JP2004260076A - 被膜形成用塗布液、絶縁膜及びその製造方法ならびに半導体装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】高集積度の半導体装置において、デュアルダマシン法のようなコントロールエッチング工程を含む半導体形成プロセスにおいて好適な低誘電率絶縁膜形成用塗布液を提供すること。
【解決手段】塗布液が、第1の被膜形成成分と、前記第1の被膜形成成分と比較して、分子の極性が大きくかつ成膜時にエッチング耐性が小さくなる第2の被膜形成成分とを少なくとも含んでなるように構成する。
【選択図】 なし
【解決手段】塗布液が、第1の被膜形成成分と、前記第1の被膜形成成分と比較して、分子の極性が大きくかつ成膜時にエッチング耐性が小さくなる第2の被膜形成成分とを少なくとも含んでなるように構成する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被膜形成技術に関し、さらに詳しく述べると、例えばIC、LSI等の高集積度の半導体装置において半導体集積回路の絶縁膜やその他の装置の絶縁膜の形成に有用な、低誘電率の被膜を形成するための塗布液に関する。また、本発明は、本発明の塗布液を使用して絶縁膜を製造する方法と、それによって形成される低誘電率の絶縁膜に関する。さらに、本発明は、本発明の絶縁膜を使用した、高速で信頼性の高い半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、パーソナルコンピュータからハイパフォーマンスコンピュータに至るまで、使用されている半導体装置の高速化は著しく、多層配線部における配線抵抗と配線間の寄生容量に起因する信号伝搬速度の低下による伝送遅延がコンピュータの演算速度を左右するようになってきている。このような信号伝搬速度の低下は、配線間隔が1μm以上の世代ではデバイス全体への影響が少なかったものの、半導体装置の高集積化に伴う配線幅及び配線間隔の微細化につれて、配線抵抗が上昇しかつ寄生容量が増大してくるので、ますます問題になっている。例えば、配線間隔が1μm以下ではデバイス速度への影響が大きくなり、特に、0.5μm以下の配線間隔で回路を形成した場合、配線間の寄生容量がデバイス速度へ大きく影響してくる。
【0003】
上述のような配線による信号遅延Tは、配線抵抗をRとし、配線間の寄生容量をCとした場合、次式:
T∝C・R
で表される。一方、寄生容量Cは、真空の誘電率をε0 、層間絶縁膜の誘電率をεr 、配線層の側面積をS、そして配線層の間隔をdとした場合、次式:
C=ε0 ・εr ・S/d
で表される。これらの式から理解されるように、信号遅延Tを小さくするためには、配線層間の寄生容量Cの増大を防止すればよい。配線層間の寄生容量Cの増大を防止するためには、配線層厚を薄くして断面積Sを小さくすればよいが、そうすると、配線抵抗Rの上昇を招くため、信号遅延Tを解消することができない。
【0004】
従来、このような寄生容量に基づく信号遅延の増大を防止するために、上記した寄生容量の式のうちεr に注目して、層間絶縁膜として少なくとも3以下の低比誘電率を示す絶縁膜材料が研究、開発され、また使用されている。例えば、スピンオングラス(SOG)系の材料が、成膜が容易であるので、絶縁膜材料として広く使用されている。
【0005】
また、配線材料としては、特に抵抗の小さい銅を用いて信号遅延を抑えるのが現在主流になってきている。
【0006】
ところで、銅をエッチングして金属配線を形成するのは容易でないため、1種以上の層間絶縁膜を堆積させ、パターン状にエッチングして、導電材料で充填される垂直及び水平相互接続部を形成するダマシン法が用いられている。ダマシン法で主流なものは、周知の通り、シングルダマシン法とデュアルダマシン法の二つである。
【0007】
シングルダマシン法とは、下記から理解されるように、ビア層と配線層の埋め込みを別々に行う方法である。
【0008】
絶縁膜(ビア層)形成→ビアパターニング(エッチング)→金属埋め込み→その上に別の絶縁膜(配線層)形成→配線パターニング(エッチング)→金属埋め込み
しかし、この方法の場合、処理の工数が非常に多く、手間が多くかかり、コストの増大も避けられない。
【0009】
これに対して、デュアルダマシン法とは、下記から理解されるように、ビア層と配線層の埋め込みを同時に行う方法である。
【0010】
絶縁膜(ビア層+配線層)形成→ビア、配線パターニング(エッチング)→金属埋め込み
デュアルダマシン法は、幅も深さも違うパターン(ビア溝と配線溝)を同時に形成しなければならないため、絶縁膜の形成後、その底部に達しない程度まででエッチングを停止する工程を必ず含むことになり、エッチングの仕方に工夫が必要である。
【0011】
絶縁膜の途中でエッチングを停止するには、絶縁膜のエッチング耐性から計算してエッチング時間でコントロールする方法(コントロールエッチング)と、エッチングを停止させたい深さに膜厚50〜100nm程度のエッチング耐性の高い層(エッチングストッパー)を設ける方法がある。例えば、エッチング耐性の異なる2種類の絶縁膜を順次堆積し、エッチングすることを特徴とするデュアルダマシン法はすでに公知である(特許文献1)。
【0012】
しかしながら、従来の技術に従ってコントロールエッチングを行った場合、所望の深さでエッチングを停止させるのが困難である。エッチング速度はガス圧、電圧、温度などのエッチング条件、絶縁膜のロットバラ、形成するパターンに対する依存性など、各種の条件によって微妙に違うため、エッチング時間でコントロールしても、エッチング深さにバラツキが出ることが多いからである。
【0013】
また、コントロールエッチングの場合、エッチングを停止させたところで刺状や粒状の残が発生することが多い。この傾向は、近年絶縁材料としてよく使われている多孔性の材料に多く認められる。
【0014】
これに対して、エッチングストッパーを使用する方法は、所望の深さでエッチングを停止させるのは容易であり、残の問題もコントロールエッチングほど深刻ではない。しかし、エッチングストッパーは、比誘電率4以上の材料からなるのがほとんどである。例えば、SiNの場合、その比誘電率は約7であり、SiCが4.5、SiO2が4.2といったところである。低誘電率絶縁膜を使用しても、エッチングストッパーの誘電率が高いため、結合した層の誘電率を増加させてしまうという問題が発生する。
【0015】
また、デュアルダマシン法において配線層とビア層の間にエッチングストッパーを形成する場合、スピンコート法で低誘電率膜を成膜した後にストッパーをCVD法で成膜し、さらにまた低誘電率膜を再びスピンコート法で成膜するという3回もの成膜工程が必要となる。また、その際、下層の低誘電率膜と上層の低誘電率膜の熱履歴に差が出るため、下層に低誘電率膜が硬化して、ストレスによるクラックが生じるなどの問題もある。さらに、低誘電率膜は多孔性膜であり、エッチング選択比がとりずらいために、複数段のハードマスクを必要とすることから、さらに工程数が増加する。さらにまた、多孔性の低誘電率膜にオープンポアがあるため、脱ガスに伴う密着不良や電気的なリークなどの問題など、生産プロセスへの適用には問題が多い。
【0016】
【特許文献1】
特開2001−110789号公報(特許請求の範囲、図1A〜図1H)
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来の技術の問題点を解決することを目的とする。
【0018】
本発明の目的は、まず、IC、LSI等の高集積度の半導体装置の製造において、デュアルダマシン法のようなコントロールエッチング工程を含む半導体形成プロセスのおいて好適な低誘電率の絶縁膜を提供することにある。
【0019】
また、本発明の目的は、そのような低誘電率の絶縁膜を簡単な工程で製造する方法を提供することにある。
【0020】
さらに、本発明の目的は、そのような低誘電率の絶縁膜の製造に有用な被膜形成用塗布液を提供することにある。
【0021】
さらにまた、本発明の目的は、上述のような低誘電率の絶縁膜を備えた、製造が簡単でありかつ高速で信頼性の高い半導体装置を提供することにある。
【0022】
本発明の上記した目的やその他の目的は、以下の詳細な説明から容易に理解することができるであろう。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、低誘電率の絶縁膜を形成する方法について鋭意研究の結果、分子の極性が小さくかつ成膜後にエッチング耐性が大きくなる成分と、分子の極性が大きくかつ成膜後にエッチング耐性が小さくなる成分の2種類を少なくとも含有する被膜形成用塗布液を用いた場合、膜上部に比較して下部のエッチング耐性が高い低誘電率の絶縁膜を形成することができるということ、また、得られた絶縁膜をデュアルダマシン法に適用した場合、絶縁膜のコントロールエッチングが容易になり、上記課題を同時に解決できるということを見い出した。
【0024】
本発明は、その1つの面において、第1の被膜形成成分と、前記第1の被膜形成成分と比較して、分子の極性が大きくかつ成膜時にエッチング耐性が小さくなる第2の被膜形成成分とを少なくとも含んでなることを特徴とする被膜形成用塗布液にある。ここで、第1の被膜形成成分は、第2の被膜形成成分と比較して、分子の極性がより小さくかつ成膜時により大きなエッチング耐性を示すことができる。
【0025】
また、本発明は、そのもう1つの面において、厚さ方向に関して、下層部のエッチング耐性が上層部のエッチング耐性よりも大であり、かつ本発明による被膜形成用塗布液から形成されたものであることを特徴とする絶縁膜にある。
【0026】
さらに、本発明は、そのもう1つの面において、厚さ方向に関して、下層部のエッチング耐性が上層部のエッチング耐性よりも大である絶縁膜を製造する方法であって、
本発明による被膜形成用塗布液から成膜することを特徴とする絶縁膜の製造方法にある。
【0027】
さらにまた、本発明は、そのもう1つの面において、本発明による絶縁膜を含んでなることを特徴とする半導体装置にある。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明による被膜形成用塗布液、低誘電率絶縁膜、その製造方法及び半導体装置は、それぞれ、いろいろな形態で有利に実施することができる。なお、それぞれの発明は、以下に記載する形態に限定されるわけではない。
【0029】
第1に、本発明は、被膜の形成に用いられる塗布液にある。この塗布液とそれによる被膜、典型的には低誘電率の絶縁膜の形成方法は、極性が小さい分子と極性が大きい分子を混合した溶液を基板や配線層などの下地層(以下、総称的に「基板」という)上に塗布した場合、極性が小さい分子が表面側に、大きい分子は基板側に集まるという性質に着目したものである。すなわち、図1(A)に示すように、基板(図示せず)の上に極性が小さい分子pと極性が大きい分子Pの混合物からなる塗布液を所定の膜厚で塗布して成膜した場合、得られた被膜では、図1(B)に示すように、極性が小さい分子pが表面側に集中するからである。なお、本発明は、このように異なる極性をもった分子を成膜に使用しているが、以下に詳細に説明するように、極性が小さい分子が基板側に、大きい分子が表面側に集まるという点で図1の成膜方法とは相違する。また、これと似たような成膜方法は、特開平7−199468号公報に記載の感光性組成物でも着目されているが、この公開公報は、化学増幅型レジストにおいて相分離を起こすことなく解像性を高めるため、分子の極性が小さくアルカリ溶解速度が遅い成分と、分子の極性が大きくアルカリ溶解速度が速い分子とを組み合わせて使用することを教示しているだけである。
【0030】
本発明による被膜形成用塗布液は、分子の極性が小さくかつ成膜後にエッチング耐性が大きくなる分子(すなわち、第1の被膜形成成分)と、分子の極性が大きくかつ成膜後にエッチング耐性が小さくなる分子(すなわち、第2に被膜形成成分)の少なくとも2種類の成分を1つの塗布液に混在させ、得られる低誘電率の被膜(絶縁膜)において、その被膜の表層部分に、下層部分に比較してエッチング耐性の小さな分子を集めることを特徴としている。ここで、「エッチング耐性」とは、ある特定の条件におけるエッチング速度の大小を意味する。すなわち、エッチング速度が大きければ、その被膜は、エッチング耐性に劣ることを意味し、反対にエッチング速度が小さければ、エッチング耐性に優れることを意味する。エッチング条件は、RF出力、ソースガスの種類及び量、チャンバの圧力などを適宜コントロールすることで、それぞれの成膜に最適な条件を設定することができる。また、得られる被膜において、エッチング耐性のコントロールは、成膜密度、構成分子の種類及び比率やその他のファクタの調整を通じて有利に行うことができる。
【0031】
本発明による分子の極性の差を利用した成膜方法の原理は、図2に模式的に示す通りである。すなわち、図2に示すように、基板(図示せず)の上に、分子の極性が小さくかつ成膜後にエッチング耐性が大きくなる第1の被膜形成成分Eと、第1の被膜形成成分Eと比較して、分子の極性が大きくかつ成膜後にエッチング耐性が小さくなる第2の被膜形成成分eの混合物からなる塗布液を所定の膜厚で塗布して成膜した場合、得られた被膜(絶縁膜)では、まったく予想されなかったことであるが、分子の極性が大きくかつ成膜後にエッチング耐性が小さくなる第2の被膜形成成分eを被膜の表層部分に集中して分布させることができる。すなわち、第1の被膜形成成分Eに由来するエッチング耐性にすぐれた下層の被膜7−1と、第2の被膜形成成分eに由来するエッチング耐性に劣る上層の被膜7−2とからなる2層構造体が得られる。
【0032】
また、本発明では、得られる2層構造の被膜において、分子の極性が小さくかつ成膜後にエッチング耐性が大きくなる第1の被膜形成成分eと、分子の極性が大きくかつ成膜後にエッチング耐性が小さくなる第2の被膜形成成分Eの比率を調整することによって、成膜後のエッチング耐性が高い部分と低い部分の比率、すなわち、下層の被膜7−1と上層の被膜7−2の膜厚比を任意に設定することができる。
【0033】
上記のようにして作製した2層構造の被膜において、下層の被膜7−1はエッチング耐性が大であるので、例えばある特定の条件の下で上層の被膜7−2の表面からエッチングを実施した場合、図3に示すように、下層の被膜7−1と上層の被膜7−2の界面に達したところでエッチングが停止されるであろう。すなわち、このような被膜においてエッチングを行った場合、エッチング耐性が小さい上部がすべてエッチングされた時点でエッチング速度は低くなる。そのため、所望の深さでエッチングを停止するのは容易である。また、エッチング耐性が大きく異なる界面部でエッチングを停止させるため、残も生じにくい。
【0034】
下層の被膜7−1と、上層の被膜7−2とからなる2層構造の被膜において、下層の被膜7−1は、特にダマシン法による回路の形成に有用なエッチングストッパーとして機能することができる。下層の被膜7−1は、特に上述の性質を利用してデュアルダマシン法を行い、半導体装置のビア及び配線を形成することができる。デュアルダマシン法には先ビア方式と後ビア方式の2種類があるが、本発明はどちらにも適用可能である。なお、下層の被膜7−1は、そのすぐれたエッチング耐性に着目してエッチングストッパーとして有利に使用できるばかりでなく、もしも所期の作用効果が得られるのであるならば、ハードマスク、CMP(化学機械研磨)ストッパー、金属拡散ストッパーなどとしても利用することができる。もちろん、被膜そのものは、その低い誘電率を利用して、例えば層間絶縁膜などの絶縁膜として半導体装置やその他の電子装置などで有利に使用することができる。
【0035】
本発明の実施において、異なるエッチング耐性を有する2層もしくはそれ以上の多層構造をもった被膜の形成に用いられる第1及び第2の被膜形成成分は、それぞれ、所期の作用効果が得られる限り、どのような材料であってもよい。適当な材料としては、例えば、有機シリコーン化合物、有機ポリシラザン、ポリアダマンタノール、ポリベンゾオキサゾール、ポラジン−ケイ素ポリマ、芳香族系有機ポリマなどを挙げることができる。芳香族系有機ポリマは、例えば、「SILK」(商品名、ダウ・コーニング社製)として商業的に入手することができる。これらの材料は、通常、単独で使用されるけれども、必要ならば、2種以上を混合もしくは組み合わせて使用してもよい。
【0036】
第1及び第2の被膜形成成分は、それぞれ、成膜後において異なるエッチング耐性を発現することが必要である。成分ごとにエッチング耐性を変える方法としては、分子中に含まれるケイ素原子の含有量を変えること(O2プラズマエッチングなど;例えば有機シリコーン化合物等の含ケイ素化合物や含ケイ素ポリマを使用する場合)、ベンゼン環や脂環族の含有量を変えること(CF4プラズマエッチングなど)、膜密度を変えること(被膜が多孔性の膜である場合)、などの方法がある。
【0037】
エッチング耐性を変えることにより、膜上部と膜下部では誘電率に違いが生じる場合がある。その場合、配線遅延の低減のためには、上部側の誘電率をより低くなるようにすることが好ましい。例えば膜密度が低い方が、エッチング耐性が低く誘電率も低くなるので、膜上部に膜密度が低い層を配置してこちらを配線層に、膜下部は膜密度が高い層を配置してビア層にするとよい。すなわち、一般的には、第1の被膜形成成分に由来する下層の被膜の密度が、第2の被膜形成成分に由来する上層の被膜の密度よりも大であることが好ましい。
【0038】
本発明の場合、第1及び第2の被膜形成成分の間でエッチング耐性の差が小さいと効果がなくなるので、特定のエッチング条件のもとで1.5倍以上、できれば2倍以上違うほうが好ましい。すなわち、第1の被膜形成成分に由来する下層の被膜のエッチング耐性が、第2の被膜形成成分に由来する上層の被膜のエッチング耐性の1.5倍以上であることが好ましく、さらに好ましくは、2倍以上である。ここで、「特定のエッチング条件のもとで」とは、使用している被膜の材料種(シリコーン系、有機系など)に適した条件のもとで、という意味である。
【0039】
極性のコントロールにはいろいろな方法が考えられるが、特に多孔性のシリコーン膜を形成する場合、アルコキシシランを加水分解して得られる有機シリコーン化合物を使用し、残存するアルコキシ基およびそれが加水分解してできた水酸基の量を調整するのがよい。その他の被膜形成材料の場合もこれに準じて、置換基の種類と存在比率で極性をコントロールするのがよい。
【0040】
また、第1及び第2の被膜形成成分において、それらの成分の分子量に差があることも有用である。一般的には、第1の被膜形成成分の分子量が、第2の被膜形成成分の分子量よりも小さいことが好ましい。例えば多孔性の被膜を形成する場合に、分子量が大きいと、得られる被膜において空隙率の割合が増加し、膜密度の低下の帰結としてエッチング耐性も小さくなるからである。
【0041】
さらに、第1及び第2の被膜形成成分が、それぞれ、微粒子の形をしており、第1の被膜形成成分の微粒子の粒径が、第2の被膜形成成分の微粒子の粒径よりも小さいことが好ましい。得られる多孔性の被膜において、それを構成する微粒子の粒径が大きければ大きいほど、得られる被膜において空隙率の割合が増加し、膜密度の低下の帰結としてエッチング耐性も小さくなるからである。
【0042】
本発明の実施において、第1及び第2の被膜形成成分として、それぞれ、有機シリコーン化合物を使用することが特に推奨される。また、有機シリコーン化合物は、上記したように、エッチング耐性や分子の極性のコントロールのために、いろいろな形態で、あるいはいろいろに使い分けして、有利に使用することができる。例えば、有機シリコーン化合物は、得られる多孔性被膜において互いに粒径を異にする有機シリコーン化合物の微粒子が含まれるように使用することが好ましい。また、その際、第1の被膜形成成分を構成する有機シリコーン化合物の微粒子の粒径は、第2の被膜形成成分を構成する有機シリコーン化合物の微粒子の粒径よりも大であることが好ましい。
【0043】
本発明の実施において有利に使用することのできる有機シリコーン化合物は、次式(I)により表されるアルコキシシランの加水分解による生成物である。
【0044】
XnSi(OR)4−n …(I)
上式において、Xは、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜8のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、ブチル基等、フッ素置換アルキル基、アリール基、ビニル基などである。また、Rは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、ビニル基などである。そして、nは、0〜3の任意の整数である。
【0045】
本発明の実施に有用なアルコキシシランは、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリイソプロポキシシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、ジフルオロジメトキシシラン、ジフルオロジエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシランなどを挙げることができる。これらのアルコキシシランは、単独で使用してもよく、2種以上を混合もしくは組み合わせて使用してもよい。
【0046】
また、このようにアルコキシシランを加水分解して得られる有機シリコーン化合物を使用する場合、残存するアルコキシ基及びそれが加水分解してできた水酸基の量を調整するのがよい。例えば、第1の被膜形成成分を構成する有機シリコーン化合物の分子において、その分子の全置換基中に占める残存アルコキシ基と水酸基の比率をA%とし、かつ第2の被膜形成成分を構成する有機シリコーン化合物の分子において、その分子の全置換基中に占める残存アルコキシ基と水酸基の比率をB%とした場合、比率の差(B−A)が10%以上であることが好ましい。例えば、極性が小さい有機シリコーン化合物の残存アルコキシ基と水酸基の合計量の比率が30%であるとすると、極性が大きい有機シリコーン化合物の残存アルコキシ基と水酸基の合計量の比率は、40%もしくはそれ以上であるといった具合である。
【0047】
本発明の被膜形成用塗布液は、通常、上記した第1及び第2の被膜形成成分を少なくとも含み、さらに加えて、第3、第4等の追加の被膜形成成分を必要に応じて含んでいてもよい。
【0048】
これらの被膜形成成分は、塗布液の形成のために溶媒に溶解もしくは分散させて使用するのが一般的である。塗布液の形成に好適な溶媒は、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどを包含する。これらの溶媒は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0049】
被膜形成成分は、上記したような溶媒にいろいろな濃度で溶解もしくは分散させて使用することができる。被膜形成成分の適当な溶解もしくは分散濃度は、一般的に約1〜50重量%であり、好ましくは約5〜25重量%の範囲である。被膜形成成分の量が少なすぎると、所望の膜厚が得られず、多いと塗りムラが生じる。
【0050】
被膜形成用塗布液は、必要に応じて、被膜形成成分、溶媒以外の成分を追加的に有していてもよい。追加の成分として、例えば、バインダ、界面活性剤などを挙げることができる。例えばバインダは、有機シリコーン化合物の分子どうしを焼成処理などによって結合させる場合に結合助剤として有用である。適当なバインダの例として、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等の有機ケイ素化合物、オクチル酸錫、オクチル酸アルミニウム等のカルボン酸金属塩、ポリシラザン、その他を挙げることができる。また、カチオン系、アニオン系、ノニオン系等の界面活性剤は、微粒子の凝集を防ぐのに好適である。
【0051】
被膜形成用塗布液は、成膜のため、基板の上に所定の膜厚で塗布する。適当な塗布法としては、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、例えばスピンコート法、ディップコート法、バーコート法などの常用の塗布法を使用することができる。
【0052】
次いで、形成された塗膜を後処理して目的とする被膜を得る。本発明では、この後処理工程として焼成工程を有利に使用することができる。焼成工程は、通常、塗布液を基板上に塗布した後、形成された塗膜を所定の温度まで加熱することによって有利に実施することができる。焼成工程は、例えば、次のようにして実施することができる。
【0053】
まず、所定の組成で調製した被膜形成用塗布液をスピンコート法により基板上に塗布し、約120〜350℃の温度で約5〜10分間にわたって加熱し、溶媒を乾燥する。ここで、溶媒乾燥の温度が120℃未満では溶媒乾燥が不十分であり、350℃以上では酸化によって性能が変化する恐れがある。次いで、基板を不活性雰囲気(例えば、酸素濃度100ppm以下の窒素ガス)に移し、約350〜450℃の温度で約30分間もしくはそれ以上にわたって熱処理する。ここで、溶媒乾燥後の熱処理は、酸化分解を抑制するために上述のように不活性ガス中で行うことが必須であり、また、熱処理温度が350℃未満では配線を形成する際に膜からの脱ガス(膜中に残存したガスの逃出)が懸念され、450℃を超えるとクラックなどが生じる恐れがある。
【0054】
本発明では、焼成工程以外の方法も後処理に使用することができる。例えば、塗布液を塗布した後、形成された塗膜に、紫外線、赤外線、電子線、X線、レーザなどの光を照射してもよい。これらの光の照射によって、微粒子の収縮を促進させ、空隙形成を行うことができるからである。光の使い分けも重要である。いずれの光も重合促進作用を具えているけれども、例えば、塗膜の表面から反応を生じさせて目的とする多孔性被膜を形成する場合には、紫外線を照射するのが好ましい。紫外線には、塗膜表面のキュア(硬化)を促進し、オープンポアを抑制する作用もあるからである。また、急速昇降温制御を行う場合には赤外線照射による加熱が好ましい。さらに、反応速度を精密に制御したい場合には、電子線照射が好ましい。なお、このような光照射の場合に、光照射量やその他の照射条件は、所望とする結果に応じて任意に変更することができる。
【0055】
また、プラズマ処理も後処理として好適である。例えば、塗布液を塗布した後、形成された塗膜に、酸素プラズマ、アンモニアプラズマ、フッ化炭素プラズマなどを照射することができる。これらのプラズマの照射によって、微粒子の収縮を促進させ、空隙形成を行うことができるからである。また、被膜表面の疎水佳処理を兼ねたい場合には、酸素プラズマの照射が好ましい。なお、このようなプラズマ照射の場合に、プラズマ照射量やその他の照射条件は、所望とする結果に応じて任意に変更することができる。
【0056】
本発明に従い被膜形成用塗布液から上述の方法によって形成される被膜は、多孔性の被膜及び非多孔性の被膜の両者を包含する。多孔性の被膜の場合、好ましくは、全体にわたって細孔、すなわち、微細な空隙を有するけれども、厚さ方向に空隙の分布密度かサイズかいずれか少なくとも一方を異ならせた多孔性の被膜、特に絶縁膜である。本発明の多孔性の絶縁膜は、半導体装置やその他の装置で有利に使用することができるけれども、特に半導体装置において、配線層間の層間絶縁膜として有利に使用することができる。
【0057】
本発明の被膜、特に絶縁膜では、好ましいことに、当該絶縁膜を厚さ方向に見て、第2の被膜形成成分を構成する分子(例えば、有機シリコーン化合物)が、当該被膜の実質的に上方の領域を占有し、エッチング耐性が弱い表層部分を構成している。すなわち、この被膜は、大きなエッチング耐性を有する下層被膜と小さなエッチング耐性を有する上層被膜とに分かれて形成される。ここで、下層被膜と上層被膜の膜厚の比は、本発明の被膜の使途などに応じて任意に変更することができ、また、膜厚比の変更は、上記したように、塗布液の組成、成膜条件などの変更によって容易に可能である。例えば、下層被膜と上層被膜の膜厚比をほぼ1:1としてもよく、さもなければ、例えば上層被膜の膜厚が被膜の全厚の30%以下となるように、両者の膜厚に差をつけてもよい。
【0058】
また、本発明によって得られる絶縁膜は、好ましいことに、3.0未満の誘電率を有している。絶縁膜の誘電率は、さらに好ましくは、約2.0〜2.5の範囲であり、最も好ましくは、2.2〜2.3程度である。このような低い誘電率が得られるので、本発明の絶縁膜を半導体装置において使用した場合、信号の高速化を容易に達成することができる。
【0059】
さらに、絶縁膜の厚さは、広い範囲で変更することができるけれども、好ましいことに、100nm以上の比較的に大きな厚さでも、従来の技術では達成することが難しいとされた高い密着性を実現しつつ、満足し得る低誘電率やその他の特性を実現することができる。絶縁膜の厚さは、通常、約50〜200nmの範囲である。
【0060】
本発明は、また、本発明の絶縁膜を含む各種の半導体装置にある。好ましくは、絶縁膜は、基板と、その上に交互に積層して形成された複数の絶縁層及び複数の配線層とを含む半導体装置において、絶縁層の少なくとも一つとして有利に使用することができる。この半導体装置では、このように本発明による低誘電率の絶縁膜を取り入れることで、配線遅延を顕著に低下することができる。
【0061】
また、本発明の半導体装置においては、配線層を任意の金属配線材料から有利に形成することができる。例えば、配線層を形成する金属配線の材料を、アルミニウム及びアルミニウムを主体とした合金または銅及び銅を主体とした合金から選ぶことができる。さらに、これらの配線層において、チタン又はチタンを主体とした合金、あるいはタンタル又はタンタルを主体とした合金をバリアメタルとして用いてもよい。
【0062】
図4は、本発明による半導体装置の好ましい1実施形態を示したものである。図示の半導体装置10の場合、その内部に本発明による2層構造の低誘電率絶縁膜7が取り込まれている。
【0063】
図4を参照すると、半導体装置10は、トランジスタ層(図示せず)を上面に備えたシリコン基板1からなる。シリコン基板1の上には、SiN拡散防止膜2、SiOC層間絶縁膜3、そしてSiO2膜4が順次積層されており、さらに、これらの層の加工によって形成されたCuビア6も設けられている。Cuビア6の周囲には、TaN膜5がバリアメタルとして形成されている。
【0064】
SiO2膜4の上には、本発明による低誘電率絶縁膜7がシロキサン樹脂から形成されている。絶縁膜7は、図示のように、エッチング耐性に優れた下層絶縁膜7−1と、エッチング耐性に乏しい上層絶縁膜7−2とからなる。また、低誘電率絶縁膜7の上には、SiO2膜9が順次積層されている。さらに、これらの層の加工によって形成されたCu埋め込み配線層16も設けられている。Cu埋め込み配線層16の周囲には、TaN膜13が形成されている。
【0065】
この半導体装置では、Cu埋め込み配線層16の形成のため、エッチング耐性に優れた下層絶縁膜7−1がエッチングストッパーとして使用されている。また、吸湿による誘電率の低下などを引き起こすことなく各種の特性を安定に維持することができる。さらに、配線形成工程におけるCMP(化学機械研磨)などの力学的ストレスや、半導体装置製造工程における焼成などの熱ストレスをうけても、ここで使用されている絶縁膜は良好な密着性を有しているので、剥れなどの不都合が発生しにくく、デバイス特性及び信頼性をより向上することができる。
【0066】
【実施例】
引き続いて、本発明をその実施例を参照して説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものでないことは言うまでもない。
合成例1
39.6gのメチルイソブチルケトンに20.8g(0.1モル)のテトラエトキシシランを溶解させた。16.2g(0.9モル)の、濃度400ppmの硝酸水を10分間で滴下し、滴下終了後に2時間の熟成反応を行わせた。テトラエトキシシランが共重合し、球状シロキサン樹脂が生成された。
【0067】
次いで、11.8g(0.1モル)のトリメチルエトキシシランを10分間で滴下し、滴下終了後に2時間の熟成反応を行わせ、先に合成した球状シロキサン樹脂の残存エトキシ基又は水酸基をシリル化した。
【0068】
引き続いて、5gの硝酸マグネシウムを添加し、過剰の水分を除去した。ロータリエバポレータを用い、反応溶液を除去し、さらに1,4−ジオキサンを使用して凍結乾燥を行った。
【0069】
得られた生成物の分子量をGPCによって測定したところ、重量平均分子量は約75,000であった。また、IR,NMRを用いて置換基の量を調べたところ、おおよそメチル基が80%、エトキシ基が15%、水酸基が5%であり、エトキシ基と水酸基の合計量の比率が20%であることがわかった。この有機シリコーン化合物を、極性が小さい第1の被膜形成成分として使用することにした。
合成例2
39.6gのメチルイソブチルケトンに20.8g(0.1モル)のテトラエトキシシランを溶解させた。5.4g(0.3モル)の、濃度400ppmの硝酸水を10分間で滴下し、滴下終了後に0.5時間の熟成反応を行わせた。テトラエトキシシランが共重合し、球状シロキサン樹脂が生成された。
【0070】
続いてトリメチルエトキシシラン5.9g(0.05モル)を10分間で滴下し、滴下終了後0.5時間の熟成反応を行い、先に合成した球状シロキサン樹脂の残存エトキシ基、または水酸基をシリル化した。
【0071】
次いで、5gの硝酸マグネシウムを添加し、過剰の水分を除去した。ロータリエバポレータを用い、反応溶液を除去し、さらに1,4−ジオキサンを使用して凍結乾燥を行った。
【0072】
得られた生成物の分子量をGPCによって測定したところ、重量平均分子量は約10,000であった。また、IR,NMRを用いて置換基の量を調べたところ、おおよそメチル基が60%、エトキシ基が30%、水酸基が10%であり、エトキシ基と水酸基の合計量の比率が40%であることがわかった。この有機シリコーン化合物を、極性が大きい第2の被膜形成成分として使用することにした。
実施例1
前記合成例1で調製した5gの有機シリコーン化合物と前記合成例2で調製した5gの有機シリコーン化合物をメチルイソブチルケトンに溶解させ、固形分濃度20重量%の塗布溶液(a)を得た。また、比較のために、前記合成例1で調製した10gの有機シリコーン化合物をメチルイソブチルケトンに溶解させて固形分濃度20重量%の塗布溶液(b)を得、かつ前記合成例2で調製した10gの有機シリコーン化合物をメチルイソブチルケトンに溶解させて固形分濃度20重量%の塗布溶液(c)を得た。
【0073】
次いで、上記のようにして調製した塗布溶液(a)、(b)及び(c)を使用して、次のような手順で低誘電率被膜を作製した。
【0074】
それぞれの塗布溶液をシリコンウエハの表面にスピンコートした。スピンコータの回転数は3000rpmであり、塗布時間は20秒であった。スピンコート後、塗布溶液の溶媒を200℃で蒸発させた。次いで、それぞれの塗布溶液から形成された塗膜を酸素濃度100ppm以下の窒素雰囲気中で、400℃で30分間にわたって熱処理した。この熱処理により、シロキサン樹脂が架橋し、低誘電率被膜(膜厚:約400nm)が形成された。
【0075】
それぞれの低誘電率被膜の誘電率を成膜直後に測定したところ、
塗布溶液(a)の誘電率 …2.3
塗布溶液(b)の誘電率 …2.25
塗布溶液(c)の誘電率 …2.4
であった。ここで、塗布溶液(b)由来の被膜の誘電率が塗布溶液(c)由来の被膜の誘電率より小さいのは、塗布溶液(b)で使用した有機シリコーン化合物の分子量の方が大きい分、分子が嵩張るため分子どうしの間に生じる隙間が大きくなったためである。また、塗布溶液(b)の成分の方が塗布溶液(c)の成分よりも極性が小さいため、表面側に配置される傾向にある。
【0076】
次いで、塗布溶液(a)に由来の膜厚400nmの低誘電率被膜をCF4+CHF3を用いた反応性イオンエッチング(RIE)によってエッチングし、エッチング耐性を測定した。被膜の表面から深さ約200nmのところを境に、上部200nm部分のエッチングに要した時間が9.8秒、下部200nm部分のエッチングに要した時間が21秒であった。このことから、得られた被膜はエッチング耐性に関して2層構造を有しており、下層被膜は上層被膜の約2倍のエッチング耐性を有することがわかった。これは、被膜の下部に集まる極性の大きい成分の分子量が小さいために、膜が緻密で膜密度が高いことと、フェニル基を有しているためである。
比較例1
前記実施例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、比較のため、塗布溶液(a)に代えて、それよりも誘電率が低い塗布溶液(b)を使用した。
【0077】
塗布溶液(b)を使用して、前記実施例1に記載の手順で第1の低誘電率被膜(膜厚:約175nm)を形成し、その上に、エッチングストッパー膜(膜厚:約50nm)で形成し、さらにその上に、同じく塗布溶液(b)を使用して、第2の低誘電率被膜(膜厚:約175nm)を形成した。本例で形成したエッチングストッパー膜は、SiN膜、SiC膜、そしてSiO2膜の3種であった。
【0078】
第2の低誘電率被膜の形成後、前記実施例1に記載の手順でエッチング耐性を測定したところ、いずれの場合にも、第2の低誘電率被膜とエッチングストッパー膜の界面でエッチングを停止させることができた。しかし、誘電率について見ると、塗布溶液(a)に由来の被膜の誘電率は2.3であったのに反して、エッチングストッパー膜(SiN膜、SiC膜及びSiO2膜)を有する被膜の誘電率は、それぞれ、4.3、3.5及び3.3であった。すなわち、本発明に従ってエッチングストッパー膜兼用の低誘電率被膜を使用した場合、従来のエッチングストッパー膜を使用する方法に較べて、処理工数を減らすことができるばかりでなく、誘電率の低下の面でも有利である。
実施例2
本例では、図4に示した半導体装置を図5及び図6に順を追って示す手順に従って製造した。
【0079】
まず、図5(A)に示すように、トランジスタ層(図示せず)を上面に具えたシリコン基板1の上にSiN拡散防止膜2を常用の成膜方法で形成した。
【0080】
次いで、図5(B)に示すように、SiN拡散防止膜2の全面に、厚さが例えば1μmのSiOC膜3を堆積させて層間絶縁膜とした後、後のCMP工程において研磨ストッパーとなるSiO2膜4を、例えば、100nmの厚さに堆積させた。
【0081】
引き続いて、ソース・ドレイン領域に達するビアホールを形成した後、スパッタ法を用いて全面に、厚さが例えば50nmのTaN膜5を堆積させてバリアメタルとした。次いで、同じくスパッタ法によってCuを厚く堆積させた後、CMP法によってSiO2膜4が露出するまで研磨することによって、Cu充填ビア6を形成した。
【0082】
次いで、図5(C)に示すように、前記実施例1で使用したものに同じ低誘電率被膜形成用塗布溶液(a)をスピーンコータによって塗布し、乾燥工程及び架橋工程を順次行った。例えば、厚さ400nmの有機絶縁膜(低誘電率被膜)7が形成された。この時、塗布溶液(a)は、2種類のエッチング耐性の異なる成分が1:1で構成されているが故に、表面よりおおよそ200nmのところを境に、上部はエッチング耐性が低く下部は高いものとなった。よって、ここで形成された有機絶縁膜7は、図示されるように、エッチング耐性に優れた下層絶縁膜7−1と、エッチング耐性に乏しい上層絶縁膜7−2とからなる。次いで、有機絶縁膜7の上にSiO2膜9をCMP犠牲膜として積層した。
【0083】
SiO2膜9の形成が完了した後、図示しないが、SiO2膜9の上にレジストを塗布し、さらに後の工程で形成するビア孔にあわせてパターニングした。得られたレジストパターンをマスクとして使用して、CF4+CHF3を用いた反応性イオンエッチング(RIE)を実施した。図5(D)に示すように、SiO2膜9、そして有機絶縁膜7が順次選択的にエッチングされ、Cu充填ビア6に達するビア孔11が形成された。ビア孔11の形成後、不要となったレジストパターンをO2−RIEで除去した。
【0084】
次いで、図示しないが、先の工程で形成されたビア孔11にノボラック樹脂を埋め込み、再びSiO2膜9の上にレジストを塗布し、さらに後の工程で形成する配線層用溝にあわせてパターニングした。得られたレジストパターンをマスクとして使用して、CF4+CHF3を用いたRIEを実施した。図6(E)に示すように、SiO2膜9が選択的にエッチングされ、有機絶縁膜7に達する配線層用溝12が形成された。配線層用溝12の形成後、不要となったレジストパターン及びノボラック樹脂をO2−RIEで除去した。
【0085】
次いで、図6(F)に示すように、処理途中のシリコン基板1の上面全体に、それぞれスパッタ法を用いて、例えば、厚さ50nmのTaN膜13及び厚さ50nmのCuシード層14を順次堆積させた。
【0086】
引き続いて、Cuシード層14をめっきベース層として銅(Cu)の電解めっきを行った。図6(G)に示すように、配線層形成用溝及びビア孔のそれぞれにCuめっき層15が埋め込まれた。
【0087】
次いで、再びCMP法によって、停止線CのところまでCuめっき層15、Cuシード層14及びTaN膜13を順次研磨して除去した。下地のSiO2膜9が露出し、Cuめっき層15とCuシード層14とが一体になったCu埋込配線層16をそなえた半導体装置10(図4を参照)が完成した。
【0088】
本例で上記のようにして完成された半導体装置では、本発明の低誘電率絶縁膜を取り込んでいるため、コントロールエッチングを行う際に容易にエッチング深さのコントロールができるとともに残の発生が少なく、デバイス特性及び信頼性をより向上することができる。
【0089】
また、本例においては先ビア式のデュアルダマシン法を用いたが、後ビア式においてもコントロールエッチングの工程が含まれており、本発明を好適に適用することができる。さらに、本発明に従えば、シングルダマシン法においても半導体装置を好適に製造することができる。
【0090】
さらに加えて、図4の半導体装置10は、本発明の説明のために、簡単な構造を有している。上記のような絶縁膜の形成工程、配線層用溝及びビアホールの形成工程、Cu埋込配線層の形成工程を必要回数だけ繰り返すことによって、多層配線構造を有するより複雑な構造の半導体装置が得られることが理解されるであろう。
【0091】
以上、本発明を特にその好ましい実施の形態及び実施例を参照して説明した。最後に、本発明のさらなる理解のために本発明の好ましい態様を整理すると、以下に付記する通りである。
【0092】
(付記1)第1の被膜形成成分と、前記第1の被膜形成成分と比較して、分子の極性が大きくかつ成膜時にエッチング耐性が小さくなる第2の被膜形成成分とを少なくとも含んでなることを特徴とする被膜形成用塗布液。
【0093】
(付記2)前記第1及び第2の被膜形成成分が、それぞれ、有機シリコーン化合物、有機ポリシラザン、ポリアダマンタノール、ポリベンゾオキサゾール、ポラジン−ケイ素ポリマ及び芳香族系有機ポリマからなる群から選ばれた1員であることを特徴とする付記1に記載の被膜形成用塗布液。
【0094】
(付記3)前記有機シリコーン化合物が、次式(I)により表されるアルコキシシラン:
XnSi(OR)4−n …(I)
(上式において、Xは、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜8のアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基又はビニル基を表し、Rは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基又はビニル基を表し、そしてnは0〜3の整数である)の加水分解生成物であることを特徴とする付記2に記載の被膜形成用塗布液。
【0095】
(付記4)前記第1の被膜形成成分の分子量が、前記第2の被膜形成成分の分子量よりも小さいことを特徴とする付記1〜3のいずれか1項に記載の被膜形成用塗布液。
【0096】
(付記5)前記第1及び第2の被膜形成成分が、それぞれ、微粒子の形をしており、前記第1の被膜形成成分の微粒子の粒径が、前記第2の被膜形成成分の微粒子の粒径よりも小さいことを特徴とする付記1〜4のいずれか1項に記載の被膜形成用塗布液。
【0097】
(付記6)成膜時、当該塗布液から形成された被膜を厚さ方向に見て、前記第1の被膜形成成分に由来する被膜が前記第2の被膜形成成分に由来する被膜の下方に形成されていることを特徴とする付記1〜5のいずれか1項に記載の被膜形成用塗布液。
【0098】
(付記7)前記第1の被膜形成成分に由来する下層の被膜の密度が、前記第2の被膜形成成分に由来する上層の被膜の密度よりも大であることを特徴とする付記6に記載の被膜形成用塗布液。
【0099】
(付記8)前記第1の被膜形成成分に由来する下層の被膜のエッチング耐性が、前記第2の被膜形成成分に由来する上層の被膜のエッチング耐性の1.5倍以上であることを特徴とする付記6又は7に記載の被膜形成用塗布液。
【0100】
(付記9)厚さ方向に関して、下層部のエッチング耐性が上層部のエッチング耐性よりも大であり、かつ付記1〜5のいずれか1項に記載の被膜形成用塗布液から形成されたものであることを特徴とする絶縁膜。
【0101】
(付記10)前記第1の被膜形成成分に由来する被膜が前記第2の被膜形成成分に由来する被膜の下方に形成されていることを特徴とする付記9に記載の絶縁膜。
【0102】
(付記11)前記第1の被膜形成成分に由来する下層の被膜の密度が、前記第2の被膜形成成分に由来する上層の被膜の密度よりも大であることを特徴とする付記10に記載の絶縁膜。
【0103】
(付記12)厚さ方向に関して、下層部のエッチング耐性が上層部のエッチング耐性よりも大である絶縁膜を製造する方法であって、
付記1〜5のいずれか1項に記載の被膜形成用塗布液から成膜することを特徴とする絶縁膜の製造方法。
【0104】
(付記13)前記塗布液を塗布した後、形成された塗膜に、酸素プラズマ、アンモニアプラズマ及びフッ化炭素プラズマからなる群から選択されたプラズマを照射する工程をさらに含むことを特徴とする付記12に記載の絶縁膜の製造方法。
【0105】
(付記14)前記絶縁膜を形成した後、当該絶縁膜を貫通しない深さまで選択的にエッチングする工程をさらに含むことを特徴とする付記12又は13に記載の絶縁膜の製造方法。
【0106】
(付記15)付記9〜11のいずれか1項に記載の絶縁膜を含んでなることを特徴とする半導体装置。
【0107】
(付記16)基板と、その上に交互に積層して形成された複数の絶縁層及び複数の配線層とを含み、当該絶縁層の少なくとも一つが、付記9〜11のいずれか1項に記載の絶縁膜であることを特徴とする付記15に記載の半導体装置。
【0108】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、IC、LSI等の高集積度の半導体装置において、デュアルダマシン法のようなコントロールエッチング工程を含む半導体形成プロセスにおいて、好適な低誘電率絶縁膜を提供できる。
【0109】
また、本発明によれば、上述のような優れた絶縁膜を確実にかつ簡単に製造できる方法を提供できる。特に、処理工数を減らし、エッチング条件の細かいコントロールが不要となる点で、注目に値する。
【0110】
さらに、本発明によれば、上述のような優れた絶縁膜を備えた半導体装置を提供することができる。この半導体装置は、上記のような低誘電率被膜を組み込んだことによって、低誘電率被膜の誘電率の低下に伴って信号伝播速度の遅延を軽減できるので、高速でかつ高信頼性の半導体装置の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による絶縁性被膜の形成方法の原理を示した断面図である。
【図2】本発明による絶縁性被膜の形成方法を模式的に示した断面図である。
【図3】本発明による絶縁膜のエッチングストッパーとしての使用を模式的に示した断面図である。
【図4】本発明による半導体装置の好ましい1実施形態を示した断面図である。
【図5】図4に示した半導体装置の好ましい製造方法の前半を順に示した断面図である。
【図6】図4に示した半導体装置の好ましい製造方法の後半を順に示した断面図である。
【符号の説明】
1…シリコン基板
2…SiN拡散防止膜
3…SiOC膜
4…SiO2膜
7…低誘電率絶縁膜
10…半導体装置
13…TaN膜
16…Cu埋め込み配線層
【発明の属する技術分野】
本発明は、被膜形成技術に関し、さらに詳しく述べると、例えばIC、LSI等の高集積度の半導体装置において半導体集積回路の絶縁膜やその他の装置の絶縁膜の形成に有用な、低誘電率の被膜を形成するための塗布液に関する。また、本発明は、本発明の塗布液を使用して絶縁膜を製造する方法と、それによって形成される低誘電率の絶縁膜に関する。さらに、本発明は、本発明の絶縁膜を使用した、高速で信頼性の高い半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、パーソナルコンピュータからハイパフォーマンスコンピュータに至るまで、使用されている半導体装置の高速化は著しく、多層配線部における配線抵抗と配線間の寄生容量に起因する信号伝搬速度の低下による伝送遅延がコンピュータの演算速度を左右するようになってきている。このような信号伝搬速度の低下は、配線間隔が1μm以上の世代ではデバイス全体への影響が少なかったものの、半導体装置の高集積化に伴う配線幅及び配線間隔の微細化につれて、配線抵抗が上昇しかつ寄生容量が増大してくるので、ますます問題になっている。例えば、配線間隔が1μm以下ではデバイス速度への影響が大きくなり、特に、0.5μm以下の配線間隔で回路を形成した場合、配線間の寄生容量がデバイス速度へ大きく影響してくる。
【0003】
上述のような配線による信号遅延Tは、配線抵抗をRとし、配線間の寄生容量をCとした場合、次式:
T∝C・R
で表される。一方、寄生容量Cは、真空の誘電率をε0 、層間絶縁膜の誘電率をεr 、配線層の側面積をS、そして配線層の間隔をdとした場合、次式:
C=ε0 ・εr ・S/d
で表される。これらの式から理解されるように、信号遅延Tを小さくするためには、配線層間の寄生容量Cの増大を防止すればよい。配線層間の寄生容量Cの増大を防止するためには、配線層厚を薄くして断面積Sを小さくすればよいが、そうすると、配線抵抗Rの上昇を招くため、信号遅延Tを解消することができない。
【0004】
従来、このような寄生容量に基づく信号遅延の増大を防止するために、上記した寄生容量の式のうちεr に注目して、層間絶縁膜として少なくとも3以下の低比誘電率を示す絶縁膜材料が研究、開発され、また使用されている。例えば、スピンオングラス(SOG)系の材料が、成膜が容易であるので、絶縁膜材料として広く使用されている。
【0005】
また、配線材料としては、特に抵抗の小さい銅を用いて信号遅延を抑えるのが現在主流になってきている。
【0006】
ところで、銅をエッチングして金属配線を形成するのは容易でないため、1種以上の層間絶縁膜を堆積させ、パターン状にエッチングして、導電材料で充填される垂直及び水平相互接続部を形成するダマシン法が用いられている。ダマシン法で主流なものは、周知の通り、シングルダマシン法とデュアルダマシン法の二つである。
【0007】
シングルダマシン法とは、下記から理解されるように、ビア層と配線層の埋め込みを別々に行う方法である。
【0008】
絶縁膜(ビア層)形成→ビアパターニング(エッチング)→金属埋め込み→その上に別の絶縁膜(配線層)形成→配線パターニング(エッチング)→金属埋め込み
しかし、この方法の場合、処理の工数が非常に多く、手間が多くかかり、コストの増大も避けられない。
【0009】
これに対して、デュアルダマシン法とは、下記から理解されるように、ビア層と配線層の埋め込みを同時に行う方法である。
【0010】
絶縁膜(ビア層+配線層)形成→ビア、配線パターニング(エッチング)→金属埋め込み
デュアルダマシン法は、幅も深さも違うパターン(ビア溝と配線溝)を同時に形成しなければならないため、絶縁膜の形成後、その底部に達しない程度まででエッチングを停止する工程を必ず含むことになり、エッチングの仕方に工夫が必要である。
【0011】
絶縁膜の途中でエッチングを停止するには、絶縁膜のエッチング耐性から計算してエッチング時間でコントロールする方法(コントロールエッチング)と、エッチングを停止させたい深さに膜厚50〜100nm程度のエッチング耐性の高い層(エッチングストッパー)を設ける方法がある。例えば、エッチング耐性の異なる2種類の絶縁膜を順次堆積し、エッチングすることを特徴とするデュアルダマシン法はすでに公知である(特許文献1)。
【0012】
しかしながら、従来の技術に従ってコントロールエッチングを行った場合、所望の深さでエッチングを停止させるのが困難である。エッチング速度はガス圧、電圧、温度などのエッチング条件、絶縁膜のロットバラ、形成するパターンに対する依存性など、各種の条件によって微妙に違うため、エッチング時間でコントロールしても、エッチング深さにバラツキが出ることが多いからである。
【0013】
また、コントロールエッチングの場合、エッチングを停止させたところで刺状や粒状の残が発生することが多い。この傾向は、近年絶縁材料としてよく使われている多孔性の材料に多く認められる。
【0014】
これに対して、エッチングストッパーを使用する方法は、所望の深さでエッチングを停止させるのは容易であり、残の問題もコントロールエッチングほど深刻ではない。しかし、エッチングストッパーは、比誘電率4以上の材料からなるのがほとんどである。例えば、SiNの場合、その比誘電率は約7であり、SiCが4.5、SiO2が4.2といったところである。低誘電率絶縁膜を使用しても、エッチングストッパーの誘電率が高いため、結合した層の誘電率を増加させてしまうという問題が発生する。
【0015】
また、デュアルダマシン法において配線層とビア層の間にエッチングストッパーを形成する場合、スピンコート法で低誘電率膜を成膜した後にストッパーをCVD法で成膜し、さらにまた低誘電率膜を再びスピンコート法で成膜するという3回もの成膜工程が必要となる。また、その際、下層の低誘電率膜と上層の低誘電率膜の熱履歴に差が出るため、下層に低誘電率膜が硬化して、ストレスによるクラックが生じるなどの問題もある。さらに、低誘電率膜は多孔性膜であり、エッチング選択比がとりずらいために、複数段のハードマスクを必要とすることから、さらに工程数が増加する。さらにまた、多孔性の低誘電率膜にオープンポアがあるため、脱ガスに伴う密着不良や電気的なリークなどの問題など、生産プロセスへの適用には問題が多い。
【0016】
【特許文献1】
特開2001−110789号公報(特許請求の範囲、図1A〜図1H)
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来の技術の問題点を解決することを目的とする。
【0018】
本発明の目的は、まず、IC、LSI等の高集積度の半導体装置の製造において、デュアルダマシン法のようなコントロールエッチング工程を含む半導体形成プロセスのおいて好適な低誘電率の絶縁膜を提供することにある。
【0019】
また、本発明の目的は、そのような低誘電率の絶縁膜を簡単な工程で製造する方法を提供することにある。
【0020】
さらに、本発明の目的は、そのような低誘電率の絶縁膜の製造に有用な被膜形成用塗布液を提供することにある。
【0021】
さらにまた、本発明の目的は、上述のような低誘電率の絶縁膜を備えた、製造が簡単でありかつ高速で信頼性の高い半導体装置を提供することにある。
【0022】
本発明の上記した目的やその他の目的は、以下の詳細な説明から容易に理解することができるであろう。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、低誘電率の絶縁膜を形成する方法について鋭意研究の結果、分子の極性が小さくかつ成膜後にエッチング耐性が大きくなる成分と、分子の極性が大きくかつ成膜後にエッチング耐性が小さくなる成分の2種類を少なくとも含有する被膜形成用塗布液を用いた場合、膜上部に比較して下部のエッチング耐性が高い低誘電率の絶縁膜を形成することができるということ、また、得られた絶縁膜をデュアルダマシン法に適用した場合、絶縁膜のコントロールエッチングが容易になり、上記課題を同時に解決できるということを見い出した。
【0024】
本発明は、その1つの面において、第1の被膜形成成分と、前記第1の被膜形成成分と比較して、分子の極性が大きくかつ成膜時にエッチング耐性が小さくなる第2の被膜形成成分とを少なくとも含んでなることを特徴とする被膜形成用塗布液にある。ここで、第1の被膜形成成分は、第2の被膜形成成分と比較して、分子の極性がより小さくかつ成膜時により大きなエッチング耐性を示すことができる。
【0025】
また、本発明は、そのもう1つの面において、厚さ方向に関して、下層部のエッチング耐性が上層部のエッチング耐性よりも大であり、かつ本発明による被膜形成用塗布液から形成されたものであることを特徴とする絶縁膜にある。
【0026】
さらに、本発明は、そのもう1つの面において、厚さ方向に関して、下層部のエッチング耐性が上層部のエッチング耐性よりも大である絶縁膜を製造する方法であって、
本発明による被膜形成用塗布液から成膜することを特徴とする絶縁膜の製造方法にある。
【0027】
さらにまた、本発明は、そのもう1つの面において、本発明による絶縁膜を含んでなることを特徴とする半導体装置にある。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明による被膜形成用塗布液、低誘電率絶縁膜、その製造方法及び半導体装置は、それぞれ、いろいろな形態で有利に実施することができる。なお、それぞれの発明は、以下に記載する形態に限定されるわけではない。
【0029】
第1に、本発明は、被膜の形成に用いられる塗布液にある。この塗布液とそれによる被膜、典型的には低誘電率の絶縁膜の形成方法は、極性が小さい分子と極性が大きい分子を混合した溶液を基板や配線層などの下地層(以下、総称的に「基板」という)上に塗布した場合、極性が小さい分子が表面側に、大きい分子は基板側に集まるという性質に着目したものである。すなわち、図1(A)に示すように、基板(図示せず)の上に極性が小さい分子pと極性が大きい分子Pの混合物からなる塗布液を所定の膜厚で塗布して成膜した場合、得られた被膜では、図1(B)に示すように、極性が小さい分子pが表面側に集中するからである。なお、本発明は、このように異なる極性をもった分子を成膜に使用しているが、以下に詳細に説明するように、極性が小さい分子が基板側に、大きい分子が表面側に集まるという点で図1の成膜方法とは相違する。また、これと似たような成膜方法は、特開平7−199468号公報に記載の感光性組成物でも着目されているが、この公開公報は、化学増幅型レジストにおいて相分離を起こすことなく解像性を高めるため、分子の極性が小さくアルカリ溶解速度が遅い成分と、分子の極性が大きくアルカリ溶解速度が速い分子とを組み合わせて使用することを教示しているだけである。
【0030】
本発明による被膜形成用塗布液は、分子の極性が小さくかつ成膜後にエッチング耐性が大きくなる分子(すなわち、第1の被膜形成成分)と、分子の極性が大きくかつ成膜後にエッチング耐性が小さくなる分子(すなわち、第2に被膜形成成分)の少なくとも2種類の成分を1つの塗布液に混在させ、得られる低誘電率の被膜(絶縁膜)において、その被膜の表層部分に、下層部分に比較してエッチング耐性の小さな分子を集めることを特徴としている。ここで、「エッチング耐性」とは、ある特定の条件におけるエッチング速度の大小を意味する。すなわち、エッチング速度が大きければ、その被膜は、エッチング耐性に劣ることを意味し、反対にエッチング速度が小さければ、エッチング耐性に優れることを意味する。エッチング条件は、RF出力、ソースガスの種類及び量、チャンバの圧力などを適宜コントロールすることで、それぞれの成膜に最適な条件を設定することができる。また、得られる被膜において、エッチング耐性のコントロールは、成膜密度、構成分子の種類及び比率やその他のファクタの調整を通じて有利に行うことができる。
【0031】
本発明による分子の極性の差を利用した成膜方法の原理は、図2に模式的に示す通りである。すなわち、図2に示すように、基板(図示せず)の上に、分子の極性が小さくかつ成膜後にエッチング耐性が大きくなる第1の被膜形成成分Eと、第1の被膜形成成分Eと比較して、分子の極性が大きくかつ成膜後にエッチング耐性が小さくなる第2の被膜形成成分eの混合物からなる塗布液を所定の膜厚で塗布して成膜した場合、得られた被膜(絶縁膜)では、まったく予想されなかったことであるが、分子の極性が大きくかつ成膜後にエッチング耐性が小さくなる第2の被膜形成成分eを被膜の表層部分に集中して分布させることができる。すなわち、第1の被膜形成成分Eに由来するエッチング耐性にすぐれた下層の被膜7−1と、第2の被膜形成成分eに由来するエッチング耐性に劣る上層の被膜7−2とからなる2層構造体が得られる。
【0032】
また、本発明では、得られる2層構造の被膜において、分子の極性が小さくかつ成膜後にエッチング耐性が大きくなる第1の被膜形成成分eと、分子の極性が大きくかつ成膜後にエッチング耐性が小さくなる第2の被膜形成成分Eの比率を調整することによって、成膜後のエッチング耐性が高い部分と低い部分の比率、すなわち、下層の被膜7−1と上層の被膜7−2の膜厚比を任意に設定することができる。
【0033】
上記のようにして作製した2層構造の被膜において、下層の被膜7−1はエッチング耐性が大であるので、例えばある特定の条件の下で上層の被膜7−2の表面からエッチングを実施した場合、図3に示すように、下層の被膜7−1と上層の被膜7−2の界面に達したところでエッチングが停止されるであろう。すなわち、このような被膜においてエッチングを行った場合、エッチング耐性が小さい上部がすべてエッチングされた時点でエッチング速度は低くなる。そのため、所望の深さでエッチングを停止するのは容易である。また、エッチング耐性が大きく異なる界面部でエッチングを停止させるため、残も生じにくい。
【0034】
下層の被膜7−1と、上層の被膜7−2とからなる2層構造の被膜において、下層の被膜7−1は、特にダマシン法による回路の形成に有用なエッチングストッパーとして機能することができる。下層の被膜7−1は、特に上述の性質を利用してデュアルダマシン法を行い、半導体装置のビア及び配線を形成することができる。デュアルダマシン法には先ビア方式と後ビア方式の2種類があるが、本発明はどちらにも適用可能である。なお、下層の被膜7−1は、そのすぐれたエッチング耐性に着目してエッチングストッパーとして有利に使用できるばかりでなく、もしも所期の作用効果が得られるのであるならば、ハードマスク、CMP(化学機械研磨)ストッパー、金属拡散ストッパーなどとしても利用することができる。もちろん、被膜そのものは、その低い誘電率を利用して、例えば層間絶縁膜などの絶縁膜として半導体装置やその他の電子装置などで有利に使用することができる。
【0035】
本発明の実施において、異なるエッチング耐性を有する2層もしくはそれ以上の多層構造をもった被膜の形成に用いられる第1及び第2の被膜形成成分は、それぞれ、所期の作用効果が得られる限り、どのような材料であってもよい。適当な材料としては、例えば、有機シリコーン化合物、有機ポリシラザン、ポリアダマンタノール、ポリベンゾオキサゾール、ポラジン−ケイ素ポリマ、芳香族系有機ポリマなどを挙げることができる。芳香族系有機ポリマは、例えば、「SILK」(商品名、ダウ・コーニング社製)として商業的に入手することができる。これらの材料は、通常、単独で使用されるけれども、必要ならば、2種以上を混合もしくは組み合わせて使用してもよい。
【0036】
第1及び第2の被膜形成成分は、それぞれ、成膜後において異なるエッチング耐性を発現することが必要である。成分ごとにエッチング耐性を変える方法としては、分子中に含まれるケイ素原子の含有量を変えること(O2プラズマエッチングなど;例えば有機シリコーン化合物等の含ケイ素化合物や含ケイ素ポリマを使用する場合)、ベンゼン環や脂環族の含有量を変えること(CF4プラズマエッチングなど)、膜密度を変えること(被膜が多孔性の膜である場合)、などの方法がある。
【0037】
エッチング耐性を変えることにより、膜上部と膜下部では誘電率に違いが生じる場合がある。その場合、配線遅延の低減のためには、上部側の誘電率をより低くなるようにすることが好ましい。例えば膜密度が低い方が、エッチング耐性が低く誘電率も低くなるので、膜上部に膜密度が低い層を配置してこちらを配線層に、膜下部は膜密度が高い層を配置してビア層にするとよい。すなわち、一般的には、第1の被膜形成成分に由来する下層の被膜の密度が、第2の被膜形成成分に由来する上層の被膜の密度よりも大であることが好ましい。
【0038】
本発明の場合、第1及び第2の被膜形成成分の間でエッチング耐性の差が小さいと効果がなくなるので、特定のエッチング条件のもとで1.5倍以上、できれば2倍以上違うほうが好ましい。すなわち、第1の被膜形成成分に由来する下層の被膜のエッチング耐性が、第2の被膜形成成分に由来する上層の被膜のエッチング耐性の1.5倍以上であることが好ましく、さらに好ましくは、2倍以上である。ここで、「特定のエッチング条件のもとで」とは、使用している被膜の材料種(シリコーン系、有機系など)に適した条件のもとで、という意味である。
【0039】
極性のコントロールにはいろいろな方法が考えられるが、特に多孔性のシリコーン膜を形成する場合、アルコキシシランを加水分解して得られる有機シリコーン化合物を使用し、残存するアルコキシ基およびそれが加水分解してできた水酸基の量を調整するのがよい。その他の被膜形成材料の場合もこれに準じて、置換基の種類と存在比率で極性をコントロールするのがよい。
【0040】
また、第1及び第2の被膜形成成分において、それらの成分の分子量に差があることも有用である。一般的には、第1の被膜形成成分の分子量が、第2の被膜形成成分の分子量よりも小さいことが好ましい。例えば多孔性の被膜を形成する場合に、分子量が大きいと、得られる被膜において空隙率の割合が増加し、膜密度の低下の帰結としてエッチング耐性も小さくなるからである。
【0041】
さらに、第1及び第2の被膜形成成分が、それぞれ、微粒子の形をしており、第1の被膜形成成分の微粒子の粒径が、第2の被膜形成成分の微粒子の粒径よりも小さいことが好ましい。得られる多孔性の被膜において、それを構成する微粒子の粒径が大きければ大きいほど、得られる被膜において空隙率の割合が増加し、膜密度の低下の帰結としてエッチング耐性も小さくなるからである。
【0042】
本発明の実施において、第1及び第2の被膜形成成分として、それぞれ、有機シリコーン化合物を使用することが特に推奨される。また、有機シリコーン化合物は、上記したように、エッチング耐性や分子の極性のコントロールのために、いろいろな形態で、あるいはいろいろに使い分けして、有利に使用することができる。例えば、有機シリコーン化合物は、得られる多孔性被膜において互いに粒径を異にする有機シリコーン化合物の微粒子が含まれるように使用することが好ましい。また、その際、第1の被膜形成成分を構成する有機シリコーン化合物の微粒子の粒径は、第2の被膜形成成分を構成する有機シリコーン化合物の微粒子の粒径よりも大であることが好ましい。
【0043】
本発明の実施において有利に使用することのできる有機シリコーン化合物は、次式(I)により表されるアルコキシシランの加水分解による生成物である。
【0044】
XnSi(OR)4−n …(I)
上式において、Xは、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜8のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、ブチル基等、フッ素置換アルキル基、アリール基、ビニル基などである。また、Rは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、ビニル基などである。そして、nは、0〜3の任意の整数である。
【0045】
本発明の実施に有用なアルコキシシランは、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリイソプロポキシシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、ジフルオロジメトキシシラン、ジフルオロジエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシランなどを挙げることができる。これらのアルコキシシランは、単独で使用してもよく、2種以上を混合もしくは組み合わせて使用してもよい。
【0046】
また、このようにアルコキシシランを加水分解して得られる有機シリコーン化合物を使用する場合、残存するアルコキシ基及びそれが加水分解してできた水酸基の量を調整するのがよい。例えば、第1の被膜形成成分を構成する有機シリコーン化合物の分子において、その分子の全置換基中に占める残存アルコキシ基と水酸基の比率をA%とし、かつ第2の被膜形成成分を構成する有機シリコーン化合物の分子において、その分子の全置換基中に占める残存アルコキシ基と水酸基の比率をB%とした場合、比率の差(B−A)が10%以上であることが好ましい。例えば、極性が小さい有機シリコーン化合物の残存アルコキシ基と水酸基の合計量の比率が30%であるとすると、極性が大きい有機シリコーン化合物の残存アルコキシ基と水酸基の合計量の比率は、40%もしくはそれ以上であるといった具合である。
【0047】
本発明の被膜形成用塗布液は、通常、上記した第1及び第2の被膜形成成分を少なくとも含み、さらに加えて、第3、第4等の追加の被膜形成成分を必要に応じて含んでいてもよい。
【0048】
これらの被膜形成成分は、塗布液の形成のために溶媒に溶解もしくは分散させて使用するのが一般的である。塗布液の形成に好適な溶媒は、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどを包含する。これらの溶媒は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0049】
被膜形成成分は、上記したような溶媒にいろいろな濃度で溶解もしくは分散させて使用することができる。被膜形成成分の適当な溶解もしくは分散濃度は、一般的に約1〜50重量%であり、好ましくは約5〜25重量%の範囲である。被膜形成成分の量が少なすぎると、所望の膜厚が得られず、多いと塗りムラが生じる。
【0050】
被膜形成用塗布液は、必要に応じて、被膜形成成分、溶媒以外の成分を追加的に有していてもよい。追加の成分として、例えば、バインダ、界面活性剤などを挙げることができる。例えばバインダは、有機シリコーン化合物の分子どうしを焼成処理などによって結合させる場合に結合助剤として有用である。適当なバインダの例として、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等の有機ケイ素化合物、オクチル酸錫、オクチル酸アルミニウム等のカルボン酸金属塩、ポリシラザン、その他を挙げることができる。また、カチオン系、アニオン系、ノニオン系等の界面活性剤は、微粒子の凝集を防ぐのに好適である。
【0051】
被膜形成用塗布液は、成膜のため、基板の上に所定の膜厚で塗布する。適当な塗布法としては、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、例えばスピンコート法、ディップコート法、バーコート法などの常用の塗布法を使用することができる。
【0052】
次いで、形成された塗膜を後処理して目的とする被膜を得る。本発明では、この後処理工程として焼成工程を有利に使用することができる。焼成工程は、通常、塗布液を基板上に塗布した後、形成された塗膜を所定の温度まで加熱することによって有利に実施することができる。焼成工程は、例えば、次のようにして実施することができる。
【0053】
まず、所定の組成で調製した被膜形成用塗布液をスピンコート法により基板上に塗布し、約120〜350℃の温度で約5〜10分間にわたって加熱し、溶媒を乾燥する。ここで、溶媒乾燥の温度が120℃未満では溶媒乾燥が不十分であり、350℃以上では酸化によって性能が変化する恐れがある。次いで、基板を不活性雰囲気(例えば、酸素濃度100ppm以下の窒素ガス)に移し、約350〜450℃の温度で約30分間もしくはそれ以上にわたって熱処理する。ここで、溶媒乾燥後の熱処理は、酸化分解を抑制するために上述のように不活性ガス中で行うことが必須であり、また、熱処理温度が350℃未満では配線を形成する際に膜からの脱ガス(膜中に残存したガスの逃出)が懸念され、450℃を超えるとクラックなどが生じる恐れがある。
【0054】
本発明では、焼成工程以外の方法も後処理に使用することができる。例えば、塗布液を塗布した後、形成された塗膜に、紫外線、赤外線、電子線、X線、レーザなどの光を照射してもよい。これらの光の照射によって、微粒子の収縮を促進させ、空隙形成を行うことができるからである。光の使い分けも重要である。いずれの光も重合促進作用を具えているけれども、例えば、塗膜の表面から反応を生じさせて目的とする多孔性被膜を形成する場合には、紫外線を照射するのが好ましい。紫外線には、塗膜表面のキュア(硬化)を促進し、オープンポアを抑制する作用もあるからである。また、急速昇降温制御を行う場合には赤外線照射による加熱が好ましい。さらに、反応速度を精密に制御したい場合には、電子線照射が好ましい。なお、このような光照射の場合に、光照射量やその他の照射条件は、所望とする結果に応じて任意に変更することができる。
【0055】
また、プラズマ処理も後処理として好適である。例えば、塗布液を塗布した後、形成された塗膜に、酸素プラズマ、アンモニアプラズマ、フッ化炭素プラズマなどを照射することができる。これらのプラズマの照射によって、微粒子の収縮を促進させ、空隙形成を行うことができるからである。また、被膜表面の疎水佳処理を兼ねたい場合には、酸素プラズマの照射が好ましい。なお、このようなプラズマ照射の場合に、プラズマ照射量やその他の照射条件は、所望とする結果に応じて任意に変更することができる。
【0056】
本発明に従い被膜形成用塗布液から上述の方法によって形成される被膜は、多孔性の被膜及び非多孔性の被膜の両者を包含する。多孔性の被膜の場合、好ましくは、全体にわたって細孔、すなわち、微細な空隙を有するけれども、厚さ方向に空隙の分布密度かサイズかいずれか少なくとも一方を異ならせた多孔性の被膜、特に絶縁膜である。本発明の多孔性の絶縁膜は、半導体装置やその他の装置で有利に使用することができるけれども、特に半導体装置において、配線層間の層間絶縁膜として有利に使用することができる。
【0057】
本発明の被膜、特に絶縁膜では、好ましいことに、当該絶縁膜を厚さ方向に見て、第2の被膜形成成分を構成する分子(例えば、有機シリコーン化合物)が、当該被膜の実質的に上方の領域を占有し、エッチング耐性が弱い表層部分を構成している。すなわち、この被膜は、大きなエッチング耐性を有する下層被膜と小さなエッチング耐性を有する上層被膜とに分かれて形成される。ここで、下層被膜と上層被膜の膜厚の比は、本発明の被膜の使途などに応じて任意に変更することができ、また、膜厚比の変更は、上記したように、塗布液の組成、成膜条件などの変更によって容易に可能である。例えば、下層被膜と上層被膜の膜厚比をほぼ1:1としてもよく、さもなければ、例えば上層被膜の膜厚が被膜の全厚の30%以下となるように、両者の膜厚に差をつけてもよい。
【0058】
また、本発明によって得られる絶縁膜は、好ましいことに、3.0未満の誘電率を有している。絶縁膜の誘電率は、さらに好ましくは、約2.0〜2.5の範囲であり、最も好ましくは、2.2〜2.3程度である。このような低い誘電率が得られるので、本発明の絶縁膜を半導体装置において使用した場合、信号の高速化を容易に達成することができる。
【0059】
さらに、絶縁膜の厚さは、広い範囲で変更することができるけれども、好ましいことに、100nm以上の比較的に大きな厚さでも、従来の技術では達成することが難しいとされた高い密着性を実現しつつ、満足し得る低誘電率やその他の特性を実現することができる。絶縁膜の厚さは、通常、約50〜200nmの範囲である。
【0060】
本発明は、また、本発明の絶縁膜を含む各種の半導体装置にある。好ましくは、絶縁膜は、基板と、その上に交互に積層して形成された複数の絶縁層及び複数の配線層とを含む半導体装置において、絶縁層の少なくとも一つとして有利に使用することができる。この半導体装置では、このように本発明による低誘電率の絶縁膜を取り入れることで、配線遅延を顕著に低下することができる。
【0061】
また、本発明の半導体装置においては、配線層を任意の金属配線材料から有利に形成することができる。例えば、配線層を形成する金属配線の材料を、アルミニウム及びアルミニウムを主体とした合金または銅及び銅を主体とした合金から選ぶことができる。さらに、これらの配線層において、チタン又はチタンを主体とした合金、あるいはタンタル又はタンタルを主体とした合金をバリアメタルとして用いてもよい。
【0062】
図4は、本発明による半導体装置の好ましい1実施形態を示したものである。図示の半導体装置10の場合、その内部に本発明による2層構造の低誘電率絶縁膜7が取り込まれている。
【0063】
図4を参照すると、半導体装置10は、トランジスタ層(図示せず)を上面に備えたシリコン基板1からなる。シリコン基板1の上には、SiN拡散防止膜2、SiOC層間絶縁膜3、そしてSiO2膜4が順次積層されており、さらに、これらの層の加工によって形成されたCuビア6も設けられている。Cuビア6の周囲には、TaN膜5がバリアメタルとして形成されている。
【0064】
SiO2膜4の上には、本発明による低誘電率絶縁膜7がシロキサン樹脂から形成されている。絶縁膜7は、図示のように、エッチング耐性に優れた下層絶縁膜7−1と、エッチング耐性に乏しい上層絶縁膜7−2とからなる。また、低誘電率絶縁膜7の上には、SiO2膜9が順次積層されている。さらに、これらの層の加工によって形成されたCu埋め込み配線層16も設けられている。Cu埋め込み配線層16の周囲には、TaN膜13が形成されている。
【0065】
この半導体装置では、Cu埋め込み配線層16の形成のため、エッチング耐性に優れた下層絶縁膜7−1がエッチングストッパーとして使用されている。また、吸湿による誘電率の低下などを引き起こすことなく各種の特性を安定に維持することができる。さらに、配線形成工程におけるCMP(化学機械研磨)などの力学的ストレスや、半導体装置製造工程における焼成などの熱ストレスをうけても、ここで使用されている絶縁膜は良好な密着性を有しているので、剥れなどの不都合が発生しにくく、デバイス特性及び信頼性をより向上することができる。
【0066】
【実施例】
引き続いて、本発明をその実施例を参照して説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものでないことは言うまでもない。
合成例1
39.6gのメチルイソブチルケトンに20.8g(0.1モル)のテトラエトキシシランを溶解させた。16.2g(0.9モル)の、濃度400ppmの硝酸水を10分間で滴下し、滴下終了後に2時間の熟成反応を行わせた。テトラエトキシシランが共重合し、球状シロキサン樹脂が生成された。
【0067】
次いで、11.8g(0.1モル)のトリメチルエトキシシランを10分間で滴下し、滴下終了後に2時間の熟成反応を行わせ、先に合成した球状シロキサン樹脂の残存エトキシ基又は水酸基をシリル化した。
【0068】
引き続いて、5gの硝酸マグネシウムを添加し、過剰の水分を除去した。ロータリエバポレータを用い、反応溶液を除去し、さらに1,4−ジオキサンを使用して凍結乾燥を行った。
【0069】
得られた生成物の分子量をGPCによって測定したところ、重量平均分子量は約75,000であった。また、IR,NMRを用いて置換基の量を調べたところ、おおよそメチル基が80%、エトキシ基が15%、水酸基が5%であり、エトキシ基と水酸基の合計量の比率が20%であることがわかった。この有機シリコーン化合物を、極性が小さい第1の被膜形成成分として使用することにした。
合成例2
39.6gのメチルイソブチルケトンに20.8g(0.1モル)のテトラエトキシシランを溶解させた。5.4g(0.3モル)の、濃度400ppmの硝酸水を10分間で滴下し、滴下終了後に0.5時間の熟成反応を行わせた。テトラエトキシシランが共重合し、球状シロキサン樹脂が生成された。
【0070】
続いてトリメチルエトキシシラン5.9g(0.05モル)を10分間で滴下し、滴下終了後0.5時間の熟成反応を行い、先に合成した球状シロキサン樹脂の残存エトキシ基、または水酸基をシリル化した。
【0071】
次いで、5gの硝酸マグネシウムを添加し、過剰の水分を除去した。ロータリエバポレータを用い、反応溶液を除去し、さらに1,4−ジオキサンを使用して凍結乾燥を行った。
【0072】
得られた生成物の分子量をGPCによって測定したところ、重量平均分子量は約10,000であった。また、IR,NMRを用いて置換基の量を調べたところ、おおよそメチル基が60%、エトキシ基が30%、水酸基が10%であり、エトキシ基と水酸基の合計量の比率が40%であることがわかった。この有機シリコーン化合物を、極性が大きい第2の被膜形成成分として使用することにした。
実施例1
前記合成例1で調製した5gの有機シリコーン化合物と前記合成例2で調製した5gの有機シリコーン化合物をメチルイソブチルケトンに溶解させ、固形分濃度20重量%の塗布溶液(a)を得た。また、比較のために、前記合成例1で調製した10gの有機シリコーン化合物をメチルイソブチルケトンに溶解させて固形分濃度20重量%の塗布溶液(b)を得、かつ前記合成例2で調製した10gの有機シリコーン化合物をメチルイソブチルケトンに溶解させて固形分濃度20重量%の塗布溶液(c)を得た。
【0073】
次いで、上記のようにして調製した塗布溶液(a)、(b)及び(c)を使用して、次のような手順で低誘電率被膜を作製した。
【0074】
それぞれの塗布溶液をシリコンウエハの表面にスピンコートした。スピンコータの回転数は3000rpmであり、塗布時間は20秒であった。スピンコート後、塗布溶液の溶媒を200℃で蒸発させた。次いで、それぞれの塗布溶液から形成された塗膜を酸素濃度100ppm以下の窒素雰囲気中で、400℃で30分間にわたって熱処理した。この熱処理により、シロキサン樹脂が架橋し、低誘電率被膜(膜厚:約400nm)が形成された。
【0075】
それぞれの低誘電率被膜の誘電率を成膜直後に測定したところ、
塗布溶液(a)の誘電率 …2.3
塗布溶液(b)の誘電率 …2.25
塗布溶液(c)の誘電率 …2.4
であった。ここで、塗布溶液(b)由来の被膜の誘電率が塗布溶液(c)由来の被膜の誘電率より小さいのは、塗布溶液(b)で使用した有機シリコーン化合物の分子量の方が大きい分、分子が嵩張るため分子どうしの間に生じる隙間が大きくなったためである。また、塗布溶液(b)の成分の方が塗布溶液(c)の成分よりも極性が小さいため、表面側に配置される傾向にある。
【0076】
次いで、塗布溶液(a)に由来の膜厚400nmの低誘電率被膜をCF4+CHF3を用いた反応性イオンエッチング(RIE)によってエッチングし、エッチング耐性を測定した。被膜の表面から深さ約200nmのところを境に、上部200nm部分のエッチングに要した時間が9.8秒、下部200nm部分のエッチングに要した時間が21秒であった。このことから、得られた被膜はエッチング耐性に関して2層構造を有しており、下層被膜は上層被膜の約2倍のエッチング耐性を有することがわかった。これは、被膜の下部に集まる極性の大きい成分の分子量が小さいために、膜が緻密で膜密度が高いことと、フェニル基を有しているためである。
比較例1
前記実施例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、比較のため、塗布溶液(a)に代えて、それよりも誘電率が低い塗布溶液(b)を使用した。
【0077】
塗布溶液(b)を使用して、前記実施例1に記載の手順で第1の低誘電率被膜(膜厚:約175nm)を形成し、その上に、エッチングストッパー膜(膜厚:約50nm)で形成し、さらにその上に、同じく塗布溶液(b)を使用して、第2の低誘電率被膜(膜厚:約175nm)を形成した。本例で形成したエッチングストッパー膜は、SiN膜、SiC膜、そしてSiO2膜の3種であった。
【0078】
第2の低誘電率被膜の形成後、前記実施例1に記載の手順でエッチング耐性を測定したところ、いずれの場合にも、第2の低誘電率被膜とエッチングストッパー膜の界面でエッチングを停止させることができた。しかし、誘電率について見ると、塗布溶液(a)に由来の被膜の誘電率は2.3であったのに反して、エッチングストッパー膜(SiN膜、SiC膜及びSiO2膜)を有する被膜の誘電率は、それぞれ、4.3、3.5及び3.3であった。すなわち、本発明に従ってエッチングストッパー膜兼用の低誘電率被膜を使用した場合、従来のエッチングストッパー膜を使用する方法に較べて、処理工数を減らすことができるばかりでなく、誘電率の低下の面でも有利である。
実施例2
本例では、図4に示した半導体装置を図5及び図6に順を追って示す手順に従って製造した。
【0079】
まず、図5(A)に示すように、トランジスタ層(図示せず)を上面に具えたシリコン基板1の上にSiN拡散防止膜2を常用の成膜方法で形成した。
【0080】
次いで、図5(B)に示すように、SiN拡散防止膜2の全面に、厚さが例えば1μmのSiOC膜3を堆積させて層間絶縁膜とした後、後のCMP工程において研磨ストッパーとなるSiO2膜4を、例えば、100nmの厚さに堆積させた。
【0081】
引き続いて、ソース・ドレイン領域に達するビアホールを形成した後、スパッタ法を用いて全面に、厚さが例えば50nmのTaN膜5を堆積させてバリアメタルとした。次いで、同じくスパッタ法によってCuを厚く堆積させた後、CMP法によってSiO2膜4が露出するまで研磨することによって、Cu充填ビア6を形成した。
【0082】
次いで、図5(C)に示すように、前記実施例1で使用したものに同じ低誘電率被膜形成用塗布溶液(a)をスピーンコータによって塗布し、乾燥工程及び架橋工程を順次行った。例えば、厚さ400nmの有機絶縁膜(低誘電率被膜)7が形成された。この時、塗布溶液(a)は、2種類のエッチング耐性の異なる成分が1:1で構成されているが故に、表面よりおおよそ200nmのところを境に、上部はエッチング耐性が低く下部は高いものとなった。よって、ここで形成された有機絶縁膜7は、図示されるように、エッチング耐性に優れた下層絶縁膜7−1と、エッチング耐性に乏しい上層絶縁膜7−2とからなる。次いで、有機絶縁膜7の上にSiO2膜9をCMP犠牲膜として積層した。
【0083】
SiO2膜9の形成が完了した後、図示しないが、SiO2膜9の上にレジストを塗布し、さらに後の工程で形成するビア孔にあわせてパターニングした。得られたレジストパターンをマスクとして使用して、CF4+CHF3を用いた反応性イオンエッチング(RIE)を実施した。図5(D)に示すように、SiO2膜9、そして有機絶縁膜7が順次選択的にエッチングされ、Cu充填ビア6に達するビア孔11が形成された。ビア孔11の形成後、不要となったレジストパターンをO2−RIEで除去した。
【0084】
次いで、図示しないが、先の工程で形成されたビア孔11にノボラック樹脂を埋め込み、再びSiO2膜9の上にレジストを塗布し、さらに後の工程で形成する配線層用溝にあわせてパターニングした。得られたレジストパターンをマスクとして使用して、CF4+CHF3を用いたRIEを実施した。図6(E)に示すように、SiO2膜9が選択的にエッチングされ、有機絶縁膜7に達する配線層用溝12が形成された。配線層用溝12の形成後、不要となったレジストパターン及びノボラック樹脂をO2−RIEで除去した。
【0085】
次いで、図6(F)に示すように、処理途中のシリコン基板1の上面全体に、それぞれスパッタ法を用いて、例えば、厚さ50nmのTaN膜13及び厚さ50nmのCuシード層14を順次堆積させた。
【0086】
引き続いて、Cuシード層14をめっきベース層として銅(Cu)の電解めっきを行った。図6(G)に示すように、配線層形成用溝及びビア孔のそれぞれにCuめっき層15が埋め込まれた。
【0087】
次いで、再びCMP法によって、停止線CのところまでCuめっき層15、Cuシード層14及びTaN膜13を順次研磨して除去した。下地のSiO2膜9が露出し、Cuめっき層15とCuシード層14とが一体になったCu埋込配線層16をそなえた半導体装置10(図4を参照)が完成した。
【0088】
本例で上記のようにして完成された半導体装置では、本発明の低誘電率絶縁膜を取り込んでいるため、コントロールエッチングを行う際に容易にエッチング深さのコントロールができるとともに残の発生が少なく、デバイス特性及び信頼性をより向上することができる。
【0089】
また、本例においては先ビア式のデュアルダマシン法を用いたが、後ビア式においてもコントロールエッチングの工程が含まれており、本発明を好適に適用することができる。さらに、本発明に従えば、シングルダマシン法においても半導体装置を好適に製造することができる。
【0090】
さらに加えて、図4の半導体装置10は、本発明の説明のために、簡単な構造を有している。上記のような絶縁膜の形成工程、配線層用溝及びビアホールの形成工程、Cu埋込配線層の形成工程を必要回数だけ繰り返すことによって、多層配線構造を有するより複雑な構造の半導体装置が得られることが理解されるであろう。
【0091】
以上、本発明を特にその好ましい実施の形態及び実施例を参照して説明した。最後に、本発明のさらなる理解のために本発明の好ましい態様を整理すると、以下に付記する通りである。
【0092】
(付記1)第1の被膜形成成分と、前記第1の被膜形成成分と比較して、分子の極性が大きくかつ成膜時にエッチング耐性が小さくなる第2の被膜形成成分とを少なくとも含んでなることを特徴とする被膜形成用塗布液。
【0093】
(付記2)前記第1及び第2の被膜形成成分が、それぞれ、有機シリコーン化合物、有機ポリシラザン、ポリアダマンタノール、ポリベンゾオキサゾール、ポラジン−ケイ素ポリマ及び芳香族系有機ポリマからなる群から選ばれた1員であることを特徴とする付記1に記載の被膜形成用塗布液。
【0094】
(付記3)前記有機シリコーン化合物が、次式(I)により表されるアルコキシシラン:
XnSi(OR)4−n …(I)
(上式において、Xは、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜8のアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基又はビニル基を表し、Rは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基又はビニル基を表し、そしてnは0〜3の整数である)の加水分解生成物であることを特徴とする付記2に記載の被膜形成用塗布液。
【0095】
(付記4)前記第1の被膜形成成分の分子量が、前記第2の被膜形成成分の分子量よりも小さいことを特徴とする付記1〜3のいずれか1項に記載の被膜形成用塗布液。
【0096】
(付記5)前記第1及び第2の被膜形成成分が、それぞれ、微粒子の形をしており、前記第1の被膜形成成分の微粒子の粒径が、前記第2の被膜形成成分の微粒子の粒径よりも小さいことを特徴とする付記1〜4のいずれか1項に記載の被膜形成用塗布液。
【0097】
(付記6)成膜時、当該塗布液から形成された被膜を厚さ方向に見て、前記第1の被膜形成成分に由来する被膜が前記第2の被膜形成成分に由来する被膜の下方に形成されていることを特徴とする付記1〜5のいずれか1項に記載の被膜形成用塗布液。
【0098】
(付記7)前記第1の被膜形成成分に由来する下層の被膜の密度が、前記第2の被膜形成成分に由来する上層の被膜の密度よりも大であることを特徴とする付記6に記載の被膜形成用塗布液。
【0099】
(付記8)前記第1の被膜形成成分に由来する下層の被膜のエッチング耐性が、前記第2の被膜形成成分に由来する上層の被膜のエッチング耐性の1.5倍以上であることを特徴とする付記6又は7に記載の被膜形成用塗布液。
【0100】
(付記9)厚さ方向に関して、下層部のエッチング耐性が上層部のエッチング耐性よりも大であり、かつ付記1〜5のいずれか1項に記載の被膜形成用塗布液から形成されたものであることを特徴とする絶縁膜。
【0101】
(付記10)前記第1の被膜形成成分に由来する被膜が前記第2の被膜形成成分に由来する被膜の下方に形成されていることを特徴とする付記9に記載の絶縁膜。
【0102】
(付記11)前記第1の被膜形成成分に由来する下層の被膜の密度が、前記第2の被膜形成成分に由来する上層の被膜の密度よりも大であることを特徴とする付記10に記載の絶縁膜。
【0103】
(付記12)厚さ方向に関して、下層部のエッチング耐性が上層部のエッチング耐性よりも大である絶縁膜を製造する方法であって、
付記1〜5のいずれか1項に記載の被膜形成用塗布液から成膜することを特徴とする絶縁膜の製造方法。
【0104】
(付記13)前記塗布液を塗布した後、形成された塗膜に、酸素プラズマ、アンモニアプラズマ及びフッ化炭素プラズマからなる群から選択されたプラズマを照射する工程をさらに含むことを特徴とする付記12に記載の絶縁膜の製造方法。
【0105】
(付記14)前記絶縁膜を形成した後、当該絶縁膜を貫通しない深さまで選択的にエッチングする工程をさらに含むことを特徴とする付記12又は13に記載の絶縁膜の製造方法。
【0106】
(付記15)付記9〜11のいずれか1項に記載の絶縁膜を含んでなることを特徴とする半導体装置。
【0107】
(付記16)基板と、その上に交互に積層して形成された複数の絶縁層及び複数の配線層とを含み、当該絶縁層の少なくとも一つが、付記9〜11のいずれか1項に記載の絶縁膜であることを特徴とする付記15に記載の半導体装置。
【0108】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、IC、LSI等の高集積度の半導体装置において、デュアルダマシン法のようなコントロールエッチング工程を含む半導体形成プロセスにおいて、好適な低誘電率絶縁膜を提供できる。
【0109】
また、本発明によれば、上述のような優れた絶縁膜を確実にかつ簡単に製造できる方法を提供できる。特に、処理工数を減らし、エッチング条件の細かいコントロールが不要となる点で、注目に値する。
【0110】
さらに、本発明によれば、上述のような優れた絶縁膜を備えた半導体装置を提供することができる。この半導体装置は、上記のような低誘電率被膜を組み込んだことによって、低誘電率被膜の誘電率の低下に伴って信号伝播速度の遅延を軽減できるので、高速でかつ高信頼性の半導体装置の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による絶縁性被膜の形成方法の原理を示した断面図である。
【図2】本発明による絶縁性被膜の形成方法を模式的に示した断面図である。
【図3】本発明による絶縁膜のエッチングストッパーとしての使用を模式的に示した断面図である。
【図4】本発明による半導体装置の好ましい1実施形態を示した断面図である。
【図5】図4に示した半導体装置の好ましい製造方法の前半を順に示した断面図である。
【図6】図4に示した半導体装置の好ましい製造方法の後半を順に示した断面図である。
【符号の説明】
1…シリコン基板
2…SiN拡散防止膜
3…SiOC膜
4…SiO2膜
7…低誘電率絶縁膜
10…半導体装置
13…TaN膜
16…Cu埋め込み配線層
Claims (5)
- 第1の被膜形成成分と、前記第1の被膜形成成分と比較して、分子の極性が大きくかつ成膜時にエッチング耐性が小さくなる第2の被膜形成成分とを少なくとも含んでなることを特徴とする被膜形成用塗布液。
- 厚さ方向に関して、下層部のエッチング耐性が上層部のエッチング耐性よりも大であり、かつ請求項1に記載の被膜形成用塗布液から形成されたものであることを特徴とする絶縁膜。
- 前記第1の被膜形成成分に由来する被膜が前記第2の被膜形成成分に由来する被膜の下方に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の絶縁膜。
- 厚さ方向に関して、下層部のエッチング耐性が上層部のエッチング耐性よりも大である絶縁膜を製造する方法であって、
請求項1に記載の被膜形成用塗布液から成膜することを特徴とする絶縁膜の製造方法。 - 請求項2又は3に記載の絶縁膜を含んでなることを特徴とする半導体装置。
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