[第1の例の手術用顕微鏡]
図1から図8を参照して、第1の例の手術用顕微鏡について説明する。
(構成)
図1において、1は患部を拡大観察するための手術用顕微鏡の鏡体であり、2はその鏡体1を支持する架台である。手術用顕微鏡はこの鏡体1と架台2とで構成される。
次に、前記架台2の構成について説明する。架台2は、床に載置されるべ一ス3と、このベース3に立設された支柱4と、この支柱4に、垂直な軸Aを中心に回転自在に支持された第1アーム5と、この第1アーム5の回動先端に、垂直な軸Bを中心に回転自在に支持された接続ブロック6と、この接続ブロック6に、水平な軸Cを中心に回転自在に支持された平行リンク機構からなる第2アーム7と、この第2アーム7の回動先端に、垂直な軸Dを中心に回転自在に支持された姿勢可変アーム8とを備える。前記鏡体1は、その姿勢可変アーム8に保持される。また、前記支柱4の内部には、後述する変倍モータ35や焦準モータ37を制御するための制御回路9が設置されている。
図2において示す符号10は、前記鏡体1に取り付けられた双眼観察鏡筒であり、この双眼観察鏡筒10は前記鏡体1に対して光学的に接続された状態で取り付けられている。双眼観察鏡筒10には、接眼部11、12が取り付けられている。この接眼部11、12は、双眼観察鏡筒10に対して光学的に接続されている。ここで、接眼部11、12から術者の眼に至る左右の光軸をそれぞれ接眼光軸E、E´とし、該接眼光軸E、E´上のアイポイントをそれぞれF、F´とする。ここで、前記双眼観察鏡筒10は観察瞳径dを有し、また図2で示すX+、X−、Y+、Y一方向をそれぞれ右方向、左方向、上方向、下方向と定義する。
前記双眼観察鏡筒10の上面部には入力装置13が設置されている。次に、入力装置13の構成について説明する。図3は図2でのII矢視方向から見た入力装置13の断面図である。入力装置13はハウジング14を備え、このハウジング14は図3で示すように双眼観察鏡筒10の背面と上面の両者にわたり接触するように直角に屈曲したかぎ形に形成されている。そして、双眼観察鏡筒10の上面に位置するハウジング14の前面部分の前面壁には孔15が開けられている。この孔15には後述する操作体が貫通している。
ここでの操作体は棒状の操作軸16からなり、この操作軸16はその中間部16aに対して後端部16bが下側に向けて直角に屈曲し、その中間部16aに対して前端部16cは斜め前方下側へ向けて屈曲している。さらに前端部16cの最先端部分には中間部16aに平行で前方へ突き出す先端部16dを形成している。
操作軸16の後端部16bの内方端部は球状とした球部17を形成している。また、ハウジング14内には球部17を軸支して前記操作軸16を上下左右方向に傾斜可能なように支持するために球面運動を許容する軸受としての支持部材18が設けられている。これにより操作軸16はハウジング14に定位置で軸支される。
このように支持された操作軸16の他端側部分はハウジング14の孔15から突き出している。この場合、前記孔15は前記操作軸16を当てその操作軸16の上下左右方向への最大の傾斜量を規制する大きさに開けられている。
前記操作軸16の突出し端である先端部16dには例えばゴム等の弾性部材またはウレタン等の柔らかく滑り難い材質で略半球状の部材によって作られた操作部19が固定的に取着されている。ここで、その操作部19による操作点をGと定義する。この操作点Gは、前記接眼部11、12のそれぞれのアイポイントF、F´から等距離で、かつ術者の額に対向する位置に配置されている。さらに、操作軸16が上下左右に傾斜する際の中心となる支点は前記球部17の中心であり、この支点をHと定義する。また、前記操作点Gと該支点Hとを結ぶ線分Iが、前記接眼光軸E、E´に略平行となる配置で、前記操作軸16の球部17は前記ハウジング14内で前記支持部材18に支持されている。
前記操作部19の部分にはその操作部19の部材と前記操作軸16の先端の間に挟み込まれて感圧スイッチ20が設けられている。感圧スイッチ20は前記操作点Gに接眼光軸E、E´方向にある一定の力Kが加わったときに出力し、その信号を前記制御回路9に入力するようになっている。前記制御回路9は該入力信号と後述するマイクロスイッチ23、24、25もしくは26からの入力信号が同時に入力された場合に限って、後述する変倍モータ35や焦準モータ37に電源の出力を供給すべく構成されている。
一方、図3、及び図3におけるIII−III線に沿う部分の断面図である図4で示すように、ハウジング14内において操作軸16の中間部16aにはバネ座21が固着されている。このバネ座21は操作軸16がハウジング14内から突き出す孔15の近くに位置して設置されている。そして、このバネ座21とハウジング14の対向内面との間には上下左右それぞれの位置に配置されたバネ22a、22b、22c、22dが介装されている。各バネ22a、22b、22c、22dは上下左右の向きからそれぞれ操作軸16を弾性的に支えてその操作軸16の操作点Gを中立状態に保持するための中立状態復帰機構を構成するものである。各バネ22a、22b、22c、22dはその一端を前記バネ座21の上下左右の位置に装着され、各バネ22a、22b、22c、22dの他端は前記ハウジング14の内面における上下左右の部分に設置されている。
図3、及び図3におけるIV−IV線に沿う部分の断面図である図5で示すように、バネ式の中立状態復帰機構よりも回動基端側に位置して操作軸16の中間部16aの上下左右側位置にはマイクロスイッチ23、24、25、26が配置され、各マイクロスイッチ23、24、25、26は前記ハウジング14に固定的に設置されている。そして、マイクロスイッチ23、24、25、26の作動子は操作軸16に対向して配置されており、操作軸16が中立の状態にあるときにはその作動子が離れてスイッチ操作がなされない状態にある。前記操作軸16が傾斜したとき、その傾斜側に設置されているマイクロスイッチ23、24、25、26の作動子がその操作軸16によって押されて作動させられるようになっている。また、各マイクロスイッチ23、24、25、26はそれぞれ前記制御回路9と電気的に接続されている。
つまり、前記操作点Gが上側に傾斜したときには前記マイクロスイッチ23が操作され、前記操作点Gが下側に傾斜したときには前記マイクロスイッチ24が操作され、前記操作点Gが左側に傾斜したときには前記マイクロスイッチ25が操作され、前記操作点Gが右側に傾斜したときには前記マイクロスイッチ26が操作される。
また、前記操作点Gを上下左右に傾斜させた場合、術者の瞳が観察瞳径dから外れる前に、前記各マイクロスイッチ23、24、25、26がそれぞれ対応したものが選択されて操作される関係で、前記マイクロスイッチ23、24、25、26は設置されている。
図6は前記鏡体1と前記双眼観察鏡筒10の内部構造を示すものである。同図中、27は鏡体1の前部に配置された対物レンズであり、28は同図中右側面から見て左右一対に配置された変倍光学部である。各変倍光学部28はそれぞれ移動レンズ群28aと固定レンズ群28bとからなる。また双眼観察鏡筒10の内部には結像レンズ29と偏向光学部材30と接眼レンズ31が設けられている。ここで前記結像レンズ29、前記偏向光学部材30および前記接眼レンズ31は前記双眼観察鏡筒10の変倍光学部28と同様、左右一対に配置されている。
また、前記変倍光学部28を構成する左右の移動レンズ群28aは、レンズ枠32に一体的に保持されており、該レンズ枠32の外周にはラック33が設けられている。前記ラック33にはピニオンギア34が噛合している。該ピニオンギア34の回転軸は前記制御回路9に電気的に接続されている変倍モータ35の出力軸に連結されている。そして、該変倍モータ35と、ピニオンギア34と、ラック33とによって、前記変倍光学部28を駆動する変倍電動機構が構成されている。
一方、図6で示すように、前記鏡体1は前記姿勢可変アーム8に接続された接続アーム36に対して相対的に上方向もしくは下方向に摺動可能なように保持されている。鏡体1には焦準モータ37が固定的に設けられ、この焦準モータ37は前記制御回路9と電気的に接続されており、その制御回路9によって駆動制御されるようになっている。焦準モータ37の出力軸にはピニオンギア38が固設されており、ピニオンギア38は前記接続アーム36に固設されたラック39に噛合し、その回転により接続アーム36に対して鏡体1を昇降させる焦準電動機構を構成している。つまり、前記焦準モータ37と前記ピニオンギア38と前記ラック39とから焦準電動機構が構成される。
(作用)
まず、手術用顕微鏡を使用する場合、術者は、架台2の第1アーム5、第2アーム7、姿勢可変アーム8を各回転軸A、B、C、Dで回転させ、鏡体1を、術部J(図6を参照)を観察することができる所望の位置へセットする。
術部Jから発せられた光線は、対物レンズ27、変倍光学部28、結像レンズ29、偏向光学部材30を通り、接眼レンズ31へ導かれ、術者はアイポイントF、F´に瞳を合致させることで、術部Jの拡大観察像が得られる。
次に、術者が倍率の変更を行う場合について述べる。操作部19の操作点Gに額を、ある一定以上の力Kで接眼光軸E、E´方向に押し当てながら額を動かすと、感圧スイッチ20が入力され、前記制御回路9に入力信号を出力する。つまり、この状態で、例えば額を左もしくは右に動かすと、操作軸16が支点Hを中心に左側もしくは右側に傾斜し、その操作軸16により、マイクロスイッチ25もしくはマイクロスイッチ26の作動子が押されて、該マイクロスイッチ25もしくはマイクロスイッチ26が操作されて、操作入力がなされ、前記制御回路9にその入力信号を出力する。この信号と前記感圧スイッチ20からの信号により、制御回路9は変倍モータ35に電源から駆動電力の供給を行って、該変倍モータ35はそれに応じた左方向もしくは右方向に回転する。
このように変倍モータ35が左回転もしくは右回転することにより、変倍モータ35と一体化されたピニオンギア34が左回転もしくは右回転し、これに噛合しているラック33と、ラック33と一体化された変倍光学部28が上側もしくは下側へ移動する。これにより観察像の変倍が行われる。変倍操作を止めたいときは、操作点Gから額を離すと、感圧スイッチがOFFされ、変倍モータ35の回転が止まり、変倍光学部28の移動は停止する。また、バネ22a、22b、22c、22dにより、操作軸16は中立状態に自動的に復帰し、このことにより、マイクロスイッチ25、26もOFFされる。
次に、術者が焦点位置の変更を行う場合について述べる。操作部19の操作点Gに額を、ある一定以上の力Kで接眼光軸E、E´方向に押し当てると、感圧スイッチ20が入力され、前記制御回路9にその入力信号を出力する。この状態で、額を上側もしくは下側に動かすと、操作軸16が支点Hを中心に上側もしくは下側に傾斜し、その操作軸16により、マイクロスイッチ23もしくはマイクロスイッチ24の作動子が押されて、該マイクロスイッチ23もしくはマイクロスイッチ24が操作され、操作入力がなされて前記制御回路9に入力信号を出力する。この信号と前記感圧スイッチ20からの信号により、制御回路9から焦準モータ37に電源から駆動電力の供給がなされ、該焦点モータ37は左方向もしくは右方向に回転する。焦点モータ37が左回転もしくは右回転することにより、焦点モータ37と一体化されたピニオンギア38が左回転もしくは右回転し、これに噛合しているラック39により、鏡体1は接続アーム36に対して相対的に上方向もしくは下方向に移動する。これにより、観察像の焦点位置の変更が行われる。焦点位置の変更操作を止めたいときは、操作点Gから額を離すと、感圧スイッチ20がOFFされ、焦点モータ37の回転が止まり、鏡体1の移動は停止する。また、バネ22a、22b、22c、22dにより、操作軸16が中立状態に自動的に復帰することにより、マイクロスイッチ23もしくはマイクロスイッチ24もOFFされる。
ここで、操作点Gを上下または左右に傾斜させた場合において、術者の瞳が観察瞳径dから外れる前に、各マイクロスイッチ23、24、25、26が操作されるように構成されているので、術者は観察状態を保ったまま上述の操作入力を行うことができる。
ここで、図7を参照して、上述の入力操作についてのより具体的な作用を説明する。まず、操作点Gを上下方向に操作する場合について説明する。図7は術者の観察状態を示しており、40は術者の顔である。操作点Gは上下に操作されたときに支点Hを中心とした円弧Lを描く。また、操作点Gは、術者の額の操作点Mを押し当てて操作されるが、術者が見上げる、頷くという顔の自然な動作を行った場合、操作点Mは円弧Nを描く。従って、入力装置13の操作点Gの移動軌跡である円弧Lと、額の操作点Mの移動軌跡である円弧Nは、操作点G、M上で常に接した状態を保つので、操作点Mの動きのみに操作点Gが追従する。
次に、図8を参照して、操作点Gを左右方向に操作する場合の例を具体的に説明する。図8は術者の観察状態を示す。操作点Gは左右に操作されたときに支点Hを中心とした円弧Oを描く。また、術者が顔を左右に振るという自然な動作を行った場合、操作点Mは円弧Pを描く。従って、入力装置13の操作点Gの移動軌跡である円弧Oと、額の操作点Mの移動軌跡である円弧Pは、操作点G、M上で常に接した状態を保つので、操作点Mの動きのみに操作点Gが追従する。
(効果)
上述の如く、操作点Gを観察光軸方向にある一定の力で押さないと、操作入力が行われない。このため、誤操作がなく、また、電動機構の操作入力を行っても観察視野がケラレないため、観察を行いながら、確実な電動機構の操作入力が行える。このため、術者は手術を中断することなく集中できるために、作業の効率が上がる。
また、本例では鏡体部の焦点機構を内焦点式の照準機構としても同様の効果が得られる。
さらに、本例では、操作入力装置にマイクロスイッチを用いたが、感圧センサ等、操作軸が上下または左右方向に傾斜したことを検出するものであれば、いかなるセンサ、スイッチであっても、同様の効果が得られる。
[第2の例の手術用顕微鏡]
次に、図9ないし図14を参照して、第2の例の手術用顕微鏡について説明する。
(構成)
この例に係る手術用顕微鏡では、双眼観察鏡筒と、入力装置と、この入力装置により操作入力される電動機構の部分が、前述した第1の例のものと異なり、その他の構成は第1の例のものと同じなので、同様の箇所に同じ番号を付してその具体的な構成の説明を省略する。
図9において示す架台2の支柱4の内部には後述するXモータ69およびYモータ72を制御するための制御回路49が設けられている。また、鏡体1は第2アーム7に対し、後述する視野移動装置76と姿勢可変アーム8を介して保持され、軸Dを中心に回転自在に支持されている。
図10は双眼観察鏡筒50を示す。この双眼観察鏡筒50は特願平7−114872号に開示されているような透過型光拡散デバイスを設け、その光拡散デバイスにより観察瞳を拡大するようにしたものであり、この双眼観察鏡筒50は拡大した観察瞳径d´を有する。
ここで、図10で示すX+、X−、Y+、Y一の方向を、それぞれ右方向、左方向、上方向、下方向と定義する。
次に、図11を参照して、前記入力装置51の構成を説明する。この図11は図10におけるVI矢視から見た断面図である。入力装置51は双眼観察鏡筒50上に設けられている。すなわち、入力装置51のハウジング52は双眼観察鏡筒50の背面と上面にわたり接触するように直角に屈曲したかぎ形に形成されている。双眼観察鏡筒50の上面に位置する前面部分の前面壁には、操作軸座54を挿通させる孔53が開けられている。
操作軸座54は孔53を貫通する自由端部53aとこれに直角な基端部53bからなり、基端部53bの後端は弾性部材である板バネ55を介して前記ハウジング52の支持部53cに支持されている。このために、操作軸座54はいわば球面運動を許容する板バネ55によって上下左右方向に傾斜可能なように支持されている。前記孔53は前記操作軸座54の上下左右方向の最大傾斜量を規制する大きさに開けられている。
前記操作軸座54の自由端部53aには接続用孔56が形成され、この孔56には操作軸57の一端部分が挿入されている。そして、操作軸57は、操作軸座54に螺挿された固定ツマミ60の先端により、その操作軸座54に締結固定されている。操作軸57の挿入端部の周部には固定ツマミ60の先端部を嵌め込むための長溝59が設けられている。また、固定ツマミ60はその雄ネジ部を操作軸座54に設けられた雌ネジ部にネジ込んでネジ係合されており、前記固定ツマミ60の先端は通常、前記長溝59内に入り込んでいる。
そこで、固定ツマミ60を緩めれば、固定ツマミ60の先端部と長溝59の嵌合によるガイド機能によって操作軸57は術者側に進退自在であり、長溝59の範囲内で操作軸57は伸縮可能である。
前記操作軸57の他端側部分は斜め前方下側に屈曲しており、その先端部分は前方へ屈曲して突き出す先端部57aを形成している。そして、先端部57aの先端には例えばゴムやウレタン等の柔らかく滑り難い材質で作られた操作部58が固設されており、その操作部58による操作点をRと定義する。
ここで、操作点Rは、前記接眼部11、12の、それぞれのアイポイントF、F´から等距離であり、かつ術者の額に対向する位置に配置されている。さらに、操作軸57の上下左右の傾斜の中心となる支点Sは、図11で示す前記板バネ55の厚さ方向の中心軸Tと、図11のVII 矢視から見た一部断面の図12で示す前記板バネ55の幅方向の中心軸Uと、前記板バネ55と前記ハウジング52の支持部53cとの接続部分との交点であり、操作軸57の傾斜中心として定義される。
また、操作軸57は、操作点Rと支点Sとを結んだ線分Vが、前記接眼光軸E、E´に略平行となるように前記板バネ55を利用して前記ハウジング52内に支持されるものである。また、前記板バネ55はそれ自身の弾性復元力により、図10および図11で示される中立状態に前記操作軸座54および操作軸57を保持している。
また、操作軸座54の接続用孔56に挿入装着された操作軸57は進退して操作軸座54から伸縮自在であるが、その伸縮方向は前記中立状態において操作点Rと支点Sとを結んだ線分Vに平行である。
図13は図11におけるVIII−VIII線に沿う部分の断面図である。図11および図13で示すように、前記ハウジング52内において、前記操作軸座54の途中部分における上下左右の各部位にそれぞれ対向して、マイクロスイッチ61、62、63、64が配置されており、また、これらのマイクロスイッチ61、62、63、64はハウジング52に固定的に設置されている。さらに、各マイクロスイッチ61、62、63、64は前記制御回路49と電気的に接続されている。
そして、前記マイクロスイッチ61、62、63、64はその設置側へ操作軸座54が傾動したとき、その操作軸座54の周面で前記マイクロスイッチ61、62、63、64の作動子を押し、そのマイクロスイッチ61、62、63、64を操作するようになっている。例えば、前記操作点Rが上側に傾斜したときには上側のマイクロスイッチ61が操作され、前記操作点Rが下側に傾斜したときには下側のマイクロスイッチ62が操作され、前記操作点Rが左側に傾斜したときには左側のマイクロスイッチ63が操作され、前記操作点Rが右側に傾斜したときには右側の前記マイクロスイッチ64が操作されるようになっている。
ここで、前記マイクロスイッチ61、62、63、64は、前記操作点Rを上下左右に傾斜させた場合、術者の瞳が観察瞳径d´から外れる前に操作されるように配置されている。
図14は前記第2アーム7の先端に鏡体1をX、Y方向に移動自在に保持するための視野移動装置(電動機構)76を示すものである。ここで、図14に示すように、術者に対向する方向をX方向、術者の左右方向をY方向と定義する。
前記視野移動装置76は次のように構成されている。視野移動装置76は架台2の第2アーム7の先端に接続軸65を介して吊持的に保持されている。つまり、視野移動装置76のベース66は接続軸65の先端に固着して保持されており、このベース66の下面側にはX移動部材67とY移動部材68が順次積層する状態で組み付けられている。ベース66の下面部にはX方向に沿うアリ溝状の凹部66aが形成され、X移動部材67の上面部にはベース66の凹部66aに嵌合する凸部67aが形成されている。そして、凹部66aと凸部67aとがX方向に摺動可能に結合されることにより、前記X移動部材67は前記ベース66にX方向へスライド可能に支持されている。
また、X移動部材67の下面部にはY方向に沿うアリ溝状の凹部67bが形成され、またY移動部材68の上面部には前記X移動部材67の凹部67bに嵌合する凸部68aが形成されている。そして、この凹部67bと凸部68aとがY方向に摺動可能に結合されることにより、前記Y移動部材68は前記X移動部材67にY方向へスライド可能に支持されている。
前記ベース66にはXモータ69が固設され、このXモータ69は前記制御回路49に電気的に接続されている。前記Xモータ69の出力軸にはピニオンギア70が同軸的に固設されている。また、前記X移動部材67には前記ピニオンギア70と噛合するラック71が固設されている。Xモータ69を駆動し、ピニオンギア70を回転させれば、これに噛合するラック71がX方向へ移動し、これと一体のX移動部材67をX方向に移動させるようになっている。
また、前記X移動部材67にはYモータ72が固設され、このYモータ72は前記制御回路49に電気的に接続されている。前記Yモータ72の出力軸にはピニオンギア73が同軸的に固設されている。また、前記Y移動部材68には前記ピニオンギア73と噛合するラック74が固設されている。そこで、Yモータ72を駆動し、ピニオンギア73を回転させれば、これに噛合するラック74がY方向へ移動し、これと一体のY移動部材68をY方向に移動させるようになっている。
前記Y移動部材68には接続軸75が固設され、この接続軸75には前記鏡体1を支持する前記姿勢可変アーム8が接続されている。
(作用)
まず、術者が、操作点Rの位置を調整する場合は、固定ツマミ60を上から見て反時計回りに軽く回転させると、その固定ツマミ60は上方に移動し、操作軸57の締結を緩める。この状態で術者は操作軸57を術者側に向かって伸縮させることで、操作点Rの位置を長溝59の範囲内で調整する。この調整後に固定ツマミ60を上から見て時計回りに回転させて締め付けると、固定ツマミ60の先端が操作軸57を、操作軸座54の孔56の下面へ押圧する。これにより操作軸57は操作軸座54と一体化し、操作点Rの位置調整が完了する。
そこで、術者が観察視野を変更する場合には、操作点Rに額を押し当てて額を上側もしくは下側方向に動かす。すると、板バネ55が弾性変形して、操作軸座54が支点Sを中心に上側もしくは下側に向かって傾斜する。また、操作軸座54の傾動によりその傾斜側に位置するマイクロスイッチ61もしくはマイクロスイッチ62の作動子が押されて、そのマイクロスイッチ61もしくはマイクロスイッチ62が操作され、入力がなされる。
この信号は制御回路49に入力され、制御回路49は電源からXモータ69に駆動電力を供給し、前記Xモータ69を操作方向に対応した左方向もしくは右方向に回転させる。Xモータ69が左方向もしくは右方向に回転することにより、Xモータ69の回転軸と一体化されたピニオンギア70が左回りもしくは右回りに回転し、これに噛合しているラック71を移動し、このラック71と一体化されたX移動部材67はX方向に沿って移動する。これにより、前記鏡体1は術者に対向する方向に移動させられ、観察視野は上側もしくは下側に移動する。
一方、操作点Rに額を押し当てて、額を左側もしくは右側方向に動かすと、上述のX方向と同様に、板バネ55が弾性変形し、操作軸座54が支点Sを中心に左側もしくは右側に傾斜し、操作軸座54によりそれに対応したマイクロスイッチ63もしくはマイクロスイッチ64の作動子が押されて、前記マイクロスイッチ63もしくはマイクロスイッチ64が操作入力させられる。この入力信号により、制御回路49はYモータ72に電源から駆動電力が供給され、前記Yモータ72を操作方向に対応した左方向もしくは右方向に回転させる。すると、Yモータ72の回転軸と一体化されたピニオンギア73が右もしくは左回転し、これに噛合しているラック74と、このラック74と一体化されたY移動部材68がY方向に沿って移動する。これにより、前記鏡体1は術者の左右方向に移動され、観察視野は左側もしくは右側に移動する。
ここで、操作点Rを上下左右に動かし、操作軸座54を傾斜させる場合において、術者の瞳が観察瞳径d´から外れる前に、各マイクロスイッチ61、62、63、64は操作されるように構成されているので、術者は観察状態を保ったまま上述の操作入力を行うことができる。
観察視野の移動を止めたいときは、操作点Rから額を離すと、弾性変形していた板バネ55が元の形状に復帰する付勢力によって、操作軸座54および操作軸57が図10および図11で示される中立状態に戻る。これにより、マイクロスイッチ61、62、63もしくは64がOFFされ、Xモータ69及びYモータ72の回転が止まり、鏡体1の移動が止まる。
ところで、術前に操作軸57の消毒が必要な場合においては、固定ツマミ60の先端が長溝59から脱するまで、固定ツマミ60を上から見て反時計回りに回転させる。この状態で、操作軸57を操作軸座54から抜き取り、操作軸57を消毒する。
また、入力装置51による操作入力を必要としない場合にも、その操作軸57を抜き取って使用することができる。また、接続用孔56を深く形成してその操作軸57を押し込んで退避させるようにしてもよい。このようにすれば、操作軸57が邪魔にならず、使い勝手がよくなる。
(効果)
この第2の例のものにあっては操作軸57の操作点Rの位置を術者の好みの位置に調整することができるので、入力装置51の操作性がより向上し、術者は、より手術に集中でき、効率が上がる。
また、操作点Rの傾斜方向と視野の移動方向が同一方向であるため、違和感なく操作入力が行え、誤操作を防止できる。このため、より手術の効率が上がる。
さらに、双眼観察鏡筒50には、透過型光拡散デバイスを設けて観察瞳を拡大させているので、入力装置51の操作点Rに額を押し当て、上下左右に操作入力を行った場合に観察像がケラレない範囲で、入力装置51の操作点Rの傾斜量をある程度大きくできる。これにより、入力操作が微妙になりすぎることなく、より使い勝手のよい手術用顕微鏡が提供できる。
また、術者の額を押し当て、操作入力を行う操作点Rの支点が弾性部材からなっており、複雑な機構を必要とせず、さらには前記弾性部材に操作点Rの中立状態を保持させることにより、小型かつ軽量、安価な入力装置を有する手術用顕微鏡が提供できる。
さらに、操作軸57を消毒する場合や入力装置による入力操作が不要なときには、操作軸57をハウジング52(入力装置本体)から容易に取り外すことが可能なのである。
なお、この例においては弾性部材に板バネを用いたが、コイルバネ、ピアノ線等他の弾性部材であっても同様の効果が得られる。
[第3の例の手術用顕微鏡]
次に、図15ないし図19を参照して、第3の手術用顕微鏡について説明する。
(構成)
この第3の例では入力装置の操作入力において、観察画像の切り換え(電動機構)を行うものである。なお、この例において前述した第1の例及び第2の例と同様の箇所には同じ番号を付し、その具体的な説明を省略する。
図15において、架台2の第2アーム7の先端には、姿勢可変アーム8を介して鏡体99が支持されている。図16は本例においての入力装置100を示すものである。
この入力装置100は双眼観察鏡筒10の接眼部11、12の間の空間に位置して設置されている。ここで、図16のX+、X−、Y+、Y一方向をそれぞれ右方向、左方向、上方向、下方向と定義する。
次に、入力装置100の構成について具体的に説明する。図17は図16におけるIX矢視方向から見た断面図である。
この入力装置100のハウジング101は双眼観察鏡筒10の前面に取着されている。ハウジング101の前面壁部には後述する操作軸(傾斜軸)を貫通する孔102が形成されている。孔102はその操作軸の上下左右方向の最大傾斜量を規制する大きさに開けられている。
前記ハウジング101において、孔102の内側にはその孔102側に向けた球面103aを形成した支持部材103が設けられている。また、ハウジング101の内面の、前記孔102の内側周辺に位置した部分には球面101aが形成されている。
ハウジング101の内面の球面101aと、支持部材103の球面103aとはいずれも支持部材103の後方に位置する架空の一点を中心とした球面であり、その半径軸上には前記孔102の中心が位置している。
この孔102に挿通された操作軸104の基端部分にはハウジング101の球面101aと支持部材103の球面103aとの間に挟み込まれる基部104aが設けられている。この基部104aにはハウジング101の球面101aと摺接する球面部分104bと、支持部材103の球面103aと摺接する球面部分104cが形成されている。すなわち、操作軸104は前述した架空の一点を支点として上下左右に傾斜可能なように、その基部104が前記球面101aと前記球面103aの間に挟み込まれて支持されている。ここで、前記支点をαと定義する。
また、前記操作軸104は前記ハウジング101の孔102を挿通して突出しており、その先端には、例えばゴム等の弾性体やウレタン等の柔らかく滑り難い材質で作られた操作部105が固定的に取着されている。そして、この操作部105の先端からなる操作点をβと定義する。
ここで、前記支点αと前記操作点βとを結ぶ線分γが、前記接眼光軸E、E´から等距離で、かつ前記接眼光軸E、E´を含む平面内に配置される如く、前記支点αと前記操作点βは配置されている。もちろん、前記支点αと前記操作点βとを結ぶ線分γがハウジング101の孔102の中心を通るようになっている。
図18は図17におけるW−W線に沿っての断面図を示すが、この図18で示すように、ハウジング101の内部において、前記操作軸104の基部104aの周辺には複数の磁性体106a、106b、106c、106dがその基部104aを取り囲むように等間隔で設置されている。これらの磁性体106a、106b、106c、106dはそのハウジング101の内面に固定的に設置されている。
また、前記操作軸104の基部104aにおける外周面部には前記磁性体106a、106b、106c、106dにそれぞれ対向する位置に配置されて磁性体107a、107b、107c、107dが設けられている。ここで、互いに対向する磁性体106aと磁性体107a、磁性体106bと磁性体107b、磁性体106cと磁性体107c、磁性体106dと磁性体107dの各組はそれぞれ互いに反発し合うように、磁極の向きが定められており、それらの反発力の均等する釣り合い位置で前記操作軸104を保持している。そして、通常、操作軸104は、図17および図18で示される中立の状態にあるようになっている。
さらに、ハウジング101内において、前記操作軸104の基部104aにおける上下左右の各位置にはマイクロスイッチ108、109、110、111が配設されている。これらのマイクロスイッチ108、109、110、111は前記ハウジング101に固定され、また後述するモード設定回路128と電気的に接続されている。そして、各マイクロスイッチ108、109、110、111は、その設置側へ前記操作軸104が傾斜したとき、その操作軸104の基部104aの周面によって作動子が押されて操作されるようになっている。つまり、前記操作点βが上側に傾斜したときには前記マイクロスイッチ108が、前記操作点βが下側に傾斜したときには前記マイクロスイッチ109が、前操作点βが左側に傾斜したときには前記マイクロスイッチ110が、前記操作点βが右側に傾斜したときには前記マイクロスイッチ111がそれぞれ操作されるようになっている。
一方、図19は、画像切り換え手段112を組み込んだ鏡体99と斜視用内視鏡113を示すものである。ここで、前記双眼観察鏡筒10を光学的に取り付けた前記鏡体99は第1の観察手段であり、これとは別に第2の観察手段である斜視用内視鏡113が設けられている。前記鏡体99には図19中右側の変倍光学部28の光軸上に挿脱可能に支持された可動ミラー114を設けられ、この可動ミラー114はロータリーソレノイド115によって駆動されるようになっている。また、ロータリーソレノイド115は前記可動ミラー114を図19中、実線と破線の位置に矢印116の方向に回動させる駆動手段であり、このロータリーソレノイド115は後述するモード設定回路128と電気的に接続されている。ここで、可動ミラー114は図19中の点線で示す如く、光軸上から外れた位置に初期状態として設定されているものである。
また、117は投影レンズ、118はミラーであり、この投影レンズ117とミラー118は、図19中で右側の前記変倍光学部28の光軸上に挿入された前記可動ミラー114の外側に順次配設されている。そして、前記ミラー118によって反射される光軸上には観察モニター119が離間対向するように配置され、この観察モニター119は後述するモード設定回路128に電気的に接続されている。
次に、第2の観察手段である前記斜視用内視鏡113の構成について説明する。この内視鏡113は患者の体内に挿入される挿入部120と接眼部121を備え、接眼部121には前記斜視用内視鏡113の観察像を撮像するTVカメラ122が図示しないアダプタを介して取り付けられている。そして、この斜視用内視鏡113は術者の所望の位置に保持可能な図示しない保持アーム等により保持され、前記手術用顕微鏡の死角である術部J´を観察する。また、前記TVカメラ122には、後述するモード設定回路128に電気的に接続されたコントロールユニット123が接続されている。
前記モード設定回路128には電気的に接続されたメモリー127が電気的に接続されている。メモリー127には術前に撮像された患部のMR像124、CT像125、診断カルテ126がデジタル記録されている。
前記モード設定回路128は以下のように機能するように構成される。つまり、前記マイクロスイッチ108、109、110、111が操作されると、それぞれ前記コントロールユニット123からの前記斜視用内視鏡113の観察像、前記メモリー127からの前記MR像124、CT像125、診断カルテ126をモニター119に出力し、かつ前記前ロータリーソレノイド115に電源を供給する。
(作用)
術者は術部Jを観察中に、斜視用内視鏡113の観察像もしくはMR像124、CT像125、診断カルテ126の観察したい場合、操作点βに額を押し当てて額を上側もしくは下側、左側、右側に動かす。すると、操作軸104が支点αを中心に上側もしくは下側、左側、右側に傾斜し、操作軸104が孔102の上側面もしくは下側面、左側面、右側面に突き当たるまで傾斜する。このとき、操作軸104によりマイクロスイッチ108もしくは109、110、111の作動子が押されて、前記マイクロスイッチ108もしくは109、110、111が入力する。この入力信号により、モード設定回路128は電源からロータリーソレノイド115に駆動電力を供給し、可動ミラー114を矢印116方向に沿って回動させる。
すると、可動ミラー114は図19中、実線の状態となる。同時にモニター設定回路128は、マイクロスイッチ108が入力した場合は、コントロールユニット123からの斜視用内視鏡113の観察像を観察モニター119に出力し、マイクロスイッチ109が入力した場合は、メモリー127に記録されたMR像124を、マイクロスイッチ110が入力した場合は、メモリー127に記録されたCT像125を、マイクロスイッチ111が入力した場合はメモリー127に記憶された診断カルテ126を観察モニター119に出力する。
さらに、観察モニター119の画像がミラー118、投影レンズ117を経て可動ミラー114で反射された後、双眼観察鏡筒10の右側の接眼部12に導かれる。これにより、術者は、右目で斜視用内視鏡113の観察像もしくはMR像124、CT像125、診断カルテ126を観察できる。
次に、術者が顕微鏡の像を双眼観察する場合には操作点βから額を離せばよく、こうすると、磁性体106a、106b、106c、106d、107a、107b、107c、107dにより操作軸104が中立状態に戻り、マイクロスイッチ108もしくは109、110、111がOFFされ、モード設定回路128からロータリーソレノイド115に供給していた電源がOFFされる。これにより、可動ミラー114は矢印116方向に沿って回動し、図19中の点線の状態となり、顕微鏡像の双眼観察が行える。
(効果)
この例のものによれば、操作点βの傾斜の支点αを架空の位置に存在させるために、入力操作性を損なうことがなく、その入力装置を小型かつ軽量にすることができる。
[本発明の第1の実施形態]
図20乃至図23に基づいて、本発明の第1の実施形態を説明する。
(構成)
図20は患部を拡大観察するための手術用顕微鏡における鏡体130を示す。この鏡体130は、前述した例の如くの、図示しない架台に接続されている。鏡体130にはこれに対し光学的に接続された状態で双眼観察鏡筒131が取り付けられている。双眼観察鏡筒131には左右1対の接眼部132、133が設けられている。これらの接眼部132、133は双眼観察可能な関係で双眼観察鏡筒131に対して光学的に接続されている。ここで、各接眼部132、133から術者の各左右の眼に至る左右の光軸をそれぞれ接眼光軸E、E’とし、接眼光軸E、E’上のアイポイントをそれぞれF、F’とする。
また、前記双眼観察鏡筒131の上面部には後述する入力装置134が設けられている。
次に、この入力装置134の構成について説明する。図21はその入力装置134を縦断して示す断面図である。入力装置134はハウジング135を備え、このハウジング135は前記双眼観察鏡筒131の上面部に着脱可能な状態で取着されている。ハウジング135の前面側における前面壁には孔136が開けられている。この孔136には操作体137が貫通している。操作体137は棒状の操作軸138からなり、操作軸138の突き出し端にある先端部には例えばゴム等の弾性部材またはウレタン等の柔らかく滑りにくい材質で略半球状に形成された部材によって作られた操作部139が固定的に取着されている。ここで、操作部139による操作点をXと定義する。この操作点Xは前記アイポイントF,F’から等距離であり、かつ術者の額に対向する位置に配置されている。これらは前述した例の場合と同様なものである。
操作軸138の他端部は筒状に形成された操作軸座140内に嵌め込まれ、操作軸138はその操作軸座140に対して図21中矢印方向へ前後に移動するように摺動可能に連接されている。操作軸138と操作軸座140の間にはバネ141が配置され、バネ141の弾発力によって操作軸138を押し出す向きに付勢している。
操作軸座140の後端は弾性部材である板バネ142を介してハウジング135の壁部に回動自在支持されている。つまり操作軸138はいわば球面運動を許容する板バネ142によって上下左右方向に傾斜可能なように支持されている。この操作軸138が上下左右の傾斜する中心位置をYと定義する。操作軸138はその操作点Xと支点Yを結ぶ線分が前記接眼光軸F、F’に略平行になるように、前記板バネ142によりハウジング135内に枢着されている。
前記操作軸座140を貫通させる孔136はその操作軸座140の上下左右方向の最大傾斜量を規制する大きさに開けられている。
ハウジング135内には操作軸138の傾斜を検出する複数のマイクロスイッチ143が固定的に設けられている。これらのマイクロスイッチ143の構成と機能は前述した第2の例と同様のためにそれ以上の説明を省略する。
次に、鏡体130の構成について説明する。鏡体130の前面部には左右光路共通の対物レンズ144が配設され、この対物レンズ144は対物レンズ保持枠145に固定されている。また、対物レンズ保持枠145は鏡体130にネジ等で固定されている。鏡体130内には左右一対のものとして配置された変倍光学部146が設けられ、この変倍光学部146と対物レンズ144との間には図示しない光源からの照明光を導くライトガイド147、照明光学部148、偏光プリズム149が順次配置されている。
鏡体130及び前述した図示しない架台の両方、又は少なくとも鏡体130はドレープ150で覆われている。ドレープ150は前記接眼部132、133及び前記操作部139に対応する位置にそれぞれ孔150a、150bを開け、その一方の孔150aからは前記接眼部132、133の先端部が突き出し、他方の孔150bからは前記操作部139を有する操作軸138の先端部分が突き出すようにしてある。孔150aには接眼部132、133が密に貫通し、孔150bには操作軸138が密に貫通するようにしてある。
ドレープ150はその下部に樹脂で作られた環状のキャップ152を結合しており、このキャップ152には例えばアクリル板で作られた透明保護カバー151が斜めに取り付けられている。キャップ152は前記対物レンズ保持枠145の外周とは適度な嵌め合いを有して前記対物レンズ保持枠145に対して着脱可能なものとなっている。
図22で示す如く、鏡体130の下面には対物レンズ保持枠145の近傍に位置決めピン153が固設され、キャップ152にはその位置決めピン153に対応する位置に位置決め孔154が開けられている。キャップ152が対物レンズ保持枠145に取り付いた状態のとき、そのキャップ152に取着されている前記透明保護カバー151の向きが定まり、その透明保護カバー151は観察光軸155に対し照明光学部148側へ傾斜するようになっている。
(作用)
術者が前述した第1〜3の例において述べたような操作入力を行う場合には、ドレープ150から突き出した操作軸138の先端にある操作部139の操作点Xに術者は額を押し当ててその操作部139を所望の方向に動かすものとすると、その方向に対応したマイクロスイッチ143が操作軸座140により操作されて作動し、入力が完了する。
次に、術者が鏡体130の観察角度を図示しない架台を動かし変更した場合は、術者の額と操作点Xの距離が変化する。ここで、操作部139及び操作軸138はその操作軸138の軸方向に沿って進退可能であるため、術者の額と操作部139の相対位置が変化すると、その変化量分の伸縮を行う。
また、術者が入れ替わった場合においても、人間の瞳と額の位置は一定ではないために、通常は距離の変化が生じるが、この場合もその変化量分に対応した伸縮を行ってその変化を吸収する。ここで、操作軸138はその軸方向においてのみ移動可能であるため、前記入力操作、すなわち上下左右の傾斜方向に対しては移動することはないので、正常な入力操作を妨げるものではない。
次に、術者がドレープ150を鏡体130に装着する場合について説明する。この場合には、まず、鏡体130の下面に設けられた位置決めピン153とキャップ152の位置決め孔154が合致するように、キャップ152を対物レンズ保持枠145に被嵌して取り付ける。この後、接眼部132、133及び操作部139とドレープ150に設けられた孔150a、150bに合わせながら鏡体130及び図示しない架台にドレープ150を被せて装着する。
次に、ドレープ150を装着したときの照明光の光路の状況を、図22に基づき説明する。図示しない光源より出射された照明光はライトガイド147、照明光学部148を順次通過し、偏光プリズム149により屈折せしめられ、対物レンズ144を通過して術部を照射する。ここで、照明光の一部は透明保護カバー151の表面で反射される。透明保護カバー151は照明光学部148側へ向けて傾斜しているために、透明保護カバー151の表面で反射された照明光は変倍光学部146の反対側である図22中破線矢印の方向に向かう。つまり、変倍光学部146には反射光が向かわないためにフレアを起こすことがない。
(効果)
本実施形態によれば、術者の観察姿勢の変化や術者の交代による操作部139と術者の額の相対位置が変化した場合においても、操作軸138の伸縮作用によりその変位量を吸収することができ、いちいち操作体137の位置調整をする必要がないため、円滑に入力操作を行うことができる。また、操作軸138はその軸方向においてのみ移動可能であるために、入力操作に対しては移動することがなく安定した入力操作が行われる。
また、透明保護カバー151を備えたドレーブ150を装着した場合、透明保護カバー151と変倍光学部146及び照明光学部148の位置関係は位置決め手段の位置決めピン153及び位置決め孔154によって常に一定であるために誰が装着しても同じ状態に定まり、そのときの透明保護カバー151による照明光の反射光が変倍光学部146に及ぼす影響はないから、フレアの発生がない。また、環状のキャップ152に回転方向の位置決め手段を設けたので、接眼部132、133や操作部139とドレープ150の位置合わせがキャップ152を装着するのみで容易に行うことができる。
なお、本実施形態では、透明保護カバー151にアクリル板を用いたが、他の透明樹脂やガラス板等の透明な板であれば同様の効果が得られる。また、透明保護カバー151は平板でなくとも表面が球面状のものでも、同様の効果が得られる。さらに、ドレープ150と鏡体130の位置決めにピン153を用いたが、凹凸の組み合わせのもの等、回転方向を規制する手段であればよく、それによれば前記同様の効果が得られる。
[本発明の第2の実施形態]
図24乃至図26に基づき、本発明の第2の実施形態を説明する。ただし、前述した第1の実施形態と同一の構成は同一の符号を付し、それらの詳細な説明は省略する。
(構成)
図24は手術用顕微鏡の鏡体130の側面図である。この鏡体130の上面部には双眼観察鏡筒131が設けられ、双眼観察鏡筒131の上部には入力装置134が配設されている。図25は入力装置134の縦断面図である。
入力装置134の操作軸138の突出し端である先端部には、例えばゴム等の弾性部材またはウレタン等の柔らかく滑りにくい材質で蛇腹状に形成された操作部156が取着されている。この操作部156は蛇腹状に形成されることによりその操作軸138の軸線方向に伸縮自在である。
次に、鏡体130の内部構成について説明する。照明光は焦点位置可変対物レンズ158の上方部位に配置されたライトガイド147、照明光学部148、偏光プリズム149を順次通過し、さらに、ハーフミラー157を通過して、観察光軸155と同軸上の術部を照射するようになっている。
一方、術部からの観察用光線はハーフミラー157により反射され、そして、左右光路共通の焦点位置可変対物レンズ158、偏光プリズム149、変倍光学部146、偏光プリズム160、161を順次通過して双眼観察鏡筒131に入射され、左右一対の接眼部132、133により拡大観察されるようになっている。
鏡体130及び図示しない架台はドレープ150により覆われている。このドレープ150において、前記接眼部132、133,及び前記操作部156を有する操作軸138に対応する位置にはそれらを別々に密に貫通する孔150a、150bが開けられている。
ドレープ150の下部には樹脂で作られたキャップ162が結合されている。このキャップ162には透明保護カバー151が取り付けられている。また、キャップ162は鏡体130下部に設けられた透明保護カバー取付け部163とは適度な嵌め合いを有することによりその透明保護カバー取付け部163に着脱可能となっている。
キャップ162及び透明保護カバー取付け部163は図26に示した如くの馬蹄形状となっている。透明保護カバー151はキャップ162が透明保護カバー取付け部163に取り付いたときに、観察光軸155に対し図24の状態で右上がりに傾斜してキャップ152に保持されている。
(作用)
術者の額と操作部156の相対位置が変化したときには操作部156の伸縮作用によってその変位量を吸収する。
術者がドレープ150を鏡体130に装着する際は、まずキャップ162と透明保護カバー取付け部163の外形を合わせて取り付ける。この後に接眼部132,133及び操作部156をドレープ150に設けられた孔150a、150bに合わせて差し込みながら鏡体130及び図示しない架台にドレープ150を被せて装着する。
また、照明光の光路は図24で示す如くなる。そして、照明光はハーフミラー157を透過して術部を照射するが、ここで、透明保護カバー151の表面で反射された一部の照明光は図24中破線矢印の方向に向かう。しかし、この反射光は焦点位置可変対物レンズ158には入らない。
(効果)
本実施形態によれば、操作部156と術者の額との相対的な位置の変位を、操作部156の部品形状という簡単な構成により吸収しているため、安価で小型軽量な装置を提供することができる。
フレアを防止するためのキャップ位置決め手段として、キャップの形状自体を利用しているため、視覚的に確認し易く、ドレープの取付け時の作業性が向上する。
本実施形態においては、キャップ162とキャップ取付け部163の位置決め手段として馬蹄形を用いたが、その形状は非点対称形であれば一義的な位置合せにより同様の効果が得られる。
尚、本発明は前記形態のものに限定されるものではなく、また、それらを組み合せて適用することも可能である。以下は本発明に関連する発明を列記する。それらの事項を組み合せた発明も可能なものである。