JP2004225227A - ポリエステル複合嵩高加工糸 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フィラメント表面に長手方向に延びる10本以上の溝形成能を有し、複屈折率(Δn)が0.05〜0.12で、かつトルクが80T/M以上である、実質的に非捲縮のポリエステル糸Aと、熱水収縮率が7%以下で、かつ熱水処理後の捲縮率が40%以上となるカチオン染料可染性潜在捲縮性ポリエステル糸Bからなる実質的にループのない複合加工糸である。また、前記ポリエステル糸Aよりポリエステル糸Bの熱水収縮率が大きく、かつポリエステル糸Bとポリエステル糸Aの熱水収縮率差が5%以下である。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、製編織して染色することにより、ハリ、コシ、ふくらみ、ソフト感とナチュラルシルキー感及びストレッチ性を表現できるとともに、単一色で染色した場合には濃染性に優れ、染め分けることにより繊細な杢表現が可能となるポリエステル複合嵩高加工糸に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
昨今の高級指向とニーズの多様化に伴い、衣料分野では、その風合いと表面感において、従来以上のもの、あるいは従来にないものが要望されている。中でも特にフォーマルウェア等の分野では、ハリ、コシ、ふくらみのある風合いに加え、濃染効果、品位に優れた素材が必要とされている。
【0003】
この状況下で、糸条表面に凹凸形状もしくは微細孔を有するフィラメントで構成された、複屈折率が70×10−3〜120×10−3で、伸度が20〜50%、捲縮率が20%以下の濃染性特殊加工糸が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、この加工糸は通常の加工糸よりも濃染効果を有するものの、この加工糸を単独で用いるため、織編物はふくらみ感に欠け、高級シルキー感を表現することが困難であった。また、伸度を50%以下にするため延伸し、かつ濃染効果も付与するという、相反する特性を得るために、非常に厳密な配向制御を行わなければならないという問題があった。
【0004】
次に、単糸繊度3デニール以上、沸水処理後の捲縮率が50%以上のポリエステル潜在捲縮糸を芯糸に、複屈折率が70×10−3〜120×10−3、熱水収縮率が5%以下でアルカリ処理により糸条表面に凹凸形状もしくは微細孔を形成するポリエステル捲縮糸を鞘糸とした混繊交絡糸であり、表面にループ、たるみを有する、黒染色後のL値が12以下となるシルキー調特殊加工糸が提案されている(特許文献2参照)。この加工糸は、芯糸の捲縮により張り、腰、捲縮性を有するが、芯糸の染色性が低いため、鞘糸との染色色差、いわゆるイラツキを生じ、品位が低下する。また、芯糸の熱水収縮率が大きいため、ふくらみ感よりふかつき感が強調されるとともに、芯のある硬い風合いとなる。さらに、ループを有するためにシルキー感が薄れてしまうという問題もあった。
【0005】
一方、本出願人は、フィラメント表面に長手方向に延びる10本以上の溝、もしくは溝形成能を有し、かつトルクが80T/M以上の実質的に非捲縮のポリエステルマルチフィラメントと、非捲縮のポリエステルマルチフィラメントからなる実質的にループのないポリエステル複合嵩高加工糸を提案した(特許文献3参照)。この加工糸は、芯糸に濃染性に優れた高収縮性、高応力糸を用いることにより、ふくらみ感、ナチュラルシルキー感を表現するとともに、濃染性に優れ、イラツキのない織編物が得られる反面、芯糸に捲縮がないため製品での快適性に乏しく、また高収縮性糸が収縮することにより糸自体が伸びやすくなり、製品でのいわゆるアタリが発生してしまう問題があった。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−100366号公報(請求項1、(0010))
【特許文献2】
特開平11−158742号公報(請求項1、(0006))
【特許文献3】
特願2001−400289号(請求項1、(0007))
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した従来の問題を解決し、製編織して染色することにより、ハリ、コシ、ふくらみ、ソフト感とナチュラルシルキー感及びストレッチ性を表現できるとともに、単一色で染色した場合には、イラツキがなく高品位で、濃染性に優れる織編物が得られ、一方、染め分けた場合には、繊細な杢表現が可能となるポリエステル複合嵩高加工糸を提供することを技術的な課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、フィラメント表面に長手方向に延びる10本以上の溝を有し、低配向度で、かつトルクが大きく、実質的に非捲縮のポリエステルマルチフィラメントと、低熱水収縮率、高捲縮率のカチオン染料可染性潜在捲縮性ポリエステルマルチフィラメントを実質的にループのない複合加工糸とし、その熱水収縮率差を小さくすることにより、染色加工後の布帛に優れた濃染効果と高級シルク調の風合い、ふくらみ感及びストレッチ性を付与することができることを知見して本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、フィラメント表面に長手方向に延びる10本以上の溝、もしくは溝形成能を有し、複屈折率(Δn)が0.05〜0.12で、かつトルクが80T/M以上である、実質的に非捲縮のポリエステルマルチフィラメントAと、熱水収縮率が7%以下で、かつ熱水処理後の捲縮率が40%以上となるカチオン染料可染性潜在捲縮性ポリエステルマルチフィラメントBからなる実質的にループのない複合加工糸であって、前記ポリエステルマルチフィラメントAよりポリエステルマルチフィラメントBの熱水収縮率が大きく、かつポリエステルマルチフィラメントBとポリエステルマルチフィラメントAとの熱水収縮率差が5%以下であることを特徴とするポリエステル複合嵩高加工糸を要旨とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリエステル複合嵩高加工糸は糸条Aと糸条Bで構成されている。まず、糸条Aは、フィラメント表面に長手方向に延びる10本以上の溝を有するか、もしくは上記の溝形成能を有し、複屈折率(Δn)が0.05〜0.12の低配向度であることが必要である。溝の数は多い方が好ましく、15本以上であればより好ましい。さらに溝の配列分布やその形状は特に限定されるものではなく、例えば、図1に示すフィラメント断面のように、表面に凸部と凹部(溝)がほぼ一様に分布しているもの等が好ましく用いられる。溝形成能を有するとは、アルカリなど溶剤で処理することによりμm単位の微小な凹凸が形成されるものをいう。溝形成能を付与する方法としては、溶解性の異なるポリマーを複合紡糸法で紡糸し、易溶性成分を除去する方法が挙げられるが、この限りではない。
【0011】
このような溝をフィラメント表面に有することにより、織編物にした場合にドライタッチのシルキー感を表現できるとともに、繊維表面に光が照射された場合、その表面形状によって光が乱反射を繰り返し、繊維内部に吸収されて外部への反射光が少なくなるため濃染性を表現することができる。また、10本以上の溝が長手方向に延びていることにより、フィラメント表面の空隙とフィラメント同士の空隙が多数形成されるため、毛細管現象による吸水拡散性能、及び空気層による保温性に優れるものとなり、織編物の快適性が向上する。長手方向に延びる溝が10本未満の場合、光が乱反射、吸収する割合が減少するため、深みのある色を表現できないとともに、フィラメント表面の空隙とフィラメント同士の空隙が少ないため、前記織編物の快適性が得られない。
【0012】
また、糸条Aの複屈折率(Δn)は0.05〜0.12、好ましくは0.07〜0.11の低配向度であり、配向の進行が極力抑えられていることから、染料の吸尽率が高く、染色性が向上するため、織編物に深みのある色を表現することが可能となる。特に本発明では、複屈折率(Δn)が0.02〜0.08の高配向未延伸糸(POY)に後に述べる流体による低張力での旋回加工を施すことにより、濃染効果が向上するものである。この理由は明らかになっていないが、本発明者らは、何らかの作用により非晶部分が大きく緩むことでその密度が疎になり、染料分子が入り込み易い状態になるためと考えている。複屈折率(Δn)が0.05未満の場合、濃染効果は有するものの、過度に低配向であるため、物性の経日変化や品質のバラツキが生じる。また、複屈折率(Δn)が0.12を超えると、繊維内部構造が変化して配向度が高くなりすぎるため、染料が繊維内部に入り難くなり濃染効果が得られない。
【0013】
さらに、本発明においては実質的に非捲縮の糸条Aのトルクが80T/M以上であることが必要である。ここで実質的に非捲縮であるとは、捲縮を全く有していないか、ほとんど有していないことをいう。具体的には、JIS L−1013−8.11伸縮性A法に従って測定したときの伸縮伸長率が10%以下であることをいう。糸条Aが実質的に非捲縮であることにより、糸条Aが織物表面に浮きやすくなり、適度なふくらみ感が表現できるとともに、捲縮によるガサツキもなく、高級シルク感を表現できる。糸条Aが実質的に非捲縮でない場合、捲縮によって見かけ上の糸長が縮まるため、実質的に織物表面に浮き出る度合いが小さくなり、ふくらみ感が得られず、また捲縮によるガサツキが生じるため好ましくない。
【0014】
また、トルクが80T/M以上であることにより、織編物表面で糸条Aの捩れの力が強く作用し、その度合いもフィラメント間で均一でないため、熱水処理を受けた場合に糸条Aの各フィラメントがばらつきながら収縮し、不均一に配置されることにより、ナチュラルな外観、風合いを表現できる。さらに、光の乱反射が助長され、上記濃染効果をより一層高めることが可能となる。トルクが80T/M未満の場合、フィラメントの捩れの力が弱いため、熱水処理を受けても各フィラメントのばらつき度合いが小さく、ほぼ均一な配置になるため、人工的な外観、風合いになってしまう。ただし、トルクが過度に多い場合、糸条Bと複合した場合に、複合糸全体のトルクが大きくなってしまい工程通過性が悪くなる傾向があるため、複合糸としてのトルクは120T/M以下が好ましく、糸条A単独では200T/M以下が好ましい。
【0015】
糸条Aとともに本発明のポリエステル複合嵩高加工糸を構成する糸条Bは、熱水収縮率が7%以下、好ましくは5%以下で、かつ熱水処理後の捲縮率が40%以上、好ましくは50%以上となるカチオン染料可染性潜在捲縮性ポリエステルマルチフィラメントであることが必要である。潜在捲縮性ポリエステルマルチフィラメントは、重合体X、Yがサイドバイサイド型、あるいは偏芯型等に接合されたものであって、熱処理により捲縮を顕在化するものであればよいが、捲縮率を有効に発揮できる点で、サイドバイサイド型複合マルチフィラメントが好ましい。熱水収縮率が7%を超えると、収縮しすぎるため、染色工程等の熱処理により織編物が硬くなってしまい好ましくない。
【0016】
糸条Bを構成する重合体X、Yはカチオン染料可染性であることが必要であり、ポリエチレンテレフタレート(PET)を主成分とする共重合ポリエステル、例えば、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであり、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を全酸成分に対して0.5〜5.0モル%、好ましくは0.8〜3.5モル%共重合したポリエステル等が好ましく用いられる。また、紡糸性、コスト面から、ポリエステル重合体X、Yは相対粘度の差により捲縮発現性を有することが好ましい。さらに、重合体X、Yには、本質的な特性を損なわない範囲内で、艶消し剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、難粘剤、抗菌剤、導電性付与剤等、他の成分を少量含有してもよい。糸条Bがこのような熱水収縮率の低いカチオン染料可染性潜在捲縮性ポリエステルマルチフィラメントで構成されていることにより、染色加工等の熱処理により捲縮が顕在化し、織編物全体が収縮しすぎないため織編物の風合いが硬くならず、ソフト感が得られるとともに、織編物にハリ、コシ、ふくらみ感、ストレッチ性を付与することができる。
【0017】
さらに、糸条Bがカチオン染料可染性であることから、分散染料で染色した場合にも、カチオン染料不染性である通常のPETに比べ、濃染性が得られるので、糸条Aとの染色性に差が起こり難く、染色色差、いわゆるイラツキが生じないため、品位の低下を招くこともない。分散染料で染色した場合に、共重合ポリエステルが通常のPETに比べ濃染性を呈する要因として発明者らは、その分子構造において、官能基が付加されていることにより分子配列が乱れ、染料が分散しやすくなることや、分子構造がルーズになることによりガラス転移点が下がり、比較的低温での分子運動が活発になるため、早い段階での染料の吸着が起こり、結果的に染料の吸着量が多くなるためではないかと推定している。
【0018】
さらに本発明では、糸条Aより糸条Bの熱水収縮率が大きく、かつ糸条Aと糸条Bの熱水収縮率差が5%以下、特に3%以下であることが好ましい。熱水収縮率差が上記の範囲内にあることで、前記糸条Bの捲縮が顕在化することにより、フィラメント表面に長手方向に延びる10本以上の溝を有する糸条Aが織編物表面に効果的に現れ、また、そのトルクにより糸条Aの各フィラメントがばらつきながら収縮し、不均一に配置されることにより、従来にないシルキー感、ナチュラルな風合いを表現できる。
【0019】
また、染め分けた場合には、糸条Aと糸条Bの熱水収縮率差が前記範囲の如く小さく、糸条Bが捲縮を有するため、糸条Bが適度に織編物の表面に現れ、従来のような粗い杢や、こなれすぎた細かい杢とは異なり、ナチュラルで繊細な杢表現が可能となる。熱水収縮率差が0%未満、すなわち糸条Aより糸条Bの熱水収縮率が小さい場合、糸条Aが織編物表面に配され難くなり、前記風合い面での効果が得られない。一方熱水収縮率差が5%を超える場合、糸条Aが織編物表面に出過ぎるため、ふかつき感が生じるとともに、ピリングやスナッギングにも弱くなってしまうため好ましくない。
【0020】
さらに、本発明のポリエステル複合嵩高加工糸は、実質的にループのない複合加工糸であるため、ナチュラルシルキー調の風合いを損なうことがない。
本発明のポリエステル複合嵩高加工糸は、A、B間に糸長差があってもよいが、糸長差は少ない方が、得られる織編物に前述の効果を付与しやすく、また工程通過性が良好となるため好ましい。
【0021】
次に、本発明のポリエステル複合嵩高加工糸の製法例について図面を用いて説明する。
図2は、本発明のポリエステル複合嵩高加工糸の一製法例を示す概略工程図である。図1において供給糸1は、スプール2から引き出され、ガイド3を通り、フィードローラー4、ヒーター5、デリベリローラー7の間で加工が施されるが、このとき複屈折率(Δn)が0.05〜0.12で、トルクを80T/M以上有し、実質的に非捲縮である糸条Aを形成する目的で、流体旋回ノズル6により、低張力で旋回加工を施す方法が好ましく用いられる。この流体旋回ノズルは、流体、好ましくは圧縮空気により、糸条に旋回を施すことができるものであれば何でもよいが、得られる糸条の特性、コスト面から、低流量で高い旋回力を有するものが好ましく用いられる。
【0022】
一方、供給糸11は、スプール12から引き出され、ガイド13を通り、POYの場合であれば、フィードローラー14、ヒーター15、デリベリローラー17の間で延伸加工が施され、デリベリローラー7に供給された後、流体処理ノズル8に糸条Aとともに供給される。その後、糸条Aと糸条Bは、デリベリローラー7と第2デリベリローラー9の間で流体処理ノズル8により混繊されて本発明のポリエステル複合嵩高加工糸となり、パッケージ10に巻き取られる。流体処理ノズルとしてはインターレースタイプ、タスランタイプ等いずれを用いてもよく、実質的にループが発現しないように加工条件を適宜選択すればよいが、具体的にはエアー圧力を低く設定し、糸条Aと糸条Bの供給量を少なくする方がループが発現し難くなるため、好ましく用いられる。
【0023】
また、交絡数は特に限定されるものではないが、製織性等の面から50個/m以上、150個/m以下が好ましく、70個/m以上、120個/m以下がより好ましい。
なお、供給糸11に延伸糸を用いる場合には、もちろん上記延伸加工を行う必要はない。
【0024】
【作用】
本発明のポリエステル複合嵩高加工糸は、糸条Aの表面に長手方向に延びる10本以上の溝、もしくは溝形成能を有することにより、溝形成後の織編物に独特のシルキー感と光の乱反射による濃染性を表現できるとともに、空隙が多数形成されるため、吸水拡散性能、および保温性に優れるものとなる。また、糸条Aの複屈折率(Δn)が0.05〜0.12の低配向度であり、配向の進行が極力抑えられていることから、染料の吸尽率が高く、織編物の染色性が向上する。さらに、実質的に非捲縮の糸条Aのトルクが80T/M以上であるとともに、糸条Aと糸条Bの熱水収縮率差が5%以下であることで、フィラメント間で均一でない捩れの力が作用し、熱水処理を受けた場合にフィラメントが不均一に配置され、ナチュラルな外観、風合いを表現できるとともに、光の乱反射が助長され、上記濃染効果をより一層高めることができる。
【0025】
また、糸条Bが熱水収縮率の低いカチオン染料可染性潜在捲縮性ポリエステルマルチフィラメントで構成されていることにより、織編物の風合いが硬くならず、染色加工等の熱処理により捲縮が顕在化し、ファブリックにハリ、コシ、ふくらみ感、ストレッチ性、ソフト感を付与することができるとともに、分散染料で染色した場合にも濃染性が得られることから、糸条Aとの染色性に差が起こり難く、染色色差、いわゆるイラツキが生じないため、品位の低下を招くこともない。
【0026】
さらに、分散染料とカチオン染料で染め分けた場合には、糸条Bが適度に織編物の表面に現れ、従来のような粗い杢や、こなれすぎた細かい杢とは異なり、ナチュラルで繊細な杢表現が可能となる。
加えて、本発明のポリエステル複合嵩高加工糸は、実質的にループのない複合加工糸であるため、ナチュラルシルキー調の風合いを損なうことがない。
【0027】
なお、本発明における物性値は、次の方法で測定するものである。
(1)複屈折率(Δn)
偏光顕微鏡とコンペンセーターの組合せによる干渉縞計測法で測定する。
(2)トルク
試料をU字状に吊り下げて、その両上端にそれぞれの1/34(cN/dtex)(1/30(g/d))の荷重を掛けて固定した後、U字状をした試料の下端に1/340(cN/dtex)(1/300(g/d))の荷重を掛け、試料が旋回を停止した時の1m当たりの撚数で表示する。
(3)熱水収縮率
JIS−L−1013に準拠して測定する。
(4)捲縮率
検尺機で5回綛取りした糸条を二重にして、1/6803(cN/dtex)(1/6000(g/d))の荷重下でスタンドに吊り、30分間放置した後、この状態を維持したまま沸騰水中に入れ、30分間放置する。その後、30分間風乾して、1/567(cN/dtex)(1/500(g/d))の荷重を掛けて長さ(a)を測定する。次に、荷重を外し、1/23(cN/dtex)(1/20(g/d))の荷重を掛けてその長さ(b)を測定する。そして、次式より捲縮率を求める。
捲縮率(%)={(b−a)/b}×100
(5)染色した布帛のL*値
まず、糸条を筒編地に編成し、次いで、下記の染色処方で染色を行う。
<染色処方>
・精 練
精 練 剤:サンモールFL(日華化学社製) 2g/リットル
温度×時間:80℃×20分
・溶 出
苛性ソーダ:10g/リットル
温度×時間:98℃×30分
浴 比:1:50
・染 色
分散染料 :ダイアニックスブラックHG−FS 15%o.w.f.
(三菱化成ヘキスト社製)
助 剤 :ニッカサンソルトSN−130 0.5g/リットル
(日華化学社製)
酢 酸 0.2ml/リットル
温度×時間:135℃×30分
浴 比 :1:50
・還元洗浄
還元洗浄剤:ビスノールP−70 5g/リットル
(一方社油脂工業社製)
温度×時間:80℃×20分
上記の染色処方で染色した筒編地を、マクベス社製MS−2020型分光光度計でその反射率を測定し、CIE Labの色差式から濃度指標を求めた値がL*値であり、その値が小さいほど深みのある色となる。
【0028】
【実施例】
次に、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。
実施例1
アルカリに対する難溶出成分として極限粘度ηが0.53のPET、易溶出成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸を2.5モル%と平均分子量7000のポリエチレングリコール12質量%を共重合したPETを用い、フィラメントの断面形状がアルカリで易溶出成分を溶出後に図1の様な断面となるように高速複合紡糸して得られた、84dtex24fのPET系高配向未延伸糸を供給糸1とし、重合体Xとして、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を1.0モル%共重合した極限粘度ηaが0.50のPETを、重合体Yとして、イソフタル酸12モル%と5−ナトリウムスルホイソフタル酸を1.5モル%共重合した極限粘度ηbが0.60のPETを用い、複合比1:1でサイドバイサイド型に複合紡糸(紡糸速度3200m/分)したサイドバイサイド型複合マルチフィラメントの高配向未延伸糸100dtex12fを供給糸11として、図2に示す工程に従い、表1に示す条件にて加工を行って、140dtex36fの本発明のポリエステル複合嵩高加工糸を得た。
【0029】
このときの糸条Aは実質的に非捲縮で、複屈折率(Δn)は0.09、トルクは98T/mであり、熱水収縮率は2.3%であった。一方、糸条Bの熱水収縮率は3.6%であり、熱水収縮率差は1.3%であった。また、糸条Bの捲縮率は58.9%であった。
【0030】
得られた複合加工糸を筒編地に編成し、精練、溶出処理を行った。次いで、黒色染料で染色し、L*を測定したところ9.1であった。また、編地表面は、イラツキがなく、高品位を呈していた。さらに風合いは、ハリ、コシ、ストレッチ性を有するとともに、ふくらみ感、ソフト感、ナチュラルでドライなシルキータッチを併せ持つ従来にない高級感を呈するものであった。
【0031】
また、上記で得られた複合加工糸を同様に筒編地に編成し、精練、溶出処理を行い、下記染色処方にて染色したところ、糸条Bが適度に織編物の表面に現れ、従来の杢とは異なる、ナチュラルで繊細な杢が表現されていた。
・染 色
分散染料 :ダイアニックスブルーUN−SE 1%o.w.f.
(ダイスタージャバン社製)
カチオン染料:アイゼンカチロンブルーBRLH 3%o.w.f.
(保土谷化学工業社製)
助 剤 :ユニソルトFM 2%o.w.f.
(明成化学社製)
酢 酸 0.2ml/リットル
温度×時間:130℃×30分
浴 比 :1:50
【0032】
比較例1
重合体Xとして、極限粘度ηaが0.53のPETを、重合体Yとして、イソフタル酸8モル%と2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン5モル%を共重合した極限粘度ηbが0.63のPETを用い、複合比1:1でサイドバイサイド型に複合紡糸(紡糸速度3200m/分)したサイドバイサイド型複合マルチフィラメントの高配向未延伸糸100dtex12fを供給糸11とする以外は、実施例1と同様にして、140dtex36fの比較用の加工糸を得た。
このときの糸条Aは実質的に非捲縮で、複屈折率(Δn)は0.09、トルクは98T/mであり、熱水収縮率は2.3%であった。一方、糸条Bの熱水収縮率は3.5%であり、熱水収縮率差は1.2%であった。また、糸条Bの捲縮率は52.6%であった。
【0033】
得られた複合加工糸を実施例1と同様、筒編、精練、溶出処理、染色したところ、L*値は10.3であった。この編地の風合いは、実施例1に比べやや劣るものの、ハリ、コシ、ストレッチ性、ふくらみ感、ソフト感、ナチュラルでドライなシルキータッチを併せ持っていた。しかしながら、編地表面は、糸条Aと糸条Bの染色性の差によるイラツキが顕著であり、著しく品位を損なうものであった。
【0034】
比較例2
イソフタル酸成分を10モル%共重合した56dtex12fのPET系高配向未延伸糸を供給糸11とする以外は、実施例1と同様にして、120dtex36fの比較用の加工糸を得た。このときの糸条Aは実質的に非捲縮で、複屈折率(Δn)は0.09、トルクは98T/mであり、熱水収縮率は2.3%であった。一方、糸条Bも非捲縮であり、その熱水収縮率は12.8%であり、熱水収縮率差は10.5%であった。
【0035】
得られた複合加工糸を実施例1と同様、筒編、精練、溶出処理、染色したところ、L*値は9.1であった。この編地表面はイラツキがなく、品位は良好であったが、風合いは、ドライなシルキータッチを有するものの、ストレッチ性、ソフト感がなく、ふかつき感があった。また、ストレッチ性を確認するため、少し引っ張ったところ、編地が伸びて完全に戻らなかった。
【0036】
比較例3
図2に示す工程において、流体旋回ノズルの代わりにフリクションディスクを用いて表1に示す条件にて延伸同時仮撚加工を行う以外は実施例1と同様にし、110dtex36fの比較用の加工糸を得た。このときの糸条Aは捲縮を有し、トルクは56T/mであり、熱水収縮率は6.2%であった。一方、糸条Bの熱水収縮率は3.6%であり、熱水収縮率差は−2.6%であった。また、糸条Bの捲縮率は58.9%であった。
【0037】
得られた複合加工糸を実施例1と同様、筒編、精練、溶出処理、染色したところ、L*値は11.0であった。この編地の風合いは、糸条Bが芯側に、糸条Aが鞘側に配されていることから、ストレッチ性、ふくらみ感を有してはいたものの、仮撚の捲縮によりガサツキが感じられ、ソフト感にも劣っていた。また、糸条Aのフィラメントが比較的揃っていたためナチュラル感もなく、人工的であった。さらに、編地表面は、糸条Aと糸条Bの染色性の差によるイラツキが顕著であり、著しく品位を損なうものであった。
【0038】
【表1】
【0039】
【発明の効果】
本発明のポリエステル複合嵩高加工糸を用いて製編織すれば、ハリ、コシ、ふくらみ感、ストレッチ性、ソフト感とともに、ナチュラルなシルキー感、濃染性、イラツキのない高級感のある織編物を得ることができる。また、分散染料とカチオン染料で染め分ければ、従来の杢とは異なり、ナチュラルで繊細な杢表現が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリエステル複合嵩高加工糸を構成する糸条Aのフィラメント断面の一例である。
【図2】本発明のポリエステル複合嵩高加工糸の製法例を示す概略工程図である。
【符号の説明】
1、11 供給糸
2、12 スプール
3、13 ガイド
4、14 フィードローラー
5、15 ヒーター
6 流体旋回ノズル
7、17 デリベリローラー
8 流体処理ノズル
9 第2デリベリローラー
10 パッケージ
Claims (2)
- フィラメント表面に長手方向に延びる10本以上の溝、もしくは溝形成能を有し、複屈折率(Δn)が0.05〜0.12で、かつトルクが80T/M以上である、実質的に非捲縮のポリエステルマルチフィラメントAと、熱水収縮率が7%以下で、かつ熱水処理後の捲縮率が40%以上となるカチオン染料可染性潜在捲縮性ポリエステルマルチフィラメントBからなる実質的にループのない複合加工糸であって、前記ポリエステルマルチフィラメントAよりポリエステルマルチフィラメントBの熱水収縮率が大きく、かつポリエステルマルチフィラメントBとポリエステルマルチフィラメントAとの熱水収縮率差が5%以下であることを特徴とするポリエステル複合嵩高加工糸。
- 請求項1記載のポリエステル複合嵩高加工糸を少なくともその一部に使用した織編物。
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-
2003
- 2003-01-27 JP JP2003017463A patent/JP2004225227A/ja active Pending
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