JP2004237543A - 多層樹脂構造体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】接着樹脂として、カルボキシル変性ポリオレフィンを主成分とする該カルボキシル変性ポリオレフィンとエポキシ化ポリオレフィンとの組成物を用いる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、共押出に適した脂肪族ポリエステル樹脂層/接着樹脂層/他の熱可塑性樹脂層の接合構造を有し、特に包装材料ないし容器(以下、包括的に「包装材料」と称することがある)としての使用に適した多層樹脂構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリグリコール酸(PGA、ポリグリコリドを含む)、ポリ乳酸(PLA)、ポリトリメチレンカーボネート(PTMC)、ポリカプロラクトン(PCL)等の脂肪族ポリエステル樹脂は、分子鎖中に脂肪族エステル結合を含んでいるため、土壌や海中などの自然界に存在する微生物または酵素により分解される、環境に対する負荷が小さい生分解性高分子材料として注目されている。なかでもポリグリコール酸は、耐熱性、ガスバリア性、機械的強度等に優れているため、各種シート、フィルム、容器、射出成形品などの成形材料として新たな用途展開が図られている(特開平10−60136号公報、特開平10−80990号公報、特開平10−138371号公報、特開平10−337772号公報)。
【0003】
しかしながら、ポリグリコール酸をはじめとする脂肪族ポリエステル樹脂は、一般に結晶性であり、また熱安定性も必ずしも充分とはいえないため、特にその溶融加工や、延伸成形に際して問題があった。
【0004】
また、脂肪族ポリエステル樹脂はそのエステル結合に起因して、親水性に富み、水分と接触する表層を脂肪族ポリエステル樹脂で構成すると成形体の強度が低下する傾向を示すため、場合によってはより疎水性の熱可塑性樹脂と積層することが好ましいが、この場合には、該熱可塑性樹脂の熱的特性と脂肪族ポリエステル樹脂のそれとの調和を図る必要がある。
【0005】
従来より比較的異質な二樹脂層を積層して、溶融加工特性、延伸成形性を調和させるためには、両樹脂層間に接着樹脂層を挿入して、積層体ないし多層樹脂構造体を形成することが広く行なわれている。しかしながら、脂肪族ポリエステル樹脂は、従来から汎用されているポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド等の汎用樹脂に比べて、工業的使用の歴史も浅く、また、親水性および結晶性も大であるため、良好な接着樹脂が開発されていなかったのが実情である。特に、無極性のポリオレフィン樹脂層−脂肪族ポリエステル樹脂層間に挿入して共溶融押出積層するに適した接着樹脂は極めて乏しい。例えば、脂肪族ポリエステル樹脂層に対して良好接着性を有する接着樹脂としてエポキシ化ポリオレフィンが知られており、これを脂肪族ポリエステル樹脂層とポリオレフィン樹脂層の間に挿入して共押出することにより、一応良好な積層体が得られるが、この積層体の接着強度は、80〜140℃の加熱により著しく低下することが見出されている(後記比較例1参照)。
【0006】
これに対し、ポリオレフィン系の接着樹脂とエポキシ化ポリオレフィンの混合樹脂は、脂肪族ポリエステル樹脂層−ポリオレフィン樹脂層間に比較的良好な接着樹脂層を与えることが知見されているが、この混合樹脂は、脂肪族ポリエステル樹脂と、芳香族ポリエステル、ポリアミド等の極性汎用樹脂との間に良好な接着樹脂層を与えるものではない。したがって、この混合樹脂を用いて、極性樹脂//脂肪族ポリエステル樹脂//ポリオレフィンの積層構造を有する積層体ないし多層樹脂構造体を製造する際に、「//」で表わされる接着樹脂層を形成させると、極性樹脂//脂肪族ポリエステル樹脂層間での接着強度は著しく低下してしまう。
【0007】
なお、上記した極性樹脂//脂肪族ポリエステル樹脂//ポリオレフィンの積層体は、ポリオレフィン層を内側シール層として、極性樹脂層を外側の強度層ないし表面特性層として、寄与させるために汎用される構造体である。この際に、「//」で表わされる接着樹脂として共通の接着樹脂を用いることができれば、押出機が1台で済み、全体の共溶融押出システムの構成の簡略化に重要な寄与がもたらされる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の主要な目的は、脂肪族ポリエステル樹脂層と、ポリオレフィンを代表とする他の熱可塑性樹脂層との間に良好な接着樹脂層を有する積層体ないし多層樹脂構造体(本明細書では、接着樹脂層も含めて計3層以上の積層体の意味でほぼ同義に用いている)を与えることにある。
【0009】
本発明の別の目的は、良好な耐熱性、特に延伸後においても良好な耐熱性の接着強度を有する脂肪族ポリエステル樹脂//ポリオレフィン多層樹脂構造体を与えることにある。
【0010】
本発明の更なる目的は、互いに異なる熱可塑性樹脂(1)(代表的には極性樹脂)と熱可塑性樹脂(2)(代表的にはポリオレフィン)との組合せに対し、熱可塑性樹脂(1)//脂肪族ポリエステル樹脂//熱可塑性樹脂(2)の積層構造を与える二つの//(接着樹脂層)に共通の接着樹脂を用いた多層樹脂構造体を与えることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述の目的で研究した結果、極性樹脂樹脂//ポリオレフィン積層体の接着樹脂層として実績のあるカルボキシル変性ポリオレフィンに比較的少量のエポキシ化ポリオレフィンを配合することにより、最も接着性の乏しい脂肪族ポリエステル樹脂//ポリオレフィン層間接着においても良好な接着強度を発現する接着樹脂組成物が得られることを見出して、本発明に到達したものである。
【0012】
すなわち、本発明の多層樹脂構造体は、脂肪族ポリエステル樹脂層と、他の熱可塑性樹脂層とが、接着樹脂層を介して接合されてなり、該接着樹脂層がカルボキシル変性ポリオレフィンを主成分とする該カルボキシル変性ポリオレフィンとエポキシ化ポリオレフィンとの組成物からなることを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
(脂肪族ポリエステル樹脂)
本発明の多層樹脂構造体の主要な構成層の一つは、脂肪族エステルの単独又は共重合体(本明細書では、これらを包括して「(共)重合体」と称する)からなるものであり、なかでも下記式(I)
【化1】
で表わされるグリコール酸単位を繰り返し単位として有する(共)重合体であることが好ましい。上記グリコール酸単位は、グリコール酸、グリコール酸アルキルエステルまたはグリコール酸塩の重縮合によっても得られるが、より好ましくは、グリコール酸の2分子間環状エステルであるグリコリド(GL)の開環重合により与えられる。
【0014】
上記グリコリド等のグリコール酸モノマー以外の、本発明で用いる脂肪族エステル(共)重合体を与える(コ)モノマーとしては、例えば、シュウ酸エチレン(即ち、1,4−ジオキサン−2,3−ジオン)、ラクチド類、ラクトン類(例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、ピバロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等)、カーボネート類(例えばトリメチレンカーボネート等)、エーテル類(例えば1,3−ジオキサン等)、エーテルエステル類(例えばジオキサノン等)、アミド類(εカプロラクタム等)などの環状モノマー;乳酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸またはそのアルキルエステル;エチレングリコール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類と、こはく酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸類またはそのアルキルエステル類との実質的に等モルの混合物;またはこれらの2種以上を挙げることができる。
【0015】
なかでも、グリコリド(GL)、ラクチド(LA;Lラクチド(LLA)、Dラクチド(DLA)、DLラクチド(DLLA)などの光学異性体を含む)、トリメチレンカーボネート(TMC)およびカプロラクトン(CL)からなる群より選ばれる一種又は互いに共重合可能な少なくとも二種の単量体の(共)重合体である脂肪族エステル(共)重合体が好ましい。共重合体としては、特に上記グリコール酸単位が99〜70重量%、より好ましくは99〜80重量%含まれるものが、所望の結晶化温度を与え且つ好ましい耐熱性、ガスバリア性および機械的強度等の特性上、好ましく用いられる。
【0016】
脂肪族ポリエステル樹脂は、構成モノマー種が異なる(共)重合体2種類以上の混合物であってもよい。
【0017】
(他の熱可塑性樹脂)
上記脂肪族ポリエステル樹脂層とともに、本発明の多層樹脂構造体を与える他の熱可塑性樹脂層を構成する他の熱可塑性樹脂には、実質的に無極性のポリオレフィンと、ポリアミド、芳香族ポリエステル、エチレン−ビニルアルコール等の汎用の極性樹脂が含まれる。
【0018】
<ポリオレフィン>
上記ポリオレフィンには、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、3−メチルブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1等のα−オレフィンの単独または共重合体、あるいは、これらα−オレフィンを主成分とする共重合体であって、例えば低密度ポリエレチン、高密度ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂等が使用される。
【0019】
<ポリアミド>
ポリアミドとしては、ナイロン6,11,12,66,610,612等の脂肪族ポリアミド単独重合体;ナイロンMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)、ナイロン6I(ポリヘキサメチレンイソフタラミド)、ナイロン6T(ポリヘキサメチレンテレフタラミド)等の芳香族ポリアミド単独重合体;ナイロン6−66,6−12,6−69,6−610,66−610等の脂肪族ポリアミド共重合体;ナイロン6−6I,ナイロン66−610−MXD6,ナイロン6−12−MXD6,ナイロン6I−6Tなどの芳香族ポリアミド共重合体が用いられる。
【0020】
<芳香族ポリエステル>
芳香族ポリエステルは、少なくとも一方が芳香族である飽和二塩基酸とグリコール類の縮合により得られるものであり、例えばエチレングリコールとテレフタル酸より得られるポリエチレンテレフタレート、フタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、グルタル酸、コハク酸、シュウ酸などの飽和二塩基酸を共重合体成分としたポリエチレンテレフタレート共重合体、およびジオール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等を共重合体成分としたポリエチレンテレフタレート共重合体または、このブレンド品等が適当である。
【0021】
(接着樹脂)
本発明の多層樹脂構造体において、脂肪族ポリエステル樹脂層と他の熱可塑性樹脂層との間に挿入される接着樹脂層は、主成分としてのカルボキシル変性ポリオレフィンに、少量のエポキシ化ポリオレフィンを配合することにより得られる。
【0022】
<カルボキシル変性ポリオレフィン>
カルボキシル変性ポリオレフィンは、先のポリオレフィンで挙げた如きポリオレフィンと不飽和カルボン酸またはその無水物の両者をグラフト重合条件に付すことによって得られるものである。ここで、不飽和カルボン酸またはその無水物としては、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ハイミツク酸又は、これらの無水物、特に無水マイレン酸、アクリル酸を用いることが好ましい。第3級炭素の位置に無水マイレン酸が付加した無定形1,2−ポリブタジエンを用いてもよい。
【0023】
カルボキシル変性ポリオレフィンとしては、0.01〜10重量%の不飽和カルボン酸またはその無水物が付加したものが、本発明で用いられる。
【0024】
カルボキシル変性ポリオレフィンとしては、食品製造工程における耐熱性、他の熱可塑性樹脂との共延伸性の観点から、融点が110℃〜125℃程度のものが好ましく用いられる。
【0025】
カルボキシル変性ポリオレフィンの市販品の例としては、三井化学株式会社製「アドマ−NF550」、三菱化学株式会社製「モディクS525,XS533,F513」等が挙げられる。
【0026】
<エポキシ化ポリオレフィン>
エポキシ化ポリオレフィンとは、ポリオレフィンをメタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有単量体で変性して、エポキシ基を導入したポリオレフィンである。エポキシ基の導入は、共重合体及びグラフト法のいずれでもよい。また、上記エポキシ基含有単量体と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、酢酸ビニル等のビニル系単量体とを併用してもよい。
【0027】
市販品の例としては、日本石油化学株式会社製「レクスパールRA3150」、住友化学株式会社製「ボンドファースト2C,E,B」等の名で市販されるエチレン−グリシジル酸メタクリル(GMA)共重合体が挙げられる。エポキシ基含有単量体による変性率(共重合体中の含有率)は、3〜20重量%程度である。
【0028】
本発明においては、上記カルボキシル変性ポリオレフィン100重量部に対しエポキシ化ポリオレフィン0.5〜25重量部を配分した接着樹脂組成物が好ましい。0.5重量部未満では、脂肪族ポリエステル樹脂層との接着強度改善効果が乏しくなる。また25重量部を超えると、溶融加工中の樹脂の熱安定性が乏しくなり、あるいはボイルもしくはレトルト処理後の接着強度が低下し易い。
【0029】
特に5〜10重量部が好ましい。また接着樹脂中のエポキシ基含有単量体重合物の含量が0.06〜3重量%、特に0.6〜1.2重量%の範囲となることが好ましい。
【0030】
接着剤中には、更に慣用的に使用されるアルコン(水素化石油樹脂)、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体)、テルペン樹脂等の粘着剤;更には、脂肪族ポリエステル樹脂層への水分の侵入を抑制するためのリン酸ナトリウム、塩化カルシウム等の無機無質、あるいはショ糖等の有機物質からなる乾燥剤;を混入することもできる。
【0031】
本明細書の多層樹脂構造体は、上記脂肪族ポリエステル樹脂、他の熱可塑性樹脂および接着樹脂を、必要に応じて追加層を形成する他の熱可塑性樹脂とともに、それぞれの押出機を通じて溶融押出し、平型あるいは環状のダイを通して共押出することにより得られる。必要に応じて、更に他の熱可塑性樹脂を、本発明の接着樹脂層を介して、あるいは介さずに押出ラミネートすることもできる。共押出による積層後、更に、テンター法、インフレーション法あるいはブロー成形法によって延伸して薄肉化することもできる。特に本発明の多層樹脂構造体は、前述したように、延伸後においても層間接着強度が良好であることが特徴である。
【0032】
共押出により得られる本発明の多層樹脂構造体の代表的な層構成例としては以下のものが挙げられる。
【0033】
1)脂肪族ポリエステル樹脂//熱可塑性樹脂(1)または(2)、
2)熱可塑性樹脂(1)または(2)//脂肪族ポリエステル樹脂//熱可塑性樹脂(1)または(2)、
3)熱可塑性樹脂(2)//脂肪族ポリエステル樹脂//熱可塑性樹脂(1)
【0034】
上記において「//」は、本発明の接着樹脂層、「/」は共押出界面あるいは他の接着樹脂層を意味する。さらに、次の4),5)のように多層化することもできる。また、4)の層構成では脂肪族ポリエステル樹脂に悪影響がない程度に電子線照射してもよい。
【0035】
4)熱可塑性樹脂(1)/熱可塑性樹脂(1)//脂肪族ポリエステル樹脂//熱可塑性樹脂(1)/熱可塑性樹脂(1)、
5)熱可塑性樹脂(1)/熱可塑性樹脂(2)//脂肪族ポリエステル樹脂//熱可塑性樹脂(2)/熱可塑性樹脂(1)
【0036】
熱可塑性樹脂(1)の代表例は、ポリオレフィンであり、熱可塑性樹脂(2)の代表例は汎用極性樹脂である。必要に応じて更にラミネート加工ができることは、上述の通りである。
【0037】
用途に関し、より具体的に説明すれば、本発明の多層樹脂構造体のうち比較的厚さの小さいもの(慣例に従い約250μm以下)は、好ましくは延伸により強度の改善されたフィルムとして得られる。
【0038】
熱収縮性フィルムは、延伸フィルムを熱固定しないか、あるいは熱固定条件を調整することにより製造することができる。熱収縮性フィルムは、包装材料用フィルムとして好適に用いられるが、その他に、スプリットヤーンなどの紐材としても使用することができる。
【0039】
フィルムは、食品、雑貨、生理用品、医用器材、工業用部品、電子部品、精密機器などの包材用フィルム、または農業用フィルムなどに使用される。包材用フィルムは、バッグ、パウチなどの袋状に成形加工してもよい。フラットフィルムや広幅のインフレーションフィルムから切り開いたフィルムは、センターシームによりチューブ状にしてから、袋状に成形加工してもよい。また、フィルムは、袋状に形成しながら、内容物を充填することができる自動包装機に適用してもよい。
【0040】
本発明の多層樹脂構造体のうち、比較的大きな厚さ(慣例に従い約250μm以上)を有するシートは、比較的厚みのある各種包装材料に適用することができる。シートは、真空成形などのシート成形法により、絞り比の比較的浅いトレー、絞り比の比較的深いカップなどの容器に二次加工することができる。この二次加工中延伸効果も付与される。
【0041】
射出成形物は、各樹脂をそれぞれの射出成形機から共通の金型へと積層/射出成形することにより製造することができる。一般に、脂肪族ポリエステル樹脂層を接着樹脂層を介して、他の熱可塑性樹脂(B)層で被覆する形態が好ましい。射出成形物としては、例えば、日用雑貨品(例えば、食器、箱・ケース類、中空ボトル、台所用品、植木用ポット)、文房具、電化製品(各種キャビネット等)、レンジ用容器、カップ用容器などに用いられる。
【0042】
中空成形物としては、ガスバリア性を有する中空容器(例えば、ボトル)がある。中空成形物としては、延伸ブロー容器が好ましい。延伸ブロー容器の製造方法としては、特開平10−337771号公報に開示されている方法などを採用することができる。ここでも一般に、ガスバリア性に優れた脂肪族ポリエステル樹脂層を中間層とし、外層と内層とを、接着樹脂層を介して他の熱可塑性樹脂で構成した熱可塑性樹脂(1)/脂肪族ポリエステル樹脂/熱可塑性樹脂(2)の少なくとも三層+接着樹脂層の構成の多層延伸成形物が好ましい。必要に応じて、前記の延伸フィルムと同様に熱固定される。
【0043】
中空成形物の用途としては、例えば、炭酸飲料、清涼飲料、果樹飲料、ミネラルウオーターなどの飲料用容器;食品用容器;醤油、ソース、ケチャップ、マヨネーズ、食用油、これらの混合物などの調味料用容器;ビール、日本酒、ウイスキー、ワインなどの酒類用容器;洗剤用容器;化粧品用容器;農薬用容器;ガソリン用容器;メタノール用容器;などが挙げられる。
【0044】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に具体的に説明する。製品押出シートおよび延伸フィルムについては、以下の処理あるいは試験を行った。
【0045】
(1)ボイル・レトルト処理
ボイル処理(一般に100℃以下の熱水使用)およびレトルト処理(100℃超の熱水使用)相当の熱印加に対する接着強度の耐久性を調べるために、試料(シートまたはフィルム)を以下のように処理した。
【0046】
内側にポリエチレンシール層をラミネートした厚さ120μmのアルミニウムシートを用いて、約20cm×20cmの寸法を有する試料をパウチ状に封入した。更に延伸フィルム試料については、熱収縮防止のために、ほぼ同寸法の金属枠でパウチ周縁を固定した。次いで、これらパウチ試料を、95℃熱水(ボイル処理)または120℃熱水(レトルト処理)中に各30分間浸漬した後、各試料をパウチから取り出し、23℃/50%RH雰囲気中で、1日間放置した後、次の接着強度測定に供した。
【0047】
(2)接着強度測定
上記ボイルまたはレトルト相当熱処理済あるいは未処理の試料を幅15mmの帯状試料に切り出し、T剥離による接着強度測定を行った。測定機としては、オリエンテック社製「テンシロンRTC−1210A」を使用し、23℃/80%RH雰囲気中でチャック間距離30mm、試験速度300mm/分の条件で測定を行った。
【0048】
以下の実施例、比較例で、試料作製に用いた樹脂は以下の通りである。
・ポリグリコール酸:脂肪族ポリエステル樹脂として、240℃における溶融粘度が2000〜3000Pa・sの特性を有するポリグリコール酸のペレットを用いた。
・ポリ(プロピレン−エチレン)共重合体:他の熱可塑性樹脂(熱シール性ポリオレフィン)として、住友化学社製「ノーブレンFL851G3」(Tm(融点)=135℃、MFR(メルトフローレート、単位:g/10分)=6.4)を用いた。
【0049】
(接着樹脂)
以下の樹脂を単独で、または混合して使用した。
【0050】
<カルボキシル変性ポリオレフィン>
いずれも酸変性ポリオレフィンとして以下のグレードの市販品を用いた。
・三菱化学社製「モディックXS533」(Tm=112℃、MFR=1.0)、
・三菱化学社製「モディックF513」(Tm=122℃、MFR=1.0)、
・三井化学社製「アドマ−NF550」(Tm=120℃、MFR=6.2)
【0051】
<エポキシ化ポリオレフィン>
・ポリ(GMA(グリシジルメタクリレート)−エチレン)共重合体(GMA含量12%)である住友化学社製「ボンドファーストE」(Tm=103℃、MFR=3)を用いた。
【0052】
(実施例1)
接着樹脂として、酸変性ポリオレフィン「モディックXS533(三菱化学社製)」100重量部とポリ(GMA−エチレン)共重合体1重量部との混合物を用いた。上記ポリグリコール酸、ポリオレフィン(ポリプロピレン−エチレン共重合体)および接着樹脂を、それぞれ押出機から220〜270℃の温度で溶融し、T−ダイ法により、共押出してポリグリコール酸(100μm)/接着樹脂(20μm)/ポリオレフィン(100μm)の多層シートを成形した。また得られたシートを、東洋製機社製二軸延伸機で温度80℃で30秒予熱後、速度7m/分で、縦横方向各4倍に同時2軸延伸した。その状態のまま温度120℃に昇温し、15分間熱処理して延伸フィルムを得た。
【0053】
(実施例2および3)
酸変性ポリオレフィン「モディックXS533」100重量部に対して、ポリ(GMA−エチレン)共重合体量を、5重量部(実施例2)または10重量部(実施例3)と変化する以外は、実施例1と同様にして、押出しシートおよび延伸フィルムを得た。
【0054】
(実施例4)
酸変性ポリオレフィンとして、三井化学社製「アドマ−NF550」を用いる以外は、実施例3と同様にして、押出しシートおよび延伸フィルムを得た。
【0055】
(実施例5)
酸変性ポリオレフィンとして三菱化学社製「モディックF513」を用いる以外は、実施例3と同様にして、押出しシートおよび延伸フィルムを得た。
【0056】
(比較例1)
接着樹脂として、酸変性ポリオレフィン「モディックXS533」(三菱化学社製)のみを用いる以外は、実施例1と同様にして、押出しシートおよび延伸フィルムを得た。
【0057】
(比較例2)
接着樹脂として、ポリ(GMA−エチレン)共重合体のみを用いる以外は、実施例1と同様にして、押出しシートおよび延伸フィルムを得た。
【0058】
上記実施例および比較例で得られた押出しシートおよび延伸フィルムを、そのまま(未処理)あるいは上記のようにボイルもしくはレトルト相当熱処理を行った後、上記の接着強度測定試験を行った。結果を、各例における接着樹脂の概要と共に、以下の表1にまとめて記す。
【0059】
【表1】
【0060】
上記接着強度測定においては、測定機における前のT型剥離試験片調製時において、接着樹脂層と、ポリグリコール酸層あるいはポリオレフィン層とのいずれか、接着強度の低い方の界面において剥離が起ることを考慮すると、上記表1に示される結果は、以下のように評価される。
【0061】
実施例を通じて、接着樹脂中に使用した酸変性ポリオレフィンのグレードの差異により未処理(熱処理なし)の接着強度においてはバラツキが見られるが、ポリ(GMA−エチレン)共重合体の添加により、特に熱処理後の接着強度の顕著な向上が得られ、その傾向は、延伸フィルムにおいても本質的に維持される。これは、酸変性ポリオレフィンのみを用いる比較例2(ポリグリコール酸層との界面で熱処理後は勿論、未処理状態においても著しく低い接着強度を示す)との対比において、少量のポリ(GMA−エチレン)共重合体の添加によってポリグリコール酸層との界面での接着強度が著しく上昇し、特に熱処理後の向上が著しいことを示している。また比較例1の接着強度は熱処理前では高いが、熱処理後には著しく低下する。これは、ポリ(GMA−エチレン)共重合体のガラス転移温度が低いため、特にポリオレフィンとの界面における接着状態の耐熱性が損なわれるためと解される。いずれにしても、表1の結果は、本発明に従い、酸変性ポリオレフィンに対し、少量のポリ(GMA−エチレン)共重合体の配合により、ポリグリコール酸層とポリオレフィン層との両者の界面に対して全体として著しく向上した接着強度を示す接着樹脂層が成形されていることが分かる。
【0062】
【発明の効果】
上記したように、本発明によれば、脂肪族ポリエステル樹脂層と他の熱可塑性樹脂層との間に、カルボキシル変性ポリオレフィンを主成分とし、少量のエポキシ化ポリオレフィンを配合した接着樹脂組成物による接着樹脂層を挿入することにより、最も接着強度が問題となる脂肪族ポリエステル樹脂層−ポリオレフィン層間においても良好かつ耐熱性の良い接着強度を有する多層樹脂構造体が得られる。また、同接着樹脂組成物を、ポリオレフィンに比べて問題の少ない他の熱可塑性樹脂層−脂肪族ポリエステル樹脂層間にも用いることにより、全体として接着強度の改善された多層樹脂構造体が得られる。
Claims (8)
- 脂肪族ポリエステル樹脂層と、他の熱可塑性樹脂層とが、接着樹脂層を介して接合されてなり、該接着樹脂層がカルボキシル変性ポリオレフィンを主成分とする該カルボキシル変性ポリオレフィンとエポキシ化ポリオレフィンとの組成物からなることを特徴とする多層樹脂構造体。
- 脂肪族ポリエステル樹脂層がグリコール酸(共)重合体からなる請求項1に記載の多層樹脂構造体。
- 前記他の熱可塑性樹脂層がポリオレフィンからなる請求項1または2に記載の多層樹脂構造体。
- 前記カルボキシル変性ポリオレフィンの融点が110℃〜125℃である請求項1〜3のいずれかに記載の多層樹脂構造体。
- 前記脂肪族ポリエステル樹脂層、接着樹脂層および他の熱可塑性樹脂層が共押出されてなる請求項1〜4のいずれかに記載の多層樹脂構造体。
- 前記脂肪族ポリエステル樹脂層の前記他の熱可塑性樹脂層とは逆側に、更に前記と実質的に同じ接着樹脂層を介して他の熱可塑性樹脂層(第2の熱可塑性樹脂層)が接合されてなる請求項1〜5のいずれかに記載の多層樹脂構造体。
- 前記第2の熱可塑性樹脂が前記他の熱可塑性樹脂とは異なる請求項1〜6のいずれかに記載の多層樹脂構造体。
- 前記第2の熱可塑性樹脂が極性熱可塑性樹脂からなる請求項1〜7のいずれかに記載の多層樹脂構造体。
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