JP2004192701A - 磁気記録媒体用ポリエステルフィルム及び磁気記録テープ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリエステルフイルムの一方の片側表面Aに微細粒子と有機化合物を含有する被膜が形成されてなる磁気記録媒体用ポリエステルフィルムであって、被膜の表面における高さ15nm以上の微細表面突起の個数を15万個/mm2 以下とする。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録媒体用ポリエステルフィルム、特に、デジタルビデオカセットテープ用、データストレージテープ用等のデジタルデータを記録し、MRヘッドで再生するための強磁性金属薄膜型磁気記録媒体を、高品質で製造することができる磁気記録媒体用ポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
1995年に実用化された民生用デジタルビデオテープは厚さ6〜7μmのベースフィルム上にCoの金属磁性薄膜を真空蒸着により設け、その表面にダイヤモンド状カーボン膜をコーティングしてなり、DVミニカセットを使用したカメラ一体型ビデオの場合には基本仕様(SD仕様)で1時間の録画時間をもつ。
【0003】
このデジタルビデオカセット(DVC)は、家庭用で世界で初のデジタルビデオカセットであり、a.小型ボディながら、膨大な情報が記録できる、b.信号が劣化しないから、何年たっても画質・音質が劣化しない、c.雑音の妨害を受けないから高画質・高音質が楽しめる、d.ダビングを繰り返しても映像が劣化しない、等のメリットを持ち、市場の評価は高い。
【0004】
そのベースフィルムとしては、
▲1▼ ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ポリマーブレンド体と粒径50〜500オングストロームの微細粒子とを主体とする不連続皮膜を設けたフィルムであって、該不連続皮膜には水溶性ポリエステル共重合体が含有され、微細粒子により不連続皮膜上に微細突起が形成されたポリエステルフィルム(例えば特許文献1)、
▲2▼ フィルムの少なくとも一方の表面に微細突起が形成されており、この微細突起は、高さ5nm以上の突起の頻度が1000万個/mm2以上3億個/mm2以下、高さ15nm以上の突起の頻度が50万個/mm2以上1000万個/mm2未満であるポリエステルフィルム(例えば特許文献2)、
▲3▼ 平滑なフィルムの表面に連続薄膜被覆層が形成され、経時のオリゴマー析出がないポリエステルフィルム(例えば特許文献3)
等が用いられている。
【0005】
しかしながら更に小型、軽量のビデオカメラで持ち運びが楽で、インターネットにパソコン経由ではなく直接接続できるカメラ一体型ビデオとして、2001年秋に、MICRO MV規格のDVミニカセットに比べ容積比30%の大きさで1時間の録画時間を有するビデオ規格が登場した。この新規格はDVCと同じ蒸着テープを用いるデジタル記録であるが、画像圧縮方式はDVC規格のDV圧縮ではなくMPEG2圧縮であり、さらに、テープ幅は6.35mmから3.8mmに、最短記録波長は0.49μmから0.29μmに、トラックピッチはDVの10μm、DVLPの6.7μmから5μmにと変更されて大幅に高密度化されている。また、蒸着テープの磁性層におけるCo酸化膜の厚さは、DVCの160〜220nmからMICRO MVテープでの50nmへと大幅に薄膜化されている。このような高密度記録、再生を可能としたのは再生用に、ハードディスクに使われているMRヘッド(磁気抵抗ヘッド)を採用したからである。
【0006】
【特許文献1】特公昭63−57238号公報
【特許文献2】特開2002−150538号公報
【特許文献3】特開2002−160337号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらMRヘッドは、金属の薄膜に磁界をかけるとその電気抵抗値が変化する現象を利用したヘッドであり、再生出力は大であるが、非常にノイズがのりやすいので、DVCテープで使用している前記▲1▼の様なベースフィルムから作製したMICRO MVテープを使用するとドロップアウトの発生が極めて大となる。また、MRヘッドの金属薄膜の膜厚は20nm程度と非常に薄膜であって非常に削られやすいので、DVCテープで使用している前記▲2▼の様なベースフィルムから作製したMICRO MVテープを使用するとMRヘッドの走行寿命が極端に短くなり(連続再生100時間程度)、頻繁なMRヘッド交換を要するという問題点がある。さらにまた、前記▲3▼の様なベースフィルムから作製したMICRO MVテープでは、ベースフィルムのロットにより再生出力が大きくばらつき、DO少ないテープと多いテープとが混在するので、良品質のテープを安定して製造できないという問題がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、画像欠陥(ドロップアウト)が少なく、かつ、MRヘッドを削らないという特性を持つ、MICRO MVテープ等のトラックピッチ6μm以下の高密度化されたデジタル記録用磁気テープを、製造することができるベースフィルム用ポリエステルフィルムを提供すること、さらに、上記特性を持つ高密度化デジタル記録用磁気テープを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するための本発明は以下の通りである。すなわち、
1.ポリエステルフイルムの一方の片側表面Aに微細粒子と有機化合物を含有する被膜が形成されてなる磁気記録媒体用ポリエステルフィルムであって、被膜の表面における高さ15nm以上の微細表面突起の個数が15万個/mm2 以下である磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
2.微細粒子の粒径が5〜100nmである上記1記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
3.被膜の表面における微細表面突起の個数が300万〜5000万個/mm2 である上記1又は2に記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
4.被膜の表面における高さ5nm以上の微細表面突起の個数が200万〜5000万個/mm2 である上記1〜3のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
5.ポリエステルがポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2、6−ナフタレートである上記1〜4のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
6.デジタル記録方式の磁気テープ用に用いられる上記1〜5のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
7.再生信号がMR(磁気抵抗)ヘッドにより読みとられる磁気テープ用に用いられる上記1〜6のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
8.上記1〜7のいずれかに記載のポリエステルフィルムの片側表面A側の表面に強磁性金属薄膜層を設けてなる磁気記録テープ。
9.強磁性金属薄膜層の厚みが20〜70nmであることを特徴とする上記8に記載の磁気記録テープ。
とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明におけるポリエステルは分子配向により高強度フィルムとなるポリエステルであればよいが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましい。即ち、その構成成分の80%以上がエチレンテレフタレート又はエチレンナフタレートであるポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましい。エチレンテレフタレート、エチレンナフタレート以外のポリエステル共重合体成分としては、例えばジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、p−キシリレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸成分、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能ジカルボン酸成分、p−オキシエトキシ安息香酸などが挙げられる。
【0011】
さらに、上記のポリエステルは、他にポリエステルと非反応性のスルホン酸のアルカリ金属塩誘導体、該ポリエステルに実質的に不溶なポリアルキレングリコールなどの少なくとも一つを5重量%を越えない程度に混合してもよい。
【0012】
本発明のポリエステルフィルムの一方の片側表面Aには、微細粒子と有機化合物を含有する被膜が形成されており、この被膜の表面における高さ15nm以上の微細表面突起の個数が15万個/mm2 以下である。被膜が形成されていることにより表面A側の表面上に真空蒸着により形成される強磁性金属薄膜層の記録・再生時の磁気ヘッドによる磨耗が少なくなる。高さ15nm以上の微細表面突起の個数は15万個/mm2 以下、より好ましくは6万個/mm2 以下である。微細表面突起のうち、高さ15nm以上の部分の突起は、MRヘッドにより再生される電気信号にノイズを加え、また磁気テープ再生時にMRヘッドを削りがちであるから、本発明の目的達成のために極力少ないことが望ましいからである。
【0013】
被膜中に混入させる微細粒子の粒径は5〜100nmであることが好ましい。微細粒子による被膜上の微細表面突起の個数は300万〜5000万個/mm2 であることが好ましい。粒径が5nm未満、又は、微細表面突起の個数が300万個/mm2 未満であると、磁気テープの強磁性金属薄膜層が平滑となりすぎて、磁気テープの磁気ヘッドとの走行耐久性が低下し易いので好ましくない。粒径が100nmを超え、又は、微細表面突起の個数が5000万個/mm2 を超えると、磁気テープの磁性層表面が粗れすぎて磁気テープのドロップアウトが増加しがちとなり好ましくない。
【0014】
被膜表面における高さ5nm以上の微細表面突起の個数は200万〜5000万個/mm2 であることが好ましい。高さ5nm以上の微細表面突起個数が200万個/mm2 未満であると特に磁気ヘッドの磁気テープ上の走行性が不良となり易く好ましくない。高さ5nm以上の微細表面突起個数が5000万個/mm2 を超えると特にMRヘッドの読みとりエラーが増加し、磁気テープのドロップアウトが増加しがちとなり好ましくない。
【0015】
微細表面突起は、微細粒子を有機化合物に含有させた被膜層をポリエステルフィルム表面に形成させることにより設けられる。微細粒子種としては、ポリアクリル酸、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアクリル酸エステル、ポリメチルメタクリレート、ポリエポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、アクリル−スチレン共重合体、アクリル系共重合体、各種変成アクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、各種変成スチレンーブタジエン共重合体等の有機化合物粒子、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム等の無機粒子を核として、有機高分子で被覆した粒子等が使用できるが、これらに限定されない。有機化合物としては末端基がエポキシ、アミン、カルボン酸、水酸基等で変成された自己架橋性のものが好ましい。なお微細粒子としてはシリカ、アルミナ等の無機粒子でもかまわないが、有機粒子の方が、発現する表面突起の径に比べて突起高さが低くなりがちでありより好ましい。
【0016】
被膜層に使用される有機化合物としてはポリビニルアルコール、トラガントゴム、カゼイン、ゼラチン、セルロース誘導体、水溶性ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、アクリル−ポリエステル樹脂、イソフタル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂等の有極性高分子これらのブレンド体が使用できるが、これらに限定されない。
【0017】
本発明のポリエステルフィルムの片側表面B(前記した片側表面Aとは反対側の表面である)のRa値は、ポリエステルフィルムを製膜した後、ポリエステルフィルムを所定の幅にスリットする際、巻姿の良い製品を採取しやすくし、また、ポリエステルフィルムの片側表面Aの被膜上に強磁性薄膜を設けた後にロール状の巻取りにより片側表面Bの粗さが被膜面側に転写されて強磁性薄膜層にうねり状の変形が起きることを最小限に抑えるために、5〜40nm、より好ましくは8〜30nmが望ましい。
【0018】
本発明のポリエステルフィルムの片側表面B側には、シリコーン等の潤滑剤が含まれたより粗い被覆層が設けられるか、より大きな微細粒子を含有するポリエステルフィルム層が積層されて形成されたもの、あるいは更に、その上に前記被覆層が設けられたものが好ましく用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。なおここで用いられる微細粒子としては炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、ポリスチレン等が例示される。この微細粒子としては、平均粒子径が好ましくは100〜1000nm、より好ましくは150〜900nmのものが用いられ、その添加量としては好ましくは0.05〜1.0重量%、より好ましくは0.08〜0.8重量%が望ましい。
【0019】
本発明のポリエステルフィルムはフィルム厚さ10μm未満が好ましく、さらに好ましくは厚さ3.5〜9.0μmが望ましい。
【0020】
本発明のポリエステルフィルムを磁気記録媒体用に用いるためには、被膜表面上に強磁性金属薄膜層が設けられるが、さらに、表面B上に固体微粒子および結合剤からなり必要に応じて各種添加剤を加えた溶液を塗布することにより形成されるバックコート層を設けることが好ましく、固体微粒子、結合剤、添加剤は公知のものを使用でき、特に限定されない。バックコート層の厚さは0.3〜1.5μm程度が好ましい。
【0021】
次に本発明のフィルムの製法の一例を説明する。
【0022】
本発明のポリエステルフィルムは、そのA面側原料として含有粒子を可能な限り除いたポリエステルを用い、溶融、成形、二軸延伸、熱固定からなる通常のプラスチックフィルム製造工程で製造されるが、その延伸工程では90〜140℃で、縦、横方向に、2.7〜5.5倍、3.5〜7.0倍に延伸され、190〜220℃の温度で熱固定される。そして、下記の操作を行うことにより製造することができる。
【0023】
(1)一方向に延伸後の平滑なポリエステルフィルムのA面側に、前記記載の微細粒子を0.001〜0.100重量%、好ましくは0.002〜0.070重量%含む有機化合物からなる塗液を塗布して表面A側に被膜層を形成させ、表面Aに微細表面突起を形成する。被膜層に使用される有機化合物としてはポリビニルアルコール、トラガントゴム、カゼイン、ゼラチン、セルロース誘導体、水溶性ポリエステル、ポリウレタン、イソフタル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂等の有極性高分子、これらのブレンド体が使用できるが、これらに限定されない。
【0024】
(2)被膜表面における高さ15nm以上の微細表面突起個数を15万個/mm2以下とするには以下の方法で行う。前記微細粒子として、有機粒子を用いる場合は、平均粒子径が10〜55nmであってガラス転移温度が0〜90℃の有機粒子を用い、この有機粒子を構成する化合物のガラス転移温度以上の温度で塗布後の延伸を行う。この延伸条件をとると、延伸の際に前記微細粒子は流動を起こしやすくなり微細粒子の直径は増大し、高さが低下するので、有機粒子化合物のガラス転移温度と延伸温度との調整により大部分の微細粒子の高さを15nm以下にすることができる。
【0025】
また、前記微細粒子の中で無機粒子を用いる場合は、平均粒子径が5〜10nmの無機粒子を用いて粒子の凝集が2個以上に起こらないように塗液pHを調整することにより大部分の微細粒子の高さを15nm以下に調節することができる。
そして前記(1)の塗液塗布中の塗液を、濾過精度が15nm×横延伸倍率より細かいフィルターで濾過しフィルム表面Aへ塗布することにより、高さ15nm以上の微細表面突起個数を15万個/mm2以下とすることができる。
【0026】
(3)被膜表面における微細表面突起の個数が300万〜5000万個/mm2 、高さ5nm以上の微細表面突起の個数を200万〜5000万個/mm2 とするためには、前記(2)の条件を満たした上で、前記微細粒子の種類、平均粒径、添加濃度、固形分塗布濃度を調整する手段をとればよい。
【0027】
なお、共押出し技術の使用により、前記A層用の原料と積極的により大きな微粒子を含有させたB層用の原料とを用いてA/B積層フィルムを溶融押出しし製膜してもよいし、B層を用いなく、前記表面A側と反対の表面B側に滑剤を含む塗液を塗布しB面側に易滑処理をしてもよい。B層を用い、更に滑剤を含む塗液を塗布しB面側の易滑処理をしてもよい。
【0028】
二軸延伸は、例えば逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法で行うことができるが、所望するならば熱固定前にさらに縦あるいは横方向あるいは縦と横方向に再度延伸させ機械的強度を高めた、いわゆる強力化タイプとすることもできる。
【0029】
本発明のポリエステルフィルムは、読み取りヘッドとしてMRヘッドを用いる磁気記録媒体のベースフィルムとして、特にデジタルビデオテープ用途、またデータストレージテープ用途に使用すると優れた結果を得ることができ好適である。
【0030】
本発明の磁気記録テープは、本発明のポリエステルフィルムの表面A上に、真空蒸着により形成される強磁性金属薄膜層を設け、そしてテープ状にしたものであり、使用する金属薄膜としては公知のものを使用でき、特に限定されないが、鉄、コバルト、ニッケル、またはそれらの合金の強磁性体からなるものが好ましい。MRヘッド対応、すなわちMRヘッド読み取り出力の飽和を防ぐために金属薄膜層の厚さは20〜70nmが好ましい。20nmを下回ると磁気テープからの再生出力信号が弱すぎ、記録信号が読みとり難い。70nmを上回ると再生出力信号が強すぎ、MRヘッド読み取り信号強度が飽和してしまい、記録の読み取りが困難となり易く好ましくない。
【0031】
即ち、本発明の磁気記録テープは、本発明のポリエステルフィルムにおける片側表面A側の被膜上に、Co等からなる強磁性金属薄膜を、真空蒸着により膜厚み20〜70nm程度で形成し、この金属薄膜上に10nm程度の厚みのダイヤモンド状カーボン膜をコーティングし、さらにその上に、潤滑剤を塗布し、他方、片側表面Bに固体微粒子および結合剤からなり必要に応じて各種添加剤を加えた溶液を塗布することによりバックコート層を設け、そして、所定のテープ幅に切断することにより、製造することができる。
【0032】
【実施例】
本実施例で用いた測定法を下記に示す。
(1)フィルムの被膜上の高さ15nm以上、又は高さ5nm以上の微細表面突起の個数
フィルムの被膜上の高さ15nm以上、又は高さ5nm以上の微細表面突起の個数は、原子間力顕微鏡(走査型プローブ顕微鏡)を用いて測定した。セイコーインスツルメント社製の卓上小型プローブ顕微鏡(Nanopics 1000)を用い、ダンピングモードでフィルムの被膜表面を4μm角の範囲で原子間力顕微鏡計測走査を行い、得られる表面のプロファイル曲線よりZ軸方向断面図を作成し、最小高さを0nmとし、高さ15nm以上、高さ5nm以上の突起個数を求め、1mm2 あたりの個数に換算し、フィルム被膜上の高さ15nm以上、高さ5nm以上の微細表面突起の個数とした。面内方向の拡大倍率は5千倍程度、高さ方向の拡大倍率は100万倍程度とした。n数は5とした。なお現実の測定可能高さは100nm近傍までである。
【0033】
(2)フィルムの被膜上の微細表面突起の直径
フィルムの被膜表面に形成された微細突起の直径は走査型電子顕微鏡により5万倍の拡大倍率でフィルムの被膜表面を5視野観察し、各視野より突起状に見える突起をランダムに10個選び、各突起の最大直径、最小直径の平均値を各突起の直径とし、50個の突起の直径の平均値をフィルムの被膜上の微細表面突起の直径とした。
【0034】
(3)フィルムの被膜上の微細表面突起の個数
フィルムの被膜表面に形成された微細突起の個数は走査型電子顕微鏡により5万倍の拡大倍率でフィルム表面を10視野以上観察し、突起状に見える突起が1mm2あたり何個あるかを求めることにより測定した。
【0035】
(4)Ra値
磁気記録媒体用フィルムの表面の表面粗さRa値は、前記した原子間力顕微鏡(走査型プローブ顕微鏡)を用いて測定した。ただし測定面積は4μm角の範囲とし、得られる表面のプロファイル曲線よりJIS・B0601・Raに相当する算術平均粗さよりRaを求めた。面内方向の拡大倍率は1万〜5万倍、高さ方向の拡大倍率は100万倍程度とした。
【0036】
(5)磁気テープ(MICRO MVテープ)の特性評価
市販のMICRO MV方式ビデオカメラ(MICRO MVビデオカメラ)を用いて静かな室内で録画し、1分間の再生をして画面にあらわれたブロック状のモザイク個数(ドロップアウト(DO)個数)を数えることによって、磁気テープ(MICRO MVテープ)の特性を評価した。
DO個数は常温(25℃)でテープ製造後の初期特性を最初に調べた。次にテープの再生全長にわたり200回の再生をくり返し、200回目の再生時のDO個数を測定しMICRO MVテープのノイズレベル、走行耐久性、再生ヘッドに対する磨耗特性を評価した。
【0037】
次に実施例に基づき、本発明を説明する。
【0038】
[実施例1]
実質的に不活性粒子を含有しないポリエチレンテレフタレート原料Aと、同一のポリエチレンテレフタレートに平均粒径300nmのケイ酸アルミニウムを0.20重量%含有させた原料Bとを厚み比5:1の割合で共押出し、冷却ドラムに密着させシート化し、ロール延伸法で110℃で3.0倍に縦延伸した。
【0039】
縦延伸の後の工程で、片側表面Aの外側に下記組成の水溶液を固形分塗布量が20mg/m2 となるように、濾過精度50nmのフィルターで濾過し塗布した。
A面外側への塗布水溶液(全体としてのpH=3.9):
メチルセルロース 0.09 重量%
水溶性ポリエステル(=テレフタル酸70モル%、5−ナトリウムスルホイソフタル酸30モル%の酸成分とエチレングリコールとの1:1の共重合体)0.40 重量%
アミノ変性シリコーン 0.01 重量%
平均粒径 8nmの極微細シリカ 0.003重量%
【0040】
その後、ステンターにて横方向に110℃で4.2倍に延伸し、215℃で熱処理し中間スプールに巻き、スリッターで小幅にスリットし、円筒コアーにロール状に巻取り、厚さ6.3μmのロール状ポリエステルフィルムを得た。
【0041】
このポリエステルフィルムの表面A側の被膜上に真空蒸着によりコバルト−酸素薄膜を40nmの膜厚で形成した。次にコバルト−酸素薄膜層上に、スパッタリング法によりダイヤモンド状カーボン膜を8nmの厚さで形成させ、フッ素含有脂肪酸エステル系潤滑剤を2nmの厚さで塗布した。続いて表面B上に、カーボンブラック、ポリウレタン、シリコーンからなるバックコート層を500nmの厚さで設け、スリッターにより幅3.8mmにスリットしリールに巻き取り磁気テープ(MICRO MVテープ)を作製した。
【0042】
得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なおポリエステルフィルムのB面のRa値は22nmであった。
【0043】
[実施例2]
実施例1のベースフィルム製造において、塗布水溶液中の極微細シリカを、平均粒径20nmのポリスチレン球(ガラス転移温度:107℃、固形分10重量%、エマルジョン状態 pH7.8)0.012重量% と変更し、全体の塗布液のpHを7.0に調整し、その他は実施例1と同様にして、厚さ6.3μmのポリエステルフィルムと、幅3.8mmの磁気テープ(MICRO MVテープ)を作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なおポリエステルフィルムのB面のRa値は22nmであった。
【0044】
[実施例3]
実施例2のベースフィルム製造において、塗布水溶液中のポリスチレン球を、平均粒子径30nmのポリメチルメタクリレート球(ガラス転移温度:118℃、固形分40重量%、エマルジョン状態 pH=5.6)に変更し、塗布水溶液全体のpHを7.0に調整し、横方向の延伸温度を122℃と変更した。その他は実施例2と同様にして、厚さ6.3μmのポリエステルフィルムと、幅3.8mmの磁気テープ(MICRO MVテープ)を作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なおポリエステルフィルムのB面のRa値は20nmであった。
【0045】
[実施例4]
実施例1のベースフィルム製造において、ポリエチレンテレフタレートをポリエチレン−2,6−ナフタレートに変更し、原料B内のケイ酸アルミニウムの含有量を1.1重量%と変更し、縦延伸温度、倍率を135℃で5.0倍と変更し、固形分塗布量を45mg/m2と変更し、横延伸温度、倍率を135℃、6.5倍と変更し、200℃での熱処理に変更し、その他は実施例1と同様にして、厚さ4.8μmのロール状ポリエステルフィルムを作製した。得られたポリエステルフィルムから、実施例1と同様にして幅3.8mmの磁気テープ(MICRO MVテープ)を作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なおポリエステルフィルムのB面のRa値は22nmであった。
【0046】
[実施例5]
実施例1のベースフィルム製造において、塗布水溶液中のシリカの粒径を4nm、横方向の延伸温度を102℃と変更した。その他は実施例1と同様にして、厚さ6.3μmのポリエステルフィルムと、幅3.8mmの磁気テープ(MICRO MVテープ)を作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なおポリエステルフィルムのB面のRa値は20nmであった。
【0047】
[実施例6]
実施例2のベースフィルム製造において、塗布水溶液中のポリスチレン球の粒径を100nmと変更した。その他は実施例2と同様にして、厚さ6.3μmのポリエステルフィルムと、幅3.8mmの磁気テープ(MICRO MVテープ)を作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なおポリエステルフィルムのB面のRa値は20nmであった。
【0048】
[実施例7]
実施例1のベースフィルム製造において、固形分塗布量を6mg/m2と変更した。その他は実施例1と同様にして、厚さ6.3μmのポリエステルフィルムと、幅3.8mmの磁気テープ(MICRO MVテープ)を作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なおポリエステルフィルムのB面のRa値は20nmであった。
【0049】
[実施例8]
実施例2のベースフィルム製造において、ポリスチレン球濃度を0.36重量%と変更した。その他は実施例2と同様にして、厚さ6.3μmのポリエステルフィルムと、幅3.8mmの磁気テープ(MICRO MVテープ)を作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なおポリエステルフィルムのB面のRa値は20nmであった。
【0050】
[実施例9]
実施例2のベースフィルム製造において、ポリスチレン球の粒径を10nmと変更した。その他は実施例2と同様にして、厚さ6.3μmのポリエステルフィルムと、幅3.8mmの磁気テープ(MICRO MVテープ)を作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なおポリエステルフィルムのB面のRa値は20nmであった。
【0051】
[実施例10]
実施例1で作製したポリエステルフィルムを用いた実施例1の磁気テープ製造において、コバルト−酸素薄膜の膜厚を90nmと変更した。その他は実施例1と同様にして、幅3.8mmの磁気テープ(MICRO MVテープ)を作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なおポリエステルフィルムのB面のRa値は20nmであった。
【0052】
[実施例11]
実施例1で作製したポリエステルフィルムを用いた実施例1の磁気テープ製造において、コバルト−酸素薄膜の膜厚を10nmと変更した。その他は実施例1と同様にして、幅3.8mmの磁気テープ(MICRO MVテープ)を作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なおポリエステルフィルムのB面のRa値は20nmであった。
【0053】
[比較例1]
実施例1のベースフィルム製造において、塗布水溶液のpHを5.0と変更し、水溶性ポリエステルの量を0.30重量%と変更した。その他は実施例1と同様にして、厚さ6.3μmのポリエステルフィルムと、幅3.8mmの磁気テープ(MICRO MVテープ)を作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なおポリエステルフィルムのB面のRa値は20nmであった。
【0054】
[比較例2]
実施例2のベースフィルム製造において、横方向の延伸温度を105℃と変更した。その他は実施例2と同様にして、厚さ6.3μmのポリエステルフィルムと、幅3.8mmの磁気テープを作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なおポリエステルフィルムのB面のRa値は20nmであった。
【0055】
[比較例3]
実施例1のベースフィルム製造において、塗布水溶液中のシリカの粒径を18nmと変更した。その他は実施例1と同様にして、厚さ6.3μmのポリエステルフィルムと、幅3.8mmの磁気テープ(MICRO MVテープ)を作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なおポリエステルフィルムのB面のRa値は20nmであった。
【0056】
[比較例4]
実施例1のベースフィルム製造において、塗液を塗布する前での濾過フィルターの濾過精度を1.0μmと変更した。その他は実施例1と同様にして、厚さ6.3μmのポリエステルフィルムと、幅3.8mmの磁気テープ(MICRO MVテープ)を作製した。得られたポリエステルフィルム及び磁気テープの特性を表1に示す。なおポリエステルフィルムのB面のRa値は20nmであった。
【0057】
【表1】
【0058】
表1の特性から明らかな様に、本発明によるポリエステルフィルムを用いて製造された磁気テープ(MICRO MVテープ)は、DOの発生が極めて少なく、繰り返し走行させてもMRヘッド表面の磨耗を起こさず、画質、走行耐久性の良好なMICRO MVテープであった。
【0059】
【発明の効果】
本発明によると、画質が良好で、MRヘッド表面を削らず、かつ走行耐久性が良い、MRヘッド対応磁気テープを製造できる磁気記録媒体用ポリエステルフィルムを与えることができるので、ビデオカメラへのMRヘッドの搭載を実用化するにあたって本発明は有効なものである。
Claims (9)
- ポリエステルフイルムの一方の片側表面Aに微細粒子と有機化合物を含有する被膜が形成されてなる磁気記録媒体用ポリエステルフィルムであって、被膜の表面における高さ15nm以上の微細表面突起の個数が15万個/mm2 以下であることを特徴とする磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
- 微細粒子の粒径が5〜100nmであることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
- 被膜の表面における微細表面突起の個数が300万〜5000万個/mm2 であることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
- 被膜の表面における高さ5nm以上の微細表面突起の個数が200万〜5000万個/mm2 であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
- ポリエステルがポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2、6−ナフタレートであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
- デジタル記録方式の磁気テープ用に用いられることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
- 再生信号がMR(磁気抵抗)ヘッドにより読みとられる磁気テープ用に用いられることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
- 請求項1〜7のいずれかに記載のポリエステルフィルムの片側表面A側の表面に強磁性金属薄膜層を設けてなることを特徴とする磁気記録テープ。
- 強磁性金属薄膜層の厚みが20〜70nmであることを特徴とする請求項8に記載の磁気記録テープ。
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