2.7、より好ましくは1.0〜2.5、更により好ましくは1.0〜2.3、最も好ましくは1.1〜2.2、特に1.6〜2.2のDSメトキシル及び0.40〜1.30、好ましくは0.40〜1.20、より好ましくは0.50〜1.10、最も好ましくは0.60〜1.10、特に0.60〜1.00のMSヒドロキシプロポキシルを有する場合に特に有用である。本発明のこの実施形態において、DSメトキシルとMSヒドロキシプロポキシルとの合計は、好ましくは、少なくとも1.8、より好ましくは少なくとも1.9、最も好ましくは少なくとも2.5及び好ましくは3.3以下、より好ましくは3.2以下、最も好ましくは3.1以下である。
製造されたエステル化セルロースエーテル、特にHPMCASは、一般に、20℃で0.43重量%の水性NaOH中のエステル化セルロースエーテルの2.0重量%溶液として測定される1.20〜400mPa・s又は1.20〜100mPa・s、好ましくは1.5〜50mPa・s、より好ましくは1.5〜30mPa・s、更により好ましくは1.5〜20mPa・s、最も好ましくは1.5〜10mPa・s、特に1.5〜8.0mPa・sの粘度を有する。1つの好ましい実施形態において、製造されたエステル化セルロースエーテルは、4.0〜8.0mPa・sの粘度を有し、別の好ましい実施形態において、製造されたエステル化セルロースエーテルは、上に示されたように測定される1.5〜2.5mPa・sの粘度を有する。エステル化セルロースエーテルの2.0重量%溶液は、“Hypromellose Acetate Succinate,United States Pharmacopeia and National Formulary,NF 29,pp.1548−1550”に記載されているように調製され、これにDIN 51562−1:1999−01(1999年1月)に従ったUbbelohde粘度測定が続く。
セルロースエーテルのエステル化は、公知の方法において、例えば米国特許第3,435,027号明細書及び同第4,226,981号明細書、国際特許出願国際公開第2005/115330号パンフレット及び国際公開第2013/148154号パンフレット又は欧州特許出願第0 219 426号明細書に記載されているように行うことができる。セルロースエーテルのエステル化は、好ましくは、(c)反応媒体としての脂肪族カルボン酸、例えば酢酸、プロピオン酸又は酪酸などにおいて行われる。反応媒体は、室温で液体であり、且つセルロースエーテルと反応しない少量の他の溶媒又は希釈剤、例えばジクロロメタン又はジクロロメチルエーテルなどのハロゲン化C1〜C3誘導体などを含むことができるが、脂肪族カルボン酸の量は、反応媒体の総重量を基準として好ましくは50パーセント超、より好ましくは少なくとも75パーセント、更により好ましくは少なくとも90パーセントである。最も好ましくは、反応媒体は、脂肪族カルボン酸からなる。エステル化反応は、一般に、セルロースエーテルの100重量部当たり100〜2,000重量部の反応媒体としての脂肪族カルボン酸の存在下で行われる。モル比[脂肪族カルボン酸/セルロースエーテルのアンヒドログルコース単位]は、一般に、[4.9/1.0]〜[20.0/1.0]、好ましくは[5.5/1.0]〜[17.0/1.0]、より好ましくは[5.7/1.0]〜[15.0/1.0]である。
エステル化反応は、好ましくは、(d)エステル化触媒の存在下、より好ましくは酢酸ナトリウム又は酢酸カリウムなどのアルカリ金属カルボキシレートの存在下で行われる。アルカリ金属カルボキシレートの量は、セルロースエーテルの100重量部当たりアルカリ金属カルボキシレートの好ましくは20〜200重量部である。脂肪族モノカルボン酸無水物及びジ−又はトリカルボン酸無水物がセルロースエーテルをエステル化するために使用される場合、2つの酸無水物は、同時に又は次々に別々に反応容器に導入され得る。
反応容器に導入される各酸無水物の量は、最終生成物において得られる所望のエステル化度に応じて決定され、通常、エステル化によるアンヒドログルコース単位の所望のモル置換度の化学量論量の1〜10倍である。脂肪族モノカルボン酸の無水物が使用される場合、脂肪族モノカルボン酸の無水物と、セルロースエーテルのアンヒドログルコース単位との間のモル比は、一般に、0.6以上、好ましくは0.8以上である。脂肪族モノカルボン酸の無水物と、セルロースエーテルのアンヒドログルコース単位との間のモル比は、一般に、8以下、好ましくは6以下、より好ましくは4以下である。ジカルボン酸の無水物が使用される場合、ジカルボン酸の無水物と、セルロースエーテルのアンヒドログルコース単位との間のモル比は、一般に、0.1以上、好ましくは0.13以上である。ジカルボン酸の無水物と、セルロースエーテルのアンヒドログルコース単位との間のモル比は、一般に、1.5以下、好ましくは1以下である。本発明の方法に利用されるセルロースエーテルのアンヒドログルコース単位のモル数は、DS(アルコキシル)及びMS(ヒドロキシアルコキシ)から置換アンヒドログルコース単位の平均分子量を計算することにより、出発原料として使用されたセルロースエーテルの重量から決定することができる。
混合物は、反応を完了させるのに十分な期間、すなわち典型的には2〜25時間、より典型的には2〜8時間、一般に60℃〜110℃、好ましくは70〜100℃で加熱される。出発原料としてのセルロースエーテルは、脂肪族カルボン酸に必ずしも可溶性でないが、セルロースエーテルにおける置換度が比較的小さい場合にはとりわけ、脂肪族カルボン酸中に分散させるか又は脂肪族カルボン酸によって膨潤させることのみができる。エステル化反応は、更にそのような分散又は膨潤セルロースエーテルを用いて行うことができ、エステル化反応が進行するにつれて、反応中のセルロースエーテルは、一般に反応媒体に溶解して最終的に均一な溶液を与える。
結果として生じた反応生成物混合物は、エステル化セルロースエーテル、典型的には反応媒体として使用された脂肪族カルボン酸、典型的にはアルカリ金属カルボキシレートなどの反応触媒、典型的には残留量の1つ若しくは複数のエステル化剤並びに脂肪族モノカルボン酸及び/又はジ−若しくはトリカルボン酸などの副生成物を含む。結果として生じた反応生成物混合物は、一般に3〜60、典型的には7〜35重量パーセントのエステル化セルロースエーテルと、10〜95、典型的には20〜70重量パーセントの脂肪族カルボン酸と、1〜50、典型的には5〜30重量パーセントのアルカリ金属カルボキシレートなどの反応触媒と、0.1〜50、典型的には2〜40重量パーセントの、脂肪族モノカルボン酸及び/又はジ−若しくはトリカルボン酸の未反応の無水物などのマイナー成分とを含む。
本発明の方法の工程(i)において、上記の反応生成物混合物は、水性液体と接触され、及びエステル化セルロースエーテルは、反応生成物混合物から沈澱される。工程(i)前又は工程(i)において、セルロースエーテルは、反応生成物混合物、水性液体に又はそれらの組み合わせに添加されることが本発明の本質的な特徴である。セルロースエーテルは、1つ若しくは複数の部分で又は連続的に添加することができる。好ましくは、セルロースエーテルは、反応生成物混合物及び水性液体の組み合わせに添加され、すなわち好ましくは、水性液体の少なくとも一部は、最初に、セルロースエーテルを添加する前に反応生成物混合物に添加される。本発明の方法の工程(i)前又は工程(i)において反応生成物混合物に添加される好ましいセルロースエーテルは、エステル化セルロースエーテルを製造するための出発原料として有用である上で更に記載されたものである。
工程(i)前又は工程(i)において反応生成物混合物に添加されるセルロースエーテルと、エステル化反応において出発原料として使用されたセルロースエーテルとは、独立して、上に記載された好ましいセルロースエーテルから選択することができる。2つのセルロースエーテルは、同じものである必要はないが、それらは、好ましくは、同じものである。工程(i)前又は工程(i)において反応生成物混合物に添加される最も好ましいセルロースエーテルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。セルロースエーテルは、固体形態で又は水性液体中の溶液若しくは懸濁液として工程(i)前又は工程(i)において添加することができる。
本発明の方法の工程(i)の好ましい実施形態において、反応生成物混合物は、最初に、反応生成物混合物からエステル化セルロースエーテルを沈澱させることなく第1の量の水性液体で希釈され、希釈された反応生成物混合物は、次に、希釈された反応生成物混合物からエステル化セルロースエーテルを沈澱させるために第2の量の水性液体と接触される。セルロースエーテルは、反応生成物混合物が第1の量の水性液体で希釈される間に、及び/又は反応生成物混合物を第1の量の水性液体で希釈した後であるが、希釈された反応生成物混合物を第2の量の水性液体と接触させる前に、及び/又は希釈された反応生成物混合物が第2の量の水性液体と接触される間に添加され得る。水性液体の第1の量は、任意選択的であり、すなわち、それは、ゼロであり得る。好ましくは、水性液体の第1の量は、エステル化のために使用されたセルロースエーテルの1重量部当たり水性液体の0.2〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部、最も好ましくは1〜3.5重量部である。第1の量の水性液体が反応生成物混合物をクエンチするために使用される。反応生成物混合物がクエンチされるとき、反応生成物混合物中の残存量の酸無水物は、加水分解され、エステル化反応は、停止する。しかしながら、そのようなクエンチングは、反応生成物混合物からエステル化セルロースエーテルを沈澱させることなく行われるべきである。好ましくは、希釈された反応生成物混合物からエステル化セルロースエーテルを沈澱させるために使用される水性液体の第2量は、エステル化のために使用されたセルロースエーテルの1重量部当たり水性液体の5〜400重量部、より好ましくは8〜300重量部、最も好ましくは10〜100重量部、特に12〜50重量部である。
本発明の方法の工程(i)の別の実施形態において、反応生成物混合物は、反応生成物混合物からエステル化セルロースエーテルを沈澱させるために水性液体と直接、すなわち中間の希釈工程なしに接触される。好ましくは、反応生成物混合物からエステル化セルロースエーテルを沈澱させるために使用される水性液体の量は、エステル化のために使用されたセルロースエーテルの1重量部当たり水性液体の5〜400重量部、より好ましくは8〜300重量部、最も好ましくは10〜100重量部、特に12〜50重量部である。
本発明の1つの好ましい実施形態において、セルロースエーテルは、反応生成物混合物に固体として添加することができる。第1の量の水性液体での任意選択的な希釈、すなわちクエンチング工程が上に記載されたように実施される場合、セルロースエーテルは、第1の量の水性液体の添加前、添加中又は好ましくは添加後に添加され得る。
代わりに、セルロースエーテルは、水性液体に溶解又は分散され得る。任意選択的な希釈、すなわちクエンチング工程が実施される場合、セルロースエーテルは、反応生成物混合物への添加前に、クエンチングのために使用される第1の量の液体又は沈澱のために使用される第2の量の液体に溶解又は分散され得る。代わりに、セルロースエーテルは、任意選択的な希釈工程中又は沈澱工程前若しくは沈澱工程中に別々の溶液又は分散液として添加することができる。好ましくは、セルロースエーテルは、水性液体中の0.5〜10重量%、より好ましくは2〜8重量%、最も好ましくは4〜6重量%溶液又は分散液として添加される。セルロースエーテル溶液又は分散液は、それが工程(i)前に反応生成物混合物に添加されるか、又は工程(i)において任意選択的に希釈された反応生成物混合物に添加されるとき、好ましくは1〜98℃、より好ましくは10〜90℃の温度を有する。
工程(i)前又は工程(i)において反応生成物混合物に添加されるセルロースエーテルと、エステル化セルロースエーテルを製造するために利用されるセルロースエーテルとの間の重量比は、好ましくは、0.05:1以上、より好ましくは0.1:1以上、最も好ましくは0.25:1以上、特に0.4:1以上である。工程(i)前又は工程(i)において反応生成物混合物に添加されるセルロースエーテルと、エステル化セルロースエーテルを製造するために利用されるセルロースエーテルとの間の重量比は、好ましくは、5:1以下、より好ましくは2:1以下、最も好ましくは1:1以下、特に0.7:1以下である。
工程(i)に使用される水性液体は、少量の有機液体希釈剤を含み得る。しかしながら、水性液体は、水性液体の液体成分の総重量を基準として少なくとも55重量パーセント、好ましくは少なくとも65重量パーセント、より好ましくは少なくとも75重量パーセント、最も好ましくは少なくとも90重量パーセント、特に少なくとも95重量パーセントの水を含むべきである。好ましくは、水性液体は、セルロースエーテルが上に記載されたように任意選択的に溶解又は分散されている水である。
エステル化セルロースエーテルを含む反応生成物混合物は、一般に、60℃〜110℃の温度を有する。それは、反応生成物混合物の事前冷却なしに水性液体と接触させることができる。水性液体の温度は、好ましくは、1〜98℃、より好ましくは10〜90℃である。工程(i)は、低いせん断下に行うことができるが、それは、好ましくは、水性液体及び反応生成物混合物の組み合わせが少なくとも800s−1、好ましくは少なくとも1500s−1、より好ましくは少なくとも3000s−1、最も好ましくは少なくとも8000s−1のせん断速度にかけられる、国際特許出願国際公開第2013/148154号パンフレットに記載されているように行われる。せん断速度は、一般に300,000s−1以下、典型的には200,000s−1以下、より典型的には100,000s−1以下、最も典型的には50,000s−1以下である。
本発明の方法の工程(ii)において、沈澱したエステル化セルロースエーテルは、工程(i)において得られた混合物の残りから単離される。工程(i)において得られた混合物から沈澱したエステル化セルロースエーテルを単離する工程(ii)は、遠心分離若しくは濾過によって又は沈降時にデカンテーションによって或いはそれらの組み合わせによってなど、分離装置において公知の方法で行うことができる。好ましい分離装置は、真空フィルター、圧力フィルター、網目スクリーン及びフィルター遠心分離機又はデカンター遠心分離機などの濾過装置又はデカンターである。
単離されたエステル化セルロースエーテルは、好ましくは、(iii)単離されたエステル化セルロースエーテルを水性液体に懸濁させて懸濁液を提供する工程と、(iv)工程(iii)の懸濁液からエステル化セルロースエーテルを回収する工程とによって精製される。
工程(iii)において、単離されたエステル化セルロースエーテルは、好ましくは、エステル化セルロースエーテルの1重量部当たり2〜400重量部、より好ましくは3〜300重量部、最も好ましくは4〜150重量部の水性液体と接触される。水性液体は、上で更に記載されたように、少量の有機液体希釈剤を更に含み得る。エステル化セルロースエーテルは、好ましくは、高せん断又は低せん断ブレンディングなどの混合下で水性液体に懸濁される。
工程(iv)は、遠心分離若しくは濾過によって又は沈降時にデカンテーションによってなどの、分離装置において公知の方法で行うことができる。好ましい分離装置は、真空フィルター、圧力フィルター、網目スクリーン及びフィルター遠心分離機若しくはデカンター遠心分離機又はそれらの組み合わせなどの濾過装置又はデカンターである。工程(iv)において、精製エステル化セルロースエーテルが得られる。
上に記載されたような工程(iii)及び(Iv)のシーケンスは、1回又は数回、好ましくは1回〜5回繰り返すことができる。例えば、工程(iii)、工程(iv)、工程(iii)及び工程(iv)のシーケンスを行うことができる。
少なくとも1つの懸濁工程(iii)において、27℃以下、好ましくは3〜25℃、より好ましくは3〜20℃の温度を有する水性液体とエステル化セルロースエーテルとを接触させることが推奨される。この懸濁工程(iii)において、工程(i)前又は工程(i)において反応生成物混合物に添加されたセルロースエーテルは、水性液体に溶解され、エステル化セルロースエーテルから分離される。
上に記載されたような工程(iii)及び工程(iv)のシーケンスが数回行われる場合、好ましくは最後の懸濁工程(iii)において、水性液体は、27℃以下、好ましくは3〜25℃、より好ましくは3〜20℃の上述の温度を有する。工程(iii)及び工程(iv)のシーケンスが数回行われる場合、他の懸濁工程(iii)に利用される水性液体は、一般に、3℃〜95℃、好ましくは10℃〜90℃、より好ましくは28℃〜90℃、最も好ましくは50℃〜85℃の温度を有する。本発明のいくつかの実施形態がここで以下の実施例において詳細に記載される。
特に明記しない限り、全ての部及び百分率は、重量による。本実施例では、以下の試験手順を用いる。
ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)におけるエーテル及びエステル基の含有量
エステル化セルロースエーテルにおけるエーテル基の含有量は、“Hypromellose”,United States Pharmacopeia and National Formulary,USP 35,pp3467−3469に記載されたものと同じ方法で測定する。
アセチル基(−CO−CH3)でのエステル置換及びスクシノイル基(−CO−CH2−CH2−COOH)でのエステル置換は、Hypromellose Acetate Succinate,United States Pharmacopeia and National Formulary,NF 29,pp.1548−1550”に従って測定する。エステル置換についての報告値は、揮発性物質(上記HPMCASモノグラフにおけるセクション「乾燥時損失」に記載されているように測定される)を補正している。
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の特性
HPMCにおけるメトキシル基の及びヒドロキシプロポキシル基の含有量は、“Hypromellose”,United States Pharmacopeia and National Formulary,USP 35,pp3467−3469に記載されているように測定する。
HPMCの粘度は、United States Pharmacopeia(USP 35,“Hypromellose”,pages423−424及び3467−3469並びにASTM D−445及びその中に言及されているISO 3105)に記載されているようにUbbelohde粘度測定によって20℃で水中の2重量%溶液として測定する。
実施例1
I.HPMCASを含む反応生成物混合物の製造
514.07gの氷酢酸、202.49g(乾燥含有量98.77%)のヒドロキシプロピルチルセルロース(HPMC)及び43.54gの酢酸ナトリウム(水を含まない)を、147mm内径であり、及び120mmの外径が300rpmで作動する状態のMIGTM攪拌機(2翼軸流羽根車、会社EKATO,Schopfheim,Germany)の使用によって強く混合されるガラス反応器に導入した。HPMCは、20℃で2%水溶液として測定される約5mPa・sの粘度、2.0のメトキシル置換度、DS(メトキシル)及び0.86のヒドロキシプロポキシル置換、MS(ヒドロキシプロポキシル)を有した。
ガラス反応器を加熱浴に入れ、混合物を85℃に加熱した。33.84gの無水コハク酸及び147.69gの無水酢酸を添加した。混合を30分間続行し、次に130.61gの酢酸ナトリウム(水を含まない)を添加した。浴温を85℃に保ちながら、強い混合を3時間続行してエステル化を達成した。
II.本発明の方法によるHPMCASの回収
上記の手順Iにおいて得られるような熱い反応生成物混合物を318.46gの水の添加によってクエンチした。水は、室温を有した。反応生成物混合物は、クエンチングによって希釈され、粘性がより少なくなった。
室温を有する2Lの水中の100gのHPCMの溶液を添加することによって希釈された反応生成物混合物からHPMCASを沈澱させた。HPMCは、1.92のメトキシル置換(DSM)、0.24のヒドロキシプロポキシル置換(MSHP)及び20℃で水中の2%溶液として測定される3.0mPa・sの粘度を有した。HPMCは、Methocel E3 LV PremiumセルロースエーテルとしてThe Dow Chemical Companyから商業的に入手可能である。
クエンチングのための水の及び沈澱のためのHPMC溶液の添加中、300rpmで作動する上記のMIGTM攪拌機を用いてガラス反応器の内容物を攪拌した。
結果として生じた懸濁液からHPMCASを濾過によって単離した。中程度の粘着性のフィルターケーキが得られた。
5000rpmで作動するUltra−Turrax攪拌機S50−G45(回転子径36mm、内部固定子径38mm)を用いて3Lの沸騰水にフィルターケーキを再懸濁させた。結果として生じた懸濁液からHPMCASを濾過によって再び単離した。結果として生じたフィルターケーキは、ごく僅かに粘着性であった。
室温を有する3Lの水にフィルターケーキを再懸濁させた。再び、5000rpmで作動するUltra−Turrax攪拌機S50−G45を再懸濁のために用いた。結果として生じた懸濁液からPMCASを濾過によって単離した。結果として生じたフィルターケーキは、全く粘着性ではなかった。
室温を有する3Lの水への200rpmでの再懸濁及び濾過による分離によってフィルターケーキを5回十分に洗浄した。最終濾過後、HPMCASを40℃で乾燥させた。HPMCは、非常に大きい程度までこれらの洗浄工程によって除去することができた。非粘着性のフィルターケーキが残った。最終HPMCAS生成物中の残存HPMCの残存量は、アセトン中のHPMCASの5重量%溶液の遠心分離によって測定した。HPMC残存量は、HPMCAS及びHPMCの総重量を基準として約0.2重量%であるにすぎなかった。
比較例A:
I.HPMCASを含む反応生成物混合物の製造
HPMCASを含む反応生成物混合物を実施例1におけるように製造した。
II.セルロースエーテル添加なしでのHPMCASの回収
手順Iにおいて得られるような熱い反応生成物混合物を318.46gの水の添加によってクエンチした。水は、室温を有した。反応生成物混合物は、クエンチングによって希釈され、粘性がより少なくなった。
室温を有する2Lの水を添加することによって希釈された反応生成物混合物からHPMCASを沈澱させた。
クエンチング及び沈澱のための水の添加中、300rpmで作動する上記のMIGTM攪拌機を用いてガラス反応器の内容物を攪拌した。
結果として生じた懸濁液からHPMCASを濾過によって単離した。チューインガムの外観を有する極めて粘着性のフィルターケーキが得られた。
5000rpmで作動するUltra−Turrax攪拌機S50−G45(回転子径36mm、内部固定子径38mm)を用いて、室温を有する3Lの水にフィルターケーキを再懸濁させた。結果として生じた懸濁液からHPMCASを濾過によって再び単離した。結果として生じたフィルターケーキは、明らかに粘着性であった。
室温を有する3Lの水にフィルターケーキを再懸濁させた。再び、5000rpmで作動するUltra−Turrax攪拌機S50−G45を再懸濁のために用いた。結果として生じた懸濁液からHPMCASを濾過によって単離した。結果として生じたフィルターケーキは、依然として僅かに粘着性であった。
室温を有する3Lの水への200rpmでの再懸濁及び濾過による分離によってフィルターケーキを5回十分に洗浄した。結果として生じたフィルターケーキは、依然として僅かに粘着性であった。最終濾過後、HPMCASを40℃で乾燥させた。
比較例B:
希釈された反応生成物混合物からのHPMCASの沈澱、結果として生じた懸濁液からのHPMCASの単離及びチューインガムの外観を有した極めて粘着性のフィルターケーキの回収後、5000rpmで作動するUltra−Turrax攪拌機S50−G45(回転子径36mm、内部固定子径38mm)を用いて3Lの沸騰水にフィルターケーキを再懸濁させたことを除いて、比較例Aを繰り返した。
室温を有する3Lの水にフィルターケーキを再懸濁させた。再び、5000rpmで作動するUltra−Turrax攪拌機S50−G45を再懸濁のために用いた。結果として生じた懸濁液からHPMCASを濾過によって単離した。結果として生じたフィルターケーキは、比較例Aにおけるよりも更に粘着性であった。
実施例2
I.HPMCASを含む反応生成物混合物の製造
HPMCASを含む反応生成物混合物を実施例1におけるように製造した。
II.本発明の方法によるHPMCASの回収
手順Iにおいて得られるような熱い反応生成物混合物を318.46gの水の添加によってクエンチした。水は、室温を有した。実施例1におけるものと同じタイプの100gのHPMCを、固体として希釈された反応生成物混合物に添加した。10分後、21℃を有する2Lの水の添加によって希釈された反応生成物混合物からHPMCASを沈澱させた。
結果として生じた懸濁液からHPMCASを濾過によって単離した。フィルターケーキは、実施例1におけるよりも更に粘着性が少なかった。
実施例1に記載されたように、フィルターケーキを、次にUltra−Turrax攪拌機S50−G45を用いて3Lの沸騰水に再懸濁させ、再び結果として生じた懸濁液から濾過によって単離した。結果として生じたフィルターケーキは、再び、実施例1におけるよりも更に粘着性が少なかった。
実施例1に記載されたように、フィルターケーキを、室温を有する3Lの水に再懸濁させ、結果として生じた懸濁液から濾過によって再び単離した。結果として生じたフィルターケーキは、全く粘着性ではなかった。それを実施例1におけるように更に処理した。
本発明は、反応生成物混合物からセルロースエーテルのエステルを回収する改良された方法に関する。
セルロースエーテルのエステル、それらの使用及びそれらの調製方法は、当技術分野において概して公知である。
エステル化セルロースエーテルを製造する一般的な方法は、国際公開第2013/148154号パンフレットに記載されている。典型的には、セルロースエーテルは、脂肪族カルボン酸及び任意選択的にエステル化触媒の存在下で脂肪族モノカルボン酸無水物又はジ−若しくはトリカルボン酸無水物或いは脂肪族モノカルボン酸無水物及びジ−又はトリカルボン酸無水物の組み合わせと反応される。
いくつかのエステル化セルロースエーテルは、重要な用途を有する。ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート(HPMCA)及びヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)は、医薬剤形において有用である。HPMCASは、医薬剤形のための腸溶性ポリマーとして有用である。腸溶性ポリマーは、胃の酸性環境で無傷のままであるものである。そのようなポリマーでコートされた剤形は、酸性環境での不活性化若しくは分解から薬物を保護するか又は薬物による胃の炎症を防ぐ。
エステル化後のその反応生成物混合物からHPMCAS、HPMCA又はHPMCPなどのエステル化セルロースエーテルを回収する従来の方法では、生成物の沈澱を開始させ、且つ不純物を希釈及び除去するために冷水が反応生成物混合物に注がれる。しかしながら、この方法を適用すると、粒子間凝集が非常に大きく起こるため、微細粉末又は顆粒の形態でのセルロースエーテルのエステルを得ることができない。HPMCAS又はHPMCAなどのエステル化セルロースエーテルは、酢酸などの脂肪族カルボン酸及び酢酸ナトリウムなどのアルカリ金属カルボキシレートの存在下での反応生成物混合物において非常に粘着な性質を示す傾向がある。粒子間凝集は、水が粒子間に浸透することを阻み、その結果、酢酸、酢酸ナトリウム、コハク酸、フタル酸、未反応ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等のような不純物を効果的に除去することが困難になる。更に、粒状生成物を得るために生成物の追加の粉砕又は破砕が必要とされる。
この問題に対処するために幾つかの方法が提案されている。
米国特許第4,226,981号明細書及び国際特許出願国際公開第2005/115330号パンフレットは、エステル化触媒としての酢酸ナトリウムなどのアルカリカルボキシレート及び反応媒体としての酢酸の存在下において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを無水コハク酸及び無水酢酸でエステル化することにより、HPMCAS又はHPMCAなどのセルロースエーテルの混合エステルを調製する方法を開示している。エステル化反応の完了後、反応生成物が沈澱するように大量の水、具体的には10倍容量の水が反応生成物混合物に添加される。沈澱した生成物は、次に、不純物を除去するために水での十分な洗浄にかけられ、乾燥されて、粉末状又は粒状形態での混合エステルを生成する。
欧州特許出願第0 219 426号明細書は、反応生成物混合物への大量の水の添加が続き、混合物中に形成された沈澱物が濾過によって集められ、洗浄する沈澱物がもはや酸性でなくなるまで水で繰り返し洗浄される、HPMCP又はHPMCASを製造する方法を開示している。
米国特許出願公開第2004/0152886号明細書は、粒子間に存在するフタル酸及び酢酸のような不純物が水と接触し、洗い流され得るようにHPMCP粒子の凝集を防ぐという必要性に取り組んでいる。米国特許出願公開第2004/0152886号明細書は、後処理プロセスとして流動化溶媒を添加することによって反応生成物混合物の流動性を増加させ、スプレーノズルを通してそれを水中に噴霧することを提案している。
国際特許出願国際公開第2013/148154号パンフレットにおいて、その反応生成物混合物からエステル化セルロースエーテルを沈澱させる改良された方法が記載されている。この方法によれば、エステル化セルロースエーテルを含む反応生成物混合物は、水と接触され、水及び反応生成物混合物の組み合わせは、少なくとも800s −1 のせん断速度にかけられる。エステル化セルロースエーテルの沈澱中又沈澱後及び洗浄中のエステル化セルロースエーテルの粒子の実質的な凝集が防がれ得る。非粘着性の微細粉末状セルロースエーテルのエステルが得られる。
国際特許出願国際公開第2015/041973号パンフレットは、エステル化セルロースエーテルが、それが沈澱され、反応生成物混合物から分離された後に精製目的のために懸濁される、洗浄液体からのエステル化セルロースエーテルの分離可能性を改善する方法を開示している。
不十分に水溶性の薬物のバイオアベイラビリティ、すなわち摂取時の個体によるそのような薬物の生体内吸収を増加させるために有用であるそれらのエステル化セルロースエーテルに関して、多くの研究努力が当業者によって費やされてきた。一般的な手順は、エステル化セルロースエーテル中の薬物の固体分散系を形成することであり、エステル化セルロースエーテルは、薬物の結晶化度を下げることを目的としている。そのような固体分散系を調製する公知の方法は、噴霧乾燥又は溶融押出による。溶融押出法では、エステル化セルロースエーテルと、薬物と、任意選択的な添加剤とがブレンドされ、射出成形、溶融キャスティング又は圧縮成形などの溶融押出にかけられる。溶融押出は、噴霧乾燥と異なって有機溶媒を全く必要としないために非常に望ましい。溶融押出に特に好適であるエステル化セルロースエーテルは、それらの低い粘度及び/又は特殊な程度のエーテル若しくはエステル置換のために低いガラス転移温度T g を有する。そのようなエステル化セルロースエーテルは、国際特許出願国際公開第2014/137778号パンフレット、国際公開第2014/137777号パンフレット及び同第2014/137789号パンフレットに並びに米国特許出願公開第2014/0357681号明細書及び同第2016/0095928号明細書に開示されている。残念ながら、そのようなエステル化セルロースエーテルは、酢酸などの脂肪族カルボン酸及び酢酸ナトリウムなどのアルカリ金属カルボキシレートの存在下での反応生成物混合物において、他のエステル化セルロースエーテルよりも更に多い粘着な性質を示す。
そのため、その反応生成物混合物からエステル化セルロースエーテルを回収する改良された方法を見出すことが依然として緊急に必要とされている。したがって、本発明の目的は、反応生成物混合物からの沈澱後のエステル化セルロースエーテルの粒子の実質的な凝集を防ぐことができる方法を提供することである。本発明の別の目的は、精製プロセス中のそのハンドリング、輸送可能性及び洗浄性を改善するために、エステル化セルロースエーテルの洗浄中のエステル化セルロースエーテルの粒子の実質的な凝集及び粘着性を防ぐことができる方法を提供することである。本発明の更に別の目的は、非粘着性の微細粉末状エステル化セルロースエーテルを得ることができる方法を提供することである。反応生成物混合物からの沈澱後に特に粘着性であるエステル化セルロースエーテルについて、本発明の1つ又は全てのこれらの目的が更に達成される場合、特に望ましいであろう。
意外にも、i)沈澱中又は沈澱後のエステル化セルロースエーテルの粒子の凝集及び粘着性を低減することができ、ii)エステル化セルロースエーテルの洗浄中のエステル化セルロースエーテルの粒子の凝集及び粘着性を低減することができ、それによって精製プロセス中のそのハンドリング、輸送可能性及び洗浄性が改善され、且つiii)非粘着性の微細粉末状セルロースエーテルのエステルを得ることができる方法が見出された。
したがって、本発明の一態様は、(a)セルロースエーテルと、(b)脂肪族モノカルボン酸無水物又はジ−若しくはトリカルボン酸無水物或いは脂肪族モノカルボン酸無水物及びジ−又はトリカルボン酸無水物の組み合わせとの反応から得られた反応生成物混合物からエステル化セルロースエーテルを回収する方法であって、(i)反応生成物混合物を水性液体と接触させ、且つ反応生成物混合物からエステル化セルロースエーテルを沈澱させる工程と、(ii)工程(i)において得られた混合物から沈澱したエステル化セルロースエーテルを単離する工程とを含み、セルロースエーテルは、反応生成物混合物、水性液体又はそれらの組み合わせに工程(i)前又は工程(i)において添加される、方法である。
本発明の別の態様は、エステル化セルロースエーテルを調製する方法であって、(a)セルロースエーテルは、(b)脂肪族モノカルボン酸無水物又はジ−若しくはトリカルボン酸無水物或いは脂肪族モノカルボン酸無水物及びジ−又はトリカルボン酸無水物の組み合わせと(c)脂肪族カルボン酸の存在下で反応され、及びエステル化セルロースエーテルは、生成された反応生成物混合物から上述の方法に従って回収される、方法である。
本発明の更に別の態様は、エステル化セルロースエーテルの粘着性を、(a)セルロースエーテルと、(b)脂肪族モノカルボン酸無水物又はジ−若しくはトリカルボン酸無水物或いは脂肪族モノカルボン酸無水物及びジ−又はトリカルボン酸無水物の組み合わせとの反応から得られた反応生成物混合物からエステル化セルロースエーテルを回収する方法において低減する方法であって、(i)反応生成物混合物を水性液体と接触させ、且つ反応生成物混合物からエステル化セルロースエーテルを沈澱させる工程と、(ii)工程(i)において得られた混合物から沈澱したエステル化セルロースエーテルを単離する工程とを含み、セルロースエーテルは、反応生成物混合物、水性液体又はそれらの組み合わせに工程(i)前又は工程(i)において添加される、方法である。
本発明の方法によれば、エステル化セルロースエーテルは、(a)セルロースエーテルと、(b)脂肪族モノカルボン酸無水物又はジ−若しくはトリカルボン酸無水物或いは脂肪族モノカルボン酸無水物及びジ−又はトリカルボン酸無水物の組み合わせとの、任意選択的に(c)脂肪族カルボン酸及び任意選択的に(d)アルカリ金属カルボキシレートの存在下での反応から得られた反応生成物混合物から以下に更に記載されるように回収される。
エステル化反応のための出発原料として使用されるセルロースエーテル(a)は、好ましくは、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース又はヒドロキシアルキルアルキルセルロースである。ヒドロキシアルコキシ基は、典型的には、ヒドロキシメトキシ、ヒドロキシエトキシ及び/又はヒドロキシプロポキシ基である。ヒドロキシエトキシ及び/又はヒドロキシプロポキシ基が好ましい。好ましくは、単一種のヒドロキシアルコキシ基、より好ましくはヒドロキシプロポキシがセルロースエーテル中に存在する。アルコキシ基は、典型的には、メトキシ、エトキシ及び/又はプロポキシ基である。メトキシ基が好ましい。メチルセルロース、エチルセルロース及びプロピルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース及びヒドロキシブチルエチルセルロースは、上に定義されたセルロースエーテルを例証するものである。特に好ましいセルロースエーテルは、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースなど、水中で熱フロキュレーション点を有するものである。セルロースエーテルは、好ましくは、水溶性であり、これは、25℃及び1気圧で蒸留水の100グラムへの少なくとも1グラム、より好ましくは少なくとも2グラム、最も好ましくは少なくとも5グラムの水溶解度をそれが有することを意味するより好ましくは、セルロースエーテルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
エステル化反応のための出発原料として使用されるセルロースエーテルは、一般に、ASTM D2363−79(再認可2006)に従って20℃で2重量%水溶液として測定される1.20〜400mPa・s又は1.20〜100mPa・s、好ましくは1.5〜50mPa・s、より好ましくは1.5〜30mPa・s、最も好ましくは1.5〜20mPa・s、特に1.5〜10mPa・sの粘度を有する。本発明の方法は、エステル化反応のための出発原料として使用されるセルロースエーテルが、上に示されたように測定される1.5〜8.0mPa・sの粘度を有する場合に特に有用である。本発明の1つの好ましい実施形態において、エステル化反応のための出発原料として使用されるセルロースエーテルは、4.0〜8.0mPa・sの粘度を有し、別の好ましい実施形態において、セルロースエーテルは、上に示されたように測定される1.5〜2.5mPa・sの粘度を有する。後者のセルロースエーテルから製造されたエステル化セルロースエーテルは、特に粘着性である。これらのエステル化セルロースエーテルについては、粘着性を低減することが特別に必要である。
MS(ヒドロキシアルコキシル)は、アンヒドログルコース単位当たりのヒドロキシアルコキシル基の平均のモル数である。用語「ヒドロキシアルコキシル基」は、単一ヒドロキシアルコキシル基又は側鎖のいずれかを含む、ヒドロキシアルコキシル置換基の構成単位としてのヒドロキシアルコキシル基を意味し、ここで、2つ以上のヒドロキシアルコキシ単位は、エーテル結合によって互いに共有結合している。この定義内において、ヒドロキシアルコキシル置換基の末端ヒドロキシル基が更にアルキル化、例えばメチル化されているか又はされていないかは、重要ではなく、アルキル化及び非アルキル化ヒドロキシアルコキシル置換基の両方がMS(ヒドロキシアルコキシル)の測定のために含まれる。アンヒドログルコース単位当たりの、メトキシ基などのアルコキシ基で置換されたヒドロキシル基の平均数は、アルコキシ基の置換度(DS)と称される。DSの上に与えられた定義において、用語「アルコキシ基で置換されたヒドロキシル基」は、セルロース主鎖の炭素原子に直接結合したアルキル化ヒドロキシル基のみならず、セルロース主鎖に結合したヒドロキシアルコキシ置換基のアルキル化ヒドロキシル基も含む。
本発明の好ましい実施形態において、セルロースエーテルは、1.0〜2.7、好ましくは1.0〜2.5、より好ましくは1.0〜2.3、最も好ましくは1.1〜2.2、特に1.6〜2.2のDS メトキシル 及び0.05〜1.30、好ましくは0.10〜1.20、より好ましくは0.15〜1.10のMS ヒドロキシプロポキシル を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースである。1つの好ましい実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、0.15〜0.50、より好ましくは0.20〜0.40のMS ヒドロキシプロポキシル を有する。別の好ましい実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、0.40〜1.30、より好ましくは0.60〜1.00のMS ヒドロキシプロポキシル を有する。DS メトキシル 及びMS ヒドロキシプロポキシル は、United States Pharmacopeia and National Formulary,Hypromellose(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)に従って測定される。
本発明の方法は、エステル化反応のための出発原料として使用されるセルロースエーテルが、1.0〜2.7、好ましくは1.0〜2.5、より好ましくは1.0〜2.3、最も好ましくは1.1〜2.2、特に1.6〜2.2のDS メトキシル 及び0.40〜1.30、好ましくは0.40〜1.20、より好ましくは0.50〜1.10、最も好ましくは0.60〜1.10、特に0.60〜1.00のMS ヒドロキシプロポキシル を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースである場合に特に有用である。本発明のこの実施形態において、DS メトキシル とMS ヒドロキシプロポキシル との合計は、好ましくは、少なくとも1.8、より好ましくは少なくとも1.9、最も好ましくは少なくとも2.5及び好ましくは3.3以下、より好ましくは3.2以下、最も好ましくは3.1以下である。そのようなセルロースエーテルから製造されるエステル化セルロースエーテルは、特に粘着性であり、それらの粘着性を低減することが特別に必要とされる。DS メトキシル 及びMS ヒドロキシプロポキシル は、上に示されたように測定される。
セルロースエーテル(a)は、(b)脂肪族モノカルボン酸無水物又はジ−若しくはトリカルボン酸無水物或いは脂肪族モノカルボン酸無水物及びジ−又はトリカルボン酸無水物の組み合わせと反応される。好ましい脂肪族モノカルボン酸無水物は、無水酢酸、無水酪酸及び無水プロピオン酸からなる群から選択される。好ましいジカルボン酸無水物は、無水コハク酸、無水マレイン酸及び無水フタル酸からなる群から選択される。好ましいトリカルボン酸無水物は、無水トリメリット酸である。好ましい脂肪族モノカルボン酸無水物を単独で使用することができるか、又は好ましいジ−若しくはトリカルボン酸無水物を単独で使用することができるか、又は好ましい脂肪族モノカルボン酸無水物を好ましいジ−若しくはトリカルボン酸無水物と組み合わせて使用することができる。
上述のセルロースエーテル、脂肪族モノカルボン酸無水物及びジ−又はトリカルボン酸無水物からの以下のエステル化セルロースエーテル:
i)HPMC−XY及びHPMC−X(式中、HPMCは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、Xは、A(アセテート)であるか、又はXは、B(ブチレート)であるか、又はXは、Pr(プロピオネート)であり、Yは、S(スクシネート)であるか、Yは、P(フタレート)であるか、Yは、M(マレエート)であるか、又はYは、T(トリメリテート)である)、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート(HPMCAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートトリメリテート(HPMCAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートマレエート(HPMCAM)又はヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)など;又は
ii)ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP);ヒドロキシプロピルセルロースアセテートスクシネート(HPCAS)、ヒドロキシブチルメチルセルロースプロピオネートスクシネート(HBMCPrS)、ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロースプロピオネートスクシネート(HEHPCPrS);及びメチルセルロースアセテートスクシネート(MCAS)
の製造が特に好ましい。
ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)は、最も好ましいエステル化セルロースエーテルである。HPMCASは、好ましくは、1.0〜2.7、より好ましくは1.0〜2.5、更により好ましくは1.0〜2.3、最も好ましくは1.1〜2.2、特に1.6〜2.2のDS メトキシル 及び0.05〜1.30、好ましくは0.10〜1.20、より好ましくは0.15〜1.10のMS ヒドロキシプロポキシル を有する。1つの好ましい実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、0.15〜0.50、より好ましくは0.20〜0.40のMS ヒドロキシプロポキシル を有する。別の好ましい実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、0.40〜1.30、より好ましくは0.60〜1.00のMS ヒドロキシプロポキシル を有する。
本発明の方法は、製造されるHPMCASが1.0〜2.7、より好ましくは1.0〜2.5、更により好ましくは1.0〜2.3、最も好ましくは1.1〜2.2、特に1.6〜2.2のDS メトキシル 及び0.40〜1.30、好ましくは0.40〜1.20、より好ましくは0.50〜1.10、最も好ましくは0.60〜1.10、特に0.60〜1.00のMS ヒドロキシプロポキシル を有する場合に特に有用である。本発明のこの実施形態において、DS メトキシル とMS ヒドロキシプロポキシル との合計は、好ましくは、少なくとも1.8、より好ましくは少なくとも1.9、最も好ましくは少なくとも2.5及び好ましくは3.3以下、より好ましくは3.2以下、最も好ましくは3.1以下である。
製造されたエステル化セルロースエーテル、特にHPMCASは、一般に、20℃で0.43重量%の水性NaOH中のエステル化セルロースエーテルの2.0重量%溶液として測定される1.20〜400mPa・s又は1.20〜100mPa・s、好ましくは1.5〜50mPa・s、より好ましくは1.5〜30mPa・s、更により好ましくは1.5〜20mPa・s、最も好ましくは1.5〜10mPa・s、特に1.5〜8.0mPa・sの粘度を有する。1つの好ましい実施形態において、製造されたエステル化セルロースエーテルは、4.0〜8.0mPa・sの粘度を有し、別の好ましい実施形態において、製造されたエステル化セルロースエーテルは、上に示されたように測定される1.5〜2.5mPa・sの粘度を有する。エステル化セルロースエーテルの2.0重量%溶液は、“Hypromellose Acetate Succinate,United States Pharmacopeia and National Formulary,NF 29,pp.1548−1550”に記載されているように調製され、これにDIN 51562−1:1999−01(1999年1月)に従ったUbbelohde粘度測定が続く。
セルロースエーテルのエステル化は、公知の方法において、例えば米国特許第3,435,027号明細書及び同第4,226,981号明細書、国際特許出願国際公開第2005/115330号パンフレット及び国際公開第2013/148154号パンフレット又は欧州特許出願第0 219 426号明細書に記載されているように行うことができる。セルロースエーテルのエステル化は、好ましくは、(c)反応媒体としての脂肪族カルボン酸、例えば酢酸、プロピオン酸又は酪酸などにおいて行われる。反応媒体は、室温で液体であり、且つセルロースエーテルと反応しない少量の他の溶媒又は希釈剤、例えばジクロロメタン又はジクロロメチルエーテルなどのハロゲン化C 1 〜C 3 誘導体などを含むことができるが、脂肪族カルボン酸の量は、反応媒体の総重量を基準として好ましくは50パーセント超、より好ましくは少なくとも75パーセント、更により好ましくは少なくとも90パーセントである。最も好ましくは、反応媒体は、脂肪族カルボン酸からなる。エステル化反応は、一般に、セルロースエーテルの100重量部当たり100〜2,000重量部の反応媒体としての脂肪族カルボン酸の存在下で行われる。モル比[脂肪族カルボン酸/セルロースエーテルのアンヒドログルコース単位]は、一般に、[4.9/1.0]〜[20.0/1.0]、好ましくは[5.5/1.0]〜[17.0/1.0]、より好ましくは[5.7/1.0]〜[15.0/1.0]である。
エステル化反応は、好ましくは、(d)エステル化触媒の存在下、より好ましくは酢酸ナトリウム又は酢酸カリウムなどのアルカリ金属カルボキシレートの存在下で行われる。アルカリ金属カルボキシレートの量は、セルロースエーテルの100重量部当たりアルカリ金属カルボキシレートの好ましくは20〜200重量部である。脂肪族モノカルボン酸無水物及びジ−又はトリカルボン酸無水物がセルロースエーテルをエステル化するために使用される場合、2つの酸無水物は、同時に又は次々に別々に反応容器に導入され得る。
反応容器に導入される各酸無水物の量は、最終生成物において得られる所望のエステル化度に応じて決定され、通常、エステル化によるアンヒドログルコース単位の所望のモル置換度の化学量論量の1〜10倍である。脂肪族モノカルボン酸の無水物が使用される場合、脂肪族モノカルボン酸の無水物と、セルロースエーテルのアンヒドログルコース単位との間のモル比は、一般に、0.6以上、好ましくは0.8以上である。脂肪族モノカルボン酸の無水物と、セルロースエーテルのアンヒドログルコース単位との間のモル比は、一般に、8以下、好ましくは6以下、より好ましくは4以下である。ジカルボン酸の無水物が使用される場合、ジカルボン酸の無水物と、セルロースエーテルのアンヒドログルコース単位との間のモル比は、一般に、0.1以上、好ましくは0.13以上である。ジカルボン酸の無水物と、セルロースエーテルのアンヒドログルコース単位との間のモル比は、一般に、1.5以下、好ましくは1以下である。本発明の方法に利用されるセルロースエーテルのアンヒドログルコース単位のモル数は、DS(アルコキシル)及びMS(ヒドロキシアルコキシ)から置換アンヒドログルコース単位の平均分子量を計算することにより、出発原料として使用されたセルロースエーテルの重量から決定することができる。
混合物は、反応を完了させるのに十分な期間、すなわち典型的には2〜25時間、より典型的には2〜8時間、一般に60℃〜110℃、好ましくは70〜100℃で加熱される。出発原料としてのセルロースエーテルは、脂肪族カルボン酸に必ずしも可溶性でないが、セルロースエーテルにおける置換度が比較的小さい場合にはとりわけ、脂肪族カルボン酸中に分散させるか又は脂肪族カルボン酸によって膨潤させることのみができる。エステル化反応は、更にそのような分散又は膨潤セルロースエーテルを用いて行うことができ、エステル化反応が進行するにつれて、反応中のセルロースエーテルは、一般に反応媒体に溶解して最終的に均一な溶液を与える。
結果として生じた反応生成物混合物は、エステル化セルロースエーテル、典型的には反応媒体として使用された脂肪族カルボン酸、典型的にはアルカリ金属カルボキシレートなどの反応触媒、典型的には残留量の1つ若しくは複数のエステル化剤並びに脂肪族モノカルボン酸及び/又はジ−若しくはトリカルボン酸などの副生成物を含む。結果として生じた反応生成物混合物は、一般に3〜60、典型的には7〜35重量パーセントのエステル化セルロースエーテルと、10〜95、典型的には20〜70重量パーセントの脂肪族カルボン酸と、1〜50、典型的には5〜30重量パーセントのアルカリ金属カルボキシレートなどの反応触媒と、0.1〜50、典型的には2〜40重量パーセントの、脂肪族モノカルボン酸及び/又はジ−若しくはトリカルボン酸の未反応の無水物などのマイナー成分とを含む。
本発明の方法の工程(i)において、上記の反応生成物混合物は、水性液体と接触され、及びエステル化セルロースエーテルは、反応生成物混合物から沈澱される。工程(i)前又は工程(i)において、セルロースエーテルは、反応生成物混合物、水性液体に又はそれらの組み合わせに添加されることが本発明の本質的な特徴である。セルロースエーテルは、1つ若しくは複数の部分で又は連続的に添加することができる。好ましくは、セルロースエーテルは、反応生成物混合物及び水性液体の組み合わせに添加され、すなわち好ましくは、水性液体の少なくとも一部は、最初に、セルロースエーテルを添加する前に反応生成物混合物に添加される。本発明の方法の工程(i)前又は工程(i)において反応生成物混合物に添加される好ましいセルロースエーテルは、エステル化セルロースエーテルを製造するための出発原料として有用である上で更に記載されたものである。
工程(i)前又は工程(i)において反応生成物混合物に添加されるセルロースエーテルと、エステル化反応において出発原料として使用されたセルロースエーテルとは、独立して、上に記載された好ましいセルロースエーテルから選択することができる。2つのセルロースエーテルは、同じものである必要はないが、それらは、好ましくは、同じものである。工程(i)前又は工程(i)において反応生成物混合物に添加される最も好ましいセルロースエーテルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。セルロースエーテルは、固体形態で又は水性液体中の溶液若しくは懸濁液として工程(i)前又は工程(i)において添加することができる。
本発明の方法の工程(i)の好ましい実施形態において、反応生成物混合物は、最初に、反応生成物混合物からエステル化セルロースエーテルを沈澱させることなく第1の量の水性液体で希釈され、希釈された反応生成物混合物は、次に、希釈された反応生成物混合物からエステル化セルロースエーテルを沈澱させるために第2の量の水性液体と接触される。セルロースエーテルは、反応生成物混合物が第1の量の水性液体で希釈される間に、及び/又は反応生成物混合物を第1の量の水性液体で希釈した後であるが、希釈された反応生成物混合物を第2の量の水性液体と接触させる前に、及び/又は希釈された反応生成物混合物が第2の量の水性液体と接触される間に添加され得る。水性液体の第1の量は、任意選択的であり、すなわち、それは、ゼロであり得る。好ましくは、水性液体の第1の量は、エステル化のために使用されたセルロースエーテルの1重量部当たり水性液体の0.2〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部、最も好ましくは1〜3.5重量部である。第1の量の水性液体が反応生成物混合物をクエンチするために使用される。反応生成物混合物がクエンチされるとき、反応生成物混合物中の残存量の酸無水物は、加水分解され、エステル化反応は、停止する。しかしながら、そのようなクエンチングは、反応生成物混合物からエステル化セルロースエーテルを沈澱させることなく行われるべきである。好ましくは、希釈された反応生成物混合物からエステル化セルロースエーテルを沈澱させるために使用される水性液体の第2量は、エステル化のために使用されたセルロースエーテルの1重量部当たり水性液体の5〜400重量部、より好ましくは8〜300重量部、最も好ましくは10〜100重量部、特に12〜50重量部である。
本発明の方法の工程(i)の別の実施形態において、反応生成物混合物は、反応生成物混合物からエステル化セルロースエーテルを沈澱させるために水性液体と直接、すなわち中間の希釈工程なしに接触される。好ましくは、反応生成物混合物からエステル化セルロースエーテルを沈澱させるために使用される水性液体の量は、エステル化のために使用されたセルロースエーテルの1重量部当たり水性液体の5〜400重量部、より好ましくは8〜300重量部、最も好ましくは10〜100重量部、特に12〜50重量部である。
本発明の1つの好ましい実施形態において、セルロースエーテルは、反応生成物混合物に固体として添加することができる。第1の量の水性液体での任意選択的な希釈、すなわちクエンチング工程が上に記載されたように実施される場合、セルロースエーテルは、第1の量の水性液体の添加前、添加中又は好ましくは添加後に添加され得る。
代わりに、セルロースエーテルは、水性液体に溶解又は分散され得る。任意選択的な希釈、すなわちクエンチング工程が実施される場合、セルロースエーテルは、反応生成物混合物への添加前に、クエンチングのために使用される第1の量の液体又は沈澱のために使用される第2の量の液体に溶解又は分散され得る。代わりに、セルロースエーテルは、任意選択的な希釈工程中又は沈澱工程前若しくは沈澱工程中に別々の溶液又は分散液として添加することができる。好ましくは、セルロースエーテルは、水性液体中の0.5〜10重量%、より好ましくは2〜8重量%、最も好ましくは4〜6重量%溶液又は分散液として添加される。セルロースエーテル溶液又は分散液は、それが工程(i)前に反応生成物混合物に添加されるか、又は工程(i)において任意選択的に希釈された反応生成物混合物に添加されるとき、好ましくは1〜98℃、より好ましくは10〜90℃の温度を有する。
工程(i)前又は工程(i)において反応生成物混合物に添加されるセルロースエーテルと、エステル化セルロースエーテルを製造するために利用されるセルロースエーテルとの間の重量比は、好ましくは、0.05:1以上、より好ましくは0.1:1以上、最も好ましくは0.25:1以上、特に0.4:1以上である。工程(i)前又は工程(i)において反応生成物混合物に添加されるセルロースエーテルと、エステル化セルロースエーテルを製造するために利用されるセルロースエーテルとの間の重量比は、好ましくは、5:1以下、より好ましくは2:1以下、最も好ましくは1:1以下、特に0.7:1以下である。
工程(i)に使用される水性液体は、少量の有機液体希釈剤を含み得る。しかしながら、水性液体は、水性液体の液体成分の総重量を基準として少なくとも55重量パーセント、好ましくは少なくとも65重量パーセント、より好ましくは少なくとも75重量パーセント、最も好ましくは少なくとも90重量パーセント、特に少なくとも95重量パーセントの水を含むべきである。好ましくは、水性液体は、セルロースエーテルが上に記載されたように任意選択的に溶解又は分散されている水である。
エステル化セルロースエーテルを含む反応生成物混合物は、一般に、60℃〜110℃の温度を有する。それは、反応生成物混合物の事前冷却なしに水性液体と接触させることができる。水性液体の温度は、好ましくは、1〜98℃、より好ましくは10〜90℃である。工程(i)は、低いせん断下に行うことができるが、それは、好ましくは、水性液体及び反応生成物混合物の組み合わせが少なくとも800s −1 、好ましくは少なくとも1500s −1 、より好ましくは少なくとも3000s −1 、最も好ましくは少なくとも8000s −1 のせん断速度にかけられる、国際特許出願国際公開第2013/148154号パンフレットに記載されているように行われる。せん断速度は、一般に300,000s −1 以下、典型的には200,000s −1 以下、より典型的には100,000s −1 以下、最も典型的には50,000s −1 以下である。
本発明の方法の工程(ii)において、沈澱したエステル化セルロースエーテルは、工程(i)において得られた混合物の残りから単離される。工程(i)において得られた混合物から沈澱したエステル化セルロースエーテルを単離する工程(ii)は、遠心分離若しくは濾過によって又は沈降時にデカンテーションによって或いはそれらの組み合わせによってなど、分離装置において公知の方法で行うことができる。好ましい分離装置は、真空フィルター、圧力フィルター、網目スクリーン及びフィルター遠心分離機又はデカンター遠心分離機などの濾過装置又はデカンターである。
単離されたエステル化セルロースエーテルは、好ましくは、(iii)単離されたエステル化セルロースエーテルを水性液体に懸濁させて懸濁液を提供する工程と、(iv)工程(iii)の懸濁液からエステル化セルロースエーテルを回収する工程とによって精製される。
工程(iii)において、単離されたエステル化セルロースエーテルは、好ましくは、エステル化セルロースエーテルの1重量部当たり2〜400重量部、より好ましくは3〜300重量部、最も好ましくは4〜150重量部の水性液体と接触される。水性液体は、上で更に記載されたように、少量の有機液体希釈剤を更に含み得る。エステル化セルロースエーテルは、好ましくは、高せん断又は低せん断ブレンディングなどの混合下で水性液体に懸濁される。
工程(iv)は、遠心分離若しくは濾過によって又は沈降時にデカンテーションによってなどの、分離装置において公知の方法で行うことができる。好ましい分離装置は、真空フィルター、圧力フィルター、網目スクリーン及びフィルター遠心分離機若しくはデカンター遠心分離機又はそれらの組み合わせなどの濾過装置又はデカンターである。工程(iv)において、精製エステル化セルロースエーテルが得られる。
上に記載されたような工程(iii)及び(Iv)のシーケンスは、1回又は数回、好ましくは1回〜5回繰り返すことができる。例えば、工程(iii)、工程(iv)、工程(iii)及び工程(iv)のシーケンスを行うことができる。
少なくとも1つの懸濁工程(iii)において、27℃以下、好ましくは3〜25℃、より好ましくは3〜20℃の温度を有する水性液体とエステル化セルロースエーテルとを接触させることが推奨される。この懸濁工程(iii)において、工程(i)前又は工程(i)において反応生成物混合物に添加されたセルロースエーテルは、水性液体に溶解され、エステル化セルロースエーテルから分離される。
上に記載されたような工程(iii)及び工程(iv)のシーケンスが数回行われる場合、好ましくは最後の懸濁工程(iii)において、水性液体は、27℃以下、好ましくは3〜25℃、より好ましくは3〜20℃の上述の温度を有する。工程(iii)及び工程(iv)のシーケンスが数回行われる場合、他の懸濁工程(iii)に利用される水性液体は、一般に、3℃〜95℃、好ましくは10℃〜90℃、より好ましくは28℃〜90℃、最も好ましくは50℃〜85℃の温度を有する。本発明のいくつかの実施形態がここで以下の実施例において詳細に記載される。
特に明記しない限り、全ての部及び百分率は、重量による。本実施例では、以下の試験手順を用いる。
ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)におけるエーテル及びエステル基の含有量
エステル化セルロースエーテルにおけるエーテル基の含有量は、“Hypromellose”,United States Pharmacopeia and National Formulary,USP 35,pp3467−3469に記載されたものと同じ方法で測定する。
アセチル基(−CO−CH 3 )でのエステル置換及びスクシノイル基(−CO−CH 2 −CH 2 −COOH)でのエステル置換は、Hypromellose Acetate Succinate,United States Pharmacopeia and National Formulary,NF 29,pp.1548−1550”に従って測定する。エステル置換についての報告値は、揮発性物質(上記HPMCASモノグラフにおけるセクション「乾燥時損失」に記載されているように測定される)を補正している。
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の特性
HPMCにおけるメトキシル基の及びヒドロキシプロポキシル基の含有量は、“Hypromellose”,United States Pharmacopeia and National Formulary,USP 35,pp3467−3469に記載されているように測定する。
HPMCの粘度は、United States Pharmacopeia(USP 35,“Hypromellose”,pages423−424及び3467−3469並びにASTM D−445及びその中に言及されているISO 3105)に記載されているようにUbbelohde粘度測定によって20℃で水中の2重量%溶液として測定する。
実施例1
I.HPMCASを含む反応生成物混合物の製造
514.07gの氷酢酸、202.49g(乾燥含有量98.77%)のヒドロキシプロピルチルセルロース(HPMC)及び43.54gの酢酸ナトリウム(水を含まない)を、147mm内径であり、及び120mmの外径が300rpmで作動する状態のMIG TM 攪拌機(2翼軸流羽根車、会社EKATO,Schopfheim,Germany)の使用によって強く混合されるガラス反応器に導入した。HPMCは、20℃で2%水溶液として測定される約5mPa・sの粘度、2.0のメトキシル置換度、DS(メトキシル)及び0.86のヒドロキシプロポキシル置換、MS(ヒドロキシプロポキシル)を有した。
ガラス反応器を加熱浴に入れ、混合物を85℃に加熱した。33.84gの無水コハク酸及び147.69gの無水酢酸を添加した。混合を30分間続行し、次に130.61gの酢酸ナトリウム(水を含まない)を添加した。浴温を85℃に保ちながら、強い混合を3時間続行してエステル化を達成した。
II.本発明の方法によるHPMCASの回収
上記の手順Iにおいて得られるような熱い反応生成物混合物を318.46gの水の添加によってクエンチした。水は、室温を有した。反応生成物混合物は、クエンチングによって希釈され、粘性がより少なくなった。
室温を有する2Lの水中の100gのHPCMの溶液を添加することによって希釈された反応生成物混合物からHPMCASを沈澱させた。HPMCは、1.92のメトキシル置換(DS M )、0.24のヒドロキシプロポキシル置換(MS HP )及び20℃で水中の2%溶液として測定される3.0mPa ・ sの粘度を有した。HPMCは、Methocel E3 LV PremiumセルロースエーテルとしてThe Dow Chemical Companyから商業的に入手可能である。
クエンチングのための水の及び沈澱のためのHPMC溶液の添加中、300rpmで作動する上記のMIG TM 攪拌機を用いてガラス反応器の内容物を攪拌した。
結果として生じた懸濁液からHPMCASを濾過によって単離した。中程度の粘着性のフィルターケーキが得られた。
5000rpmで作動するUltra−Turrax攪拌機S50−G45(回転子径36mm、内部固定子径38mm)を用いて3Lの沸騰水にフィルターケーキを再懸濁させた。結果として生じた懸濁液からHPMCASを濾過によって再び単離した。結果として生じたフィルターケーキは、ごく僅かに粘着性であった。
室温を有する3Lの水にフィルターケーキを再懸濁させた。再び、5000rpmで作動するUltra−Turrax攪拌機S50−G45を再懸濁のために用いた。結果として生じた懸濁液からPMCASを濾過によって単離した。結果として生じたフィルターケーキは、全く粘着性ではなかった。
室温を有する3Lの水への200rpmでの再懸濁及び濾過による分離によってフィルターケーキを5回十分に洗浄した。最終濾過後、HPMCASを40℃で乾燥させた。HPMCは、非常に大きい程度までこれらの洗浄工程によって除去することができた。非粘着性のフィルターケーキが残った。最終HPMCAS生成物中の残存HPMCの残存量は、アセトン中のHPMCASの5重量%溶液の遠心分離によって測定した。HPMC残存量は、HPMCAS及びHPMCの総重量を基準として約0.2重量%であるにすぎなかった。
比較例A:
I.HPMCASを含む反応生成物混合物の製造
HPMCASを含む反応生成物混合物を実施例1におけるように製造した。
II.セルロースエーテル添加なしでのHPMCASの回収
手順Iにおいて得られるような熱い反応生成物混合物を318.46gの水の添加によってクエンチした。水は、室温を有した。反応生成物混合物は、クエンチングによって希釈され、粘性がより少なくなった。
室温を有する2Lの水を添加することによって希釈された反応生成物混合物からHPMCASを沈澱させた。
クエンチング及び沈澱のための水の添加中、300rpmで作動する上記のMIG TM 攪拌機を用いてガラス反応器の内容物を攪拌した。
結果として生じた懸濁液からHPMCASを濾過によって単離した。チューインガムの外観を有する極めて粘着性のフィルターケーキが得られた。
5000rpmで作動するUltra−Turrax攪拌機S50−G45(回転子径36mm、内部固定子径38mm)を用いて、室温を有する3Lの水にフィルターケーキを再懸濁させた。結果として生じた懸濁液からHPMCASを濾過によって再び単離した。結果として生じたフィルターケーキは、明らかに粘着性であった。
室温を有する3Lの水にフィルターケーキを再懸濁させた。再び、5000rpmで作動するUltra−Turrax攪拌機S50−G45を再懸濁のために用いた。結果として生じた懸濁液からHPMCASを濾過によって単離した。結果として生じたフィルターケーキは、依然として僅かに粘着性であった。
室温を有する3Lの水への200rpmでの再懸濁及び濾過による分離によってフィルターケーキを5回十分に洗浄した。結果として生じたフィルターケーキは、依然として僅かに粘着性であった。最終濾過後、HPMCASを40℃で乾燥させた。
比較例B:
希釈された反応生成物混合物からのHPMCASの沈澱、結果として生じた懸濁液からのHPMCASの単離及びチューインガムの外観を有した極めて粘着性のフィルターケーキの回収後、5000rpmで作動するUltra−Turrax攪拌機S50−G45(回転子径36mm、内部固定子径38mm)を用いて3Lの沸騰水にフィルターケーキを再懸濁させたことを除いて、比較例Aを繰り返した。
室温を有する3Lの水にフィルターケーキを再懸濁させた。再び、5000rpmで作動するUltra−Turrax攪拌機S50−G45を再懸濁のために用いた。結果として生じた懸濁液からHPMCASを濾過によって単離した。結果として生じたフィルターケーキは、比較例Aにおけるよりも更に粘着性であった。
実施例2
I.HPMCASを含む反応生成物混合物の製造
HPMCASを含む反応生成物混合物を実施例1におけるように製造した。
II.本発明の方法によるHPMCASの回収
手順Iにおいて得られるような熱い反応生成物混合物を318.46gの水の添加によってクエンチした。水は、室温を有した。実施例1におけるものと同じタイプの100gのHPMCを、固体として希釈された反応生成物混合物に添加した。10分後、21℃を有する2Lの水の添加によって希釈された反応生成物混合物からHPMCASを沈澱させた。
結果として生じた懸濁液からHPMCASを濾過によって単離した。フィルターケーキは、実施例1におけるよりも更に粘着性が少なかった。
実施例1に記載されたように、フィルターケーキを、次にUltra−Turrax攪拌機S50−G45を用いて3Lの沸騰水に再懸濁させ、再び結果として生じた懸濁液から濾過によって単離した。結果として生じたフィルターケーキは、再び、実施例1におけるよりも更に粘着性が少なかった。
実施例1に記載されたように、フィルターケーキを、室温を有する3Lの水に再懸濁させ、結果として生じた懸濁液から濾過によって再び単離した。結果として生じたフィルターケーキは、全く粘着性ではなかった。それを実施例1におけるように更に処理した。