JP4348088B2 - 建築板の製造装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は,意匠表面に塗布された塗布塗料の一部を掻き取って建築板を製造する建築板の製造装置に関する。
【0002】
【従来技術】
例えば,建築物の外壁に施工するために量産される建築板においては,単調な仕上り感を避けるために,建築板の意匠表面の凹凸模様,この意匠表面の塗装の仕方等の工夫がなされている。そして,例えば,特許文献1に示すように,上記意匠表面が,立体的な外観を呈するように努力がなされている。
この特許文献1においては,建築板の意匠表面に凹凸模様を形成し,この凹凸模様における凸部と凹部との色彩を異ならせることにより,意匠表面が立体的な外観を呈する建築板を形成している。
【0003】
そして,特許文献1においては,建築板用原板の意匠表面に第1の塗料層を形成し,この表面に第2の塗料を塗布しこれが乾燥する前に,上記凸部に塗布された第2の塗料を掻き取って第2の塗料層を形成する。こうして,上記凸部において第1の塗料層を露出させて,この第1の塗料層と上記第2の塗料層とによる色彩の変化を建築板に形成している。
また,上記特許文献1と同様に掻取りロールによって掻取りを行って,色調の変化を形成した建築板としては,特許文献2に示されるものがある。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−317631号公報
【特許文献2】
特開平11−310485号公報
【0005】
【解決しようとする課題】
しかしながら,上記特許文献1においては,上記掻取り具においては,上記凸部に塗布された第2塗料を掻き取る以外には特別な工夫がない。そのため,上記掻取り具の表面の乾燥を防止することができず,掻取り具の耐久性を悪化させてしまうおそれがある。
【0006】
一方で,上記特許文献2においては,掻取りロールには,これが掻き取った塗料を掻取りロールの表面より除去するための掻取りブレードが配設されている。そして,掻取りブレードと掻取りロールとの間に形成した凹部に塗料又は水を貯留している。そのため,この塗料又は水を上記掻取りロールに供給して,この掻取りロールの表面の乾燥を防ぐことができる。
【0007】
しかしながら,上記掻取りブレードは,掻取りロールの表面より塗料を除去することを主目的とするものであって,掻取りロールの表面への塗料又は水の供給にはばらつきがある。そのため,特に量産を行う建築板においては,繰り返し掻取りを行ううちに塗料の掻き取られ方に変化が生じるおそれがある。そして,このときには,製造した各建築板が呈する外観にばらつきが生じてしまうおそれがある。
【0008】
本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,掻取りロールの掻取りを安定させることができ,ほぼ同様の意匠外観を呈する複数の建築板を安定して量産することができる建築板の製造装置を提供しようとするものである。
【0009】
【課題の解決手段】
本発明は,建築板用原板の意匠表面に当接して,該意匠表面に塗布された塗布塗料の一部を掻き取る掻取りロールと,
該掻取りロールに対向配設すると共に,上記建築板用原板の裏面に当接して,上記掻取りロールとの間の隙間に上記建築板用原板を通過させるバックアップロールと,
上記掻取りロールのロール表面に当接して,該掻取りロールにより掻き取った塗布塗料を上記ロール表面より除去する掻取りブレードと,
上記掻取りロールのロール表面に当接して,該掻取りロールと共に回転するドクターロールとを有しており,
上記掻取りロールと上記ドクターロールとの間には,補填塗料を貯留する塗料貯留部を形成しており,
上記掻取りロール及び上記ドクターロールの回転に伴って,上記塗料貯留部内の補填塗料を,上記掻取りロールのロール表面に供給するよう構成してあることを特徴とする建築板の製造装置にある(請求項1)。
【0010】
本発明の建築板の製造装置は,上記掻取りロールと上記バックアップロールとを有しており,これらのロールの間の隙間に上記建築板用原板を通過させ,掻取りロールに上記塗布塗料の一部を付着させて掻き取るものである。そして,この製造装置は,上記掻取りブレードを有しており,上記掻取りを行った塗布塗料を掻取りロールのロール表面より除去することができる。
さらに,上記製造装置は,上記ドクターロールを有しており,このドクターロールと上記掻取りロールとの間に,上記補填塗料を貯留する塗料貯留部を形成している。そして,上記製造装置は,上記塗料貯留部から補填塗料を掻取りロールのロール表面に供給するよう構成されている。
【0011】
そのため,上記掻取りロールによって掻取りを行う際には,そのロール表面に上記補填塗料が供給されている。そのため,上記掻取りブレードによって塗布塗料の一部が除去されて,乾燥した状態にある掻取りロールのロール表面に上記補填塗料を供給することができる。そのため,上記ロール表面の乾燥を防止することができ,掻取りロールの耐久性を向上させることができる。
【0012】
さらに,本発明においては,上記ロール表面への補填塗料の供給は,上記掻取りブレードとは別に設けた上記ドクターロールを用いて行う。すなわち,上記補填塗料の供給は,このドクターロールと上記掻取りロールとの間に形成した塗料貯留部より行う。そして,この補填塗料の供給は,ドクターロールと掻取りロールとの回転に伴って行われる。
そのため,上記ロール表面には,ドクターロール及び掻取りロールの回転に伴って所定量の補填塗料の供給を安定して行うことができる。
【0013】
また,上記ロール表面に供給された補填塗料は,掻取りロールとバックアップロールとの間の隙間を通過する建築板用原板の意匠表面に対しても供給される。そのため,上記建築板用原板の意匠表面における上記塗布塗料の表面に,上記所定量の補填塗料が補填される。そして,上記意匠表面における塗布塗料の塗布状態が微調整される。
そのため,上記製造装置において,複数の建築板用原板に対して繰り返し上記塗布塗料の掻取りを行っても,この塗布塗料の掻き取られ方にばらつきが生じることがほとんどない。また,掻取りが行われるとほぼ同時,あるいは掻取りが行われる寸前に補填塗料が建築板用原板の意匠表面に補填されるため,掻取りロールの掻取りを安定させることができる。
【0014】
そのため,本発明の製造装置によって掻取りを行って製造した複数の建築板は,各建築板が呈する意匠外観にほとんどばらつきがない。それ故,上記製造装置によれば,ほぼ同様の意匠外観を呈する複数の建築板を,安定して量産することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
上述した本発明における好ましい実施の形態につき説明する。
本発明において,上記建築板としては,例えば,量産を行う無機質建築板がある。また,無機質建築板としては,例えば,窯業系建築板がある。
また,上記建築板用原板とは,上記掻取りロールによって掻取りを行って製造する建築板の前状態のものをいう。
【0016】
また,上記掻取りロールは,スポンジ材料よりなるスポンジ層と,ゴム材料よりなると共に上記スポンジ層の外周側に配設したゴム層とを有しており,上記バックアップロールは,該バックアップロールを上記掻取りロールの方向に押圧する押圧手段を有していることが好ましい(請求項2)。
【0017】
この場合には,上記スポンジ層を形成するスポンジ材料の材質と,上記ゴム層を形成するゴム材料の材質と,上記押圧手段による押圧力とを調節することにより,掻取りロール及びバックアップロールが建築板用原板に付与する圧力を容易に設定することができる。そして,これらのロールの間の隙間に搬入される複数の建築板用原板の厚みにばらつきがあっても,掻取りロールは,略同一の圧力で上記各建築板用原板に安定して当接することができる。
【0018】
また,上記スポンジ材料とは,ゴム,合成樹脂等を発泡成形して製作した材料をいい,上記ゴム材料に比べて硬度が低く,反発弾性が低いものをいう。
上記ゴム材料とは,種々のゴムよりなる材料をいい,上記スポンジ材料よりも硬度が高く,反発弾性が高いものをいう。
また,上記押圧手段としては,スプリングを用いて構成したもの,又はシリンダー,ガスクッション等の所定の反発力を有して往復動作可能なものがある。
【0019】
また,上記補填塗料は,上記塗布塗料と同じ塗料よりなることが好ましい(請求項3)。
この場合には,上記掻取りブレードによってロール表面より除去した塗布塗料は,上記塗料貯留部に供給して上記補填塗料として再利用することができる。
【0020】
【実施例】
以下に,図面を用いて本発明の建築板の製造装置にかかる実施例につき説明する。
本例の建築板の製造装置5は,図1に示すごとく,建築板用原板2の意匠表面201に当接して,この意匠表面201に塗布された塗布塗料40の一部を掻き取る掻取りロール51と,この掻取りロール51に対向配設すると共に,上記建築板用原板2の裏面202に当接するバックアップロール52とを有している。そして,この製造装置5は,上記掻取りロール51とバックアップロール52との間の隙間59に,上記建築板用原板2を通過させるよう構成してある。
【0021】
また,上記製造装置5は,上記掻取りロール51のロール表面510に当接して,この掻取りロール51により掻き取った塗布塗料40を上記ロール表面510より除去する掻取りブレード54と,この掻取りブレード54により塗布塗料40の除去が行われた後の掻取りロール51のロール表面510に当接して,この掻取りロール51と共に回転するドクターロール55とを有している。
【0022】
また,上記製造装置5においては,上記掻取りロール51と上記ドクターロール55との間の凹部に,上記塗布塗料40による塗装を補填するための補填塗料60を貯留する塗料貯留部56を形成している。そして,上記製造装置5は,上記掻取りロール51及び上記ドクターロール55の回転に伴って,上記塗料貯留部56内の補填塗料60を,掻取りロール51とドクターロール55との間の隙間591より,掻取りロール51のロール表面510に供給するよう構成してある。
【0023】
以下に,これを詳説する。
本例における建築板1は,量産可能な窯業系建築板1である。
図2に示すごとく,本例において製造する建築板1は,複数の凸部21,22を形成してなる凹凸模様203を有する建築板用原板2の意匠表面201に,下側塗料層3及び上側塗料層4を順次設けてなるものである。
そして,図6に示すごとく,本例の製造装置5は,上記建築板用原板2の意匠表面201に上記下側塗料層3を形成した後において,上記上側塗料層4を形成するための上記塗布塗料40を塗布しこれが乾燥する前に,この塗布塗料40の一部を上記掻取りロール51によって掻き取って,図2に示すごとく,上記意匠表面201に上記下側塗料層3が露出した露出表面101と,上記下側塗料層3の表面を上記上側塗料層4が覆った被覆表面102とを形成するものである。
【0024】
図1に示すごとく,上記掻取りロール51は,スポンジ材料よりなるスポンジ層512と,ゴム材料よりなると共に上記スポンジ層512の外周側に配設したゴム層513とを有している。また,上記バックアップロール52は,このバックアップロール52を上記掻取りロール51の方向に押圧する押圧手段53を有している。この構成により,上記掻取りロール51及びバックアップロール52は,それぞれ揺動又は弾性変形して,それらの間の隙間59を上記建築板用原板2の厚みの変化に応じて変更できるよう構成されている。また,これらのロール51,52は,異なる厚みを有する複数の建築板用原板2に対しても,略同一の圧力で当接することができるよう構成されている。
【0025】
すなわち,図1に示すごとく,上記スポンジ層512によって上記掻取りロール51は弾性変形可能になっており,上記押圧手段53によって上記バックアップロール52は掻取りロール51に対向する方向に揺動可能になっている。そして,スポンジ層512及び押圧手段53により,複数の建築板用原板2同士の間に数ミリ(例えば±1.5mm)の厚みのばらつきがあっても,上記各ロール51,52の間の隙間59を変化させて,各ロール51,52は略同一の圧力で各建築板用原板2に当接することができる。
【0026】
また,掻取りロール51及びバックアップロール52が建築板用原板2に付与する圧力は,上記スポンジ層512を形成するスポンジ材料の材質,上記ゴム層513を形成するゴム材料の材質,上記押圧手段53による押圧力等を調節することにより,設定することができる。
【0027】
上記掻取りロール51は,上記スポンジ層512の中心部分には,鉄芯511を有している。また,本例では,上記スポンジ層512のスポンジ材料は,ブチルスポンジゴムよりなる。また,上記ゴム層513のゴム材料は,ゴム硬度が約50度のEPDM(エチレンプロピレンゴム)よりなる。また,上記バックアップロール52の押圧手段53は,弾性変形可能なスプリング531を用いて構成したスプリング装置53である。
【0028】
また,上記バックアップロール52は,ゴム製のロールよりなる。また,製造装置5は,バックアップロール52の洗浄を行う洗浄液571を貯留する洗浄槽57と,バックアップロール52のロール表面520に当接して,上記洗浄を行った後の洗浄液571をこのロール表面520より掻き落とす洗浄ブレード58とを有している。そして,バックアップロール52のロール表面520の一部は,上記洗浄液571に接触しており,バックアップロール52は洗浄が行われた後で上記建築板用原板2の裏面202に当接する。
このバックアップロール52の洗浄により,上記建築板用原板2の意匠表面201に塗布した塗料等がバックアップロール52に付着してしまった場合でも,これを洗浄してバックアップロール52のロール表面520の汚れをとることができる。
【0029】
本例では,上記ドクターロール55は,上記掻取りロール51において,上記掻取りブレード54を配設した位置よりも下方に配設してある。そして,このドクターロール55は,掻取りブレード54によって塗布塗料40の除去が行われた後のロール表面510に補填塗料60を供給する。また,この塗布塗料40の除去後のロール表面510には,掻取りロール51とドクターロール55との間の隙間591から上記補填塗料60が供給される。
【0030】
また,掻取りブレード54は,掻取りロール51が建築板用原板2の意匠表面201より塗布塗料40の掻取りを行った後,180°以上回転した後に,この掻き取った塗布塗料40を掻取りロール51のロール表面510より除去する。また,ドクターロール55は,掻取りロール51の横側,すなわち掻取りロール51が上記掻取りを行った後,約270°回転したときに接する位置に配設されている。
【0031】
本例では,上記補填塗料60は,上記塗布塗料40に用いた塗料と同一のものとしている。そのため,上記掻取りブレード54によってロール表面510より除去した塗布塗料40は,上記塗料貯留部56に供給して上記補填塗料60として再利用することが可能である。また,そのため,上記除去を行った塗布塗料40は,上記掻取りロール51によって掻取りを行う前の建築板用原板2に塗布する塗布塗料40,すなわち,本例では,後述する上側塗料層形成工程において用いる塗布塗料40として再利用することも可能である。
【0032】
以下に,上記建築板の製造装置5を用いて,上記露出表面101及び被覆表面102を有する建築板1を製造する方法につき説明する。
この建築板1の製造方法においては,以下の準備工程,下側塗料層形成工程,上側塗料層形成工程及びクリアー層形成工程を行って,上記建築板1を製造する。そして,上記建築板の製造装置5は,上記上側塗料層形成工程において用いる。
【0033】
図3に示すごとく,上記準備工程においては,複数の凸部21,22を形成してなる凹凸模様203を意匠表面201に有する建築板用原板2を準備する。
本例の建築板用原板2は,セメント質原料(セメント,ケイ酸原料等)に,木質原料(木繊維,木チップ等),添加剤及び水等を混合して混合原料とし,これを成形型の成形板上に散布して成形(フォーミング)したセメント系原板2である。
【0034】
また,同図に示すごとく,上記セメント系原板2の意匠表面201における複数の凸部21,22は,その頂点部210に略平坦面211を形成してなる平坦凸部21と,その頂点部220に尖り端部221を形成してなる尖り凸部22とよりなる。また,凸部21,22同士の間に形成された凹部23の底面231には,この底面231よりもさらに陥没した微細凹部24が形成されている。
【0035】
次いで,図4に示すごとく,上記下側塗料層形成工程においては,上記セメント系原板2を加熱した後,このセメント系原板2の意匠表面201に上記下側塗料層3を形成するための第1塗料30を塗布し,この第1塗料30を乾燥させる。そして,セメント系原板2の意匠表面201の全体,すなわち,上記凸部21,22及び凹部23の全体に上記下側塗料層3を形成する。
【0036】
次いで,図1,図5に示すごとく,上記上側塗料層形成工程においては,上記セメント系原板2の下側塗料層3の表面に第2塗料40としての上記塗布塗料40を塗布しこの塗布塗料40が乾燥する前に,このセメント系原板2を,上記掻取りロール51とバックアップロール52との間の隙間59に搬入する。このとき,掻取りロール51のロール表面510には,上記塗料貯留部56から補填塗料60が供給されている。
なお,上記第1塗料30,塗布塗料40及び補填塗料60には,いずれも水系の塗料を使用した。
【0037】
そして,図1,図5に示すごとく,上記セメント系原板2の意匠表面201が上記補填塗料60の補填が行われた掻取りロール51のロール表面510に当接し,セメント系原板2の裏面202が上記バックアップロール52のロール表面520に当接する。このとき,上記セメント系原板2の意匠表面201においては,上記塗布が行われた塗布塗料40の表面に,さらに上記補填塗料60が補填される。
【0038】
そして,図6に示すごとく,この補填塗料60の補填が行われた直後に,掻取りロール51のロール表面510が上記セメント系原板2の意匠表面201から離れて,上記塗布塗料40の一部及び補填塗料60の一部が上記ロール表面510に付着して掻き取られる。具体的には,上記掻取りロール51のロール表面510は,上記セメント系原板2の意匠表面201における複数の凸部21,22の頂点部210,220(上記平坦凸部21の略平坦面211及び尖り凸部22の尖り端部221)といずれかの凹部23の底面231に当接する。そして,平坦凸部21の略平坦面211に塗布された第2塗料40と,凹部23の底面231の一部に塗布された第2塗料40とが掻き取られる。
【0039】
こうして,図2に示すごとく,上記平坦凸部21の略平坦面211と,上記いずれかの凹部23の底面231とには,上記塗布塗料40が掻き取られて,上記下側塗料層3が露出した露出表面101が形成される。一方で,上記意匠表面201のその他の部分には,下側塗料層3の表面を上側塗料層4が覆った被覆表面102が形成される。また,上記露出表面101を形成した凹部23の底面231においては,上記微細凹部24による被覆表面102も形成される。
その後,上記露出表面101及び被覆表面102を形成したセメント系原板2を乾燥させる。
【0040】
次いで,図示は省略するが,上記クリアー層形成工程においては,上記乾燥させた露出表面101及び被覆表面102に,クリアー塗料層を形成するためのクリアー塗料を塗布して乾燥させる。そして,上記セメント系原板2の意匠表面201の最表面に,耐候性等を向上させるためのクリアー塗料層を形成する。
こうして,上記各凸部21,22及び凹部23において露出表面101及び被覆表面102を有する複雑な意匠外観の建築板1を製造することができる。
【0041】
上記建築板の製造装置5を用いた上記上側塗料層形成工程においては,図1に示したように,上記掻取りロール51によって掻取りを行う際には,そのロール表面510に上記補填塗料60が供給されている。そのため,上記掻取りブレード54によって塗布塗料40の一部が除去されて,乾燥した状態にある掻取りロール51のロール表面510に上記補填塗料60を供給することができる。そのため,上記ロール表面510の乾燥を防止することができ,掻取りロール51の耐久性を向上させることができる。
【0042】
また,上記上側塗料層形成工程においては,上記ロール表面510への補填塗料60の供給は,上記掻取りブレード54とは別に設けた上記ドクターロール55を用いて行う。すなわち,上記補填塗料60の供給は,このドクターロール55と上記掻取りロール51との間に形成した塗料貯留部56より行う。そして,この補填塗料60の供給は,ドクターロール55と掻取りロール51との回転に伴って行われる。
そのため,上記ロール表面510には,ドクターロール55及び掻取りロール51の回転に伴って所定量の補填塗料60の供給を安定して行うことができる。また,これにより,ロール表面510における濡れ性(湿気度合)がほぼ一定に保たれる。
【0043】
そして,上記ロール表面510に供給された補填塗料60は,掻取りロール51とバックアップロール52との間の隙間59を通過するセメント系原板2の意匠表面201に対しても供給される。そのため,このセメント系原板2の意匠表面201における上記塗布塗料40の表面に,上記所定量の補填塗料60が補填される。これにより,上記意匠表面201における塗布塗料40の塗布状態が微調整される。
【0044】
そのため,上記製造装置5において,複数のセメント系原板2に対して繰り返し上記塗布塗料40の掻取りを行っても,この塗布塗料40の掻き取られ方にばらつきが生じることがほとんどない。また,掻取りが行われるとほぼ同時,あるいは掻取りが行われる寸前に補填塗料60がセメント系原板2の意匠表面201に補填されるため,掻取りロール51の掻取りを安定させることができる。
【0045】
そのため,本例の製造装置5によって掻取りを行って製造した複数の建築板1は,各建築板1が呈する意匠外観にほとんどばらつきがない。それ故,上記製造装置5によれば,ほぼ同様の意匠外観を呈する複数の建築板1を,安定して量産することができる。
【0046】
上記掻取りロール51による掻取りを安定させることができる理由としては,次のように考えられる。
すなわち,本例では,上記ロール表面510への補填塗料60の供給量は,上記セメント系原板2の意匠表面201への塗布塗料40の塗布量に比べて少なくした。また,上記のごとくロール表面510における濡れ性(湿気度合)はほぼ一定に保たれている。
【0047】
そのため,上記掻取りロール51が,ほぼ一定の濡れ性を保ちながら,補填塗料60よりも絶対量の多い塗布塗料40を掻き取ることになる。
それ故,掻取りロール51は,上記セメント系原板2の意匠表面201に微量の補填塗料60を残存させながら掻取りを行ことができ,掻取りロール51による掻取りを安定させることができると考えられる。
【0048】
また,図7に示すごとく,本例のセメント系原板2の意匠表面201には,上記凹凸模様203として,長尺状の凸部21,22及び凹部23と意匠表面201の面方向において山形あるいは波形等の不規則な形状を有する凸部21,22及び凹部23とにより木目調を形成した。そして,主に,上記長尺状の凸部21,22及び凹部23により,木目調における柾目の部分205を形成し,上記不規則な形状を有する凸部21,22及び凹部23により,木目調における板目の部分206を形成した。
【0049】
そのため,上記建築板の製造装置5によって,上記建築板1の意匠表面201の一部の凸部21,22及び凹部23に上記露出表面101を形成し,その他の部位に上記被覆表面102を形成した際には,上記建築板1は,あたかも実際の木材より製作した木材板であるかのような自然で複雑な意匠外観を呈することができる。これにより,例えば,上記建築板1を建築物の外壁として施工した際には,木造建築のような外観を呈することができると共に,実際の木材板のように水分等を吸収することがなく,耐候性に優れた外壁を形成することができる。
【0050】
なお,図7に示すごとく,上記建築板1の意匠表面201には,凹凸模様形成部25と,この凹凸模様形成部25よりも陥没した目地部26とを形成した。この目地部26は,建築板1の長手方向Lに沿って形成された縦目地部261と,これに直交する横目地部262とからなるものである。
【0051】
【発明の効果】
上述のごとく,本発明によれば,掻取りロールの掻取りを安定させることができ,ほぼ同様の意匠外観を呈する複数の建築板を安定して量産することができる建築板の製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における,建築板の製造装置を示す説明図。
【図2】実施例における,製造装置により製造した建築板を示す断面説明図。
【図3】実施例における,セメント系原板を示す断面説明図。
【図4】実施例における,上側塗料層を形成したセメント系原板を示す断面説明図。
【図5】実施例における,セメント系原板の意匠表面に掻取りロールのロール表面を当接させた状態を示す断面説明図。
【図6】実施例における,セメント系原板の意匠表面に塗布された塗布塗料の一部を掻き取った状態を示す断面説明図。
【図7】実施例における,製造装置により製造した建築板を示す平面図。
【符号の説明】
1...建築板,
101...露出表面,
102...被覆表面,
2...セメント系原板(建築板用原板),
201...意匠表面,
202...裏面,
203...凹凸模様(木目調),
205...柾目の部分,
206...板目の部分,
21...平坦凸部,
211...略平坦面,
22...尖り凸部,
221...尖り端部,
23...凹部,
231...底面,
24...微細凹部,
3...下側塗料層,
30...第1塗料,
4...上側塗料層,
40...塗布塗料(第2塗料),
5...建築板の製造装置,
51...掻取りロール,
510...ロール表面,
511...鉄芯,
512...スポンジ層,
513...ゴム層,
52...バックアップロール,
53...押圧手段,
531...スプリング,
54...掻取りブレード,
55...ドクターロール,
56...塗料貯留部,
60...補填塗料,

Claims (3)

  1. 建築板用原板の意匠表面に当接して,該意匠表面に塗布された塗布塗料の一部を掻き取る掻取りロールと,
    該掻取りロールに対向配設すると共に,上記建築板用原板の裏面に当接して,上記掻取りロールとの間の隙間に上記建築板用原板を通過させるバックアップロールと,
    上記掻取りロールのロール表面に当接して,該掻取りロールにより掻き取った塗布塗料を上記ロール表面より除去する掻取りブレードと,
    上記掻取りロールのロール表面に当接して,該掻取りロールと共に回転するドクターロールとを有しており,
    上記掻取りブレードは、上記掻取りロールが上記建築用原板の意匠表面より上記塗布塗料の掻取りを行った後、180°以上回転したときに接する位置に配設されていて、
    上記ドクターロールは、上記掻取りブレードが上記掻取りロール表面の塗布塗料を掻き取った後、上記掻取りブレードを配設した位置よりも下方に配設されていて、
    上記掻取りロールと上記ドクターロールとの間には,補填塗料を貯留する塗料貯留部を形成しており,
    上記掻取りロール及び上記ドクターロールの回転に伴って,上記塗料貯留部内の補填塗料を,上記掻取りロールのロール表面に供給するよう構成してあることを特徴とする建築板の製造装置。
  2. 請求項1において,上記掻取りロールは,スポンジ材料よりなるスポンジ層と,ゴム材料よりなると共に上記スポンジ層の外周側に配設したゴム層とを有しており,
    上記バックアップロールは,該バックアップロールを上記掻取りロールの方向に押圧する押圧手段を有していることを特徴とする建築板の製造装置。
  3. 請求項1又は2において,上記補填塗料は,上記塗布塗料と同じ塗料よりなることを特徴とする建築板の製造装置。
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