JP2004243443A - ラッピング加工装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ラッピングフィルムの砥粒面の同一箇所を複数回加工に用いる場合でも、安定した所望の面粗度を得ることができるラッピング加工装置を提供する。
【解決手段】ラッピング加工装置は、ワークWを回転自在に保持する保持手段と、薄肉基材の一面に砥粒が設けられたラッピングフィルム1と、ラッピングフィルム1の砥粒面をワークWに押付ける少なくとも2つのシュー2a、2bと、ラッピングフィルム1を加工停止中に送り出す巻取りリール6と、ラッピングフィルム1が送り出される経路上で、2つのシュー2a、2b間に配置され、ラッピングフィルム1の砥粒面を洗浄する洗浄手段とを有する。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラッピング加工装置に関し、特に、ラッピングフィルムの取り外しを伴うことなく砥粒面を洗浄することができるラッピング加工装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、各種機械部品の高精度化、高能率化の要求により、加工の精密性の必要が高まっている。加工の精密性を向上するものとして、ラッピングフィルムによる超仕上げ加工が注目されている。
【0003】
ラッピングフィルムを用いた超仕上げ加工は、片面に砥粒が接着されたラッピングフィルムを砥粒面と反対側からシューによりワークに押付け、ワークに回転を与えると同時に、オシレーション(振動)も与えて微細な切削を行う加工である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
微細な切削を行うので、切削により生じる切屑がラッピングフィルム上の砥粒間に詰まりやすい。したがって、一度使用した砥粒面を再度使用する場合には、ラッピングフィルムの目詰まりにより所望の面粗度を得ることが困難であるという問題がある。
【0005】
特に、2個のシューによりワークの両側面からラッピングフィルムを介して挟持するラッピングフィルム加工の場合、1個目のシューによりワークに押付けられた砥粒面は加工後に送られて、再度2個目のシューによりワークに押付けられて加工に用いられる。したがって、同じラッピングフィルムの表面が2回目に用いられる場合には、1回目の加工時の目詰まりにより、所望の面粗度を得ることが困難である。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−237116号公報(図1、図2参照)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ラッピングフィルムの砥粒面の同一箇所を複数回加工に用いる場合でも、安定した所望の面粗度を得ることができるラッピング加工装置の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のラッピング加工装置は、ワークを回転自在に保持する保持手段と、薄肉基材の一面に砥粒が設けられたラッピングフィルムと、前記ラッピングフィルムの砥粒面を前記ワークに押付ける少なくとも2つの押付け手段と、前記ラッピングフィルムを加工停止中に送り出すフィルム送り出し手段と、前記ラッピングフィルムが送り出される経路上で、前記2つの押付け手段の間に配置され、前記ラッピングフィルムの砥粒面を洗浄する洗浄手段とを有する。
【0009】
【発明の効果】
本発明のラッピング加工装置では、2つの押付け手段の間において洗浄手段によりラッピングフィルムの砥粒面を洗浄するので、砥粒間に詰まった切屑が除去され、2回目に押付け手段によりワークに押付けられて加工に使用される場合でも、安定した加工効率および面粗度を得ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
(第1の実施の形態)
最初に本発明が適用されるラッピング加工装置の概略構成について説明し、その後に本発明の特徴となる部分について説明する。
【0012】
図1は本発明の実施形態に係るラッピング加工装置を示す概略構成図、図2はシュー押付け手段の閉状態を示す概略断面図、図3はシュー押付け手段の開状態を示す概略断面図である。なお、説明の便宜上、ワークの軸線方向(図1において左右方向)をX方向と定義し、X方向に対して直交する水平方向(図1において紙面に直交する方向)をY方向と定義し、X方向に対して直交する鉛直方向(図1において上下方向)をZ方向と定義する。
【0013】
図1、2において、本実施形態のラッピング加工装置について概説すれば、非伸縮性でかつ変形可能な薄肉基材の一面に砥粒が設けられたラッピングフィルム1(図2参照)と、ラッピングフィルム1の背面側に配置されたシュー2(図2参照)と、シュー2(押付け部材)をワークWの加工面に向けて押付けてラッピングフィルム1の砥粒面をワークWに押付けるシュー押付け手段10と、ワークWを保持し回転駆動する回転駆動手段20(保持手段)と、ワークWとラッピングフィルム1相互間でオシレーションを生じさせるオシレーション手段30とを有し、ワークWを回転しつつこれにラッピングフィルム1を押圧しラッピング加工を施すに当り、前記シュー押付け手段10、回転駆動手段20あるいはオシレーション手段30等の作動状態を適宜検知し、制御部Cで制御している。
【0014】
これに加えて、制御部Cは、洗浄手段7(図4参照)が接続されており、加工停止中にラッピングフィルム1を洗浄するように洗浄手段7を制御している。
【0015】
なお、本実施形態のワークWは、断面円弧状の加工面を有するもの、例えば、クランクシャフトのジャーナル部やピン部等のような断面真円状の加工面を有するものである。
【0016】
以下、詳述する。
【0017】
まず、ラッピングフィルム1は、種々のタイプがあるが、本実施形態では、基材が非伸縮性の高い材料、例えば、板厚が25μm〜130μm程度のポリエステルなどから構成され、この基材の一面には、数μm〜200μm程度の粒径を有する多数の砥粒(具体的には、酸化アルミニウム、シリコンカーバイド、ダイアモンド等からなる)が接着剤により取り付けられている。砥粒は、基材の一面に全面にわたって接着してもよく、また、所定幅の無砥粒領域を間欠的に形成したものであっても良い。基材の他面には、ゴムあるいは合成樹脂等からなる抵抗材料(図示せず)が取り付けられているが、場合によっては滑り止め加工を施しても良い。
【0018】
このラッピングフィルム1は、図2に示すように、モータMにより駆動される巻取りリール6(フィルム送り出し手段)の回転により、ラッピング加工装置の枠体等に支持された供給リール5から引き出され、後述の押圧アーム11、12の先端に設けられたフィルムローラR、R、R等にガイドされ、巻取りリール6に巻き取られるが、供給リール5と巻取りリール6の近傍にはロック装置が設けられ、このロック装置の作動により全体に所定のテンションが付与された状態で保持される。ラッピングフィルム1の送り出しは、加工停止時に行われる。
【0019】
前記シュー2は、ゴムあるいは合成樹脂等により構成された比較的剛性を有するものであり、図2、4に示すように、内面側はワークWの加工面に沿うように円弧面とされている。以下では、ラッピングフィルム1の送り出し方向において、先に配置されているシューをシュー2a、後に配置されているシューをシュー2bと称する。
【0020】
シュー押付け手段10は、各シュー2が先端部に設けられた押圧アーム11、12と、これら押圧アーム11、12の後端に設けられ、所定の加圧力で両シュー2をワークWの加工面に向かって押付ける流体圧シリンダ13と、シューの押圧力を調節する押圧力調節手段15とを有している。
【0021】
前記シュー押付け手段10は、流体圧シリンダ13が作動すると、支持ピン14を中心として両押圧アーム11、12が、図2に示す閉状態と、図3に示す開状態になる。両押圧アーム11、12の回動は、ラッピングフィルム1と共に行なわれ、閉じ回動によりシュー2がラッピングフィルム1を介してワークWを加圧し、開き回動によりワークWとシュー2の当接を解除する。
【0022】
なお、押圧力調節手段15は、シュー2を押圧するばね力をカム16により調節し、シュー2のワークWの加工面に対する押圧力を調節する。押圧力調節手段15も制御部Cに接続されており、これにより制御可能となっている。
【0023】
回転駆動手段20は、図1において、主軸21を回転自在に支持するヘッドストック22と、主軸21の先端に連結されワークWの一端を把持するチャック23と、主軸21にベルト24を介して連結された主軸モータMと、ワークWの他端を支持するセンタを備えるテールストック25とを有している。
【0024】
ワークWは、ヘッドストック22とテールストック25との間にセットされ、主軸モータMの回転がベルト24、主軸21及びチャック23を介して伝達され、回転することになるが、これらヘッドストック22とテールストック25は、Y方向に沿ってスライド移動自在なテーブル26上に設けられ、このテーブル26は、X方向に沿ってスライド移動自在なテーブル27上に配置されている。
【0025】
オシレーション手段30は、テーブル27の端部に当接する偏心回転体33と、偏心回転体33を回転駆動するオシレーション用のモータMと、テーブル27の端部に偏心回転体33を常時当接させるためのばね等の弾性手段34と、を有し、偏心回転体33をモータMにより回転してテーブル27をX方向に往復移動し、ワークW全体をX方向にオシレーションするものである。
【0026】
オシレーション手段30によるオシレーションの振幅は、モータMの軸心に対する偏心回転体33の偏心量により定められ、オシレーションの速度は、モータMの回転速度により制御される。なお、偏心量の調節は、モータMに軸と偏心回転体33との嵌合部分に調節板を挿入するなどの手段が使用されるが、流体圧手段などを利用しても良く、種々の手段がある。
【0027】
以上、ラッピング加工装置の全体的な構成を説明したが、本実施形態では、特に、2つのシュー2a、2b間において、洗浄手段によりシュー2aで使用済みのラッピングフィルム1を洗浄することを特徴としている。また、図2、3においては、説明の容易のためにフィルムローラRが一つだけ配置されている様子を示して、ラッピング加工装置の全体構成について概説したが、本実施形態ではシュー2a、2b間に複数のフィルムローラが設けられ、その配置にも特徴を有する。したがって、以下では、洗浄手段およびフィルムローラの配置について詳細に説明し、洗浄手段としては、超音波ブラシ、超音波バス、高圧噴射ノズルが考えられるので、この順に説明する。
【0028】
(超音波ブラシ)
図4は、超音波ブラシによりラッピングフィルムを洗浄する様子を示す該略図である。
【0029】
図4に示すように、ワークWは、ラッピング加工時には、回転自在に保持されており、ラッピングフィルムを介して2つのシューにより両側面が挟まれている。ラッピングフィルムは、加工停止中に送り出される際の送り経路が、複数のフィルムローラにより決められている。
【0030】
加工停止中には、図中矢印で示す方向にラッピングフィルム1が送られており、ラッピングフィルム1は、フィルムローラR、R、R、R、R、Rの順に送られる。最初にシュー2aによりワークWに押付けられて加工に用いられた砥粒面は、次にシュー2bにより加工に用いられるまでに、フィルムローラR、R、R、Rを経由する。
【0031】
本発明では、上記ラッピングフィルム1が送られる経路上で、シュー2aおよびシュー2b間のフィルムローラR近傍でラッピングフィルムの砥粒面側に超音波ブラシ7が設置されており、この位置まで送られたラッピングフィルムの砥粒面が超音波ブラシ7により洗浄される。
【0032】
ラッピングフィルム1は、フィルムローラRにより砥粒面が広くなるように反らされており、この広くなった砥粒面が超音波ブラシ7により擦られて洗浄される。砥粒面が広くされているので、砥粒間の隙間が大きくなり、該砥粒間に詰まっている切屑が除去され易い。
【0033】
なお、超音波ブラシ7による砥粒面の洗浄は、フィルムローラRの位置ではなく、フィルムローラR、R、Rの位置で行ってもよく、また、複数位置において複数回行ってもよい。いずれの場合においても、ラッピングフィルム1は、背面からフィルムローラR、R、Rが押付けられて反らされた状態で洗浄されることが、砥粒間の切屑排除のために望ましい。
【0034】
(超音波バス)
図5は、超音波バスによりラッピングフィルムを洗浄する様子を示す該略図である。
【0035】
超音波バス8とは、洗浄液を充填した液槽に超音波振動を供給して洗浄を行う装置である。洗浄液としては、通常のラッピング加工に用いるクーラント(加工液)を用いることができる。
【0036】
超音波バス8を用いた場合にも、超音波ブラシ7の場合と同様に、シュー2aにより使用された砥粒面をシュー2bにより使用する前に洗浄するべく、シュー2a、2b間において、フィルムローラR〜R付近で洗浄が行われる。
【0037】
たとえば、図5に示すように、フィルムローラRの位置において、ラッピングフィルム1が超音波バス8の液槽に浸漬され、超音波振動が与えられる。フィルムローラRによりラッピングフィルム1の砥粒面が大きくなるように反らされているので、砥粒間が広がり適当に切屑が除去される。これにより、シュー2bにおいて再度砥粒面が使用されても安定した加工効率を得ることができ、所望のワークWの面粗度を得ることができる。
【0038】
なお、図5では、フィルムローラRの位置に超音波バス8が設置され、切屑が除去される場合について図示しているが、これに限定されず、フィルムローラR、R、Rの各位置に超音波バス8が設置されてもよく、また、フィルムローラR、R、R、Rの全ての位置でラッピングフィルム1が浸かるように大きな液槽を有する超音波バスを用意してもよい。
【0039】
(高圧噴射ノズル)
図6は、高圧噴射ノズルによりラッピングフィルムを洗浄する様子を示す該略図である。
【0040】
図6では、図4に示す超音波ブラシ7を高圧噴射ノズル9に置換している。高圧噴射ノズル9は、洗浄液を高圧で砥粒面に向かって噴射し、噴圧によって砥粒間の切屑を除去するものである。高圧噴射ノズル9の設置に適した位置や、ラッピングフィルム1を砥粒面が広くなるように反らせる構成については、図4で説明した場合と同様である。
【0041】
一例として、図6で示すように、フィルムローラRの位置において、反らされたラッピングフィルム1の砥粒面に対し、高圧噴射ノズル9により洗浄液を噴射して、切屑を排除することができる。高圧噴射ノズル9は、図示しないクーラント貯蔵タンクと接続されており、このタンクから洗浄液を吸出し、噴射している。
【0042】
以上説明してきたように、本実施形態では、2つのシュー2a、2b間において洗浄手段(超音波ブラシ7、超音波バス8、高圧噴射ノズル9)によりラッピングフィルム1の砥粒面を洗浄するので、砥粒間に詰まった切屑が除去され、2回目にシュー2bによりワークWに押付けられて加工に使用される場合でも、安定した加工効率および面粗度を得ることができる。
【0043】
また、洗浄手段により洗浄する際には、フィルムローラにより反らされて砥粒面を広くされているので、砥粒間に詰まった切屑の除去が容易となり、反らされずに洗浄される場合に比べてより適当な洗浄を行うことができる。
【0044】
なお、上記実施形態では、洗浄手段として、超音波ブラシ、超音波バス、高圧噴射ノズルを例示しているが、これら以外でも、砥粒間を洗浄できるものであればいかなるものを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るラッピング加工装置を示す概略構成図である。
【図2】シュー押付け手段の閉状態を示す概略断面図である。
【図3】シュー押付け手段の開状態を示す概略断面図である。
【図4】超音波ブラシによりラッピングフィルムを洗浄する様子を示す該略図である。
【図5】超音波バスによりラッピングフィルムを洗浄する様子を示す該略図である。
【図6】高圧噴射ノズルによりラッピングフィルムを洗浄する様子を示す該略図である。
【符号の説明】
1…ラッピングフィルム、
2、2a、2b…シュー、
5…供給リール、
6…巻取りリール、
7…超音波ブラシ、
8…超音波バス、
9…高圧噴射ノズル、
、R、R〜R…フィルムローラ、
W…ワーク。

Claims (6)

  1. ワークを回転自在に保持する保持手段と、
    薄肉基材の一面に砥粒が設けられたラッピングフィルムと、
    前記ラッピングフィルムの砥粒面を前記ワークに押付ける少なくとも2つの押付け手段と、
    前記ラッピングフィルムを加工停止中に送り出すフィルム送り出し手段と、
    前記ラッピングフィルムが送り出される経路上で、前記2つの押付け手段の間に配置され、前記ラッピングフィルムの砥粒面を洗浄する洗浄手段と、
    を有するラッピング加工装置。
  2. 前記ラッピングフィルムは、前記2つの押付け手段の間において、前記ラッピングフィルムの砥粒面の表面積が大きくなるように、砥粒面の反対側から反らされつつ、前記洗浄手段により洗浄が行われる請求項1に記載のラッピング加工装置。
  3. 前記洗浄手段は、前記ラッピングフィルムの砥粒面を超音波洗浄する超音波ブラシである請求項1または請求項2に記載のラッピング加工装置。
  4. 前記洗浄手段は、前記ラッピングフィルムを洗浄液に浸漬し、超音波振動を前記洗浄液に供給して前記ラッピングフィルムの砥粒面を洗浄する超音波バスである請求項1または請求項2に記載のラッピング加工装置。
  5. 前記洗浄手段は、前記ラッピングフィルムに洗浄液を高圧噴射して前記ラッピングフィルムの砥粒面を洗浄する高圧噴射ノズルである請求項1または請求項2に記載のラッピング加工装置。
  6. 前記ラッピングフィルムは、非伸縮性でかつ変形可能である請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のラッピング加工装置。
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