JP2004225271A - 鉄骨耐火被覆構造および鉄骨耐火被覆の施工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐火性に優れると共に、施工効率を向上でき、コスト低減を達成できる耐火被覆構造と、その施工方法を提供する。
【解決手段】鉄骨構造材として鉄骨角柱1を乾式耐火被覆材3と、半湿式耐火被覆材4とを用いて被覆する。鉄骨角柱1は、外壁材2や構造物に近接する面を乾式耐火被覆材3で被覆し、その他の面を半湿式耐火被覆材4で被覆する。乾式耐火被覆材3は、熱膨張性耐火材料からなるものが好ましい。
【選択図】 図1
【解決手段】鉄骨構造材として鉄骨角柱1を乾式耐火被覆材3と、半湿式耐火被覆材4とを用いて被覆する。鉄骨角柱1は、外壁材2や構造物に近接する面を乾式耐火被覆材3で被覆し、その他の面を半湿式耐火被覆材4で被覆する。乾式耐火被覆材3は、熱膨張性耐火材料からなるものが好ましい。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄骨用の耐火被覆構造に係り、特に、柱、梁等の鉄骨構造材を低コストで容易に耐火被覆材で被覆でき、耐火性能が安定している鉄骨耐火被覆構造と、鉄骨耐火被覆の施工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
建築物の高層化等にともない、建築物の構造材をなす梁、柱等として軽量な鉄骨が用いられるようになってきている。建築物の構造材として用いられる鉄骨には、建築基準法第2条、同施行令107条等に定められた耐火性能を満たすように定められており、その性能を満たすために、鉄骨の表面を耐火性に優れた材料で被覆することが一般的に行われている。
【0003】
鉄骨に耐火性を付与するための乾式耐火被覆材料としては、無機繊維ボードやケイ酸カルシウム板等のボード状材料と、ロックウールフェルトやセラミック繊維フェルト等からなるフェルト状材料がある。乾式耐火被覆材料は、半湿式耐火被覆材料半湿式工法に比べて品質は安定している。図4に示すように、鉄骨柱20に取り付けたボード状材料21は、壁等の下地板を兼用できるのでトータルの仕上がり厚みが小さくなり、より有効空間を広くすることが可能となる。フェルト状材料22は、図5に示すように鉄骨柱20の周囲に巻き付けられる。
【0004】
また、鉄骨に耐火性を付与するための半湿式耐火被覆材料として、水ガラスや水硬性セメントにバーミキュライト、ロックウール等の無機成分を混合したものが開示されている。これらの材料を用いた半湿式工法は、コストが安価で、形状の追随性に優れている。安価で容易な半湿式工法は広く認知されており、最も一般的に鉄骨耐火被覆として利用されている(例えば、特許文献1参照)。半湿式耐火被覆材料23は、図6に示されるように鉄骨柱20の外周全面に吹き付けで被覆される。
【0005】
さらに、従来のこの種の耐火被覆構造としては、例えば、半湿式耐火被覆材料の脱落や飛散のおそれのある部分を、乾式のボード状耐火被覆で嵌合して取り付ける工法が考案されている(例えば、特許文献2参照)。すなわち、鉄骨梁の上フランジ部にその外形状に合わせて断面L字状に成形された耐火性成形体を嵌合させ、下フランジ部にその外形状に合わせて断面コ字状に成形された耐火性成形体を嵌合させることによって被覆するとともに、鉄骨梁のその他の部分を、無機質繊維および結合材を主成分とする耐火被覆材を吹き付けることによって構成している。
【0006】
また、他の耐火被覆構造として、梁の下に間仕切を取り付けやすくするために、下フランジのみボード状耐火被覆材料を固定する方法も考案されている(例えば、特許文献3参照)。すなわち、鉄骨梁の下フランジ部分を、その外形状に合わせて成形された耐火性成形体を嵌合させることによって被覆するとともに、鉄骨梁の下フランジ部分以外の部分を、無機質繊維のフェルト又はブランケットからなる耐火被覆材によって被覆している。
【0007】
さらに、他のこの種の技術として、鉄骨用膨張性耐火被覆体は、狭小部での被覆を可能とする材料として、薄いシート状の被覆材料も考案されている(例えば、特許文献4参照)。すなわち、鉄骨用膨張性耐火被覆体は、シート状補強体と、この補強体を芯材として所要厚さに形成した膨張性耐火材と、この耐火材層の表面を被覆する軟質性合成樹脂外皮とより成るものである。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−32664号公報
【特許文献2】
実用新案登録2578254号公報(図1)
【特許文献3】
実開平7−40822号公報(図1)
【特許文献4】
実公平7−56405号公報(図1,2)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、乾式耐火被覆材料であるボード状材料を用いて鉄骨の回りを囲むように設置する際に、柱、梁の取り合い部位や金具の取り付け部位等では、被覆材料の切り欠き等の成形加工に工数がかかるため、施工コストが高くなり工期も長くなるという欠点があった。
【0010】
フェルト状材料は、図5に示すように、追随性の良さから柱、梁、外壁などの形状に柔軟に対応できるため施工性は良好であるが、半湿式工法に比べて施工コストは高くなる。
【0011】
また、特許文献1に記載の半湿式耐火被覆材料は、施工時に現場で鉄骨構造材に対して吹き付けるため、施工時に粉塵が発生する。このため、半湿式工法による耐火被覆を行う場合には、建物外部環境への粉塵飛散防止のために、建物周囲に養生シート等の設置後もしく外壁取り付け後の施工となり、その分工期が長くなる問題点がある。
【0012】
さらに、図6に示すように、耐火性能が充分でない外壁材近くの鉄骨には全周に耐火被覆を必要とするが、外壁材を取り付けた後に被覆を施工すれば空間が狭いために施工が行いにくく、安定した品質管理も困難である。そのため、施工するための空間の配慮も予め設計時に必要となる。そして、図7に示すように、外壁材25だけでなく他の構造物、例えばエレベーター26や階段室、吹き抜け、機械設備等に近接した鉄骨梁27の場合も耐火被覆28の厚さを配慮した設計をしなければならず、また構造物の為の空間を十分確保する事が出来なくなる。
【0013】
特許文献2に記載の方法では鉄骨の形状や取り付けられた金物等の形状毎にボードの加工が必要となり、施工性にやはり問題があった。また、特許文献3に記載の耐火被覆構造は、前記と同じ問題点を抱えているとともに、コストの高い材料同士を組み合わせているため、トータルコストも低下せず、鉄骨周囲が狭くて作業スペースのない場所では非常に施工が困難である。
【0014】
さらに、特許文献4に記載の鉄骨用膨張性耐火被覆体は、シート構成が複数の材料を重ねているため、薄さは十分ではなく、施工するにはやはり鉄骨周囲に作業スペースが必要である。またシート材料単独で被覆をしているためにコストが非常に高くなってしまう問題があった。
【0015】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、耐火性に優れると共に、現場での施工性が改善され、鉄骨が使用される周囲の状況に合わせて、乾式耐火被覆材と、半湿式耐火被覆材とを用いて低コストで被覆できる鉄骨耐火被覆構造と、乾式工法と半湿式工法を使い分ける鉄骨耐火被覆の施工方法を提供することにある。また、施工性が良好で、低コストで施工できる鉄骨耐火被覆の施工方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鉄骨周囲を被覆するために求められる機能に応じて耐火被覆材料を使い分け、鉄骨周囲で周辺の部材と近接して、施工が困難な空間の一部分および/又は狭い一部分に乾式耐火被覆工法を用い、その他の部分に半湿式耐火被覆工法を用いて鉄骨を被覆することにより、施工効率向上と空間の有効利用を同時に達成でき、コスト低減が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0017】
すなわち、前記目的を達成すべく、本発明に係る耐火被覆構造は、鉄骨構造材を耐火被覆材で被覆する構造であって、鉄骨構造材を乾式耐火被覆材と、半湿式耐火被覆材とを用いて被覆することを特徴とする。乾式耐火被覆材とは、ボード状やフェルト状、あるいは薄肉の熱膨張性耐火材料からなる耐火被覆材であり、これらを鉄骨構造材に取り付けて被覆する。半湿式耐火被覆材とは、施工時に現場で鉄骨構造材に不燃材を吹き付ける耐火被覆材であり、不燃材とは例えばセメントにロックウール等の無機成分を混ぜて形成したものである。
【0018】
前記のごとく構成された本発明の耐火被覆構造は、鉄骨構造材周囲の部材と近接して、半湿式耐火被覆材の施工が困難な部分では乾式工法を用いて鉄骨構造材を乾式耐火被覆材で被覆し、他の部分では半湿式工法を用いて鉄骨構造材を耐火被覆材で被覆するため、施工が容易となると共にコストを低減することができる。また、施工が困難な部分は、乾式耐火被覆材で確実に被覆するため耐火性能が安定し、鉄骨構造材を火災等から確実に保護することができる。乾式耐火被覆材のみで被覆する場合、接合部分に隙間が生じて火災時に熱が鉄骨構造材に達する虞があるが、本発明では乾式耐火被覆材は半湿式耐火被覆材で密着状態に接合されるため耐火性能が向上し、室内側の空間の有効利用が図れる。
【0019】
本発明に係る耐火被覆構造の好ましい具体的な態様としては、前記鉄骨構造材は、外壁材や構造物に近接する面を乾式耐火被覆材で被覆し、その他の面を半湿式耐火被覆材で被覆することを特徴としている。この構成によれば、例えば外壁材や構造物に近接する鉄骨は、外壁材や構造物と隙間を有して対向しており、この隙間に半湿式耐火被覆材を吹き付けても、隙間の中に確実に充填することはできないが、この隙間の部分は乾式耐火被覆材で確実に覆われているため、耐火性能を確実にすることができる。また、乾式耐火被覆材で被覆されていない部分は、半湿式耐火被覆材を吹き付けて鉄骨構造体に追随させることができるので、施工作業が容易となる。
【0020】
さらに、本発明に係る耐火被覆構造の好ましい具体的な他の態様としては、前記乾式耐火被覆材は、熱膨張性耐火材料からなることを特徴としている。この構成によれば、火災等で乾式耐火材料に熱が加わると、その熱膨張性による十分な膨張層厚みにより耐火性能が確保され、内部の鉄骨構造材を熱による被害を回避することができる。
【0021】
本発明の鉄骨耐火被覆の施工方法は、鉄骨構造材を建て、この鉄骨構造材の外壁材に近接する面を乾式耐火被覆材で被覆し、乾式耐火被覆材の外側に外壁材を取り付け、鉄骨構造材の乾式耐火被覆材の被覆していない面を半湿式耐火被覆材で被覆することを特徴とする。この構成によれば、半湿式耐火被覆材の吹き付けにくい部分は、予め乾式耐火被覆材で被覆しておき、他の部分は外壁材を取り付けた後、半湿式耐火被覆材で被覆するため、鉄骨構造材を乾式と半湿式の両方の耐火被覆材で確実に被覆することができ、接合部分も密着して耐火性能が安定し、施工も容易となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る鉄骨耐火被覆構造の一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は本実施形態に係る鉄骨耐火被覆構造の外壁材と鉄骨構造材部分の要部の水平断面図である。一般的に、この部分は外壁材と鉄骨構造材とが接近し、隙間が狭小で内部に耐火被覆材が入りにくく、耐火性能が十分得られにくい部分である。この部分の鉄骨耐火被覆構造を、施工方法を含めて説明する。
【0023】
図1にて示すように、予め鉄骨構造材として鉄骨角柱1を建て、外壁材2を取り付ける前に鉄骨角柱1の外壁側の1面を乾式工法にて乾式耐火被覆材3で被覆し、外壁材2を取り付けた後に、室内側より半湿式工法にて鉄骨角柱1の残りの3面を半湿式耐火被覆材4で被覆する。乾式耐火被覆材3を固定する方法は、特に限定されず、溶接ピン、針金、ドリリングビスや釘、接着剤あるいは金網を介して取り付ける方法が挙げられる。これらのうち、施工性の簡便性から、図示していないが溶接ピンによる固定方法が好ましい。
【0024】
前記の乾式耐火被覆材3は、使用される部位に求められる機能ごとに使い分けられる。
(1)粉塵の発生が少ない。
(2)施工が容易である。
(3)被覆厚を抑える。
【0025】
前記(1)の場合、ボード状材料および/又はフェルト状材料を用いると、養生シートの設置や外壁材を取り付けていない状態であっても、外部環境への粉塵が発生しないため好ましい。前記(2)の場合、フェルト状材料を用いると、鉄骨構造材としての柱、梁の取り合い部位や金具の取り付け部位等での被覆材料の加工が容易になるため、施工工数が減少でき更に好ましい。前記(3)の場合、熱膨張性耐火材料を用いれば、より外壁材と鉄骨の間の空間を狭くすることができるため好ましい。
【0026】
前記熱膨張性耐火材料としては、求められる耐火性能を満足するものであれば特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂に特定の黒鉛および無機充填剤を特定量配合した樹脂組成物から成るシート状材料と、当該樹脂組成物と特定の不燃性材料からなるネット又はマットとを一体化したシート状材料が挙げられる。
【0027】
以下、前記膨張性耐火材料の構成成分、製法等を説明する。
前記のエポキシ樹脂は、特に限定されないが、基本的にはエポキシ基をもつモノマーと硬化剤とを反応させることにより得られる。エポキシ基をもつモノマーとしては、2官能のグリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、多官能のグリシジルエーテル型等のものが挙げられる。
【0028】
前記の2官能のグリシジルエーテル型のモノマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール型、ポリプロピレングリコール型、ネオペンチルグリコール型、1,6−ヘキサンジオール型、トリメチロールプロパン型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、プロピレンオキサイド−ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型等のモノマーが例示される。
【0029】
前記のグリシジルエステル型のモノマーとしては、例えば、ヘキサヒドロ無水フタル酸型、テトラヒドロ無水フタル酸型、ダイマー酸型、P−オキシ安息香酸型等のモノマーが例示される。また、多官能のグリシジルエーテル型のモノマーとしては、例えば、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、DPPノボラック型、ジシクロペンタジエン・フェノール型等のモノマーが例示される。このようなエポキシ基をもつモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されても良い。
【0030】
前記の硬化剤は、重付加型、触媒型のものが挙げられる。重付加型の硬化剤としては、例えば、脂肪族ポリアミン又はその変性アミン、芳香族ポリアミン、酸無水物、ポリフェノール、ポリメルカプタン等が例示される。また、触媒型の硬化剤としては、例えば、3級アミン、イミダゾール類、ルイス酸、ルイス塩基等が例示される。
【0031】
これらの硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されても良い。前記エポキシ基をもつモノマーと前記硬化剤は、任意の比で配合してもよいが、熱膨張性材料の力学物性の品質安定性から、エポキシ基をもつモノマーと硬化剤の当量が一致する配合比が望ましい。
【0032】
また、前記エポキシ樹脂には、他の樹脂が添加されてもよい。他の樹脂の添加量が多くなると、エポキシ樹脂の効果が発現されなくなるので、エポキシ樹脂1に対して他の樹脂の添加量は5(重量比)以下が好ましい。前記エポキシ樹脂には、熱膨張性耐火材料の物性を損なわない範囲で、難燃剤、酸化防止剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂等が添加されてもよい。
【0033】
さらに、前記エポキシ樹脂には、可撓性が付与されてもよく、可撓性を付与する方法としては、次の方法が挙げられる。
(1)架橋点間の分子量を大きくする。
(2)架橋密度を小さくする。
(3)軟質分子構造を導入する。
(4)可塑剤を添加する。
(5)相互侵入網目(IPN)構造を導入する。
(6)ゴム状粒子を分散導入する。
(7)ミクロボイドを導入する。
【0034】
前記(1)の方法は、予め分子鎖の長いエポキシモノマーおよび/又は硬化剤を用いて反応させることで、架橋点の間の距離が長くなり可撓性を発現させる方法である。硬化剤として、例えばポリプロピレンジアミン等が用いられる。前記(2)の方法は、官能基の少ないエポキシモノマーおよび/又は硬化剤を用いて反応させることにより、一定領域の架橋密度を小さくして可撓性を発現させる方法である。硬化剤として、例えば2官能アミン、エポキシモノマーとして、例えば1官能エポキシ等が用いられる。
【0035】
前記(3)の方法は、軟質分子構造をとるエポキシモノマーおよび/又は硬化剤を導入して可撓性を発現させる方法である。硬化剤として、例えば複素環状ジアミン、エポキシモノマーとして、例えばアルキレンジグリコールジグリシジルエーテル等が用いられる。前記(4)の方法は、可塑剤として非反応性の希釈剤、例えば、DOP、タール、石油樹脂等を添加する方法である。
【0036】
前記(5)の方法は、エポキシ樹脂の架橋構造に別の軟質構造をもつ樹脂を導入する相互侵入網目(IPN)構造で可撓性を発現させる方法である。前記(6)の方法は、エポキシ樹脂マトリックスに液状又は粒状のゴム粒子を配合分散させる方法である。エポキシ樹脂マトリックスとしてポリエステルエーテル等が用いられる。
【0037】
前記(7)の方法は、1μm以下のミクロボイドをエポキシ樹脂マトリックスに導入させることにより、可撓性を発現させる方法である。エポキシ樹脂マトリックスとして、分子量1000〜5000のポリエーテルが添加される。前記エポキシ樹脂の可撓性を調整することによって、柔軟性を有するシートの成形が可能となり、鉄骨の形状に沿わせて曲げることが要求される部位にも適応でき、施工性を向上できる。
【0038】
熱膨張性耐火材料で用いる特定の黒鉛とは、従来公知の物質である熱膨張性黒鉛を中和処理したものである。熱膨張性黒鉛は、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理することにより生成するグラファイト層間化合物であり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。
【0039】
このように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和することにより、中和処理された熱膨張性黒鉛が得られる。脂肪族低級アミンとしては、特に限定されず、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。前記のアルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物としては、特に限定されず、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩などが挙げられる。
【0040】
前記の中和処理された熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュが好ましい。粒度が、200メッシュより小さくなると、黒鉛の膨張度が小さく、所定の耐火断熱層が得られず、また、20メッシュより大きくなると、黒鉛の膨張度が大きいという利点はあるが、樹脂分と混練する際に分散性が悪くなり、物性の低下が避けられない。中和処理された熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、東ソー社製「GREP−EG」、UCAR Carbon社製「GRAFGurad160」、「GRAFGurad220」等が挙げられる。
【0041】
熱膨張性耐火材料で用いられる無機充填剤としては、特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の含水無機物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩;硫酸カルシウム、石膏繊維、けい酸カルシウム等のカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化けい素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム「MOS」(商品名)、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化けい素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。中でも、含水無機物および金属炭酸塩が好ましい。
【0042】
含水無機物の水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等は、加熱時の脱水反応によって生成した水のために吸熱が起こり、温度上昇が低減されて高い耐熱性が得られる点、および、加熱残渣として酸化物が残存し、これが骨材となって働くことで膨張層の強度が向上する点で特に好ましい。また、水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムは、脱水効果を発揮する温度領域が異なるため、併用すると脱水効果を発揮する温度領域が広がり、より効果的な温度上昇抑制効果が得られることから、併用することが好ましい。
【0043】
前記の金属炭酸塩は、後述するリン化合物との反応で膨張を促すと考えられ、特に、リン化合物として、ポリリン酸アンモニウムを使用した場合に、高い膨張効果が得られる。また、有効な骨材として働き、燃焼後に形状保持性の高い膨張層を形成する。金属炭酸塩の中では、更に、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸亜鉛等の周期律表IIb族金属の炭酸塩が好ましい。
【0044】
一般的に、無機充填剤は、骨材的な働きをすることから、膨張層の強度の向上や熱容量の増大に寄与すると考えられる。無機充填剤の粒径としては、0.5〜400μmが好ましく、より望ましくは約1〜100μmである。無機充填剤は、添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため粒径の小さいのが望ましいが、0.5μm未満では二次凝集が起こり、分散性が悪くなる。無機充填剤の添加量が多いときは、高充填が進むにつれて、樹脂組成物粘度が高くなり成型性が低下するが、粒径を大きくすることで樹脂組成物の粘度を低下させることができる点から、粒径の大きいものが好ましい。粒径が400μmを超えると、成型体の表面性、樹脂組成物の力学的物性が低下する。
【0045】
無機充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウムは、昭和電工社製の粒径1μmの「H−42M」、粒径18μmの「H−31」、あるいはアルコア化成社製の粒径25μmの「B325」、粒径15μmの「B315」等が挙げられる。また、炭酸カルシウムでは、備北粉化社製の粒径1.8μmの「ホワイトンSB赤」、粒経8μmの「BF300」が挙げられる。
【0046】
前記の無機充填剤は、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。また、粒径の大きい無機充填剤と粒径の小さいものを組み合わせて使用することがより好ましく、組み合わせて用いることによって、熱膨張性材料の力学的性能を維持したまま、高充填化することが可能となる。
【0047】
前記の熱膨張性耐火材料では、前記の各成分に加えて、さらにリン化合物を添加することにより、膨張断熱層の形状保持性が上がり耐火性能が向上する。リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム類;下記化学式(1)で表される化合物等が挙げられる。これらのうち、耐火性の観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム類、および、下記化学式(1)で表される化合物が好ましく、性能、安全性、費用等の点においてポリリン酸アンモニウム類がより好ましい。
【0048】
【化1】
【0049】
前記の化学式(1)中、R1およびR3は、水素、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は、炭素数6〜16のアリール基を表す。R2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、又は、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
【0050】
前記の赤リンは、少量の添加で難燃効果を向上する。赤リンとしては、市販の赤リンを用いることができるが、耐湿性、混練時に自然発火しない等の安全性の点から、赤リン粒子の表面を樹脂でコーティングしたもの等が好適に用いられる。
【0051】
前記のポリリン酸アンモニウム類としては特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、取扱性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。市販品としては、例えば、クラリアント社製「AP422」、「AP462」、住友化学工業社製「スミセーフP」、チッソ社製「テラージュC80」等が挙げられる。
【0052】
前記の化学式(1)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。前記のリン化合物は、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
【0053】
熱膨張性耐火材料における、エポキシ樹脂組成物の各成分の配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対して、中和処理された熱膨張性黒鉛は10〜150重量部、および無機充填剤は30〜500重量部であり、中和処理された熱膨張性黒鉛と無機充填剤の合計量は40〜500重量部である。より好ましくは、エポキシ樹脂100重量部に対して、中和処理された熱膨張性黒鉛は30〜120重量部、および無機充填剤は50〜300重量部であり、中和処理された熱膨張性黒鉛と無機充填剤の合計量は80〜400重量部である。
【0054】
さらにリン化合物を添加させる場合、エポキシ樹脂100重量部に対して、中和処理された熱膨張性黒鉛は10〜150重量部、無機充填剤は30〜300重量部、およびリン化合物は30〜300重量部であり、中和処理された熱膨張性黒鉛と無機充填剤とリン化合物の合計量は70〜500重量部である。より好ましくは、エポキシ樹脂100重量部に対して、中和処理された熱膨張性黒鉛は30〜120重量部、無機充填剤は50〜300重量部、およびリン化合物は50〜300重量部であり、中和処理された熱膨張性黒鉛と無機充填剤とリン化合物の合計量は80〜400重量部である。
【0055】
中和処理された熱膨張性黒鉛の配合量が下限値を下回ると、十分な膨張層厚みが確保できず耐火性能が低下する。また上限値を超えると、機械的物性の低下が大きくなり、使用に耐えられなくなる。無機充填剤の配合量が下限値を下回ると、熱容量の低下に伴い十分な耐火性が得られず、上限値を超えると、機械的物性の低下が大きく使用に耐えられなくなる。
【0056】
リン化合物の配合量が下限値を下回ると、膨張層の形状保持性を向上させる効果が発揮されず、また上限値を超えると、機械的物性の低下が大きく使用に耐えられなくなる。中和処理された熱膨張性黒鉛および無機充填剤、又は中和処理された熱膨張性黒鉛、無機充填剤およびリン化合物の配合量が下限値を下回ると、熱容量の低下に伴い十分な耐火性が得られず、上限値を超えると、機械的物性の低下が大きく使用に耐えられなくなる。
【0057】
前記の不燃性材料からなるネット又はマットとしては、無機繊維若しくは金属繊維状材料からなるものが好ましく、例えば、ガラス繊維の織布(ガラスクロス、ロービングクロス、コンティニュアスストランドマット等)若しくは不織布(チョップドストランドマット等)、セラミック繊維の織布(セラミッククロス等)若しくは不織布(セラミックマット等)、炭素繊維の織布若しくは不織布、ラス又は金網から形成されるネット又はマットが好適に用いられる。これらのネット又はマットのうち、熱膨張性材料を製造する場合の容易さとコストの観点から、ガラス繊維の織布若しくは不織布が好ましく、製造時にガラスの飛散が少なくないことから、ガラスクロスがより好ましい。さらに、取扱性が向上すること、およびエポキシ樹脂との接着性がよくなることから、ガラスクロスはメラミン樹脂やアクリル樹脂等で処理されていてもよい。
【0058】
前記の不燃性材料、特に不燃性繊維状材料からなるネット又はマットは、エポキシ樹脂組成物からなるシート中に含浸されていても、表面に積層されていてもよい。不燃性繊維状材料からなるネット又はマットは、熱膨張性材料の膨張後の形状保持性を著しく向上させ、火災の際に膨張層の脱落や欠損を防止する効果を発揮する。
【0059】
不燃性繊維状材料からなるネット又はマットの1m2 当たりの重量は、5〜2000gである。1m2 当たりの重量が5g未満であると、膨張断熱層の形状保持性を向上させる効果が低下し、2000gを超えるとシートが重くなって施工が困難になる。より好ましくは、10〜1000gである。
【0060】
不燃性繊維状材料からなるネット又はマットの厚みは、0.05〜6mmが好ましい。厚みが0.05mm以下であると、熱膨張性材料が膨張する際にその膨張圧に耐えられなくなる。また、厚さが6mmを超えると、熱膨張性材料を施工する際に、切り欠きや曲げ等の変形が困難になる。より好ましくは、0.1〜4mmである。
【0061】
不燃性繊維状材料からなるネットの場合には、その開き目は0.1〜50mmであることが好ましい。開き目が0.1mm未満であると、熱膨張性材料が膨張する際にその膨張圧に耐えられなくなる。また、50mmを超えると膨張断熱層の形状保持性を向上させる効果が低くなる。より好ましくは、0.2〜30mmである。
【0062】
不燃性繊維状材料からなるネット又はマットをエポキシ樹脂組成物に含浸させる場合、ネット又はマットの位置は、熱膨張性材料の厚み方向においていずれの位置であってもよいが、膨張層の形状保持性をより高めることから、火炎に曝される表面側であることが好ましい。
【0063】
前記の熱膨張性材料の製造方法としては、エポキシ樹脂組成物の混練物を作製した後、成形する段階で不燃性繊維状材料からなるネット又はマットと一体化する方法が挙げられる。エポキシ樹脂組成物の混練物は、前記の各成分を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機等の公知の装置を用いて混練することにより得ることができる。
【0064】
また、エポキシ基をもつモノマー又は硬化剤の充填剤の混練物を、前記の方法により別々に作製しておき、プランジャーポンプ、スネークポンプ、ギアポンプ等でそれぞれの混練物を供給し、スタティックミキサー、ダイナミックミキサー等で混合を行ってもよい。この場合の成形方法としては、例えば、プレス成形、ロール成形、コーター成形等により、エポキシ樹脂混練物をシート状に成形し、あるいは、エポキシ樹脂混錬物を、不燃性繊維材料からなるネット又はマット含浸又は積層させた後、エポキシ樹脂を硬化させる方法が挙げられる。
【0065】
前記のプレス成形による方法は、例えば、加圧プレス機を用いて、金型中に不燃性繊維状材料からなるネット又はマットとエポキシ樹脂組成物を投入して、加圧して成形する方法が挙げられる。ロール成形による方法は、例えば、SMCを用いて、ロール間にエポキシ樹脂と不燃性繊維状材料からなるネット又はマットを同時に挿入し、成形する方法が挙げられる。コーター成形による方法は、例えば、ロールコーター又はブレードコーターを用いて、ロール又はブレードとロールの間隙に、エポキシ樹脂と不燃性繊維状材料からなるネット又はマットを同時に挿入し、成形する方法が挙げられる。
【0066】
エポキシ樹脂の硬化方法は、特に限定されず、前記のプレスやロールによる加熱、又は成形ライン中に加熱炉等を設置し、成形と加熱による硬化とを連続で行う方法、あるいは成形後に加熱炉に投入する方法等、公知の方法によって行うことができる。
【0067】
熱膨張性耐火材料のシート厚みは0.1〜6mmが好ましい。厚みが0.1mm未満であると、加熱によって形成される膨張断熱層の厚みが薄くなり、十分な耐火性能を発揮することができない。また、6mmを超えると熱膨張性材料の重量が大きくなり、施工性が悪くなる。より好ましくは、0.3〜4mmである。また、該不燃性繊維状材料の厚みは、前記熱膨張性耐火材料の好ましい厚み(0.1〜6mm)相当量に応じて適宜設定される。
【0068】
前記のように形成された熱膨張性材料の片面又は両面には、施工性や膨張層の強度を改善する目的で基材層が積層されていてもよい。この基材層に用いられる材料としては、例えば、布、ポリエステルやポリプロピレン等からなる不織布、紙、プラスチックフィルム、割布、ガラスクロス、アルミガラスクロス、アルミ箔、アルミ蒸着フィルム、アルミニウム箔積層紙、および、これらの材料の積層体等が挙げられる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート不織布のポリエチレンラミネートフィルム、アルミニウム箔積層紙、アルミガラスクロスである。また、この基材層の厚みは、0.25mm以下が好ましい。
【0069】
さらに、前記の不燃性繊維状材料からなるネット又はマットと、この基材層との積層体を、前記のエポキシ樹脂組成物からなるシート表面に積層してもよい。このような積層体としては、例えば、アルミガラスクロスあるいはポリフィルムとガラスクロスの積層体等が挙げられる。
以下に、実施例をあげて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0070】
(実施例1)
図2に示すように、鉄骨角柱1の外壁材2と対向する面に、熱膨張性耐火材料からなる薄板状の乾式耐火被覆材3Aを対接させ、溶接ピン5を乾式耐火被覆材3Aに貫通させて鉄骨角柱1に溶接して固定し、その後、外壁材2を取り付け、鉄骨角柱1の残りの3面は半湿式耐火被覆材4を吹き付けて被覆した。溶接ピン5は先端が尖った軸部と、軸部の後端に固定した円盤状の鍔部とを有する形状のものをスポット溶接した。半湿式耐火被覆材4は、ロックウール繊維にセメントを混入して(重量比約60%:40%)作製したものを吹き付けた。
【0071】
この鉄骨耐火被覆構造により、建築基準法に定められた耐火試験を行い、良好な結果が得られた。また、半湿式耐火被覆材4は、外壁材2を設置した後施工されるので、建物外部への粉塵の飛散を最小限に抑えることができる。さらに、コストの高い乾式耐火被覆材3Aは、鉄骨柱1の1面のみ被覆され、他の3面はコストの安い半湿式耐火被覆材4で被覆されているため、全体のコストを低減できる。乾式耐火被覆材3Aと半湿式耐火被覆材4は、密着して接合部分に隙間が生じることはない。
【0072】
(実施例2)
図3に示す実施例は、鉄骨構造材に構造物が近接し、耐火被覆に必要な空間を減少した例として、エレベーター10が上下するエレベーターシャフト11に隣接したH型鋼で形成された鉄骨梁1Aを示している。この場合、図3に示すように、鉄骨梁1Aのエレベーターシャフト面に複数の溶接ピン5を固定し、熱膨張性耐火材料からなる乾式耐火被覆材3Bを溶接ピン5にて鉄骨梁1Aに固定し、床12と外壁材2を取り付け、鉄骨梁1Aの残りの面は前記実施例と同様の半湿式耐火被覆材4で被覆した。
【0073】
この鉄骨耐火被覆構造は、乾式耐火被覆材3Bと半湿式耐火被覆材4とが密着し隙間ができないため、鉄骨梁1Aは完全に耐火被覆材で覆われる。この鉄骨耐火被覆構造により、建築基準法に定められた耐火試験を行ったところ、良好な結果が得られた。この場合も、施工時に半湿式耐火被覆材4の建物外部への粉塵の飛散を最小限に抑えることができる。
【0074】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、鉄骨構造材として鉄骨角柱、H型鋼を使用した鉄骨梁の例を示したが、他の形状でもよいことは勿論である。半湿式耐火被覆材は、現場で吹き付けるものであれば、どのようなものでもよい。
【0075】
また、鉄骨構造材は1面だけ乾式耐火被覆材で被覆する例を示したが、複数の面が外壁材や、他の構造物と面する場合は、複数の面を乾式耐火被覆材で被覆するようにしてもよい。乾式耐火被覆材を固定する溶接ピンは、先端が円盤状に形成された例を示したが、乾式耐火被覆材を固定できれば、どのような形状でもよい。乾式耐火被覆材は、これまでに記述したように施工の困難な部位、隙間が狭小な部分だけに使用することに限る必要はなく、施工性を向上させるために乾式耐火被覆材を半湿式耐火被覆材で施工が困難な部位以外の他の部位まで巻き込み、巻き込んだ部分で鉄骨構造材に固定することもできる。
【0076】
【発明の効果】
以上の説明から理解できるように、本発明の耐火被覆構造は、乾式工法と半湿式工法を使い分け、半湿式耐火被覆材料を外壁材の設置後に被覆することにより、建物外部環境への粉塵の発生を最小限に抑えることができ、狭小空間であっても施工が容易にできるため、性能品質の確保が容易になり、被覆全てを乾式工法単一で施工する場合と比べて施工コストを安価にできる。さらに、事前に設計段階で建築計画に組み込むことにより、隙間狭小部位や空間確保要求部位などへの対応力が向上する。また、耐火性能を維持したままで鉄骨構造材と外壁材とを接近できるため、室内空間を有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る鉄骨耐火被覆構造の一実施形態を示す要部の水平断面図。
【図2】本発明に係る鉄骨耐火被覆構造の他の実施形態を示す要部の水平断面図。
【図3】本発明に係るエレベーターシャフト部における鉄骨梁部分の耐火被覆構造を示す要部の垂直断面図。
【図4】従来の乾式耐火被覆材(ボード状材料)で被覆した鉄骨柱の水平断面図。
【図5】従来の乾式耐火被覆材(フェルト状材料)で被覆した鉄骨柱の水平断面図。
【図6】従来の半湿式耐火被覆材で被覆した鉄骨柱の水平断面図。
【図7】従来のエレベーターシャフト部における鉄骨梁を半湿式耐火被覆材で被覆した垂直断面図。
【符号の説明】
1 鉄骨角柱(鉄骨構造材)、
1A 鉄骨梁(鉄骨構造材)、 2 外壁材、
3,3A 乾式耐火被覆材、
3B 熱膨張性耐火材料(乾式耐火被覆材)、
4 半湿式耐火被覆材、
10 エレベーター(構造物)
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄骨用の耐火被覆構造に係り、特に、柱、梁等の鉄骨構造材を低コストで容易に耐火被覆材で被覆でき、耐火性能が安定している鉄骨耐火被覆構造と、鉄骨耐火被覆の施工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
建築物の高層化等にともない、建築物の構造材をなす梁、柱等として軽量な鉄骨が用いられるようになってきている。建築物の構造材として用いられる鉄骨には、建築基準法第2条、同施行令107条等に定められた耐火性能を満たすように定められており、その性能を満たすために、鉄骨の表面を耐火性に優れた材料で被覆することが一般的に行われている。
【0003】
鉄骨に耐火性を付与するための乾式耐火被覆材料としては、無機繊維ボードやケイ酸カルシウム板等のボード状材料と、ロックウールフェルトやセラミック繊維フェルト等からなるフェルト状材料がある。乾式耐火被覆材料は、半湿式耐火被覆材料半湿式工法に比べて品質は安定している。図4に示すように、鉄骨柱20に取り付けたボード状材料21は、壁等の下地板を兼用できるのでトータルの仕上がり厚みが小さくなり、より有効空間を広くすることが可能となる。フェルト状材料22は、図5に示すように鉄骨柱20の周囲に巻き付けられる。
【0004】
また、鉄骨に耐火性を付与するための半湿式耐火被覆材料として、水ガラスや水硬性セメントにバーミキュライト、ロックウール等の無機成分を混合したものが開示されている。これらの材料を用いた半湿式工法は、コストが安価で、形状の追随性に優れている。安価で容易な半湿式工法は広く認知されており、最も一般的に鉄骨耐火被覆として利用されている(例えば、特許文献1参照)。半湿式耐火被覆材料23は、図6に示されるように鉄骨柱20の外周全面に吹き付けで被覆される。
【0005】
さらに、従来のこの種の耐火被覆構造としては、例えば、半湿式耐火被覆材料の脱落や飛散のおそれのある部分を、乾式のボード状耐火被覆で嵌合して取り付ける工法が考案されている(例えば、特許文献2参照)。すなわち、鉄骨梁の上フランジ部にその外形状に合わせて断面L字状に成形された耐火性成形体を嵌合させ、下フランジ部にその外形状に合わせて断面コ字状に成形された耐火性成形体を嵌合させることによって被覆するとともに、鉄骨梁のその他の部分を、無機質繊維および結合材を主成分とする耐火被覆材を吹き付けることによって構成している。
【0006】
また、他の耐火被覆構造として、梁の下に間仕切を取り付けやすくするために、下フランジのみボード状耐火被覆材料を固定する方法も考案されている(例えば、特許文献3参照)。すなわち、鉄骨梁の下フランジ部分を、その外形状に合わせて成形された耐火性成形体を嵌合させることによって被覆するとともに、鉄骨梁の下フランジ部分以外の部分を、無機質繊維のフェルト又はブランケットからなる耐火被覆材によって被覆している。
【0007】
さらに、他のこの種の技術として、鉄骨用膨張性耐火被覆体は、狭小部での被覆を可能とする材料として、薄いシート状の被覆材料も考案されている(例えば、特許文献4参照)。すなわち、鉄骨用膨張性耐火被覆体は、シート状補強体と、この補強体を芯材として所要厚さに形成した膨張性耐火材と、この耐火材層の表面を被覆する軟質性合成樹脂外皮とより成るものである。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−32664号公報
【特許文献2】
実用新案登録2578254号公報(図1)
【特許文献3】
実開平7−40822号公報(図1)
【特許文献4】
実公平7−56405号公報(図1,2)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、乾式耐火被覆材料であるボード状材料を用いて鉄骨の回りを囲むように設置する際に、柱、梁の取り合い部位や金具の取り付け部位等では、被覆材料の切り欠き等の成形加工に工数がかかるため、施工コストが高くなり工期も長くなるという欠点があった。
【0010】
フェルト状材料は、図5に示すように、追随性の良さから柱、梁、外壁などの形状に柔軟に対応できるため施工性は良好であるが、半湿式工法に比べて施工コストは高くなる。
【0011】
また、特許文献1に記載の半湿式耐火被覆材料は、施工時に現場で鉄骨構造材に対して吹き付けるため、施工時に粉塵が発生する。このため、半湿式工法による耐火被覆を行う場合には、建物外部環境への粉塵飛散防止のために、建物周囲に養生シート等の設置後もしく外壁取り付け後の施工となり、その分工期が長くなる問題点がある。
【0012】
さらに、図6に示すように、耐火性能が充分でない外壁材近くの鉄骨には全周に耐火被覆を必要とするが、外壁材を取り付けた後に被覆を施工すれば空間が狭いために施工が行いにくく、安定した品質管理も困難である。そのため、施工するための空間の配慮も予め設計時に必要となる。そして、図7に示すように、外壁材25だけでなく他の構造物、例えばエレベーター26や階段室、吹き抜け、機械設備等に近接した鉄骨梁27の場合も耐火被覆28の厚さを配慮した設計をしなければならず、また構造物の為の空間を十分確保する事が出来なくなる。
【0013】
特許文献2に記載の方法では鉄骨の形状や取り付けられた金物等の形状毎にボードの加工が必要となり、施工性にやはり問題があった。また、特許文献3に記載の耐火被覆構造は、前記と同じ問題点を抱えているとともに、コストの高い材料同士を組み合わせているため、トータルコストも低下せず、鉄骨周囲が狭くて作業スペースのない場所では非常に施工が困難である。
【0014】
さらに、特許文献4に記載の鉄骨用膨張性耐火被覆体は、シート構成が複数の材料を重ねているため、薄さは十分ではなく、施工するにはやはり鉄骨周囲に作業スペースが必要である。またシート材料単独で被覆をしているためにコストが非常に高くなってしまう問題があった。
【0015】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、耐火性に優れると共に、現場での施工性が改善され、鉄骨が使用される周囲の状況に合わせて、乾式耐火被覆材と、半湿式耐火被覆材とを用いて低コストで被覆できる鉄骨耐火被覆構造と、乾式工法と半湿式工法を使い分ける鉄骨耐火被覆の施工方法を提供することにある。また、施工性が良好で、低コストで施工できる鉄骨耐火被覆の施工方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鉄骨周囲を被覆するために求められる機能に応じて耐火被覆材料を使い分け、鉄骨周囲で周辺の部材と近接して、施工が困難な空間の一部分および/又は狭い一部分に乾式耐火被覆工法を用い、その他の部分に半湿式耐火被覆工法を用いて鉄骨を被覆することにより、施工効率向上と空間の有効利用を同時に達成でき、コスト低減が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0017】
すなわち、前記目的を達成すべく、本発明に係る耐火被覆構造は、鉄骨構造材を耐火被覆材で被覆する構造であって、鉄骨構造材を乾式耐火被覆材と、半湿式耐火被覆材とを用いて被覆することを特徴とする。乾式耐火被覆材とは、ボード状やフェルト状、あるいは薄肉の熱膨張性耐火材料からなる耐火被覆材であり、これらを鉄骨構造材に取り付けて被覆する。半湿式耐火被覆材とは、施工時に現場で鉄骨構造材に不燃材を吹き付ける耐火被覆材であり、不燃材とは例えばセメントにロックウール等の無機成分を混ぜて形成したものである。
【0018】
前記のごとく構成された本発明の耐火被覆構造は、鉄骨構造材周囲の部材と近接して、半湿式耐火被覆材の施工が困難な部分では乾式工法を用いて鉄骨構造材を乾式耐火被覆材で被覆し、他の部分では半湿式工法を用いて鉄骨構造材を耐火被覆材で被覆するため、施工が容易となると共にコストを低減することができる。また、施工が困難な部分は、乾式耐火被覆材で確実に被覆するため耐火性能が安定し、鉄骨構造材を火災等から確実に保護することができる。乾式耐火被覆材のみで被覆する場合、接合部分に隙間が生じて火災時に熱が鉄骨構造材に達する虞があるが、本発明では乾式耐火被覆材は半湿式耐火被覆材で密着状態に接合されるため耐火性能が向上し、室内側の空間の有効利用が図れる。
【0019】
本発明に係る耐火被覆構造の好ましい具体的な態様としては、前記鉄骨構造材は、外壁材や構造物に近接する面を乾式耐火被覆材で被覆し、その他の面を半湿式耐火被覆材で被覆することを特徴としている。この構成によれば、例えば外壁材や構造物に近接する鉄骨は、外壁材や構造物と隙間を有して対向しており、この隙間に半湿式耐火被覆材を吹き付けても、隙間の中に確実に充填することはできないが、この隙間の部分は乾式耐火被覆材で確実に覆われているため、耐火性能を確実にすることができる。また、乾式耐火被覆材で被覆されていない部分は、半湿式耐火被覆材を吹き付けて鉄骨構造体に追随させることができるので、施工作業が容易となる。
【0020】
さらに、本発明に係る耐火被覆構造の好ましい具体的な他の態様としては、前記乾式耐火被覆材は、熱膨張性耐火材料からなることを特徴としている。この構成によれば、火災等で乾式耐火材料に熱が加わると、その熱膨張性による十分な膨張層厚みにより耐火性能が確保され、内部の鉄骨構造材を熱による被害を回避することができる。
【0021】
本発明の鉄骨耐火被覆の施工方法は、鉄骨構造材を建て、この鉄骨構造材の外壁材に近接する面を乾式耐火被覆材で被覆し、乾式耐火被覆材の外側に外壁材を取り付け、鉄骨構造材の乾式耐火被覆材の被覆していない面を半湿式耐火被覆材で被覆することを特徴とする。この構成によれば、半湿式耐火被覆材の吹き付けにくい部分は、予め乾式耐火被覆材で被覆しておき、他の部分は外壁材を取り付けた後、半湿式耐火被覆材で被覆するため、鉄骨構造材を乾式と半湿式の両方の耐火被覆材で確実に被覆することができ、接合部分も密着して耐火性能が安定し、施工も容易となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る鉄骨耐火被覆構造の一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は本実施形態に係る鉄骨耐火被覆構造の外壁材と鉄骨構造材部分の要部の水平断面図である。一般的に、この部分は外壁材と鉄骨構造材とが接近し、隙間が狭小で内部に耐火被覆材が入りにくく、耐火性能が十分得られにくい部分である。この部分の鉄骨耐火被覆構造を、施工方法を含めて説明する。
【0023】
図1にて示すように、予め鉄骨構造材として鉄骨角柱1を建て、外壁材2を取り付ける前に鉄骨角柱1の外壁側の1面を乾式工法にて乾式耐火被覆材3で被覆し、外壁材2を取り付けた後に、室内側より半湿式工法にて鉄骨角柱1の残りの3面を半湿式耐火被覆材4で被覆する。乾式耐火被覆材3を固定する方法は、特に限定されず、溶接ピン、針金、ドリリングビスや釘、接着剤あるいは金網を介して取り付ける方法が挙げられる。これらのうち、施工性の簡便性から、図示していないが溶接ピンによる固定方法が好ましい。
【0024】
前記の乾式耐火被覆材3は、使用される部位に求められる機能ごとに使い分けられる。
(1)粉塵の発生が少ない。
(2)施工が容易である。
(3)被覆厚を抑える。
【0025】
前記(1)の場合、ボード状材料および/又はフェルト状材料を用いると、養生シートの設置や外壁材を取り付けていない状態であっても、外部環境への粉塵が発生しないため好ましい。前記(2)の場合、フェルト状材料を用いると、鉄骨構造材としての柱、梁の取り合い部位や金具の取り付け部位等での被覆材料の加工が容易になるため、施工工数が減少でき更に好ましい。前記(3)の場合、熱膨張性耐火材料を用いれば、より外壁材と鉄骨の間の空間を狭くすることができるため好ましい。
【0026】
前記熱膨張性耐火材料としては、求められる耐火性能を満足するものであれば特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂に特定の黒鉛および無機充填剤を特定量配合した樹脂組成物から成るシート状材料と、当該樹脂組成物と特定の不燃性材料からなるネット又はマットとを一体化したシート状材料が挙げられる。
【0027】
以下、前記膨張性耐火材料の構成成分、製法等を説明する。
前記のエポキシ樹脂は、特に限定されないが、基本的にはエポキシ基をもつモノマーと硬化剤とを反応させることにより得られる。エポキシ基をもつモノマーとしては、2官能のグリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、多官能のグリシジルエーテル型等のものが挙げられる。
【0028】
前記の2官能のグリシジルエーテル型のモノマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール型、ポリプロピレングリコール型、ネオペンチルグリコール型、1,6−ヘキサンジオール型、トリメチロールプロパン型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、プロピレンオキサイド−ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型等のモノマーが例示される。
【0029】
前記のグリシジルエステル型のモノマーとしては、例えば、ヘキサヒドロ無水フタル酸型、テトラヒドロ無水フタル酸型、ダイマー酸型、P−オキシ安息香酸型等のモノマーが例示される。また、多官能のグリシジルエーテル型のモノマーとしては、例えば、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、DPPノボラック型、ジシクロペンタジエン・フェノール型等のモノマーが例示される。このようなエポキシ基をもつモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されても良い。
【0030】
前記の硬化剤は、重付加型、触媒型のものが挙げられる。重付加型の硬化剤としては、例えば、脂肪族ポリアミン又はその変性アミン、芳香族ポリアミン、酸無水物、ポリフェノール、ポリメルカプタン等が例示される。また、触媒型の硬化剤としては、例えば、3級アミン、イミダゾール類、ルイス酸、ルイス塩基等が例示される。
【0031】
これらの硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されても良い。前記エポキシ基をもつモノマーと前記硬化剤は、任意の比で配合してもよいが、熱膨張性材料の力学物性の品質安定性から、エポキシ基をもつモノマーと硬化剤の当量が一致する配合比が望ましい。
【0032】
また、前記エポキシ樹脂には、他の樹脂が添加されてもよい。他の樹脂の添加量が多くなると、エポキシ樹脂の効果が発現されなくなるので、エポキシ樹脂1に対して他の樹脂の添加量は5(重量比)以下が好ましい。前記エポキシ樹脂には、熱膨張性耐火材料の物性を損なわない範囲で、難燃剤、酸化防止剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂等が添加されてもよい。
【0033】
さらに、前記エポキシ樹脂には、可撓性が付与されてもよく、可撓性を付与する方法としては、次の方法が挙げられる。
(1)架橋点間の分子量を大きくする。
(2)架橋密度を小さくする。
(3)軟質分子構造を導入する。
(4)可塑剤を添加する。
(5)相互侵入網目(IPN)構造を導入する。
(6)ゴム状粒子を分散導入する。
(7)ミクロボイドを導入する。
【0034】
前記(1)の方法は、予め分子鎖の長いエポキシモノマーおよび/又は硬化剤を用いて反応させることで、架橋点の間の距離が長くなり可撓性を発現させる方法である。硬化剤として、例えばポリプロピレンジアミン等が用いられる。前記(2)の方法は、官能基の少ないエポキシモノマーおよび/又は硬化剤を用いて反応させることにより、一定領域の架橋密度を小さくして可撓性を発現させる方法である。硬化剤として、例えば2官能アミン、エポキシモノマーとして、例えば1官能エポキシ等が用いられる。
【0035】
前記(3)の方法は、軟質分子構造をとるエポキシモノマーおよび/又は硬化剤を導入して可撓性を発現させる方法である。硬化剤として、例えば複素環状ジアミン、エポキシモノマーとして、例えばアルキレンジグリコールジグリシジルエーテル等が用いられる。前記(4)の方法は、可塑剤として非反応性の希釈剤、例えば、DOP、タール、石油樹脂等を添加する方法である。
【0036】
前記(5)の方法は、エポキシ樹脂の架橋構造に別の軟質構造をもつ樹脂を導入する相互侵入網目(IPN)構造で可撓性を発現させる方法である。前記(6)の方法は、エポキシ樹脂マトリックスに液状又は粒状のゴム粒子を配合分散させる方法である。エポキシ樹脂マトリックスとしてポリエステルエーテル等が用いられる。
【0037】
前記(7)の方法は、1μm以下のミクロボイドをエポキシ樹脂マトリックスに導入させることにより、可撓性を発現させる方法である。エポキシ樹脂マトリックスとして、分子量1000〜5000のポリエーテルが添加される。前記エポキシ樹脂の可撓性を調整することによって、柔軟性を有するシートの成形が可能となり、鉄骨の形状に沿わせて曲げることが要求される部位にも適応でき、施工性を向上できる。
【0038】
熱膨張性耐火材料で用いる特定の黒鉛とは、従来公知の物質である熱膨張性黒鉛を中和処理したものである。熱膨張性黒鉛は、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理することにより生成するグラファイト層間化合物であり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。
【0039】
このように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和することにより、中和処理された熱膨張性黒鉛が得られる。脂肪族低級アミンとしては、特に限定されず、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。前記のアルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物としては、特に限定されず、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩などが挙げられる。
【0040】
前記の中和処理された熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュが好ましい。粒度が、200メッシュより小さくなると、黒鉛の膨張度が小さく、所定の耐火断熱層が得られず、また、20メッシュより大きくなると、黒鉛の膨張度が大きいという利点はあるが、樹脂分と混練する際に分散性が悪くなり、物性の低下が避けられない。中和処理された熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、東ソー社製「GREP−EG」、UCAR Carbon社製「GRAFGurad160」、「GRAFGurad220」等が挙げられる。
【0041】
熱膨張性耐火材料で用いられる無機充填剤としては、特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の含水無機物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩;硫酸カルシウム、石膏繊維、けい酸カルシウム等のカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化けい素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム「MOS」(商品名)、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化けい素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。中でも、含水無機物および金属炭酸塩が好ましい。
【0042】
含水無機物の水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等は、加熱時の脱水反応によって生成した水のために吸熱が起こり、温度上昇が低減されて高い耐熱性が得られる点、および、加熱残渣として酸化物が残存し、これが骨材となって働くことで膨張層の強度が向上する点で特に好ましい。また、水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムは、脱水効果を発揮する温度領域が異なるため、併用すると脱水効果を発揮する温度領域が広がり、より効果的な温度上昇抑制効果が得られることから、併用することが好ましい。
【0043】
前記の金属炭酸塩は、後述するリン化合物との反応で膨張を促すと考えられ、特に、リン化合物として、ポリリン酸アンモニウムを使用した場合に、高い膨張効果が得られる。また、有効な骨材として働き、燃焼後に形状保持性の高い膨張層を形成する。金属炭酸塩の中では、更に、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸亜鉛等の周期律表IIb族金属の炭酸塩が好ましい。
【0044】
一般的に、無機充填剤は、骨材的な働きをすることから、膨張層の強度の向上や熱容量の増大に寄与すると考えられる。無機充填剤の粒径としては、0.5〜400μmが好ましく、より望ましくは約1〜100μmである。無機充填剤は、添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため粒径の小さいのが望ましいが、0.5μm未満では二次凝集が起こり、分散性が悪くなる。無機充填剤の添加量が多いときは、高充填が進むにつれて、樹脂組成物粘度が高くなり成型性が低下するが、粒径を大きくすることで樹脂組成物の粘度を低下させることができる点から、粒径の大きいものが好ましい。粒径が400μmを超えると、成型体の表面性、樹脂組成物の力学的物性が低下する。
【0045】
無機充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウムは、昭和電工社製の粒径1μmの「H−42M」、粒径18μmの「H−31」、あるいはアルコア化成社製の粒径25μmの「B325」、粒径15μmの「B315」等が挙げられる。また、炭酸カルシウムでは、備北粉化社製の粒径1.8μmの「ホワイトンSB赤」、粒経8μmの「BF300」が挙げられる。
【0046】
前記の無機充填剤は、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。また、粒径の大きい無機充填剤と粒径の小さいものを組み合わせて使用することがより好ましく、組み合わせて用いることによって、熱膨張性材料の力学的性能を維持したまま、高充填化することが可能となる。
【0047】
前記の熱膨張性耐火材料では、前記の各成分に加えて、さらにリン化合物を添加することにより、膨張断熱層の形状保持性が上がり耐火性能が向上する。リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム類;下記化学式(1)で表される化合物等が挙げられる。これらのうち、耐火性の観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム類、および、下記化学式(1)で表される化合物が好ましく、性能、安全性、費用等の点においてポリリン酸アンモニウム類がより好ましい。
【0048】
【化1】
【0049】
前記の化学式(1)中、R1およびR3は、水素、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は、炭素数6〜16のアリール基を表す。R2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、又は、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
【0050】
前記の赤リンは、少量の添加で難燃効果を向上する。赤リンとしては、市販の赤リンを用いることができるが、耐湿性、混練時に自然発火しない等の安全性の点から、赤リン粒子の表面を樹脂でコーティングしたもの等が好適に用いられる。
【0051】
前記のポリリン酸アンモニウム類としては特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、取扱性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。市販品としては、例えば、クラリアント社製「AP422」、「AP462」、住友化学工業社製「スミセーフP」、チッソ社製「テラージュC80」等が挙げられる。
【0052】
前記の化学式(1)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。前記のリン化合物は、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
【0053】
熱膨張性耐火材料における、エポキシ樹脂組成物の各成分の配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対して、中和処理された熱膨張性黒鉛は10〜150重量部、および無機充填剤は30〜500重量部であり、中和処理された熱膨張性黒鉛と無機充填剤の合計量は40〜500重量部である。より好ましくは、エポキシ樹脂100重量部に対して、中和処理された熱膨張性黒鉛は30〜120重量部、および無機充填剤は50〜300重量部であり、中和処理された熱膨張性黒鉛と無機充填剤の合計量は80〜400重量部である。
【0054】
さらにリン化合物を添加させる場合、エポキシ樹脂100重量部に対して、中和処理された熱膨張性黒鉛は10〜150重量部、無機充填剤は30〜300重量部、およびリン化合物は30〜300重量部であり、中和処理された熱膨張性黒鉛と無機充填剤とリン化合物の合計量は70〜500重量部である。より好ましくは、エポキシ樹脂100重量部に対して、中和処理された熱膨張性黒鉛は30〜120重量部、無機充填剤は50〜300重量部、およびリン化合物は50〜300重量部であり、中和処理された熱膨張性黒鉛と無機充填剤とリン化合物の合計量は80〜400重量部である。
【0055】
中和処理された熱膨張性黒鉛の配合量が下限値を下回ると、十分な膨張層厚みが確保できず耐火性能が低下する。また上限値を超えると、機械的物性の低下が大きくなり、使用に耐えられなくなる。無機充填剤の配合量が下限値を下回ると、熱容量の低下に伴い十分な耐火性が得られず、上限値を超えると、機械的物性の低下が大きく使用に耐えられなくなる。
【0056】
リン化合物の配合量が下限値を下回ると、膨張層の形状保持性を向上させる効果が発揮されず、また上限値を超えると、機械的物性の低下が大きく使用に耐えられなくなる。中和処理された熱膨張性黒鉛および無機充填剤、又は中和処理された熱膨張性黒鉛、無機充填剤およびリン化合物の配合量が下限値を下回ると、熱容量の低下に伴い十分な耐火性が得られず、上限値を超えると、機械的物性の低下が大きく使用に耐えられなくなる。
【0057】
前記の不燃性材料からなるネット又はマットとしては、無機繊維若しくは金属繊維状材料からなるものが好ましく、例えば、ガラス繊維の織布(ガラスクロス、ロービングクロス、コンティニュアスストランドマット等)若しくは不織布(チョップドストランドマット等)、セラミック繊維の織布(セラミッククロス等)若しくは不織布(セラミックマット等)、炭素繊維の織布若しくは不織布、ラス又は金網から形成されるネット又はマットが好適に用いられる。これらのネット又はマットのうち、熱膨張性材料を製造する場合の容易さとコストの観点から、ガラス繊維の織布若しくは不織布が好ましく、製造時にガラスの飛散が少なくないことから、ガラスクロスがより好ましい。さらに、取扱性が向上すること、およびエポキシ樹脂との接着性がよくなることから、ガラスクロスはメラミン樹脂やアクリル樹脂等で処理されていてもよい。
【0058】
前記の不燃性材料、特に不燃性繊維状材料からなるネット又はマットは、エポキシ樹脂組成物からなるシート中に含浸されていても、表面に積層されていてもよい。不燃性繊維状材料からなるネット又はマットは、熱膨張性材料の膨張後の形状保持性を著しく向上させ、火災の際に膨張層の脱落や欠損を防止する効果を発揮する。
【0059】
不燃性繊維状材料からなるネット又はマットの1m2 当たりの重量は、5〜2000gである。1m2 当たりの重量が5g未満であると、膨張断熱層の形状保持性を向上させる効果が低下し、2000gを超えるとシートが重くなって施工が困難になる。より好ましくは、10〜1000gである。
【0060】
不燃性繊維状材料からなるネット又はマットの厚みは、0.05〜6mmが好ましい。厚みが0.05mm以下であると、熱膨張性材料が膨張する際にその膨張圧に耐えられなくなる。また、厚さが6mmを超えると、熱膨張性材料を施工する際に、切り欠きや曲げ等の変形が困難になる。より好ましくは、0.1〜4mmである。
【0061】
不燃性繊維状材料からなるネットの場合には、その開き目は0.1〜50mmであることが好ましい。開き目が0.1mm未満であると、熱膨張性材料が膨張する際にその膨張圧に耐えられなくなる。また、50mmを超えると膨張断熱層の形状保持性を向上させる効果が低くなる。より好ましくは、0.2〜30mmである。
【0062】
不燃性繊維状材料からなるネット又はマットをエポキシ樹脂組成物に含浸させる場合、ネット又はマットの位置は、熱膨張性材料の厚み方向においていずれの位置であってもよいが、膨張層の形状保持性をより高めることから、火炎に曝される表面側であることが好ましい。
【0063】
前記の熱膨張性材料の製造方法としては、エポキシ樹脂組成物の混練物を作製した後、成形する段階で不燃性繊維状材料からなるネット又はマットと一体化する方法が挙げられる。エポキシ樹脂組成物の混練物は、前記の各成分を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機等の公知の装置を用いて混練することにより得ることができる。
【0064】
また、エポキシ基をもつモノマー又は硬化剤の充填剤の混練物を、前記の方法により別々に作製しておき、プランジャーポンプ、スネークポンプ、ギアポンプ等でそれぞれの混練物を供給し、スタティックミキサー、ダイナミックミキサー等で混合を行ってもよい。この場合の成形方法としては、例えば、プレス成形、ロール成形、コーター成形等により、エポキシ樹脂混練物をシート状に成形し、あるいは、エポキシ樹脂混錬物を、不燃性繊維材料からなるネット又はマット含浸又は積層させた後、エポキシ樹脂を硬化させる方法が挙げられる。
【0065】
前記のプレス成形による方法は、例えば、加圧プレス機を用いて、金型中に不燃性繊維状材料からなるネット又はマットとエポキシ樹脂組成物を投入して、加圧して成形する方法が挙げられる。ロール成形による方法は、例えば、SMCを用いて、ロール間にエポキシ樹脂と不燃性繊維状材料からなるネット又はマットを同時に挿入し、成形する方法が挙げられる。コーター成形による方法は、例えば、ロールコーター又はブレードコーターを用いて、ロール又はブレードとロールの間隙に、エポキシ樹脂と不燃性繊維状材料からなるネット又はマットを同時に挿入し、成形する方法が挙げられる。
【0066】
エポキシ樹脂の硬化方法は、特に限定されず、前記のプレスやロールによる加熱、又は成形ライン中に加熱炉等を設置し、成形と加熱による硬化とを連続で行う方法、あるいは成形後に加熱炉に投入する方法等、公知の方法によって行うことができる。
【0067】
熱膨張性耐火材料のシート厚みは0.1〜6mmが好ましい。厚みが0.1mm未満であると、加熱によって形成される膨張断熱層の厚みが薄くなり、十分な耐火性能を発揮することができない。また、6mmを超えると熱膨張性材料の重量が大きくなり、施工性が悪くなる。より好ましくは、0.3〜4mmである。また、該不燃性繊維状材料の厚みは、前記熱膨張性耐火材料の好ましい厚み(0.1〜6mm)相当量に応じて適宜設定される。
【0068】
前記のように形成された熱膨張性材料の片面又は両面には、施工性や膨張層の強度を改善する目的で基材層が積層されていてもよい。この基材層に用いられる材料としては、例えば、布、ポリエステルやポリプロピレン等からなる不織布、紙、プラスチックフィルム、割布、ガラスクロス、アルミガラスクロス、アルミ箔、アルミ蒸着フィルム、アルミニウム箔積層紙、および、これらの材料の積層体等が挙げられる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート不織布のポリエチレンラミネートフィルム、アルミニウム箔積層紙、アルミガラスクロスである。また、この基材層の厚みは、0.25mm以下が好ましい。
【0069】
さらに、前記の不燃性繊維状材料からなるネット又はマットと、この基材層との積層体を、前記のエポキシ樹脂組成物からなるシート表面に積層してもよい。このような積層体としては、例えば、アルミガラスクロスあるいはポリフィルムとガラスクロスの積層体等が挙げられる。
以下に、実施例をあげて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0070】
(実施例1)
図2に示すように、鉄骨角柱1の外壁材2と対向する面に、熱膨張性耐火材料からなる薄板状の乾式耐火被覆材3Aを対接させ、溶接ピン5を乾式耐火被覆材3Aに貫通させて鉄骨角柱1に溶接して固定し、その後、外壁材2を取り付け、鉄骨角柱1の残りの3面は半湿式耐火被覆材4を吹き付けて被覆した。溶接ピン5は先端が尖った軸部と、軸部の後端に固定した円盤状の鍔部とを有する形状のものをスポット溶接した。半湿式耐火被覆材4は、ロックウール繊維にセメントを混入して(重量比約60%:40%)作製したものを吹き付けた。
【0071】
この鉄骨耐火被覆構造により、建築基準法に定められた耐火試験を行い、良好な結果が得られた。また、半湿式耐火被覆材4は、外壁材2を設置した後施工されるので、建物外部への粉塵の飛散を最小限に抑えることができる。さらに、コストの高い乾式耐火被覆材3Aは、鉄骨柱1の1面のみ被覆され、他の3面はコストの安い半湿式耐火被覆材4で被覆されているため、全体のコストを低減できる。乾式耐火被覆材3Aと半湿式耐火被覆材4は、密着して接合部分に隙間が生じることはない。
【0072】
(実施例2)
図3に示す実施例は、鉄骨構造材に構造物が近接し、耐火被覆に必要な空間を減少した例として、エレベーター10が上下するエレベーターシャフト11に隣接したH型鋼で形成された鉄骨梁1Aを示している。この場合、図3に示すように、鉄骨梁1Aのエレベーターシャフト面に複数の溶接ピン5を固定し、熱膨張性耐火材料からなる乾式耐火被覆材3Bを溶接ピン5にて鉄骨梁1Aに固定し、床12と外壁材2を取り付け、鉄骨梁1Aの残りの面は前記実施例と同様の半湿式耐火被覆材4で被覆した。
【0073】
この鉄骨耐火被覆構造は、乾式耐火被覆材3Bと半湿式耐火被覆材4とが密着し隙間ができないため、鉄骨梁1Aは完全に耐火被覆材で覆われる。この鉄骨耐火被覆構造により、建築基準法に定められた耐火試験を行ったところ、良好な結果が得られた。この場合も、施工時に半湿式耐火被覆材4の建物外部への粉塵の飛散を最小限に抑えることができる。
【0074】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、鉄骨構造材として鉄骨角柱、H型鋼を使用した鉄骨梁の例を示したが、他の形状でもよいことは勿論である。半湿式耐火被覆材は、現場で吹き付けるものであれば、どのようなものでもよい。
【0075】
また、鉄骨構造材は1面だけ乾式耐火被覆材で被覆する例を示したが、複数の面が外壁材や、他の構造物と面する場合は、複数の面を乾式耐火被覆材で被覆するようにしてもよい。乾式耐火被覆材を固定する溶接ピンは、先端が円盤状に形成された例を示したが、乾式耐火被覆材を固定できれば、どのような形状でもよい。乾式耐火被覆材は、これまでに記述したように施工の困難な部位、隙間が狭小な部分だけに使用することに限る必要はなく、施工性を向上させるために乾式耐火被覆材を半湿式耐火被覆材で施工が困難な部位以外の他の部位まで巻き込み、巻き込んだ部分で鉄骨構造材に固定することもできる。
【0076】
【発明の効果】
以上の説明から理解できるように、本発明の耐火被覆構造は、乾式工法と半湿式工法を使い分け、半湿式耐火被覆材料を外壁材の設置後に被覆することにより、建物外部環境への粉塵の発生を最小限に抑えることができ、狭小空間であっても施工が容易にできるため、性能品質の確保が容易になり、被覆全てを乾式工法単一で施工する場合と比べて施工コストを安価にできる。さらに、事前に設計段階で建築計画に組み込むことにより、隙間狭小部位や空間確保要求部位などへの対応力が向上する。また、耐火性能を維持したままで鉄骨構造材と外壁材とを接近できるため、室内空間を有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る鉄骨耐火被覆構造の一実施形態を示す要部の水平断面図。
【図2】本発明に係る鉄骨耐火被覆構造の他の実施形態を示す要部の水平断面図。
【図3】本発明に係るエレベーターシャフト部における鉄骨梁部分の耐火被覆構造を示す要部の垂直断面図。
【図4】従来の乾式耐火被覆材(ボード状材料)で被覆した鉄骨柱の水平断面図。
【図5】従来の乾式耐火被覆材(フェルト状材料)で被覆した鉄骨柱の水平断面図。
【図6】従来の半湿式耐火被覆材で被覆した鉄骨柱の水平断面図。
【図7】従来のエレベーターシャフト部における鉄骨梁を半湿式耐火被覆材で被覆した垂直断面図。
【符号の説明】
1 鉄骨角柱(鉄骨構造材)、
1A 鉄骨梁(鉄骨構造材)、 2 外壁材、
3,3A 乾式耐火被覆材、
3B 熱膨張性耐火材料(乾式耐火被覆材)、
4 半湿式耐火被覆材、
10 エレベーター(構造物)
Claims (4)
- 鉄骨構造材を耐火被覆材で被覆する構造であって、前記鉄骨構造材を乾式耐火被覆材と、半湿式耐火被覆材とを用いて被覆することを特徴とする鉄骨耐火被覆構造。
- 前記鉄骨構造材は、外壁材や構造物に近接する面を前記乾式耐火被覆材で被覆し、その他の面を前記半湿式耐火被覆材で被覆することを特徴とする請求項1に記載の鉄骨耐火被覆構造。
- 前記乾式耐火被覆材は、熱膨張性耐火材料からなることを特徴とする請求項1又は2記載の鉄骨耐火被覆構造。
- 鉄骨構造材を建て、該鉄骨構造材の外壁材に近接する面を乾式耐火被覆材で被覆し、該乾式耐火被覆材の外側に外壁材を取り付け、前記鉄骨構造材の乾式耐火被覆材の被覆していない面を半湿式耐火被覆材で被覆することを特徴とする鉄骨耐火被覆の施工方法。
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JP2003011348A Withdrawn JP2004225271A (ja) | 2003-01-20 | 2003-01-20 | 鉄骨耐火被覆構造および鉄骨耐火被覆の施工方法 |
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Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2007195365A (ja) * | 2006-01-20 | 2007-08-02 | Inaba Denki Sangyo Co Ltd | 防火区画用充填材 |
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JP2008208625A (ja) * | 2007-02-27 | 2008-09-11 | Sekisui Chem Co Ltd | 耐火被覆構造 |
JP2013053515A (ja) * | 2012-10-12 | 2013-03-21 | Ohbayashi Corp | アスベスト除去方法 |
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CN104392139A (zh) * | 2014-11-30 | 2015-03-04 | 西安科技大学 | 基于火灾热释放速率测量的钢结构防火保护设计方法 |
-
2003
- 2003-01-20 JP JP2003011348A patent/JP2004225271A/ja not_active Withdrawn
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CN104392139B (zh) * | 2014-11-30 | 2017-04-12 | 西安科技大学 | 基于火灾热释放速率测量的钢结构防火保护设计方法 |
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