JP4339046B2 - 樹脂被覆アルミニウム材の製造方法 - Google Patents

樹脂被覆アルミニウム材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、樹脂被覆アルミニウム材の製造方法、樹脂被覆缶蓋、及びアルミニウム容器に関するものである。
アルミニウム材料は軽量であるとともに成形性及び耐食性に優れる特性を有することから、飲料缶、日用品、建材あるいは電気製品の側板などとして広く使用されており、飲料缶の缶蓋材や缶胴材としても好適な材料である。
従来、飲料缶の缶蓋材等に用いられているアルミニウム材は、クロメート処理を下地処理として行い、この処理面に対してエポキシ系などの塗料を塗装した構成が一般的であるが、このように表面に塗膜を形成した場合、塗膜に飲料のフレーバー成分が吸着したり、塗膜中の成分が微量ながらも溶出することによって、飲料の風味に若干の変化を生じさせるおそれがあった。また、上記塗装処理は、焼き付け処理などの加熱に伴い排出される二酸化炭素が多く、環境への配慮の点でも好ましい方法とは言えない。
そこで、近年では、アルミニウム基材に樹脂フィルムを加熱圧着する、いわゆるラミネート法を用いて製造される樹脂被覆アルミニウム材に移行しつつある。このラミネート法を用いることで、内容物に対する良好なバリア性、及びフレーバー性が得られるアルミニウム材を提供することができ、また焼き付け処理の必要がないため、環境性にも優れている。
樹脂被覆缶蓋材においては、開缶に際しての樹脂フィルムの密着性も重要である。樹脂フィルムとアルミニウム基材との密着性が不足すると、開缶した際に樹脂フィルムが缶内面に剥がれて残ったり(フェザーリング)、場合によっては樹脂フィルムが切れずに開缶口を塞いで内容物が取り出せなくなる可能性もある。
そこで本出願人は、飲料缶等の缶蓋材に用いた場合に、優れた開缶性を得ることができる樹脂被覆金属板として、被覆された樹脂フィルムの結晶化率を被覆前の樹脂フィルムの結晶化率の1.1〜2.0倍に調整した樹脂被覆金属板を、下記特許文献1にて開示している。
特開2001−310417号公報
特許文献1に記載の技術を用いれば、アルミニウム基材に被覆された樹脂フィルムの作用により、優れた開缶性やバリア性を得ることができると考えられる。しかしながら、樹脂被覆アルミニウム材を缶蓋材として用いる場合、表裏面に被覆された樹脂フィルムの各々で重視される特性が異なっている。すなわち、缶蓋材に用いられる樹脂被覆アルミニウム材においては、缶胴への巻き締め加工時にフィルムに傷が生じないようにするために、缶外面側の樹脂フィルムに高い耐削れ性が要求されるのみならず、缶内面側の樹脂フィルムに、内容物に対する高いバリア性、及びフレーバー性が要求され、さらに、この缶内面では、常に内容物と接しているため、樹脂フィルムの密着性が低下し易く、缶外面と比べると特に高い密着性が要求される。従って、上記特許文献1に記載の技術を用いたとしても、上記缶の内外面における要求を満たすべく被覆する樹脂フィルムの最適化を行う必要がある。
さらに、飲料缶や食缶では、加熱装置(ホットベンダー)により保温されて販売されたり、高温のレトルト処理に供される場合もあり、このような加熱による樹脂フィルムの密着性低下により、上記フェザーリング等の不具合が生じ易くなるため、これらの用途に用いるには、加熱された場合にも良好な密着性を保持し得る樹脂被覆アルミニウム材が望ましい。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、優れた成形加工性及び優れたバリア性を奏すべく両面の樹脂フィルムの特性が最適化され、かつ加熱用途に用いた場合にも、良好な樹脂フィルムの密着性を得ることができる樹脂被覆アルミニウム材を、低コストにて製造できる方法を提供することを目的としている。
本発明は、上記課題を解決するために、表面処理を施されたアルミニウム基材の両面に熱可塑性樹脂フィルムが被覆されてなる樹脂被覆アルミニウム材の製造方法であって、アルミニウム基材の表面に、陽極酸化処理により有孔率が20%以下、膜厚が10nm〜300nmの陽極酸化皮膜を形成する工程と、前記陽極酸化処理を施されたアルミニウム基材を予備加熱し、前記アルミニウム基材の片側に熱可塑性樹脂フィルムを圧着した後、前記熱可塑性樹脂の(融点−10℃)以上の温度で加熱して冷却し、当該熱可塑性樹脂フィルムの結晶化率を30%未満とする工程と、前記片面被覆のアルミニウム基材を予備加熱し、前記アルミニウム基材の他面側の陽極酸化皮膜上に熱可塑性樹脂フィルムを圧着した後、前記熱可塑性樹脂の(融点−10℃)未満の温度で加熱して冷却し、当該熱可塑性樹脂フィルムの結晶化率を30%以上とする工程と、を有することを特徴とする樹脂被覆アルミニウム材の製造方法を提供する。
この製造方法によれば、まず、アルミニウム基材の表面に有孔率及び膜厚を適切な範囲内に制御して陽極酸化皮膜を形成し、係る陽極酸化皮膜上に熱可塑性樹脂フィルムを接着するようになっているので、熱可塑性樹脂フィルムが高い密着性を有してアルミニウム基材の表面に接着され、当該樹脂被覆アルミニウム材を成形加工して各種部材を作製する場合や、缶蓋に用いた場合の開缶部において樹脂フィルムの剥離を生じ難くすることができる。
また、アルミニウム基材の一面側に圧着した熱可塑性樹脂フィルムの結晶化率を30%未満とし、他面側に圧着した熱可塑性樹脂フィルムの結晶化率を30%以上とするようになっているので、上記結晶化率が30%未満である熱可塑性樹脂フィルムにあっては、良好な耐フィルム削れ性を得ることができ、他方、結晶化率が30%以上とされた熱可塑性樹脂フィルムにあっては、良好なバリア性やフレーバー性を得ることができる。これにより、飲料缶や食缶等、作製に際してアルミニウム材に強加工を施し、かつ内容物に常時接しているような用途にあっても、良好な特性が得られる樹脂被覆アルミニウム材を製造することができる。
また、本製造方法では、圧着後に熱可塑性樹脂フィルムの結晶化率調整を行うので、アルミニウム基材の両面に圧着する熱可塑性樹脂フィルムとして、同質の熱可塑性樹脂フィルムを用いることができ、部材の共通化による製造コストの低減を実現できるという利点も得られる。
本発明の樹脂被覆アルミニウム材の製造方法では、前記熱可塑性樹脂フィルムを圧着した後の加熱を、非接触加熱法により行うことが好ましい。前記非接触加熱法が、誘導加熱法又は赤外加熱法であることが好ましい。
この製造方法によれば、加熱により軟化した熱可塑性樹脂フィルムを製造装置に接触させることなく製造を行うことができるので、熱可塑性樹脂フィルムの破損により美観を損なうのを防止できる。
本発明の樹脂被覆アルミニウム材の製造方法では、前記熱可塑性樹脂フィルムとして、共重合成分の添加により溶融温度を低下させた単層構造、又は溶融温度の異なる複数の樹脂層を積層した複層構造を有している熱可塑性樹脂フィルムを用いることが好ましい。
この製造方法によれば、当該アルミニウム材の製造に際して、アルミニウム基材への熱可塑性樹脂フィルムの貼り合わせに際して、基材の加熱温度を低下させることができるため、樹脂フィルムの貼り合わせが容易になるとともに、陽極酸化皮膜表面にシラン系カップリング剤が塗布されている場合に、シラン系カップリング剤の熱分解が生じないようにすることができる。
本発明の樹脂被覆アルミニウム材の製造方法では、前記陽極酸化皮膜表面に、0.1mg/m以上100mg/m以下の塗布量でシラン系カップリング剤を塗布する工程を有することが好ましい。シラン系カップリング剤の塗布量を上記範囲とすることで、熱可塑性樹脂フィルムと陽極酸化皮膜との密着性を効率的に向上させることができる。
本発明によれば、有孔率及び膜厚を適切に制御された陽極酸化皮膜をアルミニウム基材の表面に形成し、この陽極酸化皮膜上に熱可塑性樹脂フィルムを被覆することで、樹脂フィルムと基材との優れた密着性を得ることができる。そして、アルミニウム基材両面の熱可塑性樹脂フィルムの結晶化率をそれぞれ適切に制御することで、一面側に被覆された樹脂フィルムは、成形加工性に優れ、他方の面に被覆された樹脂フィルムはバリア性に優れるという、飲料缶や食缶等の構成材として好適な樹脂被覆アルミニウム材を製造することができる。
また、上記熱可塑性樹脂フィルムと陽極酸化皮膜との間にシラン系カップリング剤塗布層を介在させるならば、熱可塑性樹脂フィルムがさらに強固にアルミニウム基材に密着され、平板密着性、及び加工密着性のいずれにも優れ、スコア加工部にて開缶を行う飲料缶の缶蓋等に用いて好適な樹脂被覆アルミニウム材を製造できる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
<樹脂被覆アルミニウム材の製造方法>
本発明に係る製造方法は、アルミニウム基材の表面に陽極酸化処理を施して陽極酸化皮膜を形成する工程と、前記アルミニウム基材の片面に熱可塑性樹脂フィルムを被覆した後、その結晶化率を調整する工程と、前記アルミニウム基材の他方の面に熱可塑性樹脂フィルムを被覆した後、その結晶化率を調整する工程とを基本工程として有する製造方法である。
(基材)
上記アルミニウム基材としては、目的とする用途により純アルミニウム系のJIS1000番系、Al−Mn系のJIS3000番合金、Al−Mg系のJIS5000番合金等が使用できるが、飲料缶等の缶蓋材として用いる場合には、耐ブローアップ性の点から、前記JIS5000系合金を用いることが好ましい。このアルミニウム基材としては、この合金等の表面に付着した油脂分を除去し、基材表面の不均質な酸化皮膜などを除去するための前処理が施されたものも好ましく使用できる。
(陽極酸化処理工程)
上記陽極酸化処理は、基材を構成するアルミニウム又はアルミニウム合金を電解液に浸漬して陽極処理を行う陽極酸化処理によって陽極酸化皮膜を形成するものであり、この陽極酸化皮膜の有孔率は、20%以下とされる。有孔率が20%以下であると、孔中に含まれる水分や電解質が少なく、フィルムラミネート時の加熱により皮膜が変質し難く、また接着面積が大きいため、密着性が向上する。ここで、有孔率とは、陽極酸化皮膜表面の測定領域において孔の形成されている部分の面積を全測定面積で除算した値、すなわち、有孔率={(孔のあいている面積)/(全測定面積)}×100の関係式で示されるものである。
上記陽極酸化皮膜として有孔率20%以下の無孔質又は微孔質の酸化皮膜を形成するには、皮膜溶解性の低い電解質の溶液で、アルミニウムを陽極として電解処理することにより形成できる。皮膜溶解性の高い電解液の場合には、陽極酸化皮膜が多孔質化する前の段階で電解を停止し、多孔質皮膜が成長する前の段階の皮膜を得ることにより行う方法が好ましい。具体的には、電解液の濃度及び温度、電解時の電流及び電圧、電解時間により調整することができる。
ここで用いる電解液としては、例えば硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、珪酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、フタル酸塩、アジピン酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、及び硼酸塩の内から選ばれた塩または混合物を用いることができる。これらの溶液を用いることにより、安定して有孔率を調整することができる。
これらの電解液を用いてアルミニウム基材を陽極酸化すると、電解の初期段階において無孔質のバリア層と称される陽極酸化皮膜が成長し、この無孔質の陽極酸化皮膜の成長が所定の段階まで進むと、この無孔質の皮膜上に多孔質層が急激に成長して多孔質の陽極酸化皮膜が生成される。ここで多孔質の陽極酸化皮膜とは、無孔質の薄いバリア層の上に多孔質層が成長したものを意味する。
また、陽極酸化皮膜の膜厚は10〜300nmとされる。これは、10nmより薄ければ所望の耐食性が得られず、一方、300nmよりも厚いと、多孔質化しやすくなり、無孔質膜とすることが困難になるからである。なお、より望ましい膜厚の範囲は20nm〜200nmである。陽極酸化皮膜の膜厚については、先の有孔率と同様、電解液の濃度及び温度、電解時の電流及び電圧、電解時間により調整することができる。
アルミニウム基材の表面に有孔率及び膜厚を上記範囲に制御された陽極酸化皮膜を形成することで、リン酸クロムを含むクロム水酸化物からなるクロメート皮膜のように、加熱による脱水で皮膜が脆化することも無く、加熱時にも皮膜と樹脂フィルムとが優れた密着性を奏する樹脂被覆アルミニウム材となっている。これは、本発明に係る陽極酸化皮膜は、一般の陽極酸化皮膜に比して表面に形成される孔が少なくなるよう調整されており、これにより、加熱によって脱離して皮膜を脆化させる水分や硫酸等の成分が孔中に吸着する量を少なくすることができ、樹脂フィルムの被覆工程や使用時の加熱等により皮膜が脆化し、密着性が低下するのを効果的に防止することができるからである。陽極酸化皮膜表面の孔の部分は、樹脂フィルムと密着しない部位、すなわちアルミニウム基材と樹脂フィルムとの密着面積を低下させている部位であり、陽極酸化皮膜を表面側から見た孔の面積率である有孔率は、低い方が良好な密着性を得ることができ、また孔から放出される水分等の密着性を低下させる成分の放出が少なく好ましい。
さらに、アルミニウム基材の両面には、樹脂フィルムが被覆されているものの、わずかな水分は樹脂フィルムを透過して陽極酸化皮膜に到達する。このとき、多くの孔を有する陽極酸化皮膜では上記樹脂フィルムを透過した水分を十分に遮断することができず、この水分による腐食を生じて密着性が低下するおそれがある。従って、皮膜の耐食性の観点からも上記有孔率は低い方が好ましい。
(シラン系カップリング剤塗布工程)
ここで、上記陽極酸化処理を施したアルミニウム基材に、浸漬法、スプレー法、ロールコート法等を利用してシラン系カップリング剤を塗布することもできる。シラン系カップリング剤の塗布量は0.1〜100mg/m、好ましくは1〜50mg/mが適当である。このシラン系カップリング剤の塗布順序としてはアルミニウム基材の両面に同時に塗布する方法と、片面のみに塗布する方法が採用できる。
シラン系カップリング剤としては、特に限定されないが、アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基等の有機官能基を有するものが好ましく、アミノ基を有するものは水溶液化し易いことから好ましく用いることができる。シラン系カップリング剤は陽極酸化皮膜と熱可塑性樹脂フィルムとの架橋を促進する作用を奏するため、両者の密着性を向上させる。
(フィルム被覆工程)
次いで、アルミニウム基材の片面に熱可塑性樹脂フィルムを圧着するフィルム被覆工程を行う。この際シラン系カップリング剤を片面に塗布している場合には、シラン系カップリング剤を塗布していない面に、先に熱可塑性樹脂フィルムを圧着する。先に圧着する熱可塑性樹脂フィルムは、結晶化率を低くして耐フィルム削れ性の良い方の熱可塑性樹脂フィルムとする。
本発明において、使用する熱可塑性樹脂フィルムには、特に限定はないが、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、共重合ポリエステル樹脂等からなる樹脂フィルムを挙げることができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂からなる樹脂フィルムや、ポリエステル系樹脂に共重合成分や共重合ポリエステル樹脂を混入することで融点を低下させたポリエステル系樹脂からなる樹脂フィルムを例示できる。ポリエステル系樹脂フィルムは、缶の内容物のフレーバー成分が吸着し難く、また水分の遮断性にも優れるため、好適である。上記共重合成分等の混入により樹脂フィルムの融点を低下させることで、被覆工程における樹脂フィルムの接着を容易に行うことができ、特に、シラン系カップリング剤を用いた場合に、被覆工程における加熱によりシラン系カップリング剤が熱分解されるのを防止できるという利点が得られる。
これらの熱可塑性樹脂フィルムは、公知の製造方法によってフィルム状に2軸延伸されて製造されたものを使用するのがよい。また熱可塑性樹脂フィルムの厚さは、耐食性、成形加工性、生産コスト等を考慮して、6〜30μm程度とするのが好ましい。
さらに、上記熱可塑性樹脂フィルムは、複層フィルムとすることができる。この場合、アルミニウム基材に接する接合部分は融点が低く溶着し易い材質とし、アルミニウム基材に接しない最外層には耐フィルム削れ性に富む材質、またはバリア性やフレーバー性に優れた材質の樹脂フィルムを積層して使用すれば、両面で互いに異なる特性を具備した樹脂被覆アルミニウム材を得ることが可能となる。具体的には、共重合成分又は共重合ポリエステル樹脂を混入することにより融点を低下させたポリエステル系樹脂からなる層をアルミニウム基材と接する側の面に積層した複層構造の樹脂フィルムを挙げることができる。
フィルム被覆工程において、アルミニウム基材は、通常はコイルの状態で供される。樹脂フィルムの接着を容易にするため、アルミニウム基材は先ず予備加熱装置で予備加熱する。加熱装置としては、加熱ロール、電気炉、ガスオーブン、誘導加熱装置、赤外線加熱装置などが適宜利用できる。予備加熱温度は、アルミニウム基材と接する部分の熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)以上で、かつアルミニウム基材と接しない最外層の熱可塑性樹脂フィルムの(融点−10℃)以下の温度とするのが望ましい。具体的には、予備加熱温度は100℃〜170℃が適当である。
予備加熱温度が前記(Tg)未満ではアルミニウム基材に熱可塑性樹脂フィルムを接合することができず、また前記(融点−10℃)を越える温度に予熱すると溶融した熱可塑性樹脂フィルムに加圧ロールの表面形状が転写されて外観が悪化し、商品価値の無いものとなる。
上記予備加熱を行ったならば、耐フィルム削れ性の良い方の熱可塑性樹脂フィルムを被覆する。樹脂フィルムはコイル状にして加圧ロール近傍に配置されている。予備加熱されたアルミニウム基材は樹脂フィルムと共に加圧ロールに送られ、先ずアルミニウム基材の片面のみに樹脂フィルムを加圧圧着する。
次いで、片面に熱可塑性樹脂フィルムを圧着したアルミニウム基材を後加熱装置に送り、アルミニウム基材に接しない最外層の樹脂フィルムの(融点−10℃)以上の温度に加熱した後、冷却する。この工程により最外層の樹脂フィルムの結晶状態が調整される。上記後加熱装置による加熱温度が最外層の樹脂フィルムの(融点−10℃)未満の温度では、熱可塑性樹脂フィルムの製造工程で2軸延伸される際に生成した配向結晶が多く残存して、耐フィルム削れ性を向上させる効果が得られない。耐巻締摩耗性の向上には、巻締工具と接する最外層の配向結晶をなくすことが重要であり、これを達成するためには最外層の樹脂フィルムの(融点−10℃)以上の温度に加熱した後冷却することが必要である。
この後加熱により、アルミニウム基材に被覆した熱可塑性樹脂フィルムの結晶化率を30%未満、好ましくは20%以下に調整する。
ここで、熱可塑性樹脂フィルムの結晶化率は、以下の手順で算出する。
先ず、圧着前の熱可塑性樹脂フィルムのフィルム密度ρ(g/cm)を密度勾配管によって測定し、次の(式1)に代入して圧着前の熱可塑性樹脂フィルムの結晶化率(C)を求める。
(式1)
C=[(ρ−1.335)/(1.455−1.335)]×100(%)
次いで、圧着前後の熱可塑性樹脂フィルムをX線回折法にて測定し、回折角度2θ=26度近辺に現れる(100)結晶の回折ピーク強度を測定する。圧着前の熱可塑性樹脂フィルムのピーク強度をIa、圧着後の熱可塑性樹脂フィルムのピーク強度をIbとし、次式(2)から圧着後の熱可塑性樹脂フィルムの結晶化率C’を求める。
(式2)
C’=(Ib/Ia)×C
加熱後の冷却速度は特に制限はないが、遅すぎると生産効率が低下するし、熱可塑性樹脂フィルム中に配向を持たない結晶が過度に成長して樹脂フィルムが脆化する場合があるので好ましくない。従って、冷却速度はある程度以上とする必要がある。ただし、このような配向を持たない結晶は、過度に成長しない場合には耐フィルム削れ性を害せず、むしろ耐フィルム削れ性を向上させる作用を奏する場合もある。従って、あえて急速に冷却する必要も無いが、このような配向を持たない結晶を有する熱可塑性樹脂フィルムの外観は若干白く変色する場合があり、このような着色を嫌う用途向けにはエアー冷却装置、ミスト冷却装置、水冷却装置等を使用して冷却速度を調整すると良い。
尚、冷却後の温度が高すぎる場合には、以降の工程でデフレクタロール、テンションロール、加圧ロール等のライン設備と接触する際に、それら設備の表面形状が転写されて外観が悪化し、商品価値の無いものとなる。この転写模様発生の原因は、配向結晶が失われることによりフィルム表面の高温強度が低下するためであり、冷却後の温度を170℃以下、好ましくは150℃以下とすることにより、転写模様の発生を効果的に防止することができる。
上記の後加熱装置としては、加熱ロール、電気炉、ガスオーブン、誘導加熱装置、赤外線加熱装置などが適宜組み合わせて利用できる。但し、後加熱工程では最外層の被覆樹脂フィルムの融点以上の温度に加熱するので、加熱により樹脂フィルムが溶融軟化した状態で加熱装置や支持ロール等の設備と接触すると、樹脂フィルム表面にそれら設備の表面形状の転写模様が発生する。従って、電気炉、ガスオーブン、誘導加熱装置、あるいは赤外線加熱装置等が適している。
上述の手順に従って片方の面に熱可塑性樹脂フィルムを被覆したアルミニウム基材には、引き続き反対側の面にも熱可塑性樹脂フィルムを被覆して、バリア性やフレーバー性に優れたものとする。片面に熱可塑性樹脂フィルムを被覆したアルミニウム基材は再び予備加熱装置に送り、アルミニウム基材に接する部分の熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移点(Tg)以上で、かつ170℃以下、好ましくは150℃以下の温度に予備加熱する。
予備加熱温度がTg未満では熱可塑性樹脂フィルムをアルミニウム基材に接合することができず、また170℃を越えて加熱すると前工程で貼り合わせた熱可塑性樹脂フィルム表面に、加圧ロールの表面形状が転写されて外観が悪化し、商品価値の無いものとなる。
予備加熱装置としては、加熱ロール、電気炉、ガスオーブン、誘導加熱装置、赤外線加熱装置などが適宜組み合わせて利用できる。ただし、前工程で被覆した熱可塑性樹脂フィルムは配向結晶が失われ、高温強度が低下しているため、加熱装置の部材に接触すると転写模様が発生する。従って、予備加熱の間も熱可塑性樹脂フィルムが設備と接触しないような配慮が必要である。
予備加熱をしたアルミニウム基材は、コイル状の巻回体にて供給される熱可塑性樹脂フィルムと共に加圧ロールに送り、アルミニウム基材のもう一方の表面に熱可塑性樹脂フィルムを加圧圧着する。アルミニウム基材に圧着された熱可塑性樹脂フィルムの密着性は、予備加熱温度が170℃以下と低温であるため不十分である。このため熱可塑性樹脂フィルムの密着性を高めるために、再度後加熱工程に送る。
後加熱工程では、後から圧着した熱可塑性樹脂フィルムの(融点−10℃)未満の温度に加熱する。この後加熱によって、後から圧着した熱可塑性樹脂フィルムの結晶化率を30%以上とすることができる。熱可塑性樹脂フィルムの(融点−10℃)以上の温度に加熱すると、樹脂フィルム製造時の2軸延伸工程で導入されている配向結晶が失われ、フレーバー性が低下する。後加熱装置としては、加熱ロール、電気炉、ガスオーブン、誘導加熱装置、赤外線加熱装置などを適宜組み合わせて利用できる。
本発明の樹脂被覆アルミニウム材の製造方法においては、両面に被覆する熱可塑性樹脂フィルムを同質の熱可塑性樹脂フィルムとすることが好ましい。「同質の熱可塑性樹脂フィルム」とは同じ成分を同じ割合で含有する樹脂フィルムを指す。この構成により、被覆樹脂フィルムの熱処理条件を調整して結晶化率を変えることによって、耐フィルム削れ性あるいは、バリア性やフレーバー性に優れた樹脂フィルムを各面に被覆形成することができるとともに、熱可塑性樹脂フィルムの製造工程の単一化が可能となり、フィルムの被覆工程も単純化されるので低コストで製造することが可能となる。
上記の工程により製造される本発明の樹脂被覆アルミニウム材では、有孔率及び膜厚を適切な範囲に制御された陽極酸化皮膜を介して前記熱可塑性樹脂フィルムとアルミニウム基材とが接着されているので、樹脂フィルムとアルミニウム基材との高い密着性を得ることができる。特に、飲料缶や食缶等の缶蓋として使用した場合には、良好な開缶性を得ることができる。すなわち、開缶に際して樹脂フィルムと基材との間に部分的に剥離を生じて、樹脂フィルムが部分的に残ってしまうこと(フェザーリング)や、アルミニウム基材のみが剥脱されて樹脂フィルムが缶を閉栓した状態となってしまうのを効果的に防止することができる。
また、アルミニウム基材の両面に、それぞれ耐フィルム削れ性に優れる樹脂フィルムと、フレーバー性、バリア性に優れる樹脂フィルムとを備えているため、缶胴への組み付け時の巻き締め加工により樹脂フィルムが傷つくのを防止できるとともに、内容物に対する高いバリア性、フレーバー性を得ることができ、飲料缶等の構成材(缶蓋、缶胴等)として特に好適に用いることができる樹脂被覆アルミニウム材となっている。
<アルミニウム容器>
図1は、本発明に係るアルミニウム容器の一例である飲料缶の斜視構成図である。同図に示す飲料缶1は、タブ13が設けられた缶蓋11を、有底円筒状の缶胴12の開口端に組み付けた、いわゆる2ピース缶である。この飲料缶1は、その缶蓋11及び缶胴12に、上記実施の形態の樹脂被覆アルミニウム材が用いられており、その缶蓋11においては、タブ13によるスコア加工部14の開口を良好に行うことが可能である。
また、缶胴12に対する組み付け加工時にも、外側の樹脂フィルムに傷が付くことがなく、美観を損なうことなく製造が可能になっている。また、缶蓋11及び缶胴12のいずれにおいても、内容物に対する優れたバリア性、フレーバー性を有しており、飲料等の食品の提供に好適な缶となっている。
また、本発明に係るアルミニウム容器の形態は、上記2ピース缶に限られず、ボトル缶や缶詰容器等の形態にも適用できるのは勿論である。
以下に本発明の実施例と比較例を挙げて説明する。
アルミニウム基材の両面にそれぞれ2層構造ポリエステル樹脂フィルム又は単層ホモPETフィルムを被覆した樹脂被覆アルミニウム材を製造した。本例において作製した実施例1〜17、比較例1〜7の各試料の製造条件を表1に示す。
母材となるアルミニウム基材としては、厚さ0.28mmのJIS5182(Mn;0.3wt%、Mg;4.5wt%)硬質アルミニウム合金板を使用した。使用に際して、各アルミニウム基材は、10%NaOH溶液による脱脂処理(液温50℃、10秒間)、水洗処理(10秒間)、5%HNO溶液による中和処理(液温は室温)、水洗処理(10秒間)の各処理工程を順次行う洗浄工程に供した。
そして、上記洗浄工程の後、アルミニウム基材を陽極側に電気的に接続し、対極をカーボン板として陽極酸化処理した。係る陽極酸化処理では、表1、表2に示すように、形成する陽極酸化皮膜の特性に応じて適宜選択した電解液(硫酸、ホウ酸塩、リン酸塩、珪酸塩、アジピン酸塩)を用いることで、陽極酸化皮膜中に所定の元素が取り込まれるようにするとともに、各電解液のpH、濃度、電解時間、電解温度等の調整により、膜厚、有孔率の調整を行った。また、陽極酸化処理を行った後、各基材に対して、水洗処理(10秒間)及び乾燥処理(80℃)を施した。
尚、アルミニウム基材の表面にクロメート処理を施した試料(比較例7)の作製に際しては、上記洗浄工程の後、アルミニウム合金板の両側表面に、クロム付着量が15mg/mとなるように常法によるリン酸クロメート処理を施した。
また、シラン系カップリング剤を塗布した試料の作製に際しては、ロールコーターで、有機官能基がアミノ基のアミノ系シラン系カップリング剤を表1に示す塗布量にて塗布した。
そして、上記下地処理の後、熱可塑性樹脂フィルムの被覆を行った。アルミニウム合金板に被覆する樹脂フィルムとしては、2層PETフィルム(実施例1〜14,16,17、比較例1〜6)、又は単層ホモPETフィルム(実施例15)を用いた。また、本実施例において、アルミニウム基材の両面には、同一種類の熱可塑性樹脂フィルムを被覆した。これらの熱可塑性樹脂フィルムの詳細を以下に示しておく。
次いで、上記各熱可塑性樹脂フィルムを、120℃で予備加熱後、圧着し、表1に示す「フィルム圧着後加熱温度」−「外面」の条件で加熱した。続いて、アルミニウム基材の反対側の面に、先に圧着した樹脂フィルムより高い所定の結晶化率が得られる温度により、熱可塑性樹脂フィルムを貼り合わせた。
本実施例で用いた熱可塑性樹脂フィルムの具体的構成を以下に説明する。
(1)2層PETフィルム:テレフタル酸とエチレングリコールを重合したポリエチレンテレフタレート(PET)からなるベース層を主体とし、このベース層の片面側にイソフタル酸を20%共重合した接着層を有する2層構造の2軸延伸フィルム。本実施例では、ベース層厚9μm、接着層厚1μm、延伸比3.5×3.5とした。
(2)単層ホモPETフィルム:テレフタル酸とエチレングリコールを重合した単層ポリエチレンテレフタレートフィルム。本実施例では10μm厚のものを用いた。
本例で作製した各サンプルについては、陽極酸化処理後、以下の方法にて陽極酸化皮膜の有孔率及び膜厚を測定しており、その測定結果は、他の製造条件とともに表1に併記している。
(有孔率の測定方法)
形成した陽極酸化皮膜の表面を5万倍の電子顕微鏡で観察し、任意に選択した10カ所の視野領域(但し、2μm×2μm以上の領域)において、各領域における孔の面積率を測定するとともに、その平均値を有孔率として導出した。但し、前記視野領域において金属間化合物などが存在して表面状態の変化が観察された場所は除外した。
また、この有孔率の導出方法としては、陽極酸化皮膜を縦断面方向で細断した試料を作製し、この試料について、透過型電子顕微鏡により上記方法と同様の倍率及び測定箇所にて観察を行い、陽極酸化皮膜の最表面における孔が形成された部位と、孔が形成されていない部位との比率から導出することもできる。この場合、深さが3nm以上で、大きさが円相当径で3nm以上の凹みを孔と見なして上記比率を導出する。
Figure 0004339046
Figure 0004339046
(評価試験)
以上のような工程により作製した各樹脂被覆アルミニウム材について、その特性を以下のようにして評価した。その結果は、表1又は表2に示した。
(1)結晶化率
先ず、フィルム圧着前のフィルム密度ρ(g/cm )を密度勾配管によって測定し、次式(1)に代入して圧着前の樹脂フィルムの結晶化率(C)を求めた。
(式1)
C=[(ρ−1.335)/(1.455−1.335)]×100(%)
次いで、圧着前後の樹脂フィルムをX線回折にかけ、回折角度2θ=26度近辺に現れる(100)結晶の回折ピーク強度を測定した。圧着前の樹脂フィルムのピーク強度をIa、圧着後の樹脂フィルムのピーク強度をIbとし、下記(式2)から圧着後の樹脂フィルムの結晶化率C’を求めた。測定結果を表1に併記した。
(式2)
C’=(Ib/Ia)×C
(2)平板密着性
熱可塑性樹脂フィルムを被覆したアルミニウム合金板を幅30mm、長さ100mmの短冊状に切り出して、55℃の温水中に30分間浸漬した。次いで、その温水中でアルミニウム部分のみを切断して折り曲げて引っ張り、成形体に加工した際に内面側となる面の樹脂フィルムの剥離長さを測定した。剥離の全く認められないものには◎印を、剥離が2mm以下のものには○印を、剥離が2mmを超え6mm未満のものには△印を、さらに剥離が6mm以上の場合には×印を付して評価した。測定結果を表2に示した。
(3)加工密着性
樹脂被覆アルミニウム材を、飲料缶缶蓋に加工して内面側の樹脂フィルムの加工密着性を評価した。樹脂被覆アルミニウム材を飲料缶用の缶蓋に成形し、水を充填した缶胴に巻き締めて飲料缶を作製し、60℃で倒置保管した後、開缶して樹脂フィルムの剥離の有無を観察した。樹脂フィルムに剥離が生じなかったものには◎印を、わずかに剥離しているもの(剥離が1mm角以内のもの)には○印を、剥離は大きくないが目視で確認できるもの(剥離が1mm角超〜3mm角のもの)には△印を、樹脂フィルムが大きく剥離しているもの(剥離が3mm角超のもの)には×印を付して評価した。評価結果を表2に示した。
(4)フレーバー性
作製した各樹脂被覆アルミニウム材の内面側の樹脂フィルム(後から圧着した方の樹脂フィルム)の表面100mmに、フレーバー疑似水(リモネン 50ppm、エタノール 10%の水溶液)を接触させ、37℃の恒温器中に入れて30日間保管した。その後フレーバー疑似水を除去して、ジエチルエーテルに接触させて室温で3日間保持し、上記内面側の樹脂フィルムに吸着したリモネンを抽出し、吸光分析により抽出量を測定した。抽出されたリモネン量を面積100cm当たりの抽出量に換算し、リモネン量が15μg/100cm以下の場合には◎印を、15μg/100cmを超え20μg/100cm以下の場合には○印を、20μg/100cmを超え30μg/100cm以下の場合には△印を、さらに30μg/100cmを超える場合には×印を付して評価した。評価結果を表2に示した。
(5)耐フィルム削れ性
熱可塑性樹脂被覆アルミニウム材を缶蓋にシェル成形加工した後、缶胴に巻締加工を10枚連続して行った。巻締加工後の外面側巻締め部を目視及び光学顕微鏡により観察し、樹脂フィルムの削れの有無を調べ、耐フィルム削れ性を評価した。樹脂フィルムに傷(削れ)が全く認められない場合には◎印を、局部的な点状の軽微な傷のみである場合には○印を、局部的に樹脂フィルムに線状の傷があるが、実用上問題ないと判断できる場合には△印を、さらに巻締め部全周に渡る傷がある場合には×印を付して評価した。
表2の結果から、本発明の樹脂被覆アルミニウム材は、フィルムの密着性(平板密着性、加工密着性)に優れ、フレーバー性、耐フィルム削れ性のいずれにも優れた材料であることが判る。特に、陽極酸化皮膜の有孔率を0%としたもの(実施例2)、及び塗布量0.1〜100mg/mの範囲でシラン系カップリング剤を塗布したもの(実施例11〜14)において、特に優れた平板密着性が得られており、シラン系カップリング剤を10〜100mg/mの範囲で塗布したもの(実施例11,12,14)では、加工密着性においても極めて良好な結果が得られている。
また、実施例1〜17においては、外面側の熱可塑性樹脂フィルムの結晶化率が30%未満とされ、極めて良好な耐フィルム削れ性が得られている。そして、内面側の熱可塑性樹脂フィルムの結晶化率が30%以上とされ、極めて良好なフレーバー性が得られている。
これに対して、比較例1は、陽極酸化皮膜の有孔率が不適正であり、比較例2,3は、同、膜厚が不適正であるため、樹脂フィルムの密着性が悪く、特に加工密着性において劣るものとなっている。比較例4では、外面側の熱可塑性樹脂フィルムの結晶化率が高すぎるため、耐フィルム削れ性に劣るものとなっている。比較例5では、内面の熱可塑性樹脂フィルムの結晶化率が不適正であり、フレーバー性に劣るものとなっている。比較例6は、樹脂フィルムの下地処理としてクロメート処理を行ったものであるが、特に内面側で十分な密着性が得られていない。
このように、缶蓋として用いるに際して重要視される、耐フィルム削れ性、開缶性、フレーバー性の全てにおいて優れた特性を有するアルミニウム材を得るためには、本発明に係る製造方法で得られる樹脂被覆アルミニウム材の要件(下地層として20%以下の有孔率を有し、かつ膜厚が10〜300nmの陽極酸化皮膜を用い、被覆される樹脂フィルムの結晶化率が、一方の面で30%以上であり、他方の面で30%未満である構成)を満たすことが必須であり、表2に示す比較例の評価結果から明らかなように、これらの要件のいずれかが不適正である場合、良好な特性を有する樹脂被覆アルミニウム材を製造できないことが分かる。
本発明によれば、樹脂フィルムの下地層としてその有孔率及び膜厚を適切に制御された陽極酸化皮膜を形成し、かつ基材両面に被覆する樹脂フィルムの結晶化率を各々適切に調整する製造方法により、優れた密着性、バリア性、フレーバー性等を得ることができる樹脂被覆アルミニウム材を製造することができる。これにより、飲料缶や食缶等の構成材として好適な樹脂被覆アルミニウム材が提供される。
図1は、本発明に係るアルミニウム容器の一例である飲料缶の斜視構成図。
符号の説明
1 飲料缶(アルミニウム容器)、
11 缶蓋
12 缶胴
13 タブ
14 スコア加工部

Claims (5)

  1. 表面処理を施されたアルミニウム基材の両面に熱可塑性樹脂フィルムが被覆されてなる樹脂被覆アルミニウム材の製造方法であって、
    アルミニウム基材の表面に、陽極酸化処理により有孔率が20%以下、膜厚が10nm〜300nmの陽極酸化皮膜を形成する工程と、
    前記陽極酸化処理を施されたアルミニウム基材を予備加熱し、前記アルミニウム基材の片側に熱可塑性樹脂フィルムを圧着した後、前記熱可塑性樹脂の(融点−10℃)以上の温度で加熱して冷却し、当該熱可塑性樹脂フィルムの結晶化率を30%未満とする工程と、
    前記片面被覆のアルミニウム基材を予備加熱し、前記アルミニウム基材の他面側の陽極酸化皮膜上に熱可塑性樹脂フィルムを圧着した後、前記熱可塑性樹脂の(融点−10℃)未満の温度で加熱して冷却し、当該熱可塑性樹脂フィルムの結晶化率を30%以上とする工程と、
    を有することを特徴とする樹脂被覆アルミニウム材の製造方法。
  2. 前記熱可塑性樹脂フィルムを圧着した後の加熱を、非接触加熱法により行うことを特徴とする請求項1に記載の樹脂被覆アルミニウム材の製造方法。
  3. 前記非接触加熱法が、誘導加熱法又は赤外加熱法であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂被覆アルミニウム材の製造方法。
  4. 前記熱可塑性樹脂フィルムとして、共重合成分の添加により溶融温度を低下させた単層構造、又は溶融温度の異なる複数の樹脂層を積層した複層構造を有している熱可塑性樹脂フィルムを用いることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の樹脂被覆アルミニウム材の製造方法。
  5. 前記陽極酸化皮膜表面に、0.1mg/m以上100mg/m以下の塗布量でシラン系カップリング剤を塗布する工程を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の樹脂被覆アルミニウム材の製造方法
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