JP3910421B2 - 放射線像変換パネル長尺体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、蓄積性蛍光体を利用する放射線画像情報記録再生方法に用いられる放射線像変換パネルの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
X線などの放射線が照射されると、放射線エネルギーの一部を吸収蓄積し、そののち可視光線や赤外線などの電磁波(励起光)の照射を受けると、蓄積した放射線エネルギーに応じて発光を示す性質を有する蓄積性蛍光体(輝尽発光を示す輝尽性蛍光体等)を利用して、この蓄積性蛍光体を含有するシート状の放射線像変換パネルに、被検体を透過したあるいは被検体から発せられた放射線を照射して被検体の放射線画像情報を一旦蓄積記録した後、パネルにレーザ光などの励起光を走査して順次発光光として放出させ、そしてこの発光光を光電的に読み取って画像信号を得ることからなる、放射線画像情報記録再生方法が広く実用に共されている。読み取りを終えたパネルは、残存する放射線エネルギーの消去が行われた後、次の撮影のために備えられて繰り返し使用される。
【0003】
放射線画像情報記録再生方法に用いられる放射線像変換パネル(蓄積性蛍光体シートともいう)は、基本構造として、支持体とその上に設けられた蓄積性蛍光体層とからなる。ただし、蓄積性蛍光体層が自己支持性である場合には必ずしも支持体を必要としない。また、蓄積性蛍光体層の上面(支持体に面していない側の面)には通常、保護層が設けられていて、蛍光体層を化学的な変質あるいは物理的な衝撃から保護している。
【0004】
蛍光体層は通常、蓄積性蛍光体粒子とこれを分散状態で含有支持する結合剤とからなる。ただし、蛍光体層としては、蒸着法や焼結法によって形成される結合剤を含まないで蓄積性蛍光体の凝集体のみから構成されるものや、蓄積性蛍光体の凝集体の間隙に高分子物質が含浸されているものなども知られている。
【0005】
また、上記放射線画像情報記録再生方法の別法として本出願人による特願2000−400426号明細書には、従来の蓄積性蛍光体における放射線吸収機能とエネルギー蓄積機能とを分離して、少なくとも蓄積性蛍光体(エネルギー蓄積用蛍光体)を含有する放射線像変換パネルと、放射線を吸収して紫外乃至可視領域に発光を示す蛍光体(放射線吸収用蛍光体)を含有する蛍光スクリーンとの組合せを用いる放射線画像形成方法が提案されている。この方法は、被検体を透過などした放射線をまず、該スクリーンまたはパネルの放射線吸収用蛍光体により紫外乃至可視領域の光に変換した後、その光をパネルのエネルギー蓄積用蛍光体にて放射線画像情報として蓄積記録する。次いで、このパネルに励起光を走査して発光光を放出させ、この発光光を光電的に読み取って画像信号を得るものである。このような放射線像変換パネルおよび蛍光スクリーンも、本発明に包含される。
【0006】
放射線画像情報記録再生方法(および放射線画像形成方法)は上述したように数々の優れた利点を有する方法であるが、この方法に用いられる放射線像変換パネルにあっても、できる限り高感度であってかつ画質(鮮鋭度、粒状性など)の良好な画像を与えるものであることが望まれている。
【0007】
上記放射線像変換パネルの長尺体を連続的に製造する方法として、特許第2597516号公報に記載されているように、蛍光体と結合剤とからなる長尺状の蛍光体シートを張力を掛けながらロールより送り出し、この蛍光体シートと別のロールより送り出した長尺状の支持体とを重ね合わせ、これをカレンダロールを用いて連続的に加熱加圧処理することにより、蛍光体シートを支持体上に接合するとともに、蛍光体層となる蛍光体シートを圧縮することからなる方法が知られている。支持体上に蛍光体層を圧縮して付設することにより、蛍光体層における蛍光体の充填密度が上がるので、得られる放射線像変換パネルを用いて形成される放射線画像の画質を向上させることができる。
【0008】
このような連続的処理を実施する際に、生産性を高めるためには長尺体の長さを長くすることが望ましい。しかしながら、長尺体の長さを長くすると、支持体の送り出しロールと蛍光体層が設けられた支持体(積層体)の巻き取りロールとの張力の差によって引き起こされる支持体の伸縮による振動やカレンダロール上でのすべりによる振動が大きくなる。そして、これらの振動が、カレンダロールの回転速度のムラを招き、更には蛍光体層を不均一に圧縮することになって蛍光体の充填密度にムラを生じさせ、そのようにして製造された放射線像変換パネルを用いて形成される放射線画像上にアーティファクト(画像欠陥)を発生させることがあった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、上述した連続カレンダ処理上の問題点について検討した結果、特に送り出しロールから支持体を送り出す後半部分において、ロールに掛かる慣性モーメントが小さくなるために、支持体の伸縮による振動の振幅が増大することが分かった。そこで、支持体の送り出しロールにフライホイールを着けてロールの慣性モーメントを一定範囲内に制御することにより、支持体の振動を効果的に抑制して、カレンダ処理を安定して実施できることを見い出した。
【0010】
従って、本発明は、高画質の放射線画像を与える放射線像変換パネルの長尺体を安定して製造する方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、支持体上に蛍光体層を備えた放射線像変換パネル長尺体を製造する方法であって、固定軸にフライホイールを装着することにより慣性モーメントを0.5乃至10kg・m2の範囲内に制御した送り出しロールから、長尺状の支持体を、張力(テンション)の付与下に送り出し、一方、別の送り出しロールから蛍光体と結合剤とからなる長尺状の蛍光体シートを張力の付与下に送り出し、該支持体と該蛍光体シートとを重ね合わせ、カレンダロールにて加熱下に加圧することにより、支持体上に蛍光体シートを接着して蛍光体層を形成し、同時に蛍光体層を圧縮し、次いで該蛍光体層が付設された支持体を、張力の付与下に巻き取りロールで巻き取ることを特徴とする製造方法にある。
【0012】
なお、本発明において長尺状の支持体には、その片面もしくは両面に下塗層などの補助層が設けられているものも含まれる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法において、支持体送り出しロールの慣性モーメントを0.5乃至10kg・m2の範囲内に制御することが好ましい。支持体送り出しロールの固定軸にフライホイールを装着することにより、該送り出しロールの慣性モーメントを制御することが好ましい。
【0014】
支持体の送り出し時の張力と巻き取り時の張力との差は0乃至1000g/cmの範囲にあることが好ましい。支持体送り出しロールの直径は、100乃至2000mmの範囲にあることが好ましく、そして支持体巻き取りロールの直径は100乃至2000mmの範囲にあることが好ましい。
【0015】
長尺状の支持体の弾性率は1000乃至10000MPaの範囲にあることが好ましく、そして長尺状の蛍光体シートの弾性率は50乃至500MPaの範囲にあることが好ましい。
【0016】
以下に、本発明の放射線像変換パネルの製造方法について、蛍光体が蓄積性蛍光体である場合を例にとって詳細に述べる。
【0017】
長尺状の支持体は一般には、柔軟な樹脂材料、金属、セラミックなどからなる厚さが50μm乃至1mmのシートあるいはフィルムである。好ましくは樹脂材料である。支持体は透明であってもよく、あるいは支持体に、励起光もしくは発光光を反射させるための光反射性物質(例、アルミナ粒子、二酸化チタン粒子、硫酸バリウム粒子)を含有させてもよく、或は空隙を設けてもよい。または、支持体に励起光もしくは発光光を吸収させるため光吸収性物質(例、カーボンブラック)を含有させてもよい。支持体の形成に用いることのできる樹脂材料の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂などの各種樹脂材料を挙げることができる。
【0018】
公知の放射線像変換パネルにおいて、支持体と蛍光体層との接着性を高めるために下塗層を設けることが知られている。また、パネルとしての感度もしくは画質(鮮鋭度、粒状性)を向上させるために、二酸化チタンなどの光反射性物質からなる光反射層、もしくはカーボンブラックなどの光吸収性物質からなる光吸収層などを設けることが知られている。本発明で用いられる支持体についても、これらの各種の層を設けることができ、それらの構成は所望の放射線像変換パネルの目的、用途などに応じて任意に選択することができる。さらに、画像の鮮鋭度を向上させる目的で、支持体の蛍光体層側の表面(支持体の蛍光体層側の表面に下塗層(接着性付与層)、光反射層あるいは光吸収層などの補助層が設けられている場合には、それらの補助層の表面であってもよい)には微小な凹凸が形成されていてもよい。
【0019】
このようにして得られた長尺状の支持体(支持体に補助層が設けられている場合には補助層を含む)の弾性率は、後述するカレンダ処理工程において支持体の振動を抑制するためには、1000乃至10000MPaの範囲にあることが好ましい。
【0020】
別に、長尺状の蛍光体シートを用意する。
蓄積性蛍光体としては、波長が400〜900nmの範囲の励起光の照射により、300〜500nmの波長範囲に輝尽発光を示す輝尽性蛍光体が好ましい。そのような輝尽性蛍光体の例は、特公平7−84588号、特開平2−193100号および特開平4−310900号の各公報に詳しく記載されている。好ましい輝尽性蛍光体としては、ユーロピウム又はセリウムで付活したアルカリ土類金属ハロゲン化物系蛍光体(例、BaFBr:Eu、およびBaF(Br,I):Eu)、およびセリウム付活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体を挙げることができる。
【0021】
これらのうちでも、基本組成式(I):
MIIFX:zLn ‥‥(I)
で代表される希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体は特に好ましい。ただし、MIIはBa、Sr及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属を表し、LnはCe、Pr、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Nd、Er、Tm及びYbからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素を表す。Xは、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンを表す。zは、0<z≦0.2の範囲内の数値を表す。
【0022】
上記基本組成式(I)中のMIIとしては、Baが半分以上を占めることが好ましい。Lnとしては、特にEu又はCeであることが好ましい。また、基本組成式(I)では表記上F:X=1:1のように見えるが、これはBaFX型の結晶構造を持つことを示すものであり、最終的な組成物の化学量論的組成を示すものではない。一般に、BaFX結晶においてX-イオンの空格子点であるF+(X-)中心が多く生成された状態が、600〜700nmの光に対する輝尽効率を高める上で好ましい。このとき、FはXよりもやや過剰にあることが多い。
【0023】
なお、基本組成式(I)では省略されているが、必要に応じて下記のような添加物を基本組成式(I)に加えてもよい。
bA, wNI, xNII, yNIII
ただし、AはAl2O3、SiO2及びZrO2などの金属酸化物を表す。MIIFX粒子同士の焼結を防止する上では、一次粒子の平均粒径が0.1μm以下の超微粒子でMIIFXとの反応性が低いものを用いることが好ましい。NIは、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属の化合物を表し、NIIは、Mg及び/又はBeからなるアルカリ土類金属の化合物を表し、NIIIは、Al、Ga、In、Tl、Sc、Y、La、Gd及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属の化合物を表す。これらの金属化合物としては、特開昭59−75200号公報に記載のようなハロゲン化物を用いることが好ましいが、それらに限定されるものではない。
【0024】
また、b、w、x及びyはそれぞれ、MIIFXのモル数を1としたときの仕込み添加量であり、0≦b≦0.5、0≦w≦2、0≦x≦0.3、0≦y≦0.3の各範囲内の数値を表す。これらの数値は、焼成やその後の洗浄処理によって減量する添加物に関しては最終的な組成物に含まれる元素比を表しているわけではない。また、上記化合物には最終的な組成物において添加されたままの化合物として残留するものもあれば、MIIFXと反応する、あるいは取り込まれてしまうものもある。
【0025】
その他、上記基本組成式(I)には更に必要に応じて、特開昭55−12145号公報に記載のZn及びCd化合物;特開昭55−160078号公報に記載の金属酸化物であるTiO2、BeO、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、Y2O3、La2O3、In2O3、GeO2、SnO2、Nb2O5、Ta2O5、ThO2;特開昭56−116777号公報に記載のZr及びSc化合物;特開昭57−23673号公報に記載のB化合物;特開昭57−23675号公報に記載のAs及びSi化合物;特開昭59−27980号公報に記載のテトラフルオロホウ酸化合物;特開昭59−47289号公報に記載のヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロチタン酸、及びヘキサフルオロジルコニウム酸の1価もしくは2価の塩からなるヘキサフルオロ化合物;特開昭59−56480号公報に記載のV、Cr、Mn、Fe、Co及びNiなどの遷移金属の化合物などを添加してもよい。さらに、本発明においては上述した添加物を含む蛍光体に限らず、基本的に希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体とみなされる組成を有するものであれば如何なるものであってもよい。
【0026】
上記の基本組成式(I)で表わされる希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体は、通常は、アスペクト比が1.0乃至5.0の範囲にある。本発明に係る放射線像変換パネルに用いる蓄積性蛍光体粒子は一般に、アスペクト比が1.0乃至2.0(好ましくは、1.0乃至1.5)の範囲にあり、粒子サイズのメジアン径(Dm)が1μm乃至10μm(好ましくは、2μm乃至7μm)の範囲にあり、そして粒子サイズ分布の標準偏差をσとしたときのσ/Dmが50%以下(好ましくは、40%以下)のものである。また、粒子の形状としては、直方体型、正六面体型、正八面体型、14面体型、これらの中間多面体型および不定型粉砕粒子などがあるが、それらのうちでは14面体型が好ましい。
【0027】
ただし、本発明において蛍光体は蓄積性蛍光体に限定されるものではなく、X線などの放射線を吸収して紫外乃至可視領域に(瞬時)発光を示す蛍光体であってもよい。そのような蛍光体の例としては、LnTaO4:(Nb,Gd)系、Ln2SiO5:Ce系、LnOX:Tm系(Lnは希土類元素である)、CsX系(Xはハロゲンである)、Gd2O2S:Tb、Gd2O2S:Pr,Ce、ZnWO4、LuAlO3:Ce、Gd3Ga5O12:Cr,Ce、HfO2等を挙げることができる。
【0028】
粒子状の蓄積性蛍光体は、結合剤と共に適当な有機溶剤に分散溶解され、塗布液となる。塗布液中での結合剤と蛍光体との比率は通常、1:1乃至1:100(重量比)の範囲の値となるようにする。この比率は、特に1:8乃至1:40(重量比)の範囲にあることが好ましい。蓄積性蛍光体粒子を分散支持する結合剤については様々な種類の樹脂材料が知られており、本発明に係る蛍光体層の形成においても、それらの公知の結合剤樹脂を中心とした任意の樹脂材料から適宜選択して用いることができる。なお、塗布液にはさらに、塗布液中における蛍光体の分散性を向上させるための分散剤、形成後の蛍光体層中における結合剤と蛍光体との間の結合力を向上させるための可塑剤、蛍光体層の変色を防止するための黄変防止剤、硬化剤、架橋剤など各種の添加剤が混合されていてもよい。
【0029】
このようにして調製した塗布液を、剥離可能な仮支持体の表面に適当な塗布手段を用いて均一に塗布して塗膜を形成する。仮支持体としては、前記支持体の中から任意に選択して用いることができ、これに離型剤などを付与することにより剥離可能とすることができる。また、塗布手段としては、ドクターブレード、ロールコータ、ナイフコータなどを用いることができる。次いで、塗膜を乾燥して蛍光体シートの作製を完了する。蛍光体シートの厚さは、目的とする放射線像変換パネルの特性、蛍光体の種類、結合剤と蛍光体との混合比などによっても異なるが、通常は20μm乃至1mmの範囲にあり、好ましくは50乃至500μmの範囲にある。
【0030】
得られた長尺状の蛍光体シートの蛍光体層の弾性率は、下記カレンダ処理工程において支持体および積層体の振動を抑制するためには、50乃至500MPaの範囲にあることが好ましい。
【0031】
上記の長尺状の支持体と蛍光体シートとを、図1および図2に示すようなカレンダ処理装置により加熱加圧処理して、支持体上に蛍光体層を付設する。
【0032】
図1は、本発明の方法に用いられるカレンダ処理装置の概略断面図であり、図2は、該装置に備えられた支持体送り出しロールの概略側面図である。
図1において、カレンダ処理装置は、支持体送り出しロール11、支持体用張力ピックアップロール12a、12b、蛍光体シート送り出しロール13、中間ロール14a、14b、仮支持体巻き取りロール15、蛍光体シート用テンションピックアップロール16a、16b、16c、一次カレンダロール17、二次カレンダロール18、積層体用テンションピックアップロール19a、19b、および積層体巻き取りロール20からなる。
【0033】
本発明において支持体送り出しロール11には、図2に示すように、ロール本体31の軸心(固定軸)32にフライホイール(はずみ車)33が装着されている。ロール本体31の慣性モーメントは、支持体の材料や厚さ、1ロールの長さなどによっても異なるが、このフライホイール33の装着により、0.5乃至10kg・m2の範囲内に制御される。
【0034】
支持体送り出しロール11の慣性モーメントを上記範囲内に制御することによって、支持体の伸縮やカレンダロール上でのすべりによる振動を効果的に抑えることができる。特に、ロールの巻き径が小さくなる支持体の送り出し後半においても、一定以上の慣性モーメントが保持されるので、振動の振幅が増大するのを防ぐことができる。
【0035】
カレンダロールは、一次ロール17と二次ロール18とから構成され、それぞれ上下一対のロール17aと17b、および18aと18bからなる。この一対のロールはいずれも、金属ロールおよび/またはゴムロールからなる。一次ロール17は従動ロールであり、二次ロール下18bは駆動ロールである。
【0036】
支持体送り出しロール11に巻き付けられた長尺状の支持体21は、ロール11より送り出され、支持体用テンションピックアップロール12a、12bを通って、一次ロール17に向かう。このとき、支持体21には張力が付与されている。この張力は、送り出しロール11と二次ロール18との間の回転速度や回転タイミングなどを好適に変えることにより、支持体21に付加される。テンションピックアップロール12a、12bは、荷重(テンション)検知手段であり、検知された張力に基づいて、必要に応じて送り出しロール11または二次ロール18の回転条件などが調節される。
【0037】
一方、蛍光体シート送り出しロール13に巻き付けられた長尺状の蛍光体シート22は、ロール13より送り出され、中間ロール14a、14bを通った後、蛍光体シート22の剥離可能な仮支持体23のみが仮支持体巻き取りロール15により巻き取られる。仮支持体が剥ぎ取られた蛍光体シート22’(蛍光体層のみからなる)は、蛍光体シート用テンションピックアップロール16a、16b、16cを通って、一次ロール17に向かう。このとき、蛍光体シート22(および22’)には張力が掛かっている。この張力は、送り出しロール13と二次ロール18との間の回転速度や回転タイミングなどを好適に変えることにより、蛍光体シート22に付加される。また、テンションピックアップロール16a〜16cで検知された張力に基づいて、必要に応じて送り出しロール13または二次ロール18の回転条件などが調節される。
【0038】
支持体21と蛍光体シート22’は、一次ロール17の直前で重ね合わされた後、一次ロール17、次いで二次ロール18を通過しながら加熱、加圧処理される。一般に、加熱処理は30℃乃至200℃の温度範囲で行われ、加圧処理は5乃至100MPaの圧力範囲で行われる。この加熱加圧処理により、支持体21上には蛍光体シート(すなわち、蛍光体層)22’が接着されて一体化される。同時に、蛍光体層は圧縮されて、蛍光体層中の空隙が減少し、蛍光体の充填密度が高くなる。
【0039】
蛍光体層が設けられた支持体(積層体)23は、積層体用テンションピックアップロール19a、19bを通った後、積層体巻き取りロール20により巻き取られる。このとき、積層体23には張力が掛かっている。この張力は、二次ロール18と巻き取りロール20との間の回転速度や回転タイミングなどを好適に変えることにより、積層体23に付加される。また、テンションピックアップロール19a、19bで検知された張力に基づいて、必要に応じて二次ロール18または巻き取りロール20の回転条件などが調節される。
【0040】
上記処理工程における皺、歪み、あるいは不均一な接着や圧縮を防ぐために、長尺状の支持体21に付加される張力は、通常20乃至2000g/cmである。また、長尺状の蛍光体シート22に付加される張力は、一般には10乃至700g/cmの範囲にある。支持体の平面性を良くするために、通常支持体には蛍光体シートよりも高い張力が付加される。そして、積層体23に付加される張力は、一般には20乃至1500g/cmの範囲にある。支持体の伸縮等による振動を抑制するためには、支持体21の送り出し時の張力と積層体23の巻き取り時の張力との差は、20乃至1500g/cmの範囲にあることが好ましい。なお、これらの張力は、支持体および蛍光体シートの材料や厚さなどによって変動しうる。
【0041】
また、支持体(および積層体)の振動を抑制するためには、一般に支持体送り出しロール11の直径は100乃至2000mmの範囲にあり、積層体巻き取りロール20の直径は100乃至2000mmの範囲にある。
【0042】
本発明の方法に用いられる装置は図1および図2に示した装置に限定されるものではない。また、送り出しロール11の巻き径の変動(減少)に対応させて、カレンダ処理工程の途中でフライホイール33の付加重量を変更する機能を装置に持たせることも可能である。さらに、蛍光体シート送り出しロール13および/または積層体巻き取りロール20にもフライホイールを装着して、それらの慣性モーメントを一定範囲内に制御してもよい。
【0043】
上記カレンダ処理により得られた蛍光体層の表面には、放射線像変換パネルの取扱い上の便宜や特性変化の回避のために、保護層を設けてもよい。保護層は、励起光の入射や発光光の出射に殆ど影響を与えないように、透明であることが望ましく、また外部から与えられる物理的衝撃や化学的影響から放射線像変換パネルを充分に保護することができるように、化学的に安定でかつ高い物理的強度を持つことが望ましい。
【0044】
保護層としては、セルロース誘導体、ポリメチルメタクリレート、有機溶媒可溶性フッ素系樹脂などのような透明な有機高分子物質を適当な溶媒に溶解して調製した溶液を蛍光体層の上に塗布することで形成されたもの、あるいはポリエチレンテレフタレートなどの有機高分子フィルムなどの保護層形成用シートを別に形成して蛍光体層の表面に適当な接着剤を用いて設けたもの、または無機化合物を蒸着などによって蛍光体層上に成膜したものなどが用いられる。また、保護層中には酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、アルミナ等の光散乱性微粒子、パーフルオロオレフィン樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末等の滑り剤、およびポリイソシアネート等の架橋剤など各種の添加剤が分散含有されていてもよい。保護層の層厚は一般に、高分子物質からなる場合には約0.1乃至20μmの範囲にある。
【0045】
保護層の表面にはさらに、保護層の耐汚染性を高めるためにフッ素樹脂塗布層を設けてもよい。フッ素樹脂塗布層は、フッ素樹脂を有機溶媒に溶解(または分散)させて調製したフッ素樹脂溶液を保護層の表面に塗布し、乾燥することにより形成することができる。フッ素樹脂は単独で使用してもよいが、通常はフッ素樹脂と膜形成性の高い樹脂との混合物として使用する。また、ポリシロキサン骨格を持つオリゴマーあるいはパーフルオロアルキル基を持つオリゴマーを併用することもできる。フッ素樹脂塗布層には、干渉むらを低減させて更に放射線画像の画質を向上させるために、微粒子フィラーを充填することもできる。フッ素樹脂塗布層の層厚は通常は0.5μm乃至20μmの範囲にある。フッ素樹脂塗布層の形成に際しては、架橋剤、硬膜剤、黄変防止剤などのような添加成分を用いることができる。特に架橋剤の添加は、フッ素樹脂塗布層の耐久性の向上に有利である。
【0046】
上述のようにして本発明に係る放射線像変換パネルが得られるが、本発明のパネルの構成は、公知の各種のバリエーションを含むものであってもよい。たとえば、得られる画像の鮮鋭度を向上させることを目的として、上記の少なくともいずれかの層を、励起光を吸収し発光光は吸収しないような着色剤によって着色してもよい。
【0047】
【実施例】
[実施例1]
【0048】
上記組成の材料をメチルエチルケトンに加え、プロペラミキサを用いて混合分散して粘度が0.2〜0.3Psの下塗層用塗布液を調製した。この塗布液を、片面にカーボンブラック、シリカおよび上記樹脂からなる遮光層(層厚:約1μm)が設けられた支持体(硫酸バリウム練り込みポリエチレンテレフタレートシート、厚さ:250μm、メリネックス#335、ICI社製)の反対側表面に塗布し、乾燥して下塗層(層厚:20μm)を形成した。これをロールに巻き付けて、片面に遮光層、もう片面に下塗層を有する長尺状の支持体を得た。
【0049】
【0050】
上記組成の材料をメチルエチルケトン690gに加え、分散機(10L:140mm径の十字羽根)を用いて2500rpmで1時間混合分散して、粘度30Psの塗布液を調製した(結合剤:蛍光体(重量比)=1:20)。この塗布液の半分をギーサー送液で、仮支持体(シリコーン系離型剤が塗布されたポリエチレンテレフタレートシート、厚さ:190μm)の表面に、400mmの幅で均一に塗布し、乾燥した後、ロールに巻き付けて長尺状の蛍光体シート(厚さ:300μm)を得た。
【0051】
(3)加熱加圧処理
上記の長尺状の支持体と蛍光体シートとを、図1および図2に示したようなカレンダ処理装置に装填し、下記処理条件にて加熱加圧処理を行って、支持体上に蓄積性蛍光体層を設けるとともに蛍光体層を圧縮した。
【0052】
【0053】
(4)保護層の付設
厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、不飽和ポリエステル樹脂溶液(バイロン30SS、東洋紡績(株)製)を塗布し、乾燥して接着層(接着剤塗布重量:2g/m2)を設けた。このフィルムをラミネートロールを用いて蓄積性蛍光体層上に接着層を介して接着した後、フィルム表面にエンボスパターンを付けて、保護層(表面粗さRa:0.2μm)を設けた。
このようにして本発明の方法に従って、遮光層、支持体、下塗層、蓄積性蛍光体層および保護層から構成された放射線像変換パネルを製造した。
【0054】
[実施例2]
実施例1で、支持体送り出しロールの慣性モーメントを3.0kg・m2に変更したこと以外は実施例1と同様にして、本発明に係る放射線像変換パネルを製造した。
【0055】
[実施例3]
実施例1で、支持体送り出しロールの慣性モーメントを10kg・m2に変更したこと以外は実施例1と同様にして、本発明に係る放射線像変換パネルを製造した。
【0056】
[比較例1]
実施例1において、支持体送り出しロールにフライホイールを装着しないでその慣性モーメントを0.2kg・m2に変更したこと以外は実施例1と同様にして、比較のための放射線像変換パネルを製造した。
【0057】
[放射線像変換パネルの性能評価]
得られた各放射線像変換パネルの画像ムラについて、以下のようにして評価を行った。また、パネル製造時に、カレンダ処理工程における支持体の送り速度ムラをオンラインで測定した。
【0058】
放射線像変換パネルの表面にタングステン管球、管電圧80kVpのX線(約10mR)を照射した後、波長660nmの半導体レーザ光をパネル表面上の励起エネルギーが8J/m2となるような励起光量で照射し、パネルの表裏両面から放出された輝尽発光光を受光器(分光感度S−5の光電子増倍管)で受光し電気信号に変換して、放射線画像を得た。得られた放射線画像について画像ムラの有無を目視により判定した。
得られた結果をまとめて表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1の結果から明らかなように、、本発明の方法に従って製造された放射線像変換パネル(実施例1〜3)は、比較のための放射線像変換パネル(比較例1)に比べて、支持体の振動が減少しており、その結果、画像ムラの無い良好な放射線画像が得られた。一方、比較のための放射線像変換パネルは、支持体の振動が強く、得られた画像には画像ムラが発生していた。
【0061】
【発明の効果】
本発明の製造方法では、支持体の送り出しロールにフライホイールを装着することによってロールの慣性モーメントを一定範囲内に制御することにより、支持体長尺体の長さが長くても支持体そして積層体の振動を効果的に抑制することができ、ロールの回転速度ムラの発生やそれによる蛍光体層の不均一な圧縮を防ぐことができる。すなわち、支持体長尺体が長くてもカレンダ処理を安定して実施することができる。また、カレンダロールの適用可能な圧力範囲を広げることができるので、目的に応じた自在な圧力設定が可能となる。さらに、蛍光体の充填密度にムラが生じるのを防ぐことができるので、本発明の製法を利用して製造された放射線像変換パネルは、画像ムラなど画像欠陥の無い放射線画像を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法に用いられるカレンダ処理装置の概略断面図である。
【図2】図1の装置に備えられた支持体送り出しロールの概略側面図である。
【符号の説明】
11 支持体送り出しロール
13 蛍光体シート送り出しロール
15 仮支持体巻き取りロール
17 一次カレンダロール
18 二次カレンダロール
20 積層体巻き取りロール
31 ロール本体
32 ロールの軸心
33 フライホイール
Claims (6)
- 支持体上に蛍光体層を備えた放射線像変換パネル長尺体を製造する方法であって、固定軸にフライホイールを装着することにより慣性モーメントを0.5乃至10kg・m2の範囲内に制御した送り出しロールから、長尺状の支持体を張力の付与下に送り出し、一方、別の送り出しロールから蛍光体と結合剤とからなる長尺状の蛍光体シートを張力の付与下に送り出し、該支持体と該蛍光体シートとを重ね合わせ、カレンダロールにて加熱下に加圧することにより、支持体上に蛍光体シートを接着して蛍光体層を形成し、同時に蛍光体層を圧縮し、次いで該蛍光体層が付設された支持体を張力の付与下に巻き取りロールで巻き取ることを特徴とする方法。
- 支持体の送り出し時の張力と巻き取り時の張力との差が1000g/cm以下である請求項1に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
- 支持体送り出しロールの直径が100乃至2000mmの範囲にある請求項1または2に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
- 支持体巻き取りロールの直径が100乃至2000mmの範囲にある請求項1乃至3のうちのいずれかの項に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
- 長尺状の支持体の弾性率が1000乃至10000MPaの範囲にある請求項1乃至4のうちのいずれかの項に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
- 長尺状の蛍光体シートの弾性率が50乃至500MPaの範囲にある請求項1乃至5のうちのいずれかの項に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
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