JP2004181714A - インクジェット記録媒体とそれを用いたインクジェット記録方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】支持体上に、少なくとも2層のインク吸収層を有し、該支持体から最も離れた位置にあるインク吸収層が、少なくとも熱可塑性樹脂、無機微粒子を含有するインクジェット記録媒体であって、白地部の色度が、CIE色空間における明度指数L*>90、知覚色度指数が−2<a*<+2、−10<b*<−1の関係を満たすことを特徴とするインクジェット記録媒体。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なインクジェット記録媒体とそれを用いたインクジェット記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット技術の進歩は目覚ましく、プリンター技術、インク技術、専用のインクジェット記録媒体技術の向上と相まって写真画質と呼ばれる様な高画質になっている。この画質向上に伴い、インクジェット画像の保存性が従来の銀塩写真と比較されるようになり、多くの染料インクにおいては、インクジェット画像の耐水性、耐にじみ性の弱さといった色剤の移動を伴う劣化や、耐光性や酸化ガス耐性に対する弱さといった色剤特有の化学反応を伴う劣化が指摘されている。
【0003】
一方、染料インク画像の保存性を改良するため、顔料インクを用いる方法が多く提案されている。しかし、顔料インクを用いた場合、銀塩写真のような光沢感が得られなかったり、ブロンジングと呼ばれる金属光沢が見られる場合もあり、多くの問題点を抱えている。また、単に顔料インクを用いるだけでは、写真画像に匹敵する充分な画像保存性が得られていないのが現状である。
【0004】
上記課題の中で、インクジェット記録画像の画像保存性を向上する目的で現在まで多くの提案がなされている。インクジェット記録媒体としては、例えば、特開昭59−222381号、特開平4−21446号、同10−315448号、同11−5362号、同11−192775号には、インクジェット記録媒体の最表層に、熱可塑性有機高分子粒子からなる層を設け、画像記録後に、熱可塑性有機高分子粒子を溶融、皮膜化し、結果として、高分子の保護膜を形成することにより、耐水性、耐候性の改良及び画像の光沢付与を達成している。また、これらの記録媒体は、インク吸収速度が不十分であり、高速印字適性が不足している。
【0005】
上記課題に対し、熱可塑性樹脂含有層に無機微粒子を一定量添加し、インク吸収性の改善した技術が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。また、高堅牢性の顔料インクを用いて、印字後、加熱定着処理することにより、上記顔料インクの課題を改善する技術が開示されている。
【0006】
しかしながら上記で開示されている技術では、熱可塑性樹脂含有層に無機微粒子を一定量添加することに伴ういくつかの新たな課題が顕在化している。
【0007】
その一つは、表層の白さが低下し、黄ばんで見えることである。原因は定かではないが、通常、写真画質をうたったフォト用インクジェット記録用紙は、原紙あるいは表層以外の吸収層に酸化チタン等の白色顔料、あるいは蛍光増白剤を添加して白味を増しているが、熱可塑性樹脂と共に無機微粒子を一定量添加している表層では、その透明度が低いため、これらの効果が反映されにくいものと推定される。表層に熱可塑性樹脂を含有するインクジェット記録媒体は、印字後、熱可塑性樹脂を溶融もしくは成膜等する処理を行うことが好ましい形態であるが、熱可塑性樹脂含有層に無機微粒子を一定量添加している表層では、これらの後処理でも充分に透明性が向上せず、後処理前と同様に白味が不足してしまう。
【0008】
また、印字後、熱可塑性樹脂を溶融もしくは成膜等する処理により、画像の光沢が大幅に向上し鮮やかなプリントが得られるが、熱可塑性樹脂含有層に無機微粒子を一定量添加している表層では、画像部に比べて光沢感が低く、白地部が目立ってしまうことがある。特に、顔料インクを用いた場合に顕著に認識される。特に、上記で説明したように、白地が黄ばんでいると、画像印字部と白地部との光沢感の差とあいまって、画質の高級感が著しく低下し、とりわけ、白地の縁がある画像の場合、その影響がより顕著に表れてくる。
【0009】
上記各公開技術では、熱可塑性樹脂含有層に無機微粒子を一定量添加している表層の構成の場合、特に蛍光増白剤を添加し、特性を考慮した白地の調整を必要とする記載はない。特に、表層部に蛍光増白剤を添加して白地を調整することを示唆する記載は、一切見られない。
【0010】
【特許文献1】
特開2002−234246号公報 (特許請求の範囲)
【0011】
【特許文献2】
特開2002−234248号公報 (特許請求の範囲)
【0012】
【特許文献3】
特開2002−234256号公報 (特許請求の範囲)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、第1の目的は、白地が黄ばんで見えることなく高品位な画像を形成するインクジェット記録媒体とインクジェット記録方法を提供することであり、第2の目的は、顔料インクを用いた画像でも、白地部と画像部とで違和感を生じない画像を形成するインクジェット記録媒体とインクジェット記録方法を提供することであり、第3の目的は高速印字に適応できる高いインク吸収速度を有するインクジェット記録媒体とインクジェット記録方法を提供することであり、第4の目的は画像保存時に白地劣化の少ないインクジェット記録媒体とインクジェット記録方法を提供することであり、第5の目的は製造安定性に優れたインクジェット記録媒体とインクジェット記録方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0015】
1.支持体上に、少なくとも2層のインク吸収層を有し、該支持体から最も離れた位置にあるインク吸収層が、少なくとも熱可塑性樹脂、無機微粒子を含有するインクジェット記録媒体であって、白地部の色度が、CIE色空間における明度指数L*>90、知覚色度指数が−2<a*<+2、−10<b*<−1の関係を満たすことを特徴とするインクジェット記録媒体。
【0016】
2.JIS−Z−8741に規定される60度鏡面光沢度が、35%以上、60%以下であることを特徴とする前記1項に記載のインクジェット記録媒体。
【0017】
3.蛍光増白剤を1m2あたり20〜200mg含有することを特徴とする前記1または2項に記載のインクジェット記録媒体。
【0018】
4.前記1〜3項のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体上にインクを用いて印字した後、少なくとも加熱工程を有する後処理工程で処理することを特徴とするインクジェット記録方法。
【0019】
5.前記後処理工程で処理した後の白地の色度を、CIE色空間における明度指数L*>85、知覚色度指数が−2<a*<+2、−10<b*<−1の関係を満たすように調整することを特徴とする前記4項に記載のインクジェット記録方法。
【0020】
6.前記インクが顔料インクであることを特徴とする前記4または5項に記載のインクジェット記録方法。
【0021】
本発明発明者らは、写真画質の匹敵するインクジェット画像の実現に向け鋭意検討を行った結果、支持体上に、少なくとも2層のインク吸収層を有し、該支持体から最も離れた位置にあるインク吸収層が、少なくとも熱可塑性樹脂、無機微粒子を含有するインクジェット記録媒体であって、白地部の色度が、CIE色空間における明度指数L*>90、知覚色度指数が−2<a*<+2、−10<b*<−1の関係を満たすインクジェット記録媒体により、白地性に優れ、顔料インクを用いた場合にも、白地部と画像部との違和感がなく、高いインク吸収速度を有し、画像保存時に白地劣化の少ないインクジェット記録媒体とインクジェット記録方法を実現できることを見出し、本発明に至った次第でる。
【0022】
本発明の上記効果は、更に、JIS−Z−8741に規定される60度鏡面光沢度を35%以上、60%以下とすること、蛍光増白剤を1m2あたり20〜200mg含有すること、インクジェット記録媒体上にインクを用いて印字した後、少なくとも加熱工程を有する後処理工程で処理すること、後処理工程で処理した後の白地の色度を、CIE色空間における明度指数L*>85、知覚色度指数が−2<a*<+2、−10<b*<−1の関係を満たすように調整すること、インクとして顔料インクを用いることにより、一層発揮されることを見出したものである。
【0023】
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明のインクジェット記録媒体(以下、単に記録媒体ともいう)は、支持体上に、少なくとも2層のインク吸収層を有し、該支持体から最も離れた位置にあるインク吸収層(以下、表層ともいう)が、少なくとも熱可塑性樹脂、無機微粒子を含有するインクジェット記録媒体であって、白地部の色度が、CIE色空間における明度指数L*>90、知覚色度指数が−2<a*<+2、−10<b*<−1の関係を満たすことが特徴であり、好ましくはL*>95、または−7<b*<−4である。
【0024】
本発明において規定されるL*、a*、b*値は、JIS−Z−8722、同8717に従って測定され、JIS−Z−8730に規定された色の表示方法に従って表示されるものであり、例えば、X−rite社濃度計(X−Rite938)、グレタグSPM−100及び色測定用標準ブラックバッキング、色彩色差計(ミノルタ社製:CR−100)、カラーアナライザー(村上色彩社製CMS−1200)等を用い測定することができる。
【0025】
本発明においては、白地部の色度を上記で規定する範囲とすることにより、好ましい色調の白地を実現でき、特に、白地部と画像部との違和感を低減することができる。
【0026】
本発明のインクジェット記録媒体において、上記で規定する白地部の色度を実現する方法として、特に制限はなく、例えば、着色顔料、染料等の白地調整剤や蛍光増白剤等を用いることができるが、本発明においては、蛍光増白剤を全インク吸収層1m2あたり20〜200mg含有することが好ましく、より好ましくは表層に10〜100mg/m2添加することであり、特に好ましくは表層に10〜50mg/m2添加することである。蛍光増白剤の添加量が200mgを超えると、塗布液の停滞における粘度上昇が大きくなり、生産性の低下を招く結果となる。特に、表層において、蛍光増白剤の添加量が200mgを超えるとその影響が顕著に表れるため好ましくない。
【0027】
本発明で用いることのできる蛍光増白剤としては、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載されている化合物を挙げることができ、例えば、ジアルキルアミノクマリン、ビスジメチルアミノスチルベン、ビスメチルアミノスチルベン、4−アルコキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸−N−アルキルイミド、ビスベンズオキサゾリルエチレン、ジアルキルスチルベン等が挙げられる。
【0028】
本発明のインクジェット記録媒体においては、JIS−Z−8741に規定される60度鏡面光沢度が、35%以上、60%以下であることが好ましく、より好ましくは40%以上、60%以下であり、更に好ましくは45%以上、60%以下である。
【0029】
本発明における60度鏡面光沢度とは、JIS Z 8741に記載された測定方法に則り測定した値(%)である。本発明に係る60度鏡面光沢度の測定に用いることのできる装置は、例えば、精密光沢計GM−26D、True Gross GM−26DPRO、変角光沢計GM−3D(以上、村上色彩技術研究所製)、VG−2000(日本電色工業社製)、デジタル変角光沢計(スガ試験機株式会社製)等を挙げることができる。
【0030】
本発明のインクジェット記録媒体において、前記で規定した白地特性に加えて、60度鏡面光沢度を上記で規定する範囲とすることにより、写真画質に匹敵する高品位のインクジェット画像を実現することができる。
【0031】
本発明において、所望の各鏡面光沢度を得る方法として、特に限定はなく、例えば、インク吸収層中の無機微粒子の粒子径、種類、添加量や表層で用いる熱可塑性樹脂粒子の粒子径、種類、添加量等を適宜選択することにより、達成することができる。
【0032】
次いで、本発明に係る表層、インク吸収層の構成要素について説明する。
本発明に係る表層は、少なくとも熱可塑性樹脂、無機微粒子を含有する。
【0033】
はじめに、本発明に係る熱可塑性樹脂について説明する。
本発明に係る表層で用いることのできる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、これらの共重合体及びこれらの塩が挙げられ、中でもスチレン−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、SBRラテックスが好ましい。熱可塑性樹脂は、モノマー組成及び、粒径、重合度が違う複数の重合体を混合して用いても良い。
【0034】
熱可塑性樹脂を選択するに際し、インク吸収性、加熱加圧による後処理工程後の画像の光沢性、画像堅牢性及び離型性を考慮すべきである。
【0035】
インク吸収性については、熱可塑性微粒子の粒径が0.05μm未満の場合は、顔料インク中の顔料粒子とインク溶媒の分離が遅くなり、インク吸収速度の低下を招くことになる。また10μmを越えると、支持体上に塗設する際にインク受容層に隣接する溶媒吸収層との接着性や、塗設乾燥後のインクジェット記録媒体の被膜強度の点から好ましくない。このために好ましい熱可塑性樹微粒子径としては好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmである。さらに好ましくは、0.1〜1μmである。
【0036】
また、熱可塑性樹脂の選択の基準としてはガラス転移点(Tg)が挙げられる。Tgが塗布乾燥温度より低い場合は、例えば、記録媒体製造時の塗布乾燥温度が既にTgより高く、インク溶媒が透過するための熱可塑性微粒子による空隙が消失してしまう。
【0037】
また、Tgが、支持体の熱による変性を起こす温度以上の場合は、顔料インクによるインクジェット記録後溶融成膜するために高温での定着操作が必要となり、装置上の負荷及び支持体の熱安定性等が問題となる。熱可塑性微粒子の好ましいTgは50〜150℃である。また、最低造膜温度(MFT)としては、50〜150℃のものが好ましい。
【0038】
熱可塑性微粒子は、環境適性の観点から、水系に分散されたものが好ましく、特に、乳化重合により得られた水系ラテックスが好ましい。この際、ノニオン系分散剤を乳化剤として用いて乳化重合したタイプは好ましく用いることができる形態である。
【0039】
また、用いる熱可塑性微粒子は臭気および安全性の観点から残存するモノマー成分が少ない方が好ましく、重合体の固形分質量に対して3%以下が好ましく、更に1%以下が好ましく、特には0.1%以下が好ましい。
【0040】
本発明に係る表層においては、上記熱可塑性樹脂と共に無機微粒子を用いることが特徴の一つである。
【0041】
本発明で用いることのできる無機微粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができる。
【0042】
無機微粒子の平均粒径は、粒子そのものあるいは表層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を求めてその単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
【0043】
無機微粒子としては、シリカ及びアルミナまたはアルミナ水和物から選ばれた固体微粒子を用いることが好ましく、シリカがより好ましい。
【0044】
シリカとしては、通常の湿式法で合成されたシリカ、コロイダルシリカ或いは気相法で合成されたシリカ等が好ましく用いられ、本発明において特に好ましく用いられる微粒子シリカとしては、コロイダルシリカまたは気相法で合成された微粒子シリカであり、中でも気相法により合成された微粒子シリカは高い空隙率が得られる。また、アルミナまたはアルミナ水和物は、結晶性であっても非晶質であってもよく、また不定形粒子、球状粒子、針状粒子など任意の形状のものを使用することができる。
【0045】
無機微粒子は、その粒径が100nm以下であることが好ましい。例えば、上記気相法微粒子シリカの場合、一次粒子の状態で分散された無機微粒子の一次粒子の平均粒径(塗設前の分散液状態での粒径)は、100nm以下のものが好ましく、より好ましくは4〜50nm、最も好ましくは4〜20nmである。
【0046】
最も好ましく用いられる、一次粒子の平均粒径が4〜20nmである気相法により合成されたシリカとしては、例えば、日本アエロジル社のアエロジルが市販されている。この気相法微粒子シリカは、水中に、例えば、三田村理研工業株式会社製のジェットストリーム・インダクターミキサーなどにより吸引分散することで、比較的容易に一次粒子まで分散することができる。
【0047】
本発明に係る表層には、上記構成に加えて、水溶性バインダーを適宜含有することができる。
【0048】
水溶性バインダーとしては、熱可塑性樹脂の1〜10%の範囲で用いることができ、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、デキストラン、デキストリン、カラーギーナン(κ、ι、λ等)、寒天、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらの水溶性樹脂は二種以上併用することも可能である。
【0049】
本発明で好ましく用いられる水溶性樹脂は、ポリビニルアルコールである。本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0050】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に、平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。ケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0051】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号公報に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0052】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0053】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0054】
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号公報に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号公報、同63−307979号公報に記載されているようなビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号公報に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0055】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号公報に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号公報に記載された疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。
【0056】
ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど二種類以上を併用することもできる。
【0057】
本発明においては、表層に無機微粒子及び熱可塑性樹脂を含む構成が特徴であるが、好ましい理由として以下の点を挙げることができる。
【0058】
1)インク吸収速度が大きく、ビーディング、カラーブリード等の画質劣化が起こりにくく、高速印字適性を有している
2)画像表面強度が強い
3)画像保存時の重ねでの融着がおこりにくい
4)表層の塗布生産性に優れている
5)筆記性を有している
この場合、表層の熱可塑性樹脂と無機微粒子の固形分質量比としては、熱可塑性樹脂および無機微粒子や他の添加剤などにより個々に決めるのが好ましいが、本発明においては、熱可塑性樹脂(B)とフィラー(F)との比率(B/F)が、2/8〜8/2であることが好ましく、より好ましくは3/7〜7/3であり、更に好ましくは4/6〜6/4である。
【0059】
本発明に係る表層には、分子内に第四級アンモニウム塩基を有するカチオン性の水溶性ポリマーを含有しても良く、インクジェット記録媒体1m2当たり通常0.1〜10g、好ましくは0.2〜5gの範囲で用いられる。
【0060】
本発明に係る表層の膜厚としては、3〜15μmであることが好ましい。
表層の膜厚の測定方法としては、表層を設けた記録媒体断面を正確に垂直方向に切断した後、光学顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡を用いて観察する方法を挙げることができる。
【0061】
本発明のインクジェット記録媒体においては、支持体と上記表層との間に、インク溶媒を吸収するインク吸収層を設けることが好ましい。
【0062】
記録媒体のインク吸収層としては、大きく別けて、膨潤型と空隙型とがある。膨潤型としては、親水性バインダーとして、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等を単独もしくは併用して塗布しこれをインク吸収層としたものを用いることができる。
【0063】
空隙型としては、微粒子及び親水性バインダーを混合して塗布したもので、特に光沢性のあるものが好ましい。微粒子としては、アルミナもしくはシリカが好ましく、特に、粒径0.1μm以下のシリカを用いたものが好ましい。親水性バインダーとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等を単独もしくは併用したものが好ましい。
【0064】
連続、あるいは高速プリントに適性を持たせるには、記録媒体のインク吸収速度が速い方が適しており、この点から、空隙型を特に好ましく用いることができる。
【0065】
以下、空隙型インク吸収層(空隙層ともいう)について更に詳細に説明する。空隙層は、主に親水性バインダーと無機微粒子の軟凝集により形成されるものである。従来より、皮膜中に空隙を形成する方法は種々知られており、例えば、2種以上のポリマーを含有する均一な塗布液を支持体上に塗布し、乾燥過程でこれらのポリマーを互いに相分離させて空隙を形成する方法、固体微粒子および親水性または疎水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布し、乾燥後に、インクジェット記録媒体を水或いは適当な有機溶媒を含有する液に浸漬して固体微粒子を溶解させて空隙を作製する方法、皮膜形成時に発泡する性質を有する化合物を含有する塗布液を塗布後、乾燥過程でこの化合物を発泡させて皮膜中に空隙を形成する方法、多孔質固体微粒子と親水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布し、多孔質微粒子中や微粒子間に空隙を形成する方法、親水性バインダーに対して概ね等量以上の容積を有する固体微粒子及びまたは微粒子油滴と親水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布し、固体微粒子の間に空隙を作製する方法等が知られている。本発明においては、空隙層に、平均粒径が100nm以下の各種無機固体微粒子を含有させることによって形成されることが特に好ましい。
【0066】
上記の目的で使用される無機微粒子としては、前述の表層で用いられる無機微粒子と同様のものを用いることができる。
【0067】
また、親水性バインダーとしては、前述の表層で記載した水溶性バインダーと同様の化合物を挙げることができる。
【0068】
インク吸収層に用いられる無機微粒子の添加量は、要求されるインク吸収容量、空隙層の空隙率、無機微粒子の種類、水溶性樹脂の種類に大きく依存するが、一般にはインクジェット記録媒体1m2当たり、通常、5〜30g、好ましくは10〜25gである。
【0069】
また、インク吸収層に用いられる無機微粒子と水溶性樹脂の比率は、質量比で通常2:1〜20:1であり、特に3:1〜10:1であることが好ましい。
【0070】
インク吸収層は、分子内に第四級アンモニウム塩基を有するカチオン性の水溶性ポリマーを含有しても良く、インクジェット記録媒体1m2当たり通常0.1〜10g、好ましくは0.2〜5gの範囲で用いられる。
【0071】
空隙層において、空隙の総量(空隙容量)は記録媒体1m2当り20ml以上であることが好ましい。空隙容量が20ml/m2未満の場合、印字時のインク量が少ない場合には、インク吸収性は良好であるものの、インク量が多くなるとインクが完全に吸収されず、画質を低下させたり、乾燥性の遅れを生じるなどの問題が生じやすい。
【0072】
空隙型の他のタイプとして、無機微粒子を用いてインク溶媒吸収層を形成させる以外に、ポリウレタン樹脂エマルジョンと水溶性エポキシ化合物及び/又はアセトアセチル化ポリビニルアルコールとを併用し、更にエピクロルヒドリンポリアミド樹脂を併用させた塗工液を用いてインク溶媒吸収層を形成させてもよい。この場合のポリウレタン樹脂エマルジョンは、ポリカーボネート鎖、ポリカーボネート鎖及びポリエステル鎖を有する粒子径が3.0μmであるポリウレタン樹脂エマルジョンが好ましく、ポリウレタン樹脂エマルジョンのポリウレタン樹脂がポリカーボネートポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリエステルポリオールを有するポリオールと脂肪族系イソシアネート化合物とを反応させて得られたポリウレタン樹脂が、分子内にスルホン酸基を有し、さらにエピクロルヒドリンポリアミド樹脂及び水溶性エポキシ化合物及び/又はアセトアセチル化ビニルアルコールを有することが更に好ましい。
【0073】
上記ポリウレタン樹脂を用いたインク溶媒吸収層は、カチオンとアニオンの弱い凝集が形成され、これに伴い、インク溶媒吸収能を有する空隙が形成されて、画像形成できると推定される。
【0074】
本発明においては、インクジェット記録媒体のインク吸収層全体の平均空隙率が40〜70%であること、あるいは前述の表層の空隙率が30〜70%であることが好ましい。
【0075】
インク吸収能を有するインク吸収層全体、あるいは表層において、固形分容量に対する空隙容量を空隙率といい、一つの方法としては、以下の式に従って求めることができる。
【0076】
空隙率=100×〔(全乾燥膜厚−塗布固形分膜厚)/(全乾燥膜厚)〕
また、下記の方法によっても、インク吸収層全体、あるいは表層の空隙率を測定することができる。例えば、100μmポリエチレンテレフタレート上に、全インク吸収層あるいは表層のみを塗布し、ブリストー測定による飽和転移量、あるいは吸水量測定などによっても簡易に求めることができる。
【0077】
次いで、本発明に係るインクジェット記録媒体で用いる支持体について説明する。
【0078】
本発明で用いる支持体としては、従来からインクジェット記録媒体に用いられている支持体、例えば、普通紙、アート紙、コート紙およびキャストコート紙などの紙支持体、プラスティック支持体、両面をポリオレフィンで被覆した紙支持体、これらを張り合わせた複合支持体を用いることができるが、本発明の効果をより発揮させる観点から、非透水性支持体を用いることが好ましい。
【0079】
本発明において用いられる非透水性支持体としては、プラスチック樹脂フィルム支持体、あるいは紙の両面をプラスチック樹脂フィルムで被覆した支持体が挙げられる。プラスチック樹脂フィルム支持体としては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、セルローストリアセテートフィルム、ポリスチレンフィルムあるいはこれらの積層したフィルム支持体等が挙げられる。これらのプラスチック樹脂フィルムは、透明又は半透明なものも使用できる。
【0080】
本発明において、特に好ましい支持体は、紙の両面をプラスチック樹脂で被覆した支持体であり、最も好ましいのは紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した支持体である。
【0081】
以下、本発明で特に好ましい支持体である紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した支持体について説明する。
【0082】
本発明の支持体に用いられる紙は、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレン等の合成パルプあるいはナイロンやポリエステル等の合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしてはLBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。ただし、LBSP及び/またはLDPの比率は10〜70%が好ましい。上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、また漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0083】
紙中には、例えば、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等の白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤等を適宜添加することができる。
【0084】
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長がJIS P 8207に規定される24メッシュ残分と42メッシュ残分の和が30〜70%が好ましい。なお、4メッシュ残分は20%以下であることが好ましい。
【0085】
紙の坪量は50〜250gが好ましく、特に、70〜200gが好ましい。紙の厚さは50〜210μmが好ましい。
【0086】
紙は、抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。紙密度は0.7〜1.2g/cm3(JIS P 8118)が一般的である。更に原紙剛度はJIS P 8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0087】
紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては前記原紙中に添加できるのと同様のサイズ剤を使用できる。
【0088】
紙のpHは、JIS P 8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、pH5〜9であることが好ましい。
【0089】
次に、この紙の両面を被覆するポリオレフィン樹脂について説明する。
この目的で用いられるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンが挙げられるが、プロピレンを主体とする共重合体等のポリオレフィン類が好ましく、ポリエチレンが特に好ましい。
【0090】
以下、特に好ましいポリエチレンについて説明する。
紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0091】
特に、塗布層側のポリオレフィン層は、ルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをその中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量はポリオレフィンに対して概ね1〜20%、好ましくは2〜15%である。
【0092】
ポリオレフィン層中には白地の調整を行うための耐熱性の高い着色顔料や蛍光増白剤を添加することができる。
【0093】
着色顔料としては、例えば、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、マンガンブルー、セルリアン、タングステンブルー、モリブデンブルー、アンスラキノンブルー等が挙げられる。また、蛍光増白剤としては、前記インク吸収層で用いる蛍光増白剤と同様の化合物を挙げることができる。
【0094】
紙の表裏のポリエチレンの使用量は、インク吸収層の膜厚やバック層を設けた後で低湿及び高湿化でのカールを最適化するように選択されるが、一般にはポリエチレン層の厚さはインク吸収層側で15〜50μm、バック層側で10〜40μmの範囲である。表裏のポリエチレンの比率は、インク吸収層の種類や厚さ、中紙の厚み等により変化するカールを調整する様に設定されるのが好ましく、通常は表/裏のポリエチレンの比率は、厚みで概ね3/1〜1/3である。
【0095】
更に、上記ポリエチレンで被覆紙支持体は、以下(1)〜(7)の特性を有していることが好ましい。
【0096】
(1)引っ張り強さは、JIS P 8113で規定される強度で縦方向が19.6〜294N、横方向が9.8〜196Nであることが好ましい。
【0097】
(2)引き裂き強度は、JIS P 8116で規定される強度で縦方向が0.20〜2.94N、横方向が0.098〜2.45Nが好ましい。
【0098】
(3)圧縮弾性率は、9.8kN/cm2が好ましい。
(4)不透明度は、JIS P 8138に規定された方法で測定したときに80%以上、特に85〜98%が好ましい。
【0099】
(5)白さは、JIS Z 8727で規定されるL*、a*、b*が、L*=80〜96、a*=−3〜+5、b*=−7〜+2であることが好ましい。
【0100】
(6)クラーク剛直度は、記録媒体の搬送方向のクラーク剛直度が50〜300cm3/100である支持体が好ましい。
【0101】
(7)原紙中の水分は、中紙に対して4〜10%が好ましい。
(8)インク吸収層を設ける面側の光沢度(75度鏡面光沢度)は、10〜90%が好ましい。
【0102】
本発明のインクジェット記録方法においては、インクとして、染料インク、顔料インク、分散インク等、公知の各種インクを用いることができるが、特に、顔料インクを用いることが好ましい。
【0103】
画像形成に用いるインクとしては、水系インク組成物、油系インク組成物、固体(相変化)インク組成物等を用いることができるが、水系インク組成物(例えば、インク総質量あたり10質量%以上の水を含有する水系インクジェット記録液等)を、特に好ましく用いることができる。
【0104】
着色剤としては、本発明においては、画像保存性の観点から顔料用いることが好ましいが、顔料インク中の顔料としては、不溶性顔料、レーキ顔料等の有機顔料および、カーボンブラックを好ましく用いることができる。
【0105】
不溶性顔料としては、特に限定するものではないが、例えば、アゾ、アゾメチン、メチン、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、インジゴ、キノフタロン、イソインドリノン、イソインドリン、アジン、オキサジン、チアジン、ジオキサジン、チアゾール、フタロシアニン、ジケトピロロピロール等が好ましい。
【0106】
好ましく用いることのできる具体的顔料としては、以下の顔料が挙げられる。マゼンタまたはレッド用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0107】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
【0108】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0109】
これらの顔料は、必要に応じて顔料分散剤を使用してもよく、使用できる顔料分散剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド等の活性剤、あるいはスチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれた2種以上の単量体からなるブロック共重合体、ランダム共重合体およびこれらの塩をあげることができる。
【0110】
顔料の分散方法としては、その方法に特に制限はないが、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等各種を用いることができる。
【0111】
本発明に係る顔料分散体の粗粒分を除去する目的で、遠心分離装置を使用すること、フィルターを使用することも好ましい方法である。
【0112】
顔料インク中の顔料の平均粒径は、インク中での安定性、画像濃度、光沢感、耐光性などを考慮して選択するが、加えて本発明のインクジェット顔料画像の記録方法では、光沢向上、質感向上の観点からも粒径を選択するのが好ましい。本発明において、光沢向上、質感向上する理由は定かでは無いが、画像において顔料は熱可塑性微粒子が溶融した皮膜中に分散された状態にあることと関連していると推測している。高速処理を目的とすると、短時間で熱可塑性微粒子を溶融皮膜化し、更に顔料を充分に皮膜中に分散しなければならない。このとき顔料の表面積は大きく影響し、それゆえ平均粒径に最適領域が存在すると推測している。
【0113】
本発明に用いる顔料インクに含まれる顔料粒子の平均粒径は、300nm以下が好ましく、更に好ましくは30〜200nmであり、特に好ましくは30〜150nmである。
【0114】
顔料インクとして好ましい形態である水系インク組成物は、水溶性有機溶媒を併用することが好ましい。
【0115】
水溶性有機溶媒としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。好ましい水溶性有機溶媒としては、多価アルコール類が挙げられる。さらに、多価アルコールと多価アルコールエーテルを併用することが特に好ましい。
【0116】
水溶性有機溶媒は、単独もしくは複数を併用しても良い。水溶性有機溶媒のインク中の添加量としては、総量で5〜60質量%であり、好ましくは10〜35質量%である。
【0117】
本発明に用いる顔料インクは、アセチレン系界面活性剤を含有することが好ましい。該アセチレン系界面活性剤としては、アセチレンジオール及びそのエチレンオキサイド付加物が好ましい。
【0118】
また、アセチレンジオール及びそのエチレンオキサイド付加物としては、Air Products社製サーフィノール82、サーフィノール104、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485等を好ましく用いられる。
【0119】
インク組成物は、吐出安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、熱可塑性微粒子、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を適宜添加することもできる。
【0120】
特に、熱可塑性微粒子を添加することは、本発明の効果を得るうえで好ましい。熱可塑性微粒子については、上記の記録媒体表層に添加することのできる熱可塑性樹脂あるいは微粒子の説明で記載した種類を利用できる。特に、インクに添加しても増粘、沈澱等の起こらないものを適用するのが好ましい。熱可塑性微粒子の平均粒径としては、0.5μm以下が好ましく、より好ましくは、インク中の顔料の平均粒径の0.2倍〜2倍の範囲で選択すると安定性の観点で好ましい。添加する熱可塑性微粒子は、50℃〜200℃の範囲で溶融、軟化するものが好ましい。
【0121】
インク組成物は、その飛翔時の粘度として40mPa・s以下が好ましく、30mPa・s以下であることがより好ましい。
【0122】
インク組成物は、その飛翔時の表面張力として20mN/m以上が好ましく、30〜45mN/mであることが、より好ましい。
【0123】
インク中の顔料固形分濃度は、0.1〜10%の範囲で選択でき、写真画像を得るには、顔料固形分濃度を各々変化した、いわゆる濃淡インクを用いることが好ましく、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの濃淡インクを各々用いることは特に好ましい。また、必要に応じて、赤、緑、青等の特色インクを用いることも、色再現性上好ましい。
【0124】
本発明のインクジェット画像を形成するには、市販されているプリンターのように記録媒体収納部、搬送部、インクカートリッジ、インクジェットプリントヘッドを有するものであれば特に制約はないが、少なくともロール状の記録媒体収納部、搬送部、インクジェットプリントヘッド、切断部、及び加圧部、必要に応じて加熱部、記録プリント収納部から構成される一連のプリンターセットであると、インクジェット写真を商用利用する場合に有用である。
【0125】
記録ヘッドは、ピエゾ方式、サーマル方式、コンティニュアス方式のいずれでもよいが、顔料インクでの安定性の観点からピエゾ方式が好ましい。
【0126】
次いで、本発明のインクジェット記録方法に係る加熱工程を含む後処理工程について説明する。
【0127】
本発明のインクジェット記録方法は、上記構成からなるインクジェット記録媒体に、インクジェットによりインクを吐出した後、少なくとも加熱工程を含む後処理工程で処理を施すことが特徴であり、加熱処理と同時に加圧処理を行うことが好ましい。
【0128】
本発明に係る加熱加圧処理工程においては、0.5〜10MPaの圧力と、50〜150℃の温度条件で加熱加圧定着処理を施すことが好ましく、より好ましくは0.5〜5MPaの圧力と、70〜130℃の温度条件である。
【0129】
本発明で用いることのできる加熱加圧定着方法としては、特に制限はないが、一対の加熱加圧ローラ、あるいは一対の加熱加圧ベルトからなる加熱加圧装置を用いることが好ましい。
【0130】
加熱加圧ローラとしては、金属製の金属ローラでも、あるいは金属製の芯金の周囲に弾性体からなる被覆層および必要に応じて表面層(離型層ともいう)を形成したものであり、芯金は、例えば、鉄製、アルミニウム製、SUS製等の円筒体で構成されている。芯金の表面には、被覆層が設けられている。被覆層としては、耐熱性の高い弾性体であれば用いることができ、例えば、ゴム硬度45°(JIS−A)のHTV(HighTemperature Vulcanization)シリコーンゴムが所望の厚さをもって形成することができ、また他の材料を使用することができる。被覆層のその上には離型層が設けられており、例えば、RTV(Room Temperature Vulcanization)シリコーンゴムの他に、Vitonなどのフッ素ゴムや、PFA(パーフルオロアルコキシビニールエーテル共重合樹脂)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合樹脂)などのフッ素樹脂を被覆して用いることができる。
【0131】
また、表面層としては、シリコーンゴム以外にも、Vitonなどのフッ素ゴムや、PFA(パーフルオロアルコキシビニールエーテル共重合樹脂)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合樹脂)などのフッ素樹脂を被覆してもよい。
【0132】
また、上記金属ローラの一方の芯金内部には、発熱体が内蔵されており、ローラ間に記録媒体を通すことによって、加熱処理と加圧処理とを同時に施したり、あるいは必要に応じて、2つの加熱ローラを用いて記録媒体を挟んで加熱してもよい。加熱ローラ内には熱源として、例えば、ハロゲンランプヒーター、セラミックヒーター、ニクロム線等からなる発熱体が内蔵されている。
【0133】
本発明において、好ましい圧力(ニップ圧)を達成するには、例えば、加圧ローラー両端に、ニップ間隙を考慮して、所望のニップ圧が得られるように特定の張力を有するバネを選択して設置すればよい。この時のバネとしては、例えば、張力が0.2〜10MPaのものをローラー長さに応じて選択し使用することができる。
【0134】
ニップ圧の測定方法は、例えば、加圧ロールにかけている力を、感圧紙等で測定したニップ面積で除することにより求めることができ、あるいは加圧ローラ間に感圧紙からなる圧力測定紙をはさみ加圧して、その圧力測定紙の濃度よりニップ圧を求めることもできる。圧力測定紙としては、例えば、FPD301(富士フィルム社製)極超低圧用感圧紙を挙げることができる。
【0135】
加熱加圧ローラを用いる場合の記録媒体の搬送速度は、1〜15mm/秒の範囲が好ましい。これは、高速処理性の観点以外に、画質の観点からも好ましい。
【0136】
本発明のインクジェット記録方法においては、前記後工程処理を施した後の白地の色度を、CIE色空間における明度指数L*>85、知覚色度指数が−2<a*<+2、−10<b*<−5の関係を満たすように、加熱あるいは加圧条件を制御することが好ましい。
【0137】
次いで、本発明の画像形成方法で用いることのできる装置の一例を示す。
図1は、本発明で用いることのできる加熱加圧処理を行う加熱加圧ローラーを有するインクジェット記録装置の一例を示す。また、図2には、本発明で用いることのできる加熱加圧処理を行う加熱加圧ベルトを有するインクジェット記録装置の他の一例を示す。
【0138】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0139】
《記録媒体の作製》
〔記録媒体1の作製〕
(シリカ分散液の調製)
一次粒子の平均粒径が約0.012μmの気相法シリカ(株式会社トクヤマ製:QS−20)125kgを、三田村理研工業株式会社製のジェットストリーム・インダクターミキサーTDSを用いて、硝酸でpHを2.5に調整した620Lの純水中に室温で吸引分散した後、全量を694Lに純水で仕上げた。
【0140】
次に、カチオンポリマーP−1を1.14kg、エタノール2.2L、n−プロパノール1.5Lを含有する水溶液(pH=2.3)18Lに、上記シリカ分散液の69.4Lを攪拌しながら添加し、ついで、ホウ酸260gとホウ砂230gを含有する水溶液7.0Lを添加し、消泡剤SN381(サンノプコ株式会社製)を1g添加した。この混合液を、三和工業株式会社製高圧ホモジナイザーで分散し、全量を純水で97Lに仕上げてシリカ分散液を調製した。
【0141】
【化1】
【0142】
(下層用塗布液1の調製)
上記シリカ分散液600mlを40℃で攪拌しながら、以下の各添加剤を順次混合して下層用塗布液1を調製した。
【0143】
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA203)の
10%水溶液 6ml
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)の
7%水溶液 185ml
サポニン(50%水溶液) 適量
純水 全量を1000mlに仕上げた
(表層用塗布液1の調製)
上記下層用塗布液1を調製した後、43℃で30分撹拌した後、熱可塑性微粒子(アクリル系ラテックス、Tg82℃、個数平均粒子径160nm、固形分40%)を、熱可塑性微粒子/フィラー(シリカ)の固形分比が55/45になるように15分かけて添加して、表層塗布液1を調製し、10μmのフィルターで濾過を行った後、43℃で10時間停滞して、塗布に使用した。
【0144】
(記録媒体1の作製)
両面をポリエチレンで被覆した紙支持体(厚みが220μmでインク吸収層面のポリエチレン中にはポリエチレンに対して13質量%のアナターゼ型酸化チタン含有)に、支持体側から第1層とし上記下層塗布液1をスライドホッパーで塗布した後、その上に第2層目として上記表層用塗布液1をスライドホッパーにて塗布、乾燥して記録媒体1を作製した。なお、塗布液は40℃に加温して塗布し、塗布直後に0℃に保たれた冷却ゾーンで20秒冷却した後、25℃の風(相対湿度15%)で60秒間、45℃の風(相対湿度が25%)で60秒間、50℃の風(相対湿度が25%)で60秒間順次乾燥し、20〜25℃、相対湿度が40〜60℃の雰囲気下で2分間調湿して試料を巻き取った。なお、塗布は、下層はシリカの付き量が18g/m2となるように、また表層はシリカの付き量が3g/m2となるように行った。この記録媒体1をロール幅127mm、長さ100mのロール状に加工した。
【0145】
〔記録媒体2〜9の作製〕
上記記録媒体1の作製において、下層塗布液および/または表層塗布液に、水溶性蛍光増白剤であるUVITE NFW LIQUID(チバ・スペシャリティケミカル社製)を、表1に記載の量添加した以外は同様にして、記録媒体2〜9を作製した。だたし、記録媒体6については、下層で用いるシリカをエアロジル社製の気相法シリカA50とQS20(前出)の1:1の混合物を使用した。
【0146】
〔記録媒体10〜12の作製〕
上記記録媒体1の作製において、下層塗布液および/または表層塗布液に、水溶性蛍光増白剤であるUVITE NFW LIQUID(チバ・スペシャリティケミカル社製)を、表1に記載の量添加すると共に、Direct Yellow 86、Direct Red 227またはDirect Blue 199の添加量を表1に記載の白地特性となるように適宜調整した以外は同様にして、記録媒体10〜12を作製した。
【0147】
《インクの調製》
〔顔料インクセットの調製〕
(顔料分散液の調製)
上記各添加剤を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ社製 システムゼータミニ)を用いて分散し、イエロー顔料分散体1を得た。得られたイエロー顔料の平均粒径は112nmであった。
【0148】
上記各添加剤を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ社製 システムゼータミニ)を用いて分散し、マゼンタ顔料分散体1を得た。得られたマゼンタ顔料の平均粒径は105nmであった。
【0149】
上記各添加剤を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ社製 システムゼータミニ)を用いて分散し、シアン顔料分散体1を得た。得られたシアン顔料の平均粒径は87nmであった。
【0150】
上記各添加剤を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ社製 システムゼータミニ)を用いて分散し、ブラック顔料分散体1を得た。得られたブラック顔料の平均粒径は75nmであった。
【0151】
(顔料インクセットの調製)
〈イエロー濃インク1の調製〉
イエロー顔料分散体1 15質量%
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 0.1質量%
イオン交換水 54.9質量%
以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクであるイエロー濃インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は120nmであり、表面張力γは36mN/mであった。
【0152】
〈イエロー淡インク1の調製〉
イエロー顔料分散体1 3質量%
エチレングリコール 25質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 0.1質量%
イオン交換水 61.9質量%
以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクであるイエロー淡インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は118nmであり、表面張力γは37mN/mであった。
【0153】
〈マゼンタ濃インク1の調製〉
マゼンタ顔料分散体1 15質量%
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 0.1質量%
イオン交換水 54.9質量%
以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクであるマゼンタ濃インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は113nmであり、表面張力γは35mN/mであった。
【0154】
〈マゼンタ淡インク1の調製〉
マゼンタ顔料分散体1 3質量%
エチレングリコール 25質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 0.1質量%
イオン交換水 61.9質量%
以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクであるマゼンタ淡インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は110nmであり、表面張力γは37mN/mであった。
【0155】
〈シアン濃インク1の調製〉
シアン顔料分散体1 10質量%
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 0.1質量%
イオン交換水 59.9質量%
以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクであるシアン濃インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は95nmであり、表面張力γは36mN/mであった。
【0156】
〈シアン淡インク1の調製〉
シアン顔料分散体1 2質量%
エチレングリコール 25質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 0.2質量%
イオン交換水 62.8質量%
以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクであるシアン淡インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は92nmであり、表面張力γは33mN/mであった。
【0157】
〈ブラック濃インク1の調製〉
ブラック顔料分散体1 10質量%
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 0.1質量%
イオン交換水 59.9質量%
以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクであるブラック濃インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は85nmであり、表面張力γは35mN/mであった。
【0158】
〈ブラック淡インク1の調製〉
ブラック顔料分散体1 2質量%
エチレングリコール 25質量%
ジエチレングリコール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 0.1質量%
イオン交換水 62.9質量%
以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクであるブラック淡インク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は89nmであり、表面張力γは36mN/mであった。
【0159】
《インクジェット画像形成》
図1に記載の加熱加圧処理を同時に行う加熱加圧ローラ対を有するインクジェットプリンターに、上記調製した顔料インクセットをセットし、前記作製した記録媒体1〜12をシート供給し、縦及び横に1cm幅でY、M、C、B、G、R、Bkの帯を各々描いた格子状テストチャートからなる画像と、財団法人・日本規格協会発行の、高精細カラーデジタル標準画像データ「N5−自転車」(1995年12月発行)を、縁ありの条件で印字して、画像を出力した。その後、装置内の加熱加圧定着器にて、定着器の表面温度を105℃、圧力10MPaで加熱加圧処理を行って、画像1〜12を作成した。
【0160】
なお、加熱加圧ローラ対のうち、記録媒体の表層に接す面側に配置した加熱加圧ローラは、表面粗さが100nmのハロゲンヒーターを内蔵し、被覆層を有する金属ローラを用いた。
【0161】
《形成画像の特性評価》
上記方法により作成した形成画像について、下記の方法に従って各特性評価を行った。
【0162】
(白地の色度測定)
上記作製した各記録媒体について、未処理における白地の色度及び加熱加圧処理後の白地の色度を、JIS−Z−8722に従って測定し、JIS−Z−8730に規定された色の表示方法に従って表示した。なお、測定は、X−rite社濃度計(X−Rite938)を用い、L*、a*、b*値を測定した。
【0163】
(60度鏡面光沢度の測定)
上記作製した各記録媒体(未処理)の表面を、JIS−Z−8741に従って60度鏡面光沢度を測定した。測定には、日本電色工業社製の変角光沢度計(VGS−1001DP)を用いた。
【0164】
(白地の目視観察)
各記録媒体(未処理)の白地部分を、20人の被験者によりカラー銀塩写真用のコニカカラーQAペーパータイプA7との対比観察を行い、下記の基準に則り白地の評価を行った。
【0165】
5:18人以上がインクジェット記録媒体の白地の方が高品位であると判断
4:15人以上、17人未満がインクジェット記録媒体の白地の方が高品位であると判断
3:8人以上、15人未満がインクジェット記録媒体の白地の方が高品位であると判断
2:3人以上、8人未満がインクジェット記録媒体の白地の方が高品位であると判断
1:インクジェット記録媒体の白地の方が高品位であると判断した人が、2人以下
(画像部及び非画像部の違和感の評価)
上記画像記録方法により、縁あり条件で作成した高精細カラーデジタル標準画像を目視観察し、画像部と縁部(非画像部)との違和感について、20人の被験者による目視観察を行い、下記の基準に従って判定し、20人の平均値を求めた。
【0166】
5:画像部と非画像部間で、全く違和感がない
4:観察する角度により、画像部と非画像部間で、わずかに違和感がある
3:画像部と非画像部間で、多少の違和感はあるが、実用上許容の範囲にある
2:画像部と非画像部間で、違和感が気になる
1:画像部と非画像部間で、非常に違和感がある
(インク吸収性の評価)
上記画像記録方法で作成した各色の格子状テストチャートについて、白地部(未印字部)と各色印字部との境界における色にじみを目視観察し、下記の則りインク吸収性の評価を行った。
【0167】
◎:全ての色の境界部で、ほとんど色にじみの発生が認められない
○:1、2色でわずかな色にじみが観察された
△:数色において、境界での色にじみが観察されたが、実用上許容の範囲にある
×:数色にわたり、かなり激しい境界色にじみの発生が認められ、実用上問題となる品質
(白地安定性の評価)
上記作製した各記録媒体を、85℃、60%RHの明室環境下で1週間保存の保存処理を施した後、白地のイエロー濃度(DY2)を反射濃度計で測定し、上記保存処理を施していない記録媒体の白地のイエロー濃度(DY1)とをイエロー濃度差ΔDを求めた。
【0168】
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0169】
【表1】
【0170】
表1より明らかなように、蛍光増白剤を用いて白地の色度L*、a*、b*を本発明で規定する範囲に調整した本発明の記録媒体は、比較例に対し、白地の特性に優れ、画像部と非画像部との違和感が少なく、インク吸収性が良好で、かつ白地安定性に優れていることが分かる。更に、本発明の上記効果は、60度鏡面光沢度が35%以上、60%以下にある記録媒体により、より発揮されていることが分かる。
【0171】
【発明の効果】
本発明により、白地の黄ばみがなく、顔料インクを用いた画像でも白地部と画像部とで違和感が少なく、高いインク吸収性を有し、画像保存時に白地劣化の少なく、かつ製造安定性が良好なインクジェット記録媒体とインクジェット記録方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いられるインクジェット記録装置の一例を示す概略構成図。
【図2】本発明で用いられるインクジェット記録装置の他の一例を示す概略構成図。
【符号の説明】
1、1a 記録媒体
2 記録媒体の搬送手段
21 搬送ローラ対
3 記録ヘッド
34 記録媒体保持部
4 加熱加圧手段
41 加熱ローラー
42 圧着ローラー
43 発熱体
44 加熱ベルト
45 下部圧着ベルト
46 従動ローラー
5 温度センサ
6 記録媒体の切断手段
61、62 カッタ
7 たるみ形成手段
71 第1のローラー対
72 第2のローラー対
Claims (6)
- 支持体上に、少なくとも2層のインク吸収層を有し、該支持体から最も離れた位置にあるインク吸収層が、少なくとも熱可塑性樹脂、無機微粒子を含有するインクジェット記録媒体であって、白地部の色度が、CIE色空間における明度指数L*>90、知覚色度指数が−2<a*<+2、−10<b*<−1の関係を満たすことを特徴とするインクジェット記録媒体。
- JIS−Z−8741に規定される60度鏡面光沢度が、35%以上、60%以下であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
- 蛍光増白剤を1m2あたり20〜200mg含有することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録媒体。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体上にインクを用いて印字した後、少なくとも加熱工程を有する後処理工程で処理することを特徴とするインクジェット記録方法。
- 前記後処理工程で処理した後の白地の色度を、CIE色空間における明度指数L*>85、知覚色度指数が−2<a*<+2、−10<b*<−1の関係を満たすように調整することを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録方法。
- 前記インクが顔料インクであることを特徴とする請求項4または5に記載のインクジェット記録方法。
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