JP2004189298A - ラミネート材及びラミネート缶蓋 - Google Patents
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Abstract
【課題】レトルト殺菌処理においても、レトルト白化を抑制して、ウォータースポットを生じさせない。
【解決手段】缶蓋に成形されるときに、外面側に位置するフィルム30の基材層31を、ポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルフィルムとする。外面側に位置するフィルム30の基材層31の面配向係数を0.05以下に設定するとともに、密度を1.39〜1.45g/cm3に設定する。
【選択図】 図1
【解決手段】缶蓋に成形されるときに、外面側に位置するフィルム30の基材層31を、ポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルフィルムとする。外面側に位置するフィルム30の基材層31の面配向係数を0.05以下に設定するとともに、密度を1.39〜1.45g/cm3に設定する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、缶蓋素材板(例えばアルミニウム板)の少なくとも缶蓋外面側となる面にフィルム(例えばポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルフィルム)を貼り合わせたラミネート材及びこれを成形して得られるラミネート缶蓋に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えばアルミニウム板などの金属板からなる缶蓋素材板の両面に、例えばエポキシ系や塩化ビニル系の塗料が塗装された材料を成形することによって得られる塗装缶蓋が用いられているが、近年では、これに代わるものとして、缶蓋素材板の両面に、例えばポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルフィルムなどのフィルムを貼り合わせたラミネート缶蓋が開発されてきており、従来の塗料のように有機溶剤を含むことがないので、より環境に優れたものとして注目されている。例えば、特許文献1参照。
【0003】
ところで、缶内部に充填される飲料のシェルフライフ(貯蔵寿命)を確保するためには、飲料を缶(缶胴+缶蓋)の内部に充填した状態で、高温水蒸気によるレトルト殺菌処理を行うのであるが、このレトルト殺菌処理では、缶の外表面に高温水蒸気が接触することにより、缶の内側と外側との温度差に起因して、缶の外表面に結露が発生することになる。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−193256号公報(第2図、第5図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、特許文献1には、外面側に位置するフィルムの非晶質化率を60%以上に設定したラミネート缶蓋が開示されているが、この外面側に位置するフィルムについて言及した非晶質化率の定義が何らなされておらず、その結晶構造を特定することができないものであった。
そのため、外面側に位置するフィルムが、単に、その結晶化度を低めただけの配向結晶構造(非晶質構造の場合も含む)であるような場合には、レトルト殺菌処理により、その外表面(最表面)における高温水蒸気と直接接触することになる部分(結露が生じていない外表面)のみの結晶化が進行して白化(レトルト白化)しやすく、水玉模様の白化現象(この水玉模様をウォータースポットと呼ぶ)が生じてしまうので、清潔感が損なわれ、外観上問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、レトルト殺菌処理においても、レトルト白化を抑制して、ウォータースポットを生じさせないラミネート材及びラミネート缶蓋を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明によるラミネート材は、缶蓋素材板の少なくとも一方の面にフィルムが貼り合わされてなるとともに、前記フィルムが少なくとも外面側に位置するように缶蓋に成形されるラミネート材であって、缶蓋に成形されるときに、外面側に位置する前記フィルムがポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルフィルムとされ、その少なくとも最表面の面配向係数が0.05以下に設定されているとともに密度が1.39〜1.45g/cm3に設定されていることを特徴とするものである。
このようなラミネート材によれば、缶蓋に成形されるときに外面側に位置するフィルムの少なくとも最表面について、面配向係数を低く設定するとともに密度を適切な範囲に設定して、この外面側に位置するフィルムの少なくとも最表面を、十分に球晶の発達した無配向結晶構造とすることにより、レトルト白化を効果的に抑制することが可能となり、ウォータースポットを発生させることがなくなる。
【0008】
また、本発明によるラミネート缶蓋は、本発明のラミネート材を成形することによって製造されていることを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付した図面を参照しながら説明する。
本実施形態によるラミネート材は、図1に示すように、例えばアルミニウム板からなる金属板である缶蓋素材板10の両面に対して、例えばポリエステルフィルムからなるフィルム20,30がそれぞれ貼り合わされることによって構成されている。
【0010】
缶蓋素材板10としてのアルミニウム板は、缶蓋の大きさによっても相違するが、例えば、その厚みが0.20〜0.50mm(好ましくは、0.23〜0.30mm)に設定されたものであって、純アルミニウムや、アルミニウムと他の合金用金属とのアルミニウム合金(とくにマグネシウム、マンガンなどを少量含むアルミニウム合金)が使用されている。なお、アルミニウム板に代えて、スチール板などの金属板を缶蓋素材板10として用いてもよい。
【0011】
また、缶蓋素材板10の両面に貼り合わされたフィルム20,30はそれぞれ、基材層21,31と接着層22,32とからなる2層構造をなしていて、その接着層22、32側が缶蓋素材板10に密着するように貼り合わされている。
接着層22,32は、例えば、その厚みが0.5〜3μmに設定されるとともに、粘度0.5〜0.8ポワズの非晶質変性ポリエステルフィルムとされており、イソフタル酸を15〜22mol%含有するポリエチレンテレフタレートとイソフタル酸との共重合体が使用されている。
【0012】
缶蓋素材板10に貼り合わされたフィルム20,30における基材層21,31のうち、このラミネート材が缶蓋に成形されるときに、缶内部に充填された飲料などの内容物に直接接触することになる内面側に位置するフィルム20における基材層21は、その厚みが3〜50μmに設定されるとともに、基材層21全体の密度が1.42〜1.45g/cm3、かつ、面配向係数(ΔP)が0.14以上に設定された配向結晶性樹脂の2軸延伸ポリエステルフィルムあるいは2軸延伸変性ポリエステルフィルムとされており、ポリエチレンテレフタレートあるいはイソフタル酸を数mol%含有するポリエチレンテレフタレートとイソフタル酸との共重合体が使用されている(内面側に位置するフィルム20の基材層21がポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルフィルムとされている)。
【0013】
一方、このラミネート材が缶蓋に成形されるときに、外面側に位置するフィルム30における基材層31は、その厚みが3〜50μmに設定されるとともに、少なくとも最表面の密度が1.39〜1.45g/cm3、かつ、面配向係数(ΔP)が0.05以下に設定された(本実施形態においては基材層31全体の密度が1.39〜1.45g/cm3、かつ、面配向係数(ΔP)が0.05以下に設定されている)無配向結晶性樹脂で球晶の発達した2軸延伸ポリエステルフィルムあるいは2軸延伸変性ポリエステルフィルムとされており、上述したフィルム20の基材層21と同じく、ポリエチレンテレフタレートあるいはイソフタル酸を数mol%含有するポリエチレンテレフタレートとイソフタル酸との共重合体が使用されている(外面側に位置するフィルム30の基材層31がポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルフィルムとされている)。
【0014】
ここで、フィルム20,30の基材層21,31について言及した密度は、n−ヘプタン、四塩化炭素の混合駅が使用されて密度勾配が出ている密度勾配管に標準密度のフロートを入れ、そのフロートに対して試料がどの位置にあるかで測定した。
また、フィルム20,30の基材層21,31について言及した面配向係数(ΔP)は、アッベ屈折率計で、フィルム内の3方向の屈折率(nα,nβ,nγ)を測定して、次式により算出される値である。
ΔP=(nα+nβ)/2−nγ
nα=フィルムの横方向の屈折率
nβ=フィルムの縦方向の屈折率
nγ=フィルムの厚み方向の屈折率
【0015】
本実施形態によるラミネート材は、上述したような構成を有しており、所定の成形加工(巻締加工、スコア加工及びタブ加工など)を経て、上記のフィルム20が内面側に位置し、かつ、上記のフィルム30が外面側に位置するように、ラミネート缶蓋に成形されるのである。
【0016】
次に、本実施形態によるラミネート材の製造方法を説明する。
まず、缶蓋素材板10の一方の面に、基材層31と接着層32とからなる2層構造のフィルム30を、その接着層32側を缶蓋素材板10の一方の面に密着させるとともに、接着層32のみを融解させるような熱処理(接着層32の融点Tm1〔゜C〕、基材層31の融点Tm2〔゜C〕としたときに、Tm1<Ta<Tm2の範囲を満たすような温度Ta〔゜C〕による熱処理)を加えることにより、外面側に位置するフィルム30を缶蓋素材板10の一方の面に貼り合わせる。
【0017】
そして、缶蓋素材板10の一方の面に貼り合わされた外面側に位置するフィルム30に対して、基材層31を融解させるような熱処理(Tm1<Tbの範囲を満たすような温度Tb〔゜C〕による熱処理)を加えてから冷却することによって、このフィルム30の基材層31の少なくとも最表面(本実施形態においては、基材層31全体)を、球晶が十分に発達した無配向結晶構造(面配向係数が0.05以下、かつ、密度が1.39〜1.45g/cm3)にする。
【0018】
さらに、缶蓋素材板10の他方の面に、基材層21と接着層22とからなる2層構造のフィルム20を、その接着層22側を缶蓋素材板10の他方の面に密着させるとともに、接着層22のみを融解させるような熱処理(接着層22の融点Tm3〔゜C〕、基材層21の融点Tm4〔゜C〕としたときに、Tm3<Tc<Tm4の範囲を満たすような温度Tc〔゜C〕による熱処理)を加えることにより、内面側に位置するフィルム20を缶蓋素材板10の他方の面に貼り合わせる。
なお、内面側に位置するフィルム20については、その密度を1.42〜1.45g/cm3と高く設定するために、上記の熱処理の温度Tc〔゜C〕を、Tm3<Tc<Tm4−18゜Cの範囲を満たすように設定する。
【0019】
このような製造工程を経ることによって、上述したような密度、面配向係数(ΔP)を有するフィルム20,30が、缶蓋素材板10の両面にそれぞれ貼り合わされてなるラミネート材を得ることができるのである。
【0020】
本実施形態においては、このラミネート材が缶蓋に成形されたときに内面側に位置するフィルム20、すなわち、缶内部に充填された飲料などの内容物に直接接触するフィルム20の基材層21が配向結晶構造であって、しかも、その面配向係数(ΔP)が0.14以上に設定されるとともに密度が1.42〜1.45g/cm3と高く設定されていることにより、缶蓋における最も重要な要素の1つであるフレーバー性(飲料の味や香りの成分(フレーバー)を吸着し難くできる性質)をとくに良好に保つことが可能となっている。
【0021】
ここで、内面側に位置するフィルム20の基材層21について、その面配向係数(ΔP)が0.14より低くなったり、密度が1.42g/cm3より低くなってしまうと、良好なフレーバー性を得ることができなくなってしまうおそれがある一方、密度を1.45g/cm3よりも高く設定することは技術的に困難となっている。
なお、上述したようなおそれを確実になくすため、フィルム20の基材層21の面配向係数(ΔP)は、好ましくは、0.15以上に設定され、より好ましくは、0.153以上に設定されるのがよく、フィルム20の基材層21の密度は、好ましくは、1.425〜1.45g/cm3に設定され、より好ましくは、1.43〜1.45g/cm3に設定されるのがよい。
【0022】
また、内面側に位置するフィルム20の基材層21の厚みが、3〜50μmに設定されていることによって、耐食性や、缶蓋への加工性、開缶性を良好に保つことが可能となっていて、この基材層21の厚みが3μmよりも小さくなると、コストが高くなったり、耐食性に劣ってしまうおそれがあり、一方、基材層21の厚みが50μmよりも大きくなると、缶蓋への成形性や、缶蓋に成形されたときの開缶性が劣ってしまうおそれがある。
なお、上述したようなおそれを確実になくすため、このフィルム20の基材層21の厚みは、好ましくは、3〜25μmに設定され、より好ましくは、3〜12μmに設定されるのがよい。
【0023】
さらに、内面側に位置するフィルム20の基材層21は、無配向結晶性樹脂のように球晶が発達した脆いものではなく、配向結晶性樹脂であることから、巻締工程の際にも亀裂などが生じるおそれが少なく、アルミニウム板である缶蓋素材板10が露出して、その成分が缶内部に充填された飲料などの内容物に溶出してしまうおそれを低減することができる。
【0024】
そして、このラミネート材が缶蓋に成形されたときに、外面側に位置するフィルム30の基材層31における少なくとも最表面、本実施形態においては基材層31全体が無配向結晶構造であって、しかも、その面配向係数(ΔP)が0.05以下に設定されるとともに密度が1.39〜1.45g/cm3に設定されて十分に球晶が発達させられていることにより、レトルト殺菌処理の工程を経たとしても、レトルト白化を効果的に抑制することが可能となっていて、ウォータースポットを発生させることがないので、外観上の問題も生じさせることがない。
【0025】
ここで、この外面側に位置するフィルム30の基材層31について、その面配向係数(ΔP)が0.05より高くなったり、密度が1.39g/cm3より低くなってしまうと、十分に球晶が発達しなくなるおそれが生じて、耐ウォータースポットの効果を得られなくなるおそれがある一方、密度を1.45g/cm3よりも高く設定することは技術的に困難となっている。
なお、上述したようなおそれを確実になくすため、このフィルム30の基材層31の少なくとも最表面の面配向係数(ΔP)は、好ましくは、0.03以下に設定され、より好ましくは、0.02以下に設定されるのがよく、フィルム30の基材層31の密度は、好ましくは、1.40〜1.45g/cm3に設定され、より好ましくは、1.41〜1.45g/cm3に設定されるのがよい。
【0026】
一方、ラミネート缶蓋に白色着色を行うような場合、従来では、白色顔料を含有するフィルムや塗料を用いていたが、外面側に位置するフィルムを、球晶の発達した無配向結晶構造とするとともに、その球晶の結晶子の大きさを適切な範囲に調整することにより、白色顔料を使用せずとも、水玉模様のない均一な美しい白色を実現することも可能となっている。
【0027】
また、外面側に位置するフィルム30の基材層31の厚みが、3〜50μmに設定されていることによって、耐食性や、缶蓋への加工性、開缶性を良好に保つことが可能となっていて、この基材層31の厚みが3μmよりも小さくなると、コストが高くなったり、耐食性に劣ってしまうおそれがあり、一方、基材層31の厚みが50μmよりも大きくなると、缶蓋への成形性や、缶蓋に成形されたときの開缶性が劣ってしまうおそれがある。
なお、上述したようなおそれを確実になくすため、このフィルム30の基材層31の厚みは、好ましくは、3〜25μmに設定され、より好ましくは、3〜12μmに設定されるのがよい。
【0028】
さらに、このようなラミネート材を用いてイージーオープンタイプのラミネート缶蓋を成形した場合には、スコアリング部にフィルム片が残存し、開缶の際にエンゼルヘアーが発生することにより、飲用の際に、このエンゼルヘアーが口にあたって不快感を与えるおそれがあるが、本実施形態では、外面側に位置するフィルム30の基材層31全体が、無配向結晶性樹脂で球晶の発達したものであるから、開缶の際には、フィルム30中に破断の起点が生じることとなって、エンゼルヘアーの発生を抑制することができる。
とくに、外面側に位置するフィルム30に多数の微細な凹凸あるいは貫通孔を形成することによって、エンゼルヘアーの発生をより確実に抑制することができる。
【0029】
また、外面側に位置するフィルム30と内面側に位置するフィルム20とは、互いに同組成であって、それらの結晶構造(面配向係数、密度)のみが異なっていることから、これらフィルム30及びフィルム20には、その材料として同一のフィルムを用いることができ、組成の異なる個別のフィルムを用意する必要がなくなるのでコストが嵩むことがない。
【0030】
そして、このとき、本実施形態によるラミネート材の製造方法では、缶蓋素材板10の一方の面に、外面側に位置するフィルム30を貼り合わせ、熱処理によってフィルム30内に球晶を発達させて無配向結晶構造とした後に、内面側に位置するフィルム20を缶蓋素材板10の他方の面に貼り合わせるようにしていることから、上述したような缶蓋素材板10の両面に互いに結晶構造の異なるフィルム20,30をそれぞれ貼り合わせたラミネート材を得るときであっても、これらフィルム20,30の材料として、上記のように、互いに同組成である同一のフィルムを用いることができるのである。
【0031】
また、このような製造方法を用いると、缶蓋素材板10の一方の面に、外面側に位置するフィルム30を貼り合わせてから、このフィルム30内に球晶を発達させて無配向結晶構造とするために、この時点で、外面側に位置するフィルム30に対して十分な硬度を与えることができるので、その後の、内面側に位置するフィルム20を貼り合わせる工程などにおいても、外面側に位置するフィルム30に傷がつくのを抑制することができる。
【0032】
なお、上述した本実施形態においては、外面側に位置するフィルム30の基材層31を単層構造とし、この基材層31全体の面配向係数を0.05以下に設定するとともに密度を1.39〜1.45g/cm3の範囲に設定しているが、これに限定されることなく、その最表面さえ、面配向係数が0.05以下、かつ、密度が1.39〜1.45g/cm3に設定されていればよい。
例えば、フィルム30の基材層31が、厚み方向で面配向係数や密度の勾配が生じた単層構造で、その最表面のみについて、面配向係数が0.05以下に設定されるとともに密度が1.39〜1.45g/cm3に設定されていたり、多層構造で、最表面に位置する層のみについて、面配向係数が0.05以下に設定されるとともに密度が1.39〜1.45g/cm3に設定されていたりしてもよいのである。
【0033】
また、缶蓋素材板10の両面へのフィルム20,30の密着性や耐食性の観点から、缶蓋素材板10の表面には、表面処理膜を形成することが一般的に望まれている。このような表面処理膜としては、クロメート皮膜、陽極酸化皮膜などが挙げられる。
例えば、クロメート皮膜の表面処理膜を形成する場合には、アルミニウム板を苛性ソーダで脱脂及びエッチングを行った後、CrO34g/l、H3PO412g/l、F0.65g/l、残りは水のような処理液に浸漬するといった化学処理によって行う。このようなクロメート皮膜の厚みは、密着性の観点から、表面積当たりのCr原子の重量で表して、好ましくは、5〜50mg/dm2の範囲、より好ましくは、10〜35mg/dm2の範囲内に収まるように設定されることがよい。
【0034】
さらに、缶蓋素材板10に貼り合わせられるフィルム20,30(ポリエステルフィルム)は、フィラーを含有していることが好ましく、このようなフィラーとしては、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、リン酸カルシウムなどの無機塩が挙げられる。
【0035】
加えて、ラミネート材をラミネート缶蓋に成形した後に、フィルムのガラス転移点以上180℃以下で加熱処理を加えることによって、密着性、耐食性を向上させることができ、このような加熱方法としては、ガスオーブン、高周波誘導加熱、遠赤外線照射などの方法が挙げられる。
【0036】
【実施例】
以下、本発明の一例を実施例とし、本発明の範囲から外れたものを比較例として、評価試験を行った。
まず、内面側に位置するフィルムと外面側に位置するフィルムとを用意し、これらを缶蓋素材板に対して貼り合わせることにより、以下の表1に示されるような面配向係数及び密度を有するラミネート材(実施例1〜10、比較例1〜10)を製造した。
このラミネート材を製蓋した後、水を充填した缶胴に巻締め、缶蓋が下になるように接地して、125゜C×30分の熱処理を行い、耐ウォータースポット性を評価した。その結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1に示されるように、本発明の一例である実施例1〜10は、いずれもウォータースポットが全く認められないか、外観上問題がないと思われる極めて薄いウォータースポットが認められたにすぎず、耐ウォータースポット性に優れていることが分かる。
これに対して、面配向係数や密度が本発明の範囲よりも外れていた実施例1〜10では、いずれもウォータースポットが認められ、耐ウォータースポット性が劣っていたことが分かる
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、缶蓋に成形されるときに外面側に位置するフィルムの少なくとも最表面について、面配向係数を低く設定するとともに密度を適切な範囲に設定して、この外面側に位置するフィルムの少なくとも最表面を、十分に球晶の発達した無配向結晶構造とすることにより、レトルト白化を効果的に抑制することが可能となり、ウォータースポットを発生させることがなくなるので、外観上の問題が生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態によるラミネート材の断面図である。
【符号の説明】
10 缶蓋素材板
20 ポリエステルフィルム
21 基材層
22 接着層
30 ポリエステルフィルム
31 基材層
32 接着層
【発明の属する技術分野】
本発明は、缶蓋素材板(例えばアルミニウム板)の少なくとも缶蓋外面側となる面にフィルム(例えばポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルフィルム)を貼り合わせたラミネート材及びこれを成形して得られるラミネート缶蓋に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えばアルミニウム板などの金属板からなる缶蓋素材板の両面に、例えばエポキシ系や塩化ビニル系の塗料が塗装された材料を成形することによって得られる塗装缶蓋が用いられているが、近年では、これに代わるものとして、缶蓋素材板の両面に、例えばポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルフィルムなどのフィルムを貼り合わせたラミネート缶蓋が開発されてきており、従来の塗料のように有機溶剤を含むことがないので、より環境に優れたものとして注目されている。例えば、特許文献1参照。
【0003】
ところで、缶内部に充填される飲料のシェルフライフ(貯蔵寿命)を確保するためには、飲料を缶(缶胴+缶蓋)の内部に充填した状態で、高温水蒸気によるレトルト殺菌処理を行うのであるが、このレトルト殺菌処理では、缶の外表面に高温水蒸気が接触することにより、缶の内側と外側との温度差に起因して、缶の外表面に結露が発生することになる。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−193256号公報(第2図、第5図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、特許文献1には、外面側に位置するフィルムの非晶質化率を60%以上に設定したラミネート缶蓋が開示されているが、この外面側に位置するフィルムについて言及した非晶質化率の定義が何らなされておらず、その結晶構造を特定することができないものであった。
そのため、外面側に位置するフィルムが、単に、その結晶化度を低めただけの配向結晶構造(非晶質構造の場合も含む)であるような場合には、レトルト殺菌処理により、その外表面(最表面)における高温水蒸気と直接接触することになる部分(結露が生じていない外表面)のみの結晶化が進行して白化(レトルト白化)しやすく、水玉模様の白化現象(この水玉模様をウォータースポットと呼ぶ)が生じてしまうので、清潔感が損なわれ、外観上問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、レトルト殺菌処理においても、レトルト白化を抑制して、ウォータースポットを生じさせないラミネート材及びラミネート缶蓋を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明によるラミネート材は、缶蓋素材板の少なくとも一方の面にフィルムが貼り合わされてなるとともに、前記フィルムが少なくとも外面側に位置するように缶蓋に成形されるラミネート材であって、缶蓋に成形されるときに、外面側に位置する前記フィルムがポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルフィルムとされ、その少なくとも最表面の面配向係数が0.05以下に設定されているとともに密度が1.39〜1.45g/cm3に設定されていることを特徴とするものである。
このようなラミネート材によれば、缶蓋に成形されるときに外面側に位置するフィルムの少なくとも最表面について、面配向係数を低く設定するとともに密度を適切な範囲に設定して、この外面側に位置するフィルムの少なくとも最表面を、十分に球晶の発達した無配向結晶構造とすることにより、レトルト白化を効果的に抑制することが可能となり、ウォータースポットを発生させることがなくなる。
【0008】
また、本発明によるラミネート缶蓋は、本発明のラミネート材を成形することによって製造されていることを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付した図面を参照しながら説明する。
本実施形態によるラミネート材は、図1に示すように、例えばアルミニウム板からなる金属板である缶蓋素材板10の両面に対して、例えばポリエステルフィルムからなるフィルム20,30がそれぞれ貼り合わされることによって構成されている。
【0010】
缶蓋素材板10としてのアルミニウム板は、缶蓋の大きさによっても相違するが、例えば、その厚みが0.20〜0.50mm(好ましくは、0.23〜0.30mm)に設定されたものであって、純アルミニウムや、アルミニウムと他の合金用金属とのアルミニウム合金(とくにマグネシウム、マンガンなどを少量含むアルミニウム合金)が使用されている。なお、アルミニウム板に代えて、スチール板などの金属板を缶蓋素材板10として用いてもよい。
【0011】
また、缶蓋素材板10の両面に貼り合わされたフィルム20,30はそれぞれ、基材層21,31と接着層22,32とからなる2層構造をなしていて、その接着層22、32側が缶蓋素材板10に密着するように貼り合わされている。
接着層22,32は、例えば、その厚みが0.5〜3μmに設定されるとともに、粘度0.5〜0.8ポワズの非晶質変性ポリエステルフィルムとされており、イソフタル酸を15〜22mol%含有するポリエチレンテレフタレートとイソフタル酸との共重合体が使用されている。
【0012】
缶蓋素材板10に貼り合わされたフィルム20,30における基材層21,31のうち、このラミネート材が缶蓋に成形されるときに、缶内部に充填された飲料などの内容物に直接接触することになる内面側に位置するフィルム20における基材層21は、その厚みが3〜50μmに設定されるとともに、基材層21全体の密度が1.42〜1.45g/cm3、かつ、面配向係数(ΔP)が0.14以上に設定された配向結晶性樹脂の2軸延伸ポリエステルフィルムあるいは2軸延伸変性ポリエステルフィルムとされており、ポリエチレンテレフタレートあるいはイソフタル酸を数mol%含有するポリエチレンテレフタレートとイソフタル酸との共重合体が使用されている(内面側に位置するフィルム20の基材層21がポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルフィルムとされている)。
【0013】
一方、このラミネート材が缶蓋に成形されるときに、外面側に位置するフィルム30における基材層31は、その厚みが3〜50μmに設定されるとともに、少なくとも最表面の密度が1.39〜1.45g/cm3、かつ、面配向係数(ΔP)が0.05以下に設定された(本実施形態においては基材層31全体の密度が1.39〜1.45g/cm3、かつ、面配向係数(ΔP)が0.05以下に設定されている)無配向結晶性樹脂で球晶の発達した2軸延伸ポリエステルフィルムあるいは2軸延伸変性ポリエステルフィルムとされており、上述したフィルム20の基材層21と同じく、ポリエチレンテレフタレートあるいはイソフタル酸を数mol%含有するポリエチレンテレフタレートとイソフタル酸との共重合体が使用されている(外面側に位置するフィルム30の基材層31がポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルフィルムとされている)。
【0014】
ここで、フィルム20,30の基材層21,31について言及した密度は、n−ヘプタン、四塩化炭素の混合駅が使用されて密度勾配が出ている密度勾配管に標準密度のフロートを入れ、そのフロートに対して試料がどの位置にあるかで測定した。
また、フィルム20,30の基材層21,31について言及した面配向係数(ΔP)は、アッベ屈折率計で、フィルム内の3方向の屈折率(nα,nβ,nγ)を測定して、次式により算出される値である。
ΔP=(nα+nβ)/2−nγ
nα=フィルムの横方向の屈折率
nβ=フィルムの縦方向の屈折率
nγ=フィルムの厚み方向の屈折率
【0015】
本実施形態によるラミネート材は、上述したような構成を有しており、所定の成形加工(巻締加工、スコア加工及びタブ加工など)を経て、上記のフィルム20が内面側に位置し、かつ、上記のフィルム30が外面側に位置するように、ラミネート缶蓋に成形されるのである。
【0016】
次に、本実施形態によるラミネート材の製造方法を説明する。
まず、缶蓋素材板10の一方の面に、基材層31と接着層32とからなる2層構造のフィルム30を、その接着層32側を缶蓋素材板10の一方の面に密着させるとともに、接着層32のみを融解させるような熱処理(接着層32の融点Tm1〔゜C〕、基材層31の融点Tm2〔゜C〕としたときに、Tm1<Ta<Tm2の範囲を満たすような温度Ta〔゜C〕による熱処理)を加えることにより、外面側に位置するフィルム30を缶蓋素材板10の一方の面に貼り合わせる。
【0017】
そして、缶蓋素材板10の一方の面に貼り合わされた外面側に位置するフィルム30に対して、基材層31を融解させるような熱処理(Tm1<Tbの範囲を満たすような温度Tb〔゜C〕による熱処理)を加えてから冷却することによって、このフィルム30の基材層31の少なくとも最表面(本実施形態においては、基材層31全体)を、球晶が十分に発達した無配向結晶構造(面配向係数が0.05以下、かつ、密度が1.39〜1.45g/cm3)にする。
【0018】
さらに、缶蓋素材板10の他方の面に、基材層21と接着層22とからなる2層構造のフィルム20を、その接着層22側を缶蓋素材板10の他方の面に密着させるとともに、接着層22のみを融解させるような熱処理(接着層22の融点Tm3〔゜C〕、基材層21の融点Tm4〔゜C〕としたときに、Tm3<Tc<Tm4の範囲を満たすような温度Tc〔゜C〕による熱処理)を加えることにより、内面側に位置するフィルム20を缶蓋素材板10の他方の面に貼り合わせる。
なお、内面側に位置するフィルム20については、その密度を1.42〜1.45g/cm3と高く設定するために、上記の熱処理の温度Tc〔゜C〕を、Tm3<Tc<Tm4−18゜Cの範囲を満たすように設定する。
【0019】
このような製造工程を経ることによって、上述したような密度、面配向係数(ΔP)を有するフィルム20,30が、缶蓋素材板10の両面にそれぞれ貼り合わされてなるラミネート材を得ることができるのである。
【0020】
本実施形態においては、このラミネート材が缶蓋に成形されたときに内面側に位置するフィルム20、すなわち、缶内部に充填された飲料などの内容物に直接接触するフィルム20の基材層21が配向結晶構造であって、しかも、その面配向係数(ΔP)が0.14以上に設定されるとともに密度が1.42〜1.45g/cm3と高く設定されていることにより、缶蓋における最も重要な要素の1つであるフレーバー性(飲料の味や香りの成分(フレーバー)を吸着し難くできる性質)をとくに良好に保つことが可能となっている。
【0021】
ここで、内面側に位置するフィルム20の基材層21について、その面配向係数(ΔP)が0.14より低くなったり、密度が1.42g/cm3より低くなってしまうと、良好なフレーバー性を得ることができなくなってしまうおそれがある一方、密度を1.45g/cm3よりも高く設定することは技術的に困難となっている。
なお、上述したようなおそれを確実になくすため、フィルム20の基材層21の面配向係数(ΔP)は、好ましくは、0.15以上に設定され、より好ましくは、0.153以上に設定されるのがよく、フィルム20の基材層21の密度は、好ましくは、1.425〜1.45g/cm3に設定され、より好ましくは、1.43〜1.45g/cm3に設定されるのがよい。
【0022】
また、内面側に位置するフィルム20の基材層21の厚みが、3〜50μmに設定されていることによって、耐食性や、缶蓋への加工性、開缶性を良好に保つことが可能となっていて、この基材層21の厚みが3μmよりも小さくなると、コストが高くなったり、耐食性に劣ってしまうおそれがあり、一方、基材層21の厚みが50μmよりも大きくなると、缶蓋への成形性や、缶蓋に成形されたときの開缶性が劣ってしまうおそれがある。
なお、上述したようなおそれを確実になくすため、このフィルム20の基材層21の厚みは、好ましくは、3〜25μmに設定され、より好ましくは、3〜12μmに設定されるのがよい。
【0023】
さらに、内面側に位置するフィルム20の基材層21は、無配向結晶性樹脂のように球晶が発達した脆いものではなく、配向結晶性樹脂であることから、巻締工程の際にも亀裂などが生じるおそれが少なく、アルミニウム板である缶蓋素材板10が露出して、その成分が缶内部に充填された飲料などの内容物に溶出してしまうおそれを低減することができる。
【0024】
そして、このラミネート材が缶蓋に成形されたときに、外面側に位置するフィルム30の基材層31における少なくとも最表面、本実施形態においては基材層31全体が無配向結晶構造であって、しかも、その面配向係数(ΔP)が0.05以下に設定されるとともに密度が1.39〜1.45g/cm3に設定されて十分に球晶が発達させられていることにより、レトルト殺菌処理の工程を経たとしても、レトルト白化を効果的に抑制することが可能となっていて、ウォータースポットを発生させることがないので、外観上の問題も生じさせることがない。
【0025】
ここで、この外面側に位置するフィルム30の基材層31について、その面配向係数(ΔP)が0.05より高くなったり、密度が1.39g/cm3より低くなってしまうと、十分に球晶が発達しなくなるおそれが生じて、耐ウォータースポットの効果を得られなくなるおそれがある一方、密度を1.45g/cm3よりも高く設定することは技術的に困難となっている。
なお、上述したようなおそれを確実になくすため、このフィルム30の基材層31の少なくとも最表面の面配向係数(ΔP)は、好ましくは、0.03以下に設定され、より好ましくは、0.02以下に設定されるのがよく、フィルム30の基材層31の密度は、好ましくは、1.40〜1.45g/cm3に設定され、より好ましくは、1.41〜1.45g/cm3に設定されるのがよい。
【0026】
一方、ラミネート缶蓋に白色着色を行うような場合、従来では、白色顔料を含有するフィルムや塗料を用いていたが、外面側に位置するフィルムを、球晶の発達した無配向結晶構造とするとともに、その球晶の結晶子の大きさを適切な範囲に調整することにより、白色顔料を使用せずとも、水玉模様のない均一な美しい白色を実現することも可能となっている。
【0027】
また、外面側に位置するフィルム30の基材層31の厚みが、3〜50μmに設定されていることによって、耐食性や、缶蓋への加工性、開缶性を良好に保つことが可能となっていて、この基材層31の厚みが3μmよりも小さくなると、コストが高くなったり、耐食性に劣ってしまうおそれがあり、一方、基材層31の厚みが50μmよりも大きくなると、缶蓋への成形性や、缶蓋に成形されたときの開缶性が劣ってしまうおそれがある。
なお、上述したようなおそれを確実になくすため、このフィルム30の基材層31の厚みは、好ましくは、3〜25μmに設定され、より好ましくは、3〜12μmに設定されるのがよい。
【0028】
さらに、このようなラミネート材を用いてイージーオープンタイプのラミネート缶蓋を成形した場合には、スコアリング部にフィルム片が残存し、開缶の際にエンゼルヘアーが発生することにより、飲用の際に、このエンゼルヘアーが口にあたって不快感を与えるおそれがあるが、本実施形態では、外面側に位置するフィルム30の基材層31全体が、無配向結晶性樹脂で球晶の発達したものであるから、開缶の際には、フィルム30中に破断の起点が生じることとなって、エンゼルヘアーの発生を抑制することができる。
とくに、外面側に位置するフィルム30に多数の微細な凹凸あるいは貫通孔を形成することによって、エンゼルヘアーの発生をより確実に抑制することができる。
【0029】
また、外面側に位置するフィルム30と内面側に位置するフィルム20とは、互いに同組成であって、それらの結晶構造(面配向係数、密度)のみが異なっていることから、これらフィルム30及びフィルム20には、その材料として同一のフィルムを用いることができ、組成の異なる個別のフィルムを用意する必要がなくなるのでコストが嵩むことがない。
【0030】
そして、このとき、本実施形態によるラミネート材の製造方法では、缶蓋素材板10の一方の面に、外面側に位置するフィルム30を貼り合わせ、熱処理によってフィルム30内に球晶を発達させて無配向結晶構造とした後に、内面側に位置するフィルム20を缶蓋素材板10の他方の面に貼り合わせるようにしていることから、上述したような缶蓋素材板10の両面に互いに結晶構造の異なるフィルム20,30をそれぞれ貼り合わせたラミネート材を得るときであっても、これらフィルム20,30の材料として、上記のように、互いに同組成である同一のフィルムを用いることができるのである。
【0031】
また、このような製造方法を用いると、缶蓋素材板10の一方の面に、外面側に位置するフィルム30を貼り合わせてから、このフィルム30内に球晶を発達させて無配向結晶構造とするために、この時点で、外面側に位置するフィルム30に対して十分な硬度を与えることができるので、その後の、内面側に位置するフィルム20を貼り合わせる工程などにおいても、外面側に位置するフィルム30に傷がつくのを抑制することができる。
【0032】
なお、上述した本実施形態においては、外面側に位置するフィルム30の基材層31を単層構造とし、この基材層31全体の面配向係数を0.05以下に設定するとともに密度を1.39〜1.45g/cm3の範囲に設定しているが、これに限定されることなく、その最表面さえ、面配向係数が0.05以下、かつ、密度が1.39〜1.45g/cm3に設定されていればよい。
例えば、フィルム30の基材層31が、厚み方向で面配向係数や密度の勾配が生じた単層構造で、その最表面のみについて、面配向係数が0.05以下に設定されるとともに密度が1.39〜1.45g/cm3に設定されていたり、多層構造で、最表面に位置する層のみについて、面配向係数が0.05以下に設定されるとともに密度が1.39〜1.45g/cm3に設定されていたりしてもよいのである。
【0033】
また、缶蓋素材板10の両面へのフィルム20,30の密着性や耐食性の観点から、缶蓋素材板10の表面には、表面処理膜を形成することが一般的に望まれている。このような表面処理膜としては、クロメート皮膜、陽極酸化皮膜などが挙げられる。
例えば、クロメート皮膜の表面処理膜を形成する場合には、アルミニウム板を苛性ソーダで脱脂及びエッチングを行った後、CrO34g/l、H3PO412g/l、F0.65g/l、残りは水のような処理液に浸漬するといった化学処理によって行う。このようなクロメート皮膜の厚みは、密着性の観点から、表面積当たりのCr原子の重量で表して、好ましくは、5〜50mg/dm2の範囲、より好ましくは、10〜35mg/dm2の範囲内に収まるように設定されることがよい。
【0034】
さらに、缶蓋素材板10に貼り合わせられるフィルム20,30(ポリエステルフィルム)は、フィラーを含有していることが好ましく、このようなフィラーとしては、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、リン酸カルシウムなどの無機塩が挙げられる。
【0035】
加えて、ラミネート材をラミネート缶蓋に成形した後に、フィルムのガラス転移点以上180℃以下で加熱処理を加えることによって、密着性、耐食性を向上させることができ、このような加熱方法としては、ガスオーブン、高周波誘導加熱、遠赤外線照射などの方法が挙げられる。
【0036】
【実施例】
以下、本発明の一例を実施例とし、本発明の範囲から外れたものを比較例として、評価試験を行った。
まず、内面側に位置するフィルムと外面側に位置するフィルムとを用意し、これらを缶蓋素材板に対して貼り合わせることにより、以下の表1に示されるような面配向係数及び密度を有するラミネート材(実施例1〜10、比較例1〜10)を製造した。
このラミネート材を製蓋した後、水を充填した缶胴に巻締め、缶蓋が下になるように接地して、125゜C×30分の熱処理を行い、耐ウォータースポット性を評価した。その結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1に示されるように、本発明の一例である実施例1〜10は、いずれもウォータースポットが全く認められないか、外観上問題がないと思われる極めて薄いウォータースポットが認められたにすぎず、耐ウォータースポット性に優れていることが分かる。
これに対して、面配向係数や密度が本発明の範囲よりも外れていた実施例1〜10では、いずれもウォータースポットが認められ、耐ウォータースポット性が劣っていたことが分かる
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、缶蓋に成形されるときに外面側に位置するフィルムの少なくとも最表面について、面配向係数を低く設定するとともに密度を適切な範囲に設定して、この外面側に位置するフィルムの少なくとも最表面を、十分に球晶の発達した無配向結晶構造とすることにより、レトルト白化を効果的に抑制することが可能となり、ウォータースポットを発生させることがなくなるので、外観上の問題が生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態によるラミネート材の断面図である。
【符号の説明】
10 缶蓋素材板
20 ポリエステルフィルム
21 基材層
22 接着層
30 ポリエステルフィルム
31 基材層
32 接着層
Claims (2)
- 缶蓋素材板の少なくとも一方の面にフィルムが貼り合わされてなるとともに、前記フィルムが少なくとも外面側に位置するように缶蓋に成形されるラミネート材であって、
缶蓋に成形されるときに、外面側に位置する前記フィルムがポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルフィルムとされ、その少なくとも最表面の面配向係数が0.05以下に設定されているとともに密度が1.39〜1.45g/cm3に設定されていることを特徴とするラミネート材。 - 請求項1に記載のラミネート材を成形することによって製造されていることを特徴とするラミネート缶蓋。
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2002
- 2002-12-12 JP JP2002361077A patent/JP2004189298A/ja not_active Withdrawn
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