JP4433110B2 - 合成樹脂磁石用組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂バインダーに磁性粉を混合分散してなり、電子写真装置や静電記録装置に用いられるマグネットローラの成形材料として使用される合成樹脂磁石用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、複写機、プリンタ等の電子写真装置や静電記録装置などにおいて、感光ドラム等の潜像保持体上の静電潜像を可視化する現像ローラとして、回転するスリーブ内に樹脂磁石により成形されたマグネットローラを配設し、スリーブ表面に担持した磁性現像剤(トナー)を該マグネットローラの磁力特性により潜像保持体上に飛翔させる所謂ジャンピング現象によって、潜像保持体表面にトナーを供給し、静電潜像を可視化する現像方法が知られている。
【0003】
従来、上記マグネットローラは、熱可塑性樹脂のバインダーに磁性粉体を混合した合成樹脂磁石用組成物を、周囲に磁場を形成した金型を用いて射出成形又は押出成形することによって、ローラ状に成形すると共に、所望の磁気特性に着磁させることにより、製造されている。
【0004】
また、近年の電子写真装置等の進歩に伴って、マグネットローラに対してもより複雑な磁力パターンが要求される傾向にあり、この要求に応えるため、目的とする磁力パターンに応じた磁極を着磁させた複数のマグネット片を上記合成樹脂磁石用組成物で成形し、これらをシャフトの周囲に貼り合わせることにより所望の磁力パターンを構成することも行なわれている。
【0005】
このような、マグネットローラを得るための樹脂磁石用組成物としては、フェライトや希土類磁石等の磁性粉をポリアミド−6,ポリアミド−12等のポリアミド樹脂やポリプロピレンなどからなる樹脂バインダー中に混合分散したものが従来から用いられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年のOA機器の高度化、高速度化、高精度化などにともなってマグネットローラの高磁力化に対する要求が高まってきており、また他の分野においても樹脂磁石の高磁力化については常に要求されているところである。
【0007】
この要求に応えるため、マグネットローラ等を構成する合成樹脂磁石用組成物の磁性粉充填量を多くする必要が生じているが、磁性粉の充填量を多くすると、樹脂磁石組成物の溶融時の流動性が低下し、成形加工性が著しく低下して得られる成形物に磁力のばらつきや寸法精度の低下といった問題が生じることとなる。このため、磁性粉の充填量はおのずから制限され、高磁力化の要求を満足させるに十分な量の磁性粉を充填することができないのが現状である。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、溶融時の流動性に優れ、磁性粉の充填量を多くしても良好な溶融流動性を維持し得、成形加工性を低下させることなくマグネットローラの高磁力化を達成することができる合成樹脂磁石用組成物を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、熱可塑性樹脂からなる樹脂バインダーに磁性粉を混合分散して合成樹脂磁石用組成物を調製する場合に、上記樹脂バインダー中に下記式(1)で示される基本構造を有する重合脂肪酸系ポリアミドを添加混合することにより、組成物の溶融流動性を効果的に向上させることができ、成形物の高磁力化のために磁性粉の充填量を多くしても良好な溶融流動性を維持し得、溶融時の流動性低下に基づく成形加工性低下などの問題を生じることなく、高磁力のマグネットローラが得られることを見出し、本発明を完成したものである。
【0010】
【化2】
[式中、R 1 は(CH 2 ) n (n=7又はn=8)、Cmはジアミン残鎖(m=2〜20)、Cnはダイマー酸残鎖(n=20〜48)、aは1〜50の整数、bは1〜50の整数、xは1〜50の整数をそれぞれ表す]
【0011】
従って、本発明は、電子写真プロセスにおける現像操作に用いられるマグネットローラを形成するための合成樹脂磁石用組成物であって、樹脂バインダーに磁性粉を分散混合してなる合成樹脂磁石用組成物において、上記樹脂バインダーが、熱可塑性樹脂からなる主材樹脂と上記構造式(1)で示される基本構造を有する重合脂肪酸系ポリアミド(但し、エラストマーを除く)とを含有するものであることを特徴とする合成樹脂磁石用組成物を提供するものである。
【0012】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の合成樹脂磁石用組成物は、上述のように、熱可塑性樹脂からなる主材樹脂に重合脂肪酸系ポリアミドを添加した樹脂バインダーに、磁性粉を混合分散したものである。
【0013】
上記バインダー樹脂の主材となる熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂(ポリアミド−6、ポリアミド12等)、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレンエチルアクリレート樹脂(EEA)、エポキシ樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン,ポリエチレン共重合体等のポリオレフィンや、これらポリオレフィンの構造中に無水マレイン酸基,カルボキシル基,ヒドロキシル基,グリシジル基等の反応性を持つ官能基を導入した変性ポリオレフィン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0014】
上記主材樹脂の配合量は、特に制限されるものではないが、樹脂磁石用組成物全体の1〜20重量%程度、特に4〜16重量%とすることが好ましい。この主材樹脂の配合量が1重量%未満であると、後述する重合脂肪酸系ポリアミドを添加しても十分な溶融流動性を得ることができない場合があり、また得られる樹脂磁石成形物が非常に脆いものとなってしまう場合がある。一方、20重量%を超えると相対的に磁性粉の充填量が少なくなって、高磁力化を達成することが困難となる場合がある。
【0015】
次に、この主材樹脂に添加される上記重合脂肪酸系ポリアミドとしては、下記式(1)に示される基本構造を有するものが用いられる。
【化3】
[式中、R 1 は(CH 2 ) n (n=7又はn=8)、Cmはジアミン残鎖(m=2〜20)、Cnはダイマー酸残鎖(n=20〜48)、aは1〜50の整数、bは1〜50の整数、xは1〜50の整数をそれぞれ表す]
【0016】
ここで、上記式(1)中の各符号は上記の通りであるが、更に説明すれば、R1はHOOC(CH2)nCOOHで表されるアゼライン酸(n=7)又はセバシン酸(n=8)の残鎖であり、この場合アゼライン酸(n=7)を含むブロックとセバシン酸(n=8)を含むブロックが混在していてもよい。また、Cmはm=2〜20のジアミン残鎖であり、具体的にはエチレンジアミン、1,4−ジアミノブタンヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス−(4,4’−アミノシクロヘキシル)メタン、メタキシレンジアミン等が挙げられ、Cnはダイマー酸残鎖n=20〜48のダイマー残鎖であり、具体的にはオレイン酸、リノール酸、エルカ酸等の二量体等が挙げられる。更に、式中のaは1〜50の整数、bは1〜50の整数、xは1〜50の整数である。なお、特に制限されるものではないが、この式(1)で表される重合脂肪酸系ポリアミドの分子量は1000〜65000(数平均分子量)、特に5000〜25000であることが好ましい。
【0017】
この式(1)で表される重合脂肪酸系ポリアミドとして具体的には、富士化成(株)社製「PA−30L」、「PA−30」、「PA−40L」、「PA−40」、「PA−30R」、「PA−30H」、「PA−50R」、「PA−50M」、「PA−60」、「PA−160」、「PA−260」などが挙げられる。なお、重合脂肪酸系ポリアミドは上記式(1)以外のものを用いることも可能であるが、本発明ではエラストマーは除くものとする。
【0018】
この重合脂肪酸系ポリアミドの添加量は、上記主材樹脂の種類、磁性粉の充填量などに応じて適宜選定され、特に制限されるものではないが、通常は樹脂磁石用組成物全体の0.1〜20重量%、特に0.1〜5重量%とすることが好ましい。この添加量が0.1重量%未満であると、溶融流動性の向上効果が十分に得られない場合があり、一方20重量%を超えると相対的に磁性粉の充填量が少なくなるため、十分な磁力特性が得られない場合がある。
【0019】
次に、上記主材樹脂及び重合脂肪酸系ポリアミドを含むバインダー樹脂中に混合分散される磁性粉としては、従来から樹脂磁石に磁性粉として用いられている公知の磁性粉を用いることができ、具体的には、Srフェライト,Baフェライト等のフェライト粉末、アルニコ合金、Sm−Co合金,Nd−Fe−B系合金,Sm−Fe−N系合金,Ce−Co合金等の希土類系合金粉末などを例示することができる。
【0020】
本発明で用いられる磁性粉は、特に制限されるものではないが、得られる樹脂磁石用組成物の溶融流動性、磁性粉の配向性,充填率等の観点から、通常は、平均粒径が0.05〜300μm、特に0.1〜100μm程度のものであることが好ましい。
【0021】
上記磁性粉は、必要に応じて公知の前処理を施して、合成樹脂磁石用組成物中に配合することができる。この場合、特に制限されるものではないが、シランカップリング剤やチタネート系カップリング剤などの公知のカップリング剤を用いてカップリング処理を施すことが好ましく、このようなカップリング処理を施した磁性粉を用いることにより、高充填時の溶融流動性をより効果的に向上させることができる。
【0022】
上記シランカップリング剤としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β―メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等が挙げられ、これらの中では、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が特に好ましく用いられる。
【0023】
上記チタネート系カップリング剤としては、イソプロピルビス(ジオクチルパイロフォスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、ジイソプロピルビス(ジオクチルパイロフォスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられ、中でもイソプロピルビス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネートが特に好ましく用いられる。
【0024】
磁性粉の配合量は、目的とする成形物に要求される磁力の強さに応じて適宜選定され、特に制限されるものではないが、通常は合成樹脂磁石用組成物全体の80〜99重量%とすることができ、本発明においては90重量%を超えて磁性粉を高充填しても、組成物の溶融流動性を良好に維持し得、高磁力の樹脂磁石成形物を成形加工性よく得ることができるものである。また、本発明では上述のように磁性粉を高充填した場合に顕著な効果を奏するものであるが、本発明の合成樹脂磁石用組成物は、磁性粉の配合量が80〜90重量%程度の特に高充填ではない場合でも、磁性粉の均一分散性等の点で有利である。
【0025】
本発明の合成樹脂磁石用組成物は、上記主材樹脂、重合脂肪酸系ポリアミド、及び磁性粉を含有するものであり、特に制限されるものではないが、これらに加えてバインダー樹脂の酸化劣化を防止するために酸化防止剤を適量添加することが好ましい。酸化防止剤としては、特に制限はなく公知のものを用いることができ、具体的には、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、リン系などの酸化防止剤を例示することができる。
【0026】
この酸化防止剤の添加量は、酸化防止剤の種類やバインダー樹脂の種類などに応じて適宜選定され、特に制限されるものではないが、通常は、樹脂磁石用組成物全体の0.1〜20重量%、特に0.1〜3重量%とすることが好ましい。
【0027】
また、本発明の合成樹脂磁石用組成物には、必要に応じて上記磁性粉を分散するための分散剤や潤滑剤、可塑剤等を適量添加することができる。
【0028】
上記分散剤としては、フェノール系、アミン系等の分散剤を用いることができ、上記潤滑材としては、パラフィンワックス、マイクロスタリンワックス等のワックス類やステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸又はこれらの金属塩(ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等)などが好適に用いられ、上記可塑剤としてはモノエステル系又はポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤などが好適に用いられる。
【0029】
更に、本発明の合成樹脂磁石用組成物には、マイカやウィスカ或はタルク,炭素繊維,ガラス繊維等の補強効果の大きな充填材を本発明の目的を妨げない範囲で適宜添加することができる。即ち、成形物に要求される磁力が比較的低く、上記磁性粉の充填量が比較的少ない場合には、成形物の剛性が低くなりやすく、このような場合には剛性を補うためにマイカやウィスカ等の充填材を添加して成形物の補強を行うことができる。この場合、本発明に好適に用いられる充填材としてはマイカ或はウィスカが好ましく、ウィスカとしては、炭化ケイ素,窒化ケイ素等からなる非酸化物系ウィスカ、ZnO,MgO,TiO2,SnO2,Al2O3等からなる金属酸化物系ウィスカ、チタン酸カリウム,ホウ酸アルミニウム,塩基性硫酸マグネシウム等からなる複酸化物系ウィスカなどが挙げられるが、これらの中ではプラスチックとの複合化が容易な点から複酸化物系ウィスカが特に好適に使用される。
【0030】
これらの充填材を用いる際の配合量は、特に制限されるものではないが、通常は合成樹脂磁石用組成物全体の1〜50重量%、特に5〜20重量%程度とされる。なお、本発明の合成樹脂磁石用組成物には、本発明の目的を逸脱しない限り、上記磁性粉分散剤、潤滑剤、可塑剤及び充填材以外の添加材を添加しても差し支えなく、例えば有機錫系安定剤等を必要に応じて適量添加することができる。
【0031】
本発明の合成樹脂磁石用組成物を用いて成形したマグネットローラは、寸法精度に優れ、かつ磁力のばらつきが少ない上、高磁力化を達成することができるものである。即ち、上記本発明の合成樹脂磁石用組成物は、磁性粉を大量充填しても良好な溶融流動性を維持し得るので、高磁力化を達成するために磁性粉を大量充填しても、成形時に金型のキャビティー内で良好に流動し得、金型内での磁性粉の配向不良や充填不良、充填密度のバラツキなどを生じることなく、高磁力で高性能なマグネットローラを成形性よく得ることができるものである。
【0032】
本発明の合成樹脂磁石用組成物でマグネットローラを形成するには、上記本発明の合成樹脂磁石用組成物を混練溶融して成形すればよく、その際の成形法としては、樹脂磁石成形物に応じて射出成形法、押出成形法、圧縮成形法等の適宜な成形法を採用することができる。
【0033】
本発明の合成樹脂磁石用組成物で形成されるマグネットローラは、通常、樹脂磁石からなるローラ本体と、該ローラ本体の両端部から突出するシャフト部とを具備した構成とされるが、この場合、金属等からなるシャフトを金型にセットしてその外周に上記合成樹脂磁石用組成物でローラ本体を成形してもよく、またシャフト部とローラ本体とを上記合成樹脂磁石用組成物で一体に成形してもよい。更に、高度で複雑な磁気特性が要求される場合などには、樹脂磁石用組成物を用いて複数の樹脂磁石片を成形し、これらを金属等からなるシャフトの外周に張り合わせてローラ本体を形成してもよい。この場合、勿論全ての樹脂磁石片を上記本発明の合成樹脂磁石用組成物で成形してもよいが、場合によっては特に高い磁力が要求される樹脂磁石片のみを本発明合成樹脂磁石組成物の成形物としてもよい。また、マグネットローラの着磁は、金型の周囲に磁場を形成して成形と同時に行っても、成形後に公知の着磁機を用いて行ってもよい。
【0034】
【発明の効果】
本発明の合成樹脂磁石用組成物によれば、上記特定の基本構造を有する重合脂肪酸系ポリアミドを添加したことにより、溶融時の流動性を向上させることができ、射出成形,押出成形,圧縮成形等によりマグネットローラを得る際の成形加工性が向上して、磁性粉の高充填による高磁力化にも成形加工性を低下させることなく良好に対応することができるものである。
【0035】
【実施例】
以下、実施例,比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0036】
[実施例1]
原子重量%でNd12Fe78Co4B6の組成を有するNd系希土類磁石合金原料粉末(ゼネラルモータース社製「MQP−B」)を粉砕して平均粒径100μmの粉末とした後、シランカップリング剤(日本ユニカ(株)製「A1100」)により表面処理して、磁性粉を調製した。この磁性粉188gを、ナイロン12(宇部興産(株)製「P 3012 U」)6.8g、酸化防止剤(チバ・スペシャルティケミカルズ(株)製「IRGANOX MD 1024」)3.5g及び重合脂肪酸系ポリアミド(富士化成(株)製「PA−30L」)1.7gと混合し、東洋精機社製「ラボプラストミル50C150型」(容量60cm2)を用い、250℃の加熱下で15分間50rpmの回転数で混練し、合成樹脂磁石用組成物を調製した。このとき、混練中に溶融物のトルク値の変化を測定した。結果を図1に示す。この場合、トルク値が高いほど溶融物の粘度が高く、流動性が悪いことを表す。図1に示されているように、本実施例1では、15分経過してもトルクの上昇、即ち粘度上昇傾向を示していない。
【0037】
次いで、得られた合成樹脂磁石用組成物の溶融流動性(MFR)をメルトインデクサー(東洋精機(株)社製)で測定したところ、72.7g/10min(250℃、5kg)で、良好な溶融流動性を有していた。
【0038】
更に、この合成樹脂磁石用組成物を射出成形し着磁して、直径20mm,高さ6mmの円柱状テストピースを作成し、磁気エネルギー積(BHmax)を測定したところ、54.91kJ/m3であり、高い磁力を有していた。
【0039】
[比較例1]
重合脂肪酸系ポリアミドを用いずに、その分ナイロン12の配合量を増量して8.5gとしたこと以外は、実施例1と同様にして合成樹脂磁石用組成物を調製した。このとき、実施例1と同様にして、混練中に溶融物のトルク値の変化を測定した。結果を図1に示す。また、実施例1と同様にして、MFR値及びBHmaxを測定した。
【0040】
図1に示されているように、本比較例では、溶融時のトルク上昇は見られなかったが、MFR値は9.84g/10min(250℃,5kg)と流動性に劣っており、またBHmaxも51.73kJ/m3と上記実施例1に比べて劣るものであった。
【0041】
[実施例2]
Srフェライト(日本弁柄工業(株)社製「NF110」)50.00kg、Baフェライト(日本弁柄工業(株)社製「DNP−S」)20.55kgをシランカップリング剤(日本ユニカー(株)製「A1160」)0.71kgにより表面処理して、磁性粉を調製した。この磁性粉を、ナイロン6(宇部興産(株)製「P 1010」)12.5kg、酸化防止剤(チバ・スペシャルティケミカルズ(株)製「IRGANOX 245」)0.42kg及び重合脂肪酸系ポリアミド(富士化成(株)製「PA−30L」)0.42kgと混合し、2軸混練機により混練後、ペレタイズしてペレット状の合成樹脂磁石用組成物を得た。
【0042】
得られた合成樹脂磁石用組成物の溶融流動性(MFR)をメルトインデクサー(東洋精機(株)社製)で測定したところ、156.84g/10min(270℃、5kg)で良好な溶融流動性を有していた。また、この合成樹脂磁石用組成物を磁場を印加しながら射出成形して、直径9.6mmの円柱状樹脂磁石成形物を作成し、表面磁力を測定したところ、80.5mТの表面磁力を示した。
【0043】
[比較例2]
重合脂肪酸系ポリアミドを用いずに、その分ナイロン6の配合量を0.42kg増量して12.92kgとしたこと以外は、実施例1と同様にしてペレット状の合成樹脂磁石用組成物を調製した。
【0044】
得られた、合成樹脂磁石用組成物につき、実施例2と同様にして、MFR値を測定したところ、123.99g/10min(270℃,5kg)で、実施例2よりも溶融流動性に劣るものであった。また、得られた合成樹脂磁石用組成物を用いて、実施例2と同様にして円柱状樹脂磁石成形物を作成し、表面磁力を測定したところ、78.9mТで実施例2よりも表面磁力に劣るものであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1及び比較例1において、合成樹脂磁石用組成物を調製する際の混練時のトルク変化を示すグラフである。
Claims (2)
- 酸化防止剤を含有する請求項1記載の合成樹脂磁石用組成物。
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