JP2004256406A - 含フッ素アルキルエチルハロゲン化物及び含フッ素アルカンの製造方法 - Google Patents
含フッ素アルキルエチルハロゲン化物及び含フッ素アルカンの製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】含フッ素アルキルハロゲン化物、含フッ素アルカン及び含フッ素エステルを効率良く製造できる方法を提供する。
【解決手段】一般式(I):Rf 1−CH=CH2 (I)(式中、Rf 1は、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基等を示す)
で表される含フッ素アルケンと、一般式(II):Y−Rf 2−X1 (II)
(式中、Rf 2は、炭素数1〜20のパーフルオロアルキレン基等を示し、YはH又はFを示し、X1はCl、Br又はIを示す)で表される含フッ素アルキルハロゲン化物と、水素供与剤とを、触媒の存在下又は非存在下に反応させることを特徴とする、一般式(III):Rf 1−CH2CH2−X1 (III)
(式中、Rf 1及びX1は前記に定義される通り)で表される含フッ素アルキルエチルハロゲン化物と、一般式(IV):Y−Rf 2−H (IV)(式中、Rf 2及びYは前記に定義される通り)で表される含フッ素アルカンを同時に製造する方法等に関する。
【選択図】なし
【解決手段】一般式(I):Rf 1−CH=CH2 (I)(式中、Rf 1は、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基等を示す)
で表される含フッ素アルケンと、一般式(II):Y−Rf 2−X1 (II)
(式中、Rf 2は、炭素数1〜20のパーフルオロアルキレン基等を示し、YはH又はFを示し、X1はCl、Br又はIを示す)で表される含フッ素アルキルハロゲン化物と、水素供与剤とを、触媒の存在下又は非存在下に反応させることを特徴とする、一般式(III):Rf 1−CH2CH2−X1 (III)
(式中、Rf 1及びX1は前記に定義される通り)で表される含フッ素アルキルエチルハロゲン化物と、一般式(IV):Y−Rf 2−H (IV)(式中、Rf 2及びYは前記に定義される通り)で表される含フッ素アルカンを同時に製造する方法等に関する。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、含フッ素アルキルエチルハロゲン化物の製造方法、及び含フッ素アルカンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般式(VI):
Rf 1−CH2CH2OCOCR=CH2 (VI)
(式中、Rf 1は、炭素数が1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキル基又は炭素数が1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のポリフルオロアルキル基を示し、RはH又はCH3を示す)
で表される含フッ素エステルは、撥水撥油剤の原料等として有用な化合物であり、その製造方法としては、一般式 (IIIa):
Rf 1−CH2CH2I (IIIa)
(式中、Rf 1は、前記に同じ)
で表される含フッ素アルキルアイオダイドと、一般式 (V):
CH2=CRCOOM (V)
(式中、Mはアルカリ金属を示し、Rは前記に同じ)
で表されるカルボン酸塩とを反応させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、この製造方法では、副生成物として一般式 (I):
Rf 1−CH=CH2 (I)
(式中、Rf 1は前記に同じ)
で表される含フッ素アルケンが多量に生成するという問題点がある。
【0004】
副生する含フッ素アルケン(I)については、一般式(A):
Rf 1CH2CH2SiR’nX3−n (A)
(式中、nは0、1又は2、R’はアルキル基又はアリール基を示し、Rf 1は前記に同じ)で表されるオルガノフルオロシランの原料として利用できることが知られているが(例えば、特許文献2参照)、この用途だけでは需要量が充分ではなく、余剰の含フッ素アルケンを有効に利用することが望まれる。
【0005】
例えば、含フッ素アルケン(I)を含フッ素アルキルアイオダイド(IIIa)に変換できれば、上記した含フッ素エステル(VI)の原料としてリサイクルすることが可能となり、生産効率を向上させることができるものと期待される。
【0006】
含フッ素アルケン(I)を含フッ素アルキルアイオダイド(IIIa)に変換する方法としては、例えば、含フッ素アルケン(I)にヨウ化水素を付加させる方法が考えられる。しかしながら、この方法では、ヨウ化水素を一旦製造し、これを単離精製する必要があるため、製造工程が煩雑となる。しかも、ヨウ化水素は、毒性、腐食性が大きく、酸素や光の存在下で容易に分解するという性質を有するため取り扱いが困難である。
【0007】
また、含フッ素オレフィンに塩化水素 、臭化水素等のハロゲン化水素を付加させる方法としては、触媒としてAlBr3を用いる方法 (例えば、非特許文献1参照)、触媒としてCaSO4/Cを用いる方法 (例えば、非特許文献2参照)などが報告されているが、いずれの方法も固体触媒を分離する必要があるため、製造効率が劣るものである。
【0008】
【特許文献1】
特公昭39−18112号公報
【0009】
【特許文献2】
特開昭50−126621号公報
【0010】
【非特許文献1】
ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサエティー(J. Am. Chem. Soc.), 72, 3369 (1950)
【0011】
【非特許文献2】
ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサエティー(J. Am. Chem. Soc.), 75, 5618 (1953)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した如き従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、含フッ素アルケンを出発物質として、含フッ素アルキルエチルハロゲン化物及び含フッ素アルカンを効率良く製造できる方法を提供することである。本発明の他の目的は、該方法により得られる含フッ素アルキルエチルハロゲン化物を利用して含フッ素エステルを効率よく製造できる方法、さらに、該方法により得られる含フッ素アルカンの球晶微少化剤等としての用途を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、含フッ素アルケンを、反応系においてハロゲン化水素を発生し得る試薬の組合せと反応させることにより、ハロゲン化水素ガスを一旦製造し単離精製するという煩雑な工程を経ることなく、一工程で含フッ素アルキルエチルハロゲン化物を製造できることを見出した。しかも、この製造方法では、ハロゲン源として含フッ素アルキルハロゲン化物を用いているため、含フッ素アルキルエチルハロゲン化物と共に含フッ素アルカンをも同時に製造することが可能であり、非常に効率のよい方法であることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は、下記の含フッ素アルキルエチルハロゲン化物の製造方法等を提供するものである。
項1 一般式(I):
Rf 1−CH=CH2 (I)
(式中、Rf 1は、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキル基又は炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のポリフルオロアルキル基を示す)
で表される含フッ素アルケンと、一般式(II):
Y−Rf 2−X1 (II)
(式中、Rf 2は、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキレン基又は炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のポリフルオロアルキレン基を示し、YはH又はFを示し、X1はCl、Br又はIを示す)
で表される含フッ素アルキルハロゲン化物と、水素供与剤とを、触媒の存在下又は非存在下に反応させることを特徴とする、一般式(III):
Rf 1−CH2CH2−X1 (III)
(式中、Rf 1及びX1は前記に定義される通り)
で表される含フッ素アルキルエチルハロゲン化物と、一般式(IV):
Y−Rf 2−H (IV)
(式中、Rf 2及びYは前記に定義される通り)
で表される含フッ素アルカンを同時に製造する方法。
項2 一般式(I):
Rf 1−CH=CH2 (I)
(式中、Rf 1は、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキル基又は炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のポリフルオロアルキル基を示す)
で表される含フッ素アルケンと、一般式(II’):
X1−Rf 2−X2 (II’)
(式中、Rf 2は、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキレン基又は炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のポリフルオロアルキレン基を示し、X1及びX2は、同一又は異なってCl、Br又はIを示す)
で表される含フッ素アルキルハロゲン化物と、水素供与剤とを、触媒の存在下又は非存在下に反応させることを特徴とする、一般式(III):
Rf 1−CH2CH2−X1 (III)
(式中、Rf 1及びX1は前記に定義される通り)
で表される含フッ素アルキルエチルハロゲン化物、及び/又は一般式(III’):
Rf 1−CH2CH2−X2 (III’)
(式中、Rf 1及びX2は前記に定義される通り)
で表される含フッ素アルキルエチルハロゲン化物と、一般式(IV’):
H−Rf 2−H (IV’)
(式中、Rf 2は前記に定義される通り)
で表される含フッ素アルカンを同時に製造する方法。
項3 水素供与剤が、水素、水素化芳香族化合物、及びカルボン酸化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種である項1又は2に記載の方法。
項4 水素化芳香族化合物が、部分水素化された多環構造を持つ芳香族化合物である項3に記載の方法。
項5 カルボン酸化合物が、炭素数1〜6の脂肪族一塩基酸、炭素数1〜6の脂肪族二塩基酸、芳香族一塩基酸及び芳香族二塩基酸からなる群より選ばれた少なくとも1種である項3に記載の方法。
項6 触媒が、活性炭、金属硫酸塩、金属、ルイス酸及び芳香族化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種である項1〜5のいずれかに記載の方法。
項7 金属硫酸塩が、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム及び硫酸アルミニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、金属が、銅、白金、亜鉛、パラジウム、スズ、チタン、ジルコニウム、ガリウム、コバルト、ニッケル及び鉄からなる群より選ばれた少なくとも1種であり、ルイス酸が、ハロゲン化ホウ素、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化スズ、ハロゲン化チタン、ハロゲン化亜鉛、ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化ガリウム、ハロゲン化砒素、ハロゲン化鉄、ハロゲン化水銀及びハロゲン化ジルコニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、芳香族化合物が、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、ナフタレン、1,2−ジヒドロナフタレン、1,4−ジヒドロナフタレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ピレン、ナフタセン、ベンズアントラセン及びベンズピレンからなる群より選ばれた少なくとも1種である項6に記載の方法。
項8 項1〜7のいずれかに記載の方法によって一般式(III)及び/又は(III’)で表される含フッ素アルキルエチルハロゲン化物を得た後、これを一般式 (V):
CH2=CRCOOM (V)
(式中、Mはアルカリ金属を示し、RはH又はCH3を示す)
で表されるカルボン酸塩と反応させることを特徴とする、一般式(VI):
Rf 1−CH2CH2−OCOCR=CH2 (VI)
(式中、Rf 1及びRは前記に同じ)
で表される含フッ素エステルの製造方法。
項9 一般式(III):
Rf 1−CH2CH2−X1 (III)
(式中、Rf 1は、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキル基又は炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のポリフルオロアルキル基を示し、X1はCl、Br又はIを示す)
で表される含フッ素アルキルエチルハロゲン化物と、一般式(V):
CH2=CRCOOM (V)
(式中、Mはアルカリ金属を示し、RはH又はCH3を示す)
で表されるカルボン酸塩と反応させて、一般式(VI):
Rf 1−CH2CH2−OCOCR=CH2 (VI)
(式中、Rf 1及びRは前記に同じ)
で表される含フッ素エステルを製造する方法において、副生する一般式(I):
Rf 1−CH=CH2 (I)
(式中、Rf 1は前記に同じ)
で表される含フッ素アルケンを、請求項1〜7のいずれかの方法によって、一般式 (III)及び/又は(III’)の含フッ素アルキルエチルハロゲン化物に変換し、一般式(VI)の含フッ素エステルの製造工程における原料としてリサイクルすることを特徴とする、一般式(VI)で表される含フッ素エステルの製造方法。
項10 項1〜7のいずれかに記載の方法によって得られる一般式(IV)又は(IV’)で表される含フッ素アルカンを、溶融加工可能な結晶性含フッ素樹脂の球晶微小化剤として使用することを特徴とする、結晶性含フッ素樹脂組成物の製造方法。
項11 前記結晶性含フッ素樹脂が、結晶性テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、ビニリデンフルオライド系重合体、及びクロロトリフルオロエチレン系重合体からなる群から選ばれる少なくとも1つである項10に記載の方法。
項12 前記結晶性含フッ素樹脂が、結晶性テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体である項10に記載の方法。
項13 項1〜7のいずれかに記載の方法によって得られる一般式(IV)又は(IV’)で表される含フッ素アルカンが、炭素数6〜50の直鎖又は分岐鎖の含フッ素アルカンである項10に記載の方法。
項14 前記結晶性テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体が、テトラフルオロエチレン繰返し単位90〜99重量%とパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)繰返し単位10〜1重量%からなる結晶性共重合体である項12に記載の方法。
項15 項10〜14のいずれかに記載の方法によって製造される結晶性含フッ素樹脂組成物。
項16 項1〜7のいずれかに記載の方法によって得られる一般式(IV)又は(IV’)で表される含フッ素アルカンと溶融加工可能な結晶性含フッ素樹脂とを含有する結晶性含フッ素樹脂組成物。
項17 前記結晶性含フッ素樹脂100重量部に対し含フッ素アルカンを0.01〜50重量部含んでなる項16に記載の結晶性含フッ素樹脂組成物。
項18 項15〜17のいずれかに記載の結晶性含フッ素樹脂組成物を溶融成形して得られる成形品。
項19 球晶の平均径が5μm以下である請求項18に記載の成形品。
項20 項15〜17のいずれかに記載の結晶性含フッ素樹脂組成物を溶融成形して得られるチューブ。
項21 項15〜17のいずれかに記載の結晶性含フッ素樹脂組成物を溶融成形して得られる容器。
項22 項1〜7のいずれかに記載の方法によって得られた一般式(IV)又は(IV’)で表される含フッ素アルカンを球晶微小化剤として使用することを特徴とする、溶融加工可能な結晶性含フッ素樹脂の球晶微小化方法。
項23 項1〜7のいずれかに記載の方法によって得られた一般式(IV)又は(IV’)で表される含フッ素アルカンの、溶融加工可能な結晶性含フッ素樹脂用の球晶微小化剤としての使用。
項24 項1〜7のいずれかに記載の方法によって得られた一般式 (IV)又は(IV’)で表される含フッ素アルカンを、熱分解して含フッ素モノマーを製造する方法。
項25 前記含フッ素モノマーが、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ビニリデンジフルオライド、及びヘキサフルオロプロピレン及びオクタフルオロシクロブタンからなる群より選ばれた少なくとも1種である項24に記載の方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明方法は、一般式(I):
Rf 1−CH=CH2 (I)
(式中、Rf 1は、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキル基又は炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のポリフルオロアルキル基を示す)
で表される含フッ素アルケンと、一般式(II):
Y−Rf 2−X1 (II)
(式中、Rf 2は、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキレン基又は炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のポリフルオロアルキレン基を示し、YはH又はFを示し、X1はCl、Br又はIを示す)
で表される含フッ素アルキルハロゲン化物と、水素供与剤とを、触媒の存在下又は非存在下に反応させることを特徴とする、一般式(III):
Rf 1−CH2CH2−X1 (III)
(式中、Rf 1及びX1は前記に定義される通り)
で表される含フッ素アルキルエチルハロゲン化物と、一般式(IV):
Y−Rf 2−H (IV)
(式中、Rf 2及びYは前記に定義される通り)
で表される含フッ素アルカンを同時に製造する方法である。
【0016】
本発明方法は、また、一般式(I):
Rf 1−CH=CH2 (I)
(式中、Rf 1は、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキル基又は炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のポリフルオロアルキル基を示す)
で表される含フッ素アルケンと、一般式(II’):
X1−Rf 2−X2 (II’)
(式中、Rf 2は、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキレン基又は炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のポリフルオロアルキレン基を示し、X1及びX2は、同一又は異なってCl、Br又はIを示す)
で表される含フッ素アルキルハロゲン化物と、水素供与剤とを、触媒の存在下又は非存在下に反応させることを特徴とする、一般式(III):
Rf 1−CH2CH2−X1 (III)
(式中、Rf 1及びX1は前記に定義される通り)
で表される含フッ素アルキルエチルハロゲン化物、及び/又は一般式(III’):
Rf 1−CH2CH2−X2 (III’)
(式中、Rf 1及びX2は前記に定義される通り)
で表される含フッ素アルキルエチルハロゲン化物と、一般式(IV’):
H−Rf 2−H (IV’)
(式中、Rf 2は前記に定義される通り)
で表される含フッ素アルカンを同時に製造する方法である。
【0017】
本発明方法において原料として用いる含フッ素アルケン(I)は公知の化合物であり、一般式(I)におけるRf 1は、パーフルオロアルキル基又はポリフルオロアルキル基である。パーフルオロアルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のパーフルオロアルキル基を例示することができ、具体例としては、CF3−、 C2F5−、 (n−又はiso−)C3F7−、 (n−、iso−、sec−又はtert−)C4F9−、 CF3(CF2)m− (mは4〜19の整数)、 (CF3)2CF(CF2)k− (kは2〜17の整数) 等を挙げることができる。
【0018】
ポリフルオロアルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のポリフルオロアルキル基を例示することができ、具体例としては、CHF2(CF2)p− (pは1〜19の整数)、CH2F(CF2)q− (qは1〜19の整数) 等を挙げることができる。
【0019】
本発明方法において原料として用いる含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)は公知の化合物であり、一般式(II)又は(II’)におけるRf 2は、パーフルオロアルキレン基又はポリフルオロアルキレン基である。パーフルオロアルキレン基としては、炭素数1〜50の直鎖状又は分岐鎖状のパーフルオロアルキレン基を例示することができ、具体例としては、−CF2−、 −C2F4−、 −CF2CF2CF2−、 −CF(CF3)CF2−、 −CF2CF(CF3)−、 −CF2CF2CF2CF2−、 −CF(CF3)CF2CF2−、 −CF2CF(CF3)CF2−、 −CF2CF2CF(CF3)−、 −(CF2)m− (mは5〜19の整数)、 −CF2CF(CF3)(CF2)k− (kは2〜47の整数) 等を挙げることができる。
【0020】
一般式(II)又は(II’)におけるYはH又はFであり、X1及びX2は同一又は異なってCl、Br又はIである。X1及びX2は反応性の高いBr又はIが好ましく、より好ましくはIである。
【0021】
ポリフルオロアルキレン基としては、炭素数1〜50の直鎖状又は分岐鎖状のポリフルオロアルキレン基を例示することができ、具体例としては、−CHF(CF2)p− (pは1〜49の整数)、−CH2(CF2)q− (qは1〜49の整数) 等を挙げることができる。
【0022】
本発明反応では、含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)と水素供与剤を反応系中で反応させてハロゲン化水素を発生させ、該ハロゲン化水素を含フッ素アルケン(I)と反応させる点に特徴を有している。反応系中でハロゲン化水素を発生し得る試薬の組合せとしては、下記の含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)と水素供与剤の組合せを例示できる。
(i)含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)と水素の組合せ。
(ii)含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)と水素化芳香族化合物の組合せ。
(iii)含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)とカルボン酸化合物の組合せ。
【0023】
上記(i)〜(iii)の組合せについては、一種類の組合せを単独で用いる他、二種以上の組合せを同時に用いることもできる。含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)及び水素供与剤を用いたハロゲン化水素の発生方法は、いずれも精製ヨウ化水素に比べ安価であり、安定性が大きいために取り扱いが容易であり、工業原料として好ましい。
【0024】
上記(i)〜(iii)の組合せにおいて用いる原料の内で、含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)は上述のものを用いることができる。
【0025】
上記(i)の組合せでは、含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)の使用量は、含フッ素アルケン(I)1モルに対して、0.01〜10モル程度とすることが好ましく、0.1〜1モル程度とすることがより好ましい。
【0026】
水素の使用量は、含フッ素アルケン(I)1モルに対して、0.01〜10モル程度とすることが好ましく、0.1〜1モル程度とすることがより好ましい。
【0027】
上記(ii)の組合せにおいて用いる原料の内で、水素化芳香族化合物としては、部分水素化された芳香族化合物を用いることができる。該芳香族化合物は、多環構造を持つことが好ましい。
【0028】
この様な多環構造を持つ部分水素化された芳香族化合物としては、水素化ナフタレン、水素化フェナントレン、水素化アントラセン、水素化ピレン、水素化ナフタセン、水素化ベンズアントラセン、水素化ベンズピレン等を例示できる。これらの内で、水素化ナフタレンが好ましく、その具体例としては、1,2−ジヒドロナフタレン、1,4−ジヒドロナフタレン及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン等を挙げることができる。水素化芳香族化合物は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0029】
上記(ii)の組合せにおいて、含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)の使用量は、含フッ素アルケン(I)1モルに対して、0.01〜10モル程度とすることが好ましく、0.1〜1モル程度とすることがより好ましい。水素化芳香族化合物の使用量は、含フッ素アルケン(I)1モルに対して、0.1〜100モル程度とすることが好ましく、1〜10モル程度とすることがより好ましい。
【0030】
上記(iii)の組合せにおいて用いる原料の内で、カルボン酸化合物としては、炭素数1〜6程度の脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸などが好ましく、いずれも一塩基酸又は二塩基酸を用いることができる。カルボン酸化合物の具体例としては、脂肪族カルボン酸として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、アジピン酸等を挙げることができ、芳香族カルボン酸として、安息香酸、フタル酸等を挙げることができる。これらのカルボン酸化合物は一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0031】
上記(iii)の組合せでは、含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)の使用量は、含フッ素アルケン(I)1モルに対して、0.01〜10モル程度とすることが好ましく、0.1〜1モル程度とすることがより好ましい。カルボン酸化合物の使用量は、含フッ素アルケン(I)1モルに対して、0.1〜100モル程度とすることが好ましく、1〜10モル程度とすることがより好ましい。
【0032】
本発明反応における、含フッ素アルケン(I)、含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)及び水素供与剤との反応は、触媒の存在下又は非存在下に行うことができる。具体的には、反応系中でハロゲン化水素を発生し得る試薬として、上記(i)の含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)と水素の組合せを用いる場合には、触媒の存在下に反応を行うことが必要である。上記(ii)の含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)と水素化芳香族化合物の組合せと、(iii)の含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)とカルボン酸化合物の組合せについては、触媒の非存在下に反応を行うことも可能であるが、触媒の存在下に反応を行うことによって、収率を向上させることができる。
【0033】
触媒としては、活性炭、金属硫酸塩、金属、ルイス酸、芳香族化合物などを用いることができる。これらの触媒は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0034】
活性炭としては、特に限定はなく、入手容易な公知の活性炭を用いることができる。
【0035】
金属硫酸塩の具体例としては、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム等を挙げることができ、これらを一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0036】
金属としては、銅、白金、亜鉛、パラジウム、スズ、チタン、ジルコニウム、ガリウム、コバルト、ニッケル、鉄等を挙げることができ、これらを一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0037】
ルイス酸としては、ハロゲン化ホウ素、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化スズ、ハロゲン化チタン、ハロゲン化亜鉛、ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化ガリウム、ハロゲン化砒素、ハロゲン化鉄、ハロゲン化水銀、ハロゲン化ジルコニウム等を用いることができる。これらの化合物において、ハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素等を例示できる。これらのルイス酸は一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0038】
芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、ナフタレン、1,2−ジヒドロナフタレン、1,4−ジヒドロナフタレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタフレン、フェナントレン、アントラセン、ピレン、ナフタセン、ベンズアントラセン、ベンズピレンなどを用いることができ、これらを一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0039】
触媒の使用量については、活性炭、金属硫酸塩又は芳香族化合物を用いる場合には、含フッ素アルケン(I)1モルに対して、0.1〜10モル程度とすることが好ましい。また、触媒として、ルイス酸を用いる場合には、含フッ素アルケン1モルに対して0.01〜1モル程度とすることが好ましい。
【0040】
また、活性炭と金属硫酸塩は併用することができ、両者を併用することによって、反応性を向上させ、収率を上げることが可能となる。両者を併用する場合には、その割合は、活性炭1重量部に対して金属硫酸塩0.01〜10重量部程度とすることが好ましい。この場合には、反応に先立ち、減圧下(例えば、0〜1×105Pa程度)で、例えば、100〜300℃程度に加熱して触媒を活性化することが好ましい。
【0041】
含フッ素アルケン(I)と、含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)及び水素供与剤との反応では、反応温度を50〜400℃程度とすることが好ましく、100〜300℃程度とすることがより好ましい。反応時間は、通常、1〜100時間程度とすればよい。
【0042】
上記反応は、反応系内を不活性気体(N2、Ar、CO2等)で置換し、0〜5×104Pa程度に減圧した後、反応を行うことが好ましい。
【0043】
具体的な反応方法については、特に限定的ではないが、例えば、オートクレーブ等の圧力容器に原料、及び必要に応じて触媒を仕込み、窒素等の不活性気体で容器内を置換し、その後、減圧し、反応温度まで昇温して、同温下で所定の時間撹拌すればよい。
【0044】
本発明の製造方法によって得られる含フッ素アルキルエチルハロゲン化物(III)及び/又は(III’)、並びに含フッ素アルカン(IV)又は(IV’)は、抽出、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの公知の方法で精製することができる。
【0045】
上記した方法によって得られた含フッ素アルキルエチルハロゲン化物(III)及び/又は(III’)は、一般式(VI):
Rf 1−CH2CH2OCOCR=CH2 (VI)
(式中、Rf 1は、炭素数が1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキル基又は炭素数が1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のポリフルオロアルキル基を示し、RはH又はCH3を示す)
で表される含フッ素エステルの製造原料として有効に利用できる。
【0046】
含フッ素アルキルエチルハロゲン化物から、一般式(VI)の含フッ素エステルを得るには、含フッ素アルキルエチルハロゲン化物(III)及び/又は(III’)と、一般式(V):
CH2=CHRCOOM (V)
(式中、RはH又はCH3であり、Mはアルカリ金属である。)
で表されるカルボン酸塩とを反応させればよい。この反応は、特公昭39−18112号公報などに記載されている公知の反応条件に従えばよく、例えば、常圧下、アルコール溶媒(例えば、t−ブタノール)中で含フッ素アルキルエチルハロゲン化物(III)及び/又は(III’)とカルボン酸塩(V)を混合し、通常、100〜300℃程度で1〜50時間程度加熱撹拌すればよい。この様にして得られた反応混合物を精製することにより、含フッ素エステル(VI)を得ることができる。
【0047】
上記一般式(V)において、Mで示されるアルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。中でも、反応性の点からカリウムが好ましい。
【0048】
本発明の方法を用いることにより、含フッ素アルケン(I)から含フッ素エステル(VI)を効率的にしかも選択性良く製造することができる。
【0049】
尚、含フッ素アルキルエチルハロゲン化物(III)及び/又は(III’)と、一般式 (V)で表されるカルボン酸塩とを反応させて、一般式(VI)で表される含フッ素エステルを製造する方法において、副生する一般式(I)の含フッ素アルケンを、上記した本発明方法に従って含フッ素アルキルエチルハロゲン化物(III)及び/又は(III’)に変換し、これを上記した一般式(VI)の含フッ素エステルの製造工程に原料としてリサイクルすることも可能である。この場合には、該含フッ素エステルの製造時に多量に副生する含フッ素アルケン(I)を有効に利用することが可能となり、一般式(VI)の含フッ素エステルの製造効率を大きく向上させることができる。
【0050】
本発明反応で得られる含フッ素アルカン(IV)又は(IV’)は、溶融加工可能な結晶性含フッ素樹脂の球晶微小化剤として用いることが可能である。これによれば、溶融加工可能な結晶性含フッ素樹脂の球晶を微少化し、溶融成形して得られる成形品の表面を高度に平滑化でき、パーティクルなどの発生の低減を達成しうる。また、成形品の透明性・透視性を向上や、耐ストレスクラック性の向上を実現することができる。
【0051】
結晶性含フッ素樹脂の球晶微小化剤として用いうる含フッ素アルカン(IV)又は(IV’)としては、Rf 2が炭素数1〜50の直鎖状又は分岐鎖状のパーフルオロアルキレン基又は炭素数1〜50の直鎖状又は分岐鎖状のポリフルオロアルキレン基であることが好ましく、より好ましくは炭素数6〜50のパーフルオロアルキレン基又は炭素数6〜50のポリフルオロアルキレン基である。特に好ましい含フッ素アルカンとしては、CF3(CF2)nH (nは5〜49の整数)、H(CF2)mH (mは6〜50の整数) である。
【0052】
更に、球晶微小化剤として用いうる含フッ素アルカンの特性としては、250〜330℃程度の結晶化温度、融点を有しているものが好ましい。
【0053】
本発明はまた、含フッ素アルカン(IV)又は(IV’)からなる球晶微小化剤を、溶融加工可能な結晶性含フッ素樹脂に配合してなる結晶性含フッ素樹脂組成物に関する。
【0054】
溶融加工可能な結晶性含フッ素樹脂としては、示差走査型熱量計(DSC)で測定した場合、融解ピーク温度(Tm)および結晶化ピーク温度(Tc)を有する含フッ素樹脂であり、結晶化時に粗大な球晶を生成するものである。具体的には結晶性のテトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、ビニリデンフルオライド系重合体(PVdF)、クロロトリフルオロエチレン系重合体(PCTFE)などがあげられる。特にPFAに球晶微小化効果が顕著に生ずる。
【0055】
溶融加工可能な結晶性PFAとしては、テトラフルオロエチレン繰返し単位90〜99重量%程度とパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)繰返し単位10〜1重量程度のものが、耐熱性、耐薬品性の点から好ましい。10重量%よりも多いと融点(Tm、Tc)が低くなっていき耐熱性に劣り、一方、1重量%よりも少ないと溶融加工性のない、いわゆる変性PTFEとなる。好ましい溶融加工可能な結晶性PFAとしてはメルトフローレート(372℃±1℃、荷重5kg)が0.5〜500g/10分、特に0.5〜50g/10分のものである。また、PAVEとしては前記のごとくパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)、パーフルオロ(イソブチルビニルエーテル)などがあげられ、特にPPVEが機械的性質に優れる点から好ましい。
【0056】
含フッ素アルカン(IV)又は(IV’)からなる球晶微小化剤の配合量は、結晶性含フッ素樹脂100部に対して0.01〜50部とするのが好ましい。本発明において球晶微小化剤の配合量を増やすと球晶径は小さくなる傾向があるが、20部を超えても球晶径はほとんど変化しない。50部を超えると得られる結晶性含フッ素樹脂組成物の硬度や機械的性質が悪化していく。したがって、上限は50部、特に20部、さらに10部とするのが好ましい。また、下限は球晶の微小化効果が得られる0.01部、好ましくは0.025部である。
【0057】
成形品の表面平滑化を主目的とする場合、樹脂組成物には基本的に他の添加剤を配合しない方がよいが、半導体製造の分野以外の用途では補強や帯電性の低下などの目的でカーボンブラック、酸化チタン、ガラス繊維などを配合してもよい。
【0058】
本発明の結晶性含フッ素樹脂組成物の調製は、球晶微小化剤と結晶性含フッ素樹脂とを溶融混練してペレット化する方法、球晶微小化剤のペレットまたは粉末と結晶性含フッ素樹脂のペレットまたは粉末をドライブレンドする方法、結晶性含フッ素樹脂の水性分散液と球晶微小化剤の粉末または水性分散液を混合後乾燥する湿式ブレンド法などの公知の方法のほか、球晶微小化剤の微粒子を結晶性含フッ素樹脂の重合系に共存させておいて重合を開始して球晶微小化剤を含む結晶性含フッ素樹脂を得ることもできる。これらのうち均一な組成物が経済的に得られることから、球晶微小化剤と結晶性含フッ素樹脂とを溶融混練する方法、また湿式ブレンド法が好ましい。
【0059】
含フッ素アルカン(IV)又は(IV’)からなる球晶微小化剤は結晶性含フッ素樹脂への分散性に優れている。球晶微小化剤を水性分散液の形で使用する場合は0.05〜1μmの平均粒径の微粒子が好ましく、粉末の形で使用する場合は数ミクロン〜数十ミクロンの平均粒径のものが好ましい。
【0060】
本発明の結晶性含フッ素樹脂組成物は溶融加工が可能であり、溶融押出成形、射出成形、加熱圧縮成形などの各種溶融成形法が適用できる。こうした溶融成形においては、一旦溶融した結晶性含フッ素樹脂が再結晶する際に球晶を生じるが、含フッ素アルカン(IV)又は(IV’)からなる球晶微小化剤を配合しておくことにより、再結晶時に発生する球晶を微小化できる。たとえば結晶性PFAを徐冷した場合、球晶微小化剤を配合しないときの球晶径は平均で約30〜60μmであるが、含フッ素アルカン(IV)又は(IV’)からなる球晶微小化剤を配合することにより平均20μm以下、特に10μm以下にすることができる。
【0061】
また、本発明は結晶性含フッ素樹脂組成物を溶融成形して得られる成形品に関する。本発明の成形品は球晶の平均径が5μm以下のものであり、平滑な表面を有している。特に透視性に劣る含フッ素樹脂(PFA、PVdFなど)をマトリックス樹脂として用いる場合、透視性が改善されると共に透明性も向上する。したがって、内部の観察の窓用材料として有用である。
【0062】
また、含フッ素アルカン(IV)又は(IV’)からなる球晶微小化剤を用いる場合、結晶性セグメントがアンカー作用を果たすので、球晶微小化剤の脱落が少なく、汚染の原因となるパーティクルの発生を抑制できる。
【0063】
本発明の成形品は成形法などにより各種の形状をとることができる。たとえばチューブ状、フィルム状、シート状、板状のほか容器や各種目的に応じた部品の形状に成形することができる。このような本発明の成形品は、含フッ素樹脂の耐熱性、耐薬品性に加え、表面が平滑であるため、特に汚染を嫌う半導体装置の製造用の各種部品、配管、容器として好適に使用できる。
【0064】
本発明反応で得られる含フッ素アルカン(IV)又は(IV’)は、また、熱分解して含フッ素モノマーを製造する原料として用いることも可能である。熱分解は、公知の方法を用いて実施することができる。例えば、内温を500〜800℃程度に設定したロータリーキルンに、含フッ素アルカン、石英砂、水蒸気を加え熱分解する条件が挙げられる。含フッ素アルカンの熱分解反応で得られる含フッ素モノマーとしては、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ビニリデンジフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン及びオクタフルオロシクロブタン等が挙げられる。これらの含フッ素モノマーは、重合体化合物合成の原料として利用される。
【0065】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、下記の様な顕著な効果が奏される。
【0066】
(1)ヨウ化水素ガスを一旦製造し、単離精製するという煩雑な工程を経ることなく、しかも取り扱いの難しいヨウ化水素ガスを用いること無く、一工程で含フッ素アルキルエチルハロゲン化物(III)及び/又は(III’)を製造できる。
【0067】
(2)固体触媒を用いること無く反応を進行させることも可能であり、この場合には、固体触媒を濾過などの方法で分離する必要が無く、効率よく含フッ素アルキルエチルハロゲン化物(III)及び/又は(III’)を製造できる。
【0068】
(3)含フッ素アルケンを効率的に含フッ素アルキルエチルハロゲン化物(III)及び/又は(III’)に変換でき、利用価値の低かった含フッ素アルケンを再利用して含フッ素エステルに導くことができる。これにより含フッ素エステルの生産効率が向上し、ひいては資源の有効利用を図ることができる。
【0069】
(4)本発明方法で得られる含フッ素アルカン(IV)又は(IV’)は、結晶性含フッ素樹脂の球晶微少化剤として好適に用いることができ、また、該含フッ素アルカンは、それを熱分解して得られる含フッ素モノマーの原料として用いることも可能である。
【0070】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0071】
実施例1
200 ml SUSオートクレーブに含フッ素アルケン (C8F17CH=CH2) 40.5 g (91 mmol)、C8F17I 49.6 g (91 mmol)、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン (C10H12) 57.6 g (436 mmol) を入れ、窒素置換、真空引きした後、400 rpmで撹拌しながら170 ℃まで昇温して4 hr反応を行った。
反応後、得られた液をガスクロマトグラフィー (GC) で分析した。
【0072】
GC条件
キャリアガス : ヘリウム、50 ml/min
注入口 : 250 ℃
検出器 : 250 ℃、TCD 100mA
カラム : 3m SE−30
カラム昇温条件 : 50 ℃、5 min → 10 ℃/minで昇温 → 250 ℃、5 min
転化率3.9 %、選択率96.5 %でC8F17CH2CH2Iが、転化率14.8 %、選択率74.3 %でC8F17Hが得られたことが分かった。
【0073】
実施例2
実施例1と同様の方法で合成したC8F17H 25 gを溶融加工可能な結晶性PFA [テトラフルオロエチレン (TFE) −パーフルオロプロピルビニルエーテル (PPVE) 共重合体、PPVE含有量4.6 %、平均球晶径30μm、MFR 1.2 g/10分] 10 kgに溶融混練して組成物を調製した。溶融混練は、東洋精機(株)製のローラーミキサーR−60H (ミキサー容量約60 cc) に各成分を投入し、350 ℃にて回転数15 rpmで10分間溶融混練して行った。
【0074】
得られた溶融混練物について平均球晶径を調べたところ、15μmであった。
【0075】
実施例3
C8F17H 100 gを実施例2で使用したPFA 10 kgに配合し、スクリュー押出機 (池貝(株)製のPCM46) により360 ℃にて溶融押出して樹脂組成物を得た。この押出物の平均球晶径は溶融混練して組成物を調製した。溶融混練は、東洋精機(株)製のローラーミキサーR−60H (ミキサー容量約60 cc) に各成分を投入し、350 ℃にて回転数15 rpmで10分間溶融混練して行った。
【0076】
得られた溶融混練物について平均球晶径を調べたところ、10μmであった。
【0077】
この樹脂組成物を用い次の条件で外径10.0 mm、肉厚1.0 mmのチューブを押出成形した。
【0078】
押出成形機 :田辺プラスチックス機械(株)製
シリンダー内径 :30 mm
ダイ内径 :20 mm
マンドレル外径 :13 mm
設定温度 :シリンダー後部 330 ℃
シリンダー中部 :365 ℃
シリンダー前部 :380 ℃
アダプター :380 ℃
ダイ :390 ℃
スクリュー回転数 :10 rpm
サイジングダイ内径:10.0 mm
引取り速度 :0.4〜0.5 m/分
得られたチューブについて平均球晶径を調べたところ、3μmであった。
【0079】
実施例4
内温を600 ℃に設定したロータリーキルンに実施例1と同様の方法で合成したC8F17Hを300 g/hr、石英砂 (3〜5 mm程度) を300 g/hr、水蒸気を600 g/hrで供給した。出口ガスをGCにて分析したところ、テトラフルオロエチレン50 %、ヘキサフルオロプロピレン20 %、オクタフルオロシクロブタン20 %、その他10 %が得られた。
【発明の属する技術分野】
本発明は、含フッ素アルキルエチルハロゲン化物の製造方法、及び含フッ素アルカンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般式(VI):
Rf 1−CH2CH2OCOCR=CH2 (VI)
(式中、Rf 1は、炭素数が1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキル基又は炭素数が1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のポリフルオロアルキル基を示し、RはH又はCH3を示す)
で表される含フッ素エステルは、撥水撥油剤の原料等として有用な化合物であり、その製造方法としては、一般式 (IIIa):
Rf 1−CH2CH2I (IIIa)
(式中、Rf 1は、前記に同じ)
で表される含フッ素アルキルアイオダイドと、一般式 (V):
CH2=CRCOOM (V)
(式中、Mはアルカリ金属を示し、Rは前記に同じ)
で表されるカルボン酸塩とを反応させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、この製造方法では、副生成物として一般式 (I):
Rf 1−CH=CH2 (I)
(式中、Rf 1は前記に同じ)
で表される含フッ素アルケンが多量に生成するという問題点がある。
【0004】
副生する含フッ素アルケン(I)については、一般式(A):
Rf 1CH2CH2SiR’nX3−n (A)
(式中、nは0、1又は2、R’はアルキル基又はアリール基を示し、Rf 1は前記に同じ)で表されるオルガノフルオロシランの原料として利用できることが知られているが(例えば、特許文献2参照)、この用途だけでは需要量が充分ではなく、余剰の含フッ素アルケンを有効に利用することが望まれる。
【0005】
例えば、含フッ素アルケン(I)を含フッ素アルキルアイオダイド(IIIa)に変換できれば、上記した含フッ素エステル(VI)の原料としてリサイクルすることが可能となり、生産効率を向上させることができるものと期待される。
【0006】
含フッ素アルケン(I)を含フッ素アルキルアイオダイド(IIIa)に変換する方法としては、例えば、含フッ素アルケン(I)にヨウ化水素を付加させる方法が考えられる。しかしながら、この方法では、ヨウ化水素を一旦製造し、これを単離精製する必要があるため、製造工程が煩雑となる。しかも、ヨウ化水素は、毒性、腐食性が大きく、酸素や光の存在下で容易に分解するという性質を有するため取り扱いが困難である。
【0007】
また、含フッ素オレフィンに塩化水素 、臭化水素等のハロゲン化水素を付加させる方法としては、触媒としてAlBr3を用いる方法 (例えば、非特許文献1参照)、触媒としてCaSO4/Cを用いる方法 (例えば、非特許文献2参照)などが報告されているが、いずれの方法も固体触媒を分離する必要があるため、製造効率が劣るものである。
【0008】
【特許文献1】
特公昭39−18112号公報
【0009】
【特許文献2】
特開昭50−126621号公報
【0010】
【非特許文献1】
ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサエティー(J. Am. Chem. Soc.), 72, 3369 (1950)
【0011】
【非特許文献2】
ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサエティー(J. Am. Chem. Soc.), 75, 5618 (1953)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した如き従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、含フッ素アルケンを出発物質として、含フッ素アルキルエチルハロゲン化物及び含フッ素アルカンを効率良く製造できる方法を提供することである。本発明の他の目的は、該方法により得られる含フッ素アルキルエチルハロゲン化物を利用して含フッ素エステルを効率よく製造できる方法、さらに、該方法により得られる含フッ素アルカンの球晶微少化剤等としての用途を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、含フッ素アルケンを、反応系においてハロゲン化水素を発生し得る試薬の組合せと反応させることにより、ハロゲン化水素ガスを一旦製造し単離精製するという煩雑な工程を経ることなく、一工程で含フッ素アルキルエチルハロゲン化物を製造できることを見出した。しかも、この製造方法では、ハロゲン源として含フッ素アルキルハロゲン化物を用いているため、含フッ素アルキルエチルハロゲン化物と共に含フッ素アルカンをも同時に製造することが可能であり、非常に効率のよい方法であることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は、下記の含フッ素アルキルエチルハロゲン化物の製造方法等を提供するものである。
項1 一般式(I):
Rf 1−CH=CH2 (I)
(式中、Rf 1は、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキル基又は炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のポリフルオロアルキル基を示す)
で表される含フッ素アルケンと、一般式(II):
Y−Rf 2−X1 (II)
(式中、Rf 2は、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキレン基又は炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のポリフルオロアルキレン基を示し、YはH又はFを示し、X1はCl、Br又はIを示す)
で表される含フッ素アルキルハロゲン化物と、水素供与剤とを、触媒の存在下又は非存在下に反応させることを特徴とする、一般式(III):
Rf 1−CH2CH2−X1 (III)
(式中、Rf 1及びX1は前記に定義される通り)
で表される含フッ素アルキルエチルハロゲン化物と、一般式(IV):
Y−Rf 2−H (IV)
(式中、Rf 2及びYは前記に定義される通り)
で表される含フッ素アルカンを同時に製造する方法。
項2 一般式(I):
Rf 1−CH=CH2 (I)
(式中、Rf 1は、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキル基又は炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のポリフルオロアルキル基を示す)
で表される含フッ素アルケンと、一般式(II’):
X1−Rf 2−X2 (II’)
(式中、Rf 2は、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキレン基又は炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のポリフルオロアルキレン基を示し、X1及びX2は、同一又は異なってCl、Br又はIを示す)
で表される含フッ素アルキルハロゲン化物と、水素供与剤とを、触媒の存在下又は非存在下に反応させることを特徴とする、一般式(III):
Rf 1−CH2CH2−X1 (III)
(式中、Rf 1及びX1は前記に定義される通り)
で表される含フッ素アルキルエチルハロゲン化物、及び/又は一般式(III’):
Rf 1−CH2CH2−X2 (III’)
(式中、Rf 1及びX2は前記に定義される通り)
で表される含フッ素アルキルエチルハロゲン化物と、一般式(IV’):
H−Rf 2−H (IV’)
(式中、Rf 2は前記に定義される通り)
で表される含フッ素アルカンを同時に製造する方法。
項3 水素供与剤が、水素、水素化芳香族化合物、及びカルボン酸化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種である項1又は2に記載の方法。
項4 水素化芳香族化合物が、部分水素化された多環構造を持つ芳香族化合物である項3に記載の方法。
項5 カルボン酸化合物が、炭素数1〜6の脂肪族一塩基酸、炭素数1〜6の脂肪族二塩基酸、芳香族一塩基酸及び芳香族二塩基酸からなる群より選ばれた少なくとも1種である項3に記載の方法。
項6 触媒が、活性炭、金属硫酸塩、金属、ルイス酸及び芳香族化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種である項1〜5のいずれかに記載の方法。
項7 金属硫酸塩が、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム及び硫酸アルミニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、金属が、銅、白金、亜鉛、パラジウム、スズ、チタン、ジルコニウム、ガリウム、コバルト、ニッケル及び鉄からなる群より選ばれた少なくとも1種であり、ルイス酸が、ハロゲン化ホウ素、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化スズ、ハロゲン化チタン、ハロゲン化亜鉛、ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化ガリウム、ハロゲン化砒素、ハロゲン化鉄、ハロゲン化水銀及びハロゲン化ジルコニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、芳香族化合物が、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、ナフタレン、1,2−ジヒドロナフタレン、1,4−ジヒドロナフタレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ピレン、ナフタセン、ベンズアントラセン及びベンズピレンからなる群より選ばれた少なくとも1種である項6に記載の方法。
項8 項1〜7のいずれかに記載の方法によって一般式(III)及び/又は(III’)で表される含フッ素アルキルエチルハロゲン化物を得た後、これを一般式 (V):
CH2=CRCOOM (V)
(式中、Mはアルカリ金属を示し、RはH又はCH3を示す)
で表されるカルボン酸塩と反応させることを特徴とする、一般式(VI):
Rf 1−CH2CH2−OCOCR=CH2 (VI)
(式中、Rf 1及びRは前記に同じ)
で表される含フッ素エステルの製造方法。
項9 一般式(III):
Rf 1−CH2CH2−X1 (III)
(式中、Rf 1は、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキル基又は炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のポリフルオロアルキル基を示し、X1はCl、Br又はIを示す)
で表される含フッ素アルキルエチルハロゲン化物と、一般式(V):
CH2=CRCOOM (V)
(式中、Mはアルカリ金属を示し、RはH又はCH3を示す)
で表されるカルボン酸塩と反応させて、一般式(VI):
Rf 1−CH2CH2−OCOCR=CH2 (VI)
(式中、Rf 1及びRは前記に同じ)
で表される含フッ素エステルを製造する方法において、副生する一般式(I):
Rf 1−CH=CH2 (I)
(式中、Rf 1は前記に同じ)
で表される含フッ素アルケンを、請求項1〜7のいずれかの方法によって、一般式 (III)及び/又は(III’)の含フッ素アルキルエチルハロゲン化物に変換し、一般式(VI)の含フッ素エステルの製造工程における原料としてリサイクルすることを特徴とする、一般式(VI)で表される含フッ素エステルの製造方法。
項10 項1〜7のいずれかに記載の方法によって得られる一般式(IV)又は(IV’)で表される含フッ素アルカンを、溶融加工可能な結晶性含フッ素樹脂の球晶微小化剤として使用することを特徴とする、結晶性含フッ素樹脂組成物の製造方法。
項11 前記結晶性含フッ素樹脂が、結晶性テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、ビニリデンフルオライド系重合体、及びクロロトリフルオロエチレン系重合体からなる群から選ばれる少なくとも1つである項10に記載の方法。
項12 前記結晶性含フッ素樹脂が、結晶性テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体である項10に記載の方法。
項13 項1〜7のいずれかに記載の方法によって得られる一般式(IV)又は(IV’)で表される含フッ素アルカンが、炭素数6〜50の直鎖又は分岐鎖の含フッ素アルカンである項10に記載の方法。
項14 前記結晶性テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体が、テトラフルオロエチレン繰返し単位90〜99重量%とパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)繰返し単位10〜1重量%からなる結晶性共重合体である項12に記載の方法。
項15 項10〜14のいずれかに記載の方法によって製造される結晶性含フッ素樹脂組成物。
項16 項1〜7のいずれかに記載の方法によって得られる一般式(IV)又は(IV’)で表される含フッ素アルカンと溶融加工可能な結晶性含フッ素樹脂とを含有する結晶性含フッ素樹脂組成物。
項17 前記結晶性含フッ素樹脂100重量部に対し含フッ素アルカンを0.01〜50重量部含んでなる項16に記載の結晶性含フッ素樹脂組成物。
項18 項15〜17のいずれかに記載の結晶性含フッ素樹脂組成物を溶融成形して得られる成形品。
項19 球晶の平均径が5μm以下である請求項18に記載の成形品。
項20 項15〜17のいずれかに記載の結晶性含フッ素樹脂組成物を溶融成形して得られるチューブ。
項21 項15〜17のいずれかに記載の結晶性含フッ素樹脂組成物を溶融成形して得られる容器。
項22 項1〜7のいずれかに記載の方法によって得られた一般式(IV)又は(IV’)で表される含フッ素アルカンを球晶微小化剤として使用することを特徴とする、溶融加工可能な結晶性含フッ素樹脂の球晶微小化方法。
項23 項1〜7のいずれかに記載の方法によって得られた一般式(IV)又は(IV’)で表される含フッ素アルカンの、溶融加工可能な結晶性含フッ素樹脂用の球晶微小化剤としての使用。
項24 項1〜7のいずれかに記載の方法によって得られた一般式 (IV)又は(IV’)で表される含フッ素アルカンを、熱分解して含フッ素モノマーを製造する方法。
項25 前記含フッ素モノマーが、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ビニリデンジフルオライド、及びヘキサフルオロプロピレン及びオクタフルオロシクロブタンからなる群より選ばれた少なくとも1種である項24に記載の方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明方法は、一般式(I):
Rf 1−CH=CH2 (I)
(式中、Rf 1は、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキル基又は炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のポリフルオロアルキル基を示す)
で表される含フッ素アルケンと、一般式(II):
Y−Rf 2−X1 (II)
(式中、Rf 2は、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキレン基又は炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のポリフルオロアルキレン基を示し、YはH又はFを示し、X1はCl、Br又はIを示す)
で表される含フッ素アルキルハロゲン化物と、水素供与剤とを、触媒の存在下又は非存在下に反応させることを特徴とする、一般式(III):
Rf 1−CH2CH2−X1 (III)
(式中、Rf 1及びX1は前記に定義される通り)
で表される含フッ素アルキルエチルハロゲン化物と、一般式(IV):
Y−Rf 2−H (IV)
(式中、Rf 2及びYは前記に定義される通り)
で表される含フッ素アルカンを同時に製造する方法である。
【0016】
本発明方法は、また、一般式(I):
Rf 1−CH=CH2 (I)
(式中、Rf 1は、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキル基又は炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のポリフルオロアルキル基を示す)
で表される含フッ素アルケンと、一般式(II’):
X1−Rf 2−X2 (II’)
(式中、Rf 2は、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキレン基又は炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のポリフルオロアルキレン基を示し、X1及びX2は、同一又は異なってCl、Br又はIを示す)
で表される含フッ素アルキルハロゲン化物と、水素供与剤とを、触媒の存在下又は非存在下に反応させることを特徴とする、一般式(III):
Rf 1−CH2CH2−X1 (III)
(式中、Rf 1及びX1は前記に定義される通り)
で表される含フッ素アルキルエチルハロゲン化物、及び/又は一般式(III’):
Rf 1−CH2CH2−X2 (III’)
(式中、Rf 1及びX2は前記に定義される通り)
で表される含フッ素アルキルエチルハロゲン化物と、一般式(IV’):
H−Rf 2−H (IV’)
(式中、Rf 2は前記に定義される通り)
で表される含フッ素アルカンを同時に製造する方法である。
【0017】
本発明方法において原料として用いる含フッ素アルケン(I)は公知の化合物であり、一般式(I)におけるRf 1は、パーフルオロアルキル基又はポリフルオロアルキル基である。パーフルオロアルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のパーフルオロアルキル基を例示することができ、具体例としては、CF3−、 C2F5−、 (n−又はiso−)C3F7−、 (n−、iso−、sec−又はtert−)C4F9−、 CF3(CF2)m− (mは4〜19の整数)、 (CF3)2CF(CF2)k− (kは2〜17の整数) 等を挙げることができる。
【0018】
ポリフルオロアルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のポリフルオロアルキル基を例示することができ、具体例としては、CHF2(CF2)p− (pは1〜19の整数)、CH2F(CF2)q− (qは1〜19の整数) 等を挙げることができる。
【0019】
本発明方法において原料として用いる含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)は公知の化合物であり、一般式(II)又は(II’)におけるRf 2は、パーフルオロアルキレン基又はポリフルオロアルキレン基である。パーフルオロアルキレン基としては、炭素数1〜50の直鎖状又は分岐鎖状のパーフルオロアルキレン基を例示することができ、具体例としては、−CF2−、 −C2F4−、 −CF2CF2CF2−、 −CF(CF3)CF2−、 −CF2CF(CF3)−、 −CF2CF2CF2CF2−、 −CF(CF3)CF2CF2−、 −CF2CF(CF3)CF2−、 −CF2CF2CF(CF3)−、 −(CF2)m− (mは5〜19の整数)、 −CF2CF(CF3)(CF2)k− (kは2〜47の整数) 等を挙げることができる。
【0020】
一般式(II)又は(II’)におけるYはH又はFであり、X1及びX2は同一又は異なってCl、Br又はIである。X1及びX2は反応性の高いBr又はIが好ましく、より好ましくはIである。
【0021】
ポリフルオロアルキレン基としては、炭素数1〜50の直鎖状又は分岐鎖状のポリフルオロアルキレン基を例示することができ、具体例としては、−CHF(CF2)p− (pは1〜49の整数)、−CH2(CF2)q− (qは1〜49の整数) 等を挙げることができる。
【0022】
本発明反応では、含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)と水素供与剤を反応系中で反応させてハロゲン化水素を発生させ、該ハロゲン化水素を含フッ素アルケン(I)と反応させる点に特徴を有している。反応系中でハロゲン化水素を発生し得る試薬の組合せとしては、下記の含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)と水素供与剤の組合せを例示できる。
(i)含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)と水素の組合せ。
(ii)含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)と水素化芳香族化合物の組合せ。
(iii)含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)とカルボン酸化合物の組合せ。
【0023】
上記(i)〜(iii)の組合せについては、一種類の組合せを単独で用いる他、二種以上の組合せを同時に用いることもできる。含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)及び水素供与剤を用いたハロゲン化水素の発生方法は、いずれも精製ヨウ化水素に比べ安価であり、安定性が大きいために取り扱いが容易であり、工業原料として好ましい。
【0024】
上記(i)〜(iii)の組合せにおいて用いる原料の内で、含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)は上述のものを用いることができる。
【0025】
上記(i)の組合せでは、含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)の使用量は、含フッ素アルケン(I)1モルに対して、0.01〜10モル程度とすることが好ましく、0.1〜1モル程度とすることがより好ましい。
【0026】
水素の使用量は、含フッ素アルケン(I)1モルに対して、0.01〜10モル程度とすることが好ましく、0.1〜1モル程度とすることがより好ましい。
【0027】
上記(ii)の組合せにおいて用いる原料の内で、水素化芳香族化合物としては、部分水素化された芳香族化合物を用いることができる。該芳香族化合物は、多環構造を持つことが好ましい。
【0028】
この様な多環構造を持つ部分水素化された芳香族化合物としては、水素化ナフタレン、水素化フェナントレン、水素化アントラセン、水素化ピレン、水素化ナフタセン、水素化ベンズアントラセン、水素化ベンズピレン等を例示できる。これらの内で、水素化ナフタレンが好ましく、その具体例としては、1,2−ジヒドロナフタレン、1,4−ジヒドロナフタレン及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン等を挙げることができる。水素化芳香族化合物は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0029】
上記(ii)の組合せにおいて、含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)の使用量は、含フッ素アルケン(I)1モルに対して、0.01〜10モル程度とすることが好ましく、0.1〜1モル程度とすることがより好ましい。水素化芳香族化合物の使用量は、含フッ素アルケン(I)1モルに対して、0.1〜100モル程度とすることが好ましく、1〜10モル程度とすることがより好ましい。
【0030】
上記(iii)の組合せにおいて用いる原料の内で、カルボン酸化合物としては、炭素数1〜6程度の脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸などが好ましく、いずれも一塩基酸又は二塩基酸を用いることができる。カルボン酸化合物の具体例としては、脂肪族カルボン酸として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、アジピン酸等を挙げることができ、芳香族カルボン酸として、安息香酸、フタル酸等を挙げることができる。これらのカルボン酸化合物は一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0031】
上記(iii)の組合せでは、含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)の使用量は、含フッ素アルケン(I)1モルに対して、0.01〜10モル程度とすることが好ましく、0.1〜1モル程度とすることがより好ましい。カルボン酸化合物の使用量は、含フッ素アルケン(I)1モルに対して、0.1〜100モル程度とすることが好ましく、1〜10モル程度とすることがより好ましい。
【0032】
本発明反応における、含フッ素アルケン(I)、含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)及び水素供与剤との反応は、触媒の存在下又は非存在下に行うことができる。具体的には、反応系中でハロゲン化水素を発生し得る試薬として、上記(i)の含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)と水素の組合せを用いる場合には、触媒の存在下に反応を行うことが必要である。上記(ii)の含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)と水素化芳香族化合物の組合せと、(iii)の含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)とカルボン酸化合物の組合せについては、触媒の非存在下に反応を行うことも可能であるが、触媒の存在下に反応を行うことによって、収率を向上させることができる。
【0033】
触媒としては、活性炭、金属硫酸塩、金属、ルイス酸、芳香族化合物などを用いることができる。これらの触媒は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0034】
活性炭としては、特に限定はなく、入手容易な公知の活性炭を用いることができる。
【0035】
金属硫酸塩の具体例としては、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム等を挙げることができ、これらを一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0036】
金属としては、銅、白金、亜鉛、パラジウム、スズ、チタン、ジルコニウム、ガリウム、コバルト、ニッケル、鉄等を挙げることができ、これらを一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0037】
ルイス酸としては、ハロゲン化ホウ素、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化スズ、ハロゲン化チタン、ハロゲン化亜鉛、ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化ガリウム、ハロゲン化砒素、ハロゲン化鉄、ハロゲン化水銀、ハロゲン化ジルコニウム等を用いることができる。これらの化合物において、ハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素等を例示できる。これらのルイス酸は一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0038】
芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、ナフタレン、1,2−ジヒドロナフタレン、1,4−ジヒドロナフタレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタフレン、フェナントレン、アントラセン、ピレン、ナフタセン、ベンズアントラセン、ベンズピレンなどを用いることができ、これらを一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0039】
触媒の使用量については、活性炭、金属硫酸塩又は芳香族化合物を用いる場合には、含フッ素アルケン(I)1モルに対して、0.1〜10モル程度とすることが好ましい。また、触媒として、ルイス酸を用いる場合には、含フッ素アルケン1モルに対して0.01〜1モル程度とすることが好ましい。
【0040】
また、活性炭と金属硫酸塩は併用することができ、両者を併用することによって、反応性を向上させ、収率を上げることが可能となる。両者を併用する場合には、その割合は、活性炭1重量部に対して金属硫酸塩0.01〜10重量部程度とすることが好ましい。この場合には、反応に先立ち、減圧下(例えば、0〜1×105Pa程度)で、例えば、100〜300℃程度に加熱して触媒を活性化することが好ましい。
【0041】
含フッ素アルケン(I)と、含フッ素アルキルハロゲン化物(II)又は(II’)及び水素供与剤との反応では、反応温度を50〜400℃程度とすることが好ましく、100〜300℃程度とすることがより好ましい。反応時間は、通常、1〜100時間程度とすればよい。
【0042】
上記反応は、反応系内を不活性気体(N2、Ar、CO2等)で置換し、0〜5×104Pa程度に減圧した後、反応を行うことが好ましい。
【0043】
具体的な反応方法については、特に限定的ではないが、例えば、オートクレーブ等の圧力容器に原料、及び必要に応じて触媒を仕込み、窒素等の不活性気体で容器内を置換し、その後、減圧し、反応温度まで昇温して、同温下で所定の時間撹拌すればよい。
【0044】
本発明の製造方法によって得られる含フッ素アルキルエチルハロゲン化物(III)及び/又は(III’)、並びに含フッ素アルカン(IV)又は(IV’)は、抽出、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの公知の方法で精製することができる。
【0045】
上記した方法によって得られた含フッ素アルキルエチルハロゲン化物(III)及び/又は(III’)は、一般式(VI):
Rf 1−CH2CH2OCOCR=CH2 (VI)
(式中、Rf 1は、炭素数が1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキル基又は炭素数が1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のポリフルオロアルキル基を示し、RはH又はCH3を示す)
で表される含フッ素エステルの製造原料として有効に利用できる。
【0046】
含フッ素アルキルエチルハロゲン化物から、一般式(VI)の含フッ素エステルを得るには、含フッ素アルキルエチルハロゲン化物(III)及び/又は(III’)と、一般式(V):
CH2=CHRCOOM (V)
(式中、RはH又はCH3であり、Mはアルカリ金属である。)
で表されるカルボン酸塩とを反応させればよい。この反応は、特公昭39−18112号公報などに記載されている公知の反応条件に従えばよく、例えば、常圧下、アルコール溶媒(例えば、t−ブタノール)中で含フッ素アルキルエチルハロゲン化物(III)及び/又は(III’)とカルボン酸塩(V)を混合し、通常、100〜300℃程度で1〜50時間程度加熱撹拌すればよい。この様にして得られた反応混合物を精製することにより、含フッ素エステル(VI)を得ることができる。
【0047】
上記一般式(V)において、Mで示されるアルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。中でも、反応性の点からカリウムが好ましい。
【0048】
本発明の方法を用いることにより、含フッ素アルケン(I)から含フッ素エステル(VI)を効率的にしかも選択性良く製造することができる。
【0049】
尚、含フッ素アルキルエチルハロゲン化物(III)及び/又は(III’)と、一般式 (V)で表されるカルボン酸塩とを反応させて、一般式(VI)で表される含フッ素エステルを製造する方法において、副生する一般式(I)の含フッ素アルケンを、上記した本発明方法に従って含フッ素アルキルエチルハロゲン化物(III)及び/又は(III’)に変換し、これを上記した一般式(VI)の含フッ素エステルの製造工程に原料としてリサイクルすることも可能である。この場合には、該含フッ素エステルの製造時に多量に副生する含フッ素アルケン(I)を有効に利用することが可能となり、一般式(VI)の含フッ素エステルの製造効率を大きく向上させることができる。
【0050】
本発明反応で得られる含フッ素アルカン(IV)又は(IV’)は、溶融加工可能な結晶性含フッ素樹脂の球晶微小化剤として用いることが可能である。これによれば、溶融加工可能な結晶性含フッ素樹脂の球晶を微少化し、溶融成形して得られる成形品の表面を高度に平滑化でき、パーティクルなどの発生の低減を達成しうる。また、成形品の透明性・透視性を向上や、耐ストレスクラック性の向上を実現することができる。
【0051】
結晶性含フッ素樹脂の球晶微小化剤として用いうる含フッ素アルカン(IV)又は(IV’)としては、Rf 2が炭素数1〜50の直鎖状又は分岐鎖状のパーフルオロアルキレン基又は炭素数1〜50の直鎖状又は分岐鎖状のポリフルオロアルキレン基であることが好ましく、より好ましくは炭素数6〜50のパーフルオロアルキレン基又は炭素数6〜50のポリフルオロアルキレン基である。特に好ましい含フッ素アルカンとしては、CF3(CF2)nH (nは5〜49の整数)、H(CF2)mH (mは6〜50の整数) である。
【0052】
更に、球晶微小化剤として用いうる含フッ素アルカンの特性としては、250〜330℃程度の結晶化温度、融点を有しているものが好ましい。
【0053】
本発明はまた、含フッ素アルカン(IV)又は(IV’)からなる球晶微小化剤を、溶融加工可能な結晶性含フッ素樹脂に配合してなる結晶性含フッ素樹脂組成物に関する。
【0054】
溶融加工可能な結晶性含フッ素樹脂としては、示差走査型熱量計(DSC)で測定した場合、融解ピーク温度(Tm)および結晶化ピーク温度(Tc)を有する含フッ素樹脂であり、結晶化時に粗大な球晶を生成するものである。具体的には結晶性のテトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、ビニリデンフルオライド系重合体(PVdF)、クロロトリフルオロエチレン系重合体(PCTFE)などがあげられる。特にPFAに球晶微小化効果が顕著に生ずる。
【0055】
溶融加工可能な結晶性PFAとしては、テトラフルオロエチレン繰返し単位90〜99重量%程度とパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)繰返し単位10〜1重量程度のものが、耐熱性、耐薬品性の点から好ましい。10重量%よりも多いと融点(Tm、Tc)が低くなっていき耐熱性に劣り、一方、1重量%よりも少ないと溶融加工性のない、いわゆる変性PTFEとなる。好ましい溶融加工可能な結晶性PFAとしてはメルトフローレート(372℃±1℃、荷重5kg)が0.5〜500g/10分、特に0.5〜50g/10分のものである。また、PAVEとしては前記のごとくパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)、パーフルオロ(イソブチルビニルエーテル)などがあげられ、特にPPVEが機械的性質に優れる点から好ましい。
【0056】
含フッ素アルカン(IV)又は(IV’)からなる球晶微小化剤の配合量は、結晶性含フッ素樹脂100部に対して0.01〜50部とするのが好ましい。本発明において球晶微小化剤の配合量を増やすと球晶径は小さくなる傾向があるが、20部を超えても球晶径はほとんど変化しない。50部を超えると得られる結晶性含フッ素樹脂組成物の硬度や機械的性質が悪化していく。したがって、上限は50部、特に20部、さらに10部とするのが好ましい。また、下限は球晶の微小化効果が得られる0.01部、好ましくは0.025部である。
【0057】
成形品の表面平滑化を主目的とする場合、樹脂組成物には基本的に他の添加剤を配合しない方がよいが、半導体製造の分野以外の用途では補強や帯電性の低下などの目的でカーボンブラック、酸化チタン、ガラス繊維などを配合してもよい。
【0058】
本発明の結晶性含フッ素樹脂組成物の調製は、球晶微小化剤と結晶性含フッ素樹脂とを溶融混練してペレット化する方法、球晶微小化剤のペレットまたは粉末と結晶性含フッ素樹脂のペレットまたは粉末をドライブレンドする方法、結晶性含フッ素樹脂の水性分散液と球晶微小化剤の粉末または水性分散液を混合後乾燥する湿式ブレンド法などの公知の方法のほか、球晶微小化剤の微粒子を結晶性含フッ素樹脂の重合系に共存させておいて重合を開始して球晶微小化剤を含む結晶性含フッ素樹脂を得ることもできる。これらのうち均一な組成物が経済的に得られることから、球晶微小化剤と結晶性含フッ素樹脂とを溶融混練する方法、また湿式ブレンド法が好ましい。
【0059】
含フッ素アルカン(IV)又は(IV’)からなる球晶微小化剤は結晶性含フッ素樹脂への分散性に優れている。球晶微小化剤を水性分散液の形で使用する場合は0.05〜1μmの平均粒径の微粒子が好ましく、粉末の形で使用する場合は数ミクロン〜数十ミクロンの平均粒径のものが好ましい。
【0060】
本発明の結晶性含フッ素樹脂組成物は溶融加工が可能であり、溶融押出成形、射出成形、加熱圧縮成形などの各種溶融成形法が適用できる。こうした溶融成形においては、一旦溶融した結晶性含フッ素樹脂が再結晶する際に球晶を生じるが、含フッ素アルカン(IV)又は(IV’)からなる球晶微小化剤を配合しておくことにより、再結晶時に発生する球晶を微小化できる。たとえば結晶性PFAを徐冷した場合、球晶微小化剤を配合しないときの球晶径は平均で約30〜60μmであるが、含フッ素アルカン(IV)又は(IV’)からなる球晶微小化剤を配合することにより平均20μm以下、特に10μm以下にすることができる。
【0061】
また、本発明は結晶性含フッ素樹脂組成物を溶融成形して得られる成形品に関する。本発明の成形品は球晶の平均径が5μm以下のものであり、平滑な表面を有している。特に透視性に劣る含フッ素樹脂(PFA、PVdFなど)をマトリックス樹脂として用いる場合、透視性が改善されると共に透明性も向上する。したがって、内部の観察の窓用材料として有用である。
【0062】
また、含フッ素アルカン(IV)又は(IV’)からなる球晶微小化剤を用いる場合、結晶性セグメントがアンカー作用を果たすので、球晶微小化剤の脱落が少なく、汚染の原因となるパーティクルの発生を抑制できる。
【0063】
本発明の成形品は成形法などにより各種の形状をとることができる。たとえばチューブ状、フィルム状、シート状、板状のほか容器や各種目的に応じた部品の形状に成形することができる。このような本発明の成形品は、含フッ素樹脂の耐熱性、耐薬品性に加え、表面が平滑であるため、特に汚染を嫌う半導体装置の製造用の各種部品、配管、容器として好適に使用できる。
【0064】
本発明反応で得られる含フッ素アルカン(IV)又は(IV’)は、また、熱分解して含フッ素モノマーを製造する原料として用いることも可能である。熱分解は、公知の方法を用いて実施することができる。例えば、内温を500〜800℃程度に設定したロータリーキルンに、含フッ素アルカン、石英砂、水蒸気を加え熱分解する条件が挙げられる。含フッ素アルカンの熱分解反応で得られる含フッ素モノマーとしては、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ビニリデンジフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン及びオクタフルオロシクロブタン等が挙げられる。これらの含フッ素モノマーは、重合体化合物合成の原料として利用される。
【0065】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、下記の様な顕著な効果が奏される。
【0066】
(1)ヨウ化水素ガスを一旦製造し、単離精製するという煩雑な工程を経ることなく、しかも取り扱いの難しいヨウ化水素ガスを用いること無く、一工程で含フッ素アルキルエチルハロゲン化物(III)及び/又は(III’)を製造できる。
【0067】
(2)固体触媒を用いること無く反応を進行させることも可能であり、この場合には、固体触媒を濾過などの方法で分離する必要が無く、効率よく含フッ素アルキルエチルハロゲン化物(III)及び/又は(III’)を製造できる。
【0068】
(3)含フッ素アルケンを効率的に含フッ素アルキルエチルハロゲン化物(III)及び/又は(III’)に変換でき、利用価値の低かった含フッ素アルケンを再利用して含フッ素エステルに導くことができる。これにより含フッ素エステルの生産効率が向上し、ひいては資源の有効利用を図ることができる。
【0069】
(4)本発明方法で得られる含フッ素アルカン(IV)又は(IV’)は、結晶性含フッ素樹脂の球晶微少化剤として好適に用いることができ、また、該含フッ素アルカンは、それを熱分解して得られる含フッ素モノマーの原料として用いることも可能である。
【0070】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0071】
実施例1
200 ml SUSオートクレーブに含フッ素アルケン (C8F17CH=CH2) 40.5 g (91 mmol)、C8F17I 49.6 g (91 mmol)、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン (C10H12) 57.6 g (436 mmol) を入れ、窒素置換、真空引きした後、400 rpmで撹拌しながら170 ℃まで昇温して4 hr反応を行った。
反応後、得られた液をガスクロマトグラフィー (GC) で分析した。
【0072】
GC条件
キャリアガス : ヘリウム、50 ml/min
注入口 : 250 ℃
検出器 : 250 ℃、TCD 100mA
カラム : 3m SE−30
カラム昇温条件 : 50 ℃、5 min → 10 ℃/minで昇温 → 250 ℃、5 min
転化率3.9 %、選択率96.5 %でC8F17CH2CH2Iが、転化率14.8 %、選択率74.3 %でC8F17Hが得られたことが分かった。
【0073】
実施例2
実施例1と同様の方法で合成したC8F17H 25 gを溶融加工可能な結晶性PFA [テトラフルオロエチレン (TFE) −パーフルオロプロピルビニルエーテル (PPVE) 共重合体、PPVE含有量4.6 %、平均球晶径30μm、MFR 1.2 g/10分] 10 kgに溶融混練して組成物を調製した。溶融混練は、東洋精機(株)製のローラーミキサーR−60H (ミキサー容量約60 cc) に各成分を投入し、350 ℃にて回転数15 rpmで10分間溶融混練して行った。
【0074】
得られた溶融混練物について平均球晶径を調べたところ、15μmであった。
【0075】
実施例3
C8F17H 100 gを実施例2で使用したPFA 10 kgに配合し、スクリュー押出機 (池貝(株)製のPCM46) により360 ℃にて溶融押出して樹脂組成物を得た。この押出物の平均球晶径は溶融混練して組成物を調製した。溶融混練は、東洋精機(株)製のローラーミキサーR−60H (ミキサー容量約60 cc) に各成分を投入し、350 ℃にて回転数15 rpmで10分間溶融混練して行った。
【0076】
得られた溶融混練物について平均球晶径を調べたところ、10μmであった。
【0077】
この樹脂組成物を用い次の条件で外径10.0 mm、肉厚1.0 mmのチューブを押出成形した。
【0078】
押出成形機 :田辺プラスチックス機械(株)製
シリンダー内径 :30 mm
ダイ内径 :20 mm
マンドレル外径 :13 mm
設定温度 :シリンダー後部 330 ℃
シリンダー中部 :365 ℃
シリンダー前部 :380 ℃
アダプター :380 ℃
ダイ :390 ℃
スクリュー回転数 :10 rpm
サイジングダイ内径:10.0 mm
引取り速度 :0.4〜0.5 m/分
得られたチューブについて平均球晶径を調べたところ、3μmであった。
【0079】
実施例4
内温を600 ℃に設定したロータリーキルンに実施例1と同様の方法で合成したC8F17Hを300 g/hr、石英砂 (3〜5 mm程度) を300 g/hr、水蒸気を600 g/hrで供給した。出口ガスをGCにて分析したところ、テトラフルオロエチレン50 %、ヘキサフルオロプロピレン20 %、オクタフルオロシクロブタン20 %、その他10 %が得られた。
Claims (25)
- 一般式(I):
Rf 1−CH=CH2 (I)
(式中、Rf 1は、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキル基又は炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のポリフルオロアルキル基を示す)
で表される含フッ素アルケンと、一般式(II):
Y−Rf 2−X1 (II)
(式中、Rf 2は、炭素数1〜50の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキレン基又は炭素数1〜50の直鎖若しくは分岐鎖のポリフルオロアルキレン基を示し、YはH又はFを示し、X1はCl、Br又はIを示す)
で表される含フッ素アルキルハロゲン化物と、水素供与剤とを、触媒の存在下又は非存在下に反応させることを特徴とする、一般式(III):
Rf 1−CH2CH2−X1 (III)
(式中、Rf 1及びX1は前記に定義される通り)
で表される含フッ素アルキルエチルハロゲン化物と、一般式(IV):
Y−Rf 2−H (IV)
(式中、Rf 2及びYは前記に定義される通り)
で表される含フッ素アルカンを同時に製造する方法。 - 一般式(I):
Rf 1−CH=CH2 (I)
(式中、Rf 1は、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキル基又は炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のポリフルオロアルキル基を示す)
で表される含フッ素アルケンと、一般式(II’):
X1−Rf 2−X2 (II’)
(式中、Rf 2は、炭素数1〜50の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキレン基又は炭素数1〜50の直鎖若しくは分岐鎖のポリフルオロアルキレン基を示し、X1及びX2は、同一又は異なってCl、Br又はIを示す)
で表される含フッ素アルキルハロゲン化物と、水素供与剤とを、触媒の存在下又は非存在下に反応させることを特徴とする、一般式(III):
Rf 1−CH2CH2−X1 (III)
(式中、Rf 1及びX1は前記に定義される通り)
で表される含フッ素アルキルエチルハロゲン化物、及び/又は一般式(III’):
Rf 1−CH2CH2−X2 (III’)
(式中、Rf 1及びX2は前記に定義される通り)
で表される含フッ素アルキルエチルハロゲン化物と、一般式(IV’):
H−Rf 2−H (IV’)
(式中、Rf 2は前記に定義される通り)
で表される含フッ素アルカンを同時に製造する方法。 - 水素供与剤が、水素、水素化芳香族化合物、及びカルボン酸化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1又は2に記載の方法。
- 水素化芳香族化合物が、部分水素化された多環構造を持つ芳香族化合物である請求項3に記載の方法。
- カルボン酸化合物が、炭素数1〜6の脂肪族一塩基酸、炭素数1〜6の脂肪族二塩基酸、芳香族一塩基酸及び芳香族二塩基酸からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項3に記載の方法。
- 触媒が、活性炭、金属硫酸塩、金属、ルイス酸及び芳香族化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
- 金属硫酸塩が、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム及び硫酸アルミニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、金属が、銅、白金、亜鉛、パラジウム、スズ、チタン、ジルコニウム、ガリウム、コバルト、ニッケル及び鉄からなる群より選ばれた少なくとも1種であり、ルイス酸が、ハロゲン化ホウ素、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化スズ、ハロゲン化チタン、ハロゲン化亜鉛、ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化ガリウム、ハロゲン化砒素、ハロゲン化鉄、ハロゲン化水銀及びハロゲン化ジルコニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、芳香族化合物が、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、ナフタレン、1,2−ジヒドロナフタレン、1,4−ジヒドロナフタレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ピレン、ナフタセン、ベンズアントラセン及びベンズピレンからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項6に記載の方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の方法によって一般式(III)及び/又は(III’)で表される含フッ素アルキルエチルハロゲン化物を得た後、これを一般式 (V):
CH2=CRCOOM (V)
(式中、Mはアルカリ金属を示し、RはH又はCH3を示す)
で表されるカルボン酸塩と反応させることを特徴とする、一般式(VI):
Rf 1−CH2CH2−OCOCR=CH2 (VI)
(式中、Rf 1及びRは前記に同じ)
で表される含フッ素エステルの製造方法。 - 一般式(III):
Rf 1−CH2CH2−X1 (III)
(式中、Rf 1は、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキル基又は炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のポリフルオロアルキル基を示し、X1はCl、Br又はIを示す)
で表される含フッ素アルキルエチルハロゲン化物と、一般式(V):
CH2=CRCOOM (V)
(式中、Mはアルカリ金属を示し、RはH又はCH3を示す)
で表されるカルボン酸塩と反応させて、一般式(VI):
Rf 1−CH2CH2−OCOCR=CH2 (VI)
(式中、Rf 1及びRは前記に同じ)
で表される含フッ素エステルを製造する方法において、副生する一般式(I):
Rf 1−CH=CH2 (I)
(式中、Rf 1は前記に同じ)
で表される含フッ素アルケンを、請求項1〜7のいずれかの方法によって、一般式 (III)及び/又は(III’)の含フッ素アルキルエチルハロゲン化物に変換し、一般式(VI)の含フッ素エステルの製造工程における原料としてリサイクルすることを特徴とする、一般式(VI)で表される含フッ素エステルの製造方法。 - 請求項1〜7のいずれかに記載の方法によって得られる一般式(IV)又は(IV’)で表される含フッ素アルカンを、溶融加工可能な結晶性含フッ素樹脂の球晶微小化剤として用いることを特徴とする、結晶性含フッ素樹脂組成物の製造方法。
- 前記結晶性含フッ素樹脂が、結晶性テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、ビニリデンフルオライド系重合体、及びクロロトリフルオロエチレン系重合体からなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項10に記載の方法。
- 前記結晶性含フッ素樹脂が、結晶性テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体である請求項10に記載の方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の方法によって得られる一般式(IV)又は(IV’)で表される含フッ素アルカンが、炭素数6〜50の直鎖又は分岐鎖の含フッ素アルカンである請求項10に記載の方法。
- 前記結晶性テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体が、テトラフルオロエチレン繰返し単位90〜99重量%とパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)繰返し単位10〜1重量%からなる結晶性共重合体である請求項12に記載の方法。
- 請求項10〜14のいずれかに記載の方法によって製造される結晶性含フッ素樹脂組成物。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の方法によって得られる一般式(IV)又は(IV’)で表される含フッ素アルカンと溶融加工可能な結晶性含フッ素樹脂とを含有する結晶性含フッ素樹脂組成物。
- 前記結晶性含フッ素樹脂100重量部に対し含フッ素アルカンを0.01〜50重量部含んでなる請求項16に記載の結晶性含フッ素樹脂組成物。
- 請求項15〜17のいずれかに記載の結晶性含フッ素樹脂組成物を溶融成形して得られる成形品。
- 球晶の平均径が5μm以下である請求項18に記載の成形品。
- 請求項15〜17のいずれかに記載の結晶性含フッ素樹脂組成物を溶融成形して得られるチューブ。
- 請求項15〜17のいずれかに記載の結晶性含フッ素樹脂組成物を溶融成形して得られる容器。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の方法によって得られた一般式(IV)又は(IV’)で表される含フッ素アルカンを球晶微小化剤として使用することを特徴とする、溶融加工可能な結晶性含フッ素樹脂の球晶微小化方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の方法によって得られた一般式(IV)又は(IV’)で表される含フッ素アルカンの、溶融加工可能な結晶性含フッ素樹脂用の球晶微小化剤としての使用。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の方法によって得られた一般式 (IV)又は(IV’)で表される含フッ素アルカンを、熱分解して含フッ素モノマーを製造する方法。
- 前記含フッ素モノマーが、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ビニリデンジフルオライド、及びヘキサフルオロプロピレン及びオクタフルオロシクロブタンからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項24に記載の方法。
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