JP3750661B2 - ラッピング加工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は ワークの加工面を砥粒付きのラッピングフィルム(以下単にフィルムと称することもある)によりフィルムラッピング加工(以下単にラッピング加工)するラッピング加工装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、自動車用エンジンのクランクシャフトのジャーナル部若しくはピン部は、ラッピング加工後、ローラバニッシュによる仕上げ加工され、表面を良好な面粗度に仕上げている。
【0003】
このような加工における前工程のラッピング加工は、ワークの加工面をラッピングフィルムで覆い、このフィルムを背面からシューで加圧し、フィルムをワークに押付けた状態でワークを回転しながらフィルムの砥粒面でワークを加工する。ラッピング加工装置は、シューを、フィルムを介してワークに押付ける機構のほか、ワークを回転駆動する機構や、ワークおよびラッピングフィルムのうちの少なくとも一方にワークの軸線方向に沿うオシレーションを付与するオシレーション機構を有している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、このようなラッピング加工のみでは、ワークの外周面のプロフィルや表面粗さが不十分なこともあるので、ローラをワークの外周面に押し当て、ワーク外周面の凹凸を潰し、ワークの面性状の向上を図り、そのプロフィルも中凹状に成形し、この中凹状部分を油溜りとして利用して適切な潤滑油の供給を可能としている(下記特許文献2等参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−237116号公報、(図1、図2参照)
【0006】
【特許文献2】
特開平6−190718号公報、(段落番号[0002]、図11参照)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、ワークのプロフィルを中凹状に成形する場合、バニッシュ仕上げにより行なうと、専用の加工工程が必要となり、加工が面倒で、工具自体も高価なものとなる等の間題がある。
【0008】
例えば、クランクシャフトのピン部をローラバニッシュ加工により中凹状に成形するには、クランクシャフトの軸端を旋盤のヘッドストックとテールストックで支持し、軸直角方向から一対の支持ローラを当て、支持ローラの反対側からバニッシュローラにより加圧する。
【0009】
このバニッシュローラは、そのプロフィルをクランクシャフトのピン部に転写するものであるため、個々のワークとバニッシュローラが対応関係でなければならず、前述のローラバニッシュ加工を行なうには、個々のワークの中凹状プロフィルに対応する中高状のバニッシュローラが必要になる。このため、バニッシュローラを汎用しにくく、製作も難しいことから、コスト的に不利となる。
【0010】
また、クランクシャフトのピン部は、軸方向端部に工具逃し用のフィレット部が形成されているが、このフィレット部近傍をローラバニッシュ加工すると、その端部がバニッシュローラの加圧により押し潰され、フィレット部側に入り込む状態、いわゆるダレを生じ、良好な真直度で仕上げることができない。
【0011】
このため、バニッシュローラを加圧する油圧シリンダの加圧力をフィレット部近傍と、中央部とで異なるように制御するか、あるいはバニッシュローラ自体の硬度を、ワークの中央部に当る部分よりフィレット部の近傍に当る部分で異ならしめる必要がある。
【0012】
しかし、バニッシュローラの加圧力を調節することは、面倒な制御操作が必要となり、ワークの生産性が低下する虞があり、また、バニッシュローラ自体の硬度を位置により異ならしめると、ローラの成形が面倒で、高価なものとなる。
【0013】
さらに、前記ローラバニッシュ加工は、クランクシャフトの軸部表面全体に対しバニッシュローラを加圧し面粗度を高めているので、面粗度が全体にわたり良好になり過ぎる虞がある。軸部の表面粗さが著しく小さくなると、摺動面の凹凸による油溜りがなくなり、潤滑油の保持能力が低下し、場合によっては油膜切れ、焼き付き、かじりを起す虞もある
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたもので、ラッピング加工によりワークの表面形状が中凹状となるように成形し、加工工程の面、コストの面、さらに潤滑性の面でも有利なラッピング加工装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、下記する手段により達成される。
【0015】
(1)薄肉基材の一面に砥粒が設けられたラッピングフィルムにより断面円弧状で所定幅の加工面を有するワークを覆い、
当該ラッピングフィルムの背面側に偶数個のシューを配置し、
該シューをシュー押付手段によりワークの加工面に押圧し、前記ラッピングフィルムの砥粒面を前記ワークに押付け、
前記ワークを回転駆動手段により回転駆動すると共に前記ワークおよび前記ラッピングフィルムのうちの少なくとも一方をオシレーション手段により前記ワークの軸線方向に沿うオシレーションを付与しつつ前記ワークの加工面にラッピング加工を施すラッピング加工方法であって、
前記ワークの加工面の幅方向中心線に対し異なる側に配置した同じ幅の前記シューを、前記オシレーション手段によるオシレーション幅より小さいオフセット量で交互にオフセットした状態で、各シューのワークに対する接触領域が当該ワークの中央領域でオーバーラップし端部ではオーバーラップしないように加工し、ワークのプロフィルを5μm〜20μmの範囲の中凹深さに成形することを特徴とするラッピング加工方法。
【0018】
(2)前記各シューのオフセット量は、前記ワークの加工面幅の3〜12%にしたことを特徴とする前記(1)のラッピング加工方法。
【0020】
(3)前記ワークは、両端にフィレット部を有するクランクシャフトのジャーナル部若しくはピン部である前記(1)又は(2)のラッピング加工方法。
【0021】
(4)前記ラッピングフィルムは、非伸縮性でかつ変形可能な薄肉基材により構成したことを特徴とする前記(1)のラッピング加工方法。
【0022】
【発明の効果】
請求項1の発明では、ワークの加工面の幅方向中心線に対し異なる側に同じ幅のシューを所定量オフセットし、ワークの中央領域では各シューがオーバーラップし、端部ではオーバーラップしないように、ラッピングフィルムをワークに押付けて加工するので、ワークの中央部分での加工量が他の部分の加工量より増大し、ワークのプロフィルを5μm〜20μmの範囲の中凹深さに成形できる。つまり、シューをオフセットするのみでワークを中凹状に成形できる。
【0023】
この結果、バニッシュローラを使用して中凹状に成形する場合に比し、加工工程が低減し、特殊なローラも不要となり、コスト的にきわめて有利となり、さらにワークの面粗度も不必要に平滑とならず、油溜りができ、潤滑性の面でも有利となる。また、シューそれぞれが同じ幅で偶数個設けられ、前記ワークの加工面の幅方向中心線に対し異なる側に交互にオフセットしたので、ワークの幅方向中心線を中心に対照的に成形でき、各シューのオフセットも容易でかつ精度良くでき、多数加工しても精度良く中央領域を加工でき、個々のワークに対し所望の中凹状部分を均一的に成形でき、製品品質も向上する。さらに、各シューのオフセット量をオシレーション幅より小さくしたので、何ら問題はなく、確実にオシレーションでき、加工時間を短縮できる。
【0026】
請求項2の発明では、各シューのオフセット量をワークの加工面幅の3〜12%としたので、5μm〜20μmという大きな中凹深さの凹部を確実に形成することができる。
【0028】
請求項3の発明では、ワークが両端にフィレット部を有するクランクシャフトのジャーナル部若しくはピン部であれば、このフィレット部のスペースを利用し加工でき、作業性が向上する。
【0029】
請求項4の発明では、ラッピングフィルムを非伸縮性でかつ変形可能な薄肉基材により構成したので、ラッピング加工を円滑に行なうことができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0031】
図1はラッピング加工装置の概略正面図、図2は図1の2−2線に沿う断面相当図である。
【0032】
図1、図2を参照して本発明方法で使用するラッピング加工装置について概説する。
【0033】
このラッピング加工装置は、クランクシャフトのジャーナル部若しくはピン部をワークWとするもので、非伸縮性でかつ変形可能な薄肉基材の一面に砥粒が設けられたラッピングフィルム1と、ラッピングフィルム1の背面側に配置されたシュー2(図2参照)と、シュー2をワークWの加工面に押付け、ラッピングフィルム1の砥粒面をワークWに押付けるシュー押付手段10(図2参照)と、ワークWを回転駆動する回転駆動手段20(図1参照)と、ワークWとラッピングフィルム1とを相対的にオシレーションさせるオシレーション手段30(図1参照)と、ワークW及びラッピングフィルム1周辺に冷却液を供給して冷却する冷却手段40(図2参照)とを有し、ワークWを回転しつつこれにラッピングフィルム1を押圧しラッピング加工を施している。また、このラッピング加工装置は、ラッピング加工に当り、シュー押付手段10、回転駆動手段20及びオシレーション手段30等の作動状態を適宜検知手段(図示せず)により検知し、この検知信号に基づき各手段を制御する制御部Ctが設けられている。
【0034】
以下、詳述する。
【0035】
ラッピングフィルム1は、種々のタイプがあるが、本実施形態では、基材が所定幅の帯状をした非伸縮性の高い材料、例えば、板厚tが25μm〜130μm程度のポリエステルなどから構成されている。このようにラッピングフィルムを非伸縮性でかつ変形可能な薄肉基材により構成すれば、ラッピング加工が円滑にでき、好ましい。
【0036】
この薄肉基材の一面には、数μm〜200μm程度の粒径を有する多数の砥粒(具体的には、酸化アルミニウム、シリコンカーバイト、ダイアモンド等からなる)が接着剤により取付けられている。砥粒は、基材の一面に全面にわたって接着してもよく、また、所定幅の無砥粒領域を間欠的に形成したものであっても良い。基材の他面には、ゴムあるいは合成樹脂等からなる抵抗材料(図示せず)が取付けられているが、場合によっては滑り止め加工を施しても良い。
【0037】
このラッピングフィルム1は、図2に示すように、巻取りリール6をモータMにより回転し牽引することにより、ラッピング加工装置の枠体等に支持された供給リール5から引き出され、多数のローラR1〜R9にガイドされ、巻取りリール6に巻き取られる。
【0038】
供給リール5と巻取りリール6の近傍にはロック装置(図示せず)が設けられ、このロック装置の作動によりラッピングフィルム1全体に所定のテンションが付与され、この状態で保持され、ラッピング加工が行なわれる。
【0039】
前記シュー2は、ゴムあるいは合成樹脂等により構成された比較的剛性を有するものであり、図2に示すように、内面側はワークWの加工面に沿うように円弧面とされているが、外周側はシューケース3に保持されている。
【0040】
シュー押付手段10は、シュー2を支持するシューケース3が先端部に取付けられた押圧アーム11,12と、これら押圧アーム11,12の後端に設けられ、所定の加圧力で両シュー2をワークWの加工面に向かって押付ける流体圧シリンダ13と、シュー2の押圧力を調節する押圧力調節手段15とを有している。
【0041】
前記シュー押付手段10は、流体圧シリンダ13が作動すると、支持ピン14を中心として両押圧アーム11,12が開閉するが、両押圧アーム11,12の回動は、ラッピングフィルム1と共に行なわれ、閉じ回動によりシュー2がラッピングフィルム1を介してワークWを加圧し、開き回動によりワークWとシュー2の当接を解除する。
【0042】
前記押圧力調節手段15は、シューケース3を押圧するばね力をカム16により調節して、シュー2のワークWの加工面に対する押圧力を調節する。ただし、これのみでなく、ばね力をネジ部材を用いて調節しても良い。
【0043】
回転駆動手段20は、図1において、主軸21を回転自在に支持するヘッドストック22と、主軸21の先端に連結されワークWの一端を把持するチャック23と、主軸21にベルト24を介して連結きれた主軸モータMと、ワークWの他端を支持するテールストック25とを有している。
【0044】
ワークWは、ヘッドストック22とテールストック25との間にセットされ、主軸モータMが回転すると、ベルト24、主軸21及びチャック23を介して伝達され、回転する。これらヘッドストック22とテールストック25は、Y方向に沿ってスライド移動自在なテーブル26上に設けられ、このテーブル26は、X方向に沿ってスライド移動自在なテーブル27上に配置されている。
【0045】
オシレーション手段30は、図1に示すように、テーブル27の端部に当接する偏心回転体33と、偏心回転体33を回転駆動するオシレーション用のモータMと、テーブル27の端部に偏心回転体33を常時当接させるためのばね等の弾発手段34と、を有し、モータMによる偏心回転体33の回転と弾発手段34との共働によりテーブル27をX方向に往復移動し、ワークW全体をX方向にオシレーションする。
【0046】
このオシレーションの振幅は、モータMの軸心に対する偏心回転体33の偏心量により定められ、オシレーションの速度は、モータMの回転速度により制御される。偏心回転体33の回転位置は、ロータリエンコーダ35により検出されるが、偏心量の調節は、モータMに軸と偏心回転体33との嵌合部分に調節板を挿入するかあるいは流体圧手段などを使用してもよい。
【0047】
なお、本実施形態のオシレーション手段30は、ワークWをX方向にオシレーションしているが、これのみでなく、ラッピングフィルム1を当該フィルムの長手方向にオシレーションしてもよい。この場合のオシレーション手段30としては、シュー2相互間からラッピングフィルム1を放射方向に一旦引き出し、ローラを巻回して元のシュー側に戻し、このローラを放射方向にオシレーションさせるという手段が用いられる。
【0048】
図3は本発明方法で使用するクランクシャフトのラッピング加工装置の要部を示す概略構成図、図4は図3の4−4線に沿う断面相当図、図5はラッピング加工後のワークの形状を示す正面図である。
【0049】
特に、本実施形態では、ワークWの表面形状がラッピング加工により中凹状に成形できるように、ラッピングフィルム1を押圧する各シュー2の位置をワークWに対し相互にオフセットしている。
【0050】
図3、図4に示すように、本実施形態では、シュー2(後述の2a、2bの総称)が偶数個使用され、各シュー2の位置をワークWに対し相互にオフセットすると、上部の2個のシュー2aのワークWに対する接触領域Aと、下部の2個のシュー2bのワークWに対する接触領域Bは、ワークの中央領域Cでオーバーラップし、端部領域Dではオーバーラップしない状態にセットすることができる。なお、本明細書では、シュー2がフィルム1を介してワークWの外周面と間接的に当接することを「接触」、シュー2がフィルム1を介してワークWの外周面と間接的に当接する領域のことを「接触領域」と略称する。
【0051】
したがって、この状態でのラッピング加工は、ワークWの中央領域Cは、ラッピングフィルム1が全てのシュー2で押圧されるので、ワークWの加工時間が長くなり、ワークWの端部領域Dは間欠的にシュー2で押圧されるので、ワークWの加工時間が短くなる。
【0052】
この結果、ワークWの表面形状は、図5に示すように、ワークWの中央領域Cが凹状部分Waとなり、端部領域Dが多く削られない凸状部分Wbとなり、全体として中凹状に成形される。
【0053】
前記シュー2のオフセットを量的に検証した結果、次のようになった。
【0054】
ラッピングフィルム1は、図3に示すように、ワークの加工面の幅Lに対応する幅Nであり、偶数個設けられているシュー2は、それぞれが同じ幅Sで、ワークWの加工面幅Lより小さい幅Sとした。各シュー2は、ワークWの加工面幅Lの中心線O−Oに対し異なる側に交互に「δ」だけオフセットした。ここに、オフセット量δは、加工面幅Lに対する百分率(100×δ/L%)の値とした。
【0055】
そして、シュー2を3,6,9,12%という異なるオフセット量δでそれぞれラッピング加工し、各場合の真直度を測定した結果、図6に示すような結果が得られた。
【0056】
図6は種々のオフセット量におけるワークの加工位置の真直度を示す図であり、横軸がワークWの加工面の位置を、縦軸がラッピング加工後のワークWの真直度、つまり中凹状部分Waの深さmに相当する量(μm)を示している。
【0057】
この図6の結果において、望ましいワークWの中凹状部分Waの深さmが、5μm〜20μmである点を考慮すれば、ワークWの加工面幅Lの中心線O−Oに対し各シュー2のオフセット量δが、3〜12%の場合は、いずれも好ましく実用に供し得るものである。特に、同じ幅Sのシュー2を偶数個使用し、ラッピングフィルム1の幅方向中心線O−Oに対し異なる側に交互にオフセット配置すれば、ワークの表面形状を、ワークの幅方向中心線を中心に中凹状に成形でき、しかも、各シュー2のオフセットが容易にかつ精度良くでき、多数加工しても精度良く中央領域を加工でき、個々のワークに対し所望の中凹状部分を均一的に成形でき、製品品質も向上する。
【0058】
また、ラッピング加工装置は、X方向のオシレーション手段30を有しているが、このオシレーション手段30によるオシレーション幅とオフセット量δの関係は、各シュー2のオフセット量δがオシレーション幅より小さくすることが好ましい。ただし、シュー2をオフセットした後にオシレーションしても、シュー2がワークWからはみ出さないようにすることが好ましい。
【0059】
次に、作用を説明する。
【0060】
まず、両押圧アーム11,12が開の状態で、供給リール5近傍に設けられたロック装置をロックし、モータMを作動し巻取りリール8を回転する。これによりラッピングフィルム1は所定量移動し、新規な砥粒面がワークWの加工面上にセットされると共にラッピングフィルム1に所定のテンションが付与される。
【0061】
そして、巻取りリール8近傍のロック装置をロックすると、テンションが付与され弛みのないぴんと張った状態のラッピングフィルム1となる。
【0062】
この状態でヘッドストック22とテールストック25との間にワークWをセットする。このセット後、流体圧シリンダ13を作動すると、両押圧アーム11,12は閉じ、ラッピングフィルム1は、ワークWの加工面上にセットされ、両シュー2により所定の押付け力でワークWの加工面に押付けられる。ワークWがクランクシャフトのピン部のように、加工面が複数箇所あれば、ラッピングフィルム1は、個々のピン部に対応するようにセットされ、押付けられる。
【0063】
したがって、ワークWが回転すると、その加工面は、ラッピングフィルム1の砥粒面によりラッピング加工されることになる。ピン部によっては偏心回転するものもあるが、通常の手法により両押圧アーム11,12もこれに追随して揺動し、同様にラッピング加工される。
【0064】
特に、本実施形態では、各シュー1のワークWに対する接触領域Aが、ワークWの中央領域Cでオーバーラップし、端部領域Dではオーバーラップしないように、各シュー2の位置をオフセットしているので、ワークWの中央領域Cは、各シュー2がラッピングフィルム1をワークWに押付け、この部分の加工量が他の部分の加工量より増大し、ワークWの表面形状は、中凹状に成形される。
【0065】
このようにラッピング加工により中凹状に成形する場合は、バニッシュローラを使用する場合に比し、加工工程が低減し、特殊なローラも不要となり、コスト的にきわめて有利となり、さらにワークの面粗度も不必要に平滑とならず、油溜りができ、潤滑性の面でも有利となる。
【0066】
一方、オシレーション機構30は、モータMの回転により偏心回転体33を弾性手段34の弾発力に抗して回転駆動し、テーブル27をX方向にオシレーションさせ、ワークWをX方向にオシレーションする。
【0067】
オシレーションが行なわれると、ワークWと砥粒との接する距離が長くなり、ワークWに対する単位時間あたりの作用砥粒数は増大し、加工時間が短縮し、ワークの加工効率を高めることができる。各シュー2のオフセット量δは、オシレーション幅より小さくしているので、オシレーションもラッピング加工も確実に行なわれる。
【0068】
また、図3に示すように、クランクシャフトのジャーナル部若しくはピン部のようにワークWが両端にフィレット部Wfを有していると、このフィレット部Wfのスペースを利用して、ワークWをオシレーションしたり、シュー2をオフセットでき、操作性が向上する。しかも、この加工時に、ローラバニッシュ加工のような、フィレット部Wf近傍の押し潰しやダレが生じることはなく、ワークWを良好な真直度で仕上げることができる。
【0069】
図7は図5の表面を多少誇張して示す概念図であるが、前述のようにラッピング加工すると、中凹状部分Waや端部Wbの表面は、その断面を見ると、図7に示すように、突起部T1と谷部T2が交互に形成された状態になる。
【0070】
このような凹凸部分は、ここに潤滑油が供給されると、これを保持する良好な油溜りとなり、潤滑性の向上、焼き付きの防止など、好ましい機能を発揮する。ただし、製品としては、この突起部T1に対しバニッシュ加工を施し、この突起部T1がある程度低くなるように除去することが好ましい、このようにすれば。エンジン回転初期に生じる突起部T1の摩耗を防止することができ、耐久性が向上する。
【0071】
本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、種々変更できる。例えば、前述した実施形態では、主としてクランクシャフトのピン部を加工する場合について述べたが、これのみでなく、クランクシャフトのジャーナル部であっても良く、場合によっては、カムシャフトのカムロブ部やジャーナル部等のような断面非真円状の円弧状加工面を有するものであってもよく、さらに他の円弧状加工面を有するものに対しても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明方法で使用するラッピング加工装置の概略正面図である。
【図2】 図1の2−2線に沿う断面相当図である。
【図3】 本発明方法で使用するラッピング加工装置の要部を示す概略構成図である。
【図4】 図3の4−4線に沿う断面相当図である。
【図5】 ラッピング加工後のワークの形状を示す正面図である。
【図6】 オフセット量と真直度の関係を示す図である。
【図7】 図5の表面を拡大した概念図である。
【符号の説明】
1…ラッピングフィルム、
2…シュー、
10…シュー押付手段、
20…回転駆動手段、
30…オシレーション手段、
S…シューの幅、
L…ワークの加工面の幅、
W…ワーク(ピン部)、
Wf…フィレット部、
δ…オフセット量。
Claims (4)
- 薄肉基材の一面に砥粒が設けられたラッピングフィルムにより断面円弧状で所定幅の加工面を有するワークを覆い、
当該ラッピングフィルムの背面側に偶数個のシューを配置し、
該シューをシュー押付手段によりワークの加工面に押圧し、前記ラッピングフィルムの砥粒面を前記ワークに押付け、
前記ワークを回転駆動手段により回転駆動すると共に前記ワークおよび前記ラッピングフィルムのうちの少なくとも一方をオシレーション手段により前記ワークの軸線方向に沿うオシレーションを付与しつつ前記ワークの加工面にラッピング加工を施すラッピング加工方法であって、
前記ワークの加工面の幅方向中心線に対し異なる側に配置した同じ幅の前記シューを、前記オシレーション手段によるオシレーション幅より小さいオフセット量で交互にオフセットした状態で、各シューのワークに対する接触領域が当該ワークの中央領域でオーバーラップし端部ではオーバーラップしないように加工し、ワークのプロフィルを5μm〜20μmの範囲の中凹深さに成形することを特徴とするラッピング加工方法。 - 前記各シューのオフセット量は、前記ワークの加工面幅の3〜12%にしたことを特徴とする請求項1に記載のラッピング加工方法。
- 前記ワークは、両端にフィレット部を有するクランクシャフトのジャーナル部若しくはピン部である請求項1又は2に記載のラッピング加工方法。
- 前記ラッピングフィルムは、非伸縮性でかつ変形可能な薄肉基材により構成したことを特徴とする請求項1に記載のラッピング加工方法。
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