JP2004250484A - 接着剤用ポリエステル樹脂、接着剤、および積層体 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリエステル接着剤がもつ種々の問題を解消し、特に耐湿熱性、金属接着性耐ブロッキング性が優れ、しかも積層体を生産する際の生産性が向上した接着剤用ポリエステル樹脂を提供する。
【解決手段】ジカルボン酸成分の50〜100モル%が芳香族ジカルボン酸であり、グリコール成分のうち1,2−プロピレングリコールが50〜90モル%、ポリテトラメチレンオキシドグリコールが1〜15モル%であり、極限粘度が0.4以上である接着剤用ポリエステル樹脂。また、これを含有する接着剤、およびこの接着剤を用いた、PETフィルムまたはシート積層体と金属板との積層体。
【選択図】なし
【解決手段】ジカルボン酸成分の50〜100モル%が芳香族ジカルボン酸であり、グリコール成分のうち1,2−プロピレングリコールが50〜90モル%、ポリテトラメチレンオキシドグリコールが1〜15モル%であり、極限粘度が0.4以上である接着剤用ポリエステル樹脂。また、これを含有する接着剤、およびこの接着剤を用いた、PETフィルムまたはシート積層体と金属板との積層体。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は接着剤に好適なポリエステル樹脂に関するものである。さらに詳しくは、耐熱性、耐湿性が要求される電子機器関連の分野で特に有用であり、接着性が良好で、かつ積層体を製造する際の生産性が向上した接着剤用ポリエステル樹脂に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)に代表されるポリエステル樹脂は、その優れた機械的強度、熱安定性、疎水性、耐薬品性を生かし、繊維、フィルム、成形材料等として各種分野で広く利用されている。また、その構成成分であるジカルボン酸及びグリコール成分に他の成分を導入することにより種々の特徴を有する共重合ポリエステル樹脂を得ることが可能であり、接着剤、コーティング剤、インキバインダー、塗料等に広く使用されている。このような共重合ポリエステル樹脂は一般的にポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル樹脂等のプラスチック類、あるいはアルミニウム、銅等の金属箔に優れた接着性を有することが知られている。
【0003】
これらの特性を利用し、ポリエステルフィルム2枚でライン状の金属導体を被覆した構造のフラットケーブルの接着剤用途でも、共重合ポリエステル樹脂が使用されている。そして、このようなフラットケーブルは近年の高密度化されたAV機器やコンピュータ機器の配線あるいは自動車用の配線材として広く利用されるようになり、その需要は急速に伸びている。
【0004】
しかしながら、従来のポリエステル接着剤(例えば特許文献1参照)では、熱に対する感受性が十分でないため接着フィルムを熱ラミネートする工程において、ラインスピードを上げることが困難であった。このような状況から、結晶性の共重合ポリエステルを使用する方法が提案されている(例えば特許文献2、特許文献3参照。)。結晶性の樹脂は融点以上に加熱するとその粘性は急激に低下するため、熱感受性に優れている。しかし、このような樹脂は汎用の有機溶剤に対する溶解性が低く、接着フィルムの生産効率が低下するだけでなく、熱感受性が優れているが故に熱ラミネートの加工温度条件が非常に狭くなり、工程の温度管理を厳しくするために設備改造が必要となる等の問題があった。
【0005】
また、自動車用フラットケーブルの接着剤として使用される場合には、高温雰囲気化での接着性、湿熱環境下での接着性の保持、導体金属との接着性が必要となるが、これらの特性のバランスを取ることは難しかった。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−207126号公報
【特許文献2】
特開平6−320692号公報
【特許文献3】
特開平6−184515号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリエステル接着剤がもつ種々の問題を解消し、特に耐湿性、耐熱性、耐ブロッキング性、金属接着性が優れ、しかも積層体を製造するときの生産性が向上したポリエステル樹脂を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記問題を解決するために種々検討した結果、特定のグリコール成分を共重合するとともに、軟化温度を制御することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、
(1)ジカルボン酸成分の50〜100モル%が芳香族ジカルボン酸であり、グリコール成分のうち1,2−プロピレングリコールが50〜90モル%、ポリテトラメチレンオキシドグリコールが1〜15モル%であり、極限粘度が0.4以上であることを特徴とする接着剤用ポリエステル樹脂。
(2)前記(1)のポリエステル樹脂を含有することを特徴とする接着剤。
(3)(A)ポリエチレンテレフタレートのフィルムまたはシートの層、(B)前記(2)の接着剤の層、(C)金属板の層がこの順に積層されてなる積層体。
(4)前記(3)の積層体からなるフラットケーブル。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明のポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分として芳香族ジカルボン酸成分、グリコール成分として1,2−プロピレングリコールと、ポリテトラメチレンオキシドグリコールを含有するものである。
【0011】
ジカルボン酸成分としては、耐熱性の点から芳香族ジカルボン酸がポリエステル樹脂を構成する全酸成分に対して50〜100モル%共重合されていることが必要であり、好ましくは70〜100モル%である。この芳香族ジカルボン酸の共重合量が50モル%に満たない場合には、ポリエステル樹脂のガラス転移温度と軟化温度が低下するため、高温雰囲気下の接着強力が低下するため好ましくない。このようなジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、フタル酸及びその無水物等が挙げられ、好ましくはテレフタル酸とイソフタル酸である。
【0012】
また、本発明のポリエステル樹脂には、グリコール成分として、1,2−プロピレングリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコールを共重合する必要がある。これらのグリコール成分の割合を適切に選択することで、軟化温度とガラス転移温度を所望とする温度に制御することができる。
【0013】
1,2−プロピレングリコールの共重合量はポリエステル樹脂を形成する全グリコール成分に対して50〜90モル%とする必要があり、好ましくは60〜85モル%である。1,2−プロピレングリコールの共重合量が50モル%に満たない場合にはポリエステル樹脂のガラス転移温度が低くなるだけでなく、軟化温度以上での温度に対する樹脂の粘性の変化率が小さくなりラミネート時の加工速度が低下するため好ましくない。また、1,2−プロピレングリコールの共重合量が90モル%を超える場合には、重縮合反応の反応性が低下し高分子量化が困難となるため好ましくない。
【0014】
また、ポリテトラメチレンオキシドグリコールの共重合量はポリエステル樹脂を形成する全グリコール成分に対して3〜15モル%である。ポリテトラメチレンオキシドグリコールの共重合量が3モル%に満たない場合には、接着性及び耐湿熱性の改良効果が乏しく好ましくない。また、15モル%を越える場合には、ガラス転移温度が低くなりすぎるため、高温下での接着強力が低下して好ましくない。また、ポリテトラメチレンオキシドグリコールとしては、分子量500以上のものが好ましく、分子量が1000〜3000のものがポリエステル樹脂との反応性、相溶性の点で特に好ましい。
【0015】
また、本発明の特性を損ねない範囲で、必要に応じて以下のような酸成分、グリコール成分を共重合しても良い。酸成分としてはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、エイコサン二酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸及びこれらの酸無水物等の多価カルボン酸、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン等の脂肪族ラクトン、4−オキシ安息香酸、4−(ヒドロキシエトキシ)安息香酸、5−ヒドロキシイソフタル酸等のオキシカルボン酸等が挙げられる。これら酸成分はアルキルエステル、酸塩化物等の誘導体を用いてもよく、単独、あるいは複合して使用することができる。
【0016】
1,2−プロピレングリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール以外のグリコール成分としては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族グリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、トリシクロデカンジメタノール、スピログリコール等の脂環族ジオール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールSのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等の多価アルコール等が挙げられる。これらから、1種以上選択して使用することができる。また、有機リン化合物などの反応性難燃剤を共重合しても良い。
【0017】
また、本発明のポリエステル樹脂は、極限粘度が0.40以上であることが必要であり、好ましくは0.6以上である。極限粘度が0.40に満たない場合には、接着力が低くなるため好ましくない。
【0018】
本発明のポリエステル樹脂は、軟化温度が60〜120℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは、70〜100℃である。軟化温度が60℃に満たない場合には、接着剤を塗布したフィルムがブロッキングしやすく、ブロッキング防止剤などを添加しても改良することが実質的にできなくなり好ましくない。一方、120℃を越える場合には、接着剤を塗布したフィルムを熱ラミネートするためには、軟化温度以上の温度に加熱する必要があるが、その際PETフィルムが収縮し寸法安定性が悪くなる、あるいは反りが発生するなどの問題が生じるため好ましくない。
【0019】
また、本発明のポリエステル樹脂は、ガラス転移温度が−30〜40℃の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、−20〜35℃である。ガラス転移温度が−30℃に満たない場合には、樹脂の取り扱いが難しく、接着剤としての性能、特に高温領域(50〜120℃)での接着強力が低下し好ましくない。一方、40℃を超える場合には、接着剤を塗布したフィルムを熱ラミネートする場合に、軟化し難いためラインスピードを上げられない等、生産性が低下するだけでなく、十分な接着強力が得られない。さらに、溶剤への溶解性も低下するため好ましくない。
【0020】
本発明のポリエステル樹脂を製造する方法は、特に制限されるものではなく、従来公知のポリエステル樹脂の製造方法によって製造することができる。例えば、前記のようなジカルボン酸成分、グリコール成分(それらのエステル形成性誘導体を含む)を原料とし、常法によって、150〜280℃の温度でエステル化又はエステル交換反応を行った後、重縮合触媒を添加し5hPa以下の減圧下、200〜300℃、好ましくは230〜280℃の温度で重縮合反応を行うことで調製することができる。さらに、目的、用途によっては重縮合反応により得られたポリマーに、酸成分及び/又はグリコール成分を添加して、220〜280℃の温度で解重合反応を行う方法で調製することもできる。
【0021】
また、本発明のポリエステル樹脂の製造には、公知の触媒を用いることができ、具体的には、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、スズ、チタン、アルミニウム、コバルト等の有機酸塩、酸化物、アルコキシド、アルキル化合物等が挙げられる。
【0022】
さらに、製造においては、トリフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、リン酸等の安定剤や、ヒンダードフェノール化合物、硫黄化合物、ホスファイト化合物、ヒンダードアミン化合物のような酸化防止剤、二酸化チタン等の艶消し剤等を、本発明の特性を損なわない範囲で添加してもよい。
【0023】
こうして得られた本発明のポリエステル樹脂は、優れた耐湿熱性、熱感受性を有し、金属板及びPETフィルム又はPETシートに対して良好な接着性を有するものであり、PETフィルム又はPETシートに対する接着剤として好適に用いられる。
【0024】
次に、本発明の接着剤について説明する。
本発明の接着剤は上記ポリエステル樹脂を含有したものである。
【0025】
本発明の接着剤は、単独で使用してもよいし、接着剤の耐熱性、耐湿熱性をさらに高める目的で、必要に応じてイソシアネート樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の硬化剤と併用してもよい。
【0026】
また、難燃性を付与するために以下のような難燃剤を添加してもよい。例えばハロゲン化フェニル、ハロゲン化ジフェニルエーテル、ハロゲン化芳香族ビスイミド化合物、ハロゲン化芳香族エポキシ化合物、ビスフェノールAの低分子量有機ハロゲン化合物、ハロゲン化ポリカーボネート、ハロゲン化ポリスチレン、ハロゲン化ベンジルアクリレート化合物等のハロゲン含有有機難燃剤、ここでハロゲンは一般にブロムであることが好ましい。さらに、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニル)フォスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニル)フォスフェート、有機フォスフィンオキサイド、赤燐等のリン系難燃剤、ポリリン酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、フォスファゼン、シクロフォスファゼン、トリアジン、メラミンシアヌレート、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、トリグアナミン、シアヌル酸トリアジニル塩、メラム、メレム、硫酸グアニルメラミン、硫酸メラム、硫酸メレム等の窒素系難燃剤、芳香族スルホンイミド金属塩などの金属塩系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化ジルコニウム、酸化スズ等の水和物金属系難燃剤、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、ピロアンチモン酸ソーダ等のアンチモン系難燃助剤、シリカ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化ビスマス、酸化スズ、酸化タングステン、硼酸亜鉛、メタ硼酸亜鉛、メタ硼酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫化亜鉛等の無機系難燃剤、硫化亜鉛等の金属硫化物、ポリアルキルシリコーン、ポリアリールシリコーン、シリコーンパウダー等のケイ素系難燃剤である。
【0027】
さらに、本発明の接着剤には必要に応じて、リン酸等の熱安定剤、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、チオエーテル化合物のような酸化防止剤、タルクやシリカ等の滑剤、酸化チタン等の顔料、充填剤、帯電防止剤、発泡剤等の従来公知の添加剤を含有させても差し支えない。
【0028】
また、本発明の接着剤は、有機溶剤の溶液として使用することが好ましい。このような有機溶剤としては、本発明のポリエステル樹脂を溶解させるものなら特に限定されるものではないが、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系の溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系の溶剤、酢酸エチル、イソホロン、γ−ブチロラクトン等のエステル系の溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系の溶剤、ジエチルエーテル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系の溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール系の溶剤、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ノナン等の脂肪族炭化水素系の溶剤、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素系の溶剤等が挙げられる。これらは単独で用いることもできるが、複数種混合して使用することもできる。
【0029】
有機溶剤に溶解させる場合の濃度としては、20質量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは25〜50質量%である。20質量%未満では、接着剤を塗布後に除去すべき有機溶剤が多いため、生産性が低下するため好ましくない。
【0030】
本発明の接着剤は、PETフィルム(またはPETシート)と金属板に特に良好な接着性を有するが、被着体に用いられる材料はこれに限定されず、種々のプラスチックに対する接着剤としても使用することができる。具体的には、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリブチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリスチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂等に対する接着剤として好適に用いられる。また、被着体の形状は、フィルム状、シート状、板状には限定されず、繊維状、円筒状、その他のいかなる形状になっていても構わない。
【0031】
次に、本発明の接着剤を用いた積層体と、その製造方法について説明する。
【0032】
PETフィルムとは、JIS Z−0108に記載されているように厚み0.25mm以下のものをいい、PETシートとは、厚み0.25mmを超えるものであり、その表面にコロナ処理を施したり、あるいは、易接着樹脂層を設ける等の易接着処理を施しても差し支えない。
【0033】
また、金属板としては、特に限定されないが、銅、鉄、アルミニウム、ブリキ等の板が好ましく、汎用に使用されている種々の金属合金板でも良い。また、これらのスズ、亜鉛などのメッキ品、あるいはリン酸亜鉛、クロメートなどの化成処理品であっても良い。
【0034】
本発明の積層体における接着剤の層の形成方法は、いかなる方法で行ってもよいが、有機溶剤の溶液とした上記の接着剤を、PETフィルムもしくはPETシートまたは金属板の層上に塗布し、次いで溶媒を除去することで、接着層を形成することができる。
【0035】
次に、PETフィルムまたはPETシートの層、接着剤の層及び金属板の層となるように配置し、ヒートシール、ロール接着、加熱圧着等の公知の方法によって積層体とする。
【0036】
この際、接着剤の層(B)を介して被着体同士を接着する際の被着体の予熱温度は、100〜220℃の範囲とすることが好ましく、150℃〜200℃の範囲とすることがより好ましい。予熱温度が100℃未満である場合には、圧力をいくら上昇させても接着強力が大きいものが得られない。一方、予熱温度が 220℃を超える場合には、被着体であるPETフィルム(またはPETシート)の層が変形したり、しわ等が発生するので好ましくない。また、接着する際の圧力は20kPa以上とすることが好ましく、50〜300kPaとすることがより好ましい。接着時の圧力が20kPa未満では、予熱温度を高くし、かつ圧着時間を長くしても接着強力が大きいものが得られない。さらに、接着時の圧着時間は0.2〜5秒であることが好ましい。圧着時間が0.2秒未満では、予熱温度を上昇させても接着強力が大きいものが得られない。一方、圧着時間が5秒を超えると、得られる積層体の接着強力には問題がないが、生産性に劣るので好ましくない。
【0037】
上記のように熱圧着によって積層体を得る場合には、後述する方法で算出される、130℃と150℃におけるポリエステル樹脂の溶融粘度の温度依存性(τ)を生産性の目安とすることができ、τが3000〜5000の範囲であれば、積層体を得る際に熱再活性しやすくなり、接着のラインスピードを上げることが可能となるため、生産性が向上する。τが3000に満たない場合には、加熱によりポリエステルの溶融粘度が下がり難く、積層体製造時のラインスピードが上がりにくく、一方、5000を越える場合には、積層体製造ラインの微妙な温度変化により溶融粘度が変化し、積層体の厚みがばらつきやすく、接着性が低下しやすくなる。本発明の接着剤用ポリエステル樹脂を用いることにより、溶融粘度の温度依存性τは3000〜5000とすることができ、積層体の生産を良好におこなうことができる。
【0038】
このようにして得られた積層体は、特にフラットケーブルとして、電気、電子分野、機械分野、食品分野、建築分野、自動車分野で好適に用いられる。
【0039】
【作用】
1,2−プロピレングリコールを共重合することで、エステル結合近傍の立体障害が大きくなり加水分解が抑制されるため、湿熱環境下での接着性低下が改善できるとともに、接着性、特に金属に対する接着性が向上する。さらに、ガラス転移温度が上昇するため、耐熱性が高くなる。また、熱に対する感受性が高くなり加熱により軟化し易くなるため、本発明のポリエステル樹脂を接着層に設けたフィルムを熱ラミネートする場合のラインスピードを上げることができ積層体の生産性が向上する。
また、ポリテトラメチレンオキシドグリコールを共重合することで、ポリエステル樹脂中のエステル基濃度が減少し耐湿熱性が向上する。また、柔軟性が向上するため常温での接着性が良好となるが、軟化温度が下がり難いので、高温下での接着強力も低下しにくい。
【0040】
【実施例】
次に、実施例をあげて本発明を具体的に記述する。
極限粘度([η])
ポリエステル樹脂をフェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒とし、20℃で測定した溶液粘度から求めた。
ポリエステル樹脂の組成
日本電子工業社製1H−NMRスペクトロメータJNM−LA400型を用いて行った。
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)
セイコー電子工業社製の示差走査熱量計SSC5200型を用いて、昇温速度10℃/分で測定した。
ポリエステル樹脂の軟化温度(Ts)
柳本製作所社製の自動軟化点測定装置AMP−2型を用いて、昇温速度10℃/分で測定した。
【0041】
極限粘度保持率
ポリエステル樹脂を60℃、95%RHの恒温恒湿槽中に入れ128時間処理し、その前後の極限粘度を上記の方法で測定し、次式により求めた。極限粘度保持率は95%以上を合格とした。
[η]保持率(%) =湿熱処理後の[η]/湿熱処理前の[η] × 100
溶融粘度の温度依存性(τ)
ポリエステル樹脂をBROOKFIELD社製RVTD型を用いて、130℃、150℃での溶融粘度η130 ℃、η150 ℃(dPa・s)をそれぞれ測定した。次いで、この結果を基に、溶融粘度の温度依存性τを次式により求めた。〔なお、この式によって算出されるτは、温度t(℃)における溶融粘度の常用対数logηtを、絶対温度T(K)の逆数T−1に対してプロットしたときの、2点間を結ぶ直線の傾きを示すものである。〕
【数1】
【0042】
塗布フィルムの耐ブロッキング性
ポリエステル樹脂を、トルエンとメチルエチルケトンとの混合溶媒(体積比1/1)に30質量%の濃度となるように溶解し、ポリエステル樹脂の溶液を得た。その溶液にポリエステル樹脂と同質量の酸化チタンを添加し、接着剤溶液を作製した。その接着剤溶液を、25μmのPETフィルム上に塗布後、乾燥機に入れ、80℃で2分間、引き続き150℃で3分間乾燥して溶媒を除去し、30μm厚の接着剤層を形成した。次いで、接着剤層を形成したPETフィルム上に接着剤を塗布していない25μmのPETフィルムを配置し、温度120℃、圧力0.5MPa、圧着時間1秒でシーラーで圧着し積層フィルムを得た。
オリエンテック社製テンシロンRTC−1210型を用いて室温の雰囲気下で、引張速度50mm/分でサンプル幅50mmの積層フィルムの接着強力をそれぞれ測定した。接着強力が0.5N/cm未満を合格とした。
【0043】
積層体の接着強力
オリエンテック社製テンシロンRTC−1210型を用いて20、60℃の雰囲気下、及び積層体を60℃、95%RHの恒温恒湿槽中に入れ128時間処理した後20℃の雰囲気下で、引張速度50mm/分でサンプル幅10mmの積層体の接着強力をそれぞれ測定した。接着強力が20N/cm以上を合格とした。
【0044】
実施例1
テレフタル酸16.0kg(96.5モル部)、イソフタル酸16.0kg(96.5モル部)、1,2−プロピレングリコール16.6kg(218.1モル部)、ポリテトラメチレンオキシドグリコール(分子量1000)11.6kg(11.6モル部)、エチレングリコール1.9kg(30.9モル部)をエステル化反応槽に仕込み、圧力0.1MPaG、温度230℃で4時間エステル化反応を行った。
得られたエステル化物を重縮合反応槽に移送した後、重縮合触媒としてテトラブチルチタネートをポリエステル樹脂を構成する酸成分1モルに対して4×10−4モル添加した。次いで、60分間で反応系内を最終的に0.4hPaとなるまで徐々に減圧し、230℃で5時間重縮合反応を行いポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂の極限粘度は0.84、Tgは5℃、Tsは86℃、η130 ℃は690×104dPa・s、η150 ℃は270×104dPa・sであった。極限粘度保持率は99%であり、耐ブロッキング性を測定したところ0.09N/5cmであった。
【0045】
次いで、この共重合ポリエステル樹脂を、トルエンとメチルエチルケトンとの混合溶媒(体積比1/1)に30質量%の濃度となるように溶解して、溶液とした。この溶液を25μmのPETフィルム上に塗布後、乾燥機に入れ、80℃で2分間、引き続き150℃で3分間乾燥して溶媒を除去し、10μm厚の接着剤層を形成した。次いで、銅板を接着剤層と接するように重ね合わせ、150℃に加熱した2本の熱ローラーの間を2m/秒の速度で通過させることにより、PETフィルム/ポリエステル接着剤層/金属板からなる積層体を得た。この積層体の接着強力は20℃で25N/cm、60℃で28N/cm、60℃95%RHで128時間処理した後には25N/cmであった。同様にしてアルミ板との積層体を作成し、接着試験を行った。
【0046】
実施例2〜3及び、比較例1〜4
得られるポリエステル樹脂が表1に示す組成となるように、原料の仕込量を変えた以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を得て評価をおこなった。また、実施例と同様にして積層体を作成し、接着強力を測定した。
【0047】
実施例1〜3及び比較例1〜4のポリエステル樹脂の組成と特性値、及び各種試験結果をまとめて示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表中のポリエステル樹脂組成の略号はそれぞれ、TPA:テレフタル酸、IPA:イソフタル酸、SEA:セバシン酸、EG:エチレングリコール、PG:1,2−プロピレングリコール、PTMG1000:ポリテトラメチレンオキシドグリコール(分子量1000)、NPG:ネオペンチルグリコールを示す。
【0050】
表1から明らかなように、実施例1〜3のポリエステル樹脂は耐湿熱性、熱感受性及び耐ブロッキング性が良好なものであり、これらのポリエステル樹脂を使用した積層体の接着性、耐熱性及び耐湿熱性は良好なものだった。
これに対して、比較例では次のような問題があった。
比較例1では、1,2−プロピレングリコールの共重合量が多いため、重縮合反応が進み難く、十分な分子量のポリエステル樹脂が得られなかった。また、積層体としたときには被着材との密着性が低くなった。
比較例2では、1,2−プロピレングリコールが共重合量されておらず、かつ、ポリテトラメチレンオキシドグリコールの共重合量が多いためにガラス転移温度、軟化温度が低く、耐ブロッキング性が悪かった。また、溶融粘度の温度依存性が低いため、熱ローラーでの加熱では十分に接着できなかった。
比較例3は、芳香族ジカルボン酸の共重合量が少ないため、ガラス転移温度、軟化温度とも低く、耐ブロッキング性が悪かった。さらに、ポリテトラメチレンオキシドグリコールが共重合されていないため、耐湿熱性が悪かった。また、積層体としたときに高温雰囲気下及び湿熱処理後の接着強力はほとんど発現しなかった。
比較例4は、1,2−プロピレングリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコールがいずれも共重合されていなかったため、耐湿熱性が十分でなく、また、溶融粘度の温度依存性が高いため、熱接着時に接着剤層が流れやすく、積層体としたときに十分な接着強力が得られなかった。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた熱ラミネート性、耐湿熱性を有し、金属板およびPETフィルムまたはPETシートに対して良好な接着性を有するポリエステル接着剤を得ることができる。従って、本発明のポリエステル樹脂は、電気、電子分野、機械分野、食品分野、建築分野、自動車分野の接着剤、具体的には、電線被覆剤、フラットケーブル等の電気部品、PCM塗料、建材、食品や医薬品等の包装材の接着剤用樹脂として特に好適に利用することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は接着剤に好適なポリエステル樹脂に関するものである。さらに詳しくは、耐熱性、耐湿性が要求される電子機器関連の分野で特に有用であり、接着性が良好で、かつ積層体を製造する際の生産性が向上した接着剤用ポリエステル樹脂に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)に代表されるポリエステル樹脂は、その優れた機械的強度、熱安定性、疎水性、耐薬品性を生かし、繊維、フィルム、成形材料等として各種分野で広く利用されている。また、その構成成分であるジカルボン酸及びグリコール成分に他の成分を導入することにより種々の特徴を有する共重合ポリエステル樹脂を得ることが可能であり、接着剤、コーティング剤、インキバインダー、塗料等に広く使用されている。このような共重合ポリエステル樹脂は一般的にポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル樹脂等のプラスチック類、あるいはアルミニウム、銅等の金属箔に優れた接着性を有することが知られている。
【0003】
これらの特性を利用し、ポリエステルフィルム2枚でライン状の金属導体を被覆した構造のフラットケーブルの接着剤用途でも、共重合ポリエステル樹脂が使用されている。そして、このようなフラットケーブルは近年の高密度化されたAV機器やコンピュータ機器の配線あるいは自動車用の配線材として広く利用されるようになり、その需要は急速に伸びている。
【0004】
しかしながら、従来のポリエステル接着剤(例えば特許文献1参照)では、熱に対する感受性が十分でないため接着フィルムを熱ラミネートする工程において、ラインスピードを上げることが困難であった。このような状況から、結晶性の共重合ポリエステルを使用する方法が提案されている(例えば特許文献2、特許文献3参照。)。結晶性の樹脂は融点以上に加熱するとその粘性は急激に低下するため、熱感受性に優れている。しかし、このような樹脂は汎用の有機溶剤に対する溶解性が低く、接着フィルムの生産効率が低下するだけでなく、熱感受性が優れているが故に熱ラミネートの加工温度条件が非常に狭くなり、工程の温度管理を厳しくするために設備改造が必要となる等の問題があった。
【0005】
また、自動車用フラットケーブルの接着剤として使用される場合には、高温雰囲気化での接着性、湿熱環境下での接着性の保持、導体金属との接着性が必要となるが、これらの特性のバランスを取ることは難しかった。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−207126号公報
【特許文献2】
特開平6−320692号公報
【特許文献3】
特開平6−184515号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリエステル接着剤がもつ種々の問題を解消し、特に耐湿性、耐熱性、耐ブロッキング性、金属接着性が優れ、しかも積層体を製造するときの生産性が向上したポリエステル樹脂を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記問題を解決するために種々検討した結果、特定のグリコール成分を共重合するとともに、軟化温度を制御することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、
(1)ジカルボン酸成分の50〜100モル%が芳香族ジカルボン酸であり、グリコール成分のうち1,2−プロピレングリコールが50〜90モル%、ポリテトラメチレンオキシドグリコールが1〜15モル%であり、極限粘度が0.4以上であることを特徴とする接着剤用ポリエステル樹脂。
(2)前記(1)のポリエステル樹脂を含有することを特徴とする接着剤。
(3)(A)ポリエチレンテレフタレートのフィルムまたはシートの層、(B)前記(2)の接着剤の層、(C)金属板の層がこの順に積層されてなる積層体。
(4)前記(3)の積層体からなるフラットケーブル。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明のポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分として芳香族ジカルボン酸成分、グリコール成分として1,2−プロピレングリコールと、ポリテトラメチレンオキシドグリコールを含有するものである。
【0011】
ジカルボン酸成分としては、耐熱性の点から芳香族ジカルボン酸がポリエステル樹脂を構成する全酸成分に対して50〜100モル%共重合されていることが必要であり、好ましくは70〜100モル%である。この芳香族ジカルボン酸の共重合量が50モル%に満たない場合には、ポリエステル樹脂のガラス転移温度と軟化温度が低下するため、高温雰囲気下の接着強力が低下するため好ましくない。このようなジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、フタル酸及びその無水物等が挙げられ、好ましくはテレフタル酸とイソフタル酸である。
【0012】
また、本発明のポリエステル樹脂には、グリコール成分として、1,2−プロピレングリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコールを共重合する必要がある。これらのグリコール成分の割合を適切に選択することで、軟化温度とガラス転移温度を所望とする温度に制御することができる。
【0013】
1,2−プロピレングリコールの共重合量はポリエステル樹脂を形成する全グリコール成分に対して50〜90モル%とする必要があり、好ましくは60〜85モル%である。1,2−プロピレングリコールの共重合量が50モル%に満たない場合にはポリエステル樹脂のガラス転移温度が低くなるだけでなく、軟化温度以上での温度に対する樹脂の粘性の変化率が小さくなりラミネート時の加工速度が低下するため好ましくない。また、1,2−プロピレングリコールの共重合量が90モル%を超える場合には、重縮合反応の反応性が低下し高分子量化が困難となるため好ましくない。
【0014】
また、ポリテトラメチレンオキシドグリコールの共重合量はポリエステル樹脂を形成する全グリコール成分に対して3〜15モル%である。ポリテトラメチレンオキシドグリコールの共重合量が3モル%に満たない場合には、接着性及び耐湿熱性の改良効果が乏しく好ましくない。また、15モル%を越える場合には、ガラス転移温度が低くなりすぎるため、高温下での接着強力が低下して好ましくない。また、ポリテトラメチレンオキシドグリコールとしては、分子量500以上のものが好ましく、分子量が1000〜3000のものがポリエステル樹脂との反応性、相溶性の点で特に好ましい。
【0015】
また、本発明の特性を損ねない範囲で、必要に応じて以下のような酸成分、グリコール成分を共重合しても良い。酸成分としてはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、エイコサン二酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸及びこれらの酸無水物等の多価カルボン酸、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン等の脂肪族ラクトン、4−オキシ安息香酸、4−(ヒドロキシエトキシ)安息香酸、5−ヒドロキシイソフタル酸等のオキシカルボン酸等が挙げられる。これら酸成分はアルキルエステル、酸塩化物等の誘導体を用いてもよく、単独、あるいは複合して使用することができる。
【0016】
1,2−プロピレングリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール以外のグリコール成分としては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族グリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、トリシクロデカンジメタノール、スピログリコール等の脂環族ジオール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールSのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等の多価アルコール等が挙げられる。これらから、1種以上選択して使用することができる。また、有機リン化合物などの反応性難燃剤を共重合しても良い。
【0017】
また、本発明のポリエステル樹脂は、極限粘度が0.40以上であることが必要であり、好ましくは0.6以上である。極限粘度が0.40に満たない場合には、接着力が低くなるため好ましくない。
【0018】
本発明のポリエステル樹脂は、軟化温度が60〜120℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは、70〜100℃である。軟化温度が60℃に満たない場合には、接着剤を塗布したフィルムがブロッキングしやすく、ブロッキング防止剤などを添加しても改良することが実質的にできなくなり好ましくない。一方、120℃を越える場合には、接着剤を塗布したフィルムを熱ラミネートするためには、軟化温度以上の温度に加熱する必要があるが、その際PETフィルムが収縮し寸法安定性が悪くなる、あるいは反りが発生するなどの問題が生じるため好ましくない。
【0019】
また、本発明のポリエステル樹脂は、ガラス転移温度が−30〜40℃の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、−20〜35℃である。ガラス転移温度が−30℃に満たない場合には、樹脂の取り扱いが難しく、接着剤としての性能、特に高温領域(50〜120℃)での接着強力が低下し好ましくない。一方、40℃を超える場合には、接着剤を塗布したフィルムを熱ラミネートする場合に、軟化し難いためラインスピードを上げられない等、生産性が低下するだけでなく、十分な接着強力が得られない。さらに、溶剤への溶解性も低下するため好ましくない。
【0020】
本発明のポリエステル樹脂を製造する方法は、特に制限されるものではなく、従来公知のポリエステル樹脂の製造方法によって製造することができる。例えば、前記のようなジカルボン酸成分、グリコール成分(それらのエステル形成性誘導体を含む)を原料とし、常法によって、150〜280℃の温度でエステル化又はエステル交換反応を行った後、重縮合触媒を添加し5hPa以下の減圧下、200〜300℃、好ましくは230〜280℃の温度で重縮合反応を行うことで調製することができる。さらに、目的、用途によっては重縮合反応により得られたポリマーに、酸成分及び/又はグリコール成分を添加して、220〜280℃の温度で解重合反応を行う方法で調製することもできる。
【0021】
また、本発明のポリエステル樹脂の製造には、公知の触媒を用いることができ、具体的には、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、スズ、チタン、アルミニウム、コバルト等の有機酸塩、酸化物、アルコキシド、アルキル化合物等が挙げられる。
【0022】
さらに、製造においては、トリフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、リン酸等の安定剤や、ヒンダードフェノール化合物、硫黄化合物、ホスファイト化合物、ヒンダードアミン化合物のような酸化防止剤、二酸化チタン等の艶消し剤等を、本発明の特性を損なわない範囲で添加してもよい。
【0023】
こうして得られた本発明のポリエステル樹脂は、優れた耐湿熱性、熱感受性を有し、金属板及びPETフィルム又はPETシートに対して良好な接着性を有するものであり、PETフィルム又はPETシートに対する接着剤として好適に用いられる。
【0024】
次に、本発明の接着剤について説明する。
本発明の接着剤は上記ポリエステル樹脂を含有したものである。
【0025】
本発明の接着剤は、単独で使用してもよいし、接着剤の耐熱性、耐湿熱性をさらに高める目的で、必要に応じてイソシアネート樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の硬化剤と併用してもよい。
【0026】
また、難燃性を付与するために以下のような難燃剤を添加してもよい。例えばハロゲン化フェニル、ハロゲン化ジフェニルエーテル、ハロゲン化芳香族ビスイミド化合物、ハロゲン化芳香族エポキシ化合物、ビスフェノールAの低分子量有機ハロゲン化合物、ハロゲン化ポリカーボネート、ハロゲン化ポリスチレン、ハロゲン化ベンジルアクリレート化合物等のハロゲン含有有機難燃剤、ここでハロゲンは一般にブロムであることが好ましい。さらに、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニル)フォスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニル)フォスフェート、有機フォスフィンオキサイド、赤燐等のリン系難燃剤、ポリリン酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、フォスファゼン、シクロフォスファゼン、トリアジン、メラミンシアヌレート、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、トリグアナミン、シアヌル酸トリアジニル塩、メラム、メレム、硫酸グアニルメラミン、硫酸メラム、硫酸メレム等の窒素系難燃剤、芳香族スルホンイミド金属塩などの金属塩系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化ジルコニウム、酸化スズ等の水和物金属系難燃剤、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、ピロアンチモン酸ソーダ等のアンチモン系難燃助剤、シリカ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化ビスマス、酸化スズ、酸化タングステン、硼酸亜鉛、メタ硼酸亜鉛、メタ硼酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫化亜鉛等の無機系難燃剤、硫化亜鉛等の金属硫化物、ポリアルキルシリコーン、ポリアリールシリコーン、シリコーンパウダー等のケイ素系難燃剤である。
【0027】
さらに、本発明の接着剤には必要に応じて、リン酸等の熱安定剤、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、チオエーテル化合物のような酸化防止剤、タルクやシリカ等の滑剤、酸化チタン等の顔料、充填剤、帯電防止剤、発泡剤等の従来公知の添加剤を含有させても差し支えない。
【0028】
また、本発明の接着剤は、有機溶剤の溶液として使用することが好ましい。このような有機溶剤としては、本発明のポリエステル樹脂を溶解させるものなら特に限定されるものではないが、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系の溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系の溶剤、酢酸エチル、イソホロン、γ−ブチロラクトン等のエステル系の溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系の溶剤、ジエチルエーテル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系の溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール系の溶剤、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ノナン等の脂肪族炭化水素系の溶剤、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素系の溶剤等が挙げられる。これらは単独で用いることもできるが、複数種混合して使用することもできる。
【0029】
有機溶剤に溶解させる場合の濃度としては、20質量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは25〜50質量%である。20質量%未満では、接着剤を塗布後に除去すべき有機溶剤が多いため、生産性が低下するため好ましくない。
【0030】
本発明の接着剤は、PETフィルム(またはPETシート)と金属板に特に良好な接着性を有するが、被着体に用いられる材料はこれに限定されず、種々のプラスチックに対する接着剤としても使用することができる。具体的には、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリブチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリスチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂等に対する接着剤として好適に用いられる。また、被着体の形状は、フィルム状、シート状、板状には限定されず、繊維状、円筒状、その他のいかなる形状になっていても構わない。
【0031】
次に、本発明の接着剤を用いた積層体と、その製造方法について説明する。
【0032】
PETフィルムとは、JIS Z−0108に記載されているように厚み0.25mm以下のものをいい、PETシートとは、厚み0.25mmを超えるものであり、その表面にコロナ処理を施したり、あるいは、易接着樹脂層を設ける等の易接着処理を施しても差し支えない。
【0033】
また、金属板としては、特に限定されないが、銅、鉄、アルミニウム、ブリキ等の板が好ましく、汎用に使用されている種々の金属合金板でも良い。また、これらのスズ、亜鉛などのメッキ品、あるいはリン酸亜鉛、クロメートなどの化成処理品であっても良い。
【0034】
本発明の積層体における接着剤の層の形成方法は、いかなる方法で行ってもよいが、有機溶剤の溶液とした上記の接着剤を、PETフィルムもしくはPETシートまたは金属板の層上に塗布し、次いで溶媒を除去することで、接着層を形成することができる。
【0035】
次に、PETフィルムまたはPETシートの層、接着剤の層及び金属板の層となるように配置し、ヒートシール、ロール接着、加熱圧着等の公知の方法によって積層体とする。
【0036】
この際、接着剤の層(B)を介して被着体同士を接着する際の被着体の予熱温度は、100〜220℃の範囲とすることが好ましく、150℃〜200℃の範囲とすることがより好ましい。予熱温度が100℃未満である場合には、圧力をいくら上昇させても接着強力が大きいものが得られない。一方、予熱温度が 220℃を超える場合には、被着体であるPETフィルム(またはPETシート)の層が変形したり、しわ等が発生するので好ましくない。また、接着する際の圧力は20kPa以上とすることが好ましく、50〜300kPaとすることがより好ましい。接着時の圧力が20kPa未満では、予熱温度を高くし、かつ圧着時間を長くしても接着強力が大きいものが得られない。さらに、接着時の圧着時間は0.2〜5秒であることが好ましい。圧着時間が0.2秒未満では、予熱温度を上昇させても接着強力が大きいものが得られない。一方、圧着時間が5秒を超えると、得られる積層体の接着強力には問題がないが、生産性に劣るので好ましくない。
【0037】
上記のように熱圧着によって積層体を得る場合には、後述する方法で算出される、130℃と150℃におけるポリエステル樹脂の溶融粘度の温度依存性(τ)を生産性の目安とすることができ、τが3000〜5000の範囲であれば、積層体を得る際に熱再活性しやすくなり、接着のラインスピードを上げることが可能となるため、生産性が向上する。τが3000に満たない場合には、加熱によりポリエステルの溶融粘度が下がり難く、積層体製造時のラインスピードが上がりにくく、一方、5000を越える場合には、積層体製造ラインの微妙な温度変化により溶融粘度が変化し、積層体の厚みがばらつきやすく、接着性が低下しやすくなる。本発明の接着剤用ポリエステル樹脂を用いることにより、溶融粘度の温度依存性τは3000〜5000とすることができ、積層体の生産を良好におこなうことができる。
【0038】
このようにして得られた積層体は、特にフラットケーブルとして、電気、電子分野、機械分野、食品分野、建築分野、自動車分野で好適に用いられる。
【0039】
【作用】
1,2−プロピレングリコールを共重合することで、エステル結合近傍の立体障害が大きくなり加水分解が抑制されるため、湿熱環境下での接着性低下が改善できるとともに、接着性、特に金属に対する接着性が向上する。さらに、ガラス転移温度が上昇するため、耐熱性が高くなる。また、熱に対する感受性が高くなり加熱により軟化し易くなるため、本発明のポリエステル樹脂を接着層に設けたフィルムを熱ラミネートする場合のラインスピードを上げることができ積層体の生産性が向上する。
また、ポリテトラメチレンオキシドグリコールを共重合することで、ポリエステル樹脂中のエステル基濃度が減少し耐湿熱性が向上する。また、柔軟性が向上するため常温での接着性が良好となるが、軟化温度が下がり難いので、高温下での接着強力も低下しにくい。
【0040】
【実施例】
次に、実施例をあげて本発明を具体的に記述する。
極限粘度([η])
ポリエステル樹脂をフェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒とし、20℃で測定した溶液粘度から求めた。
ポリエステル樹脂の組成
日本電子工業社製1H−NMRスペクトロメータJNM−LA400型を用いて行った。
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)
セイコー電子工業社製の示差走査熱量計SSC5200型を用いて、昇温速度10℃/分で測定した。
ポリエステル樹脂の軟化温度(Ts)
柳本製作所社製の自動軟化点測定装置AMP−2型を用いて、昇温速度10℃/分で測定した。
【0041】
極限粘度保持率
ポリエステル樹脂を60℃、95%RHの恒温恒湿槽中に入れ128時間処理し、その前後の極限粘度を上記の方法で測定し、次式により求めた。極限粘度保持率は95%以上を合格とした。
[η]保持率(%) =湿熱処理後の[η]/湿熱処理前の[η] × 100
溶融粘度の温度依存性(τ)
ポリエステル樹脂をBROOKFIELD社製RVTD型を用いて、130℃、150℃での溶融粘度η130 ℃、η150 ℃(dPa・s)をそれぞれ測定した。次いで、この結果を基に、溶融粘度の温度依存性τを次式により求めた。〔なお、この式によって算出されるτは、温度t(℃)における溶融粘度の常用対数logηtを、絶対温度T(K)の逆数T−1に対してプロットしたときの、2点間を結ぶ直線の傾きを示すものである。〕
【数1】
【0042】
塗布フィルムの耐ブロッキング性
ポリエステル樹脂を、トルエンとメチルエチルケトンとの混合溶媒(体積比1/1)に30質量%の濃度となるように溶解し、ポリエステル樹脂の溶液を得た。その溶液にポリエステル樹脂と同質量の酸化チタンを添加し、接着剤溶液を作製した。その接着剤溶液を、25μmのPETフィルム上に塗布後、乾燥機に入れ、80℃で2分間、引き続き150℃で3分間乾燥して溶媒を除去し、30μm厚の接着剤層を形成した。次いで、接着剤層を形成したPETフィルム上に接着剤を塗布していない25μmのPETフィルムを配置し、温度120℃、圧力0.5MPa、圧着時間1秒でシーラーで圧着し積層フィルムを得た。
オリエンテック社製テンシロンRTC−1210型を用いて室温の雰囲気下で、引張速度50mm/分でサンプル幅50mmの積層フィルムの接着強力をそれぞれ測定した。接着強力が0.5N/cm未満を合格とした。
【0043】
積層体の接着強力
オリエンテック社製テンシロンRTC−1210型を用いて20、60℃の雰囲気下、及び積層体を60℃、95%RHの恒温恒湿槽中に入れ128時間処理した後20℃の雰囲気下で、引張速度50mm/分でサンプル幅10mmの積層体の接着強力をそれぞれ測定した。接着強力が20N/cm以上を合格とした。
【0044】
実施例1
テレフタル酸16.0kg(96.5モル部)、イソフタル酸16.0kg(96.5モル部)、1,2−プロピレングリコール16.6kg(218.1モル部)、ポリテトラメチレンオキシドグリコール(分子量1000)11.6kg(11.6モル部)、エチレングリコール1.9kg(30.9モル部)をエステル化反応槽に仕込み、圧力0.1MPaG、温度230℃で4時間エステル化反応を行った。
得られたエステル化物を重縮合反応槽に移送した後、重縮合触媒としてテトラブチルチタネートをポリエステル樹脂を構成する酸成分1モルに対して4×10−4モル添加した。次いで、60分間で反応系内を最終的に0.4hPaとなるまで徐々に減圧し、230℃で5時間重縮合反応を行いポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂の極限粘度は0.84、Tgは5℃、Tsは86℃、η130 ℃は690×104dPa・s、η150 ℃は270×104dPa・sであった。極限粘度保持率は99%であり、耐ブロッキング性を測定したところ0.09N/5cmであった。
【0045】
次いで、この共重合ポリエステル樹脂を、トルエンとメチルエチルケトンとの混合溶媒(体積比1/1)に30質量%の濃度となるように溶解して、溶液とした。この溶液を25μmのPETフィルム上に塗布後、乾燥機に入れ、80℃で2分間、引き続き150℃で3分間乾燥して溶媒を除去し、10μm厚の接着剤層を形成した。次いで、銅板を接着剤層と接するように重ね合わせ、150℃に加熱した2本の熱ローラーの間を2m/秒の速度で通過させることにより、PETフィルム/ポリエステル接着剤層/金属板からなる積層体を得た。この積層体の接着強力は20℃で25N/cm、60℃で28N/cm、60℃95%RHで128時間処理した後には25N/cmであった。同様にしてアルミ板との積層体を作成し、接着試験を行った。
【0046】
実施例2〜3及び、比較例1〜4
得られるポリエステル樹脂が表1に示す組成となるように、原料の仕込量を変えた以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を得て評価をおこなった。また、実施例と同様にして積層体を作成し、接着強力を測定した。
【0047】
実施例1〜3及び比較例1〜4のポリエステル樹脂の組成と特性値、及び各種試験結果をまとめて示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表中のポリエステル樹脂組成の略号はそれぞれ、TPA:テレフタル酸、IPA:イソフタル酸、SEA:セバシン酸、EG:エチレングリコール、PG:1,2−プロピレングリコール、PTMG1000:ポリテトラメチレンオキシドグリコール(分子量1000)、NPG:ネオペンチルグリコールを示す。
【0050】
表1から明らかなように、実施例1〜3のポリエステル樹脂は耐湿熱性、熱感受性及び耐ブロッキング性が良好なものであり、これらのポリエステル樹脂を使用した積層体の接着性、耐熱性及び耐湿熱性は良好なものだった。
これに対して、比較例では次のような問題があった。
比較例1では、1,2−プロピレングリコールの共重合量が多いため、重縮合反応が進み難く、十分な分子量のポリエステル樹脂が得られなかった。また、積層体としたときには被着材との密着性が低くなった。
比較例2では、1,2−プロピレングリコールが共重合量されておらず、かつ、ポリテトラメチレンオキシドグリコールの共重合量が多いためにガラス転移温度、軟化温度が低く、耐ブロッキング性が悪かった。また、溶融粘度の温度依存性が低いため、熱ローラーでの加熱では十分に接着できなかった。
比較例3は、芳香族ジカルボン酸の共重合量が少ないため、ガラス転移温度、軟化温度とも低く、耐ブロッキング性が悪かった。さらに、ポリテトラメチレンオキシドグリコールが共重合されていないため、耐湿熱性が悪かった。また、積層体としたときに高温雰囲気下及び湿熱処理後の接着強力はほとんど発現しなかった。
比較例4は、1,2−プロピレングリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコールがいずれも共重合されていなかったため、耐湿熱性が十分でなく、また、溶融粘度の温度依存性が高いため、熱接着時に接着剤層が流れやすく、積層体としたときに十分な接着強力が得られなかった。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた熱ラミネート性、耐湿熱性を有し、金属板およびPETフィルムまたはPETシートに対して良好な接着性を有するポリエステル接着剤を得ることができる。従って、本発明のポリエステル樹脂は、電気、電子分野、機械分野、食品分野、建築分野、自動車分野の接着剤、具体的には、電線被覆剤、フラットケーブル等の電気部品、PCM塗料、建材、食品や医薬品等の包装材の接着剤用樹脂として特に好適に利用することができる。
Claims (4)
- ジカルボン酸成分の50〜100モル%が芳香族ジカルボン酸であり、グリコール成分のうち1,2−プロピレングリコールが50〜90モル%、ポリテトラメチレンオキシドグリコールが1〜15モル%であり、極限粘度が0.4以上であることを特徴とする接着剤用ポリエステル樹脂。
- 請求項1のポリエステル樹脂を含有することを特徴とする接着剤。
- (A)ポリエチレンテレフタレートのフィルムまたはシートの層、(B)請求項2記載の接着剤の層、(C)金属板の層がこの順に積層されてなる積層体。
- 請求項3記載の積層体からなるフラットケーブル。
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