JP2004260069A - 樹脂磁石用組成物及び樹脂磁石成形物 - Google Patents
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Abstract
【課題】大径ボイドの発生を極めて効果的に低減させることができ、細径、高磁力のマグネットローラを得る場合にも好適に使用される樹脂磁石用組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】異方性フェライト磁性粉末と等方性フェライト磁性粉末とを所定割合で混合した混合磁性粉末を樹脂バインダーに分散混合してなる樹脂磁石組成物において、上記等方性フェライト磁性粉末として、レーザー回折式粒度分布測定法による体積毎平均粒径がD90で3μm以下のものを用いたことを特徴とする樹脂磁石用組成物を提供する。
【選択図】 なし
【解決手段】異方性フェライト磁性粉末と等方性フェライト磁性粉末とを所定割合で混合した混合磁性粉末を樹脂バインダーに分散混合してなる樹脂磁石組成物において、上記等方性フェライト磁性粉末として、レーザー回折式粒度分布測定法による体積毎平均粒径がD90で3μm以下のものを用いたことを特徴とする樹脂磁石用組成物を提供する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂バインダーに等方性フェライト磁性粉末と異方性フェライト磁性粉末との混合磁性粉末を混合分散してなる樹脂磁石用組成物及び樹脂磁石成形物に関し、更に詳述すれば、溶融流動性に優れると共に、大径ボイドの発生を極めて効果的に低減させることができ、細径、高磁力のマグネットローラを得る場合にも好適に使用される樹脂磁石用組成物、及び該樹脂磁石用組成物を成形してなるマグネットローラ等の樹脂磁石成形物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来から、複写機、プリンタ等の電子写真装置や静電記録装置などにおいて感光ドラム等の潜像保持体上の静電潜像を可視化する現像方式として、回転するスリーブ内に樹脂磁石により成形されたマグネットローラを配設し、スリーブ表面に担持した磁性現像剤(トナー)を該マグネットローラの磁力特性により潜像保持体に飛翔させる所謂ジャンピング現像によって、潜像保持体表面にトナーを供給し、静電潜像を可視化する現像方法が知られている。
【0003】
従来、上記マグネットローラは、熱可塑性樹脂バインダーに磁性粉末を混合した樹脂磁石用組成物を、周囲に磁場を形成した金型を用いて射出成形又は押出成形することによりローラ状に成形すると共に、所望の磁力特性に着磁させることによって製造されている。
【0004】
この場合、高磁力化が求められるマグネットローラでは、上記磁性粉末として、高配向率化により高磁力化が可能な異方性フェライト磁性粉末が汎用されるが、異方性フェライト磁性粉末を樹脂バインダーに混合分散した組成物を成形してマグネットローラ等の樹脂磁石成形物を得る場合、成形物の内側に強度低下や磁力不均一の原因となる空隙、所謂ボイドが発生する。
【0005】
このボイドは、成形の際に、成形物の外周部が先に冷却固化して樹脂の体積収縮が生じ、このとき成形物内の樹脂はまだ高温で可塑化状態のため、内部が固化する時点で収縮緩和のために空隙が生じるものである。従って、ボイドの発生は、樹脂に体積収縮が生じる限り完全には避けることができないものであるが、このボイドが大径のものであると、成形品の強度低下を招き、また磁力が不均一になる原因にもなる。
【0006】
従来、このようなボイドの発生による強度低下や磁力不均一化を是正する方法として、異方性フェライト磁性粉末に所定量の等方性フェライト磁性粉末を混合した混合磁性粉末を用いることが提案されている(特許文献1:特許第3129423号公報参照)。
【0007】
【特許文献1】
特許第3129423号公報
【0008】
このように等方性フェライトを配合することにより、大径ボイドの発生を効果的に抑制し得、磁力連続特性を向上させ、成形物強度の安定性も向上させることができる。この特性向上は、成形品製造の歩留まり向上にも寄与するものである。
【0009】
しかしながら、近年、電子写真装置や静電記録装置の小型化及び高性能化に伴って、マグネットローラには細径化及び高磁力化が求められており、また細径になるほど大径のボイドは強度低下の起点になりやすく、このため大径ボイドの発生を更に抑制することが望まれ、更なる磁力連続性、高磁力化及び強度安定性が求められる。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、大径ボイドの発生を極めて効果的に低減させることができ、細径、高磁力のマグネットローラを得る場合にも好適に使用される樹脂磁石用組成物、及びこれを成形してなるマグネットローラ等の樹脂磁石成形物を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、樹脂バインダーに異方性フェライト磁性粉末と等方性フェライト磁性粉末とを混合分散して樹脂磁石用組成物を調製する場合に、上記等方性フェライト磁性粉末として、レーザー回析式粒度分布測定法による体積毎平均粒径がD90で3μm以下のものを用いることにより、得られる樹脂磁石用組成物の溶融流動性が向上し、その結果、この樹脂磁石用組成物によって得られるマグネットローラ等の樹脂磁石成形物のボイド発生が抑制され、発生するボイドの大きさを効果的に小さくすることができ、かつ磁性粉末の分散性向上により磁力連続性が大幅に向上して良好な磁力特性が得られることを見出し、本発明を完成したものである。
【0012】
従って、本発明は、異方性フェライト磁性粉末と等方性フェライト磁性粉末とを所定割合で混合した混合磁性粉末を樹脂バインダーに分散混合してなる樹脂磁石組成物において、上記等方性フェライト磁性粉末として、レーザー回折式粒度分布測定法による体積毎平均粒径がD90で3μm以下のものを用いたことを特徴とする樹脂磁石用組成物、及び、該樹脂磁石用組成物を、所望の形状に成形してなることを特徴とする樹脂磁石成形物を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の樹脂磁石用組成物は、上述のように、異方性フェライト磁性粉末と等方性フェライト磁性粉末とを所定割合で混合した混合磁性粉末を樹脂バインダーに分散混合したものである。
【0014】
上記樹脂バインダーとしては、樹脂磁石のバインダーとして通常用いられる樹脂を使用することができ、具体的には、ポリアミド−6,661等のポリアミド樹脂、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリ塩化ビニル等のエチレン系重合体樹脂、エチレン−エチルアクリレート,エチレン−ビニルアセテート等のエチレン共重合体樹脂、ポリフェニレンサルファイド、フッ素樹脂など、樹脂磁石用組成物の樹脂バインダーとして公知の樹脂を用いることができ、用途等に応じてこれらの樹脂の1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0015】
次に、上記異方性フェライト磁性粉末としては、アニーリング等の異方化処理を施したSrフェライトなどを挙げることができ、また上記等方性フェライト磁性粉末としては、異方化処理を施していないBaフェライトなどを挙げることができる。
【0016】
ここで、本発明では、上記等方性フェライト磁性粉末として、レーザー回析式粒度分布測定法による体積毎平均粒径がD90で3μm以下、好ましくは1〜3μmのものを用いるものである。この場合、上記体積毎平均粒径とは、細かい粒子からの積算体積が所定%に達したときの粒径であり、上記D90とは、この積算体積が90%に達した時の粒子の粒径を示すものである。この体積毎平均粒径の測定は、市販のレーザー回析式粒度分布測定機を用いて行うことができ、例えば、マルバーン社製のレーザー回析式粒度分布測定機「マイスターサイザー2000」などを用いて容易に測定することができる。なお、上記異方性フェライト磁性粉末の平均粒径は、特に制限されるものではないが、通常1.5〜3μm(測定法:レーザー回析式粒度分布測定法、D50)、特に2μm程度であることが好ましい。
【0017】
上記異方性フェライト磁性粉末、等方性フェライト磁性粉末には、必要に応じて表面処理を施すことができる。表面処理は、アミノシラン系,ウレイドシラン系などのシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などの表面処理剤を用いて行うことができる。
【0018】
本発明では、上記異方性フェライト磁性粉末と上記等方性フェライト磁性粉末とを混合して用いるものであるが、この場合、異方性フェライト磁性粉と上記等方性フェライト磁性粉末との混合割合は、特に制限されるものではないが、重量比で30/70〜99/1(異方性/等方性、以下同様)、特に60/40〜95/5とすることが好ましい。この場合、等方性フェライトの混合割合が、99/1未満であると、等方性フェライト磁性粉末配合によるボイド発生の低減化効果が十分に得られず、本発明の目的を達成し得ない場合があり、一方30/70を超えて配合した場合には、相対的に異方性フェライト磁性粉末の配合割合が少なくなって、高磁力を得ることが困難になる場合がある。
【0019】
本発明の樹脂磁石用組成物は、上記のように、この異方性フェライト磁性粉末と等方性フェライト磁性粉末との混合磁性粉末を上記樹脂バインダーに分散混合したものである。この混合磁性粉末の配合量は、フェライト磁性粉末の種類や要求される磁力の強さ等に応じて適宜選定されるもので特に制限されるものではないが、通常は組成物の70〜95重量%、特に80〜90重量%とすることが好ましい。混合磁性粉末の配合量が70重量%未満であると、用途によっては磁力が不十分となる場合があり、例えばマグネットローラの場合には必ずしも十分な磁力が得られない場合がある。一方、95重量%を超えると、溶融した組成物の流動性が低下し、磁場配向が抑制されて十分な磁力が得られなかったり、又は磁力の連続性品質が低下する場合がある。
【0020】
本発明の樹脂磁石用組成物には、上記の樹脂バインダー成分および磁性粉に加えて必要に応じて磁性粉分散剤、滑剤、可塑剤等の各種添加剤を適量添加することができる。
【0021】
また場合によっては、本発明の樹脂磁石用組成物に、マイカやウィスカ或いはタルク、炭素繊維、ガラス繊維等の補強効果の大きな充填材を本発明の目的を妨げない範囲で適宜添加することができる。即ち、成形物に要求される磁力が比較的低く、上記磁性粉の充填量が少ない場合には、成形物の剛性が低くなりやすく、このような場合には剛性を補うためにマイカやウィスカ等の充填材を添加して成形品の補強を行うことができる。
【0022】
本発明の樹脂磁石用組成物は、所望の形状に成形されてマグネットローラ等の樹脂磁石成形物とすることができる。この場合、成形法は射出成形でも押出成形でもよい。
【0023】
また、本発明の樹脂磁石用組成物を用いてマグネットローラを得る場合、通常マグネットローラは、シャフトの外周にロール状に上記樹脂磁石用組成物からなる樹脂マグネット層が形成した構成とされるが、高度で複雑な磁力特性が要求される場合などには、本発明樹脂磁石用組成物を用いて複数の樹脂磁石片(ピース)を成形し、これらを金属等からなるシャフトの外周に貼り合わせてローラ本体を形成してもよい。
【0024】
また、成形時には、樹脂磁石用組成物に磁場を印加して組成物中の上記異方性フェライト磁性粉末を配向させることができ、これにより容易に高磁力を得ることができる。更に、磁場を印加しながら成形を行うことにより成形と同時に着磁を施すこともでき、またより複雑な磁力パターンが要求される場合には、成形後に一旦脱磁して公知の着磁機を用いて所望のパターンに着磁すればよい。
【0025】
なお、本発明の樹脂磁石用組成物は、上記マグネットローラの成形材料として好適に使用されるものであるが、その用途はこれに限定されるものではなく、電気モータ用の部品など、種々の樹脂磁石成形物用の成形材料として好適に使用される。
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、樹脂磁石用組成物の溶融流動性が向上し、その結果、この樹脂磁石用組成物によって得られるマグネットローラ等の樹脂磁石成形物のボイド発生が抑制され、発生するボイドの大きさを効果的に小さくすることができ、磁力連続性、及び強度安定性に優れる樹脂磁石形成物をより確実に得ることができ、細径で高性能なマグネットローラを容易に得ることができるものである。
【0027】
【実施例】
以下、実施例,比較例を示し本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
異方性Srフェライト磁性粉末(日本弁柄工業(株)「NF−110」、レーザー回析式粒度分布測定法によるD50の平均粒径2.0μm)80重量部に対して下記表1に示した等方性フェライト磁性粉末を20重量部混合し、この混合磁性粉末をポリアミド6(樹脂バインダー)に88重量%となるように配合し、ヘンシェルミキサー、2軸混練機を用いて順次混合、混練して樹脂磁石用組成物を調製し、これを射出成形して直径10mm、長さ240mmのマグネットローラを得た。
【0028】
【表1】
*1:レーザー回析式粒度分布測定による体積毎平均粒径(マルバーン社製、レーザー回析式粒度分布測定機「マイスターサイザー2000」使用)
【0029】
得られた各樹脂磁石用組成物及びマグネットローラにつき、下記方法で流動性(MFR)、成形性、磁力連続性、曲げ強度、ボイド平均径を評価又は測定した。結果を表2に示す。
【0030】
[流動性(MFR)]
東洋精機社製「メルトインデクサー」を用いて溶融時の流動性を測定した。この場合、比較例1のマグネットローラを100とした指数で示した。
[成形性]
成形機の射出一次圧力により下記基準で評価した。この場合、圧力が高ければ成形性に劣り、圧力が低ければ成形性が良いとした。
評価基準 ◎:非常に良好、○:良好、△:不調、×:可能レベル
[磁力連続性]
各ローラを同一条件で4極に着磁し、4極の内の主極を長手方向に測定し、等距離間隔の磁力の変動量を下記基準で評価した。この場合、変動量が少ないほど良好であり、変動量が大きいほど不良となる。
評価基準 ◎:非常に良好、○:良好、△:不良、×:使用不可
[曲げ強度]
下部支点間距離を160mmにして3点曲げ試験により曲げ強度を測定し、評価した。その評価は、比較例1のマグネットローラを100とした指数で示した。
[ボイド平均径]
得られたマグネットローラを軸方向に沿って切断し、切断面を顕微鏡で観察してボイドの数及び面積を測定し、平均面積を求めた。その評価は、比較例1のマグネットローラを100とした指数で示した。
【0031】
【表2】
【0032】
表2の通り、レーザー回析式粒度分布測定による体積毎平均粒径D90が3以下である等方性フェライト性粉末を用いることにより、流動性,成形性を向上させることができると共に、成形品に発生するボイドの径を小さくすることができ、これにより磁力連続性及び曲げ強度を効果的に向上させることができる。
【0033】
また、上記表1には参考として体積毎平均粒径D10,D50の値も示したが、良好な結果を示した等方性フェライトGP500の粒径は、D10では他のものよりも大きく、D50では他のものとあまり変わらない。このことから、単に粒径の小さな等方性フェライトを用いればよいというものではなく、D90による平均粒径が重要であることが認められる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂バインダーに等方性フェライト磁性粉末と異方性フェライト磁性粉末との混合磁性粉末を混合分散してなる樹脂磁石用組成物及び樹脂磁石成形物に関し、更に詳述すれば、溶融流動性に優れると共に、大径ボイドの発生を極めて効果的に低減させることができ、細径、高磁力のマグネットローラを得る場合にも好適に使用される樹脂磁石用組成物、及び該樹脂磁石用組成物を成形してなるマグネットローラ等の樹脂磁石成形物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来から、複写機、プリンタ等の電子写真装置や静電記録装置などにおいて感光ドラム等の潜像保持体上の静電潜像を可視化する現像方式として、回転するスリーブ内に樹脂磁石により成形されたマグネットローラを配設し、スリーブ表面に担持した磁性現像剤(トナー)を該マグネットローラの磁力特性により潜像保持体に飛翔させる所謂ジャンピング現像によって、潜像保持体表面にトナーを供給し、静電潜像を可視化する現像方法が知られている。
【0003】
従来、上記マグネットローラは、熱可塑性樹脂バインダーに磁性粉末を混合した樹脂磁石用組成物を、周囲に磁場を形成した金型を用いて射出成形又は押出成形することによりローラ状に成形すると共に、所望の磁力特性に着磁させることによって製造されている。
【0004】
この場合、高磁力化が求められるマグネットローラでは、上記磁性粉末として、高配向率化により高磁力化が可能な異方性フェライト磁性粉末が汎用されるが、異方性フェライト磁性粉末を樹脂バインダーに混合分散した組成物を成形してマグネットローラ等の樹脂磁石成形物を得る場合、成形物の内側に強度低下や磁力不均一の原因となる空隙、所謂ボイドが発生する。
【0005】
このボイドは、成形の際に、成形物の外周部が先に冷却固化して樹脂の体積収縮が生じ、このとき成形物内の樹脂はまだ高温で可塑化状態のため、内部が固化する時点で収縮緩和のために空隙が生じるものである。従って、ボイドの発生は、樹脂に体積収縮が生じる限り完全には避けることができないものであるが、このボイドが大径のものであると、成形品の強度低下を招き、また磁力が不均一になる原因にもなる。
【0006】
従来、このようなボイドの発生による強度低下や磁力不均一化を是正する方法として、異方性フェライト磁性粉末に所定量の等方性フェライト磁性粉末を混合した混合磁性粉末を用いることが提案されている(特許文献1:特許第3129423号公報参照)。
【0007】
【特許文献1】
特許第3129423号公報
【0008】
このように等方性フェライトを配合することにより、大径ボイドの発生を効果的に抑制し得、磁力連続特性を向上させ、成形物強度の安定性も向上させることができる。この特性向上は、成形品製造の歩留まり向上にも寄与するものである。
【0009】
しかしながら、近年、電子写真装置や静電記録装置の小型化及び高性能化に伴って、マグネットローラには細径化及び高磁力化が求められており、また細径になるほど大径のボイドは強度低下の起点になりやすく、このため大径ボイドの発生を更に抑制することが望まれ、更なる磁力連続性、高磁力化及び強度安定性が求められる。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、大径ボイドの発生を極めて効果的に低減させることができ、細径、高磁力のマグネットローラを得る場合にも好適に使用される樹脂磁石用組成物、及びこれを成形してなるマグネットローラ等の樹脂磁石成形物を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、樹脂バインダーに異方性フェライト磁性粉末と等方性フェライト磁性粉末とを混合分散して樹脂磁石用組成物を調製する場合に、上記等方性フェライト磁性粉末として、レーザー回析式粒度分布測定法による体積毎平均粒径がD90で3μm以下のものを用いることにより、得られる樹脂磁石用組成物の溶融流動性が向上し、その結果、この樹脂磁石用組成物によって得られるマグネットローラ等の樹脂磁石成形物のボイド発生が抑制され、発生するボイドの大きさを効果的に小さくすることができ、かつ磁性粉末の分散性向上により磁力連続性が大幅に向上して良好な磁力特性が得られることを見出し、本発明を完成したものである。
【0012】
従って、本発明は、異方性フェライト磁性粉末と等方性フェライト磁性粉末とを所定割合で混合した混合磁性粉末を樹脂バインダーに分散混合してなる樹脂磁石組成物において、上記等方性フェライト磁性粉末として、レーザー回折式粒度分布測定法による体積毎平均粒径がD90で3μm以下のものを用いたことを特徴とする樹脂磁石用組成物、及び、該樹脂磁石用組成物を、所望の形状に成形してなることを特徴とする樹脂磁石成形物を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の樹脂磁石用組成物は、上述のように、異方性フェライト磁性粉末と等方性フェライト磁性粉末とを所定割合で混合した混合磁性粉末を樹脂バインダーに分散混合したものである。
【0014】
上記樹脂バインダーとしては、樹脂磁石のバインダーとして通常用いられる樹脂を使用することができ、具体的には、ポリアミド−6,661等のポリアミド樹脂、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリ塩化ビニル等のエチレン系重合体樹脂、エチレン−エチルアクリレート,エチレン−ビニルアセテート等のエチレン共重合体樹脂、ポリフェニレンサルファイド、フッ素樹脂など、樹脂磁石用組成物の樹脂バインダーとして公知の樹脂を用いることができ、用途等に応じてこれらの樹脂の1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0015】
次に、上記異方性フェライト磁性粉末としては、アニーリング等の異方化処理を施したSrフェライトなどを挙げることができ、また上記等方性フェライト磁性粉末としては、異方化処理を施していないBaフェライトなどを挙げることができる。
【0016】
ここで、本発明では、上記等方性フェライト磁性粉末として、レーザー回析式粒度分布測定法による体積毎平均粒径がD90で3μm以下、好ましくは1〜3μmのものを用いるものである。この場合、上記体積毎平均粒径とは、細かい粒子からの積算体積が所定%に達したときの粒径であり、上記D90とは、この積算体積が90%に達した時の粒子の粒径を示すものである。この体積毎平均粒径の測定は、市販のレーザー回析式粒度分布測定機を用いて行うことができ、例えば、マルバーン社製のレーザー回析式粒度分布測定機「マイスターサイザー2000」などを用いて容易に測定することができる。なお、上記異方性フェライト磁性粉末の平均粒径は、特に制限されるものではないが、通常1.5〜3μm(測定法:レーザー回析式粒度分布測定法、D50)、特に2μm程度であることが好ましい。
【0017】
上記異方性フェライト磁性粉末、等方性フェライト磁性粉末には、必要に応じて表面処理を施すことができる。表面処理は、アミノシラン系,ウレイドシラン系などのシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などの表面処理剤を用いて行うことができる。
【0018】
本発明では、上記異方性フェライト磁性粉末と上記等方性フェライト磁性粉末とを混合して用いるものであるが、この場合、異方性フェライト磁性粉と上記等方性フェライト磁性粉末との混合割合は、特に制限されるものではないが、重量比で30/70〜99/1(異方性/等方性、以下同様)、特に60/40〜95/5とすることが好ましい。この場合、等方性フェライトの混合割合が、99/1未満であると、等方性フェライト磁性粉末配合によるボイド発生の低減化効果が十分に得られず、本発明の目的を達成し得ない場合があり、一方30/70を超えて配合した場合には、相対的に異方性フェライト磁性粉末の配合割合が少なくなって、高磁力を得ることが困難になる場合がある。
【0019】
本発明の樹脂磁石用組成物は、上記のように、この異方性フェライト磁性粉末と等方性フェライト磁性粉末との混合磁性粉末を上記樹脂バインダーに分散混合したものである。この混合磁性粉末の配合量は、フェライト磁性粉末の種類や要求される磁力の強さ等に応じて適宜選定されるもので特に制限されるものではないが、通常は組成物の70〜95重量%、特に80〜90重量%とすることが好ましい。混合磁性粉末の配合量が70重量%未満であると、用途によっては磁力が不十分となる場合があり、例えばマグネットローラの場合には必ずしも十分な磁力が得られない場合がある。一方、95重量%を超えると、溶融した組成物の流動性が低下し、磁場配向が抑制されて十分な磁力が得られなかったり、又は磁力の連続性品質が低下する場合がある。
【0020】
本発明の樹脂磁石用組成物には、上記の樹脂バインダー成分および磁性粉に加えて必要に応じて磁性粉分散剤、滑剤、可塑剤等の各種添加剤を適量添加することができる。
【0021】
また場合によっては、本発明の樹脂磁石用組成物に、マイカやウィスカ或いはタルク、炭素繊維、ガラス繊維等の補強効果の大きな充填材を本発明の目的を妨げない範囲で適宜添加することができる。即ち、成形物に要求される磁力が比較的低く、上記磁性粉の充填量が少ない場合には、成形物の剛性が低くなりやすく、このような場合には剛性を補うためにマイカやウィスカ等の充填材を添加して成形品の補強を行うことができる。
【0022】
本発明の樹脂磁石用組成物は、所望の形状に成形されてマグネットローラ等の樹脂磁石成形物とすることができる。この場合、成形法は射出成形でも押出成形でもよい。
【0023】
また、本発明の樹脂磁石用組成物を用いてマグネットローラを得る場合、通常マグネットローラは、シャフトの外周にロール状に上記樹脂磁石用組成物からなる樹脂マグネット層が形成した構成とされるが、高度で複雑な磁力特性が要求される場合などには、本発明樹脂磁石用組成物を用いて複数の樹脂磁石片(ピース)を成形し、これらを金属等からなるシャフトの外周に貼り合わせてローラ本体を形成してもよい。
【0024】
また、成形時には、樹脂磁石用組成物に磁場を印加して組成物中の上記異方性フェライト磁性粉末を配向させることができ、これにより容易に高磁力を得ることができる。更に、磁場を印加しながら成形を行うことにより成形と同時に着磁を施すこともでき、またより複雑な磁力パターンが要求される場合には、成形後に一旦脱磁して公知の着磁機を用いて所望のパターンに着磁すればよい。
【0025】
なお、本発明の樹脂磁石用組成物は、上記マグネットローラの成形材料として好適に使用されるものであるが、その用途はこれに限定されるものではなく、電気モータ用の部品など、種々の樹脂磁石成形物用の成形材料として好適に使用される。
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、樹脂磁石用組成物の溶融流動性が向上し、その結果、この樹脂磁石用組成物によって得られるマグネットローラ等の樹脂磁石成形物のボイド発生が抑制され、発生するボイドの大きさを効果的に小さくすることができ、磁力連続性、及び強度安定性に優れる樹脂磁石形成物をより確実に得ることができ、細径で高性能なマグネットローラを容易に得ることができるものである。
【0027】
【実施例】
以下、実施例,比較例を示し本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
異方性Srフェライト磁性粉末(日本弁柄工業(株)「NF−110」、レーザー回析式粒度分布測定法によるD50の平均粒径2.0μm)80重量部に対して下記表1に示した等方性フェライト磁性粉末を20重量部混合し、この混合磁性粉末をポリアミド6(樹脂バインダー)に88重量%となるように配合し、ヘンシェルミキサー、2軸混練機を用いて順次混合、混練して樹脂磁石用組成物を調製し、これを射出成形して直径10mm、長さ240mmのマグネットローラを得た。
【0028】
【表1】
*1:レーザー回析式粒度分布測定による体積毎平均粒径(マルバーン社製、レーザー回析式粒度分布測定機「マイスターサイザー2000」使用)
【0029】
得られた各樹脂磁石用組成物及びマグネットローラにつき、下記方法で流動性(MFR)、成形性、磁力連続性、曲げ強度、ボイド平均径を評価又は測定した。結果を表2に示す。
【0030】
[流動性(MFR)]
東洋精機社製「メルトインデクサー」を用いて溶融時の流動性を測定した。この場合、比較例1のマグネットローラを100とした指数で示した。
[成形性]
成形機の射出一次圧力により下記基準で評価した。この場合、圧力が高ければ成形性に劣り、圧力が低ければ成形性が良いとした。
評価基準 ◎:非常に良好、○:良好、△:不調、×:可能レベル
[磁力連続性]
各ローラを同一条件で4極に着磁し、4極の内の主極を長手方向に測定し、等距離間隔の磁力の変動量を下記基準で評価した。この場合、変動量が少ないほど良好であり、変動量が大きいほど不良となる。
評価基準 ◎:非常に良好、○:良好、△:不良、×:使用不可
[曲げ強度]
下部支点間距離を160mmにして3点曲げ試験により曲げ強度を測定し、評価した。その評価は、比較例1のマグネットローラを100とした指数で示した。
[ボイド平均径]
得られたマグネットローラを軸方向に沿って切断し、切断面を顕微鏡で観察してボイドの数及び面積を測定し、平均面積を求めた。その評価は、比較例1のマグネットローラを100とした指数で示した。
【0031】
【表2】
【0032】
表2の通り、レーザー回析式粒度分布測定による体積毎平均粒径D90が3以下である等方性フェライト性粉末を用いることにより、流動性,成形性を向上させることができると共に、成形品に発生するボイドの径を小さくすることができ、これにより磁力連続性及び曲げ強度を効果的に向上させることができる。
【0033】
また、上記表1には参考として体積毎平均粒径D10,D50の値も示したが、良好な結果を示した等方性フェライトGP500の粒径は、D10では他のものよりも大きく、D50では他のものとあまり変わらない。このことから、単に粒径の小さな等方性フェライトを用いればよいというものではなく、D90による平均粒径が重要であることが認められる。
Claims (8)
- 異方性フェライト磁性粉末と等方性フェライト磁性粉末とを所定割合で混合した混合磁性粉末を樹脂バインダーに分散混合してなる樹脂磁石組成物において、上記等方性フェライト磁性粉末として、レーザー回折式粒度分布測定法による体積毎平均粒径がD90で3μm以下のものを用いたことを特徴とする樹脂磁石用組成物。
- 上記異方性フェライト磁性粉末と等方性フェライト磁性粉末との混合割合が、重量比で異方性フェライト磁性粉末/等方性フェライト磁性粉末=30/70〜99/1である請求項1記載の樹脂磁石用組成物。
- 上記異方性フェライト粉末が、異方化処理されたSrフェライト粉末である請求項1又は2記載の樹脂磁石用組成物。
- 上記等方性フェライト粉末が、異方化処理されていないBaフェライト粉末である請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂磁石用組成物。
- 上記混合磁性粉末の配合割合が、70〜95重量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂磁石用組成物。
- 上記樹脂バインダーが、ポリアミド樹脂、エチレン系重合体樹脂、エチレン共重合体樹脂、ポリフェニレンサルファイド、フッ素樹脂から選ばれた1種又は2種以上の混合樹脂である請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂磁石用組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂磁石用組成物を、所望の形状に成形してなることを特徴とする樹脂磁石成形物。
- 電子写真装置や静電記録装置に用いられるマグネットローラである請求項7記載の樹脂磁石成形物。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR101385869B1 (ko) | 2007-03-30 | 2014-04-17 | 도다 고교 가부시끼가이샤 | 본드 자석용 페라이트 입자 분말, 본드 자석용 수지 조성물및 이들을 이용한 성형체 |
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2003
- 2003-02-27 JP JP2003051002A patent/JP2004260069A/ja active Pending
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