JP2004215589A - 焼菓子用改質剤及びこれを用いた焼菓子類 - Google Patents
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Abstract
【課題】ビスケット、クッキーに代表される焼菓子やチョコレート類とを組み合わせた複合菓子において、焼菓子から油脂が染み出し、チョコレート類へ移行することを防止し、焼菓子の白色化現象、チョコレート類の軟化、ブルーム現象を抑制することができる焼菓子用改質剤及びこれを用いた焼菓子類を提供する。
【解決手段】粒子径が500μm以下の粉末状であり、主構成脂肪酸がステアリン酸及び/又はベヘン酸であり、エステル化率が50%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することを特徴とする焼菓子用改質剤、並びに、該焼菓子用改質剤の添加量が穀物粉に対して0.1〜5.0%配合したミックス粉を用いることを特徴とする焼菓子類。
【解決手段】粒子径が500μm以下の粉末状であり、主構成脂肪酸がステアリン酸及び/又はベヘン酸であり、エステル化率が50%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することを特徴とする焼菓子用改質剤、並びに、該焼菓子用改質剤の添加量が穀物粉に対して0.1〜5.0%配合したミックス粉を用いることを特徴とする焼菓子類。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ビスケット、クッキーに代表される焼菓子に使用されるミックス粉に関する。更に詳しくは、焼菓子とチョコレート、クリーム類等を組み合わせてなる複合菓子において、保存中における焼菓子から油脂が染み出し、チョコレート、クリーム類への油脂の移行を防止し、白色化現象やブルームの発生を抑制する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般の焼菓子は、小麦粉、澱粉などの穀物粉、糖類、油脂を主原料とし、これに鶏卵、膨張剤、香料、水などからなる生地を焼成したものであり、代表的なものとしてビスケット、クッキーがある。これらの焼菓子類は、生地を焼成しただけのものも製造されているが、チョコレート又はクリーム類をコーティングしたり、はさみこんだりさせた複合菓子類も製造されている。この様な複合菓子類は、製造中あるいは製造後の流通過程や保存中に、焼菓子部分の表面が白い粉を吹いた状態、又は斑点状になる白色化現象がしばしば発生し、商品価値を低下させる原因となる。この白色化現象は同時にチョコレート類の軟化、チョコレート類の表面にブルームと呼ばれる油脂が結晶化して浮き出た状態を生じさせることがあり、更に、その商品価値を低下させる原因となっている。
【0003】
この現象のメカニズムは十分に解明されてはいないが、以下のように推定される。焼菓子に練り込まれた油脂は焼成時に完全に融解しているが、その後の冷却過程において融解している油脂は固液分離を生じ、焼菓子の表面から固体脂の結晶化が起こる。冷却過程においては焼菓子の表面と内部では温度差があり、温度の低い表面部分から順に固体脂による結晶核が生じる。焼菓子の内部の固体脂成分は表面上に生じた結晶核を中心に結晶成長を起こし、保存中の温度変化によってさらに進行するため、焼菓子の表面上で固体脂が大きく成長することとなり、これが白色化として観察されることとなる。一方、焼菓子に練り込まれた油脂のうち、液体脂は結晶成長にあまり関与することなく、焼菓子の内部に偏在して残っている。そこに、液体脂含量の少ないチョコレートやクリーム等を接触させると、液体脂を多く含む焼菓子から油脂が染み出し、染み出した油脂がチョコレート類へ移行する。このように油脂の移行が起こると、液体脂を吸収したチョコレート等は融点が低下することとなり、軟化してしまうこととなる。また、融点の低下したチョコレート類は、温度変化による溶解および再結晶化とそれに続く結晶成長が起こり易くなるため、ブルームがさらに発生し易くなる。
【0004】
このような現象を抑制するための方法としては、焼菓子に用いる練り込み用の油脂を改質する方法(特許文献1、特許文献2参照。)や、チョコレート、クリーム類に用いる油脂を改質する方法(特許文献3、特許文献4参照。)が開示されている。しかしながら、これらの技術は、いずれも油脂を改質することにより油脂の移行やブルームを抑制する技術であるが、その効果は充分なものではなく、更に、焼菓子を構成するミックス粉については何ら言及していない。
【0005】
【特許文献1】
特開平4−66045号公報
【特許文献2】
特開平7−327604号公報
【特許文献3】
特開平6−311845号公報
【特許文献4】
特開2001−131574号公報
【0006】
【発明が解決しようとする問題点】
従って、本発明の目的は、ビスケットやクッキー等の焼菓子や、チョコレート、クリーム類等とを組み合わせた複合菓子類において、流通過程や保存中における焼菓子から油脂が染み出し、チョコレートやクリーム類へ移行することにより生じる白色化現象、チョコレート類の軟化、ブルーム現象を抑制し得る、焼菓子用改質剤、これを配合したミックス粉、及びこれを用いた焼菓子を提供することである。
【0007】
【問題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討の結果、粒子径が500μm以下の粉末状であり、主構成脂肪酸がステアリン酸及び/又はベヘン酸で、かつ、エステル化率が50%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルを焼菓子用ミックス粉に改質剤として添加することにより、上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明により、ビスケット、クッキーに代表される焼菓子、及びチョコレート、クリーム類とを組み合わせた複合菓子類において、焼菓子から油脂が染み出し、チョコレートやクリーム類へ移行することにより生じる白色化現象、チョコレート類の軟化、ブルーム現象を抑制し得る、焼菓子用改質剤、及びこれを配合したミックス粉による焼菓子類が提供できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の焼菓子用ミックス粉について詳述する。
【0010】
本発明の焼菓子用ミックス粉はビスケット、クッキー代表される焼菓子に用いるものであって、焼菓子及びチョコレート、クリーム類とを組み合わせた複合菓子において、焼菓子から油脂が染み出し、チョコレート、クリーム類へ移行することを防止し、これにともなう白色化現象、チョコレート類の軟化、ブルーム現象を抑制するように作用する。
【0011】
本発明で使用するポリグリセリン脂肪酸エステルは粉末状であり、予め固体である必要がある。一般的にポリグリセリン脂肪酸エステルはポリグリセリンと脂肪酸がエステル化したもので、使用する脂肪酸の種類によって液体並びに固体の形状を取る。本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルは、使用する主構成脂肪酸が飽和脂肪酸である炭素数18のステアリン酸、炭素数22のベヘン酸の1種単独又は2種を組み合わせたエステルが使用できる。また、別の飽和脂肪酸として炭素数16のパルミチン酸、炭素数20のアラキン酸、固体の形状を取ることができるのであれば、適宜オレイン酸等の液体の不飽和脂肪酸やミリスチン酸等の炭素数14以下の脂肪酸を使用しても良い。
【0012】
使用するポリグリセリンは、水酸基価から算出した平均重合度が2〜10、好ましくは4〜10のものを使用する。ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は50%以上である必要があり、好ましくは70%以上である。50%未満であると、油脂の移行抑制効果が得にくくなり、チョコレート類の軟化、ブルーム現象が発生しやすくなるため好ましくない。
【0013】
本発明で使用するポリグリセリン脂肪酸エステルは、粒子径が500μm以下の粉末である。より好ましくは250μm以下である。粒子径が500μm以下であれば、ミックス粉へ均一に分散でき、均一に染み出し抑制効果を付与できるが、500μmを超えると粒子径が大きいため、染み出し抑制効果に偏りができてしまい好ましくない。また、その粉末化方法としては、凍結粉砕、冷却粉砕等の粉砕による方法、溶剤を使用した再結晶による方法、噴霧乾燥による方法など様々な方法があるが、粒子径が500μm以下の粉末になれば何れの方法でも構わない。
【0014】
本発明の焼菓子用ミックス粉に用いるポリグリセリン脂肪酸エステルのミックス粉に対する配合割合は0.1%〜5%、特に0.2〜3%が好ましい。0.1%未満では、所望の効果が得られ難く、5%を超えても効果が頭打ちとなり、使用量の増加にともなう効果を期待し得ない。
【0015】
本発明のミックス粉には、穀物粉、糖類、膨張剤など、通常焼菓子の材料として使用されるものを用いることができる。穀物粉としては、主として小麦粉で薄力粉、中力粉、強力粉のいずれであっても良く、小麦粉以外の穀物粉も使用できる。糖類としては、通常砂糖を用いるが、一部をブドウ糖、乳糖、果糖などの砂糖以外の糖類を使用できる。
【0016】
本発明の油菓子食品用ミックス粉には、更に油脂の染み出しを低減させ、チョコレート類への油脂の移行を防止させるために、また、それ以外の目的でショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン等の粉末状食品用乳化剤、カゼイン、グルテンなどの可食性蛋白質を併用しても良い。
【0017】
本発明に用いる油脂は、特に限定されるものではなく、通常焼菓子に使用される油脂を自由に使用することができる。例えば、大豆油、菜種油、パーム油、コーン油、米油、魚油、牛脂、豚脂、及びこれらの水素添加油脂、或いはこれらの分別油脂、エステル交換油脂等の単独、もしくは混合油を挙げることができる。
【0018】
本発明の焼菓子用ミックス粉には、通常用いられる他の副材料を自由に添加することができる。例えば澱粉、香料、卵黄、卵白、色素、食物繊維、粉末油脂等が挙げられる。
【0019】
【実施例】
以下に実施例を挙げて詳述するが、その要旨を超えない限りこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0020】
実施例1:薄力粉100部、砂糖40部、食塩0.5部、及びデカグリセリンオクタステアレート粉末(エステル化率67%、粒子径200μm以下)1部を粉末状態で混合し、本発明の焼菓子用ミックス粉を得た。
実施例2:薄力粉100部、砂糖40部、食塩0.5部、及びデカグリセリンデカベヘネート粉末(エステル化率83%、粒子径200μm以下)1部を粉末状態で混合し、本発明の焼菓子用ミックス粉を得た。
【0021】
比較例1:薄力粉100部、砂糖40部、食塩0.5部を粉末状態で混合し、焼菓子用ミックス粉を得た。
比較例2:実施例1においてデカグリセリンオクタステアレート粉末の代わりにデカグリセリンテトラステアレート粉末(エステル化率33%、粒子径200μm以下)を使用して焼菓子用ミックス粉を得た。
比較例3:実施例1においてデカグリセリンオクタステアレート粉末の代わりにデカグリセリンペンタベヘネート粉末(エステル化率42%、粒子径200μm以下)を使用して焼菓子用ミックス粉を得た。
【0022】
試験例1:実施例1、2及び比較例1〜3で得られた焼菓子用ミックス粉100部に硬化魚油40部、液卵10部、水10部を加えて混捏し、生地を調製した。生地を1個8gに分割して圧延成形したのち、200℃のオーブンで10分間焼成し、クッキーを得た。冷却固化後、クッキーを濾紙上に乗せ、30℃の温度で48時間保存した時の油脂の染み出し比率を求めた。染み出し比率は、濾紙の重量をあらかじめ測定しておき、油脂が染み出した量(濾紙の重量増加分)をクッキーの総油分量に対する比率で表したものである。
【0023】
試験例2:実施例1、2及び比較例1〜3で得たクッキーにチョコレート(ココアバター35%含有)を上掛けし、複合菓子を得た。この複合菓子を20℃と28℃の温度に交互に12時間づつ放置するサイクルテストを30サイクル行い、チョコレート表面のブルーム状態を観察した。サイクルテスト前のものと同等であれば良好とし、サイクルテスト前のものと比べ、ブルームが発生していれば不良とした。試験例1の結果と併せて表1に示す。
【0024】
表1
【0025】
表1に見られるように、実施例1及び2は比較例1〜3に比べ油脂の染み出しを低減し、チョコレート類への油脂の移行を抑制することで、ブルームの発生もなく、調製直後と同程度の食感を有していた。
【0026】
【発明の効果】
本発明の焼菓子用ミックス粉を使用することにより、ビスケット、クッキーに代表される焼菓子や、チョコレート、クリーム類とを組み合わせた複合菓子において、焼菓子からの油脂の染み出しを防止し、チョコレート、クリーム類への移行を防止することで、白色化現象、チョコレート類の軟化、ブルーム現象を抑制した焼菓子及び複合菓子を得ることができる。
【産業上の利用分野】
本発明は、ビスケット、クッキーに代表される焼菓子に使用されるミックス粉に関する。更に詳しくは、焼菓子とチョコレート、クリーム類等を組み合わせてなる複合菓子において、保存中における焼菓子から油脂が染み出し、チョコレート、クリーム類への油脂の移行を防止し、白色化現象やブルームの発生を抑制する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般の焼菓子は、小麦粉、澱粉などの穀物粉、糖類、油脂を主原料とし、これに鶏卵、膨張剤、香料、水などからなる生地を焼成したものであり、代表的なものとしてビスケット、クッキーがある。これらの焼菓子類は、生地を焼成しただけのものも製造されているが、チョコレート又はクリーム類をコーティングしたり、はさみこんだりさせた複合菓子類も製造されている。この様な複合菓子類は、製造中あるいは製造後の流通過程や保存中に、焼菓子部分の表面が白い粉を吹いた状態、又は斑点状になる白色化現象がしばしば発生し、商品価値を低下させる原因となる。この白色化現象は同時にチョコレート類の軟化、チョコレート類の表面にブルームと呼ばれる油脂が結晶化して浮き出た状態を生じさせることがあり、更に、その商品価値を低下させる原因となっている。
【0003】
この現象のメカニズムは十分に解明されてはいないが、以下のように推定される。焼菓子に練り込まれた油脂は焼成時に完全に融解しているが、その後の冷却過程において融解している油脂は固液分離を生じ、焼菓子の表面から固体脂の結晶化が起こる。冷却過程においては焼菓子の表面と内部では温度差があり、温度の低い表面部分から順に固体脂による結晶核が生じる。焼菓子の内部の固体脂成分は表面上に生じた結晶核を中心に結晶成長を起こし、保存中の温度変化によってさらに進行するため、焼菓子の表面上で固体脂が大きく成長することとなり、これが白色化として観察されることとなる。一方、焼菓子に練り込まれた油脂のうち、液体脂は結晶成長にあまり関与することなく、焼菓子の内部に偏在して残っている。そこに、液体脂含量の少ないチョコレートやクリーム等を接触させると、液体脂を多く含む焼菓子から油脂が染み出し、染み出した油脂がチョコレート類へ移行する。このように油脂の移行が起こると、液体脂を吸収したチョコレート等は融点が低下することとなり、軟化してしまうこととなる。また、融点の低下したチョコレート類は、温度変化による溶解および再結晶化とそれに続く結晶成長が起こり易くなるため、ブルームがさらに発生し易くなる。
【0004】
このような現象を抑制するための方法としては、焼菓子に用いる練り込み用の油脂を改質する方法(特許文献1、特許文献2参照。)や、チョコレート、クリーム類に用いる油脂を改質する方法(特許文献3、特許文献4参照。)が開示されている。しかしながら、これらの技術は、いずれも油脂を改質することにより油脂の移行やブルームを抑制する技術であるが、その効果は充分なものではなく、更に、焼菓子を構成するミックス粉については何ら言及していない。
【0005】
【特許文献1】
特開平4−66045号公報
【特許文献2】
特開平7−327604号公報
【特許文献3】
特開平6−311845号公報
【特許文献4】
特開2001−131574号公報
【0006】
【発明が解決しようとする問題点】
従って、本発明の目的は、ビスケットやクッキー等の焼菓子や、チョコレート、クリーム類等とを組み合わせた複合菓子類において、流通過程や保存中における焼菓子から油脂が染み出し、チョコレートやクリーム類へ移行することにより生じる白色化現象、チョコレート類の軟化、ブルーム現象を抑制し得る、焼菓子用改質剤、これを配合したミックス粉、及びこれを用いた焼菓子を提供することである。
【0007】
【問題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討の結果、粒子径が500μm以下の粉末状であり、主構成脂肪酸がステアリン酸及び/又はベヘン酸で、かつ、エステル化率が50%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルを焼菓子用ミックス粉に改質剤として添加することにより、上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明により、ビスケット、クッキーに代表される焼菓子、及びチョコレート、クリーム類とを組み合わせた複合菓子類において、焼菓子から油脂が染み出し、チョコレートやクリーム類へ移行することにより生じる白色化現象、チョコレート類の軟化、ブルーム現象を抑制し得る、焼菓子用改質剤、及びこれを配合したミックス粉による焼菓子類が提供できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の焼菓子用ミックス粉について詳述する。
【0010】
本発明の焼菓子用ミックス粉はビスケット、クッキー代表される焼菓子に用いるものであって、焼菓子及びチョコレート、クリーム類とを組み合わせた複合菓子において、焼菓子から油脂が染み出し、チョコレート、クリーム類へ移行することを防止し、これにともなう白色化現象、チョコレート類の軟化、ブルーム現象を抑制するように作用する。
【0011】
本発明で使用するポリグリセリン脂肪酸エステルは粉末状であり、予め固体である必要がある。一般的にポリグリセリン脂肪酸エステルはポリグリセリンと脂肪酸がエステル化したもので、使用する脂肪酸の種類によって液体並びに固体の形状を取る。本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルは、使用する主構成脂肪酸が飽和脂肪酸である炭素数18のステアリン酸、炭素数22のベヘン酸の1種単独又は2種を組み合わせたエステルが使用できる。また、別の飽和脂肪酸として炭素数16のパルミチン酸、炭素数20のアラキン酸、固体の形状を取ることができるのであれば、適宜オレイン酸等の液体の不飽和脂肪酸やミリスチン酸等の炭素数14以下の脂肪酸を使用しても良い。
【0012】
使用するポリグリセリンは、水酸基価から算出した平均重合度が2〜10、好ましくは4〜10のものを使用する。ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は50%以上である必要があり、好ましくは70%以上である。50%未満であると、油脂の移行抑制効果が得にくくなり、チョコレート類の軟化、ブルーム現象が発生しやすくなるため好ましくない。
【0013】
本発明で使用するポリグリセリン脂肪酸エステルは、粒子径が500μm以下の粉末である。より好ましくは250μm以下である。粒子径が500μm以下であれば、ミックス粉へ均一に分散でき、均一に染み出し抑制効果を付与できるが、500μmを超えると粒子径が大きいため、染み出し抑制効果に偏りができてしまい好ましくない。また、その粉末化方法としては、凍結粉砕、冷却粉砕等の粉砕による方法、溶剤を使用した再結晶による方法、噴霧乾燥による方法など様々な方法があるが、粒子径が500μm以下の粉末になれば何れの方法でも構わない。
【0014】
本発明の焼菓子用ミックス粉に用いるポリグリセリン脂肪酸エステルのミックス粉に対する配合割合は0.1%〜5%、特に0.2〜3%が好ましい。0.1%未満では、所望の効果が得られ難く、5%を超えても効果が頭打ちとなり、使用量の増加にともなう効果を期待し得ない。
【0015】
本発明のミックス粉には、穀物粉、糖類、膨張剤など、通常焼菓子の材料として使用されるものを用いることができる。穀物粉としては、主として小麦粉で薄力粉、中力粉、強力粉のいずれであっても良く、小麦粉以外の穀物粉も使用できる。糖類としては、通常砂糖を用いるが、一部をブドウ糖、乳糖、果糖などの砂糖以外の糖類を使用できる。
【0016】
本発明の油菓子食品用ミックス粉には、更に油脂の染み出しを低減させ、チョコレート類への油脂の移行を防止させるために、また、それ以外の目的でショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン等の粉末状食品用乳化剤、カゼイン、グルテンなどの可食性蛋白質を併用しても良い。
【0017】
本発明に用いる油脂は、特に限定されるものではなく、通常焼菓子に使用される油脂を自由に使用することができる。例えば、大豆油、菜種油、パーム油、コーン油、米油、魚油、牛脂、豚脂、及びこれらの水素添加油脂、或いはこれらの分別油脂、エステル交換油脂等の単独、もしくは混合油を挙げることができる。
【0018】
本発明の焼菓子用ミックス粉には、通常用いられる他の副材料を自由に添加することができる。例えば澱粉、香料、卵黄、卵白、色素、食物繊維、粉末油脂等が挙げられる。
【0019】
【実施例】
以下に実施例を挙げて詳述するが、その要旨を超えない限りこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0020】
実施例1:薄力粉100部、砂糖40部、食塩0.5部、及びデカグリセリンオクタステアレート粉末(エステル化率67%、粒子径200μm以下)1部を粉末状態で混合し、本発明の焼菓子用ミックス粉を得た。
実施例2:薄力粉100部、砂糖40部、食塩0.5部、及びデカグリセリンデカベヘネート粉末(エステル化率83%、粒子径200μm以下)1部を粉末状態で混合し、本発明の焼菓子用ミックス粉を得た。
【0021】
比較例1:薄力粉100部、砂糖40部、食塩0.5部を粉末状態で混合し、焼菓子用ミックス粉を得た。
比較例2:実施例1においてデカグリセリンオクタステアレート粉末の代わりにデカグリセリンテトラステアレート粉末(エステル化率33%、粒子径200μm以下)を使用して焼菓子用ミックス粉を得た。
比較例3:実施例1においてデカグリセリンオクタステアレート粉末の代わりにデカグリセリンペンタベヘネート粉末(エステル化率42%、粒子径200μm以下)を使用して焼菓子用ミックス粉を得た。
【0022】
試験例1:実施例1、2及び比較例1〜3で得られた焼菓子用ミックス粉100部に硬化魚油40部、液卵10部、水10部を加えて混捏し、生地を調製した。生地を1個8gに分割して圧延成形したのち、200℃のオーブンで10分間焼成し、クッキーを得た。冷却固化後、クッキーを濾紙上に乗せ、30℃の温度で48時間保存した時の油脂の染み出し比率を求めた。染み出し比率は、濾紙の重量をあらかじめ測定しておき、油脂が染み出した量(濾紙の重量増加分)をクッキーの総油分量に対する比率で表したものである。
【0023】
試験例2:実施例1、2及び比較例1〜3で得たクッキーにチョコレート(ココアバター35%含有)を上掛けし、複合菓子を得た。この複合菓子を20℃と28℃の温度に交互に12時間づつ放置するサイクルテストを30サイクル行い、チョコレート表面のブルーム状態を観察した。サイクルテスト前のものと同等であれば良好とし、サイクルテスト前のものと比べ、ブルームが発生していれば不良とした。試験例1の結果と併せて表1に示す。
【0024】
表1
【0025】
表1に見られるように、実施例1及び2は比較例1〜3に比べ油脂の染み出しを低減し、チョコレート類への油脂の移行を抑制することで、ブルームの発生もなく、調製直後と同程度の食感を有していた。
【0026】
【発明の効果】
本発明の焼菓子用ミックス粉を使用することにより、ビスケット、クッキーに代表される焼菓子や、チョコレート、クリーム類とを組み合わせた複合菓子において、焼菓子からの油脂の染み出しを防止し、チョコレート、クリーム類への移行を防止することで、白色化現象、チョコレート類の軟化、ブルーム現象を抑制した焼菓子及び複合菓子を得ることができる。
Claims (2)
- 粒子径が500μm以下の粉末状であり、主構成脂肪酸がステアリン酸及び/又はベヘン酸で、かつ、エステル化率が50%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルを主成分とすることを特徴とする焼菓子用改質剤。
- 請求項1記載の焼菓子用改質剤を穀物粉に対して0.1〜5.0%配合したミックス粉を用いることを特徴とする焼菓子類。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003007526A JP2004215589A (ja) | 2003-01-15 | 2003-01-15 | 焼菓子用改質剤及びこれを用いた焼菓子類 |
Applications Claiming Priority (1)
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---|---|---|---|
JP2003007526A JP2004215589A (ja) | 2003-01-15 | 2003-01-15 | 焼菓子用改質剤及びこれを用いた焼菓子類 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004215589A true JP2004215589A (ja) | 2004-08-05 |
Family
ID=32897597
Family Applications (1)
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JP2003007526A Pending JP2004215589A (ja) | 2003-01-15 | 2003-01-15 | 焼菓子用改質剤及びこれを用いた焼菓子類 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004215589A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014131505A (ja) * | 2012-12-08 | 2014-07-17 | Nisshin Kako Kk | チョコレートを含んでなる菓子及びその製造方法 |
-
2003
- 2003-01-15 JP JP2003007526A patent/JP2004215589A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014131505A (ja) * | 2012-12-08 | 2014-07-17 | Nisshin Kako Kk | チョコレートを含んでなる菓子及びその製造方法 |
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