JP2004224083A - 作業車両 - Google Patents

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Abstract

【課題】フレーム構造の運転室を具備して成る作業車両を対象とし、運転室のROPS性能を大幅に向上させることの可能な作業車の提供。
【解決手段】作業車両は、左前方ピラー11、左後方ピラー12、右前方ピラー21、および右後方ピラー22の内の1つのピラーを、上方から観て他の3つのピラーの上端を頂点とする直角四辺形の頂点のうち上記3つのピラーの上端が位置しない頂点に対して、上端を前方または後方にシフトさせた態様で設置するとともに、左フレーム10および右フレーム20の内、より短い前後ビームを有する一方のフレームのピラーであって、左右方向から観て他方のフレームのピラーと重複しないピラーの上端を、左右方向に延びる左右ビームを介して他方のフレームの前後ビームと連結したことを特徴としている。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、運転室を備えた作業車両に関するものであり、詳しくは上記運転室のフレーム構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、建設機械や農業機械等の作業車両においては、オペレータ(運転者)を搭乗させるための運転室を備えたものがあり、上記運転室は、通常、異形鋼管等のパイプ材から組み立てられたフレームに、外装パネルを取り付けることによって構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図9は、作業車両の一例としての従来の油圧ショベルを示しており、この油圧ショベルAは、クローラ形式の走行機構を有する下部走行体Bと、該下部走行体Bに搭載支持された上部旋回体Cとを備え、この上部旋回体CにはブームDa、アームDb、バケットDcを有する作業機Dと、走行・作業機兼用の運転室Eとが設置されている。
【0004】
図10〜図12に示す如く、上記運転室Eは、左前方ピラーLaの上部と左後方ピラーLbの上部とを左前後ビームLcで連結した左フレームLと、右前方ピラーRaの上部と右後方ピラーRbの上部とを前後ビームRcで連結した右フレームRとを、それぞれベースの左右に固設するとともに、上記左フレームLの上部と右フレームRの上部とを、左右方向に延びる前方左右ビームHと後方左右ビームIとで連結することによって構成されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−198468号公報
【発明が解決しようとする課題】
ところで、昨今の建設車両における運転室には、転倒した際に運転員を保護し得る構造が採用されつつあり、JIS(日本工業規格)等に準拠した試験によるROPS( Roll Over Protective Structure:転倒時保護構造 )性能が重要視されている。
【0006】
ここで、上述した従来の油圧ショベルAにおける運転室Eは、左フレームLと右フレームRとが左右対称の同一形状を呈しており、前方左右ビームHが左前方ピラーLaおよび右前方ピラーRaの上部同士を連結しているとともに、後方左右ビームIが左後方ピラーLbおよび右後方ピラーRbの上部同士を連結している。
【0007】
このため、例えば運転室Eにおける左フレームLの後方上部に、図12中の矢印Fで示す如く横方向から大きな外力が加わった場合、その外力は後方左右ビームIを介して右フレームRの後方上部に伝達されることとなる。
【0008】
すなわち、左フレームLの後方上部に加わった外力は、右フレームRを構成する右後方ピラーRbの上端に集中して作用することとなり、該右後方ピラーRbが大きく変形することによって、運転室Eのフレーム構造全体が歪んでしまうため、運転室EのROPS性能が必ずしも十分とは言えなかった。
【0009】
本発明は上記実状に鑑みて、運転室のROPS性能を大幅に向上させることの可能な作業車両の提供を目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段および効果】
上記目的を達成するべく、請求項1に関わる作業車両は、左前方ピラーの上部と左後方ピラーの上部とを前後ビームで連結した左フレームと、右前方ピラーの上部と右後方ピラーの上部とを前後ビームで連結した右フレームとを有し、左フレームの上部と右フレームの上部とを左右方向に延びる左右ビームで連結したフレーム構造の運転室を具備して成る作業車両を対象とし、左前方ピラー、左後方ピラー、右前方ピラー、および右後方ピラーの内の1つのピラーを、上方から観て他の3つのピラーの上端を頂点とする直角四辺形の頂点のうち上記3つのピラーの上端が位置しない頂点に対して、上端を前方または後方にシフトさせた態様で設置するとともに、左フレームおよび右フレームの内、より短い前後ビームを有する一方のフレームのピラーであって、左右方向から観て他方のフレームのピラーと重複しないピラーの上端を、左右方向に延びる左右ビームを介して他方のフレームの前後ビームと連結したことを特徴としている。
【0011】
上記構成によれば、左右ビームを介して他方のフレームの前後ビームと連結されたピラーの上端に、作業車両が横転する等の要因によって横方向からの外力が加わった場合、上記外力は上記左右ビームを介して他方のフレームの前後ビームに作用することとなる。
【0012】
ここで、上記前後ビームは前方ピラーと後方ピラーとに接続されているため、上記前後ビームに作用した外力は、該前後ビームと前方ピラーおよび後方ピラーとに分散し、もって上記前後ビームと前方ピラーと後方ピラーとの多数の要素により受け止められることとなる。
【0013】
この結果、左右ビームを介して他方のフレームの前後ビームと連結されたピラーの上端に横方向からの外力が作用した場合でも、運転室におけるフレーム構造の変形が可及的に抑えられることとなり、もって本発明に関わる作業車両によれば運転室のROPS性能を大幅に向上させることが可能となる。
【0014】
また、請求項2の発明に関わる作業車両は、請求項1の発明に関わる作業車両において、左フレームおよび右フレームの内、より短い前後ビームを有する一方のフレームにおける前後の各ピラーの上端と、より長い前後ビームを有する他方のフレームにおける前後ビームとを、該前後ビームに対して直角に延びる前方左右ビームおよび後方左右ビームを介して連結したことを特徴としている。
【0015】
上記構成によれば、左フレームと右フレームとを、前方左右ビームおよび後方左右ビームを介して連結したことで、運転室におけるフレーム構造の強度が更に向上することとなり、もって本発明に関わる作業車両によれば、運転室におけるROPS性能を大幅に向上させることが可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、実施例を示す図面に基づいて、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明を作業車両の一態様である建設車両、具体的には油圧ショベルに適用した一実施例を示しており、この油圧ショベル(作業車両)1は、クローラ形式の走行機構を有する下部走行体2と、該下部走行体2に搭載支持された上部旋回体3とを具備している。
【0017】
上記上部旋回体3には、ブームやバケット等を備えた作業機4が設置されているとともに、走行・作業機兼用の運転室5が設けられている。
【0018】
図2、図3および図4に示す如く、上記運転室5は異形鋼管等の各種パイプ材を籠状に組付けてフレーム構造とした所謂パイプキャブであって、底部を構成するベース5Aと、該ベース5Aの左右に固定された左フレーム10および右フレーム20と、これら左フレーム10および右フレーム20の上部を連結する前方左右ビーム31および後方左右ビーム32とを有している。
【0019】
上記左フレーム10は、ベース5Aの左前方隅部に立設された左前方ピラー11と、ベース5Aの左後方隅部に立設された左後方ピラー12とを有し、さらに左前方ピラー11の上部と左後方ピラー12の上部とを互いに連結する左前後ビーム13を有している。
【0020】
なお、左前方ピラー11と左前後ビーム13とは一本のパイプ材から形成されており、左前方ピラー11の上端から後方に向けてパイプ材を曲げ加工することにより左前後ビーム13が構成されている。
【0021】
上記右フレーム20は、ベース5Aの右前方隅部に立設された右前方ピラー21と、ベース5Aの右後方隅部に立設された右後方ピラー22とを有し、さらに右前方ピラー21の上部と右後方ピラー22の上部とを互いに連結する右前後ビーム23を有している。
【0022】
なお、右前方ピラー21と右前後ビーム23とは一本のパイプ材から形成されており、左前方ピラー11の上端から後方に向けてパイプ材を曲げ加工することにより右前後ビーム23が構成されている。
【0023】
ここで、図5および図6に示す如く、左前方ピラー11、左後方ピラー12、右前方ピラー21、および右後方ピラー22の内の1つのピラー、つまり実施例において示した右フレーム20の右後方ピラー22は、上方から観て右前方ピラー21、左前方ピラー11、左後方ピラー12の上端を頂点h、i、jとする直角四辺形Qにおける、上記右前方ピラー21、左前方ピラー11、左後方ピラー12の上端が位置しない頂点kに対して、その上端を後方(図中における右方)にシフトさせた態様で設置されている。
【0024】
すなわち、左フレーム10と右フレーム20とは、左右対称の同一形状を呈するものではなく、左後方ピラー12に対して右後方ピラー22がより後方に位置しており、これによって左フレーム10における左前後ビーム13が、右フレーム20における右前後ビーム23よりも短く形成されている。
【0025】
また、左フレーム10と右フレーム20との内、より短い前後ビームを有する一方のフレームのピラーであって、左右方向から観て他方のフレームのピラーと重複しないピラーの上端、つまり実施例において示した左フレーム10における左後方ピラー12の上端は、後方左右ビーム32を介して右フレーム20における右前後ビーム23と連結されている。
【0026】
さらに、左フレーム10における左前方ピラー11の上端は、前方左右ビーム31を介して右フレーム20における右前後ビーム23と連結されている。
【0027】
すなわち、左フレーム10と右フレーム20との内、より短い前後ビームを有する一方のフレームにおける前後の各ピラーの上端と、より長い前後ビームを有する他方のフレームにおける前後ビームとは、前方左右ビーム31および後方左右ビーム32を介して互いに連結されている。
【0028】
さらに、上記前方左右ビーム31と後方左右ビーム32とは、左フレーム10の左前後ビーム13と、右フレーム20の右前後ビーム23に対して、それぞれ直角を為す態様で架設されている。
【0029】
上述した構成の運転室5における左フレーム10の後方上部に、図6中の矢印Fで示す如く横方向から大きな外力が加わった場合、上記外力は後方左右ビーム32を介して右フレーム20の右前後ビーム23に伝達される。
【0030】
ここで、右フレーム20の右前後ビーム23は、右前方ピラー21と右後方ピラー22とに接続されているため、上記右前後ビーム23に作用した外力は、該右前後ビーム23と右前方ピラー21および右後方ピラー22とに分散し、もって右前方ピラー21、右後方ピラー22、および右前後ビーム23等の多数の要素によって受け止められる。
【0031】
この結果、運転室5におけるフレーム構造の変形が可及的に抑えられることとなり、もって上述した実施例の油圧ショベル(作業車両)1によれば、運転室5のROPS性能を大幅に向上させることが可能となる。
【0032】
また、上述した構成の運転室5においては、左フレーム10と右フレーム20とを、前方左右ビーム31および後方左右ビーム32を介して互いに連結したことで、運転室5におけるフレーム構造の強度が増大することとなり、もって実施例の油圧ショベル(作業車両)1によれば、運転室5のROPS性能を大幅に向上させることができる。
【0033】
図7および図8は、実施例に示した本発明の油圧ショベル1における運転室5と、図9〜図12に示した従来の油圧ショベルAにおける運転室EとのFEM( Finite Element Method:有限要素法)解析結果を比較したものであり、図7は荷重−変位グラフの比較結果であり、図8はFEM解析モデルの比較結果である。
因みに、図8に示したFEM解析モデルにおいて、フレームの変形態様がデフォルメして変位量を拡大して表現されていることは周知のとおりである。
【0034】
本発明の運転室5における左フレーム10の後方上部に、図8(a)中の矢印Fで示す如く横方向から40kN(キロニュートン)の荷重を加えた場合、図7中の曲線aから明らかなように、運転室5の変位(図8中の変形量d)は、約140mm程度に抑えられる。
【0035】
一方、従来の運転室Eにおける左フレームLの後方上部に、図8(b)中の矢印Fで示す如く横方向から40kN(キロニュートン)の荷重を加えた場合、図7中の曲線bから明らかなように、運転室Eの変位(図8中の変形量d′)は約200mmにも達することとなる。
【0036】
このように、本発明の油圧ショベル1における運転室5は、従来の油圧ショベルAにおける運転室Eに比べて、外力が作用した状況におけるフレーム構造の変形が可及的に抑えられ、もって実施例における油圧ショベル(作業車両)1によれば、運転室5のROPS性能が大幅に向上することとなる。
【0037】
また、上述した構成の運転室5においては、右フレーム20における右後方ピラー22を、左フレーム10における左後方ピラー12よりも後方に位置させているので、運転室5からの後方視界が大幅に拡大することとなり、オペレータによる後方確認をより確実に行うことが可能となる。
【0038】
なお、上述した実施例における運転室5では、右フレーム20における右後方ピラー22を、左フレーム10における左後方ピラー12よりも後方に位置させ、左後方ピラー12の上端と右前後ビーム23とを後方左右ビーム32によって連結しているが、これに換えて左フレーム10における左後方ピラー12を、右フレーム20における右後方ピラー22よりも後方に位置させ、右後方ピラー22の上端と左前後ビーム13とを後方左右ビーム32によって連結することも可能である。
【0039】
また、前後方向にシフトさせて配置するのは、左右の各フレームにおける後方ピラーに限定されるものではなく、左右の各フレームにおける前方ピラーを、前後方向にシフトさせて配置することも可能である。
【0040】
すなわち、左フレーム10における左前方ピラー11を、右フレーム20における右前方ピラー21よりも前方に位置させ、右前方ピラー21の上端と左前後ビーム13とを前方左右ビーム31によって連結する、あるいは右フレーム20における右前方ピラー21を、左フレーム10における左前方ピラー11よりも前方に位置させ、左前方ピラー11の上端と右前後ビーム23とを前方左右ビーム31によって連結することも可能であり、これらの構成においても図1〜図8に示した実施例と同様の作用効果を奏することは勿論である。
【0041】
また、上述した実施例においては、本発明を建設車両の一態様である油圧ショベルに適用した例を示したが、上記油圧ショベル以外の様々な建設車両、さらにはコンバイン等の様々な農業車両等、フレーム構造の運転室を備えた種々の作業車両に対して、本発明を有効に適用し得ることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に関わる作業車両の一実施例である油圧ショベルを示す外観斜視図。
【図2】図1に示した油圧ショベルにおける運転室のフレーム構造を斜め上方から観た外観斜視図。
【図3】図1に示した油圧ショベルにおける運転室のフレーム構造を斜め下方から観た外観斜視図。
【図4】図1に示した油圧ショベルにおける運転室のフレーム構造を概念的に示す三面図。
【図5】図4中の V−V 線断面図。
【図6】図1に示した油圧ショベルにおける運転室のフレーム構造を上方から観た概念図。
【図7】図1に示した油圧ショベルの運転室と従来の運転室とのFEM解析結果を比較して示す荷重−変位グラフ。
【図8】(a)は図1に示した油圧ショベルにおける運転室のFEM解析モデル、(b)は従来の油圧ショベルにおける運転室のFEM解析モデル。
【図9】従来の作業車両の一例である油圧ショベルを示す外観側面図。
【図10】図9に示した従来の油圧ショベルにおける運転室のフレーム構造を概念的に示す三面図。
【図11】図10中の XI−XI 線断面図。
【図12】図9に示した従来の油圧ショベルにおける運転室のフレーム構造を上方から観た概念図。
【符号の説明】
1…油圧ショベル(作業車両)、
5…運転室、
10…左フレーム、
11…左前方ピラー、
12…左後方ピラー、
13…左前後ビーム、
20…右フレーム、
21…右前方ピラー、
22…右後方ピラー、
23…右前後ビーム、
31…前方左右ビーム、
32…後方左右ビーム。

Claims (2)

  1. 左前方ピラーの上部と左後方ピラーの上部とを前後ビームで連結した左フレームと、右前方ピラーの上部と右後方ピラーの上部とを前後ビームで連結した右フレームとを有し、上記左フレームの上部と上記右フレームの上部とを左右方向に延びる左右ビームで連結したフレーム構造の運転室を具備して成る作業車両であって、
    上記左前方ピラー、左後方ピラー、右前方ピラー、および右後方ピラーの内の1つのピラーを、上方から観て他の3つのピラーの上端を頂点とする直角四辺形の頂点のうち上記3つのピラーの上端が位置しない頂点に対して、上端を前方または後方にシフトさせた態様で設置するとともに、
    上記左フレームおよび上記右フレームの内、より短い前後ビームを有する一方のフレームのピラーであって、左右方向から観て他方のフレームのピラーと重複しないピラーの上端を、左右方向に延びる上記左右ビームを介して、上記他方のフレームの前後ビームと連結したことを特徴とする作業車両。
  2. 上記左フレームおよび上記右フレームの内、より短い前後ビームを有する一方のフレームにおける前後の各ピラーの上端と、より長い前後ビームを有する他方のフレームにおける前後ビームとを、該前後ビームに対して直角に延びる前方左右ビームおよび後方左右ビームを介して、互いに連結したことを特徴とする請求項1記載の作業車両。
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