JP2004232714A - 動力伝達装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】高価な材料を用いないでも、弾性部材の破片が、ラックハウジング内に入り込んで操舵に支障を与えることがない動力伝達装置を提供することである。
【解決手段】ラックハウジング1にラック軸2を組み込むとともに、このラック軸に設けたラック2aにピニオン3をかみ合わせる一方、ラック軸の端部には、連結手段4を介して動力伝達系の軸を連結した動力伝達装置において、上記ラックハウジングの開口端部分あるいは上記連結手段のいずれか一方に、クッション収納部を設け、このクッション収納部内に、弾性部材9とその外側に摺動部材10を組み込み、ラック軸のストローク端で、上記連結手段あるいはラックハウジングが上記摺動部材に当たって、その摺動部材を摺動させながら弾性部材を圧縮させる構成にした。
【選択図】 図1
【解決手段】ラックハウジング1にラック軸2を組み込むとともに、このラック軸に設けたラック2aにピニオン3をかみ合わせる一方、ラック軸の端部には、連結手段4を介して動力伝達系の軸を連結した動力伝達装置において、上記ラックハウジングの開口端部分あるいは上記連結手段のいずれか一方に、クッション収納部を設け、このクッション収納部内に、弾性部材9とその外側に摺動部材10を組み込み、ラック軸のストローク端で、上記連結手段あるいはラックハウジングが上記摺動部材に当たって、その摺動部材を摺動させながら弾性部材を圧縮させる構成にした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ラックピニオン式の動力伝達装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ラックピニオン式の動力伝達装置として、例えば、図3に示すものがあった。この動力伝達装置は、車体の左右方向に渡して設置されたラックハウジング1内に、ラック軸2を組み込み、軸方向へ摺動自在に支持されている。このラック軸2の両端には、ジョイント4を結合し、このジョイント4を介して、図示しないタイロッドなどの動力伝達系の軸を接続し、上記ラック軸2の運動を車輪へ伝達するようにしている。
一方、ピニオン3は、図示しないステアリングホイールと連携し、このピニオン3をラック軸2に形成したラック2aにかみ合わせている。
つまり、ステアリングホイールの操舵に応じたピニオン3の回転に伴って、上記ラック軸2が軸方向に移動し、その運動が、上記動力伝達系の軸へ伝達されて、車輪が転舵される。
【0003】
このような装置において、ラック軸2のストローク端を規制するため、ラックハウジング1の開口側に大径部1aを形成して、その内側にストッパ用の段部1bを形成している。この段部1bと、ジョイント4とが衝突して、ラック軸2の移動が止まるようにしている。
このストローク端において、上記ジョイント4と上記段部1bとの衝突音が大きいと、その音が、例えば据えきり時等で、ステアリングを最大限に切ったときに、車内に聞こえて耳障りになることがある。
【0004】
この衝突音を低減させるために、図3に示すように、ジョイント4の端面4a側に、受け部材5を設け、そこに、例えば、リング状の弾性部材6を設けることがあった。このようにすれば、上記ラック軸2のストローク端において、ラックハウジング1の段部1bとジョイント4の端面4aとは弾性部材6を介して衝突するので衝突音を低減させることができる。
【0005】
また、図4に示す、図3とは別の装置は、ラック軸2の端部に小径部2bを形成し、この小径部2に、角リング状の弾性部材7を装着している。一方、ラックハウジング1の開口側の内周には、1c、1dの2つの段部を形成している。
ラック軸2のストローク端では、まず、上記弾性部材7がラックハウジング1内の段部1cに突き当たって衝撃を吸収し、さらに、力が作用すると、ジョイント4の端面4aが、段部1dに当たってラック軸2が止まるようにしている。この装置では、上記弾性部材7の厚みt1を、上記段部1cの軸方向の深さd1よりも大きくして、ラック軸方向の押圧力が作用しても、ジョイント4の端面4aが段部1dに突き当たるまでの間は、クッション性を保つことができるようにしている。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−219855号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
図3,図4に示した動力伝達装置において、弾性部材6や7は、ゴムや樹脂製のリングであり、これらは、ラック軸2のストローク端で、ラックハウジング1に直接突き当たり、ラックハウジング1とジョイント4との間で、繰り返し押圧されることによって損傷することがある。また、弾性部材6,7は、それ自体が図示しないブーツ内に露出していることもあり、潤滑用のグリスに曝されることから、経時変化によって劣化することもある。
その結果、上記弾性部材6,7の破片がラックハウジング1内に入り込んでしまう可能性があった。
【0008】
弾性部材6,7の破片がラックハウジング1内に入り込んでしまうと、抵抗となって、ラック軸2がスムーズに摺動できなくなる。特に、その破片が、ラック2a部分に入り込んだ場合には、ピニオン3からの動力伝達に支障が生じるような可能性があった。
一方で、経時変化が少なく、破損し難く、しかもクッション性に優れた材料を用いるようにしたのでは、コストアップになってしまう。
【0009】
この発明の目的は、特に高価な材料を用いることなく、経時劣化等により、たとえ弾性部材が破損したとしても、その破片が、ラックハウジング内に入り込んで操舵に支障を与えることがない動力伝達装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、ラックハウジングにラック軸を組み込むとともに、このラック軸に設けたラックにピニオンをかみ合わせる一方、ラック軸の端部には、連結手段を介して動力伝達系の軸を連結した動力伝達装置において、上記ラックハウジングの開口端部分あるいは上記連結手段であって上記開口端部分に対向する部分のいずれか一方に、クッション収納部を設け、このクッション収納部内に、弾性部材と、この弾性部材よりラックハウジングの開口側あるいは、上記開口端部分に対向する部分側に摺動部材を組み込み、ラック軸のストローク端で、上記連結手段あるいはラックハウジングのいずれか一方が上記摺動部材に当たって、その摺動部材を摺動させながら弾性部材を圧縮させる構成にした点に特徴を有する。
【0011】
第2の発明は、第1の発明を前提とし、クッション収納部には円筒部を設け、この円筒部の外周に弾性部材および摺動部材をはめた点に特徴を有する。
第3の発明は、第2の発明を前提とし、円筒部には、縮径方向のたわみ性を持たせるとともに、その外周には、摺動部材の抜け止め突部を形成し、上記円筒部をたわませながら、弾性部材および摺動部材をはめる構成にした点に特徴を有する。
【0012】
第4の発明は、上記第2,第3の発明を前提とし、円筒部の端部にフランジ部を設けてクッション支持部材を構成し、このクッション支持部材をラックハウジング内に組み込み、クッション支持部材とラックハウジングの内周面とによってクッション収納部を構成する点に特徴を有する。
第5の発明は、上記第2から第4の発明を前提とし、摺動部材の、クッション収納部に収納される部分の軸方向長さと、弾性部材の軸方向長さとの和を、収納部内側の軸方向長さより大きくし、上記弾性部材を圧縮した状態でクッション収納部に収納した点に特徴を有する。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1、図2に、この発明の実施例を示す。
図1に示す、ラックピニオン式の動力伝達装置は、ラックハウジング1内に、摺動自在に組み込んだラック軸2のラック2aに、ピニオン3をかみ合わせている。また、ラック軸2の両端には、ジョイント4を接続し、このジョイント4を介してラック軸2と車輪に連携する動力伝達系の軸とを連結している。このジョイント4が、この発明の連結手段である。
図2は、ラック軸2の端部付近の拡大図である。
図2に示すように、ラックハウジング1の端部側には大形部1aを形成している。そして、この大径部1aの内側には、クッション支持部材8と、弾性部材9と、摺動部材10とを組み込んでいる。
【0014】
上記クッション支持部材8は、金属製の部材で、円筒形の筒部8aとその一端に連続して形成したフランジ部8bとからなる。そして、上記筒部8aの先端8d側の外周には、小さなリング状の突部8cを形成している。さらに、上記筒部8aの側面には、スリットや溝などを形成して、筒部8aを縮径方向にたわませることができるようにしている。
上記弾性部材9は、一例として、樹脂製の角リングからなり、その外径をラックハウジング1の大径部1aの内径より小さくし、内径をクッション支持部材8の筒部8aの外周より大きくしている。また、この弾性部材9の厚みt2を、上記筒部8aの突部8cからフランジ部8bまでの長さL1よりも短くしている。
【0015】
また、摺動部材10は、外径を上記大径部1aの内径にほぼ等しくするとともに、大径部1aとは相対移動可能な金属製のリングである。この摺動部材10は、大、小、2種の内径を持ち、大径部10aと小径部10bとの境界に段部10cを形成している。上記小径部10bの内径は、上記クッション支持部材8の筒部8aの外径とほぼ同等とするとともに、上記筒部8aとは相対緯度可能な寸法とし、大径部10aの内径は、上記筒部8aに設けた突部8c頂上の径よりもわずかに大きくしている。そして、この摺動部材10の厚みt3は、{摺動部材10の厚みt3+弾性部材9の厚みt2}>(クッション支持部材8の筒部8aの全長L2)の関係を満たしている。さらに、この発明のクッション収納部に収納される部分の長さである摺動部材10の小径部10b部分の厚みt4は、{厚みt4+弾性部材9の厚みt2}≒(収納部内側の軸方向長さL1)の関係を満たすようにしている。なお、上記収納部内側の軸方向長さL1は、筒部8aの突部8cを除いた部分の長さである。
ただし、{厚みt4+厚みt2}>(長さL1)とした場合には、弾性部材9が、クッション収納部に収納された状態で圧縮されるため、ストローク端以外の状態では、上記弾性部材9の弾性力が、摺動部材10を上記突部8cに押圧している。このように、摺動部材10が、上記突部8cに押し付けられているので、走行時の振動等によって摺動部材10が振動することを防止できる。
【0016】
上記のような、各部材を、ラックハウジング1の大径部1a内に、次のようにして組み込む。
まず、クッション支持部材8の、筒部8aの外周に弾性部材9をはめる。
次に、クッション支持部材8の筒部8bの突部8c側をたわませて縮径し、摺動部材10の小径部10b側を、上記筒部8aの外周にはめる。筒部8aのたわみが戻ると、突部8cが、摺動部材10の段部10cに引っかかって、摺動部材10が、筒部8aから抜け落ちないようになる。つまり、上記突部8cが、この発明の抜け止め突部である。ただし、摺動部材10の大径部10aの内径は、突部8cの外周より大きいので、摺動部材10は、矢印X方向へ移動することは可能である。
【0017】
このように、弾性部材9および摺動部材10を、クッション支持部材8にはめつけて一体としたら、これを、ラックハウジング1の大径部1a内にはめ込む。このとき、フランジ部8bの外径を、上記大径部1aの内径に、端部8eが当接するまで、フランジ部8bを圧入することによって、上記クッション支持部材8を大径部1a内に固定する。
すると、図1、図2に示すように、クッション支持部材8とラックハウジング1の大径部1aとで、この発明のクッション収納部を構成し、このクッション収納部内に、弾性部材9と、その外側に摺動部材10を組み込んだ状態となる。ただし、上記摺動部材10の大径部10aは、クッション支持部材8の先端8dよりジョイント4側へはみ出している。
なお、上記クッション支持部材8、弾性部材9,摺動部材10の、組み付け順序は、一例であり、組み付け手順は、適宜入れ替わってもかまわない。例えば、クッション支持部材8を予めラックハウジング1の所定位置に装着した後、弾性部材9や摺動部材10を組み付けてもよい。
【0018】
この状態で、ラック軸2が矢印X方向に移動してジョント4の端面4aが摺動部材10に突き当たると、摺動部材10を矢印X方向へ押圧する。摺動部材10は、弾性部材9を圧縮しながら、矢印X方向へ移動する。このように、ジョイント4が摺動部材10に突き当たったとき、上記弾性部材9が圧縮することによって衝突の衝撃を吸収し、衝突音を低減することができる。
さらに、ジョイント4が矢印X方向へ押し付けられると、摺動部材10は弾性部材9を圧縮させながら移動し、クッション支持部材8の先端8dに衝突して止まる。つまり、ジョイント4の端面4aがクッション支持部材8の先端8dに突き当たった状態が、ストローク端である。
【0019】
この実施例の動力伝達装置では、弾性部材9が、クッション収納部内に設置されるとともに、このクッション収納部の端部を摺動部材10で閉鎖している。つまり、弾性部材9が、従来例のようにむき出しになることがなく、ジョイント4と直接衝突することもない。従って、弾性部材9が、破損し難くなる。また、劣化などによって万一破損し、破片が発生したとしても、その破片がラックハウジング1とラック軸2の間に入り込むことがないので、操舵に支障を与えることがない。
また、弾性部材9として、特に劣化しにくい高価な材料を用いる必要もない。
【0020】
なお、この実施例では、クッション収納部を、ラックハウジング1側に設けた装置を説明したが、クッション収納部は、ジョイント4側に設けてもよい。例えば、ジョイント4の端面4aにクッション収納部用の凹部を形成して、そこに、弾性部材9と摺動部材10をはめ込んだり、別部材としてのクッション支持部材を用いて、それをジョイント4側に固定するようにしても良い。この場合には、この発明の弾性部材の外側は、弾性部材に対してラックハウジング1側である。
【0021】
【発明の効果】
第1〜第5の発明によれば、高価な、特別の材料を用いなくても、弾性部材の破片がラックハウジング内に入り込むことがない。従って、弾性部材の破片によって、ラック軸の移動がスムーズにできなくなって、操舵に支障を来すようなことがなくなる。
第2、第3の発明によれば、弾性部材および摺動部材の取り付けが容易になる。
第4の発明では、クッション支持部材をラックハウジングと別に備えたので、弾性部材および摺動部材の取り付けがより簡単にできる。
第5の発明によれば、ストローク端以外の状態でも、摺動部材の反発力により、摺動部材の位置が拘束されるため、摺動部材が、走行振動などによってがたついたり、振動音を発生したりすることがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の動力伝達装置の断面図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】従来例の動力伝達装置の断面図である。
【図4】従来例の動力伝達装置の断面図である。
【符号の説明】
1 ラックハウジング
2 ラック軸
2a ラック
3 ピニオン
4 この発明の連結手段であるジョイント
8 クッション支持部材
8a 筒部
8b フランジ部
8c この発明の抜け止め突部である突部
9 弾性部材
10 摺動部材
【発明の属する技術分野】
この発明は、ラックピニオン式の動力伝達装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ラックピニオン式の動力伝達装置として、例えば、図3に示すものがあった。この動力伝達装置は、車体の左右方向に渡して設置されたラックハウジング1内に、ラック軸2を組み込み、軸方向へ摺動自在に支持されている。このラック軸2の両端には、ジョイント4を結合し、このジョイント4を介して、図示しないタイロッドなどの動力伝達系の軸を接続し、上記ラック軸2の運動を車輪へ伝達するようにしている。
一方、ピニオン3は、図示しないステアリングホイールと連携し、このピニオン3をラック軸2に形成したラック2aにかみ合わせている。
つまり、ステアリングホイールの操舵に応じたピニオン3の回転に伴って、上記ラック軸2が軸方向に移動し、その運動が、上記動力伝達系の軸へ伝達されて、車輪が転舵される。
【0003】
このような装置において、ラック軸2のストローク端を規制するため、ラックハウジング1の開口側に大径部1aを形成して、その内側にストッパ用の段部1bを形成している。この段部1bと、ジョイント4とが衝突して、ラック軸2の移動が止まるようにしている。
このストローク端において、上記ジョイント4と上記段部1bとの衝突音が大きいと、その音が、例えば据えきり時等で、ステアリングを最大限に切ったときに、車内に聞こえて耳障りになることがある。
【0004】
この衝突音を低減させるために、図3に示すように、ジョイント4の端面4a側に、受け部材5を設け、そこに、例えば、リング状の弾性部材6を設けることがあった。このようにすれば、上記ラック軸2のストローク端において、ラックハウジング1の段部1bとジョイント4の端面4aとは弾性部材6を介して衝突するので衝突音を低減させることができる。
【0005】
また、図4に示す、図3とは別の装置は、ラック軸2の端部に小径部2bを形成し、この小径部2に、角リング状の弾性部材7を装着している。一方、ラックハウジング1の開口側の内周には、1c、1dの2つの段部を形成している。
ラック軸2のストローク端では、まず、上記弾性部材7がラックハウジング1内の段部1cに突き当たって衝撃を吸収し、さらに、力が作用すると、ジョイント4の端面4aが、段部1dに当たってラック軸2が止まるようにしている。この装置では、上記弾性部材7の厚みt1を、上記段部1cの軸方向の深さd1よりも大きくして、ラック軸方向の押圧力が作用しても、ジョイント4の端面4aが段部1dに突き当たるまでの間は、クッション性を保つことができるようにしている。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−219855号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
図3,図4に示した動力伝達装置において、弾性部材6や7は、ゴムや樹脂製のリングであり、これらは、ラック軸2のストローク端で、ラックハウジング1に直接突き当たり、ラックハウジング1とジョイント4との間で、繰り返し押圧されることによって損傷することがある。また、弾性部材6,7は、それ自体が図示しないブーツ内に露出していることもあり、潤滑用のグリスに曝されることから、経時変化によって劣化することもある。
その結果、上記弾性部材6,7の破片がラックハウジング1内に入り込んでしまう可能性があった。
【0008】
弾性部材6,7の破片がラックハウジング1内に入り込んでしまうと、抵抗となって、ラック軸2がスムーズに摺動できなくなる。特に、その破片が、ラック2a部分に入り込んだ場合には、ピニオン3からの動力伝達に支障が生じるような可能性があった。
一方で、経時変化が少なく、破損し難く、しかもクッション性に優れた材料を用いるようにしたのでは、コストアップになってしまう。
【0009】
この発明の目的は、特に高価な材料を用いることなく、経時劣化等により、たとえ弾性部材が破損したとしても、その破片が、ラックハウジング内に入り込んで操舵に支障を与えることがない動力伝達装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、ラックハウジングにラック軸を組み込むとともに、このラック軸に設けたラックにピニオンをかみ合わせる一方、ラック軸の端部には、連結手段を介して動力伝達系の軸を連結した動力伝達装置において、上記ラックハウジングの開口端部分あるいは上記連結手段であって上記開口端部分に対向する部分のいずれか一方に、クッション収納部を設け、このクッション収納部内に、弾性部材と、この弾性部材よりラックハウジングの開口側あるいは、上記開口端部分に対向する部分側に摺動部材を組み込み、ラック軸のストローク端で、上記連結手段あるいはラックハウジングのいずれか一方が上記摺動部材に当たって、その摺動部材を摺動させながら弾性部材を圧縮させる構成にした点に特徴を有する。
【0011】
第2の発明は、第1の発明を前提とし、クッション収納部には円筒部を設け、この円筒部の外周に弾性部材および摺動部材をはめた点に特徴を有する。
第3の発明は、第2の発明を前提とし、円筒部には、縮径方向のたわみ性を持たせるとともに、その外周には、摺動部材の抜け止め突部を形成し、上記円筒部をたわませながら、弾性部材および摺動部材をはめる構成にした点に特徴を有する。
【0012】
第4の発明は、上記第2,第3の発明を前提とし、円筒部の端部にフランジ部を設けてクッション支持部材を構成し、このクッション支持部材をラックハウジング内に組み込み、クッション支持部材とラックハウジングの内周面とによってクッション収納部を構成する点に特徴を有する。
第5の発明は、上記第2から第4の発明を前提とし、摺動部材の、クッション収納部に収納される部分の軸方向長さと、弾性部材の軸方向長さとの和を、収納部内側の軸方向長さより大きくし、上記弾性部材を圧縮した状態でクッション収納部に収納した点に特徴を有する。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1、図2に、この発明の実施例を示す。
図1に示す、ラックピニオン式の動力伝達装置は、ラックハウジング1内に、摺動自在に組み込んだラック軸2のラック2aに、ピニオン3をかみ合わせている。また、ラック軸2の両端には、ジョイント4を接続し、このジョイント4を介してラック軸2と車輪に連携する動力伝達系の軸とを連結している。このジョイント4が、この発明の連結手段である。
図2は、ラック軸2の端部付近の拡大図である。
図2に示すように、ラックハウジング1の端部側には大形部1aを形成している。そして、この大径部1aの内側には、クッション支持部材8と、弾性部材9と、摺動部材10とを組み込んでいる。
【0014】
上記クッション支持部材8は、金属製の部材で、円筒形の筒部8aとその一端に連続して形成したフランジ部8bとからなる。そして、上記筒部8aの先端8d側の外周には、小さなリング状の突部8cを形成している。さらに、上記筒部8aの側面には、スリットや溝などを形成して、筒部8aを縮径方向にたわませることができるようにしている。
上記弾性部材9は、一例として、樹脂製の角リングからなり、その外径をラックハウジング1の大径部1aの内径より小さくし、内径をクッション支持部材8の筒部8aの外周より大きくしている。また、この弾性部材9の厚みt2を、上記筒部8aの突部8cからフランジ部8bまでの長さL1よりも短くしている。
【0015】
また、摺動部材10は、外径を上記大径部1aの内径にほぼ等しくするとともに、大径部1aとは相対移動可能な金属製のリングである。この摺動部材10は、大、小、2種の内径を持ち、大径部10aと小径部10bとの境界に段部10cを形成している。上記小径部10bの内径は、上記クッション支持部材8の筒部8aの外径とほぼ同等とするとともに、上記筒部8aとは相対緯度可能な寸法とし、大径部10aの内径は、上記筒部8aに設けた突部8c頂上の径よりもわずかに大きくしている。そして、この摺動部材10の厚みt3は、{摺動部材10の厚みt3+弾性部材9の厚みt2}>(クッション支持部材8の筒部8aの全長L2)の関係を満たしている。さらに、この発明のクッション収納部に収納される部分の長さである摺動部材10の小径部10b部分の厚みt4は、{厚みt4+弾性部材9の厚みt2}≒(収納部内側の軸方向長さL1)の関係を満たすようにしている。なお、上記収納部内側の軸方向長さL1は、筒部8aの突部8cを除いた部分の長さである。
ただし、{厚みt4+厚みt2}>(長さL1)とした場合には、弾性部材9が、クッション収納部に収納された状態で圧縮されるため、ストローク端以外の状態では、上記弾性部材9の弾性力が、摺動部材10を上記突部8cに押圧している。このように、摺動部材10が、上記突部8cに押し付けられているので、走行時の振動等によって摺動部材10が振動することを防止できる。
【0016】
上記のような、各部材を、ラックハウジング1の大径部1a内に、次のようにして組み込む。
まず、クッション支持部材8の、筒部8aの外周に弾性部材9をはめる。
次に、クッション支持部材8の筒部8bの突部8c側をたわませて縮径し、摺動部材10の小径部10b側を、上記筒部8aの外周にはめる。筒部8aのたわみが戻ると、突部8cが、摺動部材10の段部10cに引っかかって、摺動部材10が、筒部8aから抜け落ちないようになる。つまり、上記突部8cが、この発明の抜け止め突部である。ただし、摺動部材10の大径部10aの内径は、突部8cの外周より大きいので、摺動部材10は、矢印X方向へ移動することは可能である。
【0017】
このように、弾性部材9および摺動部材10を、クッション支持部材8にはめつけて一体としたら、これを、ラックハウジング1の大径部1a内にはめ込む。このとき、フランジ部8bの外径を、上記大径部1aの内径に、端部8eが当接するまで、フランジ部8bを圧入することによって、上記クッション支持部材8を大径部1a内に固定する。
すると、図1、図2に示すように、クッション支持部材8とラックハウジング1の大径部1aとで、この発明のクッション収納部を構成し、このクッション収納部内に、弾性部材9と、その外側に摺動部材10を組み込んだ状態となる。ただし、上記摺動部材10の大径部10aは、クッション支持部材8の先端8dよりジョイント4側へはみ出している。
なお、上記クッション支持部材8、弾性部材9,摺動部材10の、組み付け順序は、一例であり、組み付け手順は、適宜入れ替わってもかまわない。例えば、クッション支持部材8を予めラックハウジング1の所定位置に装着した後、弾性部材9や摺動部材10を組み付けてもよい。
【0018】
この状態で、ラック軸2が矢印X方向に移動してジョント4の端面4aが摺動部材10に突き当たると、摺動部材10を矢印X方向へ押圧する。摺動部材10は、弾性部材9を圧縮しながら、矢印X方向へ移動する。このように、ジョイント4が摺動部材10に突き当たったとき、上記弾性部材9が圧縮することによって衝突の衝撃を吸収し、衝突音を低減することができる。
さらに、ジョイント4が矢印X方向へ押し付けられると、摺動部材10は弾性部材9を圧縮させながら移動し、クッション支持部材8の先端8dに衝突して止まる。つまり、ジョイント4の端面4aがクッション支持部材8の先端8dに突き当たった状態が、ストローク端である。
【0019】
この実施例の動力伝達装置では、弾性部材9が、クッション収納部内に設置されるとともに、このクッション収納部の端部を摺動部材10で閉鎖している。つまり、弾性部材9が、従来例のようにむき出しになることがなく、ジョイント4と直接衝突することもない。従って、弾性部材9が、破損し難くなる。また、劣化などによって万一破損し、破片が発生したとしても、その破片がラックハウジング1とラック軸2の間に入り込むことがないので、操舵に支障を与えることがない。
また、弾性部材9として、特に劣化しにくい高価な材料を用いる必要もない。
【0020】
なお、この実施例では、クッション収納部を、ラックハウジング1側に設けた装置を説明したが、クッション収納部は、ジョイント4側に設けてもよい。例えば、ジョイント4の端面4aにクッション収納部用の凹部を形成して、そこに、弾性部材9と摺動部材10をはめ込んだり、別部材としてのクッション支持部材を用いて、それをジョイント4側に固定するようにしても良い。この場合には、この発明の弾性部材の外側は、弾性部材に対してラックハウジング1側である。
【0021】
【発明の効果】
第1〜第5の発明によれば、高価な、特別の材料を用いなくても、弾性部材の破片がラックハウジング内に入り込むことがない。従って、弾性部材の破片によって、ラック軸の移動がスムーズにできなくなって、操舵に支障を来すようなことがなくなる。
第2、第3の発明によれば、弾性部材および摺動部材の取り付けが容易になる。
第4の発明では、クッション支持部材をラックハウジングと別に備えたので、弾性部材および摺動部材の取り付けがより簡単にできる。
第5の発明によれば、ストローク端以外の状態でも、摺動部材の反発力により、摺動部材の位置が拘束されるため、摺動部材が、走行振動などによってがたついたり、振動音を発生したりすることがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の動力伝達装置の断面図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】従来例の動力伝達装置の断面図である。
【図4】従来例の動力伝達装置の断面図である。
【符号の説明】
1 ラックハウジング
2 ラック軸
2a ラック
3 ピニオン
4 この発明の連結手段であるジョイント
8 クッション支持部材
8a 筒部
8b フランジ部
8c この発明の抜け止め突部である突部
9 弾性部材
10 摺動部材
Claims (5)
- ラックハウジングにラック軸を組み込むとともに、このラック軸に設けたラックにピニオンをかみ合わせる一方、ラック軸の端部には、連結手段を介して動力伝達系の軸を連結した動力伝達装置において、上記ラックハウジングの開口端部分あるいは上記連結手段であって上記開口端部分に対向する部分のいずれか一方に、クッション収納部を設け、このクッション収納部内に、弾性部材と、この弾性部材よりラックハウジングの開口側あるいは上記開口端部分に対向する部分側に摺動部材を組み込み、ラック軸のストローク端で、上記連結手段あるいはラックハウジングのいずれか一方が上記摺動部材に当たって、その摺動部材を摺動させながら弾性部材を圧縮させる構成にした動力伝達装置。
- クッション収納部は円筒部を備え、この円筒部の外周に弾性部材および摺動部材をはめた請求項1記載の動力伝達装置。
- 円筒部には、縮径方向のたわみ性を持たせるとともに、その外周には、摺動部材の抜け止め突部を形成し、上記円筒部をたわませながら、摺動部材をはめる構成にした請求項2に記載の動力伝達装置。
- 円筒部の端部にフランジ部を設けてクッション支持部材を構成し、このクッション支持部材をラックハウジング内に組み込み、クッション支持部材とラックハウジングの内周面とによってクッション収納部を構成する請求項2または3に記載の動力伝達装置。
- 摺動部材の、クッション収納部に収納される部分の軸方向長さと、弾性部材の軸方向長さとの和を、収納部内側の軸方向長さより大きくし、上記弾性部材を圧縮した状態でクッション収納部に収納した請求項2〜4のいずれか1に記載の動力伝達装置。
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