JP2004189318A - ラミネート材及びその製造方法、ラミネート缶蓋 - Google Patents

ラミネート材及びその製造方法、ラミネート缶蓋 Download PDF

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Abstract

【課題】良好なフレーバー性を得るとともに、缶蓋に成形されるときに外面側に位置するフィルムの削れや剥離を抑制する。
【解決手段】缶蓋に成形されるときに、外面側に位置するフィルム30の基材層31を無配向結晶構造とし、内面側に位置するフィルム20を配向結晶構造とする。外面側に位置するフィルム30の結晶化度を10〜60%に設定するとともに面配向係数を0.05以下に設定する。内面側に位置するフィルム20の結晶化度が40〜60%に設定するとともに面配向係数を0.14以上に設定する。外面側に位置するフィルム30と内面側に位置するフィルム20とを、互いに同組成で、それらの結晶構造のみが異なるようにする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、缶蓋素材板(例えばアルミニウム板)の両面にフィルム(例えばポリエステルフィルム)を貼り合わせたラミネート材及びこれを成形して得られるラミネート缶蓋に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えばアルミニウム板などの金属板からなる缶蓋素材板の両面に、例えばエポキシ系や塩化ビニル系の塗料が塗装された材料を成形することによって得られる塗装缶蓋が用いられているが、近年では、これに代わるものとして、缶蓋素材板の両面に、例えばポリエステルフィルムなどのフィルムを貼り合わせたラミネート缶蓋が開発されてきており、従来の塗料のように有機溶剤を含むことがないので、より環境に優れたものとして注目されている。例えば、特許文献1参照。
【0003】
ところで、缶蓋に成形されるときに内面側となる面は、缶内部に充填された飲料などの内容物に直接接触することになるため、飲料への好ましくない成分の溶出を少なくできる性質や、飲料の味や香りの成分(フレーバー)を吸着し難くできる性質(以下、フレーバー性と称する)が求められている。
上述したラミネート缶蓋に用いられるフィルムは、塗装缶蓋に用いられる塗料よりも、飲料への溶出が少なく、フレーバー性も良好であるという特徴を有しており、とくに、缶蓋における最も重要な要素の1つであるフレーバー性は、フィルムが配向結晶構造であれば良好となる。
【0004】
一方、缶蓋に成形されるときに外面側となる面は、缶胴への巻締工程でシーミングロール(巻締工具)と接触するために、耐巻締性・製蓋加工性が求められている。すなわち、缶蓋の缶胴への巻締工程においては、缶蓋の外周縁を第一シーミングロールで湾曲させてシーム部を形づくる第一工程における缶蓋の外面と第一シーミングロールとの接触、第二シーミングロールでシーム部をつぶす第二工程における缶蓋の外面と第二シーミングロールとの接触、さらには、第一シーミングロールが缶蓋の外面から完全に離脱する前に第二シーミングロールがシーム部をつぶし始めることによる缶蓋の外面と第一シーミングロールとの接触があるために、この缶蓋の外面が、摩擦で削れたり、大きなせん断力で剥離することがないようにする必要がある。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−193256号公報(第2図、第5図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したラミネート缶蓋に用いられるフィルムは、塗装缶蓋に用いられる塗料よりも、滑り性が悪く、加工性が劣るという性質を有しており、缶胴への巻締工程において、この缶蓋の外面側に位置するフィルムの削れや剥離が生じやすくなってしまうという問題があった。
とくに、缶蓋における最も重要な要素の1つであるフレーバー性を良好にするために、配向結晶構造のフィルムを用いると、フィルムの加工性がさらに低下してしまうこととなり、シーミングロールとの接触で生じる削れや剥離が顕著になってしまう。
【0007】
なお、特許文献1には、外面側に位置するフィルムの非晶質化率を60%以上に設定することで、シーミングロールとの接触によっても削れや剥離が生じないようにすることを狙ったラミネート缶蓋が開示されているが、この外面側に位置するフィルムについて言及した非晶質化率の定義が何らなされておらず、その結晶構造を特定することができないものであった。
そのため、外面側に位置するフィルムが、単に、その結晶化度を低めただけの配向結晶構造(非晶質構造の場合も含む)であるような場合には、高温で軟化しやすいという欠点が生じるので、フィルムが貼り合わされてなるラミネート材を設備に通板させる過程において、この設備の傷が転写されたり、スクラッチ傷が入り、商品価値を大きく低下させてしまうおそれがあった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、良好なフレーバー性を得ることができるとともに、缶蓋に成形されるときに外面側に位置するフィルムの削れや剥離を抑制することができるラミネート材及びその製造方法、ラミネート缶蓋を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明によるラミネート材は、缶蓋素材板の両面にそれぞれフィルムが貼り合わされてなるとともに、缶蓋に成形されるラミネート材であって、缶蓋に成形されるときに、外面側に位置する前記フィルムにおける少なくとも最表面が無配向結晶構造とされ、かつ、内面側に位置する前記フィルムが配向結晶構造とされていることを特徴とするものである。
このようなラミネート材によれば、缶蓋に成形されるときに内面側に位置するフィルムについては、配向結晶構造とすることによって、良好なフレーバー性を得るようにしながらも、外面側に位置するフィルムの少なくとも最表面については、球晶を発達させた無配向結晶構造とすることにより、高温状態でも傷がつくのを防止するのに十分な硬度を獲得しつつ、巻締工程の際の加工性を向上させて、シーミングロールとの接触で削れ片や剥離片が生じてしまうのを抑制することができる。
とくに、外面側に位置するフィルムを、球晶を発達させた無配向結晶構造とすると、開缶の際には、フィルム中に発達した球晶が破断の起点となって、エンゼルヘアーの発生を抑制することができる。
【0010】
また、前記外面側に位置するフィルムは、その少なくとも最表面の結晶化度が10〜60%に設定されているとともに面配向係数が0.05以下に設定されていることが好ましく、このような構成とすると、外面側に位置するフィルムの少なくとも最表面について、その面配向係数を低く設定するとともに結晶化度を適切な範囲に設定して、十分に球晶の発達した無配向結晶構造とすることにより、巻締工程の際の加工性を確実に向上させることができ、かつ、巻締工程の際の加工性を損ねない範囲で十分な硬度を得ることができる。
【0011】
また、前記内面側に位置するフィルムは、その結晶化度が40〜60%に設定されているとともに面配向係数が0.14以上に設定されていることが好ましく、このような構成とすると、内面側に位置するフィルムの面配向係数を高く設定して十分な配向性を与えるとともに、その結晶化度を高く設定することにより、フレーバー性をとくに良好に保つことができる。
【0012】
また、前記外面側に位置するフィルムと前記内面側に位置するフィルムとは、互いに同組成であってそれらの結晶構造のみが異なっていることが好ましく、このような構成とすると、これら外面側及び内面側に位置するフィルムについて、互いに同一のフィルムを用いることが可能となって、組成の異なるフィルムを用いる必要がなくなるので、コスト面での利点を得ることが可能となる。
【0013】
また、本発明によるラミネート材の製造方法は、本発明のラミネート材を製造する製造方法であって、前記缶蓋素材板の一方の面に、前記外面側に位置するフィルムを貼り合わせる工程と、前記貼り合わされた外面側に位置するフィルムの少なくとも最表面を、熱処理を施すことにより球晶を発達させて無配向結晶構造にする工程と、前記無配向結晶構造になった外面側に位置するフィルムが一方の面に貼り合わされた前記缶蓋素材板の他方の面に、前記内面側に位置するフィルムを貼り合わせる工程とを有していることを特徴とするものである。
このようなラミネート材の製造方法によれば、缶蓋素材板の一方の面に外面側フィルムを貼り合わせてから、その少なくとも最表面を球晶の発達した無配向結晶構造にするために熱処理を施したとしても、この熱処理の後に、内面側フィルムを貼り合わせるようにしていることから、無配向結晶構造の最表面を有する外面側フィルムと配向結晶構造の内面側フィルムとのような互いに結晶構造の異なるフィルムが缶蓋素材板の両面に貼り合わされたラミネート材についても、これら内面側フィルム及び外面側フィルムの材料として、互いに同組成である同一のフィルムを用いることが可能となる。
しかも、缶蓋素材板の一方の面に外面側フィルムを貼り合わせてから、その少なくとも最表面を球晶の発達した無配向結晶構造にしたことにより、この時点で十分な硬度を得ることが可能となるので、その後の、内面側フィルムを貼り合わせる工程などにおいても、外面側フィルムに傷がつくのを抑制することができる。
【0014】
また、本発明によるラミネート缶蓋は、本発明のラミネート材を成形することによって製造されていることを特徴とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付した図面を参照しながら説明する。
本実施形態によるラミネート材は、図1に示すように、例えばアルミニウム板からなる金属板である缶蓋素材板10の両面に対して、例えばポリエステルフィルムからなるフィルム20,30がそれぞれ貼り合わされることによって構成されている。
【0016】
缶蓋素材板10としてのアルミニウム板は、缶蓋の大きさによっても相違するが、例えば、その厚みが0.20〜0.50mm(好ましくは、0.23〜0.30mm)に設定されたものであって、純アルミニウムや、アルミニウムと他の合金用金属とのアルミニウム合金(とくにマグネシウム、マンガンなどを少量含むアルミニウム合金)が使用されている。なお、アルミニウム板に代えて、スチール板などの金属板を缶蓋素材板10として用いてもよい。
【0017】
また、缶蓋素材板10の両面に貼り合わされたフィルム20,30はそれぞれ、基材層21,31と接着層22,32とからなる2層構造をなしていて、その接着層22、32側が缶蓋素材板10に密着するように貼り合わされている。
接着層22,32は、例えば、その厚みが0.5〜3μmに設定されるとともに、粘度0.5〜0.8ポワズの非晶質変性ポリエステルフィルムとされており、イソフタル酸を15〜22mol%含有するポリエチレンテレフタレートとイソフタル酸との共重合体が使用されている。
【0018】
缶蓋素材板10に貼り合わされたフィルム20,30における基材層21,31のうち、このラミネート材が缶蓋に成形されるときに、缶内部に充填された飲料などの内容物に直接接触することになる内面側に位置するフィルム20における基材層21は、その厚みが3〜50μmに設定されるとともに、基材層21全体の結晶化度が40〜60%、かつ、面配向係数(ΔP)が0.14以上に設定された配向結晶性樹脂の2軸延伸ポリエステルフィルムあるいは2軸延伸変性ポリエステルフィルムとされており、ポリエチレンテレフタレートあるいはイソフタル酸を数mol%含有するポリエチレンテレフタレートとイソフタル酸との共重合体が使用されている。
【0019】
一方、このラミネート材が缶蓋に成形されるときに、外面側に位置するフィルム30における基材層31は、その厚みが3〜50μmに設定されるとともに、少なくとも最表面の結晶化度が10〜60%、かつ、面配向係数(ΔP)が0.05以下に設定された(本実施形態においては基材層31全体の結晶化度が10〜60%、かつ、面配向係数(ΔP)が0.05以下に設定されている)無配向結晶性樹脂で球晶の発達した2軸延伸ポリエステルフィルムあるいは2軸延伸変性ポリエステルフィルムとされており、上述したフィルム20の基材層21と同じく、ポリエチレンテレフタレートあるいはイソフタル酸を数mol%含有するポリエチレンテレフタレートとイソフタル酸との共重合体が使用されている。
【0020】
ここで、フィルム20,30の基材層21,31について言及した結晶化度は、配向結晶性樹脂のフィルムに対しては、X線回折法で測定し(結晶化度1.0%以下を結晶化度0%と定義する)、無配向結晶性樹脂のフィルムに対しては、ヘーズ測定法で測定した(ヘーズが2%以下の場合、結晶化度0%と定義する)。
また、フィルム20,30の基材層21,31について言及した面配向係数(ΔP)は、アッベ屈折率計で、フィルム内の3方向の屈折率(nα,nβ,nγ)を測定して、次式により算出される値である。
ΔP=(nα+nβ)/2−nγ
nα=フィルムの横方向の屈折率
nβ=フィルムの縦方向の屈折率
nγ=フィルムの厚み方向の屈折率
【0021】
なお、フィルム20,30に用いられているポリエステル樹脂としては、上述したポリエチレンテレフタレート(PET)だけでなく、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネートなども挙げられるが、好ましくは、ポリエチレンテレフタレートが使用される。
【0022】
本実施形態によるラミネート材は、上述したような構成を有しており、所定の成形加工(巻締加工、スコア加工及びタブ加工など)を経て、上記のフィルム20が内面側に位置し、かつ、上記のフィルム30が外面側に位置するように、ラミネート缶蓋に成形されるのである。
【0023】
次に、本実施形態によるラミネート材の製造方法を説明する。
まず、缶蓋素材板10の一方の面に、基材層31と接着層32とからなる2層構造のフィルム30を、その接着層32側を缶蓋素材板10の一方の面に密着させるとともに、接着層32のみを融解させるような熱処理(接着層32の融点Tm1〔゜C〕、基材層31の融点Tm2〔゜C〕としたときに、Tm1<Ta<Tm2の範囲を満たすような温度Ta〔゜C〕による熱処理)を加えることにより、外面側に位置するフィルム30を缶蓋素材板10の一方の面に貼り合わせる。
【0024】
そして、缶蓋素材板10の一方の面に貼り合わされた外面側に位置するフィルム30に対して、基材層31を融解させるような熱処理(Tm1<Tbの範囲を満たすような温度Tb〔゜C〕による熱処理)を加えてから冷却することによって、このフィルム30の基材層31の少なくとも最表面(本実施形態においては、基材層31全体)を、球晶が十分に発達した無配向結晶構造にする。
【0025】
さらに、缶蓋素材板10の他方の面に、基材層21と接着層22とからなる2層構造のフィルム20を、その接着層22側を缶蓋素材板10の他方の面に密着させるとともに、接着層22のみを融解させるような熱処理(接着層22の融点Tm3〔゜C〕、基材層21の融点Tm4〔゜C〕としたときに、Tm3<Tc<Tm4の範囲を満たすような温度Tc〔゜C〕による熱処理)を加えることにより、内面側に位置するフィルム20を缶蓋素材板10の他方の面に貼り合わせる。
なお、内面側に位置するフィルム20については、その結晶化度を40〜60%と高く設定するために、上記の熱処理の温度Tc〔゜C〕を、Tm3<Tc<Tm4−18゜Cの範囲を満たすように設定する。
【0026】
このような製造工程を経ることによって、上述したような結晶化度、面配向係数(ΔP)を有するフィルム20,30が、缶蓋素材板10の両面にそれぞれ貼り合わされてなるラミネート材を得ることができるのである。
【0027】
本実施形態においては、このラミネート材が缶蓋に成形されるときに内面側に位置するフィルム20の基材層21全体が配向結晶構造であって、しかも、その面配向係数(ΔP)が0.14以上に設定されて十分な配向性が与えられているとともに結晶化度が40〜60%と高く設定されていることにより、とくに良好なフレーバー性を得ることが可能となっている。
【0028】
ここで、内面側に位置するフィルム20の基材層21について、その面配向係数(ΔP)が0.14より低くなったり、結晶化度が40%より低くなってしまうと、良好なフレーバー性を得ることができなくなってしまうおそれがある一方、結晶化度を60%よりも高く設定することは技術的に困難となっている。
なお、上述したようなおそれを確実になくすため、フィルム20の基材層21の面配向係数(ΔP)は、好ましくは、0.15以上に設定され、より好ましくは、0.153以上に設定されるのがよく、フィルム20の基材層21の結晶化度は、好ましくは、50〜60%に設定され、より好ましくは、55〜60%に設定されるのがよい。
【0029】
また、内面側に位置するフィルム20の基材層21の厚みが、3〜50μmに設定されていることによって、耐食性や、缶蓋への加工性、開缶性を良好に保つことが可能となっていて、この基材層21の厚みが3μmよりも小さくなると、コストが高くなったり、耐食性に劣ってしまうおそれがあり、一方、基材層21の厚みが50μmよりも大きくなると、缶蓋への成形性や、缶蓋に成形されたときの開缶性が劣ってしまうおそれがある。
なお、上述したようなおそれを確実になくすため、このフィルム20の基材層21の厚みは、好ましくは、3〜25μmに設定され、より好ましくは、3〜12μmに設定されるのがよい。
【0030】
さらに、内面側に位置するフィルム20の基材層21は、無配向結晶性樹脂のように球晶が発達した脆いものではなく、配向結晶性樹脂であることから、巻締工程の際にも亀裂などが生じるおそれが少なく、アルミニウム板である缶蓋素材板10が露出して、その成分が缶内部に充填された飲料などの内容物に溶出してしまうおそれを低減することができる。
【0031】
そして、このラミネート材が缶蓋に成形されたときに、外面側に位置するフィルム30の基材層31における少なくとも最表面、本実施形態においては基材層31全体が無配向結晶構造であって、しかも、その面配向係数(ΔP)が0.05以下に設定されるとともに結晶化度が10〜60%に設定されて十分に球晶が発達させられていることにより、高温状態でも傷防止に十分な硬度を獲得しつつ、その加工性を向上させることができ、ラミネート材を缶蓋に成形してからの缶胴への巻締工程の際に、シーミングロールとの接触が生じるとしても、フィルム30の基材層31の削れ片や剥離片が発生するのを抑制することができる。
【0032】
ここで、この外面側に位置するフィルム30の基材層31について、その面配向係数(ΔP)が0.05より高くなったり、結晶化度が10%より低くなってしまうと、十分に球晶が発達しなくなるおそれが生じ、十分に高い硬度と良好な加工性との両立を図ることができなくなってしまうおそれがある一方、結晶化度を60%よりも高く設定することは技術的に困難となっている。
なお、上述したようなおそれを確実になくすため、このフィルム30の基材層31の少なくとも最表面の面配向係数(ΔP)は、好ましくは、0.03以下に設定され、より好ましくは、0.02以下に設定されるのがよく、フィルム30の基材層31の結晶化度は、好ましくは、41〜60%に設定され、より好ましくは、45〜60%に設定されるのがよい。
【0033】
また、外面側に位置するフィルム30の基材層31の厚みが、3〜50μmに設定されていることによって、耐食性や、缶蓋への加工性、開缶性を良好に保つことが可能となっていて、この基材層31の厚みが3μmよりも小さくなると、コストが高くなったり、耐食性に劣ってしまうおそれがあり、一方、基材層31の厚みが50μmよりも大きくなると、缶蓋への成形性や、缶蓋に成形されたときの開缶性が劣ってしまうおそれがある。
なお、上述したようなおそれを確実になくすため、このフィルム30の基材層31の厚みは、好ましくは、3〜25μmに設定され、より好ましくは、3〜12μmに設定されるのがよい。
【0034】
さらに、このようなラミネート材を用いてイージーオープンタイプのラミネート缶蓋を成形した場合には、スコアリング部にフィルム片が残存し、開缶の際にエンゼルヘアーが発生することにより、飲用の際に、このエンゼルヘアーが口にあたって不快感を与えるおそれがあるが、本実施形態では、外面側に位置するフィルム30の基材層31全体が、無配向結晶性樹脂で球晶の発達したものであるから、開缶の際には、フィルム30中に破断の起点が生じることとなって、エンゼルヘアーの発生を抑制することができる。
とくに、外面側に位置するフィルム30に多数の微細な凹凸あるいは貫通孔を形成することによって、エンゼルヘアーの発生をより確実に抑制することができる。
【0035】
ところで、缶内部に充填される飲料のシェルフライフ(貯蔵寿命)を確保するためには、飲料を缶(缶胴+缶蓋)の内部に充填した状態で、高温水蒸気によるレトルト殺菌処理を行うのであるが、このレトルト殺菌処理では、缶の外表面に高温水蒸気が接触することにより、缶の内側と外側との温度差に起因して、缶の外表面に結露が発生することになる。
【0036】
このとき、ラミネート缶蓋の外面側に位置するフィルムが、配向結晶構造や非晶質構造とされていると、その外表面(最表面)について、高温水蒸気と直接接触することになる部分(結露が生じていない外表面)のみの結晶化が進行して白化(レトルト白化)しやすく、水玉模様の白化現象(この水玉模様をウォータースポットと呼ぶ)が生じてしまうので、清潔感が損なわれ、外観上問題がある。
これに対して、本実施形態では、外面側に位置するフィルム30の基材層31の少なくとも最表面が球晶の発達した無配向結晶構造とされているために、レトルト白化を効果的に抑制することが可能となっており、上記のようなウォータースポットを発生させることもなくなるので、外観上の問題を生じさせることがない。
【0037】
一方、ラミネート缶蓋に白色着色を行うような場合、従来では、白色顔料を含有するフィルムや塗料を用いていたが、外面側に位置するフィルムを、球晶の発達した無配向結晶構造とするとともに、その球晶の結晶子の大きさを適切な範囲に調整することにより、白色顔料を使用せずとも、水玉模様のない均一な美しい白色を実現することも可能となっている。
【0038】
また、外面側に位置するフィルム30と内面側に位置するフィルム20とは、互いに同組成であって、それらの結晶構造(面配向係数、結晶化度など)のみが異なっていることから、これらフィルム30及びフィルム20には、その材料として同一のフィルムを用いることができ、組成の異なる個別のフィルムを用意する必要がなくなるのでコストが嵩むことがない。
【0039】
そして、このとき、本実施形態によるラミネート材の製造方法では、缶蓋素材板10の一方の面に、外面側に位置するフィルム30を貼り合わせ、熱処理によってフィルム30内に球晶を発達させて無配向結晶構造とした後に、内面側に位置するフィルム20を缶蓋素材板10の他方の面に貼り合わせるようにしていることから、上述したような缶蓋素材板10の両面に互いに結晶構造の異なるフィルム20,30をそれぞれ貼り合わせたラミネート材を得るときであっても、これらフィルム20,30の材料として、上記のように、互いに同組成である同一のフィルムを用いることができるのである。
【0040】
また、このような製造方法を用いると、缶蓋素材板10の一方の面に、外面側に位置するフィルム30を貼り合わせてから、このフィルム30内に球晶を発達させて無配向結晶構造とするために、この時点で、外面側に位置するフィルム30に対して十分な硬度を与えることができるので、その後の、内面側に位置するフィルム20を貼り合わせる工程などにおいても、外面側に位置するフィルム30に傷がつくのを抑制することができる。
【0041】
なお、上述した本実施形態においては、外面側に位置するフィルム30の基材層31を単層構造とするとともに、この基材層31全体を球晶の発達した無配向結晶構造としているが、これに限定されることなく、シーミングロールと接触することになるフィルム30の基材層31における少なくとも最表面さえ無配向結晶構造とされていればよい。
例えば、フィルム30の基材層31が、厚み方向で結晶構造の勾配が生じた単層構造で、その最表面のみが無配向結晶構造とされていたり、多層構造で、最表面に位置する層のみが無配向結晶構造とされていたりしてもよいのである。
【0042】
また、缶蓋素材板10の両面へのフィルム20,30の密着性や耐食性の観点から、缶蓋素材板10の表面には、表面処理膜を形成することが一般的に望まれている。このような表面処理膜としては、クロメート皮膜、陽極酸化皮膜などが挙げられる。
例えば、クロメート皮膜の表面処理膜を形成する場合には、アルミニウム板を苛性ソーダで脱脂及びエッチングを行った後、CrO4g/l、HPO12g/l、F0.65g/l、残りは水のような処理液に浸漬するといった化学処理によって行う。このようなクロメート皮膜の厚みは、密着性の観点から、表面積当たりのCr原子の重量で表して、好ましくは、5〜50mg/dmの範囲、より好ましくは、10〜35mg/dmの範囲内に収まるように設定されることがよい。
【0043】
さらに、缶蓋素材板10に貼り合わせられるフィルム20,30(ポリエステルフィルム)は、フィラーを含有していることが好ましく、このようなフィラーとしては、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、リン酸カルシウムなどの無機塩が挙げられる。
【0044】
加えて、ラミネート材をラミネート缶蓋に成形した後に、フィルムのガラス転移点以上180℃以下で加熱処理を加えることによって、密着性、耐食性を向上させることができ、このような加熱方法としては、ガスオーブン、高周波誘導加熱、遠赤外線照射などの方法が挙げられる。
【0045】
【実施例】
以下、本発明の一例を実施例とし、本発明から外れたものを比較例として、評価試験を行った。
まず、内面側に位置するフィルムと外面側に位置するフィルムとを用意し、これらを缶蓋素材板に対して貼り合わせることにより、以下の表1に示されるような結晶化度及び面配向係数を有するラミネート材(実施例1〜10、比較例1〜8)を製造した。
このラミネート材における外面側フィルムに多数の微孔加工を施して、イージーオープン缶蓋に成形し、高周波オーブンで110゜Cの熱処理を行った後、フレーバー性評価及び巻締試験を行った。
フレーバー性は、官能評価による味覚変化の有意差で評価し、巻締性は、外面側フィルムの削れ及び剥離の状態で評価した。その結果を表2に示す。
【0046】
【表1】
Figure 2004189318
【0047】
【表2】
Figure 2004189318
【0048】
表2に示されるように、本発明の一例である実施例1〜10は、いずれもフレーバー性及び巻締性がともに良好であった。
これに対して、本発明から外れている比較例1〜8は、フレーバー性及び巻締性のうちの少なくとも一方が悪化してしまっていた。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、缶蓋に成形されるときに内面側に位置するフィルムについては、配向結晶構造とすることによって、良好なフレーバー性を得るようにしながらも、外面側に位置するフィルムの少なくとも最表面については、球晶を発達させた無配向結晶構造とすることにより、高温状態でも傷がつくのを防止するのに十分な硬度を獲得しつつ、巻締工程の際の加工性を向上させて、シーミングロールとの接触で削れ片や剥離片が生じてしまうのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態によるラミネート材の断面図である。
【符号の説明】
10 缶蓋素材板
20 ポリエステルフィルム
21 基材層
22 接着層
30 ポリエステルフィルム
31 基材層
32 接着層

Claims (6)

  1. 缶蓋素材板の両面にそれぞれフィルムが貼り合わされてなるとともに、缶蓋に成形されるラミネート材であって、
    缶蓋に成形されるときに、外面側に位置する前記フィルムにおける少なくとも最表面が無配向結晶構造とされ、かつ、内面側に位置する前記フィルムが配向結晶構造とされていることを特徴とするラミネート材。
  2. 請求項1に記載のラミネート材であって、
    前記外面側に位置するフィルムは、その少なくとも最表面の結晶化度が10〜60%に設定されているとともに面配向係数が0.05以下に設定されていることを特徴とするラミネート材。
  3. 請求項1または請求項2に記載のラミネート材であって、
    前記内面側に位置するフィルムは、その結晶化度が40〜60%に設定されているとともに面配向係数が0.14以上に設定されていることを特徴とするラミネート材。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のラミネート材であって、
    前記外面側に位置するフィルムと前記内面側に位置するフィルムとは、互いに同組成であってそれらの結晶構造のみが異なっていることを特徴とするラミネート材。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のラミネート材を製造する製造方法であって、
    前記缶蓋素材板の一方の面に、前記外面側に位置するフィルムを貼り合わせる工程と、
    前記貼り合わされた外面側に位置するフィルムの少なくとも最表面を、熱処理を施すことにより球晶を発達させて無配向結晶構造にする工程と、
    前記無配向結晶構造になった外面側に位置するフィルムが一方の面に貼り合わされた前記缶蓋素材板の他方の面に、前記内面側に位置するフィルムを貼り合わせる工程とを有していることを特徴とするラミネート材の製造方法。
  6. 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のラミネート材を成形することによって製造されていることを特徴とするラミネート缶蓋。
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