JP2005220310A - 接着剤用ポリエステル樹脂及び接着剤並びにそれを用いた積層体 - Google Patents
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Abstract
【課題】 耐熱性、耐湿熱性が優れた接着剤用ポリエステル樹脂を提供する。
【解決手段】 ポリエステル樹脂を構成する、ジカルボン酸成分として芳香族ジカルボン酸が50〜100モル%、グリコール成分として末端水酸基の一級化率が50%以上であるポリプロピレングリコールが1〜15モル%、ポリプロピレングリコール以外の炭素数2〜5のアルキレングリコールが50〜99モル%とからなる、ガラス転移温度が0〜40℃、軟化温度が60〜120℃、極限粘度が0.60以上である接着剤用ポリエステル樹脂。
【選択図】 なし
【解決手段】 ポリエステル樹脂を構成する、ジカルボン酸成分として芳香族ジカルボン酸が50〜100モル%、グリコール成分として末端水酸基の一級化率が50%以上であるポリプロピレングリコールが1〜15モル%、ポリプロピレングリコール以外の炭素数2〜5のアルキレングリコールが50〜99モル%とからなる、ガラス転移温度が0〜40℃、軟化温度が60〜120℃、極限粘度が0.60以上である接着剤用ポリエステル樹脂。
【選択図】 なし
Description
本発明は接着剤として好適なポリエステル樹脂に関するものである。更に詳しくは、耐熱性、耐湿性が要求される自動車関連の電気配線材用として有用な良好な接着性を有する接着剤用ポリエステル樹脂に関するものである。
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)に代表されるポリエステル樹脂は、その優れた機械的強度、熱安定性、疎水性、耐薬品性を生かし、繊維、フィルム、成形材料等として各種の分野で広く利用されている。
また、その構成成分であるジカルボン酸及びグリコール成分に他の成分を導入することにより種々の特徴を有する共重合ポリエステル樹脂を得ることが可能であり、接着剤、コーティング剤、インキバインダー、塗料等に広く使用されている。 このような共重合ポリエステル樹脂は一般的にポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル樹脂等のプラスチック類、あるいはアルミニウム、銅等の金属箔に対して優れた接着性を有することが知られている。
これらの特性を利用し、2枚のポリエステルフィルム層の間にライン状の金属導体を被覆した構造のフラットケーブルの接着剤用途でも、共重合ポリエステル樹脂が使用されている。そして、このようなフラットケーブルは近年の高密度化されたAV機器やコンピュータ機器の配線あるいは自動車用の配線材として広く利用されるようになり、その需要は急速に伸びている。
接着剤共重合ポリエステル樹脂を適当な溶剤に溶解したワニスを塗布して作成したフラットケーブルは、金属ケーブルとの接着強度においてはポリ塩化ビニルのものと比較して強いが、溶剤に可溶なポリエステル樹脂は耐熱性が劣り、60℃以上の温度では、溶融してフラットケーブルの屈曲部でデラミネーションを起こすという問題があった。
このような状況から、ポリオールとイソシアネートよりなる2液反応型の接着剤を用いて耐熱性を上げる方法(たとえば、特許文献1参照)が提案されている。
しかし、この方法では主剤となるポリオール自体の耐熱性、耐湿熱性が十分でないため、自動車用途など更に厳しい耐熱性が要求される用途においては、いまだ不十分なものであった。
特開平9−201913号公報
本発明は、ポリエステル接着剤が有する種々の問題を解消し、特に耐湿性、耐熱性、金属接着性に優れた接着剤用ポリエステル樹脂を提供しようとするものである。
本発明者は、上記課題を解決するために種々検討した結果、特定のグリコール成分を共重合したポリエステル樹脂を用い、ガラス転移温度及び軟化温度を制御することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は次の通りである。
(1)ポリエステル樹脂を構成する、ジカルボン酸成分として芳香族ジカルボン酸が50〜100モル%、グリコール成分として末端水酸基の一級化率が50%以上であるポリプロピレングリコールが1〜15モル%、ポリプロピレングリコール以外の炭素数2〜5のアルキレングリコールが50〜99モル%とからなる、ガラス転移温度が0〜40℃、軟化温度が60〜120℃、極限粘度が0.60以上である接着剤用ポリエステル樹脂。
(2)上記(1)記載のポリエステル樹脂を含有した接着剤。
(3)(A)ポリエチレンテレフタレートフィルム又はポリエチレンテレフタレートシートの層、(B)上記(2)記載の接着剤の層、(C)金属体で構成された積層体。
本発明によれば、優れた耐熱性、耐湿熱性を有し、金属板及びPETフィルム又はPETシートに対して良好な接着性を有するポリエステル接着剤を得ることができる。
従って、本発明のポリエステル樹脂は、電気、電子分野、機械分野、食品分野、建築分野、自動車分野等の接着剤、具体的には、電線被覆剤、フラットケーブル等の電気部品、PCM塗料、建材、食品や医薬品等の包装材の接着剤用樹脂として特に好適に利用することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分として芳香族ジカルボン酸が50〜100モル%、グリコール成分として末端水酸基の一級化率が50%以上であるポリプロピレングリコールが1〜15モル%、ポリプロピレングリコール以外の炭素数2〜5のアルキレングリコールが50〜99とからなるものである。
すなわち、ジカルボン酸成分としては、耐熱性の点から芳香族ジカルボン酸がポリエステル樹脂を構成する全酸成分に対して50〜100モル%共重合されていることが必要であり、好ましくは70〜100モル%である。この芳香族ジカルボン酸の共重合量が50モル%に満たない場合には、ポリエステル樹脂のガラス転移温度と軟化温度が低下するため、高温雰囲気下の接着強力が低下するため好ましくない。
このようなジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、フタル酸及びその無水物等が挙げられ、好ましくはテレフタル酸とイソフタル酸である。
また、本発明のポリエステル樹脂は、ポリプロピレングリコールと、炭素数2〜5のアルキレングリコールを共重合することが必要である。これらのグリコール成分の割合を適切に選択することで、軟化温度とガラス転移温度を所望とする温度に制御することができる。
ここで、ポリプロピレングリコールとしては、末端水酸基の一級化率が50%以上である必要があり、より好ましくは65%以上である。末端水酸基の一級化率が50%に満たない場合にはポリエステル樹脂との反応性が悪く、高分子量のポリエステル樹脂を得ることが困難となる。
また、分子量は500以上のものが好ましく、分子量が1000〜3000のものがポリエステル樹脂との相溶性、反応性の点で特に好ましい。分子量が500に満たない場合には、側鎖にアルキル基を有するため、ポリエステル樹脂中のエステル基濃度が高くなり、耐加水分解性が低下するため好ましくない。
このようなポリプロピレングリコールを共重合することで、ポリエステル樹脂中のエステル結合濃度が低下し、又、側鎖にアルキル基を有するためポリエステル樹脂の疎水性が高くなり耐加水分解性が向上するとともに、汎用の有機溶剤に対するポリエステル樹脂の溶解性が向上する。更に軟化温度を高く保持しながらガラス転移温度を下げることができるため耐熱性を向上させることができる。
また、理由は明確ではないがポリプロピレングリコールはポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の直鎖のポリエーテルよりも金属に対する親和性が高く、金属との接着強力が向上する。
上記のポリプロピレングリコールの共重合量はポリエステル樹脂を形成する全グリコール成分に対して1〜15モル%である必要があり、好ましくは2〜10モル%である。ポリプロピレングリコールの共重合量が1モル%に満たない場合には、ポリエステル樹脂中のエステル基濃度が高くなり、耐湿熱性の改良効果が乏しくなるとともに接着性が低下するため好ましくない。また、ポリプロピレングリコールの共重合量が15モル%を超える場合には、ガラス転移温度が低くなりすぎるため、高温下での接着強力が低下して好ましくない。
また、炭素数2〜5のアルキレングリコールの共重合量はポリエステル樹脂を形成する全グリコール成分に対して50〜99モル%である必要があり、好ましくは70〜98モル%である。炭素数2〜5のアルキレングリコールの共重合量が50モル%に満たない場合には、ポリエステル樹脂のガラス転移温度、軟化温度が低くなるため樹脂の耐熱性、耐湿熱性が低下するため好ましくない。また、炭素数2〜5のアルキレングリコールの共重合量が99モル%を超える場合には、ポリプロピレングリコールの共重合量が低下してポリエステル樹脂中のエステル基濃度が高くなり、耐湿熱性の改良効果が乏しくなるとともに接着性が低下するため好ましくない。
このような炭素数2〜5のアルキレングリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコールを挙げることができる。
また、本発明の特性を損ねない範囲で、必要に応じて下記のような酸成分、グリコール成分を共重合してもよい。
酸成分としてはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、エイコサン二酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸及びこれらの酸無水物等の多価カルボン酸、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン等の脂肪族ラクトン、4−オキシ安息香酸、4−(ヒドロキシエトキシ)安息香酸、5−ヒドロキシイソフタル酸等のオキシカルボン酸等が挙げられる。これら酸成分はアルキルエステル、酸塩化物等の誘導体を用いてもよく、単独、あるいは複合して使用することができる。
グリコール成分としては、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール以外に1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族グリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、トリシクロデカンジメタノール、スピログリコール等の脂環族ジオール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールSのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等の多価アルコール等が挙げられる。これらグリコール成分は、単独、あるいは複合して使用することができる。また、有機リン化合物などの反応性難燃剤を共重合してもよい。
また、本発明のポリエステル樹脂は、極限粘度が0.60以上であることが必要である。極限粘度が0.60に満たない場合には、接着力が低くなるため好ましくない。
本発明のポリエステル樹脂は、ガラス転移温度が0〜40℃の範囲内であることが必要であり、好ましくは10〜35℃である。ガラス転移温度が0℃に満たない場合には、接着剤としての性能、特に高温領域(50〜120℃)での接着強力が低下し好ましくない。一方、40℃を超える場合には、接着剤を塗布したフィルムを熱ラミネートする場合に、軟化し難いためラインスピードを上げられない等、生産性が低下するだけでなく、低温領域(20℃以下)で十分な接着強力が得られない。更には、溶剤への溶解性も低下するため好ましくない。
本発明のポリエステル樹脂は、軟化転移温度が60〜120℃の範囲内であることが必要であり、好ましくは70〜100℃である。軟化転移温度が60℃に満たない場合には、接着剤としての性能、特に高温領域(50〜120℃)での接着強力が低下し好ましくない。また、接着剤を塗布したフィルムがブロッキングしやすく、ブロッキング防止剤などを添加しても改良することが実質的にできなくなり好ましくない。一方、120℃を超える場合には、低温での接着強力が低下するとともに、接着剤を塗布したフィルムを熱ラミネートする場合に、軟化し難いためラインスピードを上げられない等生産性が低下するだけでなく、軟化温度以上の温度に加熱する必要があるため、基材のPETフィルムが収縮し寸法安定性が悪くなる、あるいは反りが発生するなどの問題があり好ましくない。
本発明のポリエステル樹脂を製造する方法は、特に制限されるものではなく、公知のポリエステル樹脂の製造方法によって製造することができる。
たとえば、前記のようなジカルボン酸成分、グリコール成分、あるいはそれらのエステル形成性誘導体を原料とし、常法によって、150〜280℃の温度でエステル化又はエステル交換反応を行った後、重縮合触媒を添加し5hPa以下の減圧下、200〜300℃、好ましくは230〜280℃の温度で重縮合反応を行うことで調製することができる。
ポリエステル樹脂を製造する際に使用する触媒としては、公知の金属化合物を用いることができる。具体的には、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、スズ、チタン、アルミニウム、コバルト等の有機酸塩、酸化物、アルコキシド、アルキル化合物等が挙げられ、好ましくはチタン化合物、スズ化合物である。
なお、ポリエステル樹脂を重縮合する際には、トリフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、リン酸等の安定剤や、ヒンダードフェノール化合物、硫黄化合物、ホスファイト化合物、ヒンダードアミン化合物のような酸化防止剤、二酸化チタン等の艶消し剤等を、本発明の特性を損なわない範囲で添加してもよい。
こうして得られた本発明のポリエステル樹脂は、優れた耐熱性、耐湿熱性を有し、金属板及びPETフィルム又はPETシートに対して良好な接着性を有するものであり、PETフィルム又はPETシートに対する接着剤として好適に用いられる。
次に、本発明の接着剤について説明する。
本発明の接着剤は上記ポリエステル樹脂を含有したものである。
本発明の接着剤は、単独で使用することもできるが、必要に応じてイソシアネート樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の硬化剤と併用して使用することもできる。特に好ましくはイソシアネート樹脂である。このような硬化剤を併用することで、接着剤の耐熱性、耐湿熱性を更に高めることができる。
また、難燃性を付与するために下記のような難燃剤を添加してもよい。
たとえば、ハロゲン化フェニル、ハロゲン化ジフェニルエーテル、ハロゲン化芳香族ビスイミド化合物、ハロゲン化芳香族エポキシ化合物、ビスフェノールAの低分子量有機ハロゲン化合物、ハロゲン化ポリカーボネート、ハロゲン化ポリスチレン、ハロゲン化ベンジルアクリレート化合物等のハロゲン含有有機難燃剤が挙げられる。この場合、ハロゲン化合物は一般的に臭素が好ましい。
また、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニル)フォスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニル)フォスフェート、有機フォスフィンオキサイド、赤燐等のリン系難燃剤や、ポリリン酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、フォスファゼン、シクロフォスファゼン、トリアジン、メラミンシアヌレート、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、トリグアナミン、シアヌル酸トリアジニル塩、メラム、メレム、硫酸グアニルメラミン、硫酸メラム、硫酸メレム等の窒素系難燃剤、芳香族スルホンイミド金属塩などの金属塩系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化ジルコニウム、酸化スズ等の水和物金属系難燃剤、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、ピロアンチモン酸ソーダ等のアンチモン系難燃助剤、シリカ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化ビスマス、酸化スズ、酸化タングステン、硼酸亜鉛、メタ硼酸亜鉛、メタ硼酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫化亜鉛等の無機系難燃剤、硫化亜鉛等の金属硫化物、ポリアルキルシリコーン、ポリアリールシリコーン、シリコーンパウダー等のケイ素系難燃剤を用いることができる。
本発明の接着剤には必要に応じて、リン酸等の熱安定剤、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、チオエーテル化合物のような酸化防止剤、タルクやシリカ等の滑剤、酸化チタン等の顔料、充填剤、帯電防止剤、発泡剤等の公知の添加剤を含有させてもよい。
また、本発明の接着剤は、有機溶剤に溶解した溶液であることが好ましい。
このような有機溶剤としては、本発明のポリエステル樹脂を溶解させることができるものなら特に限定されるものではないが、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系の溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系の溶剤、酢酸エチル、イソホロン、γ−ブチロラクトン等のエステル系の溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系の溶剤、ジエチルエーテル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系の溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール系の溶剤、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ノナン等の脂肪族炭化水素系の溶剤、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素系の溶剤等が挙げられる。これらは単独で用いることもできるが、複数種混合して使用することもできる。
有機溶剤に溶解させる場合の濃度としては、20質量%以上であることが好ましく、更に好ましくは25〜50質量%である。20質量%未満では、接着剤を塗布後に除去すべき有機溶剤が多いため、生産性が低下するため好ましくない。
このようにして得られた接着剤は、PETフィルム又はPETシートの層、本発明の接着剤からなる層及び金属体の層の順序で構成された積層体として、電気、電子分野、機械分野、食品分野、建築分野、自動車分野で用いられ、特に耐熱性、安定性が要求される自動車用途に好適に用いられる。
次に、本発明の積層体及びその製造方法について説明する。
ここで、PETフィルムとは、JIS Z-0108に記載されているように厚み0.25mm以下のものをいい、PETシートとは、厚み0.25mmを超えるものであり、その表面にコロナ処理を施したり、あるいは、易接着樹脂層を設ける等の易接着処理を施しても差し支えない。
また、金属体としては、特に限定されないが、銅、鉄、アルミニウム、ブリキ等の線材及び金属板が好ましく、汎用に使用されている種々の金属体でもよい。また、これらのスズ、亜鉛などのメッキ品、あるいはリン酸亜鉛、クロメートなどの化成処理品であってもよい。
本発明の積層体における接着剤の層の形成方法は、如何なる方法で行ってもよいが、有機溶剤の溶液とした上記の接着剤を、PETフィルム又はシートの層上に塗布し、次いで溶媒を除去することで、接着層を形成することができる。また、金属体の層に接着剤を塗布し、溶媒を除去することにより接着層を形成することもできる。
次に、PETフィルム又はPETシートの接着剤層の上に金属体を所定の間隔で配置し、更にその上に接着層同士が接触するように接着剤を塗布したPETフィルム又はPETシートを重ね合わせヒートシール、ロール接着、加熱圧着等の方法によって接着させ積層体とする。
この際、接着剤の層(B)を介して被着体同士を接着する際の被着体の予熱温度は、100〜220℃の範囲とすることが好ましく、150℃〜200℃の範囲とすることがより好ましい。予熱温度が100℃未満である場合には、圧力をいくら上昇させても接着強力が大きいものが得られない。一方、予熱温度が220℃を超える場合には、被着体であるPETフィルム又はPETシートの層が変形したり、しわ等が発生するので好ましくない。
また、接着する際の圧力は20kPa以上とすることが好ましく、50〜300kPaすることがより好ましい。接着時の圧力が20kPa未満では、予熱温度を高くし、かつ圧着時間を長くしても接着強力が大きいものが得られない。さらに、接着時の圧着時間は0.2〜5秒であることが好ましい。圧着時間が0.2秒未満では、予熱温度を上昇させても接着強力が大きいものが得られない。一方、圧着時間が5秒を超えると、得られる積層体の接着強力には問題がないが、生産性が低下するので好ましくない。
本発明のポリエステル樹脂は、PETフィルム又はPETシートと金属材料に特に良好な接着性を有するが、被着体に用いられる材料はこれに限定されず、種々のプラスチックに対する接着剤としても使用することができる。
具体的には、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、PBTやポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリスチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂等に対する接着剤として好適に用いられる。
また、被着体の形状は、フィルム状、シート状、板状には限定されず、繊維状、円筒状、その他のいかなる形状になっていても構わない。
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、実施例において特性評価は次のようにして行った。
極限粘度([η]):
ポリエステル樹脂をフェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒とし、20℃で測定した溶液粘度から求めた値である。
ポリエステル樹脂の組成:
日本電子工業社製1H-NMRスペクトロメータJNM-LA400型を用いて行った。
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg):
セイコー電子工業社製の示差走査熱量計SSC5200型を用いて、昇温速度10℃/分で測定した。
ポリエステル樹脂の軟化温度(Ts):
柳本製作所社製の自動軟化点測定装置AMP-2型を用いて、昇温速度10℃/分で測定した。
耐熱性:
ポリエステル樹脂を150℃の乾燥機中に入れ168時間処理し、その前後の極限粘度を上記の方法で測定した。次いで、この結果を基に、熱処理前後での極限粘度[η]の保持率(%)を次式により求めた。極限粘度の保持率が95%以上を合格とした。
極限粘度([η]):
ポリエステル樹脂をフェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒とし、20℃で測定した溶液粘度から求めた値である。
ポリエステル樹脂の組成:
日本電子工業社製1H-NMRスペクトロメータJNM-LA400型を用いて行った。
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg):
セイコー電子工業社製の示差走査熱量計SSC5200型を用いて、昇温速度10℃/分で測定した。
ポリエステル樹脂の軟化温度(Ts):
柳本製作所社製の自動軟化点測定装置AMP-2型を用いて、昇温速度10℃/分で測定した。
耐熱性:
ポリエステル樹脂を150℃の乾燥機中に入れ168時間処理し、その前後の極限粘度を上記の方法で測定した。次いで、この結果を基に、熱処理前後での極限粘度[η]の保持率(%)を次式により求めた。極限粘度の保持率が95%以上を合格とした。
保持率=(熱処理後の[η]/熱処理前の[η])×100
耐湿熱性:
ポリエステル樹脂を85℃、85%RHの恒温恒湿槽中に入れ168時間処理し、その前後の極限粘度を上記の方法で測定した。次いで、この結果を基に、湿熱処理前後での極限粘度[η]の保持率(%)を次式により求めた。極限粘度の保持率が95%以上を合格とした。
耐湿熱性:
ポリエステル樹脂を85℃、85%RHの恒温恒湿槽中に入れ168時間処理し、その前後の極限粘度を上記の方法で測定した。次いで、この結果を基に、湿熱処理前後での極限粘度[η]の保持率(%)を次式により求めた。極限粘度の保持率が95%以上を合格とした。
保持率=(湿熱処理後の[η]/湿熱処理前の[η])×100
積層体の接着強力:
オリエンテック社製テンシロンRTC-1210型を用いて20、60℃の雰囲気下、及び積層体を85℃,95%RHの恒温恒湿槽中に入れ128時間処理した後、20℃の雰囲気下で、引張速度50mm/分でサンプル幅10mmの積層体の接着強力をそれぞれ測定した。接着強力が10N/cm以上を合格とした。
実施例1
テレフタル酸16.2kg(97.5モル部)、イソフタル酸16.2kg(97.5モル部)、ポリプロピレングリコール(三洋化成社製プライムポールPX-1000、分子量1000、末端水酸基の一級化率70%)9.8kg(9.8モル部)、エチレングリコール7.6kg(121.9モル部)、ネオペンチルグリコール11.6kg(111.2モル部)をエステル化反応槽に仕込み、圧力0.1MPaG、温度240℃で4時間エステル化反応を行った。
積層体の接着強力:
オリエンテック社製テンシロンRTC-1210型を用いて20、60℃の雰囲気下、及び積層体を85℃,95%RHの恒温恒湿槽中に入れ128時間処理した後、20℃の雰囲気下で、引張速度50mm/分でサンプル幅10mmの積層体の接着強力をそれぞれ測定した。接着強力が10N/cm以上を合格とした。
実施例1
テレフタル酸16.2kg(97.5モル部)、イソフタル酸16.2kg(97.5モル部)、ポリプロピレングリコール(三洋化成社製プライムポールPX-1000、分子量1000、末端水酸基の一級化率70%)9.8kg(9.8モル部)、エチレングリコール7.6kg(121.9モル部)、ネオペンチルグリコール11.6kg(111.2モル部)をエステル化反応槽に仕込み、圧力0.1MPaG、温度240℃で4時間エステル化反応を行った。
得られたエステル化物を重縮合反応槽に移送した後、重縮合触媒としてテトラブチルチタネート100g(ポリエステル樹脂を構成する酸成分1モルに対して5×10-4モル)を添加した。次いで、60分間で反応系内を最終的に0.4hPaとなるまで徐々に減圧し、250℃で5時間重縮合反応を行いポリエステル樹脂を得た。
表1に得られたポリエステル樹脂の組成と特性値、および熱処理試験、湿熱処理試験を行った結果を示す。
実施例2〜4、及び比較例1〜4
得られるポリエステル樹脂の組成が表1に示した割合となるように、原料化合物の仕込量を変えた以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
実施例2〜4、及び比較例1〜4
得られるポリエステル樹脂の組成が表1に示した割合となるように、原料化合物の仕込量を変えた以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
表1に得られたポリエステル樹脂の組成と特性値、および熱処理試験、湿熱処理試験を行った結果を示す。
実施例1〜4及び比較例1〜4で得られた共重合ポリエステル樹脂を、トルエンとメチルエチルケトンとの混合溶媒(体積比1/1)に30質量%の濃度となるように溶解し、ポリエステル樹脂の溶液を得た。
その溶液を25μmのPETフィルム上に塗布後、乾燥機に入れ、80℃で2分間、引き続き150℃で3分間乾燥して溶媒を除去し、10μm厚の接着剤層を形成した。
次いで、300μmの銅板を接着剤層と接するように重ね合わせ、150℃に加熱した2本の熱ローラーの間を2m/秒の速度で通過させることにより、PETフィルム/ポリエステル接着剤層/銅板からなる積層体を得た。
表2に得られた積層体の特性を示す。
これに対して、比較例では次のような問題があった。
比較例1では、ポリプロピレングリコールの末端水酸基の一級化率が低いため、重縮合反応性が悪く十分な分子量のポリエステル樹脂が得られなかった。また、比較例5に示すように、積層体としたときには被着材との密着性が低くなった。
比較例2では、芳香族ジカルボン酸の共重合比率が少ないため、ガラス転移温度、軟化温度が低く、耐熱性、耐湿熱性が悪かった。また、比較例6に示すように、積層体としたときには被着材との密着性が低くなった。
比較例3は、ポリプロピレングリコールの共重合比率が少ないため、ガラス転移温度、軟化温度とも低く、耐熱性が悪かった。また、比較例7に示すように、積層体としたときに被着材との密着性は不良であった。
比較例4は、ポリプロピレングリコールの共重合比率が少ないため、耐湿熱性が不十分であった。また、ガラス転移温度が高いため、比較例8に示すように積層体としたときに20℃雰囲気下での接着強力が十分に得られなかった。
Claims (3)
- ポリエステル樹脂を構成する、ジカルボン酸成分として芳香族ジカルボン酸が50〜100モル%、グリコール成分として末端水酸基の一級化率が50%以上であるポリプロピレングリコールが1〜15モル%、ポリプロピレングリコール以外の炭素数2〜5のアルキレングリコールが50〜99モル%とからなる、ガラス転移温度が0〜40℃、軟化温度が60〜120℃、極限粘度が0.60以上である接着剤用ポリエステル樹脂。
- 請求項1記載のポリエステル樹脂を含有した接着剤。
- (A)ポリエチレンテレフタレートフィルム又はポリエチレンテレフタレートシートの層、(B)請求項2記載の接着剤の層、(C)金属体で構成された積層体。
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