JP4054643B2 - 放射線像変換パネルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、蓄積性蛍光体を利用する放射線画像情報記録再生方法に用いられる放射線像変換パネルの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
X線などの放射線が照射されると、その放射線のエネルギーの一部を吸収蓄積し、そののち可視光線や赤外線などの電磁波(励起光)の照射もしくは熱などの付与を受けると、蓄積した放射線エネルギーに応じて発光を示す性質を有する蓄積性蛍光体(輝尽発光を示す輝尽性蛍光体等)を利用して、この蓄積性蛍光体を含有するシート状の放射線像変換パネルに、被検体を透過したあるいは被検体から発せられた放射線を照射して被検体の放射線画像情報を一旦蓄積記録した後、パネルにレーザ光などの励起光を走査して順次発光光として放出させ、そしてこの発光光を光電的に読み取って画像信号を得ることからなる、放射線画像情報記録再生方法が広く実用に共されている。読み取りを終えたパネルは、残存する放射線エネルギーの消去が行われた後、次の撮影のために備えられて繰り返し使用される。
【0003】
放射線画像情報記録再生方法に用いられる放射線像変換パネル(蓄積性蛍光体シートともいう)は、基本構造として、支持体とその上に設けられた蓄積性蛍光体層とからなる。ただし、蓄積性蛍光体層が自己支持性である場合には必ずしも支持体を必要としない。また、蓄積性蛍光体層の上面(支持体に面していない側の面)には通常、保護層が設けられていて、蛍光体層を化学的な変質あるいは物理的な衝撃から保護している。
【0004】
蛍光体層は通常、蓄積性蛍光体粒子とこれを分散状態で含有支持する結合剤とからなる。ただし、蛍光体層としては、蒸着法や焼結法によって形成される結合剤を含まないで蓄積性蛍光体の凝集体のみから構成されるものや、蓄積性蛍光体の凝集体の間隙に高分子物質が含浸されているものなども知られている。
【0005】
放射線画像情報記録再生方法(および放射線画像形成方法)は上述したように数々の優れた利点を有する方法であるが、この方法に用いられる放射線像変換パネルにあっても、できる限り高感度であってかつ画質(鮮鋭度、粒状性など)の良好な画像を与えるものであることが望まれている。また、この方法においてパネルは繰り返し使用されるので、物理的な衝撃などに強く、耐久性の高いものであることが望まれている。
【0006】
特許文献1には、輝尽性蛍光体を含んだ蛍光体層の片面に、光反射性物質を含有し、該輝尽性蛍光体を励起するための励起波長における散乱長が5μm以下である光反射層が設けられた放射線像変換パネルが開示されている。
【0007】
特許文献2には、支持体上に順に光反射層、接着層及び輝尽性蛍光体層が設けられた放射線像変換パネルが開示されている。また、その製造方法として、光反射性物質を分散してなる結合剤溶液、接着層形成用塗布液、および輝尽性蛍光体を分散してなる結合剤溶液を支持体表面に重層塗布して、これら三層を同時に形成することにより、実質的に各層間の界面を形成することなく各層を形成する方法が開示されている。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−124898号公報
【特許文献2】
特開平2−280098号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高画質であって、支持体と光反射層との密着性が高く耐久性に優れた放射線像変換パネルの製造方法を提供することにある。
特に、本発明は、耐久性に優れ、かつ画質の更に向上した放射線画像を与える放射線像変換パネルの製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、支持体、硬化した接着層、光反射層、および蓄積性蛍光体を含有する蛍光体層をこの順に有する放射線像変換パネルを製造する方法であって、支持体上に硬化性樹脂を含有する塗布液を塗布し、乾燥して硬化接着層を形成した後、該接着層上に光反射性物質と結合剤とを含有する塗布液を塗布して、接着層が1乃至50容量%の範囲で溶解させたのち乾燥して光反射層を形成する工程を含むことを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法にある。
【0011】
本発明の放射線像変換パネルの製造方法において、硬化性樹脂を含有する塗布液が更に硬化剤を含有していることが望ましい。
【0012】
本発明者は、支持体と蓄積性蛍光体層との間に光反射層を有する放射線像変換パネルの物理的衝撃や曲げなどに対する耐久性について検討した結果、光反射層を硬化した接着層を介して支持体上に接合することにより、支持体との密着性が顕著に向上して耐久性が増大することを見い出した。また、樹脂を硬化剤等で硬化させて接着層を形成することによって、その上に蛍光体層形成用塗布液を塗布したときに接着層(硬化した樹脂)の溶解を一定範囲に抑えて、樹脂が光反射層中に溶けて混入するのを有効に防ぐことができる。光反射層中に樹脂が混入すると、その部分で励起光が拡散しがちとなり、鮮鋭度の低下や不均一な画質をもたらすことになるからである。従って、高画質を維持しながら、耐久性の増大したパネルが得られることを見い出し、本発明に至ったものである。さらに、短散乱長の蛍光体層、および/またはヘイズ度の高い保護層を設けることによって、より一層画質の向上したパネルを得ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法によって得られる放射線像変換パネルにおいて、蓄積性蛍光体を励起するための励起光および蓄積性蛍光体からの発光光に対する蛍光体層の散乱長がいずれも5乃至20μmの範囲にあることが望ましい。
励起光または発光光に対する散乱長とは、励起光または発光光が一回散乱するまでに直進する平均距離を意味し、散乱長が短いほど光散乱性が高い。この散乱長は、下記の方法によって測定した透過率の測定値から、クベルカ・ムンクの理論に基づく計算方法により算出される値である。
【0014】
まず、測定対象の放射線像変換パネルの蛍光体層および光反射層のそれぞれに関して、同一の組成を持ち互いに厚さが相違する三枚以上のフィルム試料を作製し、各々のフィルム試料の厚さ(μm)および透過率(%)を測定する。この透過率の測定は、通常の分光光度計により測定することができる。測定波長は、蛍光体層に含まれる蓄積性蛍光体の励起光の波長および発光光の波長とする必要がある。
【0015】
次に、得られたフィルムの厚さ(μm)と透過率(%)の測定値を用いて、光散乱長をクベルカの理論に基づいて算出する。フィルムの厚さをdμm、フィルムの散乱長を1/αμm、フィルムの吸収長を1/βμmとする。深さZにおける光強度分布I(Z)を考える。このI(Z)を、フィルムの表から裏に向かう成分i(Z)と裏から表に向かう成分j(Z)とに分けて考える。すなわち、I(Z)=i(Z)+j(Z)である。任意の深さZにおける微小厚さdzの膜での散乱吸収による光強度の増減は、クベルカ・ムンクの理論より下記の連立微分方程式(1)、(2)を解けばよい。
【0016】
【数1】
di/dz=−(β+α)i+αj …(1)
dj/dz=(β+α)j−αi …(2)
【0017】
γ2=β(β+2α)、ξ=(α+β−γ)/α、η=(α+β+γ)/αとし、KおよびLを積分定数とすると、上記連立微分方程式のiおよびjに関する一般解はそれぞれ、次のようになる。
【0018】
【数2】
i(Z)=Ke- γ Z+Leγ Z
j(Z)=Kξe- γ Z+Lηeγ Z
【0019】
厚さdのフィルムの透過率Tは、
T=i(d)/i(0)
で与えられ、これにフィルム単独で透過率を測定する場合に、戻り光がない(j(d)=0)と仮定すると、透過率Tは厚さdの関数として下記式(3)で表すことができる。
【0020】
【数3】
T(d)=(η−ξ)/(ηeγ Z−ξe- γ Z) …(3)
測定した透過率Tとフィルムの厚さdのデータを式(3)に入れて最小二乗法などにより最適化することにより、散乱長1/αおよび吸収長1/βを求めることができる。
【0021】
本発明の製造方法により得られる放射線像変換パネルの好ましい態様は以下のとおりである。
(1)接着層が硬化剤により硬化している。
(2)硬化剤がイソシアネートである。
(3)接着層の層厚が1乃至50μmの範囲にある。
(4)蓄積性蛍光体を励起するための励起光および蓄積性蛍光体からの発光光に対する蛍光体層の散乱長がいずれも5乃至20μmの範囲にある。
(5)蛍光体層が、蓄積性蛍光体の粒子を分散状態で含有支持する結合剤からなり、該結合剤と該蓄積性蛍光体粒子との重量比が1:10乃至1:50の範囲にある。
(6)蓄積性蛍光体の平均粒子径が2乃至10μmの範囲にある。
(7)蛍光体層における蓄積性蛍光体の充填密度が60容量%以上である。
(8)蛍光体層の上に保護層が設けられていて、該保護層のヘイズ度が5乃至80%の範囲にある。
(9)保護層がフィラーを分散含有する高分子物質からなり、該フィラーの粒子径が0.1乃至10μmの範囲にあり、そして該フィラーが該高分子物質に対して5乃至50重量%の範囲で含有されている。
【0022】
本発明の製造方法において、接着層上に光反射性物質と結合剤を含有する塗布液を塗布したときに、該接着層は1乃至50容量%の範囲で溶解することが好ましい。また、硬化性樹脂を含有する塗布液は更に硬化剤を含有していることが好ましい。
【0023】
本発明の製造方法により得られる放射線像変換パネルの代表的な構成を図1に示す。
図1は、本発明の製造方法により得られる放射線像変換パネルの構成の代表例を概略的に示す断面図である。図1において、放射線像変換パネルは順に、支持体11、硬化した接着層12、光反射層13、蓄積性蛍光体層14、および保護層15から構成される。光反射層13は、光反射性物質を分散状態で含有支持する結合剤からなり、蓄積性蛍光体を励起するための励起光に対する散乱長が5μm以下である。
【0024】
以下に、本発明の放射線像変換パネルの製造方法について詳細に述べる。
支持体は通常、柔軟な樹脂材料からなる厚みが50μm乃至1mmのシートあるいはフィルムである。支持体は透明であってもよく、あるいは支持体に、励起光もしくは発光光を反射させるための光反射性材料(例、アルミナ粒子、二酸化チタン粒子、硫酸バリウム粒子)を充填してもよく、あるいは空隙を設けてもよい。或は、支持体に励起光もしくは発光光を吸収させるため光吸収性材料(例、カーボンブラック)を充填してもよい。支持体の形成に用いることのできる樹脂材料の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂などの各種樹脂材料を挙げることができる。必要に応じて、支持体は金属シート、セラミックシート、ガラスシートなどであってもよい。さらに、放射線画像の鮮鋭度を高める目的で、支持体の蛍光体層が形成される側の表面(支持体表面に接着層、光反射層あるいは光吸収層等の補助層が設けられる場合には、それら補助層の表面であってもよい)には微小な凹凸が形成されていてもよい。
【0025】
本発明の製造方法により得られる放射線像変換パネルにおいて支持体上には、支持体と光反射層との密着性を高めるために、硬化した接着層が設けられる。接着層に用いられる硬化性樹脂の例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニリデン・塩化ビニルコポリマーを挙げることができる。これらの樹脂は単独で用いてもよいし、あるいは組み合わせて用いてもよい。
【0026】
これらの硬化性樹脂は、イソシアネートやメラミン樹脂等の硬化剤によって更に硬化させることが特に好ましい。硬化剤は、イソシアネートであることが好ましい。樹脂に対する硬化剤の比率は、一般には1乃至50重量%の範囲にあり、好ましくは5乃至30重量%の範囲にある。
【0027】
接着層の形成は、上記硬化性樹脂と所望により硬化剤とを適当な有機溶剤に溶解または分散して塗布液を調製した後、支持体の表面に均一に塗布して乾燥、硬化させることにより行われる。有機溶剤としては、後述する蛍光体層形成用の塗布液に使用できる溶剤の中から任意に選択して用いることができる。塗布液には更に、導電剤などを添加してもよい。塗布操作は、通常の塗布手段、例えばドクターブレード、ロールコータ、ナイフコータなどを用いる方法により行うことができる。接着層の層厚は、一般には1乃至50μmの範囲にあり、好ましくは3乃至30μmの範囲にある。
【0028】
このようにして形成された接着層はその上に光反射層を塗布形成する際に、光反射層形成用の塗布液中の溶剤によって接着層の表面側の一部(一般には1乃至50容量%)が一旦溶解した後、光反射層の塗膜と一緒に乾燥し、これにより、支持体と光反射層とが良好に接合される。従って、光反射層中の光反射性物質の割合が多くても支持体との密着性が高く、耐久性に優れ、かつ高画質とすることができる。特に、樹脂を硬化剤で硬化させて接着層を形成することにより、その上に光反射層を塗布形成する時に接着層の樹脂が溶解して光反射層中に混入するのを有効に防ぐことができる。接着層の樹脂が溶け過ぎて光反射層中に混入すると、結果として、光反射層は結合剤の割合が多くなって所定の短散乱長を保持できなくなり、その部分で励起光の拡散が増大していわゆるぼけが生じてしまい、鮮鋭度の低下した画像や画質の不均一な画像をもたらすことになる。従って、接着層を適度に、特に硬化剤を用いて硬化させることによって、高画質を維持しながら、支持体との高い密着性を達成することができる。
【0029】
接着層上には、光反射層が設けられる。本発明において光反射層は、励起光に対する散乱長が5μm以下である。好ましくは、励起光に対する散乱長が4μm以下である。また、光反射層は、微粒子状の光反射性物質を分散状態で含有支持する結合剤からなる。
【0030】
光反射性物質の例としては、Al2O3、ZrO2、MgO、BaSO4、SiO2、ZnS、ZnO、CaCO3、Sb2O3、Nb2O5、2PbCO3・Pb(OH)2、PbF2、BiF3、Y2O3、YOCl、MIIFX(MIIはBa、Sr及びCaのうちの少なくとも一種であり、XはCl及びBrのうちの少なくとも一種である)、リトポン(BaSO4+ZnS)、ケイ酸マグネシウム、塩基性ケイ硫酸鉛、塩基性リン酸鉛、ケイ酸アルミニウムなどの白色顔料;および中空構造のポリマー粒子を挙げることができる。中空ポリマー粒子は例えば、スチレン系ポリマーまたはスチレン・アクリル系コポリマーからなり、その外径が0.2乃至1μmの範囲、小孔径(内径)が0.05乃至0.7μmの範囲にある微粒子である。これらの物質は単独で用いてもよいし、あるいは組み合わせて用いてもよい。これらのうちでも高い屈折率を有し好ましい物質は、Al2O3、ZrO2、PbF2、BiF3、Y2O3、YOClであり、高い屈折率によって光反射層の散乱長を容易に5μm以下にすることができる。
【0031】
このような短散乱長の光反射層は、光反射性物質の粒子径を励起光の波長にできるだけ近づけること、あるいはその形状を球形からできるだけずらして変形させることなどにより達成することができる。よって、光反射性物質の平均粒子径は励起光の波長の1/4乃至2倍の範囲にあることが好ましい。通常使用される励起光の波長は500〜800nmの範囲にあるので、光反射性物質の平均粒子径は0.125乃至1.6μmの範囲にあることが好ましい。また、光反射性物質のBET比表面積(単位質量当たりの表面積)は、一般には1.5m2/g以上であり、好ましくは2乃至10m2/gの範囲であり、より好ましくは2.5乃至8m2/gの範囲にある。
【0032】
さらに、光反射性物質の嵩密度は、1mg/cm3以下であることが好ましく、より好ましいのは0.6mg/cm3以下である。ここで、嵩密度(最密充填密度)とは、光反射性物質の粉体の質量を、空隙を包含する該粉体を振動によって最密に充填したときの嵩体積で割った値である。
【0033】
このような物性を有する微粒子状の光反射性物質を用いて光反射層を形成することにより、光反射層中に空隙をより多く形成することができ、光反射性物質粒子同士が密着することがなく、高い屈折率を実現して、短散乱長とすることができる。
【0034】
光反射層の形成は、微粒子状の光反射性物質を結合剤と共に有機溶剤に分散溶解して、塗布液を調製した後、この塗布液を接着層の表面に均一に塗布し、乾燥することにより行う。塗布液中での結合剤と光反射性物質との比率は、一般に1:1乃至1:50(重量比)の範囲にあり、好ましくは1:2乃至1:20(重量比)の範囲にある。結合剤および有機溶剤としては、後述する蛍光体層形成用の塗布液に使用できる結合剤および溶剤の中から任意に選択して用いることができる。塗布操作は、前記の塗布手段を用いて行うことができる。塗布液を塗布した際に、塗布液中の溶剤によって接着層の樹脂が1乃至50容量%の範囲で溶解することが好ましい。光反射層の層厚は、一般には5乃至100μmの範囲にある。
【0035】
光反射層上には、蓄積性蛍光体を含有する蛍光体層が設けられる。本発明において蓄積性蛍光体層は、励起光および発光光に対する散乱長が5乃至20μmの範囲にあることが好ましい。
【0036】
蓄積性蛍光体としては、波長が400〜900nmの範囲の励起光の照射により、300〜500nmの波長範囲に輝尽発光を示す輝尽性蛍光体が好ましい。そのような好ましい輝尽性蛍光体の例としては、ユーロピウム又はセリウムで付活したアルカリ土類金属ハロゲン化物系蛍光体(例、BaFBr:Eu、およびBaF(Br,I):Eu)、およびセリウム付活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体を挙げることができる。
【0037】
これらのうちでも、基本組成式(I):
MIIFX:zLn ‥‥(I)
で代表される希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体は特に好ましい。ただし、MIIはBa、Sr及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属を表し、LnはCe、Pr、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Nd、Er、Tm及びYbからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素を表す。Xは、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンを表す。zは、0<z≦0.2の範囲内の数値を表す。
【0038】
上記基本組成式(I)中のMIIとしては、Baが半分以上を占めることが好ましい。Lnとしては、特にEu又はCeであることが好ましい。また、基本組成式(I)では表記上F:X=1:1のように見えるが、これはBaFX型の結晶構造を持つことを示すものであり、最終的な組成物の化学量論的組成を示すものではない。一般に、BaFX結晶においてX-イオンの空格子点であるF+(X-)中心が多く生成された状態が、600〜700nmの光に対する輝尽効率を高める上で好ましい。このとき、FはXよりもやや過剰にあることが多い。
【0039】
なお、基本組成式(I)では省略されているが、必要に応じて下記のような添加物を基本組成式(I)に加えてもよい。
bA, wNI, xNII, yNIII
ただし、AはAl2O3、SiO2及びZrO2などの金属酸化物を表す。MIIFX粒子同士の焼結を防止する上では、一次粒子の平均粒径が0.1μm以下の超微粒子でMIIFXとの反応性が低いものを用いることが好ましい。NIは、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属の化合物を表し、NIIは、Mg及び/又はBeからなるアルカリ土類金属の化合物を表し、NIIIは、Al、Ga、In、Tl、Sc、Y、La、Gd及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属の化合物を表す。これらの金属化合物としては、特開昭59−75200号公報に記載のようなハロゲン化物を用いることが好ましいが、それらに限定されるものではない。
【0040】
また、b、w、x及びyはそれぞれ、MIIFXのモル数を1としたときの仕込み添加量であり、0≦b≦0.5、0≦w≦2、0≦x≦0.3、0≦y≦0.3の各範囲内の数値を表す。これらの数値は、焼成やその後の洗浄処理によって減量する添加物に関しては最終的な組成物に含まれる元素比を表しているわけではない。また、上記化合物には最終的な組成物において添加されたままの化合物として残留するものもあれば、MIIFXと反応する、あるいは取り込まれてしまうものもある。
【0041】
その他、上記基本組成式(I)には更に必要に応じて、特開昭55−12145号公報に記載のZn及びCd化合物;特開昭55−160078号公報に記載の金属酸化物であるTiO2、BeO、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、Y2O3、La2O3、In2O3、GeO2、SnO2、Nb2O5、Ta2O5、ThO2;特開昭56−116777号公報に記載のZr及びSc化合物;特開昭57−23673号公報に記載のB化合物;特開昭57−23675号公報に記載のAs及びSi化合物;特開昭59−27980号公報に記載のテトラフルオロホウ酸化合物;特開昭59−47289号公報に記載のヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロチタン酸、及びヘキサフルオロジルコニウム酸の1価もしくは2価の塩からなるヘキサフルオロ化合物;特開昭59−56480号公報に記載のV、Cr、Mn、Fe、Co及びNiなどの遷移金属の化合物などを添加してもよい。さらに、本発明においては上述した添加物を含む蛍光体に限らず、基本的に希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体とみなされる組成を有するものであれば如何なるものであってもよい。
【0042】
上記基本組成式(I)で表される希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体は、通常は、アスペクト比が1.0乃至5.0の範囲にある。好ましくは、蓄積性蛍光体粒子は、アスペクト比が1.0乃至2.0(好ましくは、1.0乃至1.5)の範囲にあり、粒子サイズのメジアン径(Dm)が2μm乃至10μm(好ましくは、2μm乃至7μm)の範囲にあり、そして粒子サイズ分布の標準偏差をσとしたときのσ/Dmが50%以下(好ましくは、40%以下)のものである。また、粒子の形状としては、直方体型、正六面体型、正八面体型、14面体型、これらの中間多面体型および不定型粉砕粒子などがあるが、それらのうちでは14面体型が好ましい。
【0043】
ただし、本発明において蓄積性蛍光体は、上記基本組成式(I)で表される輝尽性蛍光体に限定されるものではない。その場合に、得られる蛍光体層を上記範囲の短散乱長とするためには、蓄積性蛍光体粒子はその粒子径が2乃至10μmの範囲にあることが好ましい。
【0044】
蓄積性蛍光体層の形成は、まず上記粒子状の蓄積性蛍光体を結合剤と共に適当な有機溶剤に分散溶解して、塗布液を調製する。塗布液中での結合剤と蛍光体との比率は一般には、1:1乃至1:100(重量比)の範囲にある。ただし、蛍光体層を上記範囲の短散乱長とするためには、1:10乃至1:50(重量比)の範囲にあることが好ましい。
【0045】
蓄積性蛍光体粒子を分散支持する結合剤の例としては、ゼラチン等の蛋白質、デキストラン等のポリサッカライド、またはアラビアゴムのような天然高分子物質;および、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ビニリデン・塩化ビニルコポリマー、ポリアルキル(メタ)アクリレート、塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルアルコール、線状ポリエステル、熱可塑性エラストマーなどのような合成高分子物質を挙げることができる。なお、これらの結合剤は架橋剤によって架橋されたものであってもよい。
【0046】
塗布液調製用の有機溶剤の例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール等の低級アルコール;メチレンクロライド、エチレンクロライドなどの塩素原子含有炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル;ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル;そして、それらの混合物を挙げることができる。
【0047】
塗布液にはさらに、塗布液中における蛍光体の分散性を向上させるための分散剤、形成後の蛍光体層中における結合剤と蛍光体との間の結合力を向上させるための可塑剤、蛍光体層の変色を防止するための黄変防止剤、硬化剤、架橋剤など各種の添加剤が混合されていてもよい。
【0048】
この塗布液を次に、光反射層の表面に前記の塗布手段を用いて均一に塗布して塗膜を形成する。この塗膜を乾燥して、光反射層上への蓄積性蛍光体層の形成を完了する。蓄積性蛍光体層の層厚は、目的とする放射線像変換パネルの特性、蛍光体の種類、結合剤と蛍光体との混合比などによっても異なるが、通常は20μm乃至1mmの範囲にあり、好ましくは50乃至500μmの範囲にある。
【0049】
蓄積性蛍光体層を短散乱長とするためには、このようにして形成された蛍光体層に更にカレンダー処理などの圧縮処理を施すことにより、蛍光体層中の蓄積性蛍光体粒子の充填密度を60容量%以上にすることが好ましい。
【0050】
蓄積性蛍光体層は、必ずしも一層である必要はなく、二層以上で構成されていてもよく、その場合に各層で蛍光体の種類や粒子径、結合剤と蛍光体との混合比を任意に変えることができる。すなわち、用途に応じて蛍光体層の発光特性を変化させたり、各蛍光体層の散乱長を好適な値に設定することができる。また、必ずしも蓄積性蛍光体層を光反射層上に直接形成する必要はなく、別に用意した基板(仮支持体)上に蛍光体層を形成した後、蛍光体層を基板から引き剥がし、光反射層上に接着剤などを用いて接着してもよい。
【0051】
さらに、蓄積性蛍光体層は、蓄積性蛍光体とこれを分散状態で含有支持する結合剤とからなるのものばかりでなく、結合剤を含まないで蛍光体の凝集体のみから構成されたもの、蒸着膜など気相堆積法により形成されたもの、あるいは蛍光体の凝集体の間隙に高分子物質が含浸されたものなどであってもよい。
【0052】
蓄積性蛍光体層の表面には、放射線像変換パネルの取扱い上の便宜や特性変化を防ぐために、保護層を設けることが望ましい。保護層は一般的には、励起光の入射や発光光の出射に殆ど影響を与えないように、透明であることが望ましく、また外部から与えられる物理的衝撃や化学的影響からパネルを充分に保護することができるように、化学的に安定でかつ高い物理的強度を持つことが望ましい。ただし、本発明において保護層は、画質向上の点から、ヘイズ度が5乃至80%の範囲にあることが好ましく、特には30乃至60%の範囲にあることが好ましい。ヘイズ度をこのように高めて散乱性とすることにより、保護層によるぼけを低減することができる。
【0053】
保護層としては、セルロース誘導体、ポリメチルメタクリレート、有機溶媒可溶性フッ素系樹脂などのような透明な有機高分子物質を適当な溶媒に溶解して調製した溶液を蛍光体層の上に塗布することで形成されたもの、あるいはポリエチレンテレフタレートなどの有機高分子フィルムや透明なガラス板などの保護層形成用シートを別に形成して蛍光体層の表面に適当な接着剤を用いて設けたもの、あるいは無機化合物を蒸着などによって蛍光体層上に成膜したものなどが用いられる。
【0054】
保護層を上記の範囲のヘイズ度とするためには、保護層中にフィラーを分散含有させることが好ましい。フィラー材料としては、アルミナ、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム等の無機材料、高架橋アクリル樹脂、高架橋ポリスチレン樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂等の有機材料を挙げることができる。フィラーの粒子径は、一般には0.1乃至10μmの範囲にあり、好ましくは0.3乃至3μmの範囲にある。また、フィラーは一般に、有機高分子物質に対して5乃至50重量%の範囲で添加される。
【0055】
保護層には更に、パーフルオロオレフィン樹脂粉末等の滑り剤、およびポリイソシアネート等の架橋剤など各種の添加剤が分散含有されていてもよい。保護層の層厚は一般に、高分子物質からなる場合には約0.1乃至20μmの範囲にあり、ガラス等の無機化合物からなる場合には100乃至1000μmの範囲にある。
【0056】
保護層の表面にはさらに、保護層の耐汚染性を高めるためにフッ素樹脂塗布層を設けてもよい。フッ素樹脂塗布層は、フッ素樹脂を有機溶媒に溶解(または分散)させて調製したフッ素樹脂溶液を保護層の表面に塗布し、乾燥することにより形成することができる。フッ素樹脂は単独で使用してもよいが、通常はフッ素樹脂と膜形成性の高い樹脂との混合物として使用する。また、ポリシロキサン骨格を持つオリゴマーあるいはパーフルオロアルキル基を持つオリゴマーを併用することもできる。フッ素樹脂塗布層には、干渉むらを低減させて更に放射線画像の画質を向上させるために、微粒子フィラーを充填することもできる。フッ素樹脂塗布層の層厚は通常は0.5μm乃至20μmの範囲にある。フッ素樹脂塗布層の形成に際しては、架橋剤、硬膜剤、黄変防止剤などのような添加成分を用いることができる。特に架橋剤の添加は、フッ素樹脂塗布層の耐久性の向上に有利である。
【0057】
上述のようにして本発明の放射線像変換パネルが得られるが、本発明のパネルの構成は、公知の各種のバリエーションを含むものであってもよい。例えば、放射線画像の鮮鋭度を向上させることを目的として、上記の少なくともいずれかの層を、励起光を吸収し発光光は吸収しないような着色剤によって着色してもよい。あるいは、更にX線などの放射線を吸収して紫外乃至可視領域に瞬時発光を示す蛍光体(放射線吸収用蛍光体)を含有する層を設けてもよい。そのような蛍光体の例としては、LnTaO4:(Nb,Gd)系、Ln2SiO5:Ce系、LnOX:Tm系(Lnは希土類元素である)、CsX系(Xはハロゲンである)、Gd2O2S:Tb、Gd2O2S:Pr,Ce、ZnWO4、LuAlO3:Ce、Gd3Ga5O12:Cr,Ce、HfO2等を挙げることができる。
【0058】
【実施例】
【0059】
上記組成成分をメチルエチルケトン(MEK)86gに加え、プロペラミキサを用いて10000rpmで30分間混合分散して、粘度3Pa・sの塗布液(結合剤/蛍光体の重量比:1/30)を調製した。この塗布液をドクターブレードを用いて、シリコーン系離型剤が塗布されたポリエチレンテレフタレートシート(仮支持体、厚み:190μm)の表面に、300mmの幅で塗布し乾燥した後、仮支持体から引き剥がして、蛍光体シート(厚み:400μm)を得た。
【0060】
【0061】
上記組成の材料をメチルエチルケトン5gに加え、混合分散して粘度約0.02〜0.05Pa・sの塗布液を調製した。この塗布液をポリエチレンテレフタレートシート(支持体、厚み:188μm、ヘイズ度:約27、ルミラーS-10、東レ(株)製)の表面に、ドクターブレードを用いて塗布し乾燥、硬化させて、接着層(層厚:5μm)を形成した。
【0062】
次に、下記組成の材料をメチルエチルケトン387gに加え、混合分散して粘度2〜3Pa・sの塗布液を調製した。この塗布液を接着層の表面にドクターブレードを用いて塗布し乾燥して、光反射層(層厚:約100μm)を形成した。この時の接着層の溶解は50容量%であった。
【0063】
【0064】
(3)蛍光体層の形成
支持体上の光反射層表面に、上記蛍光体シートを塗布形成時の裏面(仮支持体側)が接するようにして重ね、これをカレンダー機を用いて総荷重2300kg、上側ロール温度45℃、下側ロール温度45℃、送り速度0.3m/分にて熱圧縮した。これにより、蛍光体層は光反射層に完全に融着した。熱圧縮後の蛍光体層の層厚300μm、蛍光体粒子の充填密度3.40g/cm3(65容量%)であった。
【0065】
【0066】
上記組成の材料をメチルエチルケトン90gに加え、混合分散して塗布液を調製した。この塗布液を蛍光体層の表面に、ドクターブレードを用いて塗布し乾燥して、保護層(層厚:3μm)を形成した。このようにして得られた積層体を200mm×250mmのサイズに裁断して、図1に示したような本発明の放射線像変換パネルを得た。
【0067】
[実施例2]
実施例1において、接着層用塗布液材料として下記組成の材料をメチルエチルケトン30gに加えて塗布液を調製し、層厚10μmの接着層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、本発明の放射線像変換パネルを製造した。乾燥後の接着層の溶解は10容量%であった。
【0068】
【0069】
[実施例3(本発明の実施例ではない)]
実施例1において、接着層用塗布液材料として下記組成の材料をメチルエチルケトン30gに加えて塗布液を調製し、層厚10μmの接着層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、放射線像変換パネルを製造した。乾燥後の接着層の溶解は90容量%であった。
【0070】
【0071】
[比較例1]
実施例1において、支持体上に接着層を形成することなく直接光反射層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、比較のための放射線像変換パネルを製造した。
【0072】
[放射線像変換パネルの性能評価1]
得られた各放射線像変換パネルについて、以下のようにして散乱長の測定、密着性の評価、および放射線画像の画質の評価を行った。
【0073】
(1)光反射層の散乱長の測定
光反射層について実施例と同一の組成で互いに厚さが相違する三枚のフィルム試料を作製し、各々のフィルム試料の厚さ(μm)、および全透過率(%)を自記分光光度計(U−3210型、(株)日立製作所製、150φ積分球を付設)を用いて測定した。測定値をクベルカ・ムンクの理論式により導き出された前記式(3)に導入して、各散乱長を求めた。測定波長は、蛍光体層の輝尽性蛍光体の励起スペクトルの主ピーク波長(代表値:660nm)および輝尽発光スペクトルの最大ピーク波長(代表値:400nm)であった。
【0074】
(2)密着性の評価
幅15mm、長さ約300mmに切り出した放射線像変換パネル試料を、図2に示すように、金属円柱に支持体側が接触するようにして沿わせて上下方向にしごいた。金属円柱の径を順次変えて同様の操作を行い、変換パネル試料の支持体と光反射層との間で剥離が生じる最大径を求めた。最大径が小さいほど、密着性が良好であることを示す。
【0075】
図2は、パネル試料21を径の異なる金属円柱22、23に沿わせて矢印方向にしごく操作を概略的に示す斜視図である。
【0076】
(3)画質の評価
放射線像変換パネルに、タングステン管球、管電圧80kVpのX線(10mR相当)を照射した後、半導体レーザ光(波長:660nm)を用いて励起エネルギー15J/m2で励起して、変換パネル表面から放出された輝尽発光光を受光器(分光感度S−5の光電子増倍管)で受光した。受光した光を電気信号に変換し、これを画像再生装置によって画像に再生し、これを医療用レーザプリンタによりフィルム上に出力して、画質の均一性を目視により調べた。
得られた結果をまとめて表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1の結果から明らかなように、支持体と光反射層の間に硬化した接着層を設けた本発明の製造方法により得られる放射線像変換パネル(実施例1〜2)はいずれも、接着層を設けなかった放射線像変換パネル(比較例1)に比べて、放射線画像の画質が均一であって、高画質を維持しながら高い密着性を示した。
【0079】
[比較例2]
実施例1において、支持体上に接着層を形成することなく直接、光反射層を形成したこと、および蛍光体シート用塗布液材料として下記組成の材料をメチルエチルケトン370gに加えて粘度約3Pa・sの塗布液(結合剤/蛍光体の重量比:1/8.4)を調製し、蛍光体シートを作製したこと、およびポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:10μm)をポリエステル系接着剤を用いて(厚み:1.5μm)蛍光体層上に接着して、保護層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、公知の放射線像変換パネルを製造した。なお、熱圧縮後の蛍光体層の層厚300μm、蛍光体粒子の充填密度3.27g/cm3(63容量%)であった。
【0080】
【0081】
[放射線像変換パネルの性能評価2]
得られた各放射線像変換パネルについて、以下のようにして光散乱長の測定、ヘイズ度の測定、および放射線画像の画質の評価を行った。
【0082】
(1)蛍光体層および光反射層の散乱長の測定
蛍光体層と光反射層のそれぞれについて、同様にして各光散乱長を求めた。
【0083】
(2)保護層のヘイズ度の測定
実施例と同一の組成で同一の層厚の保護層を、透明なポリエチレンテレフタレートシート(厚み:25μm)上に塗布乾燥して形成して、保護層試料を作製した。この保護層試料のヘイズ度を、ヘイズメータ(NDH−300A、日本電色(株)製)を用いて測定した。さらに、ポリエチレンテレフタレートシートのみのヘイズ度を測定し、保護層自体のヘイズ度を算出した。
【0084】
(3)画質の評価
放射線像変換パネルの表面に、MTFチャートを介してタングステン管球、管電圧80kVpのX線(10mR相当)を照射した後、半導体レーザ光(波長:660nm)を用いて励起エネルギー15J/m2で励起して、パネル表面から放出された輝尽発光光を受光器(分光感度S−5の光電子増倍管)で受光した。受光した光を電気信号に変換し、これを画像再生装置によって画像に再生して表示装置上に画像を得、その鮮鋭度を測定した。また、パネル表面にX線(1mR相当)を一様に照射して、粒状値のウィナースペクトルを求めた。そして、これらの測定値から、空間周波数1サイクル/mmにおける検出量子効率(DQE)を求めた。なお、粒状値はX線の線量に依存するので、照射した線量値をモニターして線量1mRに補正した。
得られた結果をまとめて表2に示す。
【0085】
【表2】
【0086】
表2の結果から、短散乱長の光反射層に加えて蛍光体層の散乱長を5〜20μmに抑え、保護層のヘイズ度を5〜80%に上げた本発明の製造方法によって得られる放射線像変換パネル(実施例1)は、公知の放射線像変換パネル(比較例2)に比べて、DQEが高く、鮮鋭度、粒状性等の画質が向上していることが明らかである。
【0087】
【発明の効果】
本発明の製造方法によって得られる放射線像変換パネルは、短散乱長の光反射層を硬化した接着層を介して支持体上に接合することによって、支持体との密着性が顕著に向上して、取扱い時や装置内での搬送時における物理的衝撃や曲げなどに対する耐久性が優れている。また、本発明の製造方法は、樹脂を硬化剤等で硬化させて接着層を形成することによって、その上に蛍光体層形成用塗布液を塗布したときに、接着層の溶解を一定に抑えて樹脂が光反射層中に混入するのを防ぐことができるので、放射線画像の画質を高く維持しながら、パネルの密着性を増大させることができる。さらに、本発明の製造方法によって得られる短散乱長の蛍光体層とヘイズ度の高い保護層を備えた放射線像変換パネルは、優れた耐久性とともに、画質のより一層向上した放射線画像を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の製造方法によって得られる放射線像変換パネルの構成の例を示す概略断面図である。
【図2】密着性評価のための操作を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
11 支持体
12 接着層
13 光反射層
14 蓄積性蛍光体層
15 保護層
21 放射線像変換パネル
22、23 金属円柱
Claims (6)
- 支持体、硬化した接着層、光反射層、および蓄積性蛍光体を含有する蛍光体層をこの順に有する放射線像変換パネルを製造する方法であって、支持体上に硬化性樹脂を含有する塗布液を塗布し、乾燥して硬化接着層を形成した後、該接着層上に光反射性物質と結合剤とを含有する塗布液を塗布して、接着層が1乃至50容量%の範囲で溶解させたのち乾燥して光反射層を形成する工程を含むことを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
- 硬化性樹脂を含有する塗布液が更に硬化剤を含有している請求項1に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
- 蓄積性蛍光体を励起するための励起光に対する該光反射層の散乱長が5μm以下である請求項1に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
- 硬化剤がイソシアネートである請求項2に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
- 硬化した接着層の層厚が1乃至50μmの範囲にある請求項1乃至4のいずれかの項に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
- 蛍光体層の上に保護層が設けられていて、該保護層のヘイズ度が5乃至80%の範囲にある請求項1乃至5のいずれかの項に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
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