JP2004195717A - 熱可塑性エラストマー製基体とガラスとの接着積層体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱可塑性エラストマー製基体とガラスとの接着積層体であって、接着剤成分として無水マレイン酸のグラフト率が0.1〜10重量%である変性オレフィン系重合体を使用して成る熱可塑性エラストマー製基体とガラスとの積層体。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性エラストマー製基体とガラスとの接着積層体に関し、詳しくは、モール付き自動車用窓ガラスとして好適な接着積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、自動車のボデーに窓ガラスを固定する構造としてはウインドウモール構造が採用されている。従来、ウインドウモールには軟質塩化ビニル樹脂が使用され、フロントガラスやリアガラスの場合は接着剤で接着積層されている。
【0003】
近年、燃費改善のための軽量化や環境問題から、モールの材質を軟質塩化ビニルからエラストマーに転換する要求が高まっている。ところが、一般にエラストマーは分子内に極性基を有していないことから化学的に不活性であって極めて接着性に劣る材料である。
【0004】
そこで、接着剤成分として、塩素化ポリオレフィン及びシランカップリング剤を使用し、熱可塑性エラストマー製基体とガラスとを接着させる方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。ところが、この方法の場合、熱可塑性エラストマー製基体とガラスとの接着積層体がハロゲンを含有し、焼却処理の際の環境問題を完全に解決するには至らない。
【0005】
また、オレフィン系またはスチレン系のエラストマーにカルボキシル基またはその無水物を含有するオレイン系樹脂を配合してガラスと接着させる方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。ところが、この方法の場合、カルボキシル基またはその無水物を多量に入れないと接着性が不十分であるため、特殊なエラストマーが必要となり、実現が困難である。
【0006】
【特許文献1】
特許3142985号公報
【特許文献2】
特公平6−15185号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、ハロゲン含有成分を使用せず、十分な接着性を有し、特に、モール付き自動車用窓ガラスとして好適な、熱可塑性エラストマー製基体とガラスとの接着積層体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、特定の接着剤成分の使用により、上記の目的を容易に達成し得るとの知見を得、本発明の完成に至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、熱可塑性エラストマー製基体とガラスとの接着積層体であって、接着剤成分として無水マレイン酸のグラフト率が0.1〜10重量%である変性オレフィン系重合体を使用して成ることを特徴とする熱可塑性エラストマー製基体とガラスとの積層体に存する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
先ず、本発明で使用する熱可塑性エラストマー製基体について説明する。本発明において、熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系またはスチレン系のエラストマーが好適に使用される。
【0012】
オレフィン系エラストマーは、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)、エチレン−1−ブテン−非共役ジエン共重合体ゴム、プロピレン−1−ブテン−非共役ジエン共重合体ゴム等のオレフィンを主成分とする弾性共重合体である。また、オレフィン系エラストマーと、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂の混合物であってもよい。
【0013】
一方、スチレン系エラストマーは、スチレンブロック共重合体などのスチレンを主成分とする弾性重合体である。また、スチレン系エラストマーと、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂との混合物であってもよい。
【0014】
上記の様な熱可塑性エラストマーは、市販されており、例えば、オレフィン系エラストマーでは、三菱化学社製「サーモラン」、三井化学社製「ミラストマー」、AESジャパン社製「サントプレーン」、住友化学社製「住友TPE」、スチレン系エラストマーでは、三菱化学社製「ラバロン」、アプコ社製「スミフレックス」等が挙げられる。
【0015】
本発明における熱可塑性エラストマーには、上記の各成分に加え、本発明の効果を著しく損なわない範囲で各種目的に応じ他の任意の配合成分を配合することが出来る。斯かる成分としては、例えば、充填材、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、分散剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、導電性付与剤、金属不活性化剤、防菌剤、防黴材、蛍光増白剤などの各種添加物、前記必須成分以外の熱可塑性樹脂およびフィラー等が挙げられる。
【0016】
前記必須成分以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体の様なエチレン・α−オレフィン共重合体、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂などが挙げられる。更に、カルボキシル基またはその無水物を含有するポリオレフィン系樹脂を配合してもよく、その場合、接着性の更なる向上が期待できる。
【0017】
また、充填材としては、ガラス繊維、中空ガラス球、炭素繊維、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、チタン酸カリウム繊維、シリカ、二酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。
【0018】
熱可塑性エラストマーの組成物の調製には、例えば、1軸押出機、2軸押出機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、プラストグラフ、ニーダー等の通常の混練機が使用される。
【0019】
基体の成形手段としては、例えば押出成形法、射出成形法などが適用される。
【0020】
次に、本発明で使用する接着剤成分について説明する。本発明においては、無水マレイン酸のグラフト率が0.1〜10重量%である変性オレフィン系重合体を使用する。
【0021】
上記の接着剤成分に使用するオレフィン系重合体は、単独の重合体であっても複数の共重合体であってもよく、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の単独重合体、エチレン−プロピレン、エチレン−1−ブテン、プロピレン−1−ブテン共重合体などが挙げられる。中でも、プロピレン系単独重合体または共重合体が好ましい。ガラスとの接着性を考慮すると、1−ブテンを含有したプロピレン系共重合体が特に好ましい。1−ブテンの含有量は、通常3〜35重量%、好ましくは6〜35重量%であり、3重量%未満の場合は低温接着性が劣り、35重量%を超える場合は保存時の安定性が悪くなる。
【0022】
無水マレイン酸のグラフト率は、上記の通り、0.1〜10重量%であるが、、好ましくは0.5〜5重量%である。グラフト量が0.1重量%未満の場合は接着性が劣り、10重量%を超える場合は性能の向上は認められずに経済的に不利となる。なお、グラフト率は、変性オレフィン系重合体(グラフト化オレフィン系重合体)に対する無水マレイン酸の割合(重量%)を意味する。
【0023】
オレフィン系重合体に無水マレイン酸を導入する方法としては、オレフィン系重合体と無水マレイン酸と有機過酸化物とを押出機に供給し溶融混練する方法、あるいはキシレン等の芳香族炭化水素やクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素溶剤などにオレフィン系共重合体と無水マレイン酸の混合物を加熱溶解し、有機過酸化物を逐次添加して反応させる方法などが挙げられる。
【0024】
熱可塑性エラストマー製基体とガラスとの接着積層体の製作に際し、上記の接着剤成分は、有機溶媒溶液または分散液として使用される。斯かる溶液または分散液の調製に使用する有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、イソパラフィン、ノルマルパラフィン等の脂肪族系炭化水素などが挙げられる。接着剤成分と有機溶媒の割合(重量比)は、通常5/95〜25/75の範囲である。
【0025】
多くの場合、前記の接着剤成分は、有機溶媒の分散液として調製される。例えば、加熱下、炭化水素系溶剤に無水マレイン酸グラフト化オレフィン系重合体を攪拌溶解した場合、常温まで降温する際、無水マレイン酸グラフト化オレフィン系重合体は析出して分散液となる。そして、分散粒子の平均粒子径は、溶解温度、攪拌回転数などを適宜選択することにより制御することが出来る。なお、本発明において、好適に使用し得る市販接着剤の一例としては、三井化学社製「ユニストール」がある。
【0026】
上記の様に調製された接着剤(溶液または分散液)は、グラビアコーター、リバースコーター、ロールコーター、スプレー等により、基材に所定量塗布する。塗布量は通常0.5〜5mμである。
【0027】
次に、本発明で使用するガラスについて説明する。本発明においては、例えば、自動車のフロント、リア又はサイドに装着される窓ガラスが適用される。斯かる自動車用窓ガラスの接着剤層と接する表面には、通常、接着剤層の紫外線劣化を防止し、意匠性を高めるためにセラミックコーティング層が形成されている。
【0028】
次に、本発明に係る熱可塑性エラストマー製基体とガラスとの接着積層体について説明する。本発明の接着積層体は、接着剤成分として、前述の無水マレイン酸のグラフト率が0.1〜10重量%である変性オレフィン系重合体を使用し、熱可塑性エラストマー製基体/接着剤層/ガラスの積層構成を備えている。
【0029】
上記の積層構成を形成する場合、熱可塑性エラストマー製基体側に接着剤層を形成した後に両者を積層しても、ガラス側に接着剤層を形成した後に両者を積層してもよい。接着剤の積層方法は通常の塗布法によって行われる。この際、ガラスは予め70℃〜200℃に加温することが好ましい。
【0030】
本発明に係る熱可塑性エラストマー製基体とガラスとの接着積層体は、基体とガラスとの剥離試験を行った場合、基体が凝集破壊し、基体とガラスとの間の界面剥離を起こすことがなく、特に、モール付き自動車用窓ガラスとして好適である。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の諸例では次の原材料を使用した。
【0032】
(1)JIS K6253による硬度が70のオレフィン系熱可塑性エラストマー:TPO(硬度70)
【0033】
(2)JIS K6253による硬度が90のオレフィン系熱可塑性エラストマー:TPO(硬度90)
【0034】
(3)JIS K6253による硬度が70のスチレン系熱可塑性エラストマー:TPS(硬度70)
【0035】
(4)ガラス:片面にセラミックコーティング層が形成されている150×25×5mmのガラス板
【0036】
(5)接着剤A:次の方法で調製した無水マレイン酸変性プロピレン−1−ブテン共重合のトルエン分散液
【0037】
すなわち、冷却管を装置した2lフラスコに、1−ブテン含有量が15重量%であるプロピレン−1−ブテン共重合体100重量部およびキシレン500重量部を仕込み攪拌下に沸点まで昇温して溶解した。次いで、ベンゾイルパーオキサイド15重量部、無水マレイン酸15重量部を3回に分けて1時間おきに分割添加し、全量添加後さらに1時間攪拌加熱を続け、冷却後、アセトンで沈殿物を洗浄して無水マレイン酸変性ポリプロピレン共重合体を得た。無水マレイン酸含有量は4.8重量%であった。次いで、1.5Lのオートクレーブに、上記の樹脂12重量部とトルエン88重量部を仕込み、100℃で15分間攪拌下に保持して溶解した後、降温し、60℃、500rpmの条件下で1時間保持した後、10℃、700rpmの条件下で2時間保持し、室温迄戻して接着剤Aを得た。
【0038】
(6)ロード・イン・コーポレイテッド製「ケムロック459X」:塩素化オレフィン系接着剤
【0039】
(7)ロード・イン・コーポレイテッド製「ケムロックAP−134」:シラン系接着剤
【0040】
<熱可塑性エラストマー製基体の作成>
前記の各熱可塑性エラストマー(TPO)をプレス成形機で処理して厚さ2mmのシートを得た。幅25mm、長さ150mmに切断し、エラストマー製基体(試験片)とした。
【0041】
実施例1
オーブンの中でTPO(硬度70)の試験片を100℃に加温し、取り出し直後、接着剤Aを塗布した。同様にオーブンの中で100℃で予熱したガラスを取り出し、上記の試験片の接着剤Aの塗布面に重ね合わせて接着した。乾燥後、180℃剥離試験を行った結果、材料破壊に至った。
【0042】
実施例対応試験例1〜8及び比較例対応試験例1〜6
オーブン中で表1及び表2中の○印を付したエラストマー製基体を100℃に加温し、取り出し直後、表1及び表2中に○印を付した接着剤を塗布した。また、同様に、オーブンの中でガラス板を100℃に加温し、取り出し直後、表1及び表2中に○印を付したセラミックコーティング層形成面またはガラス面に表1及び表2中に○印を付した接着剤を塗布した。そして、室温にて24時間放置後、JIS−K5400に準拠して碁盤目テープ剥離試験を行った。そして、剥離試験後の残存個数を計測した。この試験は、熱可塑性エラストマー基体とガラスとの接着積層体を構成する前に夫々の材料に対する接着性能を個別に評価するためのものである。結果を表1及び表2に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
表1及び表2の結果から明らかな様に、本発明で使用する接着剤成分は、幅広い硬度範囲の汎用オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー及びガラスに対して優れた接着性能を発揮し、特に接着剤Aの性能は顕著である。
【0046】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、ハロゲン含有成分を使用せず、接着剤を1度塗布するだけで汎用の熱可塑性エラストマーとガラスを接着させることが可能で、特に、モール付き自動車用窓ガラスとして好適な、熱可塑性エラストマー製基体とガラスとの接着積層体が提供され、本発明の工業的価値は顕著である。
Claims (6)
- 熱可塑性エラストマー製基体とガラスとの接着積層体であって、接着剤成分として無水マレイン酸のグラフト率が0.1〜10重量%である変性オレフィン系重合体を使用して成ることを特徴とする熱可塑性エラストマー製基体とガラスとの積層体。
- 熱可塑性エラストマーがオレフィン系またはスチレン系のエラストマーである請求項1に記載の積層体。
- オレフィン系重合体がプロピレン系重合体である請求項1又は2に記載の積層体。
- オレフィン系重合体が1−ブテン成分を3〜35重量%含有するオレフィン系共重合体である請求項1〜3の何れかに記載の積層体。
- 接着剤層と接するガラスの表面にセラミックコーティング層が形成されている請求項1〜4の何れかに記載の積層体。
- モール付き自動車用窓ガラスである請求項1〜5の何れかに記載の積層体。
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