JP2004226269A - 放射線像変換器およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐久性に優れ、かつ高画質の放射線画像を与える放射線像変換パネルおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】可撓性支持体シート上に蛍光体層と保護層とがこの順に形成されてなる放射線像変換パネルの周囲の側面と保護層表面周縁とが共に樹脂材料塗布層により縁貼りされ、一方該変換パネルの底面には縁貼り樹脂塗布層が形成されていない耐湿性放射線像変換パネルが、剛性基板の表面に接着されてなる放射線像変換器とその製造方法。
【選択図】 図1
【解決手段】可撓性支持体シート上に蛍光体層と保護層とがこの順に形成されてなる放射線像変換パネルの周囲の側面と保護層表面周縁とが共に樹脂材料塗布層により縁貼りされ、一方該変換パネルの底面には縁貼り樹脂塗布層が形成されていない耐湿性放射線像変換パネルが、剛性基板の表面に接着されてなる放射線像変換器とその製造方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、蛍光体、特に蓄積性蛍光体を利用する放射線画像情報記録再生方法に用いられる放射線像変換器、および該放射線像変換器の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
X線などの放射線が照射されると、放射線エネルギーの一部を吸収蓄積し、そののち可視光線や赤外線などの電磁波(励起光)の照射もしくは熱などの付与を受けると、蓄積した放射線エネルギーに応じて発光を示す性質を有する蓄積性蛍光体(輝尽発光を示す輝尽性蛍光体等)を利用して、この蓄積性蛍光体を含有するシート状の放射線像変換パネル(あるいは蓄積性蛍光体シートともいう)に、被検体を透過したあるいは被検体から発せられた放射線を照射して被検体の放射線画像情報を一旦蓄積記録した後、変換パネルの表面でレーザ光などの励起光を走査して順次発光光として放出させ、そしてこの発光光を光電的に読み取って画像信号を得ることからなる、放射線画像情報記録再生方法が広く実用に共されている。読み取りを終えた変換パネルは、残存する放射線エネルギーの消去が行われた後、次の撮影のために待機状態に入り、このようにして放射線像変換パネルは繰り返し使用される。
【0003】
放射線画像情報記録再生方法に用いられる放射線像変換パネル(蓄積性蛍光体シート)は、基本構造として、支持体(通常は可撓性の支持体)とその上に設けられた蓄積性蛍光体層とからなる。また、蓄積性蛍光体層の上面(支持体に面していない側の面)には通常、保護層が設けられていて、蛍光体層を化学的な変質あるいは物理的な衝撃から保護している。さらに、変換パネルの蛍光体層の化学的な変質を防止したり、変換パネルを物理的な衝撃から保護するために、変換パネルの周囲の側面に樹脂材料を塗布して縁貼りを設けることも知られている。
【0004】
蛍光体層は通常、蓄積性蛍光体粒子とこれを分散状態で含有支持する結合剤とからなる。ただし、蛍光体層としては、蒸着法や焼結法によって形成される結合剤を含まないで蓄積性蛍光体の凝集体のみから構成されるものなども知られている。
【0005】
放射線画像情報記録再生方法(および放射線画像形成方法)は数々の優れた利点を有する方法であり、この方法に用いられる放射線像変換パネルは、高感度であってかつ画質(鮮鋭度、粒状性など)の良好な画像を与えるものであることが望まれている。また、放射線像変換パネルは長期間にわたって繰り返し使用されるので、化学的変化(特に外気中の水分による劣化)や物理的衝撃などに強い耐久性の高いものであることが望まれている。
【0006】
特許文献1には、放射線像変換パネルから放射線画像情報を読み取る方法として、発光光の読取時間の短縮、装置の小型化およびコストの低減を図ることを目的とした、ラインスキャン読取方法が記載されている。この読取方法では通常、読取手段として結像光学系のラインセンサが使用されているが、ラインセンサの受光部に変換パネルからの発光光を結像させるために用いられる集光レンズ(屈折率分布型レンズアレイ等)は、変換パネルの水平度低下に対する許容範囲が狭く(集光レンズを通してラインセンサ上に結像させる結像関係が成り立つ範囲、すなわち、焦点深度)、変換パネルの水平度がこの許容範囲を外れると励起点がずれたり、集光光量が減少して、画質が低下する大きな原因となる。特許文献1には、読み取り時における変換パネルの撓みを低減して水平度を高めるために、放射線像変換パネルを二枚の剛性層(剛性基板)で輝尽性蛍光体層を挟んで形成した放射線像変換器をとして用いることが記載されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−303696号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前述した縁貼りは通常、縁貼り用の樹脂材料の塗布液をコの字型のディスペンサ等を用い、コの字の内面に塗布液を供給して、そのコの字の塗布液の内側と放射線像変換パネルの周囲の側面を接触させることにより、放射線像変換パネルの周囲側面と表裏両面(保護層側の表面と支持体側の底面)の周縁部に塗布し乾燥することにより形成される。このため、樹脂材料塗布層(縁貼り層)は、放射線像変換パネルの周囲側面(端面)にコの字型に形成される。この縁貼りの形成された変換パネルを次いで接着剤を用いて剛性基板の表面に接着するが、この場合に、得られた変換パネルは底面周縁部の縁貼り樹脂層の厚み分だけ、その底面に凹凸が生じて平面度が著しく低下する(図6参照)。そして、このように変形した放射線像変換パネルにラインスキャン読み取りを行うと、得られる放射線画像上に画像ムラが発生することが分かった。また、放射線像変換パネルの底面周縁部の縁貼り樹脂材料層の存在によって、放射線像変換器内の剛性基板と放射線像変換パネルとの密着性が均一になり難い。
【0009】
従って、本発明は、耐久性に優れ、かつ高画質の放射線画像を与える放射線像変換器、およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は特に、蛍光体層の平面度が高く、そして放射線像変換パネルが剛性基板に密着性良く接着した放射線像変換器、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、可撓性支持体シート上に蛍光体層と保護層とがこの順に形成されてなる放射線像変換パネルの周囲の側面と保護層表面周縁とが共に樹脂材料塗布層により縁貼りされ、一方該変換パネルの底面には縁貼り樹脂塗布層が形成されていない耐湿性放射線像変換パネルが、剛性基板の表面に接着されてなることを特徴とする放射線像変換器にある。
【0011】
また、本発明は、可撓性支持体シート上に蛍光体層と保護層とがこの順に形成されてなる放射線像変換パネルの底面の少なくとも周縁領域に接着層と剥離フィルムとをこの順に積層する工程;得られた積層体の周囲の側面と保護層表面周縁そして剥離フィルム表面周縁とに樹脂材料を層状に塗布して縁貼りする工程;剥離フィルムをその剥離フィルム上の樹脂材料塗布層と共に接着層から引き剥がして底面に接着層を備えた耐湿性放射線像変換パネルを得る工程;そして該耐湿性放射線像変換パネルを接着層を介して剛性基板の表面に接着することからなる放射線像変換器の製造方法にもある。
【0012】
本発明者は、剛性基板および縁貼りが設けられた放射線像変換パネルからなる放射線像変換器の上記問題点について検討した結果、放射線像変換パネルの支持体側表面(底面)にまず、剥離性フィルムを備えた粘着フィルムを貼り付け、次いでコの字型の樹脂材料塗布層により縁貼りを形成した後、粘着フィルム上の剥離性フィルムをその表面の縁貼り材料層と共に剥ぎ取り、次いで放射線像変換パネルを該粘着シートを介して平坦な状態で剛性基板に接着することにより、得られた放射線像変換器の蓄積性蛍光体層はその平面度が顕著に向上して、画像ムラのない放射線画像を与えることを見い出した。また、放射線像変換パネルと剛性基板との密着性が向上して、放射線像変換器の耐久性も増大することを見い出した。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の放射線像変換器の好ましい態様は以下のとおりである。
(1)剛性基板の蛍光体層側表面の平面度が50μm以下である。
(2)接着層が両面接着(あるいは粘着)シートの接着層(あるいは粘着層)からなる。
(3)剛性基板上に、接着層を介して順に支持体、光反射層、蛍光体層および保護層が設けられている。
(4)蛍光体層が蓄積性蛍光体を含有する層である。
【0014】
本発明の放射線像変換器の代表的な構成を図1に示す。
図1は、本発明の放射線像変換器の構成の例を概略的に示す断面図である。図1において、放射線像変換器は、剛性基板11の上に、順に接着層12、放射線像変換パネルの可撓性支持体13、光反射層14、蓄積性蛍光体層15、および保護層16が積層され、そしてその放射線像変換パネルの周囲側面および保護層表面周縁部に縁貼り17が形成された構成を有する。支持体13は、接着層12を介して剛性基板11の表面上に平坦にかつ密着して接着されている。よって、支持体13上に設けられた蓄積性蛍光体層15の表面は、端部の浮き上がりがなく、良好な平面性を示す。
【0015】
特に、剛性基板11はその蛍光体層側表面が、平面度50μm以下の良好な平面性を有することが好ましい。そして、剛性基板11上に設けられた蓄積性蛍光体層15の保護層側表面は高い平面度(すなわち、凹凸が少ない)を示すことが好ましい。放射線画像読み取り時の焦点深度は、より厳密に言えば、発光光が発せられる蛍光体層表面から集光レンズまでの距離が問題となるからである。ここで、平面度とは、実施例にて後述するように、周期が1mm以上の凹凸を有する表面に対して近似平面を求めたとき、その近似平面からの表面のズレ(偏差)の最大値をいう。なお、1mm周期未満の細かな凹凸は一般に表面粗さRaとして扱われるが、Ra≦10μmを満たしていればよい。
【0016】
ただし、本発明において、図1に示した構成は本発明の放射線像変換器の一例であって、支持体13から、光反射層14、蓄積性蛍光体層15、保護層16までの層構成は図1に限定されるものではない。また、蛍光体層も蓄積性蛍光体層一層に限定されるものではなく、放射線吸収用蛍光体を含有する層あるいはこれらの層の組合せであってもよい。
【0017】
なお、本明細書においては説明の都合上、支持体13から保護層16に至る積層体部分(この積層体の層構成が図1の構成に限定されないことは上述したとおりである)を、単に放射線像変換パネル18と称することもある。
【0018】
以下に、本発明の放射線像変換器の製造方法について、蛍光体層が蓄積性蛍光体を含有する層である場合を例にとって詳細に述べる。
【0019】
まず、支持体上に蓄積性蛍光体層を含む蛍光体シートを作製する。
支持体は通常、柔軟な樹脂材料からなる厚みが50μm乃至1mmの可撓性のシートあるいはフィルムである。支持体は透明であってもよく、あるいは支持体に、励起光もしくは発光光を反射させるための光反射性材料(例、アルミナ粒子、二酸化チタン粒子、硫酸バリウム粒子)を充填してもよく、あるいは空隙を設けてもよい。または、支持体に励起光もしくは発光光を吸収させるため光吸収性材料(例、カーボンブラック)を充填してもよい。支持体の形成に用いることのできる樹脂材料の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂などの各種樹脂材料を挙げることができる。さらに、放射線画像の鮮鋭度を高める目的で、支持体の蛍光体層が形成される側の表面(支持体表面に下塗層、光反射層あるいは光吸収層等の補助層が設けられる場合には、それら補助層の表面であってもよい)には微小な凹凸が形成されていてもよい。
【0020】
支持体上には、所望により、パネルとしての感度もしくは画質(鮮鋭度、粒状性)を向上させるために、アルミナ、二酸化チタン、硫酸バリウムなどの光反射性物質からなる光反射層、もしくはカーボンブラックなどの光吸収性物質からなる光吸収層などが設けられてもよい。またあるいは、その上に設けられる層との密着性を高めるために下塗層が設けられてもよい。
【0021】
この支持体上には、蓄積性蛍光体を含有する蛍光体層が設けられる。
蓄積性蛍光体としては、波長が400〜900nmの範囲の励起光の照射により、300〜500nmの波長範囲に輝尽発光を示す輝尽性蛍光体が好ましい。
そのような好ましい輝尽性蛍光体の例としては、ユーロピウム又はセリウムで付活したアルカリ土類金属ハロゲン化物系蛍光体(例、BaFBr:Eu、及びBaF(Br,I):Eu)、およびセリウム付活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体を挙げることができる。
【0022】
これらのうちでも、基本組成式(I):
MIIFX:zLn ‥‥(I)
で代表される希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体は特に好ましい。ただし、MIIはBa、Sr及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属を表し、LnはCe、Pr、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Nd、Er、Tm及びYbからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素を表す。Xは、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンを表す。zは、0<z≦0.2の範囲内の数値を表す。
【0023】
上記基本組成式(I)中のMIIとしては、Baが半分以上を占めることが好ましい。Lnとしては、特にEu又はCeであることが好ましい。また、基本組成式(I)では表記上F:X=1:1のように見えるが、これはBaFX型の結晶構造を持つことを示すものであり、最終的な組成物の化学量論的組成を示すものではない。一般に、BaFX結晶においてX−イオンの空格子点であるF+(X−)中心が多く生成された状態が、600〜700nmの光に対する輝尽効率を高める上で好ましい。このとき、FはXよりもやや過剰にあることが多い。
【0024】
なお、基本組成式(I)では省略されているが、必要に応じて下記のような添加物を基本組成式(I)に加えてもよい。
bA, wNI, xNII, yNIII
ただし、AはAl2O3、SiO2及びZrO2などの金属酸化物を表す。MIIFX粒子同士の焼結を防止する上では、一次粒子の平均粒径が0.1μm以下の超微粒子でMIIFXとの反応性が低いものを用いることが好ましい。NIは、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属の化合物を表し、NIIは、Mg及び/又はBeからなるアルカリ土類金属の化合物を表し、NIIIは、Al、Ga、In、Tl、Sc、Y、La、Gd及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属の化合物を表す。これらの金属化合物としては、ハロゲン化物を用いることが好ましいが、それらに限定されるものではない。
【0025】
また、b、w、x及びyはそれぞれ、MIIFXのモル数を1としたときの仕込み添加量であり、0≦b≦0.5、0≦w≦2、0≦x≦0.3、0≦y≦0.3の各範囲内の数値を表す。これらの数値は、焼成やその後の洗浄処理によって減量する添加物に関しては最終的な組成物に含まれる元素比を表しているわけではない。また、上記化合物には最終的な組成物において添加されたままの化合物として残留するものもあれば、MIIFXと反応する、あるいは取り込まれてしまうものもある。
【0026】
その他、基本組成式(I)には更に必要に応じて、Zn及びCd化合物;金属酸化物であるTiO2、BeO、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、Y2O3、La2O3、In2O3、GeO2、SnO2、Nb2O5、Ta2O5、ThO2;Zr及びSc化合物;B化合物;As及びSi化合物;テトラフルオロホウ酸化合物;ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロチタン酸、およびヘキサフルオロジルコニウム酸の1価もしくは2価の塩からなるヘキサフルオロ化合物;V、Cr、Mn、Fe、Co及びNiなどの遷移金属の化合物などを添加してもよい。
さらに、本発明においては上述した添加物を含む蛍光体に限らず、基本的に希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体とみなされる組成を有するものであれば如何なるものであってもよい。
【0027】
上記基本組成式(I)で表される希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体は、通常は、アスペクト比が1.0乃至5.0の範囲にある。
好ましくは、蓄積性蛍光体粒子は、アスペクト比が1.0乃至2.0(好ましくは、1.0乃至1.5)の範囲にあり、粒子サイズのメジアン径(Dm)が1μm乃至10μm(好ましくは、2μm乃至7μm)の範囲にあり、そして粒子サイズ分布の標準偏差をσとしたときのσ/Dmが50%以下(好ましくは、40%以下)のものである。また、粒子の形状としては、直方体型、正六面体型、正八面体型、14面体型、これらの中間多面体型および不定型粉砕粒子などがあるが、それらのうちでは14面体型が好ましい。
【0028】
ただし、本発明において蛍光体は蓄積性蛍光体に限定されるものではなく、X線などの放射線を吸収して紫外乃至可視領域に(瞬時)発光を示す蛍光体であってもよい。そのような蛍光体の例としては、LnTaO4:(Nb,Gd)系、Ln2SiO5:Ce系、LnOX:Tm系(Lnは希土類元素である)、CsX系(Xはハロゲンである)、Gd2O2S:Tb、Gd2O2S:Pr,Ce、ZnWO4、LuAlO3:Ce、Gd3Ga5O12:Cr,Ce、HfO2等を挙げることができる。
【0029】
上記粒子状の蓄積性蛍光体を結合剤と共に適当な有機溶剤に分散溶解して、塗布液を調製する。塗布液中での結合剤と蛍光体との比率は通常、1:1乃至1:100(重量比)の範囲にあり、好ましくは1:8乃至1:40(重量比)の範囲にある。蓄積性蛍光体粒子を分散支持する結合剤については様々な種類の樹脂材料が知られており、本発明に係る蛍光体層の形成においても、それらの公知の結合剤樹脂を中心とした任意の樹脂材料から適宜選択して用いることができる。
また、塗布液調製用の有機溶剤についても公知の有機溶剤の中から適宜選択して用いることができる。なお、塗布液には更に、塗布液中における蛍光体の分散性を向上させるための分散剤、形成後の蛍光体層中における結合剤と蛍光体との間の結合力を向上させるための可塑剤、蛍光体層の変色を防止するための黄変防止剤、硬化剤、架橋剤など各種の添加剤が混合されていてもよい。
【0030】
この塗布液を次に、支持体表面にドクターブレード、ロールコータ、ナイフコータなど通常の塗布手段を用いて、均一に塗布して塗膜を形成する。この塗膜を乾燥して、支持体上への蓄積性蛍光体層の形成を完了する。蓄積性蛍光体層の層厚は、目的とする放射線像変換パネルの特性、蛍光体の種類、結合剤と蛍光体との混合比などによっても異なるが、通常は20μm乃至1mmの範囲にあり、好ましくは50乃至500μmの範囲にある。
【0031】
蓄積性蛍光体層は、必ずしも一層である必要はなく、二層以上で構成されていてもよく、その場合に各層で蛍光体の種類や粒子径、結合剤と蛍光体との混合比を任意に変えることができる。蛍光体層はまた、蓄積性蛍光体とこれを分散状態で含有支持する結合剤とからなるのものばかりでなく、結合剤を含まないで蛍光体の凝集体のみから構成されたもの、蒸着膜など気相堆積法により形成されたもの、あるいは蛍光体の凝集体の間隙に高分子物質が含浸されたものなどであってもよい。
【0032】
蓄積性蛍光体層は支持体上に直接形成する必要はなく、別に用意した基板(仮支持体)上に蛍光体層を形成した後、蛍光体層を基板から引き剥がし、別に用意した支持体上に接着剤等を用いて接着する方法を利用してもよい。あるいは、蛍光体層が自己支持性である場合には、支持体が付設されていなくてもよい。
【0033】
蓄積性蛍光体層の表面には、放射線像変換パネルの取扱い上の便宜や、特性変化の回避のために、保護層を設ける。保護層は一般的には、励起光の入射や発光光の出射に殆ど影響を与えないように、透明であることが望ましく、また外部から与えられる物理的衝撃や化学的影響からパネルを充分に保護することができるように、化学的に安定でかつ高い物理的強度を持つことが望ましい。
【0034】
保護層としては、セルロース誘導体、ポリメチルメタクリレート、有機溶媒可溶性フッ素系樹脂などのような透明な有機高分子物質を適当な溶媒に溶解して調製した溶液を蛍光体層の上に塗布することで形成されたもの、あるいはポリエチレンテレフタレートなどの有機高分子フィルムや透明なガラス板などの保護層形成用シートを別に形成して蛍光体層の表面に適当な接着剤を用いて設けたもの、あるいは無機化合物を蒸着などによって蛍光体層上に成膜したものなどが用いられる。また、保護層中には酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、アルミナ等の光散乱性微粒子、パーフルオロオレフィン樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末等の滑り剤、およびポリイソシアネート等の架橋剤など各種の添加剤が分散含有されていてもよい。保護層の層厚は一般に、高分子物質からなる場合には約0.1〜20μmの範囲にあり、ガラス等の無機化合物からなる場合には100〜1000μmの範囲にある。
【0035】
保護層の表面にはさらに、保護層の耐汚染性を高めるためにフッ素樹脂塗布層を設けてもよい。フッ素樹脂塗布層は、フッ素樹脂を有機溶媒に溶解(または分散)させて調製したフッ素樹脂溶液を保護層の表面に塗布し、乾燥することにより形成することができる。フッ素樹脂は単独で使用してもよいが、通常はフッ素樹脂と膜形成性の高い樹脂との混合物として使用する。また、ポリシロキサン骨格を持つオリゴマーあるいはパーフルオロアルキル基を持つオリゴマーを併用することもできる。フッ素樹脂塗布層には、干渉むらを低減させて更に放射線画像の画質を向上させるために、微粒子フィラーを充填することもできる。フッ素樹脂塗布層の層厚は通常は0.5μm乃至20μmの範囲にある。フッ素樹脂塗布層の形成に際しては、架橋剤、硬膜剤、黄変防止剤などのような添加成分を用いることができる。特に架橋剤の添加は、フッ素樹脂塗布層の耐久性の向上に有利である。
このようにして、放射線像変換パネルが得られる。
【0036】
なお、放射線像変換パネルの表裏面の保護層と支持体とは、慣用的に用いられている区別に従って、上側に配置される材料を保護層と云い、下側に配置される材料を支持体と云っているが、この表現は便宜的なものであり、本発明の放射線像変換器における支持体を保護層として理解し、逆に保護層を支持体として理解してもよいことは勿論である。
【0037】
次に、本発明に従って、この放射線像変換パネルに縁貼りおよび剛性基板を設けて放射線像変換器を製造する方法を、図面を参照しながら説明する。図2〜図5はそれぞれ、本発明の製造方法に従う製造工程を示す概略断面図である。
【0038】
両面に剥離性フィルムを備えた両面粘着シート23の片側の剥離性フィルムのみを剥ぎ取って、図2に示すように、放射線像変換パネル28の片面(底面)に貼り付けて、放射線像変換パネル28と両面粘着シート23(22:粘着シート本体(接着層)、23a:剥離性フィルム)とからなる積層体を得る。
【0039】
この放射線像変換パネル28、接着層22および剥離性フィルム23aからなる積層体の周囲側面と両面の端部に、図3に示すように、樹脂塗布層からなる縁貼り27を形成する。
【0040】
縁貼り材料となる樹脂材料としては、蛍光体層の化学的な変質を防止するためには気密性に優れた透湿度の低いものが好ましく、例えばシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、シアノアクリレート系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、クロロプレン系ゴム、ニトリル系ゴムなどの樹脂を挙げることができる。
【0041】
縁貼りの形成は、上記縁貼り用樹脂材料を適当な有機溶剤に溶解して塗布液を調製した後、この塗布液を先端がコの字型のディスペンサ等を用いて、積層体の側面および両側表面の周縁部に均一に塗布し、乾燥することにより行う。この塗布液には更に、黄変防止剤、硬化剤、架橋剤、滑り剤など各種の添加剤が混合されていてもよい。縁貼りとなる塗布層の乾燥後の厚みは、一般には1乃至50μmの範囲にあり、好ましくは3乃至30μmの範囲にある。
【0042】
次に、縁貼りが設けられた放射線像変換パネルの接着層22の表面から剥離性フィルム23aを剥ぎ取る。この時、図4に示すように、剥離性フィルム23aの表面端部および側面に設けられた縁貼り材料塗布層も一緒に取り除かれ、接着層22の表面は平坦になる。
【0043】
この積層体を、図5に示すように、接着層22により剛性基板21表面に接着する。これにより、放射線像変換パネル28(すなわち、蓄積性蛍光体層)が接着層22を介して剛性基板21上に平坦に接着された本発明の放射線像変換器が得られる。
【0044】
本発明に用いられる剛性基板は、その剛性Yを下記式で表すとき、
関係式: Y = Et2/ρ(1−2δ)
[ただし、ρは剛性基板の密度を表し、δはポアソン比を表し、Eはヤング率を表し、tは厚みを表す]
Y≧64を満足することが望ましい。より好ましくは、Y≧76を満足することであり、そして特に好ましくは、Y≧760を満足することである。また、剛性基板のヤング率Eは、40GPa以上であることが好ましい。
【0045】
また、剛性基板の蛍光体層が付設される側の表面は、その平面度が50μm以下であることが好ましい。
【0046】
このような特性を有する剛性基板の材料としては、例えばマグネシウム、アルミニウム、チタン、鉄、ニッケル、およびこれら金属のうちの少なくとも何れかを母体とする合金、ガラス、石英、並びにこれらの複合材料を挙げることができる。剛性基板は、これら材料からなる単一の平面板であってもよいが、あるいはハニカム構造のシート、同種または異種材料のシートを積層した複合板、平面板でハニカム板を挟んだ積層板などであってもよい。
【0047】
あるいは、本発明の放射線像変換器は、下記の方法によっても製造することができる。まず、放射線像変換パネルの裏面に接着層を形成し、この接着層を介して放射線像変換パネルを剛性基板上に接着する。接着層の形成は、前述した両面粘着シートを貼り付けることにより行ってもよいし、あるいは接着剤を塗布することなどにより行ってもよい。次に、剛性基板上の放射線像変換パネルの側面および表面端部に沿って、前記縁貼り用塗布液を先端が直角状のディスペンサ等を用いて塗布し、乾燥して縁貼りを形成する。
【0048】
上述のようにして本発明のが得られるが、本発明の放射線像変換器の構成は、公知の各種のバリエーションを含むものであってもよい。例えば、放射線画像の鮮鋭度を向上させることを目的として、上記の少なくともいずれかの層を、励起光を吸収し発光光は吸収しないような着色剤によって着色してもよい。
【0049】
【実施例】
剛性基板の表面および放射線像変換パネルの蛍光体層表面の平面度は、下記のようにして測定した。まず、対象物表面の凹凸を、CNC画像測定機(SUPER 9VH606−Pro、ミツトヨ製)を用いて1mm間隔で測定して近似平面を決定し、次いで、この近似平面に対する偏差を対象物表面全体に渡って求めることにより、平面度を決定した。
【0050】
[実施例1]
(1)放射線像変換パネルの作製
【0051】
上記組成の材料をメチルエチルケトン(MEKとも略す)387gに加え、混合分散して粘度2〜3Pa・sの塗布液を調製した。この塗布液をポリエチレンテレフタレート(PET)シート(支持体、厚み:188μm、ヘイズ度:約27、ルミラーS−10、東レ(株)製)の表面に、ドクターブレードを用いて塗布し乾燥して、支持体上に光反射層(層厚:100μm)を形成した。
【0052】
【0053】
上記組成の材料をメチルエチルケトン47gに加え、プロペラミキサを用いて10000rpmで30分間混合分散して、粘度4Pa・sの塗布液(結合剤/蛍光体の重量比:1/20)を調製した。この塗布液をドクターブレードを用いて、シリコーン系離型剤が塗布されたPETシート(仮支持体、厚み:190μm)の表面に、460mmの幅で塗布し乾燥して、仮支持体上に蛍光体層(層厚:300μm)を形成した。
【0054】
この蛍光体層を仮支持体から引き剥がして、支持体上の光反射層表面に、塗布形成時の裏面(仮支持体側)が接するようにして重ね、これをカレンダー機を用いて総荷重2300kg、上側ロール温度45℃、下側ロール温度45℃、送り速度0.3m/分にて熱圧縮した。これにより、蛍光体層は光反射層に完全に融着した。熱圧縮後の蛍光体層の層厚300μm、蛍光体粒子の充填密度3.40g/cm3であった。
【0055】
【0056】
上記組成の材料をメチルエチルケトン38gに加え、混合分散して塗布液を調製した。この塗布液を蛍光体層の表面に、ドクターブレードを用いて塗布し乾燥して、保護層(層厚:2μm)を形成した。
このようにして得られた積層体を、440mm×440mmのサイズに裁断して、放射線像変換パネルを得た。
【0057】
(2)接着層の付設
放射線像変換パネルの裏面(支持体側表面)に、両面粘着シート(両面テープ8161、スコッチ(株)製)を、その一方のPET剥離性フィルムを剥がして貼り付けて、接着層(層厚:25μm)を設けた。接着層表面には、もう一方のPET剥離性フィルム(厚み:50μm)が残っている(図2参照)。
【0058】
【0059】
上記組成の縁貼り用塗布層材料をメチルエチルケトン15gに加え、混合溶解して塗布液を調製した。この塗布液をコの字型ディスペンサを用いて、接着層および剥離性フィルムを有する放射線像変換パネルの周囲側面および両表面周縁部に塗布し、室温で充分に乾燥して、縁貼り(硬化被膜、厚み:約25μm)を形成した(図3参照)。
【0060】
(4)剛性基板の付設
縁貼りが形成された放射線像変換パネルの裏面(底面)から剥離性フィルムを剥がした。このとき、放射線像変換パネル裏面周縁部に形成されていた縁貼りは剥離性フィルムと一緒に除去された(図4参照)。
次に、研磨したアルミニウムシート(剛性基板、材質:A7075、サイズ:460mm×460mm、平均厚み:10mm、平面度:20μm)の表面に、放射線像変換パネルを接着層が接するようにして貼り付けて、本発明の放射線像変換器を得た(図5及び図1参照)。
【0061】
得られた放射線像変換器の蛍光体層の保護層側表面の平面度は、31μmであった。また、放射線像変換器の裏面からこの蛍光体層表面までの高さを測定したところ、端部の浮き上がりは見られなかった。さらに、この放射線像変換器にX線を照射したのち結像光学系のラインセンサで画像の読み取りを行ったところ、画像ムラのない良好な放射線画像が得られた。
【0062】
[実施例2]
(1)放射線像変換パネルの作製
実施例1と同様にして、放射線像変換パネルを作製した。
(2)接着層の付設
実施例1と同様にして、放射線像変換パネルの裏面に接着層を設けた。
(3)剛性基板の付設
放射線像変換パネルを、その裏面から剥離性フィルムを剥がし、実施例1と同様の研磨したアルミニウムシートの表面に接着層が接するようにして貼り付けて、剛性基板上に接着層を介して放射線像変換パネルを設けた。
(4)縁貼りの形成
実施例1と同様の縁貼り用塗布液を、直角状のディスペンサを用いて、放射線像変換パネルおよび接着層部分の周囲側面および表面端部に塗布し、室温で充分に乾燥して縁貼り(厚み:約25μm)を形成し、本発明の放射線像変換器を製造した(図1参照)。
【0063】
得られた放射線像変換器の蛍光体層の保護層側表面の平面度は、31μmであった。また、放射線像変換器の裏面から蛍光体層表面までの高さを測定したところ、端部の浮き上がりは見られなかった。さらに、この放射線像変換器にX線を照射した後、結像光学系のラインセンサで画像の読み取りを行ったところ、画像ムラのない良好な放射線画像が得られた。
【0064】
[比較例1]
(1)放射線像変換パネルの作製
実施例1と同様にして、放射線像変換パネルを作製した。
(2)縁貼りの形成
実施例1と同様の縁貼り用塗布液を、コの字型のディスペンサを用いて、放射線像変換パネルの周囲側面および両表面周縁部に塗布し、室温で充分に乾燥して縁貼り(厚み:約25μm)を形成した。
(3)接着層の付設
実施例1と同様にして、縁貼りが形成された放射線像変換パネルの裏面に接着層を設けた。
(4)剛性基板の付設
縁貼りが形成された放射線像変換パネルを、その裏面から剥離性フィルムを剥がし、実施例1と同様の研磨したアルミニウムシートの表面に接着層が接するようにして貼り付けて、比較のための放射線像変換パネルを製造した。
【0065】
図6は、比較例1の放射線像変換器の構成を概略的に示す断面図である。図6において、放射線像変換器は、剛性基板31の上に、順に接着層32、支持体33、光反射層34、蓄積性蛍光体層35、および保護層36が積層され、そしてその周囲側面、保護層36の表面端部および支持体33の裏面周縁部に縁貼り37が設けられた構成を有する。縁貼り37が支持体33の裏面周縁部にまで及んでいるために、支持体33は、接着層32を介して剛性基板31上に凹凸を有して接着され、その結果、蓄積性蛍光体層35は、周縁部が盛り上がった状態となって平面度が低下している。
【0066】
上記で得られた放射線像変換器の裏面から蛍光体層表面までの高さを測定したところ、放射線像変換パネル(支持体)の裏面周縁部に縁貼りが存在するため、蛍光体層表面端部が約3μm、急峻な勾配で盛り上がっていた。さらに、この放射線像変換器にX線を照射したのち結像光学系のラインセンサで読み取りを行ったところ、放射線画像上に画像ムラが視認された。
【0067】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、放射線像変換パネルに縁貼りを設ける前に両面粘着シートを付設し、その後、両面粘着シートの剥離性フィルムを剥がす際に同時に裏面側の縁貼り塗布層も除去することにより、剛性基板上に平坦な状態で放射線像変換パネルを付設することができるので、平面度の顕著に向上した放射線像変換器を得ることができる。また、放射線像変換パネルと剛性基板の密着性を高めることができる。よって、本発明の放射線像変換器は、画像ムラの少ない、画質の向上した放射線画像を与えるとともに、耐久性においても優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の放射線像変換器の構成の例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の方法に係る放射線像変換器の製造工程を示す概略断面図である。
【図3】本発明の方法に係る放射線像変換器の製造工程を示す概略断面図である。
【図4】本発明の方法に係る放射線像変換器の製造工程を示す概略断面図である。
【図5】本発明の方法に係る放射線像変換器の製造工程を示す概略断面図である。
【図6】比較例1の放射線像変換器の構成の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
11、21、31 剛性基板
12、22、32 接着層
13、33 支持体
14、34 光反射層
15、35 蓄積性蛍光体層
16、36 保護層
17、27、37 縁貼り
18、28 放射線像変換パネル
23 両面粘着シート
【発明の属する技術分野】
本発明は、蛍光体、特に蓄積性蛍光体を利用する放射線画像情報記録再生方法に用いられる放射線像変換器、および該放射線像変換器の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
X線などの放射線が照射されると、放射線エネルギーの一部を吸収蓄積し、そののち可視光線や赤外線などの電磁波(励起光)の照射もしくは熱などの付与を受けると、蓄積した放射線エネルギーに応じて発光を示す性質を有する蓄積性蛍光体(輝尽発光を示す輝尽性蛍光体等)を利用して、この蓄積性蛍光体を含有するシート状の放射線像変換パネル(あるいは蓄積性蛍光体シートともいう)に、被検体を透過したあるいは被検体から発せられた放射線を照射して被検体の放射線画像情報を一旦蓄積記録した後、変換パネルの表面でレーザ光などの励起光を走査して順次発光光として放出させ、そしてこの発光光を光電的に読み取って画像信号を得ることからなる、放射線画像情報記録再生方法が広く実用に共されている。読み取りを終えた変換パネルは、残存する放射線エネルギーの消去が行われた後、次の撮影のために待機状態に入り、このようにして放射線像変換パネルは繰り返し使用される。
【0003】
放射線画像情報記録再生方法に用いられる放射線像変換パネル(蓄積性蛍光体シート)は、基本構造として、支持体(通常は可撓性の支持体)とその上に設けられた蓄積性蛍光体層とからなる。また、蓄積性蛍光体層の上面(支持体に面していない側の面)には通常、保護層が設けられていて、蛍光体層を化学的な変質あるいは物理的な衝撃から保護している。さらに、変換パネルの蛍光体層の化学的な変質を防止したり、変換パネルを物理的な衝撃から保護するために、変換パネルの周囲の側面に樹脂材料を塗布して縁貼りを設けることも知られている。
【0004】
蛍光体層は通常、蓄積性蛍光体粒子とこれを分散状態で含有支持する結合剤とからなる。ただし、蛍光体層としては、蒸着法や焼結法によって形成される結合剤を含まないで蓄積性蛍光体の凝集体のみから構成されるものなども知られている。
【0005】
放射線画像情報記録再生方法(および放射線画像形成方法)は数々の優れた利点を有する方法であり、この方法に用いられる放射線像変換パネルは、高感度であってかつ画質(鮮鋭度、粒状性など)の良好な画像を与えるものであることが望まれている。また、放射線像変換パネルは長期間にわたって繰り返し使用されるので、化学的変化(特に外気中の水分による劣化)や物理的衝撃などに強い耐久性の高いものであることが望まれている。
【0006】
特許文献1には、放射線像変換パネルから放射線画像情報を読み取る方法として、発光光の読取時間の短縮、装置の小型化およびコストの低減を図ることを目的とした、ラインスキャン読取方法が記載されている。この読取方法では通常、読取手段として結像光学系のラインセンサが使用されているが、ラインセンサの受光部に変換パネルからの発光光を結像させるために用いられる集光レンズ(屈折率分布型レンズアレイ等)は、変換パネルの水平度低下に対する許容範囲が狭く(集光レンズを通してラインセンサ上に結像させる結像関係が成り立つ範囲、すなわち、焦点深度)、変換パネルの水平度がこの許容範囲を外れると励起点がずれたり、集光光量が減少して、画質が低下する大きな原因となる。特許文献1には、読み取り時における変換パネルの撓みを低減して水平度を高めるために、放射線像変換パネルを二枚の剛性層(剛性基板)で輝尽性蛍光体層を挟んで形成した放射線像変換器をとして用いることが記載されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−303696号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前述した縁貼りは通常、縁貼り用の樹脂材料の塗布液をコの字型のディスペンサ等を用い、コの字の内面に塗布液を供給して、そのコの字の塗布液の内側と放射線像変換パネルの周囲の側面を接触させることにより、放射線像変換パネルの周囲側面と表裏両面(保護層側の表面と支持体側の底面)の周縁部に塗布し乾燥することにより形成される。このため、樹脂材料塗布層(縁貼り層)は、放射線像変換パネルの周囲側面(端面)にコの字型に形成される。この縁貼りの形成された変換パネルを次いで接着剤を用いて剛性基板の表面に接着するが、この場合に、得られた変換パネルは底面周縁部の縁貼り樹脂層の厚み分だけ、その底面に凹凸が生じて平面度が著しく低下する(図6参照)。そして、このように変形した放射線像変換パネルにラインスキャン読み取りを行うと、得られる放射線画像上に画像ムラが発生することが分かった。また、放射線像変換パネルの底面周縁部の縁貼り樹脂材料層の存在によって、放射線像変換器内の剛性基板と放射線像変換パネルとの密着性が均一になり難い。
【0009】
従って、本発明は、耐久性に優れ、かつ高画質の放射線画像を与える放射線像変換器、およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は特に、蛍光体層の平面度が高く、そして放射線像変換パネルが剛性基板に密着性良く接着した放射線像変換器、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、可撓性支持体シート上に蛍光体層と保護層とがこの順に形成されてなる放射線像変換パネルの周囲の側面と保護層表面周縁とが共に樹脂材料塗布層により縁貼りされ、一方該変換パネルの底面には縁貼り樹脂塗布層が形成されていない耐湿性放射線像変換パネルが、剛性基板の表面に接着されてなることを特徴とする放射線像変換器にある。
【0011】
また、本発明は、可撓性支持体シート上に蛍光体層と保護層とがこの順に形成されてなる放射線像変換パネルの底面の少なくとも周縁領域に接着層と剥離フィルムとをこの順に積層する工程;得られた積層体の周囲の側面と保護層表面周縁そして剥離フィルム表面周縁とに樹脂材料を層状に塗布して縁貼りする工程;剥離フィルムをその剥離フィルム上の樹脂材料塗布層と共に接着層から引き剥がして底面に接着層を備えた耐湿性放射線像変換パネルを得る工程;そして該耐湿性放射線像変換パネルを接着層を介して剛性基板の表面に接着することからなる放射線像変換器の製造方法にもある。
【0012】
本発明者は、剛性基板および縁貼りが設けられた放射線像変換パネルからなる放射線像変換器の上記問題点について検討した結果、放射線像変換パネルの支持体側表面(底面)にまず、剥離性フィルムを備えた粘着フィルムを貼り付け、次いでコの字型の樹脂材料塗布層により縁貼りを形成した後、粘着フィルム上の剥離性フィルムをその表面の縁貼り材料層と共に剥ぎ取り、次いで放射線像変換パネルを該粘着シートを介して平坦な状態で剛性基板に接着することにより、得られた放射線像変換器の蓄積性蛍光体層はその平面度が顕著に向上して、画像ムラのない放射線画像を与えることを見い出した。また、放射線像変換パネルと剛性基板との密着性が向上して、放射線像変換器の耐久性も増大することを見い出した。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の放射線像変換器の好ましい態様は以下のとおりである。
(1)剛性基板の蛍光体層側表面の平面度が50μm以下である。
(2)接着層が両面接着(あるいは粘着)シートの接着層(あるいは粘着層)からなる。
(3)剛性基板上に、接着層を介して順に支持体、光反射層、蛍光体層および保護層が設けられている。
(4)蛍光体層が蓄積性蛍光体を含有する層である。
【0014】
本発明の放射線像変換器の代表的な構成を図1に示す。
図1は、本発明の放射線像変換器の構成の例を概略的に示す断面図である。図1において、放射線像変換器は、剛性基板11の上に、順に接着層12、放射線像変換パネルの可撓性支持体13、光反射層14、蓄積性蛍光体層15、および保護層16が積層され、そしてその放射線像変換パネルの周囲側面および保護層表面周縁部に縁貼り17が形成された構成を有する。支持体13は、接着層12を介して剛性基板11の表面上に平坦にかつ密着して接着されている。よって、支持体13上に設けられた蓄積性蛍光体層15の表面は、端部の浮き上がりがなく、良好な平面性を示す。
【0015】
特に、剛性基板11はその蛍光体層側表面が、平面度50μm以下の良好な平面性を有することが好ましい。そして、剛性基板11上に設けられた蓄積性蛍光体層15の保護層側表面は高い平面度(すなわち、凹凸が少ない)を示すことが好ましい。放射線画像読み取り時の焦点深度は、より厳密に言えば、発光光が発せられる蛍光体層表面から集光レンズまでの距離が問題となるからである。ここで、平面度とは、実施例にて後述するように、周期が1mm以上の凹凸を有する表面に対して近似平面を求めたとき、その近似平面からの表面のズレ(偏差)の最大値をいう。なお、1mm周期未満の細かな凹凸は一般に表面粗さRaとして扱われるが、Ra≦10μmを満たしていればよい。
【0016】
ただし、本発明において、図1に示した構成は本発明の放射線像変換器の一例であって、支持体13から、光反射層14、蓄積性蛍光体層15、保護層16までの層構成は図1に限定されるものではない。また、蛍光体層も蓄積性蛍光体層一層に限定されるものではなく、放射線吸収用蛍光体を含有する層あるいはこれらの層の組合せであってもよい。
【0017】
なお、本明細書においては説明の都合上、支持体13から保護層16に至る積層体部分(この積層体の層構成が図1の構成に限定されないことは上述したとおりである)を、単に放射線像変換パネル18と称することもある。
【0018】
以下に、本発明の放射線像変換器の製造方法について、蛍光体層が蓄積性蛍光体を含有する層である場合を例にとって詳細に述べる。
【0019】
まず、支持体上に蓄積性蛍光体層を含む蛍光体シートを作製する。
支持体は通常、柔軟な樹脂材料からなる厚みが50μm乃至1mmの可撓性のシートあるいはフィルムである。支持体は透明であってもよく、あるいは支持体に、励起光もしくは発光光を反射させるための光反射性材料(例、アルミナ粒子、二酸化チタン粒子、硫酸バリウム粒子)を充填してもよく、あるいは空隙を設けてもよい。または、支持体に励起光もしくは発光光を吸収させるため光吸収性材料(例、カーボンブラック)を充填してもよい。支持体の形成に用いることのできる樹脂材料の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂などの各種樹脂材料を挙げることができる。さらに、放射線画像の鮮鋭度を高める目的で、支持体の蛍光体層が形成される側の表面(支持体表面に下塗層、光反射層あるいは光吸収層等の補助層が設けられる場合には、それら補助層の表面であってもよい)には微小な凹凸が形成されていてもよい。
【0020】
支持体上には、所望により、パネルとしての感度もしくは画質(鮮鋭度、粒状性)を向上させるために、アルミナ、二酸化チタン、硫酸バリウムなどの光反射性物質からなる光反射層、もしくはカーボンブラックなどの光吸収性物質からなる光吸収層などが設けられてもよい。またあるいは、その上に設けられる層との密着性を高めるために下塗層が設けられてもよい。
【0021】
この支持体上には、蓄積性蛍光体を含有する蛍光体層が設けられる。
蓄積性蛍光体としては、波長が400〜900nmの範囲の励起光の照射により、300〜500nmの波長範囲に輝尽発光を示す輝尽性蛍光体が好ましい。
そのような好ましい輝尽性蛍光体の例としては、ユーロピウム又はセリウムで付活したアルカリ土類金属ハロゲン化物系蛍光体(例、BaFBr:Eu、及びBaF(Br,I):Eu)、およびセリウム付活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体を挙げることができる。
【0022】
これらのうちでも、基本組成式(I):
MIIFX:zLn ‥‥(I)
で代表される希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体は特に好ましい。ただし、MIIはBa、Sr及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属を表し、LnはCe、Pr、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Nd、Er、Tm及びYbからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素を表す。Xは、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンを表す。zは、0<z≦0.2の範囲内の数値を表す。
【0023】
上記基本組成式(I)中のMIIとしては、Baが半分以上を占めることが好ましい。Lnとしては、特にEu又はCeであることが好ましい。また、基本組成式(I)では表記上F:X=1:1のように見えるが、これはBaFX型の結晶構造を持つことを示すものであり、最終的な組成物の化学量論的組成を示すものではない。一般に、BaFX結晶においてX−イオンの空格子点であるF+(X−)中心が多く生成された状態が、600〜700nmの光に対する輝尽効率を高める上で好ましい。このとき、FはXよりもやや過剰にあることが多い。
【0024】
なお、基本組成式(I)では省略されているが、必要に応じて下記のような添加物を基本組成式(I)に加えてもよい。
bA, wNI, xNII, yNIII
ただし、AはAl2O3、SiO2及びZrO2などの金属酸化物を表す。MIIFX粒子同士の焼結を防止する上では、一次粒子の平均粒径が0.1μm以下の超微粒子でMIIFXとの反応性が低いものを用いることが好ましい。NIは、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属の化合物を表し、NIIは、Mg及び/又はBeからなるアルカリ土類金属の化合物を表し、NIIIは、Al、Ga、In、Tl、Sc、Y、La、Gd及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属の化合物を表す。これらの金属化合物としては、ハロゲン化物を用いることが好ましいが、それらに限定されるものではない。
【0025】
また、b、w、x及びyはそれぞれ、MIIFXのモル数を1としたときの仕込み添加量であり、0≦b≦0.5、0≦w≦2、0≦x≦0.3、0≦y≦0.3の各範囲内の数値を表す。これらの数値は、焼成やその後の洗浄処理によって減量する添加物に関しては最終的な組成物に含まれる元素比を表しているわけではない。また、上記化合物には最終的な組成物において添加されたままの化合物として残留するものもあれば、MIIFXと反応する、あるいは取り込まれてしまうものもある。
【0026】
その他、基本組成式(I)には更に必要に応じて、Zn及びCd化合物;金属酸化物であるTiO2、BeO、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、Y2O3、La2O3、In2O3、GeO2、SnO2、Nb2O5、Ta2O5、ThO2;Zr及びSc化合物;B化合物;As及びSi化合物;テトラフルオロホウ酸化合物;ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロチタン酸、およびヘキサフルオロジルコニウム酸の1価もしくは2価の塩からなるヘキサフルオロ化合物;V、Cr、Mn、Fe、Co及びNiなどの遷移金属の化合物などを添加してもよい。
さらに、本発明においては上述した添加物を含む蛍光体に限らず、基本的に希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体とみなされる組成を有するものであれば如何なるものであってもよい。
【0027】
上記基本組成式(I)で表される希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体は、通常は、アスペクト比が1.0乃至5.0の範囲にある。
好ましくは、蓄積性蛍光体粒子は、アスペクト比が1.0乃至2.0(好ましくは、1.0乃至1.5)の範囲にあり、粒子サイズのメジアン径(Dm)が1μm乃至10μm(好ましくは、2μm乃至7μm)の範囲にあり、そして粒子サイズ分布の標準偏差をσとしたときのσ/Dmが50%以下(好ましくは、40%以下)のものである。また、粒子の形状としては、直方体型、正六面体型、正八面体型、14面体型、これらの中間多面体型および不定型粉砕粒子などがあるが、それらのうちでは14面体型が好ましい。
【0028】
ただし、本発明において蛍光体は蓄積性蛍光体に限定されるものではなく、X線などの放射線を吸収して紫外乃至可視領域に(瞬時)発光を示す蛍光体であってもよい。そのような蛍光体の例としては、LnTaO4:(Nb,Gd)系、Ln2SiO5:Ce系、LnOX:Tm系(Lnは希土類元素である)、CsX系(Xはハロゲンである)、Gd2O2S:Tb、Gd2O2S:Pr,Ce、ZnWO4、LuAlO3:Ce、Gd3Ga5O12:Cr,Ce、HfO2等を挙げることができる。
【0029】
上記粒子状の蓄積性蛍光体を結合剤と共に適当な有機溶剤に分散溶解して、塗布液を調製する。塗布液中での結合剤と蛍光体との比率は通常、1:1乃至1:100(重量比)の範囲にあり、好ましくは1:8乃至1:40(重量比)の範囲にある。蓄積性蛍光体粒子を分散支持する結合剤については様々な種類の樹脂材料が知られており、本発明に係る蛍光体層の形成においても、それらの公知の結合剤樹脂を中心とした任意の樹脂材料から適宜選択して用いることができる。
また、塗布液調製用の有機溶剤についても公知の有機溶剤の中から適宜選択して用いることができる。なお、塗布液には更に、塗布液中における蛍光体の分散性を向上させるための分散剤、形成後の蛍光体層中における結合剤と蛍光体との間の結合力を向上させるための可塑剤、蛍光体層の変色を防止するための黄変防止剤、硬化剤、架橋剤など各種の添加剤が混合されていてもよい。
【0030】
この塗布液を次に、支持体表面にドクターブレード、ロールコータ、ナイフコータなど通常の塗布手段を用いて、均一に塗布して塗膜を形成する。この塗膜を乾燥して、支持体上への蓄積性蛍光体層の形成を完了する。蓄積性蛍光体層の層厚は、目的とする放射線像変換パネルの特性、蛍光体の種類、結合剤と蛍光体との混合比などによっても異なるが、通常は20μm乃至1mmの範囲にあり、好ましくは50乃至500μmの範囲にある。
【0031】
蓄積性蛍光体層は、必ずしも一層である必要はなく、二層以上で構成されていてもよく、その場合に各層で蛍光体の種類や粒子径、結合剤と蛍光体との混合比を任意に変えることができる。蛍光体層はまた、蓄積性蛍光体とこれを分散状態で含有支持する結合剤とからなるのものばかりでなく、結合剤を含まないで蛍光体の凝集体のみから構成されたもの、蒸着膜など気相堆積法により形成されたもの、あるいは蛍光体の凝集体の間隙に高分子物質が含浸されたものなどであってもよい。
【0032】
蓄積性蛍光体層は支持体上に直接形成する必要はなく、別に用意した基板(仮支持体)上に蛍光体層を形成した後、蛍光体層を基板から引き剥がし、別に用意した支持体上に接着剤等を用いて接着する方法を利用してもよい。あるいは、蛍光体層が自己支持性である場合には、支持体が付設されていなくてもよい。
【0033】
蓄積性蛍光体層の表面には、放射線像変換パネルの取扱い上の便宜や、特性変化の回避のために、保護層を設ける。保護層は一般的には、励起光の入射や発光光の出射に殆ど影響を与えないように、透明であることが望ましく、また外部から与えられる物理的衝撃や化学的影響からパネルを充分に保護することができるように、化学的に安定でかつ高い物理的強度を持つことが望ましい。
【0034】
保護層としては、セルロース誘導体、ポリメチルメタクリレート、有機溶媒可溶性フッ素系樹脂などのような透明な有機高分子物質を適当な溶媒に溶解して調製した溶液を蛍光体層の上に塗布することで形成されたもの、あるいはポリエチレンテレフタレートなどの有機高分子フィルムや透明なガラス板などの保護層形成用シートを別に形成して蛍光体層の表面に適当な接着剤を用いて設けたもの、あるいは無機化合物を蒸着などによって蛍光体層上に成膜したものなどが用いられる。また、保護層中には酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、アルミナ等の光散乱性微粒子、パーフルオロオレフィン樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末等の滑り剤、およびポリイソシアネート等の架橋剤など各種の添加剤が分散含有されていてもよい。保護層の層厚は一般に、高分子物質からなる場合には約0.1〜20μmの範囲にあり、ガラス等の無機化合物からなる場合には100〜1000μmの範囲にある。
【0035】
保護層の表面にはさらに、保護層の耐汚染性を高めるためにフッ素樹脂塗布層を設けてもよい。フッ素樹脂塗布層は、フッ素樹脂を有機溶媒に溶解(または分散)させて調製したフッ素樹脂溶液を保護層の表面に塗布し、乾燥することにより形成することができる。フッ素樹脂は単独で使用してもよいが、通常はフッ素樹脂と膜形成性の高い樹脂との混合物として使用する。また、ポリシロキサン骨格を持つオリゴマーあるいはパーフルオロアルキル基を持つオリゴマーを併用することもできる。フッ素樹脂塗布層には、干渉むらを低減させて更に放射線画像の画質を向上させるために、微粒子フィラーを充填することもできる。フッ素樹脂塗布層の層厚は通常は0.5μm乃至20μmの範囲にある。フッ素樹脂塗布層の形成に際しては、架橋剤、硬膜剤、黄変防止剤などのような添加成分を用いることができる。特に架橋剤の添加は、フッ素樹脂塗布層の耐久性の向上に有利である。
このようにして、放射線像変換パネルが得られる。
【0036】
なお、放射線像変換パネルの表裏面の保護層と支持体とは、慣用的に用いられている区別に従って、上側に配置される材料を保護層と云い、下側に配置される材料を支持体と云っているが、この表現は便宜的なものであり、本発明の放射線像変換器における支持体を保護層として理解し、逆に保護層を支持体として理解してもよいことは勿論である。
【0037】
次に、本発明に従って、この放射線像変換パネルに縁貼りおよび剛性基板を設けて放射線像変換器を製造する方法を、図面を参照しながら説明する。図2〜図5はそれぞれ、本発明の製造方法に従う製造工程を示す概略断面図である。
【0038】
両面に剥離性フィルムを備えた両面粘着シート23の片側の剥離性フィルムのみを剥ぎ取って、図2に示すように、放射線像変換パネル28の片面(底面)に貼り付けて、放射線像変換パネル28と両面粘着シート23(22:粘着シート本体(接着層)、23a:剥離性フィルム)とからなる積層体を得る。
【0039】
この放射線像変換パネル28、接着層22および剥離性フィルム23aからなる積層体の周囲側面と両面の端部に、図3に示すように、樹脂塗布層からなる縁貼り27を形成する。
【0040】
縁貼り材料となる樹脂材料としては、蛍光体層の化学的な変質を防止するためには気密性に優れた透湿度の低いものが好ましく、例えばシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、シアノアクリレート系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、クロロプレン系ゴム、ニトリル系ゴムなどの樹脂を挙げることができる。
【0041】
縁貼りの形成は、上記縁貼り用樹脂材料を適当な有機溶剤に溶解して塗布液を調製した後、この塗布液を先端がコの字型のディスペンサ等を用いて、積層体の側面および両側表面の周縁部に均一に塗布し、乾燥することにより行う。この塗布液には更に、黄変防止剤、硬化剤、架橋剤、滑り剤など各種の添加剤が混合されていてもよい。縁貼りとなる塗布層の乾燥後の厚みは、一般には1乃至50μmの範囲にあり、好ましくは3乃至30μmの範囲にある。
【0042】
次に、縁貼りが設けられた放射線像変換パネルの接着層22の表面から剥離性フィルム23aを剥ぎ取る。この時、図4に示すように、剥離性フィルム23aの表面端部および側面に設けられた縁貼り材料塗布層も一緒に取り除かれ、接着層22の表面は平坦になる。
【0043】
この積層体を、図5に示すように、接着層22により剛性基板21表面に接着する。これにより、放射線像変換パネル28(すなわち、蓄積性蛍光体層)が接着層22を介して剛性基板21上に平坦に接着された本発明の放射線像変換器が得られる。
【0044】
本発明に用いられる剛性基板は、その剛性Yを下記式で表すとき、
関係式: Y = Et2/ρ(1−2δ)
[ただし、ρは剛性基板の密度を表し、δはポアソン比を表し、Eはヤング率を表し、tは厚みを表す]
Y≧64を満足することが望ましい。より好ましくは、Y≧76を満足することであり、そして特に好ましくは、Y≧760を満足することである。また、剛性基板のヤング率Eは、40GPa以上であることが好ましい。
【0045】
また、剛性基板の蛍光体層が付設される側の表面は、その平面度が50μm以下であることが好ましい。
【0046】
このような特性を有する剛性基板の材料としては、例えばマグネシウム、アルミニウム、チタン、鉄、ニッケル、およびこれら金属のうちの少なくとも何れかを母体とする合金、ガラス、石英、並びにこれらの複合材料を挙げることができる。剛性基板は、これら材料からなる単一の平面板であってもよいが、あるいはハニカム構造のシート、同種または異種材料のシートを積層した複合板、平面板でハニカム板を挟んだ積層板などであってもよい。
【0047】
あるいは、本発明の放射線像変換器は、下記の方法によっても製造することができる。まず、放射線像変換パネルの裏面に接着層を形成し、この接着層を介して放射線像変換パネルを剛性基板上に接着する。接着層の形成は、前述した両面粘着シートを貼り付けることにより行ってもよいし、あるいは接着剤を塗布することなどにより行ってもよい。次に、剛性基板上の放射線像変換パネルの側面および表面端部に沿って、前記縁貼り用塗布液を先端が直角状のディスペンサ等を用いて塗布し、乾燥して縁貼りを形成する。
【0048】
上述のようにして本発明のが得られるが、本発明の放射線像変換器の構成は、公知の各種のバリエーションを含むものであってもよい。例えば、放射線画像の鮮鋭度を向上させることを目的として、上記の少なくともいずれかの層を、励起光を吸収し発光光は吸収しないような着色剤によって着色してもよい。
【0049】
【実施例】
剛性基板の表面および放射線像変換パネルの蛍光体層表面の平面度は、下記のようにして測定した。まず、対象物表面の凹凸を、CNC画像測定機(SUPER 9VH606−Pro、ミツトヨ製)を用いて1mm間隔で測定して近似平面を決定し、次いで、この近似平面に対する偏差を対象物表面全体に渡って求めることにより、平面度を決定した。
【0050】
[実施例1]
(1)放射線像変換パネルの作製
【0051】
上記組成の材料をメチルエチルケトン(MEKとも略す)387gに加え、混合分散して粘度2〜3Pa・sの塗布液を調製した。この塗布液をポリエチレンテレフタレート(PET)シート(支持体、厚み:188μm、ヘイズ度:約27、ルミラーS−10、東レ(株)製)の表面に、ドクターブレードを用いて塗布し乾燥して、支持体上に光反射層(層厚:100μm)を形成した。
【0052】
【0053】
上記組成の材料をメチルエチルケトン47gに加え、プロペラミキサを用いて10000rpmで30分間混合分散して、粘度4Pa・sの塗布液(結合剤/蛍光体の重量比:1/20)を調製した。この塗布液をドクターブレードを用いて、シリコーン系離型剤が塗布されたPETシート(仮支持体、厚み:190μm)の表面に、460mmの幅で塗布し乾燥して、仮支持体上に蛍光体層(層厚:300μm)を形成した。
【0054】
この蛍光体層を仮支持体から引き剥がして、支持体上の光反射層表面に、塗布形成時の裏面(仮支持体側)が接するようにして重ね、これをカレンダー機を用いて総荷重2300kg、上側ロール温度45℃、下側ロール温度45℃、送り速度0.3m/分にて熱圧縮した。これにより、蛍光体層は光反射層に完全に融着した。熱圧縮後の蛍光体層の層厚300μm、蛍光体粒子の充填密度3.40g/cm3であった。
【0055】
【0056】
上記組成の材料をメチルエチルケトン38gに加え、混合分散して塗布液を調製した。この塗布液を蛍光体層の表面に、ドクターブレードを用いて塗布し乾燥して、保護層(層厚:2μm)を形成した。
このようにして得られた積層体を、440mm×440mmのサイズに裁断して、放射線像変換パネルを得た。
【0057】
(2)接着層の付設
放射線像変換パネルの裏面(支持体側表面)に、両面粘着シート(両面テープ8161、スコッチ(株)製)を、その一方のPET剥離性フィルムを剥がして貼り付けて、接着層(層厚:25μm)を設けた。接着層表面には、もう一方のPET剥離性フィルム(厚み:50μm)が残っている(図2参照)。
【0058】
【0059】
上記組成の縁貼り用塗布層材料をメチルエチルケトン15gに加え、混合溶解して塗布液を調製した。この塗布液をコの字型ディスペンサを用いて、接着層および剥離性フィルムを有する放射線像変換パネルの周囲側面および両表面周縁部に塗布し、室温で充分に乾燥して、縁貼り(硬化被膜、厚み:約25μm)を形成した(図3参照)。
【0060】
(4)剛性基板の付設
縁貼りが形成された放射線像変換パネルの裏面(底面)から剥離性フィルムを剥がした。このとき、放射線像変換パネル裏面周縁部に形成されていた縁貼りは剥離性フィルムと一緒に除去された(図4参照)。
次に、研磨したアルミニウムシート(剛性基板、材質:A7075、サイズ:460mm×460mm、平均厚み:10mm、平面度:20μm)の表面に、放射線像変換パネルを接着層が接するようにして貼り付けて、本発明の放射線像変換器を得た(図5及び図1参照)。
【0061】
得られた放射線像変換器の蛍光体層の保護層側表面の平面度は、31μmであった。また、放射線像変換器の裏面からこの蛍光体層表面までの高さを測定したところ、端部の浮き上がりは見られなかった。さらに、この放射線像変換器にX線を照射したのち結像光学系のラインセンサで画像の読み取りを行ったところ、画像ムラのない良好な放射線画像が得られた。
【0062】
[実施例2]
(1)放射線像変換パネルの作製
実施例1と同様にして、放射線像変換パネルを作製した。
(2)接着層の付設
実施例1と同様にして、放射線像変換パネルの裏面に接着層を設けた。
(3)剛性基板の付設
放射線像変換パネルを、その裏面から剥離性フィルムを剥がし、実施例1と同様の研磨したアルミニウムシートの表面に接着層が接するようにして貼り付けて、剛性基板上に接着層を介して放射線像変換パネルを設けた。
(4)縁貼りの形成
実施例1と同様の縁貼り用塗布液を、直角状のディスペンサを用いて、放射線像変換パネルおよび接着層部分の周囲側面および表面端部に塗布し、室温で充分に乾燥して縁貼り(厚み:約25μm)を形成し、本発明の放射線像変換器を製造した(図1参照)。
【0063】
得られた放射線像変換器の蛍光体層の保護層側表面の平面度は、31μmであった。また、放射線像変換器の裏面から蛍光体層表面までの高さを測定したところ、端部の浮き上がりは見られなかった。さらに、この放射線像変換器にX線を照射した後、結像光学系のラインセンサで画像の読み取りを行ったところ、画像ムラのない良好な放射線画像が得られた。
【0064】
[比較例1]
(1)放射線像変換パネルの作製
実施例1と同様にして、放射線像変換パネルを作製した。
(2)縁貼りの形成
実施例1と同様の縁貼り用塗布液を、コの字型のディスペンサを用いて、放射線像変換パネルの周囲側面および両表面周縁部に塗布し、室温で充分に乾燥して縁貼り(厚み:約25μm)を形成した。
(3)接着層の付設
実施例1と同様にして、縁貼りが形成された放射線像変換パネルの裏面に接着層を設けた。
(4)剛性基板の付設
縁貼りが形成された放射線像変換パネルを、その裏面から剥離性フィルムを剥がし、実施例1と同様の研磨したアルミニウムシートの表面に接着層が接するようにして貼り付けて、比較のための放射線像変換パネルを製造した。
【0065】
図6は、比較例1の放射線像変換器の構成を概略的に示す断面図である。図6において、放射線像変換器は、剛性基板31の上に、順に接着層32、支持体33、光反射層34、蓄積性蛍光体層35、および保護層36が積層され、そしてその周囲側面、保護層36の表面端部および支持体33の裏面周縁部に縁貼り37が設けられた構成を有する。縁貼り37が支持体33の裏面周縁部にまで及んでいるために、支持体33は、接着層32を介して剛性基板31上に凹凸を有して接着され、その結果、蓄積性蛍光体層35は、周縁部が盛り上がった状態となって平面度が低下している。
【0066】
上記で得られた放射線像変換器の裏面から蛍光体層表面までの高さを測定したところ、放射線像変換パネル(支持体)の裏面周縁部に縁貼りが存在するため、蛍光体層表面端部が約3μm、急峻な勾配で盛り上がっていた。さらに、この放射線像変換器にX線を照射したのち結像光学系のラインセンサで読み取りを行ったところ、放射線画像上に画像ムラが視認された。
【0067】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、放射線像変換パネルに縁貼りを設ける前に両面粘着シートを付設し、その後、両面粘着シートの剥離性フィルムを剥がす際に同時に裏面側の縁貼り塗布層も除去することにより、剛性基板上に平坦な状態で放射線像変換パネルを付設することができるので、平面度の顕著に向上した放射線像変換器を得ることができる。また、放射線像変換パネルと剛性基板の密着性を高めることができる。よって、本発明の放射線像変換器は、画像ムラの少ない、画質の向上した放射線画像を与えるとともに、耐久性においても優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の放射線像変換器の構成の例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の方法に係る放射線像変換器の製造工程を示す概略断面図である。
【図3】本発明の方法に係る放射線像変換器の製造工程を示す概略断面図である。
【図4】本発明の方法に係る放射線像変換器の製造工程を示す概略断面図である。
【図5】本発明の方法に係る放射線像変換器の製造工程を示す概略断面図である。
【図6】比較例1の放射線像変換器の構成の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
11、21、31 剛性基板
12、22、32 接着層
13、33 支持体
14、34 光反射層
15、35 蓄積性蛍光体層
16、36 保護層
17、27、37 縁貼り
18、28 放射線像変換パネル
23 両面粘着シート
Claims (3)
- 可撓性支持体シート上に蛍光体層と保護層とがこの順に形成されてなる放射線像変換パネルの周囲の側面と保護層表面周縁とが共に樹脂材料塗布層により縁貼りされ、一方該変換パネルの底面には縁貼り樹脂塗布層が形成されていない耐湿性放射線像変換パネルが、剛性基板の表面に接着されてなることを特徴とする放射線像変換器。
- 耐湿性放射線像変換パネルと剛性基板とが両面粘着フィルムを介して接着されている請求項1に記載の放射線像変換パネル。
- 可撓性支持体シート上に蛍光体層と保護層とがこの順に形成されてなる放射線像変換パネルの底面の少なくとも周縁領域に接着層と剥離フィルムとをこの順に積層する工程;得られた積層体の周囲の側面と保護層表面周縁そして剥離フィルム表面周縁とに樹脂材料を層状に塗布して縁貼りする工程;剥離フィルムをその剥離フィルム上の樹脂材料塗布層と共に接着層から引き剥がして底面に接着層を備えた耐湿性放射線像変換パネルを得る工程;そして該耐湿性放射線像変換パネルを接着層を介して剛性基板の表面に接着することからなる請求項1に記載の放射線像変換器の製造方法。
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