JP2004204364A - 吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維およびその製造方法ならびに吸湿性布帛 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】繊維形成性重合体を鞘成分とし、親水性成分を分散した繊維形成性重合体を芯成分とした芯鞘型ポリエステル繊維であり、芯成分における親水性成分の分散径が2.0μm以下であり、かつ吸放湿パラメーター(ΔMR)が1.0%以上であることを特徴とする吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル繊維に関する。更に詳しくは吸湿性に優れたポリエステル繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート等に代表されるポリエステル繊維は、機械的強度、耐薬品性、耐熱性などに優れるため、衣料用途や産業用途などを主体に広く使用されている。
【0003】
しかしポリエステル繊維は極めて吸湿性が低いため、インナー、中衣、スポーツ衣料などの、直接的に肌に触れるあるいは肌側に近い状態で着用される分野では、肌の発汗によるムレやベタツキなどを生じ、快適性の点で天然繊維よりも劣り、前記衣料用途への進出は限定されていた。
【0004】
この欠点を解消するため、たとえば、平衡水分率(吸湿率)の高い繊維との各種の混繊、合撚、引揃えなどにより布帛として吸湿快適性を得んとする試みが開示されている(特許文献1〜3参照。)。しかし、これらの方法を用いることで確かに快適性は向上するものの、その効果は十分とはいえず、逆にその他の合成繊維特性において合成繊維を染色する際に一般的に使用される分散染料によって汚染を生じたり、同色性に劣ったり、合成繊維本来の物理的特性が失われるという問題点があった。
【0005】
また、ポリエステル繊維にアクリル酸やメタアクリル酸をグラフト重合すること、更にグラフト重合後にそれらのカルボキシル基をアルカリ金属で置換することにより吸湿性を付与する方法が知られているが、ポリエステルがグラフト重合しにくい素材であること、および染色堅牢性や耐光性、繊維物理特性、風合いなどの低下を潜在的に有していることから、実用化には到っていない。
【0006】
後加工段階で吸湿性を付与する方法では染色時あるいは得られた布帛特性の点で種々の問題があることから、繊維を製造する段階で吸湿性を付与し、かつ前記問題点を解消するため、以下のような技術が開示されている。
【0007】
まず、特定のポリアルキレングリコールを50〜70重量%配合してなるポリエステル組成物が開示されている(特許文献4参照)。この組成物を単独で繊維化した場合、繊維物性が低く、また耐水性に劣るため衣料用および産業用での使用は困難である。
【0008】
また、常湿度下で吸湿率が10%以上の吸湿性樹脂を芯部とし、それを鞘部であるポリエステルで覆った芯鞘型複合繊維が開示されている(特許文献5参照。)。しかしながら、この方法では染色などの熱水処理時に芯部の吸湿・吸水率が高いが故、芯部と鞘部との水膨潤差により鞘部に歪みがかかって繊維表面にひび割れが生じ、高次工程でのトラブルを生じやすい等の欠点がある。
【0009】
また、親水性ポリエステルを芯成分、非親水性ポリエステルを鞘成分とする芯鞘型複合ステープルについて開示されている(特許文献6参照。)。親水性ポリエステルとしてポリアルキレングリコール共重合体単独あるいは少量のポリアルキレングリコール共重合体に少量のスルホン酸や酸性リン酸エステル誘導体を配合したものを用いるものであり、ステープルとして繊維両端面を増加させ吸水性を向上させようというものである。しかしながら、本発明者等の検討では該ステープルで吸水性を向上させることはできるが、吸湿性の向上は困難であることがわかった。
【0010】
また、特定のポリエーテルエステルを芯成分とした芯鞘型の制電性複合繊維が開示されている(特許文献7参照。)。しかし、該文献に記載の効果は制電性であるが、ポリエーテル成分を単独共重合したポリエステルを芯成分として用いているため、吸湿性を含め繊維物性が経時的に劣化するという問題がある。また該ポリエーテルエステルの着色が激しく、得られる最終製品の品位が損なわれるといった問題点がある。
【0011】
また、芯鞘型吸湿性ポリエステル繊維として、アルキレンテレフタレート、アルキレンスルホイソフタレート、およびポリオキシアルキレングリコールよりなる共重合体にブロックポリエーテルエステルをブレンドして芯ポリマとして用いたものが開示されているが(特許文献8参照。)、該文献においてはブロックポリエーテルエステルの分散径についてなんら記載もなく、また、該文献記載の技術では十分な吸湿性が得ることは難しく、かつ、鞘割れを回避することができず、満足するレベルではない。
【0012】
また、本発明者等は親水性化合物を共重合した吸湿性に優れた共重合ポリエステルならびに該共重合ポリエステルを用いた吸湿性に優れた繊維を発明するに至りこれを開示した(特許文献9参照。)。しかしながら、共重合ポリエステルを繊維形成性重合体にブレンドする際、単純にチップブレンドするだけでは吸湿性は発現するものの、吸湿性を満足させるためには親水性化合物を多量共重合した共重合ポリエステルを使わなくてはならず、結果として繊維をアルカリ処理した場合フィブリル化が激しいことがわかった。
【0013】
以上から鋭意検討した結果、共重合ポリエステルを繊維形成性重合体にブレンドする際、共重合ポリエステルの分散径を小さくすることで共重合ポリエステル中の親水性化合物が少なくても高い吸湿性が発現することを見出し既に提案した(未公開の特許出願1参照。)。当該発明を更に発展させ、アルカリ処理が必要な用途でも繊維のフィブリル化を防ぐよう鋭意検討した結果、本発明に至った。
【0014】
【特許文献1】
特開昭51−67468号公報
【0015】
【特許文献2】
実開昭59−165485号公報
【0016】
【特許文献3】
特開昭60−215835号公報
【0017】
【特許文献4】
特開昭62−267352公報
【0018】
【特許文献5】
特開平2−99612号公報
【0019】
【特許文献6】
特開昭51−136924号公報
【0020】
【特許文献7】
特開昭53−111116号公報
【0021】
【特許文献8】
特開平6−123012号公報
【0022】
【特許文献9】
特開平8−198954号公報(請求項14)
【0023】
【未公開の特許出願1】
特願2002−11746号明細書
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ポリエステル繊維の強度等の特性を活かしつつ、吸湿性の優れた吸湿性ポリエステル繊維を提供することにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、繊維形成性重合体を鞘成分とし、親水性成分を分散した繊維形成性重合体を芯成分とした芯鞘型ポリエステル繊維であり、かつ繊維横断面において、芯成分中の親水性成分の分散径が2.0μm以下であり、かつ吸放湿パラメーター(ΔMR)が1.0%以上であることを特徴とする吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維である。
【0026】
また本発明は、芯鞘型ポリエステル繊維を溶融紡糸する際に、親水性成分と繊維形成性重合体とを個別に溶融してから、混練して分散せしめることを特徴とする上記の吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維の製造方法である。
【0027】
また本発明は、上記の吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維を用いたことを特徴とする吸湿性布帛である。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明の繊維では、芯成分および鞘成分で用いる繊維形成性重合体としてポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルを採用する。好ましくは衣料用合成繊維として最も汎用性の高い、ポリエチレンテレフタレートを主体とするポリエステルである。また、芯成分、鞘成分は同一の重合体でも良いし異なっても良い。
【0029】
また、機械的強度、耐薬品性、耐熱性などポリエステルの利点を損なわない範囲で、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート等を含んでいてもよい。
【0030】
またポリエステルには、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料のほか抗酸化剤、着色防止剤、帯電防止剤、耐光剤等が添加されても良い。
【0031】
本発明のポリエステル繊維は、繊維形成性重合体を鞘成分とし、親水性成分を分散した繊維形成性重合体を芯成分とした芯鞘型複合繊維とすることが重要である。当該鞘成分は、減量処理後の引裂強力低下抑制の観点から必須である。芯鞘の複合比率は重量比で95:5〜60:40とすることが好ましい。さらに好ましくは90:10〜70:30である。鞘の複合比率の上限は繊維の吸湿性といった観点から設定され、下限については減量処理後の引裂強力保持の観点から設定される。
【0032】
親水性成分は本発明の目的であるポリエステル繊維に吸湿性を付与する成分であり、ベースとなる繊維形成重合体よりも高い吸湿性を有するものである。親水性成分としては、吸湿特性(ΔMR)が4%以上のものを用いるのが好ましい。吸湿特性(ΔMR)の定義については、後述する。
【0033】
当該条件を満たし得る代表的な化合物として、ポリエーテルエステル系化合物、ポリエーテルエステルアミド系化合物、ポリオキシアルキレン化合物、ポリオキサゾリン類、ポリアクリルアミドとその誘導体、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリル酸およびその塩、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリビニルアルコール、およびポリビニルピロリドンなどがあげられる。その中でもポリエーテルエステル系化合物が好ましい。
【0034】
具体的にポリエーテルエステル化合物とは、同一分子鎖内にエーテル結合とエステル結合を有する共重合体である。より具体的にはジカルボン酸とジオールとのポリエステル成分とポリオキシアルキレングリコールからなるポリエーテル成分の共重合体である。
【0035】
ポリエステルの酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸等があげられる。またグリコール成分としてエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール等があげられる。また、本発明の効果を損なわない範囲でトリメリット酸、ピロメリット酸等の多官能カルボン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリストール如きポリオールを用いても良い。
【0036】
ポリオキシアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−または1,3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、ポリヘキサメチレンオキシドグリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドまたはテトラヒドロフランとのランダムまたはブロック共重合等があげられ、特にポリエチレングリコールが好ましい。また、ポリエチレングリコールのポリエーテルエステル化合物に対する共重合量は20〜90重量%が好ましく、より好ましくは20〜40重量%である。共重合比率の上限は製糸性の観点から設定され、下限については吸湿特性から設定される。
【0037】
また親水性成分には、本発明の目的を損なわない範囲で酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、アルキルベンゼンスルホン酸塩等の界面活性剤、抗酸化剤、着色防止剤、帯電防止剤、耐光剤等が添加されても良い。
【0038】
また、本発明においては芯成分における繊維形成性重合体中の親水性成分の分散状態が非常に重要であり、親水性成分を微分散させることで吸湿性が向上する。親水性成分の分散径は2.0μm以下とすることが重要であり、好ましくは1.5μm以下である。分散径が2.0μmより大きい場合、期待する吸湿効果が発現しない。また、従来親水性成分を芯に配する繊維設計にした場合、染色処理等の段階で親水性成分が吸水膨潤し、鞘割れしてしまう問題点があったが、親水性成分の分散径を2.0μm以下にすることで、染色時の鞘割れが回避できる。
【0039】
なお、ここでいう親水性成分の分散径は、たとえば親水性成分がポリエーテルエステルの場合繊維断面をオスミニウム酸で染色し、TEM写真撮影し、無作為に選ぶ10カ所の最長径を測定し平均することで求めることができる。
【0040】
親水性成分の芯成分におけるブレンド率は、5〜40重量%とすることが好ましい。さらに好ましくは10〜35重量%である。ブレンド率は染色用途および染色なしの用途でこの範囲内で任意に選ぶことができる。ブレンド率の下限は十分な吸湿性を付与する目的から設定され、ブレンド率の上限は紡糸性の低下や繊維物性の低下を防止する観点から設定される。
【0041】
本発明の芯鞘型ポリエステル繊維は、吸放湿パラメーター(ΔMR)が1.0%以上であることが、実用上として着用快適性を得るために必要である。吸放湿パラメーター(ΔMR)は衣服着用時の衣服内の湿気を外気に放出することにより快適性を得るためのドライビングフォースであり、その測定方法については実施例にて後述するが、軽〜中作業あるいは軽〜中運動を行った際の30℃×90%RHに代表される衣服内温度と20℃×65%RHに代表される外気温湿度との吸湿率差である。ΔMRは大きければ大きいほど吸湿性が高く着用時の快適性が良好であることに対応する。なお、ΔMRが1%以上であれば着用時快適と感じる。
【0042】
次に、本発明の吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維の製造方法においては、芯鞘型複合繊維を溶融紡糸する際に、親水性成分と繊維形成性重合体とを個別に溶融してから、混練して分散せしめる。そうすることで、チップの状態でブレンドする方法等に比べより微分散させることが可能となり、前述のような親水性成分の分散径を得ることができる。
【0043】
親水性成分と繊維形成性重合体との混練手段としては例えば、静止混練子を用いることができる。静止混練子としては例えば、東レエンジニアリング社製‘ハイミキサー’を好ましく採用することができる。静止混練子はパック内に組み込み、複数種類の成分を溶融ブレンドすることが可能である。静止混練子の段数としては、5段以上とすることが好ましく、さらに好ましくは10段以上である。
【0044】
本発明の吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維の製造方法の具体的な好ましい態様について以下に説明する。
【0045】
例えば図1において、芯成分の繊維形成性重合体と親水性成分をそれぞれ別々に溶融し、紡糸パックに導き、静止混練子4を組み込んだパックに導入しブレンドする。また、鞘成分となるポリエステルを別途溶融し、芯成分、鞘成分を複合口金5に導入し、吐出孔から紡出する。
【0046】
紡出したフィラメント糸を所定の速度で引取った後、一旦パッケージに巻上げ、得られた未延伸糸を延伸機にて延伸する。また、紡出糸を一旦巻取ることなく連続して延伸を行ってもよいし(直接紡糸延伸法)、4000m/分以上の高速で引取りローラー間での機械的な延伸をすることなく一挙に所望の繊維性能を得る方法をとってもよい。
【0047】
直接紡糸延伸法としては、例えば、紡出糸を1000〜5000m/分で引取り、引続いて3000〜6000m/分で延伸・熱固定する方法が挙げられる。
【0048】
本発明の糸状形態は、フィラメント、ステープルのどちらでも良く、常法によって得ることができる。布帛形態としては、織物、編物、不織布など目的に応じて適宜選択できる。
【0049】
次に、本発明の吸湿性布帛は、本発明の吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維を用いたものである。
【0050】
また本発明の吸湿性布帛は、本発明の芯鞘型ポリエステル繊維の表面にアルカリ処理などの減量処理を施したものであることが好ましい。そうすることで、鞘成分を一部または全部溶出除去することで高い吸湿性を付与することができ、また触った時の冷感も向上する。減量率としては、繊維重量に対して5〜40%の範囲が好ましい。
【0051】
本発明の吸湿性布帛は、下着、シャツ・ブラウス類、中衣、スポーツウェア、スラックス類、外衣、裏地、さらには、シーツ、フトンカバー等の寝装用に適しており、極めて実用性の高いものである。
【0052】
【実施例】
以下本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。なお、実施例中の各特性値は次の方法によって求めた。また、配合比率に関して特に注釈のない「部」は重量部を意味する。
【0053】
A.ポリエステルの極限粘度 [η]
ポリエステル0.8gをオルトクロロフェノール10mlに100℃で溶解し、冷却後、25℃で溶液粘度を測定し、算出した。
【0054】
B.吸放湿パラメーター(ΔMR)
試料がポリマの場合はチップを約2mm角の立方体状に裁断し、また繊維の場合は原糸を筒編みし、布帛の場合は裁断し、いずれの場合も60℃で12時間真空下で乾燥し、乾燥後の重量をおよそ1gとし、20℃×65%RHあるいは30℃×90%RHの雰囲気下、恒温恒湿器(タバイ製PR−2G)中に24時間放置後の重量との重量変化から、次式で求めた。
吸湿率(%)=[(吸湿後の重量−乾燥後の重量)/乾燥後の重量]×100
上記測定した20℃×65%RHおよび30℃×90%RHの条件での吸湿率(それぞれMR1およびMR2とする)から、
ΔMR(%)=MR2−MR1
を求めた。
【0055】
C.強度、伸度
東洋ボールドウィン社製テンシロン引張り試験機を用いて試長20cm、引張り速度10cm/分の条件で応力−歪み曲線から値を求めた。尚、測定のn数は5とした。
【0056】
D.親水性成分の繊維中での分散径
本実施例で採用した親水性成分はオスミニウム酸で染色可能であるので、繊維横断面をオスミニウム酸で染色し、TEM写真撮影し、染色された10カ所を無作為に抽出し、その最長径を測定し平均することで確認した。
【0057】
(実施例1)
ジメチルテレフタル酸194部、エチレングリコール48部、およびテトラブチルチタネート0.1部を加え、140〜230℃でメタノールを留出しつつエステル交換反応を行った後、リン酸トリメチル0.08部のエチレングリコール溶液および分子量4000のポリエチレングリコール128部、抗酸化剤としてIrganox 1010(チバガイギー社製)0.2部、消泡剤としてシリコン0.2部、およびテトラブチルチタネート0.1部を加え、−101kPaの減圧下280℃の条件下4時間重合を行いポリエーテルエステル系化合物を得た。またこの共重合体に共重合されたポリエチレングリコールの割合は20wt%であった。得られたポリエーテルエステル系化合物の吸湿率ΔMRは5%であった。
【0058】
上記ポリエーテルエステル系化合物を本発明で言う親水性成分とし、これと極限粘度0.70のポリエチレンテレフタレートを別々に溶融した。図1に示すような紡糸パックにおいて、ポリマー導入孔1,2から、溶融した親水性成分とポリエチレンテレフタレートとを重量比30(親水性成分):70(ポリエチレンテレフタレート)導入し、紡糸パック内に組み込んだ10段の静止混練子(東レエンジニアリング社製‘ハイミキサー’を通過させ複合繊維の芯成分とし、極限粘度0.70のポリエチレンテレフタレートをポリマー導入孔3からも導入して鞘成分とし、芯鞘複合比率が90:10になるように吐出して紡糸速度1500m/分で巻き取り未延伸糸を得、次いで2.5倍で延伸、120℃で熱処理することにより84デシテックス24フィラメントの芯鞘型複合繊維を得た。この繊維を筒編みとし、精練後の筒編地の吸湿特性を測定したところΔMR=1.3%であった。
【0059】
(実施例2〜4、比較例1、2)
静止混練子の段数を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様な方法により芯鞘型ポリエステル繊維の筒編地を得た。結果を表1にまとめる。
【0060】
【表1】
【0061】
(実施例5〜7、比較例3)
芯成分中の親水性成分とポリエチレンテレフタレートとのブレンド比を表2に示すように変更した以外は実施例1と同様に84デシテックス24フィラメントの芯鞘型ポリエステル繊維の製造を試みた。しかし比較例3においては紡糸時糸流れが多発して未延伸糸を得ることができなかった。繊維特性を表2にまとめた。
【0062】
【表2】
【0063】
(実施例8〜10、比較例4)
ポリエーテルエステル系化合物中のポリエチレングリコールの共重合量を変更した以外は実施例1と同様な方法で84デシテックス24フィラメントのポリエステル繊維を得た。繊維特性を表3にまとめた。
【0064】
【表3】
【0065】
(実施例11〜13、比較例5)
芯成分と鞘成分の吐出量を変更して繊維の芯鞘複合比率を変更した以外は実施例1と同様な方法で84デシテックス24フィラメントの芯鞘型ポリエステル繊維を得た。繊維特性を表4にまとめた。
【0066】
【表4】
【0067】
(実施例14)
実施例1で得たのと同様の芯鞘型ポリエステル繊維の筒編地を、精錬後さらに、98℃の条件下、4%のNaOH水溶液でアルカリ処理を繊維布帛重量に対し減量率10%まで行った。得られた布帛のΔMRは1.6%であった。
【0068】
【発明の効果】
本発明により、ポリエステル繊維の強度等の特性を活かしつつ、吸湿性の優れた吸湿性ポリエステル繊維を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法において好ましく採用される静止混練子組み込みパックの例示図である。
【符号の説明】
1,2:ポリマー導入孔(芯成分)
3:ポリマー導入孔(鞘成分)
4:静止混練子
5:複合口金
Claims (9)
- 繊維形成性重合体を鞘成分とし、親水性成分を分散した繊維形成性重合体を芯成分とした芯鞘型ポリエステル繊維であり、かつ繊維横断面において、芯成分中の親水性成分の分散径が2.0μm以下であり、かつ吸放湿パラメーター(ΔMR)が1.0%以上であることを特徴とする吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維。
- 親水性成分として吸放湿パラメーター(ΔMR)が4%以上の化合物を用いたことを特徴とする請求項1または2に記載の吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維。
- 親水性成分がポリエーテルエステル系化合物であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか記載の吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維。
- 芯成分における親水性成分のブレンド率が5〜40重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維。
- 芯成分と鞘成分の複合比率が重量比で95:5〜60:40であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維。
- 芯鞘型ポリエステル繊維を溶融紡糸する際に、親水性成分と繊維形成性重合体とを個別に溶融してから、混練して分散せしめることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維の製造方法。
- 親水性成分と繊維形成性重合体との混練手段として静止混練子を用いることを特徴とする請求項6記載の吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれか記載の吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維を用いたことを特徴とする吸湿性布帛。
- 吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維の表面に減量処理を施したことを特徴とする請求項8記載の吸湿性布帛。
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