JP2004211499A - 建築板並びにその製造装置及び製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】建築板1は,多数の凸部20を形成してなる凹凸模様203を有する原板2の意匠表面201に,下側塗料層3及び上側塗料層4を順次設けてなるものである。多数の凸部20同士の間に形成された多数の凹部23の底面231のいずれかには,この底面231よりもさらに陥没した複数の微細凹部24が形成されている。各底面231のいずれかには,下側塗料層3が露出した露出表面101が形成されている。多数の微細凹部24には,下側塗料層3の表面を上側塗料層4が覆った被覆表面102が形成されている。
【選択図】 図1
Description
【技術分野】
本発明は,建築物の外壁として施工する建築板であって,特に凹凸模様を形成した意匠表面に塗装を行って形成した建築板並びにその製造装置及び製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
例えば,建築物の外壁として施工するために量産される建築板においては,単調な仕上り感を避けるために,建築板の意匠表面の凹凸模様,この意匠表面の塗装の仕方等の工夫がなされている。そして,例えば,特許文献1,2に示すように,上記意匠表面が,自然な外観や,立体的な外観を呈するように努力がなされている。
【0003】
特許文献1においては,建築板の意匠表面に,平坦部分とこの平坦部分より陥没形成した模様凹部とを有しており,上記平坦凸部と上記模様凹部との色調を異ならせることにより,意匠表面が自然な外観を呈する建築板を形成している。
また,特許文献2においては,建築板の意匠表面に凹凸模様を形成し,この凹凸模様における凸部と凹部との色彩を異ならせることにより,意匠表面が立体的な外観を呈する建築板を形成している。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−310485号公報
【特許文献2】
特開平10−317631号公報
【0005】
【解決しようとする課題】
しかしながら,上記特許文献1の建築板においては,上記意匠表面に表現する色調の違いは,上記平坦部分における模様凹部の陥没に対応して形成されたものである。すなわち,この色調の違いは,上記模様凹部の意匠表面突出高さが,上記平坦部分よりも低いことにより形成されたものである。
【0006】
また,上記特許文献2の建築板においては,上記意匠表面に表現する色彩の違いは,上記凹凸模様における凸部の突出に対応して形成されたものである。すなわち,この色彩の違いは,上記凸部の意匠表面突出高さが,上記凹部よりも高いことにより形成されたものである。
そのため,上記従来の建築板における色調又は色彩の変化は,あくまでも建築板の意匠表面における各部の突出高さの高低の変化を受けて形成されてものである。そのため,建築板の意匠表面に,より複雑な意匠外観を形成するためには,一層の工夫が必要とされる。
【0007】
本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,凹凸模様の凹部だけにおいても異なる色彩又は色調等の色外観を呈することができ,より複雑な意匠外観を呈することができる建築板並びにその製造装置及び製造方法を提供しようとするものである。
【0008】
【課題の解決手段】
第1の発明は,複数の凸部を形成してなる凹凸模様を有する原板の意匠表面に,下側塗料層及び上側塗料層を順次設けてなる建築板において,
上記凸部同士の間に形成された凹部の内面には,該内面よりもさらに陥没した微細凹部を形成しており,
上記内面には,上記下側塗料層が露出した露出表面が形成されていると共に,上記微細凹部には,上記下側塗料層の表面を上側塗料層が覆った被覆表面が形成されていることを特徴とする建築板にある(請求項1)。
【0009】
本発明の建築板においては,上記原板の意匠表面に形成された凹凸模様における凹部は,その内面に,これよりもさらに陥没した微細凹部を有している。そして,上記意匠表面における各部の意匠表面突出高さの関係は,凸部に対して凹部が低く,さらに凹部に対して微細凹部が低くなっている。
そして,上記原板の意匠表面に上記下側塗料層及び上側塗料層を順次設けて建築板としたときには,上記内面には,上記露出表面が形成されており,上記微細凹部には,上記被覆表面が形成されている。
【0010】
すなわち,本発明の建築板の意匠表面においては,上記凹部の内面において,上記下側塗料層による色外観を呈する露出表面と,上記微細凹部に形成した上側塗料層による色外観を呈する被覆表面とが混在する。
そのため,上記建築板の意匠表面は,従来のように各部(凹凸)の突出高さの高低の違いにより異なる色彩又は色調等の色外観を呈するのではなく,上記凹部だけにおいても異なる色彩又は色調等の色外観を呈することができる。
それ故,上記建築板は,従来の建築板に比べて,より複雑な意匠外観を呈することができる。
【0011】
第2の発明は,複数の凸部を形成してなる凹凸模様を有する原板の意匠表面に,下側塗料層及び上側塗料層を順次設けてなり,上記凸部同士の間に形成された凹部の内面には,該内面よりもさらに陥没した微細凹部を形成しており,上記内面には,上記下側塗料層が露出した露出表面が形成されていると共に,上記微細凹部には,上記下側塗料層の表面を上側塗料層が覆った被覆表面が形成されてなる建築板を製造する装置において,
該製造装置は,上記原板の意匠表面に当接して,該意匠表面に塗布された上記上側塗料層を形成するための塗料の一部を該塗料が乾燥する前に掻き取る掻取りロールと,
該掻取りロールに対向配設すると共に,上記原板の裏面に当接するバックアップロールとを有しており,
上記掻取りロール及び上記バックアップロールは,それぞれ揺動又は弾性変形して,それらの間の隙間を上記原板の厚みの変化に応じて変更でき,かつ,異なる厚みを有する複数の上記原板に対しても,略同一の圧力で当接することができるよう構成されていることを特徴とする建築板の製造装置にある(請求項6)。
【0012】
本発明の製造装置においては,上記優れた作用効果を有する建築板を製造するために,上記掻取りロール及びバックアップロールに工夫をしている。
すなわち,上記掻取りロール及びバックアップロールは,それぞれ揺動又は弾性変形して,それらの間の隙間を上記原板の厚みの変化に応じて変更できるようにした。そのため,掻取りロールとバックアップロールとの間の隙間に搬入される原板の厚みにばらつきがあっても,これらのロールは,この原板の厚みのばらつきに対応して揺動又は弾性変形することができる。
【0013】
そして,上記掻取りロールが上記原板の意匠表面に当接する際には,この意匠表面においては,上記凹部よりも上記凸部が大きく突出するため,上記掻取りロールは,上記凸部に優先的に当接する。さらに,上記原板の厚みにばらつきがあれば,特に上記原板が薄くなると,上記凹部には一層掻取りロールが当接し難くなる。
【0014】
そこで,本発明では,上記掻取りロール及びバックアップロールは,略同一の圧力でそれぞれ上記原板の意匠表面及び上記原板の裏面に当接できるようにした。すなわち,本発明では,上記掻取りロール及びバックアップロールが上記原板に付与する圧力を調節し,掻取りロールが上記凸部だけではなく,上記凹部の内面にも当接できるようにした。
【0015】
そのため,上記隙間に搬入される原板の厚みにばらつきがあっても,掻取りロールは,上記凸部及び上記凹部の内面に安定して当接することができる。
それ故,上記建築板の製造装置によれば,厚みの異なる複数の原板に対しても,上記異なる色彩又は色調等の色外観を呈する凹部を安定して形成することができる。
【0016】
第3の発明は,凹凸模様を設けた意匠表面を有し,上記凹凸模様における上記凸部同士の間に形成された凹部の内面には,該内面よりもさらに陥没した微細凹部を形成してなる原板を準備する準備工程と,
上記原板の意匠表面に第1塗料を塗布し乾燥して,該意匠表面に下側塗料層を形成する下側塗料層形成工程と,
上記下側塗料層の表面に第2塗料を塗布しこれが乾燥する前に,上記意匠表面に掻取り具を当接させて,上記内面には,上記下側塗料層が露出した露出表面を形成すると共に,上記微細凹部には,上記下側塗料層の表面を上記第2塗料による上側塗料層が覆った被覆表面を形成する上側塗料層形成工程とを行うことを特徴とする建築板の製造方法にある(請求項8)。
【0017】
本発明の製造方法においては,上記準備工程,上記下側塗料層形成工程,及び上側塗料層形成工程を行って,下記優れた作用効果を有する建築板を製造する。
すなわち,上記準備工程において,上記凹部の内面に上記微細凹部を形成してなるセメント系原板を準備し,上記下側塗料層形成工程において,上記原板の意匠表面に上記下側塗料層を形成する。
【0018】
そして,上記上側塗料層形成工程においては,上記下側塗料層の表面に第2塗料を塗布しこれが乾燥する前に上記掻取り具を当接させ,上記内面に上記露出表面を形成し,上記微細凹部に上記被覆表面を形成する。このように上記各工程を行うことにより,上記凹部において異なる色彩又は色調等の色外観を呈することができる建築板を容易に製造することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
上述した本発明における好ましい実施の形態につき説明する。
上記第1〜第3の発明において,上記建築板としては,例えば,量産を行う無機質建築板がある。また,無機質建築板としては,例えば,窯業系建築板がある。
また,上記凸部及び凹部は,上記原板の意匠表面において,多数形成されていることが好ましい。また,上記微細凹部は,上記凹部において,多数形成されていることが好ましい。これにより,上記建築板の意匠表面に,複雑な意匠外観を容易に形成することができる。
【0020】
また,上記露出平面は,上記内面の全体に形成されていてもよく,上記内面の一部に形成されていてもよい。
また,上記露出表面は,多数の凹部のうちの一部の凹部の内面に形成されていてもよい。この場合でも,上記露出平面は,上記一部の凹部の内面の全体に形成されていてもよく,上記内面の一部に形成されていてもよい。
【0021】
また,上記凹部における微細凹部は,上記露出表面を形成する凹部の内面に形成されているだけでなく,上記被覆表面を形成する凹部の内面に形成されていてもよい。
また,上記凹部の内面は,略平坦状の底面を有していることが好ましい。この場合には,上記底面に露出表面を形成することができ,凹部における露出表面の形成が容易になる。また,上記凹部の内面は,U字型,V字型あるいは波型等の面に形成されていてもよい。
【0022】
また,上記下側塗料層としては,例えば,上記原板の表面に塗布するシーラー層,又はこのシーラー層の表面に塗布する下塗り層とすることができる。
また,上記上側塗料層としては,例えば,上記シーラー層の表面に塗布する塗料層,又は上記下塗り層の表面に塗布する中塗り層がある。
【0023】
上記第1の発明においては,上記露出表面は,上記下側塗料層の表面に上記上側塗料層を形成するための塗料を塗布した後,該塗料が乾燥する前に,該塗料を除去することが好ましい(請求項2)。
この場合には,上記下側塗料層を設けた上記意匠表面の全体に,上記上側塗料層となる塗料を一括して塗布した後,上記凹部の内面に塗布した塗料を除去して上記露出表面を形成することができる。そのため,上記異なる色彩又は色調等の色外観を上記凹部に有する建築板を容易に形成することができる。
【0024】
また,上記凹部及び上記微細凹部は長尺状に形成されていることが好ましい(請求項3)。
この場合には,上記露出表面及び被覆表面を,上記長尺状の凹部の内面及び微細凹部に形成することができる。そのため,上記異なる色彩又は色調等の色外観を,上記長尺状の凹部に有する建築板を形成することができる。
【0025】
また,上記意匠表面における凹凸模様は,木目調を形成していることが好ましい(請求項4)。
この場合には,上記凹部の内面における露出表面と,上記微細凹部における被覆表面とを,上記木目調を形成した凹凸模様における多数の凹部に形成することができる。そのため,木材板のような自然で複雑な外観を呈する建築板を形成することができる。
【0026】
また,上記建築板の意匠表面には,その最表面にクリアー塗料層が設けてあることが好ましい(請求項5)。
この場合には,上記露出表面及び上記被覆表面を形成した建築板の意匠表面を,上記クリアー塗料層により保護することができ,建築板の耐候性等を向上させることができる。
【0027】
また,上記第2の発明においては,上記掻取りロールは,スポンジ材料よりなるスポンジ層と,ゴム材料よりなると共に上記スポンジ層の外周側に配設したゴム層とを有しており,上記バックアップロールは,該バックアップロールを上記掻取りロールの方向に押圧する押圧手段を有していることが好ましい(請求項7)。
【0028】
この場合には,上記スポンジ層を形成するスポンジ材料の材質と,上記ゴム層を形成するゴム材料の材質と,上記押圧手段による押圧力とを調節することにより,掻取りロール及びバックアップロールが建築板に付与する圧力を容易に設定することができる。これにより,これらのロールの間の隙間に搬入される複数の建築板の厚みにばらつきがあっても,掻取りロールは,略同一の圧力で上記各建築板の凸部及び凹部の内面に安定して当接することができる。
【0029】
また,上記スポンジ材料とは,ゴム,合成樹脂等を発泡成形して製作した材料をいい,上記ゴム材料に比べて硬度が低く,反発弾性が低いものをいう。
上記ゴム材料とは,種々のゴムよりなる材料をいい,上記スポンジ材料よりも硬度が高く,反発弾性が高いものをいう。
また,上記押圧手段としては,スプリングを用いて構成したもの,又はシリンダー,ガスクッション等の所定の反発力を有して往復動作可能なものがある。
【0030】
また,上記第3の発明においては,上記上側塗料層形成工程においては,上記掻取り具は掻取りロールとし,さらに該掻取りロールに対向配設すると共に上記意匠表面とは反対側の建築板裏面に当接させるバックアップロールを準備し,上記掻取りロール及び上記バックアップロールを,異なる厚みを有する複数の建築板に対しても,略同一の圧力でそれぞれ上記意匠表面及び上記建築板裏面に当接させて,上記露出表面及び上記被覆表面を形成することが好ましい(請求項9)。
【0031】
この場合には,上記複数の建築板の厚みにばらつきがあっても,掻取りロールは,略同一の圧力で上記各建築板の凸部及び凹部の内面に当接することができる。そのため,厚みの異なる複数の建築板に対しても,上記異なる色彩又は色調等の色外観を呈する凹部を安定して形成することができる。
【0032】
【実施例】
以下に,図面を用いて本発明の建築板並びにその製造装置及び製造方法にかかる実施例につき説明する。
(実施例1)
本例の建築板1は,図1に示すごとく,多数の凸部20を形成してなる凹凸模様203を有する原板2の意匠表面201に,下側塗料層3としてのシーラー層,上側塗料層4としての塗料層を順次設けてなるものである。
上記多数の凸部20同士の間に形成された多数の凹部23の底面231のいずれかには,この底面231よりもさらに陥没した複数の微細凹部24が形成されている。そして,上記各底面231のいずれかには,上記下側塗料層3が露出した露出表面101が形成されている。また,上記多数の微細凹部24には,上記下側塗料層3の表面を上側塗料層4が覆った被覆表面102が形成されている。
【0033】
以下に,これを詳説する。
本例における建築板1は,量産可能な窯業系建築板1である。
そして,図1に示すごとく,本例の建築板1においては,上記露出表面101は,上記多数の凹部23のうちの一部の凹部23の底面231に形成されており,上記被覆表面102は,残りの凹部23の底面231に形成されている。また,被覆表面102は,凹部23の底面231における微細凹部24にも形成されている。
また,上記露出表面101は,上記多数の凸部20のうちの一部の凸部20にも形成されており,上記被覆表面102は,残りの凸部20にも形成されている。
【0034】
また,本例の建築板1においては,上記凹部23における微細凹部24は,上記露出表面101が形成された凹部23の底面231に形成されているだけでなく,上記被覆表面102が形成された凹部23の底面231にも形成されている。
また,本例においては,上記凹部23の内面における略平坦面としての底面231に上記露出表面101を形成している。一方で,凹部23における露出表面101は,凹部23におけるU字型,V字型あるいは波型等の内面に形成していてもよい。
【0035】
以下に,上記凹部23において露出表面101及び被覆表面102を有する建築板1を製造する方法につき説明する。
本例の建築板1の製造方法においては,以下の準備工程,下側塗料層形成工程,上側塗料層形成工程及びクリアー層形成工程を行って,上記建築板1を製造する。
すなわち,図3に示すごとく,上記準備工程においては,凹凸模様203を設けた意匠表面201を有し,上記凹凸模様203における上記凸部20同士の間に形成された凹部23の底面231には,この底面231よりもさらに陥没した微細凹部24を形成してなる原板2を準備する。
【0036】
本例の原板2は,セメント質原料(セメント,ケイ酸原料等)に,木質原料(木繊維,木チップ等),添加剤及び水等を混合して混合原料とし,これを成形型の成形板上に散布して成形(フォーミング)したセメント系原板2である。
そして,このセメント系原板2の意匠表面201には,多数の上記凸部20及び凹部23が形成されている。また,このセメント系原板2の意匠表面201は,上記多数の凸部20の全体の意匠表面突出高さHが,ほぼ同一の高さになるよう形成した。
なお,意匠表面突出高さHとは,図3に示すごとく,上記セメント系原板2の裏面202から各凸部20の各頂点部200までもしくは凹部23までの高さ(厚み)Hのことをいう。
【0037】
図4に示すごとく,上記セメント系原板2においては,上記凸部20及び凹部23の多くは,長尺状に形成されており,残りの凸部20及び凹部23は,上記意匠表面201の面方向に広がる山状又は波状等の不規則な形状を有して形成されている。そして,上記長尺状の凹部23の底面231及び上記不規則な形状の凹部23の底面231のいずれかには,上記微細凹部24が導管溝状に形成されている。
また,上記長尺状の凹部23は,これらの長尺方向に直交する横断面方向における底面231の幅が,一定ではなく,実際の木材のようにばらつきを有して変化している。
【0038】
そして,図4に示すごとく,本例のセメント系原板2の意匠表面201における凹凸模様203は,上記長尺状の凸部20及び凹部23と上記不規則な形状を有する凸部20及び凹部23とにより木目調を形成している。
そして,主に,上記長尺状の凸部20及び凹部23は,木目調における柾目の部分205を形成しており,上記不規則な形状を有する凸部20及び凹部23は,木目調における板目の部分206を形成している。また,上記微細凹部24は,特に上記板目の部分206の凹部23の底面231に多く形成されている。
【0039】
次いで,図5に示すごとく,上記下側塗料層形成工程においては,上記セメント系原板2を加熱した後,このセメント系原板2の意匠表面201に第1塗料30を塗布し,この第1塗料30を乾燥させる。そして,セメント系原板2の意匠表面201の全体,すなわち,上記凸部20及び凹部23の全体に上記下側塗料層3を形成する。
【0040】
次いで,図6に示すごとく,上記上側塗料層形成工程においては,上記下側塗料層3の表面に第2塗料40を塗布しこの第2塗料40が乾燥する前に,上記セメント系原板2の意匠表面201に掻取り具としての掻取りロール51を当接させる。このとき,図7に示すごとく,上記底面231に塗布された第2塗料40の一部は上記掻取りロール51に付着して掻き取られる。
【0041】
そして,図1に示すごとく,この掻取りを行った底面231に,上記下側塗料層3が露出した露出表面101が形成されると共に,上記微細凹部24に,上記下側塗料層3の表面を上記第2塗料40による上側塗料層4が覆った被覆表面102が形成される。
そして,上記露出表面101及び被覆表面102を形成したセメント系原板2を乾燥させる。
【0042】
次いで,図示は省略するが,上記クリアー層形成工程においては,上記乾燥させた露出表面101及び被覆表面102に,クリアー塗料層を形成するためのクリアー塗料を塗布して乾燥させる。そして,上記セメント系原板2の意匠表面201の最表面に,耐候性等を向上させるためのクリアー塗料層を形成する。
こうして,上記凹部23において露出表面101及び被覆表面102を有する建築板1を製造することができる。
【0043】
以下に,上記上側塗料層形成工程につき詳説する。
図8に示すごとく,本例の上側塗料層形成工程においては,上記セメント系原板2の意匠表面201に当接して,上記第2塗料40が乾燥する前にこの第2塗料40の一部を掻き取る掻取りロール51と,この掻取りロール51に対向配設すると共に,上記セメント系原板2の裏面202に当接するバックアップロール52とを有する建築板の製造装置5を用いる。また,この製造装置5は,掻取りロール51のロール表面510に当接して,この掻取りロール51により掻き取った塗布塗料40をロール表面510より除去する掻取りブレード54を有している。
【0044】
そして,上記掻取りロール51及びバックアップロール52は,それぞれ揺動又は弾性変形して,それらの間の隙間59を上記セメント系原板2の厚みの変化に応じて変更できるよう構成されている。また,これらのロール51,52は,異なる厚みを有する複数のセメント系原板2に対しても,略同一の圧力で当接することができるよう構成されている。
【0045】
また,図8に示すごとく,上記セメント系原板2の厚みの変化に応じた隙間59の変更,及び略同一の圧力での当接を行うことができるよう,上記掻取りロール51は,スポンジ材料よりなるスポンジ層512と,ゴム材料よりなると共に上記スポンジ層512の外周側に配設したゴム層513とを有している。また,上記バックアップロール52は,このバックアップロール52を上記掻取りロール51の方向に押圧する押圧手段53を有している。
すなわち,本例では,上記スポンジ層512によって上記掻取りロール51は弾性変形可能になっており,上記押圧手段53によって上記バックアップロール52は掻取りロール51に対向する方向に揺動可能になっている。
【0046】
また,本例では,上記掻取りロール51におけるスポンジ層512を形成するスポンジ材料の材質と,上記ゴム層513を形成するゴム材料の材質と,上記バックアップロール52における押圧手段53による押圧力とを調節して,掻取りロール51及びバックアップロール52は,厚みが異なるセメント系原板2に対しても略同一の当接圧力で当接できるよう設定されている。また,この当接圧力の設定においては,掻取りロール51が上記凸部20だけではなく,上記凹部23の底面231にも当接できるようにした。
【0047】
また,図8に示すごとく,上記掻取りロール51は,上記スポンジ層512の中心部分には,鉄芯511を有している。本例では,上記スポンジ層512のスポンジ材料は,ブチルスポンジゴムよりなる。また,上記ゴム層513のゴム材料は,ゴム硬度が約50度のEPDM(エチレンプロピレンゴム)よりなる。また,上記押圧手段53は,弾性変形可能なスプリング531を用いて構成したスプリング装置53である。また,上記バックアップロール52は,ゴム製のロールよりなる。
【0048】
そして,本工程においては,上記セメント系原板2の下側塗料層3の表面の全体,すなわち上記凸部20の全体と上記凹部23の全体とに形成された下側塗料層3の表面に,上記上側塗料層4を形成するための第2塗料40を一括して塗布する。なお,第2塗料40の温度は,約20℃になるよう調節した。また,この第2塗料40を塗布する際の上記セメント系原板2の温度は,35〜75℃とした。
【0049】
そして,図8に示すごとく,この第2塗料40が乾燥する前に,上記セメント系原板2を,上記掻取りロール51とバックアップロール52との間の隙間59に搬入させる。このとき,図6に示すごとく,掻取りロール51のロール表面510には,上記第2塗料40を塗布したセメント系原板2の意匠表面201が当接し,バックアップロール52のロール表面520には,セメント系原板2の裏面202が当接する。また,上記掻取りロール51に対しては,上記意匠表面201の凸部20の頂点部200と上記凹部23の底面231とが当接する。本例では,掻取りロール51のロール表面510に当接する凹部23の底面231は,3〜50mmの幅を有している。
【0050】
そして,図8に示すごとく,上記当接のとき,上記セメント系原板2の厚みに,数ミリ(例えば,±1.5mm)のばらつきがあっても,上記掻取りロール51及びバックアップロール52は,このセメント系原板2の厚みのばらつきに対応して揺動又は弾性変形することができる。また,上記セメント系原板2の厚みにばらつきがあっても,上記掻取りロール51及びバックアップロール52は,略同一の圧力でそれぞれ上記セメント系原板2の意匠表面201及び裏面202に当接することができる。
そのため,上記セメント系原板2の厚みにばらつきがあっても,掻取りロール51及びバックアップロール52は,上記揺動又は弾性変形を行って,上記凸部20だけでなく上記凹部23の底面231にも安定して当接することができる。
【0051】
そして,図7に示すごとく,上記凹部23の底面231に塗布された第2塗料40は,上記掻取りロール51に付着し,この掻取りロール51によって掻き取られる。また,一部の凸部20の頂点部200における第2塗料40も掻き取られる。
そのため,図1に示すごとく,上記凹部23の底面231には,上記下側塗料層3が露出した露出表面101が形成される。また,この露出表面101は,上記一部の凸部20の頂点部200にも形成される。
【0052】
一方で,図7に示すごとく,上記凹部23の底面231における微細凹部24に塗布された第2塗料40は,上記掻取りロール51によって掻き取られない。そして,この第2塗料40は,上記微細凹部24における下側塗料層3の表面に残存し,上記上側塗料層4を形成する。
そのため,図1に示すごとく,上記微細凹部24には,上記被覆表面102が形成される。また,この被覆表面102は,上記露出表面101を形成した部分以外のすべての部分に形成される。
【0053】
本例においては,上記凹部23の底面231における露出表面101は,多数の凹部23のうちの一部の凹部23に形成された。そして,上記のごとく,多数の凹部23の底面231の幅は,一定ではなく実際の木材のようにばらつきを有して変化していた。そして,特に,露出表面101が形成された凹部23の底面231は,3〜50mmの幅を有しており,被覆表面102が形成された凹部23の底面231は3mm未満の幅を有していた。
【0054】
このように,上記凹部23の底面231の幅を変化させておくことにより,一部の底面231に露出表面101を形成すると共に,他の底面231に被覆表面102を形成することができる。
なお,凹部23の底面231の幅を3mm以上にしたことにより,掻取りロール51のロール表面510がこの凹部23の底面231に当接しやすくなるため,上記のごとく露出表面101を形成できたものと考えられる。
【0055】
また,従来の建築板の製造装置においては,上記セメント系原板2の厚みにばらつきがあると,上記凹部23に安定して上記露出表面101を形成することが不可能であった。すなわち,セメント系原板2の厚みが小さいと,上記掻取りロール51が上記凸部20だけに当接し,凹部23に当接することができず露出表面101を形成することができなかった。一方で,セメント系原板2の厚みが大きいと,上記掻取りロール51がほとんどの凸部20及び凹部23の底面231に当接してしまい,露出表面101を多く形成しすぎてしまっていた。
【0056】
そこで,本例においては,上記隙間59をセメント系原板2の厚みの変化に応じて変更でき,異なる厚みを有する複数のセメント系原板2に対しても,略同一の圧力で当接することができる掻取りロール51及びバックアップロール52を有する建築板の製造装置5を用いた。そのため,上記隙間59に搬入されるセメント系原板2の厚みにばらつきがあっても,掻取りロール51は,上記凸部20及び上記一部の凹部23の底面231に安定して当接することができる。
このように,本例の建築板の製造装置5によれば,厚みの異なる複数のセメント系原板2に対しても,上記一部の凹部23の底面231に露出表面101を安定して形成することができる。
【0057】
以下に,上記製造装置5を用いた製造方法により製造した建築板1の作用効果につき説明する。
図1に示したように,上記建築板1においては,意匠表面201に形成された凹凸模様203における凹部23は,その底面231に,これよりもさらに陥没した微細凹部24を有している。そして,上記意匠表面201における各部の意匠表面突出高さH(図3参照)の関係は,凸部20に対して凹部23が低く,さらに凹部23に対して微細凹部24が低くなっている。
そして,上記底面231には,上記露出表面101が形成されており,上記微細凹部24には,上記被覆表面102が形成されている。
【0058】
すなわち,上記建築板1の意匠表面201においては,上記凹部23の底面231において,上記下側塗料層3による色外観を呈する露出表面101と,上記微細凹部24に形成された上側塗料層4による色外観を呈する被覆表面102とが混在する。
そのため,上記建築板1の意匠表面201は,従来のように各部(凹凸)の突出高さHの高低の違いにより異なる色彩又は色調等の色外観を呈するのではなく,上記凹部23だけにおいても異なる色彩又は色調等の色外観を呈することができる。
【0059】
また,図2に示したように,本例においては,上記建築板1の意匠表面201に,上記多数の凸部20によって木目調の凹凸模様203を形成した。そして,上記凹部23の底面231において形成した露出表面101により,特に木目調の板目の部分206の外観を表現することができる。また,凹部23の底面231において,上記微細凹部24に形成した被覆表面102により,この板目の部分206の繊細な木の質感を表現をすることができる。
【0060】
そのため,上記木目調の形成により,上記建築板1は,あたかも実際の木材より製作した木材板であるかのような自然で複雑な意匠外観を呈することができる。
これにより,例えば,上記建築板1を建築物の外壁として施工した際には,木造建築のような外観を呈することができると共に,実際の木材板のように水分等を吸収することがなく,耐候性に優れた外壁を形成することができる。
【0061】
また,本例においては,上記下側塗料層3を形成するための第1塗料30には,薄い色あるいは明るい色の塗料を使用し,上記上側塗料層4を形成するための第2塗料40には,第1塗料30よりも濃い色あるいは暗い色の塗料を使用した。そのため,下側塗料層3が露出した露出表面101においては,明るい色外観を表現することができ,下側塗料層3の表面を上側塗料層4が覆った被覆表面102においては,暗い色外観を表現することができる。
【0062】
そして,図2に示したように,上記露出表面101は,特に木目調の板目の部分206の凸部20及び凹部23に多く形成し,上記被覆表面102は,特に木目調の柾目の部分205の凸部20及び凹部23に多く形成した。そのため,上記木目調の意匠外観を有する建築板1においては,板目の部分206が明るい色外観を呈していると共に柾目の部分205が暗い色外観を呈している。また,板目の部分206の凹部23には微細凹部24による暗い色外観が表現されている。これにより,上記建築板1は,より一層自然で複雑な意匠外観を呈することができる。
【0063】
また,上記第1塗料30及び第2塗料40には,略同一の色素の濃淡又は明暗を変化させた塗料30,40を用いることができる。そして,上記セメント系原板2の意匠表面201に,これらの塗料30,40の塗装を行う際には,略同一の色素を有する第1塗料30及び第2塗料40を1組とし,この塗料30,40の組を,種々の色素についても準備してして使い分けることができる。
【0064】
また,上記第1塗料30及び第2塗料40には,いずれも水系の塗料を用いた。そして,特に上記第2塗料40に水系の塗料を用いたことにより,この第2塗料40が乾燥し難い状態を形成した。これにより,上記セメント系原板2の下側塗料層3の表面に第2塗料40を塗布した後,これが乾燥する前に,上記掻取りロール51によって上記凸部20の頂点部200及び上記凹部23の底面231より第2塗料40を掻き取ることが容易である。
【0065】
また,図2,図4に示すごとく,上記建築板1の意匠表面201には,凹凸模様形成部25と,この凹凸模様形成部25よりも陥没した目地部26とが形成されている。そして,目地部26は,建築板1の長手方向Lに沿って形成された縦目地部261と,これに直交する横目地部262とからなる。
そして,上記建築板1の意匠表面201においては,図9に示すごとく,上記凸部20の断面形状を工夫することにより,以下の木目調における陰影模様を表現することもできる。
【0066】
すなわち,図4に示すごとく,上記柾目の部分205及び板目の部分206を形成する凸部20のほとんどは,上記長手方向Lに向かって形成されている。また,上記縦目地部261同士の間の凹凸模様形成部25において,上記板目の部分206は,上記柾目の部分205同士の間に形成されている。この状態において,図9に示すごとく,板目の部分206を形成する凸部20の断面形状は,上記縦目地部261同士の間の中央側に位置する側壁面208を緩やかな緩傾斜面208に形成し,外側に位置する側壁面209を上記緩傾斜面208よりも急な急傾斜面209に形成する。
【0067】
そして,同図に示すごとく,上記上側塗料層形成工程を行ったときには,緩傾斜面208に上記露出表面101が形成されると共に,急傾斜面209に上記被覆表面102が形成されることにより,木目調における柾目と板目とによる陰影模様を形成することができる。
【0068】
(実施例2)
本例は,図10に示すごとく,上記凹凸模様203を形成する複数の凸部20が,その頂点部210に略平坦面211を形成してなる平坦凸部21と,その頂点部220に尖り端部221を形成してなる尖り凸部22とよりなる例である。そして,上記平坦凸部21の略平坦面211には,上記下側塗料層3が露出した露出表面101が形成されていると共に,上記尖り凸部22の尖り端部221には,上記下側塗料層3の表面を上記上側塗料層4が覆った被覆表面102が形成されている例である。
【0069】
ここに,図11に示すごとく,上記平坦凸部21は,その頂点部210の断面形状が2つの鈍角θ1を有して形成されるものである。そして,この2つの鈍角θ1の間に形成された面が上記略平坦面211である。また,この略平坦面211には,平坦な平坦面211(図11(a)参照),円弧状の面211(図11(b)参照),波状の面211(図11(c)参照)等がある。また,本例では,上記略平坦面211は,その断面形状における幅Wが1〜15mmに形成されている。
【0070】
また,図12に示すごとく,上記尖り凸部22は,その頂点部220の断面形状が1つの鋭角θ2を有して形成されるものである。そして,この1つの鋭角θ2によって形成された端部が上記尖り端部221である。この尖り端部221には,ほぼ完全な尖り端部221(図12(a)参照),円弧状の端部221(図12(b)参照),波状の端部221(図12(c)参照)等がある。
【0071】
本例においては,図13に示すごとく,上記上側塗料層形成工程において,上記第2塗料40を塗布した後に建築板1を掻取りロール51とバックアップロール52との間の隙間59に搬入したときには,上記掻取りロール51のロール表面510には,上記平坦凸部21の略平坦面211及び上記尖り凸部22の尖り端部221が当接すると共に,上記凹部23の底面231が当接する。
【0072】
そして,図14に示すごとく,掻取りロール51によって,上記略平坦面211に塗布された第2塗料40が掻き取られると共に,上記凹部23の底面231に塗布された塗料が掻き取られる。そして,図10に示すごとく,略平坦面211と底面231とに上記露出表面101が形成される。
また,一方で,図10に示すごとく,上記露出表面101を形成した部分以外の意匠表面201の部分には,上記尖り端部221及び上記微細凹部24を含めて,上記被覆表面102が形成される。
【0073】
このようにして,本例の建築板1の意匠表面201においては,上記凹部23の底面231だけでなく,上記各凸部21,22においても,上記下側塗料層3による色外観を呈する露出表面101と,上記上側塗料層4による色外観を呈する被覆表面102とが混在する。そのため,上記建築板1の意匠表面201は,上記凹部23及び各凸部21,22において異なる色彩又は色調等の色外観を呈することができる。
本例においても,その他は上記実施例1と同様であり,上記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【0074】
(実施例3)
本例は,図15に示すごとく,上記建築板の製造装置5が,上記掻取りロール51のロール表面510に当接して,この掻取りロール51と共に回転するドクターロール55を有している例である。
そして,本例の製造装置5においては,上記掻取りロール51と上記ドクターロール55との間に,上記第2塗料40による塗装を補填するための補填塗料60を貯留する塗料貯留部56を形成している。そして,本例の製造装置5は,掻取りロール51及びドクターロール55の回転に伴って,上記塗料貯留部56内の補填塗料60を,掻取りロール51のロール表面510に供給するよう構成されている。
【0075】
本例においては,図15に示すごとく,上記掻取りブレード54によって第2塗料40の掻取りが行われた後のロール表面510に,ドクターロール55及び掻取りロール51の回転に伴って所定量の補填塗料60の供給を行うことができる。また,上記ロール表面510に供給された補填塗料60は,掻取りロール51とバックアップロール52との間の隙間59を通過するセメント系原板2の意匠表面201に対しても供給される。
そのため,このセメント系原板2の意匠表面201における上記第2塗料40の表面に,上記所定量の補填塗料60が補填される。そして,上記意匠表面201における第2塗料40の塗布状態が微調整される。
【0076】
そのため,本例の製造装置5において,複数のセメント系原板2に対して繰り返し上記第2塗料40の掻取りを行っても,この第2塗料40の掻き取られ方にばらつきが生じることがほとんどない。また,掻取りが行われるとほぼ同時,あるいは掻取りが行われる寸前に補填塗料60がセメント系原板2の意匠表面201に補填されるため,掻取りロール51の掻取りを安定させることができる。
そのため,本例の製造装置5によって掻取りを行って製造した複数の建築板1は,各建築板1が呈する意匠外観にほとんどばらつきがない。それ故,本例の製造装置5によれば,ほぼ同様の意匠外観を呈する複数の建築板1を,安定して量産することができる。
【0077】
また,図15に示すごとく,上記製造装置5は,バックアップロール52の洗浄を行う洗浄液571を貯留する洗浄槽57と,バックアップロール52のロール表面520に当接して,上記洗浄を行った後の洗浄液571をこのロール表面520より掻き落とす洗浄ブレード58とを有している。そして,バックアップロール52のロール表面520の一部は,上記洗浄液571に接触しており,バックアップロール52は洗浄が行われた後で上記セメント系原板2の裏面202に当接する。
【0078】
このバックアップロール52の洗浄により,上記セメント系原板2の意匠表面201に塗装した第1塗料40又は第2塗料50等がバックアップロール52に付着してしまった場合でも,これを洗浄してバックアップロール52のロール表面520の汚れをとることができる。
本例においても,その他は上記実施例1と同様であり,上記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【0079】
【発明の効果】
上述のごとく,本発明によれば,凹凸模様の凹部だけにおいても異なる色彩又は色調等の色外観を呈することができ,より複雑な意匠外観を呈することができる建築板並びにその製造装置及び製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における,建築板を示す断面説明図。
【図2】実施例1における,建築板を示す平面図。
【図3】実施例1における,セメント系原板を示す断面説明図。
【図4】実施例1における,セメント系原板を示す平面図。
【図5】実施例1における,上側塗料層を形成したセメント系原板を示す断面説明図。
【図6】実施例1における,凸部の頂点部と凹部の底面とに掻取りロールのロール表面を当接させた状態を示す断面説明図。
【図7】実施例1における,凸部の頂点部及び凹部の底面の一部の第2塗料を掻き取った状態を示す断面説明図。
【図8】実施例1における,建築板の製造装置を示す説明図。
【図9】実施例1における,他の建築板を示す断面説明図。
【図10】実施例2における,建築板を示す断面説明図。
【図11】実施例2における,セメント系原板の意匠表面における平坦凸部の略平坦面を示す図で,(a)平坦面,(b)円弧状の面,(c)波状の面を示す断面拡大説明図。
【図12】実施例2における,セメント系原板の意匠表面における尖り凸部を示す図で,(a)ほぼ完全な尖り端部,(b)円弧状の端部,(c)波状の端部を示す断面拡大説明図。
【図13】実施例2における,平坦凸部の略平坦面及び尖り凸部の尖り端部と凹部の底面とに掻取りロールのロール表面を当接させた状態を示す断面説明図。
【図14】実施例2における,平坦凸部の略平坦面及び凹部の底面の一部の第2塗料を掻き取った状態を示す断面説明図。
【図15】実施例3における,建築板の製造装置を示す説明図。
【符号の説明】
1...建築板,
101...露出表面,
102...被覆表面,
2...セメント系原板(原板),
201...意匠表面,
202...裏面,
203...凹凸模様(木目調),
205...柾目の部分,
206...板目の部分,
20...凸部,
200...頂点部,
23...凹部,
231...底面,
24...微細凹部,
3...下側塗料層,
30...第1塗料,
4...上側塗料層,
40...第2塗料,
5...建築板の製造装置,
51...掻取りロール,
510...ロール表面,
511...鉄芯,
512...スポンジ層,
513...ゴム層,
52...バックアップロール,
53...押圧手段,
531...スプリング,
Claims (9)
- 複数の凸部を形成してなる凹凸模様を有する原板の意匠表面に,下側塗料層及び上側塗料層を順次設けてなる建築板において,
上記凸部同士の間に形成された凹部の内面には,該内面よりもさらに陥没した微細凹部を形成しており,
上記内面には,上記下側塗料層が露出した露出表面が形成されていると共に,上記微細凹部には,上記下側塗料層の表面を上側塗料層が覆った被覆表面が形成されていることを特徴とする建築板。 - 請求項1において,上記露出表面は,上記下側塗料層の表面に上記上側塗料層を形成するための塗料を塗布した後,該塗料が乾燥する前に,該塗料を除去することにより形成したものであることを特徴とする建築板。
- 請求項1又は2において,上記凹部及び上記微細凹部は長尺状に形成されていることを特徴とする建築板。
- 請求項1〜3のいずれか一項において,上記意匠表面における凹凸模様は,木目調を形成していることを特徴とする建築板。
- 請求項1〜4のいずれか一項において,上記建築板の意匠表面には,その最表面にクリアー上側塗料層が設けてあることを特徴とする建築板。
- 複数の凸部を形成してなる凹凸模様を有する原板の意匠表面に,下側塗料層及び上側塗料層を順次設けてなり,上記凸部同士の間に形成された凹部の内面には,該内面よりもさらに陥没した微細凹部を形成しており,上記内面には,上記下側塗料層が露出した露出表面が形成されていると共に,上記微細凹部には,上記下側塗料層の表面を上側塗料層が覆った被覆表面が形成されてなる建築板を製造する装置において,
該製造装置は,上記原板の意匠表面に当接して,該意匠表面に塗布された上記上側塗料層を形成するための塗料の一部を該塗料が乾燥する前に掻き取る掻取りロールと,
該掻取りロールに対向配設すると共に,上記原板の裏面に当接するバックアップロールとを有しており,
上記掻取りロール及び上記バックアップロールは,それぞれ揺動又は弾性変形して,それらの間の隙間を上記原板の厚みの変化に応じて変更でき,かつ,異なる厚みを有する複数の上記原板に対しても,略同一の圧力で当接することができるよう構成されていることを特徴とする建築板の製造装置。 - 請求項6において,上記掻取りロールは,スポンジ材料よりなるスポンジ層と,ゴム材料よりなると共に上記スポンジ層の外周側に配設したゴム層とを有しており,
上記バックアップロールは,該バックアップロールを上記掻取りロールの方向に押圧する押圧手段を有していることを特徴とする建築板の製造装置。 - 凹凸模様を設けた意匠表面を有し,上記凹凸模様における上記凸部同士の間に形成された凹部の内面には,該内面よりもさらに陥没した微細凹部を形成してなる原板を準備する準備工程と,
上記原板の意匠表面に第1塗料を塗布し乾燥して,該意匠表面に下側塗料層を形成する下側塗料層形成工程と,
上記下側塗料層の表面に第2塗料を塗布しこれが乾燥する前に,上記意匠表面に掻取り具を当接させて,上記内面には,上記下側塗料層が露出した露出表面を形成すると共に,上記微細凹部には,上記下側塗料層の表面を上記第2塗料による上側塗料層が覆った被覆表面を形成する上側塗料層形成工程とを行うことを特徴とする建築板の製造方法。 - 請求項8において,上記上側塗料層形成工程においては,上記掻取り具としての掻取りロールと,該掻取りロールに対向配設すると共に上記原板の裏面に当接するバックアップロールを準備し,
上記掻取りロール及び上記バックアップロールを,異なる厚みを有する複数の上記原板に対しても,略同一の圧力で当接させて,上記露出表面及び上記被覆表面を形成することを特徴とする建築板の製造方法。
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