JP2004228274A - 磁石組成物及びその成型品 - Google Patents
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Abstract
【課題】バインダーと磁性粉からなる磁石成型品において、局部的な表面磁力変動や製品全体の磁気波形変動小さくすることで写真装置の高精度化に好適なマグネットローラを提供する。また、同様に成型品密度のバラツキ改善や局部的な磁力バラツキを改善することで静粛性の高い高精度の回転や安定した発電電圧、高精度の感知性能を持つ電動機や発電機、磁気センサを提供する。
【解決手段】少なくとも一種類以上の球状磁性粉を含む磁性粉とバインダーによる磁石組成物を使用することにより、磁石組成物の成型品表面における磁力変動の大きさが著しく低減され、成型品の局部的な密度のバラツキも低減されるため、各種成型品の磁気波形が大きく改善される。この効果により、マグネットローラでの局部的な磁気変動の低減、全体の磁気波形の平坦化や電動機での静粛性の向上、発電機での発電電圧の安定性向上、センサでの出力精度の高精度化を実現する。
【選択図】 図1
【解決手段】少なくとも一種類以上の球状磁性粉を含む磁性粉とバインダーによる磁石組成物を使用することにより、磁石組成物の成型品表面における磁力変動の大きさが著しく低減され、成型品の局部的な密度のバラツキも低減されるため、各種成型品の磁気波形が大きく改善される。この効果により、マグネットローラでの局部的な磁気変動の低減、全体の磁気波形の平坦化や電動機での静粛性の向上、発電機での発電電圧の安定性向上、センサでの出力精度の高精度化を実現する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、バインダーに球状磁性粉を混合分散してなる磁石組成物と、この組成物を用いて成型した磁石応用製品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、プリンタ、ファクシミリ、複写機といった電子写真や静電記憶装置などにおいては、現像ローラとして、円筒状のスリーブの内部に数極に着磁されたマグネットローラを使用し、これの磁化パターンに従い、磁性トナーをスリーブ表面に吸着させ搬送及び潜像保持体表面への供給を行うことで可視化する現像方法が知られている。
【0003】
上記マグネットローラは、主にポリアミドやEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)といったバインダーにハードフェライト磁性粉を混合した磁石組成物を磁場中で射出成型や押し出し成型によりローラ状に成型後、着磁して使用される。この際、複写機等の仕様により、様々な着磁パターンが必要であり、これを満たすために、一体的な成型方法とは別に数極の棒状成型体を張り合わせたマグネットローラが用いられている。
【0004】
また、コンピュータ周辺機器、プリンターなどの制御用、二輪車や自動車の部品などに、永久磁石型パルスモーターや直流モーター、磁気センサや発電機が使用されているが、これらに使用される永久磁石には、主にポリアミドやPPS(ポリフェニレンサルファイド)といったバインダーにハードフェライト、希土類等の磁性粉を混合した磁石組成物を成型した製品が多く使用されている。
【0005】
【解決しようとする課題】
最近の電子写真装置の高速化、高精度化に伴い、マグネットローラに対しては高磁力化が求められている。この要求に応えるために、従来樹脂組成物に使用される磁性粉末として一般的に採用されるフェライト磁性粉の充填量を多くするといった対策法が考えられるが、充填率の増加に伴い磁石組成物の流動性、フェライト磁性粉の配向性が低下してしまい、これにより引き起こされる製品の磁気特性低下や、高充填化に伴い磁性粉の高分散が困難となる傾向があり、磁性粉の分散不良により引き起こされる磁気特性のバラツキや寸法精度のバラツキが生じやすくなるといった問題が大きくなるといった問題が発生するために、磁性粉の高充填化にも限界がある。
【0006】さらに、近年はマグネットローラの小径化に対する要望が強く、フェライト磁性粉を使用した成型品ではたとえ高充填化しても磁気特性が不足することが予測されるために対応できない場合が出てきている。これに対し、フェライトよりも高磁気特性を実現できる希土類系磁性粉を使用した磁石組成物を多極に磁場配向、または着磁工程により複数の磁極を形成したマグネットローラが提案されている(特許文献1)。また、複数極から構成されるマグネットローラの一極ないしは複数極について、磁極に対応する棒状の磁石組成物成型品を張り合わせることにより製造されるマグネットローラにおいて、その内の一部の磁極に希土類磁性粉を使用した磁石組成物を使用することが提案されている(特許文献2)。
【0007】しかしながら、マグネットローラ用磁石組成物に使用する磁性粉として希土類磁性粉を採用した場合には、磁性粉末自身の磁気特性が非常に高いために、製品表面に非常に近い領域に存在する粒子の一粒一粒の並び方などにより磁粉形状に起因する表面方向からの投影断面積のバラツキが大きくなり、マグネットローラ表面の磁力波形に特に大きく影響を与えると考えられる。例えば、製品のごく表層の領域に磁性粉が存在する場所では表面磁力が高くなるが、粒子が存在しない場所では表面磁力が低くなるといった現象が起こり、結果的に比較的近い距離しか離れていない場所であるにもかかわらず、表面磁力の大きな差が生じてしまう場合が生じる。例えば、MQP−B(マグネクエンチ社製)などのNdFeB系に代表される希土類系磁性粉を磁石組成物に使用した場合では、磁粉粒径が200μm以上、厚さ約10μm程度の形状異方性の非常に大きい粗大粒子が含まれるため、磁力線が多少空間的な広がりがあるとはいえ、このような磁粉が表面近傍において存在し、製品表面と平行な位置関係で磁性粉が存在する場合には、製品の表面磁束がほぼその磁粉の面積に対応する領域においては表面磁束が高くなるが、その領域を少しでもはずれると急に表面磁束が低下するという現象が起こる。また、製品の表面近傍に存在する磁性粉が製品表面と垂直な位置関係で存在する場合には非常に狭い領域だけが極端に磁力が高くなるといった現象を引き起こす。このような現象が組み合わさって、表面磁力波形の乱れが大きくなるといった現象が起こりやすい傾向があった。さらに、磁粉形状が扁平であるために非常に形状異方性が大きく、成型工程で磁粉が物理的に配向してしまうために樹脂組成物の流動性に大きく影響を与え、例えばゲートからの距離の違いなどが要因となって、製品の場所の違いによって磁粉充填率にバラツキが生じるといった現象を生じる場合があり、マグネットローラの長手方向について、単位長当たりの表面磁束の変動が大きいということや、局部的な磁力変動は比較的小さいが磁気波形が連続的に変動するために結果として製品全体では磁力の変動が大きくなるといった現象を引き起こす場合があった。高精度化を特に要求される電子写真装置に使用されるマグネットローラ用磁石組成物においては磁力波形の均一性が強く要求されるが、例えばMQP−Bなどの従来の等方性NdFeBを代表とする希土類磁性粉を含む磁石組成物は上述したような現象が見られるために、製品の表面における大きな変動が品質上の大きな問題とされるようなこの用途には不適切と判断される場合があった。
【0008】同様にモーター等の電動機や発電機においては、静粛性の高い高精度の回転や安定した発電電圧が求められる。このような回転体においては成型品の密度バラツキ等に起因するバランス不良や、局部的な磁気特性バラツキによる発生磁力バラツキや発生トルクのバラツキが大きいと、製品としての回転の安定性に欠けるため、出力が不安定となりやすく、高精度が要求される電動機や発電機においては、希土類磁性粉を含む磁石組成物が不適切な場合があった。
【0009】磁気センサにおいては、磁気検知素子等により磁気センサ表面に形成された磁気パターンを感知することで、位置などに関する情報を正確に認識するが、特にセンサの高精度化の要求が高まるにつれて、磁気信号検知精度の向上とともにセンサの信号精度向上も強く求められる。信号精度は磁気パターンの微細化、高精度化などの磁気パターン形成の制御が重要となるため、所望の領域において所望の出力値、すなわち表面磁力を発揮することが求められる。このため、例えばMQP−Bなどの従来の等方性NdFeBを代表とする希土類磁性粉を含む磁石組成物は、上述した同様の理由により、磁石組成物成型品中の磁性粉の分散不良に起因する局部的な成形密度のバラツキや、磁性粉の並び方などに起因する小単位面積当たりの磁力バラツキ、信号発生境界線付近での磁粉の並び方に起因する境界線付近での着磁性のバラツキなどセンサ出力、つまり成型品表面の磁力のバラツキを引き起こすために、磁気センサ高精度化に対する要求を充分に満足することが出来ない場合があった。
【0010】本発明の目的は、上述した従来の高性能のマグネットローラ、電動機、発電機、センサ等に使用される磁石組成物の有する課題を解決することにある。
【特許文献1】特開平06−120026
【特許文献2】特開2000−243620
【課題を解決するための手段】
本発明は、球状磁性粉とバインダーによる磁石組成物を使用することにより、成型品表面近傍に存在する磁性粉について表面方向から投影した磁粉断面積が比較的均一し、これにより製品表面の磁力が均一になるため、製品表面における局部的な磁力変動が小さくなる。さらに磁性粉自身が球形であることから磁石組成物が流動する際の流動抵抗が小さくなるために成形性が向上し、これによって磁石組成物の組成が均一になりやすく、つまり磁粉充填率の局部的なバラツキが小さくなるため、製品表面の磁力のバラツキが小さくなる。
また、磁粉形状が球状ではない様な他の磁性粉と球状の磁性粉との組み合わせて磁石組成物に使用する場合においても、球状磁性粉自身の分散性、流動性の良さに加えて、磁性粉自身が滑剤としての機能を発揮し、磁石組成物に対して滑剤を添加したような効果を発揮するため、流動性、分散性向上の他に摺動性向上にも効果がある。結果的に各種成型品表面における磁力変動の大きさを著しく低減することが可能となる。
【0011】上述した効果により、マグネットローラでのリップル特性の向上や、製品全体にわたってフラットな磁気波形が得られやすくなることによる電子写真装置での高精度化や安定した磁力波形のバランスや、製品の場所による磁石組成物の密度分布バラツキの低減による電動機の静粛性、発電機での安定した発電電圧、センサでの高精度化が大きく改善できるものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明の趣旨を越えない限り何ら、本実施例に限定されるものではない。なお、この出願において、「球状磁性粉」の粉体種類には、磁性粉全般にわたるものであり、ハードフェライト、交換スプリング磁性粉を含む希土類等の金属磁性粉末、これらの混合金属粉末も含むものであり、必要に応じて、カップリング剤や分散剤等による表面処理を行う。
【0013】球状磁性粉の製造については、公知のガスアトマイズ法やバインダーによる造粒後に脱バインダー、焼結を行う方法等がある。また、使用する磁性粉の粒度には粗大粒子が含まれると表面磁束バラツキを引き起こすため好ましくない。マグロールの検査においては例えば70μm角程度の大きさの測定素子が使用され、この大きさと同等程度の大きさの磁力バラツキであれば問題となることはまれであるが、これに比べて非常に粒度の大きな粗大粒子が含まれていると品質上の問題になる場合があるため好ましくなく、この場合には75μmの篩で篩い分けるとよい。
【0014】使用されるバインダーとしては、一般に成形で使用されるEVA、EEA(エチレン−エチルアクリレート)、ポリアミド、PPSといった熱可塑性樹脂全般やエポキシ、フェノール、不飽和ポリエステルなどの熱硬化性樹脂や各種ブタジエンゴム、塩素化ポリエチレンといったゴムがあり、二種類以上の混合物も含む。
【0015】成型用磁石組成物の製造においては磁性粉とバインダーとを均一に混合分散し、溶融混練や造粒を行うが、流動性向上や分散性向上など各種目的に合わせて滑剤やWAX、可塑剤などの添加剤を添加することがある。
【0016】磁石組成物の成型方法には一般的な射出成型、押し出し成型、圧縮成型、射出圧縮成型などがあげられ、さらにはペレット化工程を省略したことにより磁性粉末とバインダー樹脂などを機械的にブレンドした混合物を直接押し出し、圧縮、射出成型する方法でも良い。マグネットローラ、電動機用ローター及びステーター用磁石、発電機用磁石、センサ用磁石等を成型することが可能な成型方法であればよく、場合によっては、磁場中にて成型を行うことにより、含まれる磁性分を磁場中配向させてもよい。
また、より成形性、分散性が向上するためホットランナーシステムを採用しても良い。
【0017】成型後、所望の磁力と磁気パターンになるように着磁を行い、用途に合わせて接着、組み込み等の工程を経て製品化を行うが、磁場中成型を行った成型品については、磁性粉カス等のゴミが成型品表面に付着したまま後工程に成型品が流れるのを防止する対策として、一旦脱磁を行った後に付着したゴミを取り、製品化される直前に再度着磁を行ってもよい。
【0018】
【実施例】
以下に、本発明の効果を確かめるために試験した、従来技術である磁石組成物(比較例)A〜Dと本発明の実施例である磁石組成物(実施例)E〜Hとの検証比較を行った。
各磁石組成物の作製には、それぞれの原料を公知の混合機で混合した後に、公知の混練押し出し機を使用して混練した後にペレット化を行った。
(比較例A)NdFeB系磁性粉末(マグネクエンチ社製「MQP−13−9」)を75μm以下に粉砕し、これを70体積%、ポリアミド12を主としたバインダー部が30体積%での混練複合ペレットを作製した。
(比較例B)NdFeB系磁性粉末(マグネクエンチ社製「MQP−13−9」)を75μm以下に粉砕し、これを60体積%、EEA(エチレン−エチル−アクリレート)樹脂を主としたバインダー部が40体積%での混練複合ペレットを作製した。
(比較例C)NdFeB系磁性粉末(マグネクエンチ社製「MQP−13−9」)を75μm以下に粉砕し、これを33体積%、ストロンチウムフェライト(SrO・6Fe2O3)を33体積%、ポリアミド12を主としたバインダー部が34体積%での混練複合ペレット。
(比較例D)NdFeB系磁性粉末(マグネクエンチ社製「MQP−13−9」)を75μm以下に粉砕し、これを60体積%、ポリフェニレンサルファイド樹脂を主としたバインダー部が40体積%での混練複合ペレットを作製した。
(実施例E)NdFeB系球状磁性粉末(マグネクエンチ社製アトマイズ粉「MQP−S−9−8」)を75μm以下に篩い分けした磁性粉が70体積%、ポリアミド12を主としたバインダー部が30体積%での混練複合ペレットを作製した。
(実施例F)NdFeB系球状磁性粉末(マグネクエンチ社製アトマイズ粉「MQP−S−9−8」)を75μm以下に篩い分けした磁性粉が60体積%、EEA(エチレン−エチル−アクリレート)樹脂を主としたバインダー部が40体積%での混練複合ペレット。
(実施例G)NdFeB系球状磁性粉末(マグネクエンチ社製アトマイズ粉「MQP−S−9−8」)を75μm以下に篩い分けした磁性粉が33体積%、ストロンチウムフェライト(SrO・6Fe2O3)を33体積%、ポリアミド12を主としたバインダー部が34体積%での混練複合ペレットを作製した。
(実施例H)NdFeB系球状磁性粉末(マグネクエンチ社製アトマイズ粉「MQP−S−9−8」)を75μm以下に篩い分けした磁性粉が60体積%、ポリフェニレンサルファイド樹脂を主としたバインダー部が40体積%での混練複合ペレットを作製した。
【0019】上述の比較例A及び実施例Eのペレットを用いて、公知の押し出し機を使用して、2mm(幅)×3mm(高さ)のサイズで連続的に磁石組成物を押しだした後に、220mmの長さに切断することにより、図1に示された、2mm(幅)×3mm(高さ)×220mm(長さ)の大きさの棒状の押し出し成型品1を作製した。2は切断により形成された断面であり、作製された押し出し成型品1は矢印3の示す方向に着磁を行った。
【0020】また、上述の比較例B〜C及び実施例F〜Gでのペレットを用いて、公知の磁場射出成型機(日本製鋼所製J50MEII)を使用して、図2に示された、2mm(幅)×3mm(高さ)×220mm(幅)の大きさの棒状の射出成型品4を作製した。成型品の一端にはφ1.5mmの大きさのゲート部5が設けられており、溶融した磁石組成物がゲート部5を通して製品部へ流入し、金型内で冷却されながら、つまり長手方向にゲート部5からゲート部の反対側先端に向かって磁石組成物が金型内へ充填されてゆき、最終的に成型工程が完了する。
【0021】この射出成形機は磁場中において射出成型することが可能であり、成型工程にて磁性粉を磁場配向させることが出来る。なお、比較例C及び実施例Gのペレットを用いて、磁場中射出成型を行い、棒状成型品の3mmの高さ方向、つまり矢印6の示す方向に磁場配向を行った。
【0022】作製された棒状成型品4について、3mmの高さ方向、つまり矢印6の示す方向に着磁を行い、長さ方向測定用マグネットアナライザーを使用して、製品全体を長さ方向について磁気波形を測定した。局部での磁気特性バラツキを評価するために1mm当たりの表面磁束密度差の最大値を算出して比較評価を行った。また、成型品全体の磁気特性バラツキを評価するために製品全体における表面磁束密度の最大値と最小値との差を算出して比較評価した。
【0023】比較例B〜D及び実施例F〜Hでの射出成型品については、製品における磁性粉の充填率バラツキの大きさを評価するために、成型品を長さ方向に10mm間隔に切断し、これらの切断片の成型密度を測定した。同じ成型品から切り出した各切断片について測定した成形密度の最大値と最小値との差を算出して比較評価を行った。
【0024】また、上述した比較例D及び実施例Hのペレットを用いて磁場射出成型機(日本製鋼所製J30MEII)を使用して、図3に示された、外径23.5mm、内径19mm、高さ8mmのリング状成型品7を作製した。リング形状の上面部分にφ2mmの大きさのゲート8を設けてある。
【0025】作製されたリング状成型品について、磁気波形の乱れを確認するため、成型品全体を径方向、つまり矢印9の示す方向に着磁を行い、リング用マグネットアナライザーを使用して製品全周にわたる表面磁束密度を連続的に測定した値を記録することで磁力波形を得た。局部での磁気特性バラツキを評価するために、1mm当たりの表面磁束密度差の最大値を算出して比較評価を行った。さらに製品全体の磁気特性バラツキを評価するために、製品全体での表面磁束密度の最大値と最小値との差を算出して比較評価した。
【0026】また、リング成型品については各部位の成形密度のバラツキを確認するため、リング成型品7を概略8等分になるように切断し、各切断片について測定した成形密度の最大値と最小値との差を算出して比較評価を行った。リング成型品7の切断位置は、切断片にゲート部5を含む場合には、そのゲート部5が分割される切断片の概略中央部に位置するように切断を行い、順次成型品を切断し、概略8等分した。
【0027】押し出し成型により作製した棒状成型品について評価した結果を表1にまとめた。
【0028】
【表1】
【0029】射出成型により作製した棒状成型品について評価した結果を表2にまとめた。
【0030】
【表2】
【0031】磁場射出成型により作製した棒状成型品について評価した結果を表3にまとめた。
【0032】
【表3】
【0033】射出成型により作製したリング状成型品について評価した結果を表4にまとめた。
【0034】
【表4】
【0035】以上の試験結果より、磁石組成物に使用する磁性粉として球状磁性粉を採用することで、押し出し成型、射出成型ともに磁気特性のバラツキが局部的にも低減され、また製品全体的にも低減されることが判明した。また、射出成型においては、製品の局部的な成形密度のバラツキについても著しく低減することが判明した。これらの結果は、球状ではないフェライトに球状粉を混ぜた材料でも同様に効果が認められた。
【0036】
【発明の効果】
本発明は、上記のように構成されているので、以下に記載する効果が奏せられる。
【0037】少なくとも一種以上の球状磁性粉を含む磁性粉とバインダーからなる磁石組成物を成型、着磁することで、製品表面の磁力変動が小さくなる上、磁性粉の分散性が高くなり、成形密度のバラツキも低減される。
【0038】さらに、含まれる磁性粉が球状であるために、たとえ成型品表面に磁性分が露出したとしても露出面積が小さくなるため、表面磁力に直接大きな影響を与える可能性を低減する効果もある。
【0039】さらに、球状粉の滑剤効果により磁石組成物自体の摺動性が向上することも付帯的な効果として確認された。
【0040】上述した効果により、マグネットローラでの局部的な表面磁力変動の低減、製品全体の磁気波形の磁力変動低減や電動機の静粛性向上、発電機での安定した発電電圧、センサでの検知高精度化に対して、大きく改善されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は押し出し成型品1の形状図である。
【図2】図2は棒状での射出成型品4の形状図である。
【図3】図3はリング状射出成型品7の形状図である。
【符号の説明】
1・・・・・棒状押し出し成型品
2・・・・・切断面
3・・・・・着磁方向を示す矢印
4・・・・・棒状射出成型品
5・・・・・ゲート部
6・・・・・配向及び着磁方向を示す矢印
7・・・・・リング状射出成型品
8・・・・・ゲート部
9・・・・・着磁方向を示す矢印
【発明の属する技術分野】
本発明は、バインダーに球状磁性粉を混合分散してなる磁石組成物と、この組成物を用いて成型した磁石応用製品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、プリンタ、ファクシミリ、複写機といった電子写真や静電記憶装置などにおいては、現像ローラとして、円筒状のスリーブの内部に数極に着磁されたマグネットローラを使用し、これの磁化パターンに従い、磁性トナーをスリーブ表面に吸着させ搬送及び潜像保持体表面への供給を行うことで可視化する現像方法が知られている。
【0003】
上記マグネットローラは、主にポリアミドやEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)といったバインダーにハードフェライト磁性粉を混合した磁石組成物を磁場中で射出成型や押し出し成型によりローラ状に成型後、着磁して使用される。この際、複写機等の仕様により、様々な着磁パターンが必要であり、これを満たすために、一体的な成型方法とは別に数極の棒状成型体を張り合わせたマグネットローラが用いられている。
【0004】
また、コンピュータ周辺機器、プリンターなどの制御用、二輪車や自動車の部品などに、永久磁石型パルスモーターや直流モーター、磁気センサや発電機が使用されているが、これらに使用される永久磁石には、主にポリアミドやPPS(ポリフェニレンサルファイド)といったバインダーにハードフェライト、希土類等の磁性粉を混合した磁石組成物を成型した製品が多く使用されている。
【0005】
【解決しようとする課題】
最近の電子写真装置の高速化、高精度化に伴い、マグネットローラに対しては高磁力化が求められている。この要求に応えるために、従来樹脂組成物に使用される磁性粉末として一般的に採用されるフェライト磁性粉の充填量を多くするといった対策法が考えられるが、充填率の増加に伴い磁石組成物の流動性、フェライト磁性粉の配向性が低下してしまい、これにより引き起こされる製品の磁気特性低下や、高充填化に伴い磁性粉の高分散が困難となる傾向があり、磁性粉の分散不良により引き起こされる磁気特性のバラツキや寸法精度のバラツキが生じやすくなるといった問題が大きくなるといった問題が発生するために、磁性粉の高充填化にも限界がある。
【0006】さらに、近年はマグネットローラの小径化に対する要望が強く、フェライト磁性粉を使用した成型品ではたとえ高充填化しても磁気特性が不足することが予測されるために対応できない場合が出てきている。これに対し、フェライトよりも高磁気特性を実現できる希土類系磁性粉を使用した磁石組成物を多極に磁場配向、または着磁工程により複数の磁極を形成したマグネットローラが提案されている(特許文献1)。また、複数極から構成されるマグネットローラの一極ないしは複数極について、磁極に対応する棒状の磁石組成物成型品を張り合わせることにより製造されるマグネットローラにおいて、その内の一部の磁極に希土類磁性粉を使用した磁石組成物を使用することが提案されている(特許文献2)。
【0007】しかしながら、マグネットローラ用磁石組成物に使用する磁性粉として希土類磁性粉を採用した場合には、磁性粉末自身の磁気特性が非常に高いために、製品表面に非常に近い領域に存在する粒子の一粒一粒の並び方などにより磁粉形状に起因する表面方向からの投影断面積のバラツキが大きくなり、マグネットローラ表面の磁力波形に特に大きく影響を与えると考えられる。例えば、製品のごく表層の領域に磁性粉が存在する場所では表面磁力が高くなるが、粒子が存在しない場所では表面磁力が低くなるといった現象が起こり、結果的に比較的近い距離しか離れていない場所であるにもかかわらず、表面磁力の大きな差が生じてしまう場合が生じる。例えば、MQP−B(マグネクエンチ社製)などのNdFeB系に代表される希土類系磁性粉を磁石組成物に使用した場合では、磁粉粒径が200μm以上、厚さ約10μm程度の形状異方性の非常に大きい粗大粒子が含まれるため、磁力線が多少空間的な広がりがあるとはいえ、このような磁粉が表面近傍において存在し、製品表面と平行な位置関係で磁性粉が存在する場合には、製品の表面磁束がほぼその磁粉の面積に対応する領域においては表面磁束が高くなるが、その領域を少しでもはずれると急に表面磁束が低下するという現象が起こる。また、製品の表面近傍に存在する磁性粉が製品表面と垂直な位置関係で存在する場合には非常に狭い領域だけが極端に磁力が高くなるといった現象を引き起こす。このような現象が組み合わさって、表面磁力波形の乱れが大きくなるといった現象が起こりやすい傾向があった。さらに、磁粉形状が扁平であるために非常に形状異方性が大きく、成型工程で磁粉が物理的に配向してしまうために樹脂組成物の流動性に大きく影響を与え、例えばゲートからの距離の違いなどが要因となって、製品の場所の違いによって磁粉充填率にバラツキが生じるといった現象を生じる場合があり、マグネットローラの長手方向について、単位長当たりの表面磁束の変動が大きいということや、局部的な磁力変動は比較的小さいが磁気波形が連続的に変動するために結果として製品全体では磁力の変動が大きくなるといった現象を引き起こす場合があった。高精度化を特に要求される電子写真装置に使用されるマグネットローラ用磁石組成物においては磁力波形の均一性が強く要求されるが、例えばMQP−Bなどの従来の等方性NdFeBを代表とする希土類磁性粉を含む磁石組成物は上述したような現象が見られるために、製品の表面における大きな変動が品質上の大きな問題とされるようなこの用途には不適切と判断される場合があった。
【0008】同様にモーター等の電動機や発電機においては、静粛性の高い高精度の回転や安定した発電電圧が求められる。このような回転体においては成型品の密度バラツキ等に起因するバランス不良や、局部的な磁気特性バラツキによる発生磁力バラツキや発生トルクのバラツキが大きいと、製品としての回転の安定性に欠けるため、出力が不安定となりやすく、高精度が要求される電動機や発電機においては、希土類磁性粉を含む磁石組成物が不適切な場合があった。
【0009】磁気センサにおいては、磁気検知素子等により磁気センサ表面に形成された磁気パターンを感知することで、位置などに関する情報を正確に認識するが、特にセンサの高精度化の要求が高まるにつれて、磁気信号検知精度の向上とともにセンサの信号精度向上も強く求められる。信号精度は磁気パターンの微細化、高精度化などの磁気パターン形成の制御が重要となるため、所望の領域において所望の出力値、すなわち表面磁力を発揮することが求められる。このため、例えばMQP−Bなどの従来の等方性NdFeBを代表とする希土類磁性粉を含む磁石組成物は、上述した同様の理由により、磁石組成物成型品中の磁性粉の分散不良に起因する局部的な成形密度のバラツキや、磁性粉の並び方などに起因する小単位面積当たりの磁力バラツキ、信号発生境界線付近での磁粉の並び方に起因する境界線付近での着磁性のバラツキなどセンサ出力、つまり成型品表面の磁力のバラツキを引き起こすために、磁気センサ高精度化に対する要求を充分に満足することが出来ない場合があった。
【0010】本発明の目的は、上述した従来の高性能のマグネットローラ、電動機、発電機、センサ等に使用される磁石組成物の有する課題を解決することにある。
【特許文献1】特開平06−120026
【特許文献2】特開2000−243620
【課題を解決するための手段】
本発明は、球状磁性粉とバインダーによる磁石組成物を使用することにより、成型品表面近傍に存在する磁性粉について表面方向から投影した磁粉断面積が比較的均一し、これにより製品表面の磁力が均一になるため、製品表面における局部的な磁力変動が小さくなる。さらに磁性粉自身が球形であることから磁石組成物が流動する際の流動抵抗が小さくなるために成形性が向上し、これによって磁石組成物の組成が均一になりやすく、つまり磁粉充填率の局部的なバラツキが小さくなるため、製品表面の磁力のバラツキが小さくなる。
また、磁粉形状が球状ではない様な他の磁性粉と球状の磁性粉との組み合わせて磁石組成物に使用する場合においても、球状磁性粉自身の分散性、流動性の良さに加えて、磁性粉自身が滑剤としての機能を発揮し、磁石組成物に対して滑剤を添加したような効果を発揮するため、流動性、分散性向上の他に摺動性向上にも効果がある。結果的に各種成型品表面における磁力変動の大きさを著しく低減することが可能となる。
【0011】上述した効果により、マグネットローラでのリップル特性の向上や、製品全体にわたってフラットな磁気波形が得られやすくなることによる電子写真装置での高精度化や安定した磁力波形のバランスや、製品の場所による磁石組成物の密度分布バラツキの低減による電動機の静粛性、発電機での安定した発電電圧、センサでの高精度化が大きく改善できるものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明の趣旨を越えない限り何ら、本実施例に限定されるものではない。なお、この出願において、「球状磁性粉」の粉体種類には、磁性粉全般にわたるものであり、ハードフェライト、交換スプリング磁性粉を含む希土類等の金属磁性粉末、これらの混合金属粉末も含むものであり、必要に応じて、カップリング剤や分散剤等による表面処理を行う。
【0013】球状磁性粉の製造については、公知のガスアトマイズ法やバインダーによる造粒後に脱バインダー、焼結を行う方法等がある。また、使用する磁性粉の粒度には粗大粒子が含まれると表面磁束バラツキを引き起こすため好ましくない。マグロールの検査においては例えば70μm角程度の大きさの測定素子が使用され、この大きさと同等程度の大きさの磁力バラツキであれば問題となることはまれであるが、これに比べて非常に粒度の大きな粗大粒子が含まれていると品質上の問題になる場合があるため好ましくなく、この場合には75μmの篩で篩い分けるとよい。
【0014】使用されるバインダーとしては、一般に成形で使用されるEVA、EEA(エチレン−エチルアクリレート)、ポリアミド、PPSといった熱可塑性樹脂全般やエポキシ、フェノール、不飽和ポリエステルなどの熱硬化性樹脂や各種ブタジエンゴム、塩素化ポリエチレンといったゴムがあり、二種類以上の混合物も含む。
【0015】成型用磁石組成物の製造においては磁性粉とバインダーとを均一に混合分散し、溶融混練や造粒を行うが、流動性向上や分散性向上など各種目的に合わせて滑剤やWAX、可塑剤などの添加剤を添加することがある。
【0016】磁石組成物の成型方法には一般的な射出成型、押し出し成型、圧縮成型、射出圧縮成型などがあげられ、さらにはペレット化工程を省略したことにより磁性粉末とバインダー樹脂などを機械的にブレンドした混合物を直接押し出し、圧縮、射出成型する方法でも良い。マグネットローラ、電動機用ローター及びステーター用磁石、発電機用磁石、センサ用磁石等を成型することが可能な成型方法であればよく、場合によっては、磁場中にて成型を行うことにより、含まれる磁性分を磁場中配向させてもよい。
また、より成形性、分散性が向上するためホットランナーシステムを採用しても良い。
【0017】成型後、所望の磁力と磁気パターンになるように着磁を行い、用途に合わせて接着、組み込み等の工程を経て製品化を行うが、磁場中成型を行った成型品については、磁性粉カス等のゴミが成型品表面に付着したまま後工程に成型品が流れるのを防止する対策として、一旦脱磁を行った後に付着したゴミを取り、製品化される直前に再度着磁を行ってもよい。
【0018】
【実施例】
以下に、本発明の効果を確かめるために試験した、従来技術である磁石組成物(比較例)A〜Dと本発明の実施例である磁石組成物(実施例)E〜Hとの検証比較を行った。
各磁石組成物の作製には、それぞれの原料を公知の混合機で混合した後に、公知の混練押し出し機を使用して混練した後にペレット化を行った。
(比較例A)NdFeB系磁性粉末(マグネクエンチ社製「MQP−13−9」)を75μm以下に粉砕し、これを70体積%、ポリアミド12を主としたバインダー部が30体積%での混練複合ペレットを作製した。
(比較例B)NdFeB系磁性粉末(マグネクエンチ社製「MQP−13−9」)を75μm以下に粉砕し、これを60体積%、EEA(エチレン−エチル−アクリレート)樹脂を主としたバインダー部が40体積%での混練複合ペレットを作製した。
(比較例C)NdFeB系磁性粉末(マグネクエンチ社製「MQP−13−9」)を75μm以下に粉砕し、これを33体積%、ストロンチウムフェライト(SrO・6Fe2O3)を33体積%、ポリアミド12を主としたバインダー部が34体積%での混練複合ペレット。
(比較例D)NdFeB系磁性粉末(マグネクエンチ社製「MQP−13−9」)を75μm以下に粉砕し、これを60体積%、ポリフェニレンサルファイド樹脂を主としたバインダー部が40体積%での混練複合ペレットを作製した。
(実施例E)NdFeB系球状磁性粉末(マグネクエンチ社製アトマイズ粉「MQP−S−9−8」)を75μm以下に篩い分けした磁性粉が70体積%、ポリアミド12を主としたバインダー部が30体積%での混練複合ペレットを作製した。
(実施例F)NdFeB系球状磁性粉末(マグネクエンチ社製アトマイズ粉「MQP−S−9−8」)を75μm以下に篩い分けした磁性粉が60体積%、EEA(エチレン−エチル−アクリレート)樹脂を主としたバインダー部が40体積%での混練複合ペレット。
(実施例G)NdFeB系球状磁性粉末(マグネクエンチ社製アトマイズ粉「MQP−S−9−8」)を75μm以下に篩い分けした磁性粉が33体積%、ストロンチウムフェライト(SrO・6Fe2O3)を33体積%、ポリアミド12を主としたバインダー部が34体積%での混練複合ペレットを作製した。
(実施例H)NdFeB系球状磁性粉末(マグネクエンチ社製アトマイズ粉「MQP−S−9−8」)を75μm以下に篩い分けした磁性粉が60体積%、ポリフェニレンサルファイド樹脂を主としたバインダー部が40体積%での混練複合ペレットを作製した。
【0019】上述の比較例A及び実施例Eのペレットを用いて、公知の押し出し機を使用して、2mm(幅)×3mm(高さ)のサイズで連続的に磁石組成物を押しだした後に、220mmの長さに切断することにより、図1に示された、2mm(幅)×3mm(高さ)×220mm(長さ)の大きさの棒状の押し出し成型品1を作製した。2は切断により形成された断面であり、作製された押し出し成型品1は矢印3の示す方向に着磁を行った。
【0020】また、上述の比較例B〜C及び実施例F〜Gでのペレットを用いて、公知の磁場射出成型機(日本製鋼所製J50MEII)を使用して、図2に示された、2mm(幅)×3mm(高さ)×220mm(幅)の大きさの棒状の射出成型品4を作製した。成型品の一端にはφ1.5mmの大きさのゲート部5が設けられており、溶融した磁石組成物がゲート部5を通して製品部へ流入し、金型内で冷却されながら、つまり長手方向にゲート部5からゲート部の反対側先端に向かって磁石組成物が金型内へ充填されてゆき、最終的に成型工程が完了する。
【0021】この射出成形機は磁場中において射出成型することが可能であり、成型工程にて磁性粉を磁場配向させることが出来る。なお、比較例C及び実施例Gのペレットを用いて、磁場中射出成型を行い、棒状成型品の3mmの高さ方向、つまり矢印6の示す方向に磁場配向を行った。
【0022】作製された棒状成型品4について、3mmの高さ方向、つまり矢印6の示す方向に着磁を行い、長さ方向測定用マグネットアナライザーを使用して、製品全体を長さ方向について磁気波形を測定した。局部での磁気特性バラツキを評価するために1mm当たりの表面磁束密度差の最大値を算出して比較評価を行った。また、成型品全体の磁気特性バラツキを評価するために製品全体における表面磁束密度の最大値と最小値との差を算出して比較評価した。
【0023】比較例B〜D及び実施例F〜Hでの射出成型品については、製品における磁性粉の充填率バラツキの大きさを評価するために、成型品を長さ方向に10mm間隔に切断し、これらの切断片の成型密度を測定した。同じ成型品から切り出した各切断片について測定した成形密度の最大値と最小値との差を算出して比較評価を行った。
【0024】また、上述した比較例D及び実施例Hのペレットを用いて磁場射出成型機(日本製鋼所製J30MEII)を使用して、図3に示された、外径23.5mm、内径19mm、高さ8mmのリング状成型品7を作製した。リング形状の上面部分にφ2mmの大きさのゲート8を設けてある。
【0025】作製されたリング状成型品について、磁気波形の乱れを確認するため、成型品全体を径方向、つまり矢印9の示す方向に着磁を行い、リング用マグネットアナライザーを使用して製品全周にわたる表面磁束密度を連続的に測定した値を記録することで磁力波形を得た。局部での磁気特性バラツキを評価するために、1mm当たりの表面磁束密度差の最大値を算出して比較評価を行った。さらに製品全体の磁気特性バラツキを評価するために、製品全体での表面磁束密度の最大値と最小値との差を算出して比較評価した。
【0026】また、リング成型品については各部位の成形密度のバラツキを確認するため、リング成型品7を概略8等分になるように切断し、各切断片について測定した成形密度の最大値と最小値との差を算出して比較評価を行った。リング成型品7の切断位置は、切断片にゲート部5を含む場合には、そのゲート部5が分割される切断片の概略中央部に位置するように切断を行い、順次成型品を切断し、概略8等分した。
【0027】押し出し成型により作製した棒状成型品について評価した結果を表1にまとめた。
【0028】
【表1】
【0029】射出成型により作製した棒状成型品について評価した結果を表2にまとめた。
【0030】
【表2】
【0031】磁場射出成型により作製した棒状成型品について評価した結果を表3にまとめた。
【0032】
【表3】
【0033】射出成型により作製したリング状成型品について評価した結果を表4にまとめた。
【0034】
【表4】
【0035】以上の試験結果より、磁石組成物に使用する磁性粉として球状磁性粉を採用することで、押し出し成型、射出成型ともに磁気特性のバラツキが局部的にも低減され、また製品全体的にも低減されることが判明した。また、射出成型においては、製品の局部的な成形密度のバラツキについても著しく低減することが判明した。これらの結果は、球状ではないフェライトに球状粉を混ぜた材料でも同様に効果が認められた。
【0036】
【発明の効果】
本発明は、上記のように構成されているので、以下に記載する効果が奏せられる。
【0037】少なくとも一種以上の球状磁性粉を含む磁性粉とバインダーからなる磁石組成物を成型、着磁することで、製品表面の磁力変動が小さくなる上、磁性粉の分散性が高くなり、成形密度のバラツキも低減される。
【0038】さらに、含まれる磁性粉が球状であるために、たとえ成型品表面に磁性分が露出したとしても露出面積が小さくなるため、表面磁力に直接大きな影響を与える可能性を低減する効果もある。
【0039】さらに、球状粉の滑剤効果により磁石組成物自体の摺動性が向上することも付帯的な効果として確認された。
【0040】上述した効果により、マグネットローラでの局部的な表面磁力変動の低減、製品全体の磁気波形の磁力変動低減や電動機の静粛性向上、発電機での安定した発電電圧、センサでの検知高精度化に対して、大きく改善されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は押し出し成型品1の形状図である。
【図2】図2は棒状での射出成型品4の形状図である。
【図3】図3はリング状射出成型品7の形状図である。
【符号の説明】
1・・・・・棒状押し出し成型品
2・・・・・切断面
3・・・・・着磁方向を示す矢印
4・・・・・棒状射出成型品
5・・・・・ゲート部
6・・・・・配向及び着磁方向を示す矢印
7・・・・・リング状射出成型品
8・・・・・ゲート部
9・・・・・着磁方向を示す矢印
Claims (6)
- 使用する磁性粉のうち、少なくとも一種類が球状であることを特徴とする磁石組成物。
- 請求項1に記載の磁石組成物を成型してなることを特徴とするマグネットローラ。
- 複数のマグネットピースを張り合わせるマグネットローラにおいて、少なくとも一つ以上のピースに請求項1に記載の磁石組成物を成型してなることを特徴とするマグネットローラ。
- 請求項1に記載の磁石組成物の成型品を使用することを特徴とする磁気センサ。
- 請求項1に記載の磁石組成物の成型品を使用することを特徴とする回転機。
- 請求項1に記載の磁石組成物の成型品を使用することを特徴とする発電機。
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JP2003013067A JP2004228274A (ja) | 2003-01-22 | 2003-01-22 | 磁石組成物及びその成型品 |
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JP2006100783A (ja) * | 2004-09-01 | 2006-04-13 | Kaneka Corp | 樹脂磁石材料 |
-
2003
- 2003-01-22 JP JP2003013067A patent/JP2004228274A/ja active Pending
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