JP3690397B2 - ラッピング加工装置およびラッピング加工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラッピングフィルムを用いたラッピング加工装置およびラッピング加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、各種機械部品の高精度化、高能率化の要求により、加工の精密性の必要が高まっている。加工の精密性を向上するものとして、ラッピングフィルムによる超仕上げ加工が注目されている。
【0003】
フィルムを用いた超仕上げ加工は、非伸縮性でかつ変形可能な薄肉基材の一面に砥粒が設けられたラッピングフィルムを砥粒面からシューによりワークに押付け、ワークに回転を与えると同時に、オシレーション(振動)も与えて微細な切削を行う加工である。
【0004】
ラッピングフィルムは、ロールテープ状に形成されており、供給リールから巻き取りリールまで送り出しが可能となっている。ラッピングフィルムは、ワークの加工中には送り出されないように固定され、一つの加工が終わると所定量送り出されて異なる表面が次の加工に用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このようにラッピングフィルムは、加工に従って順に送り出されて使用されており、通常同一表面が複数回加工に使用されている。複数回の使用によりラッピングフィルム表面は、砥粒が磨耗して小さくなったり、剥離したりしてしまう。
【0006】
しかし、従来のラッピング加工装置では、ラッピングフィルム表面の砥粒の状態に関わらず、常に一定の条件、たとえば、シューをワークに押付ける押付け力を一定値としたままで加工を持続する。
【0007】
これでは、不均一なラッピングフィルム表面により、加工も不均一となり、所望の表面粗さを得ることができない。また、砥粒がラッピングフィルム表面より突出する量が不均一である場合には、ワークに傷が発生して精密度が低下し、再度加工を行う必要が生じることもある。
【0008】
【特許文献1】
特開平7−237116号公報(図1、図2参照)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ラッピングフィルム表面の砥粒の状態に対応して所望の表面粗さを得ることができるラッピング加工装置およびその方法の提供を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のラッピング加工装置は、ワークを回転自在に保持する保持手段と、薄肉基材の一面に砥粒が設けられたラッピングフィルムと、前記保持手段により回転されている前記ワークに前記ラッピングフィルムの砥粒面を押付ける押付け部材と、加工停止中に前記ラッピングフィルムを送り出すフィルム送り出し手段と、前記ラッピングフィルムの表面状態を検出する検出手段と、検出結果に基づいて、加工中の前記押付け部材の押付け力、および、加工停止中のラッピングフィルムの送り出し量の少なくとも一方を制御する制御手段とを有する。
【0011】
本発明のラッピング加工方法は、薄肉基材の一面に砥粒が設けられたラッピングフィルムを砥粒面から押付け部材によりワークに押付け、前記ワークに回転を与えると同時に、前記ワークに対して相対的な振動を前記ラッピングフィルムに与えて、前記ワークの表面を加工する表面加工方法であって、前記ラッピングフィルムの表面状態を検出する工程と、検出結果に基づいて、加工中の前記押付け部材の押付け力、および、加工停止中のラッピングフィルムの送り出し量の少なくとも一方を制御する工程とを有する。
【0012】
【発明の効果】
本発明のラッピング加工装置およびラッピング加工方法では、ラッピングフィルムの表面状態の検出結果に基づいて、加工中の前記押付け部材の押付け力、および、加工停止中のラッピングフィルムの送り出し量の少なくとも一方を制御するので、ラッピングフィルムの表面状態に機動的に対応して安定かつ均一なラッピング加工を行うことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
最初に本発明が適用されるラッピング加工装置の概略構成について説明し、その後に本発明の特徴となる部分について説明する。
【0015】
図1は本発明の実施形態に係るラッピング加工装置を示す概略構成図、図2はシュー押付手段の閉状態を示す概略断面図、図3はシュー押付手段の開状態を示す概略断面図である。なお、説明の便宜上、ワークの軸線方向(図1において左右方向)をX方向と定義し、X方向に対して直交する水平方向(図1において紙面に直交する方向)をY方向と定義し、X方向に対して直交する鉛直方向(図1において上下方向)をZ方向と定義する。
【0016】
図1、2において、本実施形態のラッピング加工装置について概説すれば、非伸縮性でかつ変形可能な薄肉基材の一面に砥粒が設けられたラッピングフィルム1(図2参照)と、ラッピングフィルム1の背面側に配置されたシュー2(図2参照)と、シュー2(押付け部材)をワークWの加工面に向けて押付けてラッピングフィルム1の砥粒面をワークWに押付けるシュー押付手段10と、ワークWを保持し回転駆動する回転駆動手段20(保持手段)と、ワークWとラッピングフィルム1相互間でオシレーションを生じさせるオシレーション手段30とを有し、ワークWを回転しつつこれにラッピングフィルム1を押圧しラッピング加工を施すに当り、前記シュー押付手段10、回転駆動手段20あるいはオシレーション手段30等の作動状態を適宜検知し、制御部Cで制御している。なお、本実施形態のワークWは、断面円弧状の加工面を有するもの、例えば、クランクシャフトのジャーナル部やピン部等のような断面真円状の加工面を有するものである。
【0017】
以下、詳述する。
【0018】
まず、ラッピングフィルム1は、種々のタイプがあるが、本実施形態では、基材が非伸縮性の高い材料、例えば、板厚が25μm〜130μm程度のポリエステルなどから構成され、この基材の一面には、数μm〜200μm程度の粒径を有する多数の砥粒(具体的には、酸化アルミニウム、シリコンカーバイド、ダイアモンド等からなる)が接着剤により取り付けられている(図5参照)。砥粒は、基材の一面に全面にわたって接着してもよく、また、所定幅の無砥粒領域を間欠的に形成したものであっても良い。基材の他面には、ゴムあるいは合成樹脂等からなる抵抗材料(図示せず)が取り付けられているが、場合によっては滑り止め加工を施しても良い。
【0019】
このラッピングフィルム1は、図2に示すように、モータM3により駆動される巻取りリール6(フィルム送り出し手段)の回転により、ラッピング加工装置の枠体等に支持された供給リール5から引き出され、後述の押圧アーム11、12の先端に設けられたフィルムローラR1、R5、R2等にガイドされ、巻取りリール6に巻き取られるが、供給リール5と巻取りリール6の近傍にはロック装置が設けられ、このロック装置の作動により全体に所定のテンションが付与された状態で保持される。
【0020】
前記シュー2は、ゴムあるいは合成樹脂等により構成された比較的剛性を有するものであり、図2、4に示すように、内面側はワークWの加工面に沿うように円弧面とされているが、外周側はシューケース3a、3bに保持され、押圧アーム11、12に保持されている。
【0021】
シュー押付手段10は、各シュー2が先端部に設けられた押圧アーム11、12と、これら押圧アーム11、12の後端に設けられ、所定の加圧力で両シュー2をワークWの加工面に向かって押付ける流体圧シリンダ13と、シューの押圧力を調節する押圧力調節手段15とを有している。
【0022】
前記シュー押付手段10は、流体圧シリンダ13が作動すると、支持ピン14を中心として両押圧アーム11、12が、図2に示す閉状態と、図3に示す開状態になる。両押圧アーム11、12の回動は、ラッピングフィルム1と共に行なわれ、閉じ回動によりシュー2がラッピングフィルム1を介してワークWを加圧し、開き回動によりワークWとシュー2の当接を解除する。
【0023】
なお、押圧力調節手段15は、シューケース3a、3bを押圧するばね力をカム16により調節し、シュー2のワークWの加工面に対する押圧力を調節する。押圧力調節手段15も制御部Cに接続されており、これにより制御可能となっている。
【0024】
回転駆動手段20は、図1において、主軸21を回転自在に支持するヘッドストック22と、主軸21の先端に連結されワークWの一端を把持するチャック23と、主軸21にベルト24を介して連結された主軸モータM1と、ワークWの他端を支持するセンタを備えるテールストック25とを有している。
【0025】
ワークWは、ヘッドストック22とテールストック25との間にセットされ、主軸モータM1の回転がベルト24、主軸21及びチャック23を介して伝達され、回転することになるが、これらヘッドストック22とテールストック25は、Y方向に沿ってスライド移動自在なテーブル26上に設けられ、このテーブル26は、X方向に沿ってスライド移動自在なテーブル27上に配置されている。
【0026】
オシレーション手段30は、テーブル27の端部に当接する偏心回転体33と、偏心回転体33を回転駆動するオシレーション用のモータM2と、テーブル27の端部に偏心回転体33を常時当接させるためのばね等の弾性手段34と、を有し、偏心回転体33をモータM2により回転してテーブル27をX方向に往復移動し、ワークW全体をX方向にオシレーションするものである。
【0027】
オシレーション手段30によるオシレーションの振幅は、モータM2の軸心に対する偏心回転体33の偏心量により定められ、オシレーションの速度は、モータM2の回転速度により制御される。偏心回転体33の回転位置は、ロータリエンコーダ35により検出される。なお、偏心量の調節は、モータM2に軸と偏心回転体33との嵌合部分に調節板を挿入するなどの手段が使用されるが、流体圧手段などを利用しても良く、種々の手段がある。
【0028】
以上、ラッピング加工装置の全体的な構成を説明したが、本実施形態では、特に、ラッピングフィルム1の砥粒面の状態、すなわち表面粗さを検出して、この検出結果に基づいて、シュー2の押付け力およびラッピングフィルム1の送り出し量の少なくとも一方を制御することを特徴としている。
【0029】
したがって、表面粗さを検出するため検出手段として、粗さ測定器4および粗さ測定器本体40を有する。粗さ測定器4は、図2に示すように、未使用のラッピングフィルム1の砥粒面を検出できる位置に配置されている。粗さ測定器4が粗さ測定器本体40に接続され、粗さ測定器本体40が制御部Cに接続されている。制御部Cは、粗さの測定結果に基づいて、ラッピングフィルム1の送り出しに係るモータM3、および、シュー2をワークWに押付ける押付け力を制御する押圧力調節手段15にそれぞれ接続されており、粗さ測定器4の検出結果に基づいてこれらを制御する。
【0030】
粗さ測定器4としては、例えば、超深度形状測定顕微鏡(VK−8500:キーエンス)や、非接触3次元表面形状・粗さ測定器(New View 5000:ザイゴ株式会社)等の一般的に販売されている粗さ測定器を使用することができる。
【0031】
また、本実施形態では、予めラッピングフィルム1上の砥粒を研磨して所定の突き出し高さをそろえるために、さらにツルーイング手段7を有する。ツルーイング手段7は、ツルーア本体70およびツルーイング部71を含んでいる。ツルーア本体70は、制御部Cに接続されており、これにより制御され、ツルーイング部71を駆動する。ツルーイング部71は、回動自在な円筒状に形成されており、側面にダイアモンド砥粒が固着されている。回動しながら、側面でラッピングフィルム1を擦ることによって、ラッピングフィルム1をツルーイングすることができる。
【0032】
以下、詳細に本発明の要部について説明する。
【0033】
図4は砥粒のツルーイングの様子を示す図、図5は砥粒面を示す拡大図である。
【0034】
粗さ測定器4は、ラッピングフィルム1の砥粒面の砥粒の突き出し高さLを検出する。砥粒は、図5に示すように、非伸縮性でかつ変形可能な薄肉基材の一面上に配置されており、接着剤により固着されている。ここで、粗さ測定器4により測定する砥粒の突き出し高さLは、接着剤から突き出ている砥粒の高さである。
【0035】
制御部Cは、まずツルーイング手段7を制御して、ラッピングフィルム1の砥粒面の砥粒の高さをそろえる。具体的には、図4に示すように、制御部Cの制御に基づいて、ツルーア本体70は、ツルーイング(研磨)を行うための回動自在な円筒状のツルーイング部71を回転駆動させて、この側面に固着されたダイアモンド砥粒をラッピングフィルム1に当てることによって所定の突き出し高さ以上突き出しているラッピングフィルム1上の砥粒を該所定の高さまで削り取り、ラッピング加工前のラッピングフィルム1の砥粒の突き出し高さを均一にそろえる。
【0036】
粗さ測定器4は、ツルーイング後のラッピングフィルム1表面の画像を撮影し、撮影結果を粗さ測定器本体40に送信する。粗さ測定器本体40は、撮影された画像を解析して砥粒の突き出し高さLを算出する。算出された突き出し高さLは、粗さ測定器本体40から制御部Cに送信される。制御部Cは、突き出し高さLに基づいて、目詰まり状態を判断し、その切削力を判断する。
【0037】
制御部Cは、上記判断を行ったラッピングフィルム1の箇所および判断結果を記憶しており、ラッピングフィルム1が送り出されてこれからシュー2の押付けにより加工に使用される箇所の判断結果に基づいて、所望の加工量が得られるように押圧力調節手段15によりシュー2の押付け力を制御するか、または、その箇所の切削力が著しく低い場合には、さらにラッピングフィルム1を送り出してその箇所が加工に使用されないようにする。
【0038】
通常、ツルーイング後のラッピングフィルム1表面は一様の状態となり、切削力が均等になるので、特に加工に問題等がない場合には、制御部Cは、シュー2による押付け力およびラッピングフィルム1の送り出し量の調節は行わず、一定の押付け力および送り出し量となるように各構成を制御する。
【0039】
以上のように、第1実施形態では、未使用のラッピングフィルム1をツルーイングしているので、加工に使用した際に均一な加工量を得ることができる。加えて、粗さ測定器4によりツルーイング後のラッピングフィルム1表面を測定しているので、ツルーイング量に対応した適切な切削を行うことができ、または、ツルーイングに適さない箇所の使用を禁止して安定した加工量を得ることができる。
【0040】
(第2の実施の形態)
第2実施形態では、最初のシューケース3aを経由して次のシューケース3bに送られる途中のラッピングフィルム1の砥粒面を粗さ測定器4で検出している。換言すると、粗さ測定器4を、2つのシューケース3a、3b間に設置する場合である。
【0041】
図6はシューケース3a、3b間に粗さ測定器4を設置した状態のラッピング加工装置を示す図である。
【0042】
図6に示すラッピング加工装置は、粗さ測定器4がシューケース3a、3b間に配置されていることを除いて、図2に示すラッピング加工装置とほとんど同様の構成を有するので、第2実施形態では、同様の構成には同様の参照番号を付してその説明を省略する。第2実施形態の特徴となる構成について簡単に説明する。
【0043】
粗さ測定器4は、シューケース3a、3b間に配置されており、ラッピングフィルム1の砥粒面の状態を検出する。粗さ測定器4は、粗さ測定器本体40に接続されており、撮影した画像を粗さ測定器本体40に送信する。粗さ測定器本体40は、制御部Cに接続されている。制御部Cは、さらに、モータM3、および押圧力調節手段15に接続されており、粗さ測定器4による測定結果に基づいてモータM3、および押圧力調節手段15を制御する。
【0044】
シューケース3a、3b間でラッピングフィルム1砥粒面を検出する場合、最初のシューケース3aを経由する際に砥粒面は一度使用されているので、切屑が砥粒間に詰まり、また砥粒自体が削れて小さくなっている。この目詰まりおよび砥粒の磨耗にばらつきがあるので、このばらつきに対応して、図6に示すラッピング加工装置は各構成を制御する。
【0045】
各構成の作用について説明する。まず、粗さ測定器4は、砥粒の状態の画像を撮像し、画像を粗さ測定器本体40に送信する。粗さ測定器本体40は、画像に基づいて、砥粒の突き出し高さを算出する。この算出結果は粗さ測定器本体40から制御部Cに送信される。制御部Cは砥粒面の目詰まり程度を判断し、この判断結果と該判断がなされたラッピングフィルム1の箇所とを記憶しておき、これらに基づいて各構成の動作を制御する。
【0046】
砥粒の突き出し高さに従って、制御部Cは、(1)モータM3、または(2)押圧力調節手段15を制御して、安定したラッピング加工を確保する。
【0047】
(1)モータM3を制御する場合
目詰まり部分でラッピング加工を行うと適当な加工が行えず、所望の表面粗さを得ることができない。したがって、制御部Cは、粗さ測定器4により測定した突き出し高さが適当な加工を行える程度かどうかを判断する。制御部Cは、判断結果と判断したラッピングフィルム1上の箇所を記憶しているので、ラッピング加工に使用される位置まで送られているラッピングフィルム1の箇所、すなわち、シューケース3bが保持するシュー2によりワークWに押付けられる箇所について、目詰まりの状態がどうであったかを検索する。適当な加工ができない位目詰まりを起こしている場合には、制御部Cは、ラッピングフィルム1のこの箇所で加工を行っても安定した加工量を得ることができないので、この箇所を使用しないように、モータM3を制御して、ラッピングフィルム1を送り出す。
【0048】
なお、目詰まりの程度が普通の場合、すなわち砥粒の突き出し高さが低くないと判断された場合、制御部Cは、通常の送り出し量でラッピングフィルム1の送り出しを行い、シューケース3bが保持するシュー2に押付けられるラッピングフィルム1の箇所をそのまま使用する。
【0049】
(2)押圧力調節手段15を制御する場合
目詰まり部分でそのままラッピング加工を行っても、目詰まり具合によっては所望の表面粗さを得ることができない。したがって、制御部Cは、ラッピングフィルム1上の目詰まり部分の位置を記憶し、該目詰まり部分がラッピング加工に使用される位置まで送られたら、シュー2のワークに対する押付け力が大きくなるように押圧力調節手段15を制御する。これにより、目詰まりで切削力が低減しているラッピングフィルム1を用いても押付け力の増大により充分な切削量を得られることができ、所望の表面粗さを得ることができる。
【0050】
砥粒の突き出し高さに対するシュー2の押付け力の関係は次の通りである。
【0051】
図7は砥粒の突き出し高さに対する押付け力の関係を示す図である。
【0052】
図7において、横軸は、未使用のラッピングフィルム1をツルーイングした直後の砥粒の突き出し高さを100%として、これを基準とする砥粒の突き出し高さを示している。また、縦軸は、砥粒の突き出し高さが100%(ツルーイング直後)の際の適切なシュー2の押付け力を100%として、これを基準として押付け力を示している。
【0053】
図7に示すように、ツルーイング直後のラッピングフィルム1の場合は押付け力を100%としているが、ラッピングフィルム1が目詰まりあるいは摩滅して砥粒の突き出し高さが低くなってくると押付け力を強くしなければ、所定の表面粗さを得ることができない。すなわち、最初のシューケース3aを経由したラッピングフィルム1表面は、加工により目詰まりが起こり、または砥粒が摩滅して、突き出し高さが減少している。
【0054】
たとえば、シューケース3aを経由して突き出し高さがツルーイング直後の60%になっている場合、100%の場合と同様の押付け力としたのでは所望の表面粗さを得られない。したがって、図7に示すように、押付け力を110%に強くすることで所望の表面粗さを得ることができる。また、突き出し高さが20%になっている場合には押付け力を120%にして所望の表面粗さを得ることができる。
【0055】
以上のように、第2実施形態では、砥粒の突き出し高さの検出に基づいて、(1)モータM3、(2)押圧力調節手段15を制御する。
【0056】
したがって、(1)モータM3を制御する場合には、ラッピングフィルム1の送り出し量を変更することによって、安定した均等な加工に支障をきたすラッピングフィルム1の箇所の使用を防止して、安定した加工量を得ることができる。
【0057】
(2)押圧力調節手段15を制御する場合には、目詰まりおよび磨耗により突き出し高さが低くなった砥粒を用いたラッピング加工においても、押付け力を変更することによって、安定した均等な加工量を得ることができる。
【0058】
(第3の実施の形態)
第3実施形態では、2つのシューケース3a、3bを経由し終わったラッピングフィルム1の砥粒面を粗さ測定器4で検出している。換言すると、粗さ測定器4を、送り出し方向において、2つのシューケース3a、3bの奥側に設置する場合である。
【0059】
図8は、シューケース3a、3bの奥に粗さ測定器4を設置した状態のラッピング加工装置を示す図である。
【0060】
図8に示すラッピング加工装置は、粗さ測定器4が2つのシューケース3a、3bの奥に配置されていることを除いて、図2に示すラッピング加工装置とほとんど同様の構成を有するので、第3実施形態では、同様の構成には同様の参照番号を付してその説明を省略する。第3実施形態の特徴となる構成について簡単に説明する。
【0061】
粗さ測定器4は、シューケース3aとシューケース3bと間に配置されており、ラッピングフィルム1の砥粒面の状態を検出する。粗さ測定器4は、粗さ測定器本体40に接続されており、撮影した画像を粗さ測定器本体40に送信する。粗さ測定器本体40は、制御部Cに接続されている。制御部Cは、さらに、モータM3、および押圧力調節手段15に接続されており、粗さ測定器4による測定結果に基づいてモータM3、および押圧力調節手段15を制御する。
【0062】
シューケース3a、3bの奥でラッピングフィルム1砥粒面を検出する場合、2つのシューケース3a、3bを経由する際に砥粒面が使用されているので、切屑が砥粒間に詰まっている。図8に示すラッピング加工装置では、粗さ測定器4により砥粒間の目詰まりを検出し、この検出結果に基づき、各構成が制御される。
【0063】
各構成の作用を説明する。まず、粗さ測定器4は、砥粒の状態の画像を撮像し、画像を粗さ測定器本体40に送信する。粗さ測定器本体40は、画像に基づいて、砥粒の突き出し高さを算出する。この算出結果は粗さ測定器本体40から制御部Cに送信される。制御部Cは砥粒面の目詰まり程度を判断し、この判断結果と該判断がなされたラッピングフィルム1の箇所とを記憶しておき、これらに基づいて各構成の動作を制御する。
【0064】
目詰まりや摩滅の程度が激しい場合、すなわち砥粒の突き出し高さが低いと判断された場合、制御部Cは、今後ラッピングフィルム1を使用する際の条件としてフィードバックする。
【0065】
具体的には、制御部Cは、加工が終了して排出されたラッピングフィルム1の砥粒面の砥粒の突き出し高さに基づいて、ラッピングフィルム1が投入されてから排出されるまでにどれだけ目詰まりを起こし、また、どの部分で目詰まりや摩滅が起こりにくいかを検出し、今後のラッピングフィルム1の送り出し量や、シュー2によるワークへの押付け力の検討の為にフィードバックする。フィードバックされた内容は、図示しない記憶装置に格納され、これを分析して、今後の加工に活用することができる。
【0066】
以上のように、第3実施形態では、加工後のラッピングフィルム1の表面状態を粗さ測定器4により検出しているので、この検出結果に基づいて、今後のラッピングフィルム1の送り出し量や、シュー2の押付け力の調節に使用することができ、今後の安定した均一の加工量を達成することができる。
【0067】
以上、第1〜第3実施形態において説明してきたように、本発明では、ラッピングフィルム1の表面状態を粗さ測定器4および粗さ測定器本体40により検出し、この検出結果に基づいて、加工停止中のラッピングフィルム1の送り出し量、また加工中のシュー2の押付け力の少なくとも一方を変更している。したがって、加工に使用するラッピングフィルム1の状態、または加工に使用されたラッピングフィルム1の状態に機動的に対応して安定かつ均一なラッピング加工を行うことができる。
【0068】
詳細には、粗さ測定器4により検出した砥粒の突き出し量に基づいて、シュー2の押付け力を調整することによって、突き出し量に対応して良好なラッピング加工を行うことができる。
【0069】
加えて、検出した砥粒の突き出し量に基づいて、ラッピングフィルム1の送り出し量を制御することによって、目詰まりにより所望の加工が行えないラッピングフィルム1の使用を防止し、良好なラッピング加工を行うことができる。
【0070】
なお、上記実施形態では、ワークWとしてクランクシャフトを加工する場合について説明したが、これに限定されない。本発明は、カムシャフトのように断面非真円の円弧状の加工面を有するワークの加工にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係るラッピング加工装置を示す概略構成図である。
【図2】 シュー押付手段の閉状態を示す概略断面図である。
【図3】 シュー押付手段の開状態を示す概略断面図である。
【図4】 砥粒のツルーイングの様子を示す図である。
【図5】 砥粒面を示す拡大図である。
【図6】 シューケース間に粗さ測定器を設置した状態のラッピング加工装置を示す図である。
【図7】 砥粒の突き出し高さに対する押付け力の関係を示す図である。
【図8】 シューケースの奥に粗さ測定器を設置した状態のラッピング加工装置を示す図である。
【符号の説明】
1…ラッピングフィルム、
2…シュー、
3a、3b…シューケース、
4…粗さ測定器、
5…供給リール、
6…巻取りリール、
7…ツルーイング手段、
10…シュー押付手段、
15…押圧力調節手段、
20…回転駆動手段、
30…オシレーション手段、
40…粗さ測定器本体、
70…ツルーア本体、
71…ツルーイング部、
C…制御部、
M3…モータ、
R1、R2、R5…フィルムローラ、
W…ワーク。
Claims (6)
- ワークを回転自在に保持する保持手段と、
薄肉基材の一面に砥粒が設けられたラッピングフィルムと、
前記保持手段により回転されている前記ワークに前記ラッピングフィルムの砥粒面を押付ける押付け部材と、
加工停止中に前記ラッピングフィルムを送り出すフィルム送り出し手段と、
前記ラッピングフィルムの表面状態を検出する検出手段と、
検出結果に基づいて、加工中の前記押付け部材の押付け力、および、加工停止中のラッピングフィルムの送り出し量の少なくとも一方を制御する制御手段と、
を有するラッピング加工装置。 - 前記検出手段は、前記ラッピングフィルム上の前記砥粒の突き出し高さを検出する請求項1に記載のラッピング加工装置。
- さらに加工前の前記砥粒を研磨して所定の突き出し高さにそろえるツルーイング手段を有する請求項1または請求項2に記載のラッピング加工装置。
- 前記検出手段は、未使用の前記ラッピングフィルムの表面状態を検出する請求項1〜3のいずれか一項に記載のラッピング加工装置。
- 前記検出手段は、使用後の前記ラッピングフィルムの表面状態を検出する請求項1〜4のいずれか一項に記載のラッピング加工装置。
- 薄肉基材の一面に砥粒が設けられたラッピングフィルムを砥粒面から押付け部材によりワークに押付け、前記ワークに回転を与えると同時に、前記ワークに対して相対的な振動を前記ラッピングフィルムに与えて、前記ワークの表面を加工する表面加工方法であって、
前記ラッピングフィルムの表面状態を検出する工程と、
検出結果に基づいて、加工中の前記押付け部材の押付け力、および、加工停止中のラッピングフィルムの送り出し量の少なくとも一方を制御する工程と、
を有するラッピング加工方法。
Priority Applications (6)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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