JP2004180703A - 脱離可能なリガンド親和性物質固定化基材、および該基材にリガンドを結合させた材料およびそれを用いたカラム - Google Patents
脱離可能なリガンド親和性物質固定化基材、および該基材にリガンドを結合させた材料およびそれを用いたカラム Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004180703A JP2004180703A JP2002347519A JP2002347519A JP2004180703A JP 2004180703 A JP2004180703 A JP 2004180703A JP 2002347519 A JP2002347519 A JP 2002347519A JP 2002347519 A JP2002347519 A JP 2002347519A JP 2004180703 A JP2004180703 A JP 2004180703A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- ligand
- substrate
- affinity substance
- antibody
- immobilized
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Materials For Medical Uses (AREA)
- Peptides Or Proteins (AREA)
- Polymers With Sulfur, Phosphorus Or Metals In The Main Chain (AREA)
- External Artificial Organs (AREA)
Abstract
【課題】特定の細胞を簡単、大量に回収するための材料に使用できる脱離可能なリガンド親和性物質を固定化した基材、および該基材にリガンドを結合させた材料およびそれを用いたカラムを提供すること。
【解決手段】リガンド親和性物質を固定化した基材であって、固定化したリガンド親和性物質を外部刺激によって脱離できることを特徴とするリガンド親和性物質固定化基材。
【選択図】なし
【解決手段】リガンド親和性物質を固定化した基材であって、固定化したリガンド親和性物質を外部刺激によって脱離できることを特徴とするリガンド親和性物質固定化基材。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、血液中の病因物質や有用物質を効率よく除去回収したり、あるいは幹細胞やリンパ球系の細胞などの特定の細胞を分離回収する材料のために利用でき、さらに該材料を再利用するため、外部刺激により材料に固定化されたリガンド親和性物質が脱離できることを特徴とするリガンド親和性物質を固定化した基材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、リガンド、特に抗体を用いて抗体と相互作用する細胞を選択的に分離する試みがなされている。特定の細胞を回収する技術としては、フローサイトメトリーによる方法や最近では磁気ビーズ法(例えば、非特許文献1参照)などがあげられるが、いずれも少量の細胞を対象としており、細胞と標識抗体とを反応させた後、分離作業をするという非常に煩雑な操作が必要であり、特定の細胞を大量に回収する際は、時間、コストがかかることが問題であった。
【0003】
また、抗体を不織布担体に化学的に固定化した材料を用い、ここに血液細胞などの細胞群を流すことにより、抗体と相互作用するある特定の細胞を除去する技術が検討されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、このような技術は、ある特定の細胞が分離除去する場合には問題ないが、抗体と相互作用した特定の細胞を担体表面から回収するには、機械的な処理など様々な処理が必要であることが多く、細胞の回収率が非常に悪くなったり、また、細胞の生存率に影響を与えることもある。
【0004】
また、化学結合により抗体を担体に固定化する場合には、抗体の方向性が制御できないため、抗体と細胞との相互作用が適切に行われない場合がある。また、化学結合で抗体を基材に固定化する場合は、抗体を1mg/mlより高濃度で反応させる必要がある。このため、リガンドに方向性を持たせるために、ガラスビーズ担体上に抗抗体を固定した担体を作製し、この担体により細胞分離を試みている(例えば、非特許文献2参照)。しかし、この場合も細胞を分離除去することは可能だが、抗体と相互作用した特定の細胞を担体表面から回収することは困難であった。
【0005】
【特許文献1】
国際公開第97/027878号パンフレット
【0006】
【非特許文献1】
ポール・T・シャープ(Paul T.Sharpe)著,「生化学実験法13−細胞分離法−」,第1版,東京化学同人,1991年,p.151−190
【0007】
【非特許文献2】
Niedreら,「バイオコンジュゲイト・ケミストリー(Bioconjyugate Chemistry)」,1993年,第4巻,p.166−171
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明では、上記従来技術の問題に対し、特定の細胞を簡単、効率よく、大量に回収するため、脱離可能なリガンド親和性物質を固定化した基材、および該基材にリガンドを結合させた材料およびそれを用いたカラムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は主として下記の構成を有する。すなわち、
「リガンド親和性物質を固定化した基材であって、固定化したリガンド親和性物質を外部刺激によって脱離できることを特徴とするリガンド親和性物質固定化基材。」、「前記のリガンド親和性物質固定化基材にリガンドを結合させた材料。」、「前記のリガンド親和性物質固定化基材にリガンドを結合させた材料を含む疾病治療用カラムであって、該疾病治療用カラムで得られた細胞が癌または自己免疫疾患または脳梗塞またはパーキンソン病またはアルツハイマー病または糖尿病または心筋梗塞または血管再生の治療に用いられる疾病治療用カラム。」である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に使用するリガンド親和性物質としては、抗体やレセプターなどのリガンドに親和性を持つものであれば特に限定されないが、例えば、プロテインA、プロテインG、レクチン、抗抗体などがあげられる。
【0011】
親和性をもつとは、A(M:mol/l)とB(M:mol/l)が結合する際の結合定数=[A−B]/([A]×[B])で表される数値が、106M−1以上であることをいう。
【0012】
レクチンとしては、ヒイロチャワンタケレクチン、マッシュルームレクチン、抗Hレクチン、バンデリアマメアグルチニン、コンナカバリンA、ドリコスマメレクチン、ダツラレクチン、デイゴマメレクチン、フコースバインディングプロテイン、レンチルレクチン、イヌエンジレクチン、インゲンマメレクチン、ピーナッツレクチン、ヒママメレクチン、セロトニン、ニホンニワトコレクチン、小麦胚芽レクチン、ロータスレクチン、エンドウマメレクチン、アメリカヤマゴボウレクチン、ダイズレクチン、キカラスウリレクチン、カブトガニレクチン、ハリエニシダレクチンなどがあげられるが特に限定はされない。抗抗体としては抗Ig抗体、抗Ig(Fc)抗体、抗Ig(H+L)抗体、抗Ig(G+A+M)抗体、抗Ig(G1+G2+G3+G4)抗体、抗IgA抗体、抗IgD抗体、抗IgE抗体、抗IgG抗体、抗IgG(Fc)抗体、抗IgG(H+L)抗体、抗IgG(γ)抗体、抗IgG1抗体、抗IgG2抗体、抗IgG3抗体、抗IgM抗体などがあげられ、免疫動物、由来としてはヒト、マウス、ラット、イヌ、ウマ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ロバ、モルモット、ネコ、ニワトリなどがあげられるがこれらに限定されない。
【0013】
本発明においてリガンド親和性物質を固定化する基材としては、血液などの細胞群を一度に大量に処理できる体外循環に使用可能な基材が好ましく、基材の形状としては平膜状、中空糸状、繊維状、粒子状、ゲル状、スポンジ状、カットファイバーなど何でもよいが、閉鎖系で圧力損失を伴わず、細胞を傷つけず体外循環できる利点から平膜状、中空糸状、繊維状が望ましい。また、表面積を確保し、細胞との相互作用を大きくする点から基材は多孔質であることが望ましい。基材が多孔質材料の場合は、製造条件を制御することにより孔の数や径の制御も可能である。
【0014】
基材に使用される素材は、医療用に用いられている素材が好ましく、医療用に用いられている高分子(ポリマー)がより好ましい。例えば、ポリ塩化ビニル、セルロース系ポリマー、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。この中でも特にポリスルホンは成形が容易で、成形したときの膜性能に優れているため、好適に用いられる。ポリスルホンとしては、主鎖に芳香環、スルフォニル基およびエーテル基をもつもので、例えば、次式(1)、(2)の化学式で示されるポリスルホンが好適に使用されるが、本発明ではこれらに限定されない。式中のnは、例えば50〜80の如き整数である。
【0015】
【化1】
【0016】
【化2】
【0017】
ポリスルホンの具体例としては、テイジンアモコ社製”ユーデル”(登録商標)ポリスルホンP−1700、P−3500、BASF社製”ウルトラソン”(登録商標)S3010、S6010、住友化学製”ビクトレックス”(登録商標)、テイジンアモコ社製”レーデルA”(登録商標)、BASF社製”ウルトラソンE”(登録商標)等のポリスルホンが挙げられる。又、本発明で用いられるポリスルホンは上記式(1)及び/又は(2)で表される繰り返し単位のみからなるポリマーが好適ではあるが、本発明の効果を妨げない範囲で他のモノマーと共重合していても良い。特に限定されるものではないが、他の共重合モノマーは10重量%以下であることが好ましい。
【0018】
また、ポリスルホンなど疎水性の高分子を使用する場合は、血液や細胞と接触するような用途で使用する際は、その接触面を親水化することが好ましい。親水化の方法としては、ポリビニルピロリドンやポリエチレングリコールなどのポリスルホン系高分子との相溶性に優れる親水性高分子を加工前のポリスルホン溶液に添加したり、血液や細胞との接触面を親水性の化合物でコーティングすることにより達成できる。これらのうちで血液適合性の観点からポリビニルピロリドンが好適に用いられる。使用するポリビニルピロリドンとしては、特に限定されないが、入手の容易さから、市販されている重量平均分子量110万、4.5万、2.9万、9000、2900のものが好適に用いられるが、もちろんそれ以外の分子量のものを使用してもかまわない。ポリビニルピロリドンの重量平均分子量は特に限定されるものではないが、2000〜2000000が好ましく、10000〜1500000がより好ましい。なお、ここで記したポリビニルピロリドンの重量平均分子量は、基材に使用する原料段階での分子量である。作製された基材においては、放射線架橋などの手段によりポリビニルピロリドンの分子量は原料段階での分子量より大きなものとなっている場合もある。これらのポリビニルピロリドンは、ホモポリマーが好適であるが、他のモノマーと共重合されたものであってもかまわない。ここで、他の共重合モノマーの量は特に限定するものではないが、10重量%以下であることが好ましい。
【0019】
ポリスルホン系材料に多孔質性を付与するには、あらかじめポリスルホン溶液にポリビニルピロリドンをブレンドさせることにより達成できる。
【0020】
基材としてポリスルホン系中空糸を用いる場合、ポリスルホン系中空糸は例えば以下のようにして製造できる。
【0021】
ポリスルホンとポリビニルピロリドン(重量比率20:1〜1:5が好ましく、5:1〜1:1がより好ましい)を良溶媒(N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジオキサンなどが好ましい)および良溶媒の混合溶液に溶解させた原液(濃度は、10〜30重量%が好ましく、15〜25重量%がより好ましい)を二重環状口金から吐出する際に内側に注入液を流し、乾式部を走行させた後凝固浴へ導く。この際、乾式部の湿度が影響を与えるために、乾式部走行中に膜外表面からの水分補給によって、外表面近傍での相分離挙動を速め、孔径拡大し、結果として透析の際の透過・拡散抵抗を減らすことも可能である。ただし、相対湿度が高すぎると外表面での原液凝固が支配的になり、かえって孔径が小さくなり、結果として透析の際の透過・拡散抵抗を増大する傾向がある。そのため、相対湿度としては60〜90%が好適である。また、注入液組成としてはプロセス適性から原液に用いた溶媒を基本とする組成からなるものを用いることが好ましい。注入液濃度としては、例えばジメチルアセトアミドを用いたときは、45〜80重量%、さらには60〜75重量%の水溶液が好適に用いられる。
【0022】
次にリガンド親和性物質を基材に固定化する方法について説明する。
【0023】
基材にリガンド親和性物質を固定化するためには基材表面に官能基を含有させる必要がある。官能基としてはアミノ基、カルボキシル基、硫酸基、水酸基、リン酸基、イソシアネート基、ニトロ基、アルデヒド基、ピリジルジスルフィド基などが挙げられるが、リガンド親和性物質の固定化反応の容易さと水溶液で中での安定性からアミノ基が好適である。
【0024】
基材にアミノ基を含有させる方法としては、a)あらかじめ成形のための溶液にアミノ基を有する物質をブレンドしておいてから成形する方法や、b)成形した材料にアミノ基を含有する物質を含む溶液に浸漬または付着させ、放射線照射により固定化する方法、c)基材に活性基を導入しておき、アミノ基含有物質を固定化する方法などが用いられる。活性基はクロロメチル基、クロロアセトアミドメチル基などが利用される。
【0025】
以下、それぞれの方法について説明する。
a)あらかじめ成形のための溶液にアミノ基を有する物質をブレンドしておいてから成形する方法:
アミノ基を含有させる部位としては、基材全体にアミノ基を含有させてもよいし、血液や細胞の接触させる部分だけにアミノ基を含有させてもよい。中空糸の内表面を用いる場合は、アミノ基含有高分子物質の溶液を中空糸の内側からろ過し、充填することにより中空糸内表面にアミノ基を集積させることができる。
【0026】
基材にアミノ基を含有させる際に使用するアミノ基を有する物質としては、ポリマーであっても低分子であってもよい。低分子の場合は、アンモニア、テトラエチレンペンタミン、デンドリマー、アグマチンなどが用いられる。ポリマーの場合は、ポリアルキレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリリジン、アジリジン(エチレンイミン)化合物を有するポリマー、ポリエチレンイミン誘導体、キトサン、グリシンエステル化ポリエチレングリコール、ヒドラジド化ポリエチレングリコール、ω−ヒドロキシ−α−アミンポリエチレングリコール、ω−アミノ−α−カルボキシルポリエチレングリコールおよびそれらに置換基の導入されたもの、およびこれらを構成するモノマー単位からなる共重合体などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0027】
これらアミノ基を有するポリマーの中でも毒性の低さ、入手のしやすさ、取り扱いのしやすさなどから、分岐状のポリエチレンイミンが特に好適に用いられる。ポリエチレンイミンは、分子量600以上1000万以下の直鎖状、分岐状のものが好ましく用いられる。より好ましくは分子量1000以上10万以下のものが用いられる。また、ポリエチレンイミンの誘導体としては、ポリエチレンイミンをアルキル化、カルボキシル化、フェニル化、リン酸化、スルホン化、メルカプト化、ピリジルジスルフィド化など、所望の割合で誘導体化したものが挙げられる。
b)成形した材料にアミノ基を含有する物質を含む溶液に浸漬または付着させ、放射線照射により固定化する方法:
また、上記の成形した基材にアミノ基を含有する物質を含む溶液に浸漬または付着させ、放射線照射により固定化する方法をとる際の放射線処理としては、湿潤状態でγ線・電子線などを照射すればよい。ここでいう湿潤状態とは、基材を乾燥させない状態のことを言う。その程度は特に限定されるものではないが、通常、基材が1重量%以上の水分を含んでいることが好ましい。例えば、ポリスルホン/ポリビニルピロリドンブレンド基材を十分水洗した後、1wt%のポリエチレンイミン水溶液に浸漬して、25kGyにてγ線照射して基材にアミノ基を含有させる方法をとる。
【0028】
放射線の吸収線量は湿潤状態で10〜50kGy程度が好ましく、20kGyを超える線量を照射した場合は、滅菌処理を同時に行うことも可能である。この際、吸収線量は線量測定ラベルをモジュールの表面に貼り付けるなどして測定することができる。得られたアミノ基含有の基材を医療用途に用いる場合は、リガンド親和性物質の固定化操作を無菌下で行うことが望ましい。
c)基材に活性基を導入しておき、アミノ基含有物質を固定化する方法:
基材に活性基を導入しておき、アミノ基含有物質を固定化する方法により基材にアミノ基を含有させるには、ポリスチレン基材をN−メチロール−α−クロロアセトアミド、ニトロベンゼン、硫酸、パラホルムアルデヒドの混合液で反応させ、クロロアセトアミドメチル化架橋ポリスチレン基材を得て、さらに、ポリエチレンイミンをトリエチルアミン、ジメチルスルフォキシドの混合溶液に溶解し、この溶液にクロロアセトアミドメチル化架橋基材を加えて攪拌、洗浄して、ポリスチレン基材へアミノ基を導入することもできるが、これらの方法に限定されない。
【0029】
以上のように、基材表面に活性基を含有させた後、この活性基を介してリガンド親和性物質を固定化するが、本発明においてはこの活性基とリガンド親和性物質の間にある種の結合を導入することにより、基材に固定化したリガンド親和性物質が外部刺激により脱離できる特徴をもつ。このことにより、基材上のリガンド親和性物質に結合したリガンドにより捕捉した物質を容易に回収することが可能となる。
【0030】
外部刺激としては、光、熱、pH、塩濃度、化学反応などがあげられるが、リガンド親和性物質の安定性などから化学反応により化学結合を切断してリガンド親和性物質が脱離される結合が好ましく、化学的な結合が切断される反応として、加水分解反応、酸化反応、還元反応、酵素反応などがあげられる。材料がセルロースである場合には、リガンド親和性物質を固定化して、セルラーゼを用いて、材料そのものを酵素処理したり、リガンド親和性物質をDNAを介して結合し、DNA分解酵素(DNase)で酵素処理したり、リガンド親和性物質そのものをパパイン等で消化することができるが、取り扱い性、コスト、水中での安定性や細胞の生存率維持の必要性から還元反応が好ましい。特に、ジスルフィド結合を還元剤による還元反応により切断させる反応は、タンパク質のリフォールディングなど生体内で良く行われる反応であり、リガンド親和性物質を脱離する反応として好適であるため、基材表面の活性基にジスルフィド結合を介してリガンド親和性物質を固定化することが望ましい。ここで使用する還元剤としてジチオスレイトール、メルカプトエタノール、システイン、還元型グルタチオンなどがあげられる。
【0031】
基材表面の活性基にジスルフィド結合を介してリガンド親和性物質を固定化する方法としては、リガンド親和性物質がタンパク質である場合は、タンパク質自身もジスルフィド結合を有することもあるので、リガンド親和性物質を直接基材表面の活性基に固定しても良いが、通常、メルカプト基同士の酸化反応、あるいはジスルフィド交換反応を利用してジスルフィド結合を形成させる方法をとる。ジスルフィド交換反応を利用する方法としては、ピリジルジスルフィド基とメルカプト基の交換反応を用いるのが反応性の点から好ましく、ピリジルジスルフィド基やメルカプト基を基材およびリガンド親和性物質に導入して結合させる。この際、通常架橋剤を利用する。
【0032】
上記のようなジスルフィド結合を介した固定化に利用できるような架橋剤としては、基材表面の官能基同士あるいはリガンド親和性物質同士の結合を防ぐため二種類の違った官能基と反応する活性化基をもつ架橋剤を使用することが好ましく、活性化基として、アミノ基と反応するN−ヒドロキシスクシンイミド基、イミドエステル基、ニトロアリールハライド基、メルカプト基と反応するマレイミド基、ピリジルジスルフィド基、チオフタルイミド基、活性化ハロゲン基、光化学反応により架橋するフェニルアジド基、ジアゾカルベン基、などを持つような架橋剤を利用することができる。なかでも、N−ヒドロキシスクシンイミド基とピリジルジスルフィド基を持つような架橋剤を利用することにより、上記で作製したようなアミノの基を有する基材やプロテインAなどのアミノ基を有するリガンド親和性物質にピリジルジスルフィド基を導入できる。また、このピリジルジスルフィド基を還元剤により還元することによりメルカプト基に変換できる。このような架橋剤として、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネート、スクシンイミジル−6−[3’(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノエートや水溶性のスルフォスクシンイミジル−6−[3’(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノエートなどが挙げられる。また、架橋剤として2−イミノチオランを利用すれば、1段階でメルカプト基を導入することができる。
【0033】
水に不溶性の架橋剤を用いる場合は、ジメチルスルホキシドやメタノールなどの可溶性の有機溶媒に溶解後、水系の反応液に添加することにより利用できるが、基材に反応させる際は、N−ヒドロキシスクシンイミド基とピリジルジスルフィド基を持つような架橋剤はポリスルホン系の基材に吸着しやすいため、メタノール、エチレンオキシド、グリセリンなどの架橋剤を溶解し、基材を溶解しない有機溶媒で洗浄することが望ましい。
【0034】
上記のような架橋剤などを利用して、基材にピリジルジスルフィド基が導入される場合には、例えば下記反応式(3)のような反応を用いてリガンド親和性物質を固定化できる。すなわち、リガンド親和性物質に上記のような架橋剤を利用してピリジルジスルフィド基を導入後、還元してメルカプト基を導入する、あるいは、リガンド親和性物質に2−イミノチオランを反応してメルカプト基を導入し、これらリガンド親和性物質のメルカプト基と、架橋剤と活性基を反応させて導入した基材表面のピリジルジスルフィド基とのジスルフィド交換反応によりジスルフィド結合を介してリガンド親和性物質を基材に固定化する。ここで、リガンド親和性物質にピリジルジスルフィド基を導入して還元する際には、リガンド親和性物質が抗体である場合、抗体自体の還元による失活を防ぐために酢酸緩衝液中などで還元することにより抗体自身の還元を抑えることができる。
【0035】
【化3】
【0036】
また、上記のような架橋剤などを利用して基材にメルカプト基が導入されている場合、例えば下記反応式(4)のような反応を用いて固定化できる。すなわち、リガンド親和性物質に上記のような架橋剤ピリジルジスルフィド基を導入したもの使用し、リガンド親和性物質のピリジルジスルフィド基と基材上のメルカプト基のジスルフィド交換反応によりジスルフィド結合を介してリガンド親和性物質を基材に固定化することができる。
【0037】
【化4】
【0038】
基材へ導入されるピリジルジスルフィド基あるいはメルカプト基の密度は高い方が望ましいが、反応に用いる架橋剤の濃度や反応時間により制御することができるので、適宜選ぶことができる。
【0039】
リガンド親和性物質へのピリジルジスルフィド基の導入率はリガンド親和性物質1モル当たり1モル以上であることが必要であるが、導入率を上げるためにピリジルジスルフィド化剤の仕込量を上げるとリガンド親和性物質がタンパク質の場合は失活したり、凝集したりするおそれがある。望ましくは仕込量はリガンド親和性物質1モルあたり10モル以下が望ましい。
【0040】
基材にリガンド親和性物質を固定化した際のリガンド親和性物質の濃度は、固定化密度を上げるためには高い方が望ましく、1mg/ml以上が望ましい。0.5mg/ml以下の場合は固定化されるリガンド親和性物質の量が少なくなり、機能が低下する恐れがある。
【0041】
以上に示したような反応を利用してリガンド親和性物質を基材にジスルフィド結合を介して固定化させる方法の例を具体的に以下に示すが、固定化の方法はこれらに限定されない。
【0042】
アミノ基を含有するポリスルホン基材を架橋剤としてN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネート(以下SPDP)を溶解したジメチルスルホキシド溶液に浸漬し反応させた後、メタノールで洗浄した平膜をジチオスレイトールを含むリン酸緩衝液で還元し、メルカプト基を有するポリスルホン平膜を得る。さらに、SPDPを溶解したジメチルスルホキシド溶液をプロテインA1モルに対して10モル添加し、室温で30分反応させて、プロテインAにピリジルジスルフィド基を導入した後、精製する。メルカプト基を有するポリスルホン平膜にピリジルジスルフィド基を導入したプロテインAを反応させ、プロテインAをポリスルホン平膜にジスルフィド結合を介して固定化した基材を作製する。この基材に還元剤としてジチオスレイトールを含むリン酸緩衝液に浸漬して、ジスルフィド結合を還元することによりプロテインAを脱離させることができる。
【0043】
次にリガンド親和性物質を固定化した基材にリガンドを結合させる方法を説明する。
【0044】
本発明で結合に使用するリガンドは、細胞や病因物質などのターゲット物質と相互作用をもつものであれば、合成品でも天然物でもよいが、特異性の点から抗体およびレセプターを好ましく用いることができる。用いる抗体としては、例えば、抗CD1a抗体、抗CD1b抗体、抗CD1c抗体、抗CD2抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗CD10抗体、抗CD11a抗体、抗CD11b抗体、抗CD11c抗体、抗CDw12抗体、抗CD13抗体、抗CD14抗体、抗CD15抗体、抗CD16a抗体、抗CD16b抗体、抗CD18抗体、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD23抗体、抗CD24抗体、抗CD25抗体、抗CD26抗体、抗CD27抗体、抗CD28抗体、抗CD30抗体、抗CD31抗体、抗CD32抗体、抗CD33抗体、抗CD34抗体、抗CD38抗体、抗CD40抗体、抗CD42a抗体、抗CD44抗体、抗CD45抗体、抗CD45RA抗体、抗CD45RO抗体、抗CD49d抗体、抗CD50抗体、抗CD54抗体、抗CD56抗体、抗CD57抗体、抗CD58抗体、抗CD61抗体、抗CD62L抗体、抗CD62P抗体、抗CD66抗体、抗CD69抗体、抗CD70抗体、抗CD71抗体、抗CD80抗体、抗CD81抗体、抗CD86抗体、抗CD95抗体、抗CD102抗体、抗CD105抗体、抗CD106抗体、抗CD109抗体、抗CDw119抗体、抗CD120a抗体、抗CD120b抗体、抗CD121a抗体、抗CDw121b抗体、抗CD122抗体、抗CD123抗体、抗CD126抗体、抗CDw128a抗体、抗CD130抗体、抗CDw131抗体、抗CD132抗体、抗CD133抗体、抗CD134抗体、抗CD105抗体、抗CD138抗体、CD152抗体、抗CD154抗体、抗CD199抗体、抗低比重リポ蛋白質(LDL)抗体、抗酸化LDL抗体、抗β2ミクログロブリン抗体、抗CCR1抗体、抗CCR2抗体、抗CCR3抗体、抗CCR4抗体、抗CCR5抗体、抗CCR7抗体、抗CXCR3抗体、抗CX3CR1抗体、抗CXCR5抗体、抗CXCR1抗体などが挙げられるが、これらに限定されない。また、レセプターとしては例えば、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR7、CXCR1、CXCR3、CX3CR1、CXCR5等のサイトカインレセプターやFcγ,Fcε等のイムノグロブリンレセプター、RAGE,LDLレセプター等のスカベンジャーレセプター等,T細胞レセプターや主要組織適合性抗原等の細胞認識レセプター等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの抗体やレセプターは単独で使用しても良いし、複数の抗体やレセプターを組み合わせても良い。抗体は、アフィニティーの高さからモノクローナル抗体が好ましい。
【0045】
これら抗体やレセプターは目的によって種々選定することができ、血液中の有用物質や病因物質を特異的に除去、回収する場合は細胞、無機物、タンパク質、DNA、脂質、糖、ウィルスなどがターゲットとして挙げられる。例えば、抗CD2抗体を用いればT細胞およびNK細胞を分離でき、抗CD3抗体を用いればT細胞をを分離でき、抗CD4抗体を用いればヘルパーT細胞を分離でき、抗CD8抗体を用いればサイトトキシックT細胞を分離でき、抗CD11aを用いれば白血球を分離でき、抗CD11bを用いれば単球を分離でき、抗CD14抗体を用いれば単球やマクロファージを分離でき、抗CD15抗体を用いれば顆粒球やミエロイド細胞を分離でき、抗CD16細胞を用いれば好中球あるいは休止期NK細胞を分離でき、抗CD19抗体を用いればB細胞を分離でき、抗CD22抗体を用いればB細胞を分離でき、抗CD27抗体を用いればナイーブB細胞やメモリーB細胞を分離でき、抗CD30抗体を用いれば活性化B細胞および活性化T細胞を分離でき、抗CD33細胞を用いれば単球、顆粒球およびミエロイド細胞を分離でき、抗CD34抗体を用いれば造血幹細胞を分離でき、抗CD45抗体を用いれば白血球を分離でき、抗CD56抗体を用いればNK細胞を分離でき、抗CD61抗体を用いれば巨核球及びその前駆細胞を分離でき、抗CD66抗体を用いれば顆粒球を分離でき、抗CD69抗体を用いれば活性化T細胞や活性化B細胞やNK細胞を分離でき、抗CD71抗体を用いれば赤芽球や活性化されたリンパ芽球を分離でき、抗CD105抗体を用いれば内皮細胞を分離できる。
【0046】
前述の方法でリガンド親和性物質を固定化した基材にリガンドを結合させる方法としては、例えば基材にリガンドを含む溶液を接触させることにより、リガンド親和性物質にリガンドが結合する方法があげられる。
【0047】
リガンドとして抗体を使用した場合、プロテインAやプロテインGは抗体のFc領域を認識して結合し、レクチンは抗体の糖鎖部分を認識して結合する。このため、抗体の基材表面上での方向性を制御することができる。また、このように基材上での抗体の方向性を制御するために、リガンド親和性物質として抗抗体を利用する場合には、抗体のFab領域以外を認識する抗抗体を利用することが好ましい。
【0048】
リガンドを結合させる方法としては、リガンドを含む溶液を入れた容器に基材をいれてエージングする、基材をカラムに詰めてリガンドを含む溶液を通過させる、等の方法をとることが出来るがこれらに限定されない。
【0049】
また、リガンドを結合させる前に、ウシ血清アルブミン、卵白アルブミン、ヒト血清、ウシ胎児血清、スキムミルクなどのブロッキング剤で基材をブロッキングして非特異な吸着を抑えた後、リガンドを結合させても良い。また、リガンドを含む溶液に使用する溶液としては、様々なpH値のリン酸バッファー、酢酸バッファー、トリス−塩酸バッファー、炭酸バッファー、クエン酸バッファー等が使用できるが、リガンドを失活させなければいずれのバッファーを使用しても良い。また、溶液中に塩化ナトリウムや上記のブロッキング剤、カチオン性、アニオン性、親水性、疎水性などのポリマーを含有していても良い。
【0050】
また、基材にリガンドを結合させる際のリガンド溶液のリガンド濃度を調整することにより、簡単にリガンドの固定化密度を制御できる。リガンド濃度を上げれば固定化密度は高くなり、リガンド濃度を下げれば固定化密度は低くなる。この方法による基材へのリガンドの固定化は、化学的な方法で固定化させるよりも比較的低濃度でも固定化させることが可能である。リガンドの固定化密度の濃度は固定化前後のリガンド溶液中のリガンド濃度を高速液体クロマトグラフィーなどを用いて測定することができる。
【0051】
本発明の材料をカラムとして利用する場合、特に中空糸を用いる場合、例えば以下のようにしてカラムを製造することができるが特に限定されるものではない。まず、中空糸膜を必要な長さに切断し、必要本数を束ねた後、筒状ケースに入れる。その後、両端に仮のキャップをし、中空糸膜両端部にポッティング剤を入れる。このとき遠心機でモジュールを回転させながらポッティング剤を入れる方法は、ポッティング剤が均一に充填されるために好ましい方法である。ポッティング剤が固化した後、中空糸膜の両端が開口するように両端部を切断し、中空糸膜モジュールを得ることができる。
【0052】
本発明のリガンド親和性物質を固定化した基材にリガンドを結合させた材料を利用すれば、上記で示したようなターゲットとなる有用物質や病因物質をリガンドにより捕捉でき、さらに、外部刺激によりリガンドと結合したリガンド親和性物質を基材から離脱させることにより、捕捉した有用物質や病因物質を回収することが可能である。なお、ターゲット物質を捕捉あるいは回収する際に使用する溶媒としては、様々なpH値のリン酸、酢酸、クエン酸などの緩衝液を用いることができ、さらに緩衝液の中にウシ血清アルブミンや抗体などのタンパク質あるいはカチオン性、アニオン性、親水性、疎水性などのポリマーなどを含有していても良い。
【0053】
さらに基材として多孔質材料を用いる場合は、透析やろ過機能を付与することができ、血液浄化、細胞分離用途のみならず、バイオリアクターなどの細胞培養用材料としても用いることができる。
【0054】
細胞を回収する際は全血と作用させてもよいし、血漿分画や単核球分画などにした後、作用させてもよい。
【0055】
以上のような方法で、回収した有用物質、病因物質を分析に用いることが可能である。また、回収する細胞が血液幹細胞細胞、神経幹細胞、T細胞であれば、その細胞を分析だけでなく、培養し、増殖、活性化させることにより癌や自己免疫疾患、アルツハイマー病などの治療に利用できる。例えば、リガンドとして抗CD4抗体を使用し、プロテインAをジスルフィド結合を介して基材に固定化した基材に抗CD4抗体を結合させた本発明の材料に、末梢血から分離した単核球成分を通してCD4陽性のT細胞を捕捉し、ジチオスレイトールなどの還元剤でプロテインAを脱離することにより、捕捉した細胞を大量に回収し、この細胞に様々な刺激を加えて増殖、活性化させた後、体内に戻すことにより、癌、アレルギー、感染症、臓器移植、あるいは自己免疫疾患の治療やワクチンとして用いることができる。
【0056】
また、例えば、リガンドとして抗CD34抗体(マウスIgG2a)を使用し、抗マウスIgG2a抗体をジスルフィド結合を介して基材に固定化した基材に抗CD34抗体(マウスIgG2a)を結合させた本発明の材料に、臍帯血を通して造血幹細胞を捕捉し、ジチオスレイトールなどの還元剤でリガンドを脱離することにより、造血幹細胞を大量に回収し、回収した造血幹細胞を培養して輸血医療に用いたり、様々な組織幹細胞に分化させることにより、肝疾患や神経疾患、血管傷害などの細胞療法に用いることができる。
【0057】
また、外部刺激によりジスルフィド結合を解離してリガンド親和性物質を脱離した後の材料は、表面にメルカプト基を有するので、再びピリジルジスルフィドを有するリガンド親和性物質を固定化し、再利用することもできる。
【0058】
【実施例】
[作製例1.ビーズ担体へのメルカプト基の導入]
CNBr活性化セファロース6MB(アマシャム社製)を0.1mM HClaq.で膨潤、洗浄し、0.5M NaClを含有する0.1M NaHCO3バッファー(pH8.3:カップリングバッファー)で手早く洗浄後、メルカプトエチルアミンを0.2M含有するカップリングバッファーを加え室温で2時間反応し、pH4の酢酸バッファーとカップリングバッファーで交互に3回洗浄し、セファロースビーズ表面にメルカプト基を導入した。
[作製例2.プロテインAのSPDP化]
NaClを0.15mM含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)に10mg/mlに溶解したプロテインA(シグマ社製)にSPDPを20mMに溶解したジメチルスルホキシド溶液をプロテインA1モルに対して10モル添加し、室温で30分反応させた後、PD−10カラム(ファルマシア社製)で高分子量分画に精製した。合成したSPDP化プロテインAの一部を25mMのジチオスレイトールを含むリン酸緩衝液で還元反応を行い、反応により生成するピリジン−2−チオンの吸収(343nm)を測定することにより、SPDP基の導入量を測定したところ、プロテインA1モルあたりのSPDP導入量は5.3モルであった。
【0059】
<実施例1>
作製例1.で得られたメルカプト基導入セファロースビーズ担体1mLに2.で得られたSPDP化プロテインAを1mg/ml含むリン酸緩衝液を1mL混合し、室温で3時間反応させ、プロテインAをセファロースビーズ担体にジスルフィド結合を介して固定化した。このジスルフィド基を介してプロテインAを固定化したビーズ担体をDTT(ジチオスレイトール、ピアース社製)1mMを含むリン酸緩衝液で室温で30分処理するとプロテインAが脱離されることが確認された。そこで、作製したプロテインAを固定化したセファロースビーズ担体1mLに1mg/mlの精製ヒト免疫グロブリンG(シグマ社製、以下IgG)を含むリン酸緩衝液1mLを加え室温で1時間結合させた。IgGの固定化は、固定化前後のIgG水溶液濃度の変化を高速液体クロマトグラフィーで測定することにより確認できた。結合後、リン酸緩衝液で洗浄した後、DTT1mMを含むリン酸緩衝液で室温で30分処理し、脱離したIgGを高速液体クロマトグラフィーで測定したところ、0.9mg脱離することが確認できた。
[作製例3.ビーズ担体へのプロテインAの固定化]
CNBr活性化セファロース6MB(アマシャム社製)を0.1mM HClaq.で膨潤、洗浄(15分間)し、0.5M NaClを含有する0.1M NaHCO3バッファー(pH8.3:カップリングバッファー)で手早く洗浄後、プロテインAを1mg/mL含有するカップリングバッファーを加え室温で2時間反応した。反応後、反応液を除去した後、0.2Mグリシンカップリングバッファーを加え室温で2時間反応し、過剰な活性基をブロッキングし、最後にpH4の酢酸バッファーとカップリングバッファーで交互に3回洗浄した。
【0060】
<比較例1>
作製例3.で作製したプロテインAを固定化したセファロースビーズ担体1mLに1mg/mlのIgG(シグマ社製)を含むリン酸緩衝液1mLを加え室温で1時間結合させた。結合後、リン酸乾燥液で洗浄した後、DTT1mMを含むリン酸緩衝液で室温で30分処理して、脱離するIgGを測定したところ0.02mgとほとんど脱離しなかった。
[作製例4.メルカプト基をもつ平膜の作製]
ポリスルホン(テイジンアモコ社製”ユーデル”(登録商標)P−3500)18重量部、ポリビニルピロリドン(BASF社製”K30”(登録商標))9重量部をN,N−ジメチルアセトアミド72重量部、水1重量部に加え、90℃、14時間加熱溶解した。この溶液を0.1mmスペーサー付きのガラス板に塗布し、ドクターブレードにて溶液を引き延ばしたものを水中にいれて、凝固させ、ポリスルホン/ポリビニルピロリドンブレンドからなる平膜状の材料を作製した。
【0061】
上記、ポリスルホン/ポリビニルピロリドンブレンド材料を十分水洗した後、1wt%のポリエチレンイミン(分子量1万、和光純薬製)水溶液に浸漬して、25kGyにてγ線照射した。放射線処理した支持体は、十分水洗した。
【0062】
上記のアミノ基を含有するポリスルホン平膜をNaClを0.15mM含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)にN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネート(ピアース社製、以下SPDP)を20mMに溶解したジメチルスルホキシド溶液を最終SPDP濃度が1.2mMとなるように添加した溶液に2.5時間浸漬した(室温)。反応させた平膜をメタノールで洗浄した後、水洗した材料を25mMのジチオスレイトールを含むリン酸緩衝液で還元し、表面にメルカプト基をもつポリスルホン平膜を得た。
【0063】
<実施例2>
作製例4.で作製した平膜1cm2を作製例2.で得られたSPDP化プロテインAを1mg/ml含むリン酸緩衝液1mlに室温で4.5時間浸漬した後、NaClを0.15mM含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)で洗浄することにより、プロテインAをポリスルホン平膜にジスルフィド結合を介して固定化したリガンド親和性物質固定化基材(実施例2)を作製した。
【0064】
ここで得られたプロテインA固定化平膜1cm2に1mg/mlのIgG(シグマ社製)を含むリン酸緩衝液1mLを加え室温で1時間結合、洗浄した後、外部刺激として1mMのジチオスレイトールを含むリン酸緩衝液に浸漬して、ジスルフィド結合を還元することにより抗体を20μg脱離させることができた。
【0065】
また、還元後のポリスルホン平膜1cm2を再度、SPDP化プロテインAを1mg/ml含むリン酸緩衝液1mlに室温で12時間浸漬することにより、再度プロテインAをポリスルホン平膜にジスルフィド結合を介して固定化することができた。
[作製例5.抗体へのSPDPの導入]
NaClを0.15mM含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)に精製ヒト免疫グロブリンG(シグマ社製、以下IgG)を5mg/mlとなるように溶解し、さらに、SPDPを20mMとなるように溶解したジメチルスルホキシド溶液を抗体1モルに対して10モル添加し、室温で30分反応させた後、PD−10カラム(ファルマシア社製)で高分子量分画を精製した。合成したSPDP化IgGの一部を25mMのジチオスレイトールを含むリン酸緩衝液で還元反応を行い、反応により生成するピリジン−2−チオンの吸収(343nm)を測定することにより、SPDP基の導入量を測定したところ、IgG1モルあたりのSPDP導入量は4.2モルであった。
【0066】
<比較例2>
作製例4.で作製した平膜1cm2を作製例5.で得られたSPDP化IgGを0.5mg/ml含むリン酸緩衝液1mlに室温で4.5時間浸漬した後、NaClを0.15mM含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)で洗浄した後、平膜を外部刺激として25mMのジチオスレイトールを含むリン酸緩衝液に浸漬して、ジスルフィド結合を還元したところにより抗体の脱離を確認できなかった。
[作製例6.メルカプト基をもつ中空糸の作製]
ポリスルホン(テイジンアモコ社製”ユーデル”(登録商標)P−3500)18部、ポリビニルピロリドン(BASF社製”K30”(登録商標))9部をN,N−ジメチルアセトアミド72部、水1部に加え、90℃、14時間加熱溶解した。この製膜原液を外径0.3mm、内径0.2mmのオリフィス型二重円筒型口金より吐出し芯液としてジメチルアセトアミド58部、水42部からなる溶液を吐出させ、乾式長350mmを通過した後、水100%の凝固浴に導き中空糸膜を得た。
【0067】
中空糸分離膜を10000本束ね、中空糸中空部を閉塞しないようにポリウレタン系ポッティング剤で両末端をモジュールケースに固定し、モジュールを作製した後、ポリエチレンイミン(分子量100万、BASF社製)0.1重量%を含む水溶液を中空糸内側から外側にかけてろ過をかけることにより、ポリエチレンイミンを中空糸内表面に集積して充填した後、25kGyでγ線照射した。中空糸を水洗した後、NaClを0.15mM含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)にSPDPを20mMに溶解したジメチルスルホキシド溶液を最終SPDP濃度が1.2mMとなるように添加した溶液を中空糸内部に室温で1時間灌流し、中空糸内表面をSPDP化した後、膜をメタノールで洗浄し、さらに水洗した膜を25mMのジチオスレイトールを含むリン酸緩衝液で還元し、内表面にメルカプト基をもつポリスルホン中空糸膜を得た。
【0068】
<実施例3>
作製例6.で得られたモジュールを解体して中空糸を取り出し、中空糸分離膜を36本束ね、中空糸中空部を閉塞しないようにエポキシ系ポッティング剤で両末端をモジュールケースに固定し、ミニモジュールを作製した。該ミニモジュールの直径は約7mm、長さは約10cmである。ミニモジュール内部に2.で得られたSPDP化プロテインAを1mg/ml含むリン酸緩衝液5mlを室温で20時間灌流し、洗浄することにより、プロテインAをポリスルホン中空糸膜内表面にジスルフィド結合を介して固定化し、さらに、”オルソクローンOKT3”(登録商標、抗ヒトCD3モノクローナル抗体、ヤンセンファーマ社)を0.2mg/ml含むリン酸緩衝液5mlを室温で20時間灌流し洗浄することにより、抗CD3抗体をポリスルホン中空糸膜内表面にジスルフィド結合を介して固定し、リガンドが固定化された材料を用いたカラムを得た。
【0069】
得られたカラムにヒト末梢血(ヘパリン含有)をAXIS SHIELD社製”リンフォプレップ”(登録商標)で処理して単核球成分を分離し、単核球成分1.0×107個をリン酸緩衝液3mlに懸濁し、該懸濁を実施例3のカラムに室温で1時間灌流させた。灌流前のCD3陽性細胞数は6.3×106個であったのに対し、処理後は3.5×105個であった。また、処理後のモジュールをリン酸緩衝液を1時間灌流させて洗浄した後、0.2mMのジチオスレイトールを含むリン酸緩衝液を5mlで1時間灌流させて得た細胞は5.6×106個であり、CD3陽性細胞の割合は9割以上であった。 以上のCD3陽性細胞の分析はフローサイトメーターにより行った。
【0070】
【発明の効果】
本発明のリガンド親和性物質固定化基材にリガンドを結合させれば、リガンドは方向性を持つことができ、基材からの表面効果を受けることなく、細胞の表面抗原などと適切に相互作用することが可能となる。
【0071】
またこのような方法によるリガンドの固定化方法は、化学結合によるリガンドの固定化方法より比較的低濃度でリガンドを作用させた場合でも、リガンドを固定化することができる。このため、少量高価なリガンドを使用する場合、少量のリガンドを使用するだけでリガンドを固定した材料を提供できる。
【0072】
さらに、リガンド親和性物質を外部刺激により基材から脱離できるようにすることにより、リガンド親和性物質と共にリガンドを材料から脱離できることから、この材料を用いたカラムを利用してリガンドとの相互作用により捕捉された細胞を、外部刺激により簡単、効率よく、大量に回収することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、血液中の病因物質や有用物質を効率よく除去回収したり、あるいは幹細胞やリンパ球系の細胞などの特定の細胞を分離回収する材料のために利用でき、さらに該材料を再利用するため、外部刺激により材料に固定化されたリガンド親和性物質が脱離できることを特徴とするリガンド親和性物質を固定化した基材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、リガンド、特に抗体を用いて抗体と相互作用する細胞を選択的に分離する試みがなされている。特定の細胞を回収する技術としては、フローサイトメトリーによる方法や最近では磁気ビーズ法(例えば、非特許文献1参照)などがあげられるが、いずれも少量の細胞を対象としており、細胞と標識抗体とを反応させた後、分離作業をするという非常に煩雑な操作が必要であり、特定の細胞を大量に回収する際は、時間、コストがかかることが問題であった。
【0003】
また、抗体を不織布担体に化学的に固定化した材料を用い、ここに血液細胞などの細胞群を流すことにより、抗体と相互作用するある特定の細胞を除去する技術が検討されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、このような技術は、ある特定の細胞が分離除去する場合には問題ないが、抗体と相互作用した特定の細胞を担体表面から回収するには、機械的な処理など様々な処理が必要であることが多く、細胞の回収率が非常に悪くなったり、また、細胞の生存率に影響を与えることもある。
【0004】
また、化学結合により抗体を担体に固定化する場合には、抗体の方向性が制御できないため、抗体と細胞との相互作用が適切に行われない場合がある。また、化学結合で抗体を基材に固定化する場合は、抗体を1mg/mlより高濃度で反応させる必要がある。このため、リガンドに方向性を持たせるために、ガラスビーズ担体上に抗抗体を固定した担体を作製し、この担体により細胞分離を試みている(例えば、非特許文献2参照)。しかし、この場合も細胞を分離除去することは可能だが、抗体と相互作用した特定の細胞を担体表面から回収することは困難であった。
【0005】
【特許文献1】
国際公開第97/027878号パンフレット
【0006】
【非特許文献1】
ポール・T・シャープ(Paul T.Sharpe)著,「生化学実験法13−細胞分離法−」,第1版,東京化学同人,1991年,p.151−190
【0007】
【非特許文献2】
Niedreら,「バイオコンジュゲイト・ケミストリー(Bioconjyugate Chemistry)」,1993年,第4巻,p.166−171
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明では、上記従来技術の問題に対し、特定の細胞を簡単、効率よく、大量に回収するため、脱離可能なリガンド親和性物質を固定化した基材、および該基材にリガンドを結合させた材料およびそれを用いたカラムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は主として下記の構成を有する。すなわち、
「リガンド親和性物質を固定化した基材であって、固定化したリガンド親和性物質を外部刺激によって脱離できることを特徴とするリガンド親和性物質固定化基材。」、「前記のリガンド親和性物質固定化基材にリガンドを結合させた材料。」、「前記のリガンド親和性物質固定化基材にリガンドを結合させた材料を含む疾病治療用カラムであって、該疾病治療用カラムで得られた細胞が癌または自己免疫疾患または脳梗塞またはパーキンソン病またはアルツハイマー病または糖尿病または心筋梗塞または血管再生の治療に用いられる疾病治療用カラム。」である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に使用するリガンド親和性物質としては、抗体やレセプターなどのリガンドに親和性を持つものであれば特に限定されないが、例えば、プロテインA、プロテインG、レクチン、抗抗体などがあげられる。
【0011】
親和性をもつとは、A(M:mol/l)とB(M:mol/l)が結合する際の結合定数=[A−B]/([A]×[B])で表される数値が、106M−1以上であることをいう。
【0012】
レクチンとしては、ヒイロチャワンタケレクチン、マッシュルームレクチン、抗Hレクチン、バンデリアマメアグルチニン、コンナカバリンA、ドリコスマメレクチン、ダツラレクチン、デイゴマメレクチン、フコースバインディングプロテイン、レンチルレクチン、イヌエンジレクチン、インゲンマメレクチン、ピーナッツレクチン、ヒママメレクチン、セロトニン、ニホンニワトコレクチン、小麦胚芽レクチン、ロータスレクチン、エンドウマメレクチン、アメリカヤマゴボウレクチン、ダイズレクチン、キカラスウリレクチン、カブトガニレクチン、ハリエニシダレクチンなどがあげられるが特に限定はされない。抗抗体としては抗Ig抗体、抗Ig(Fc)抗体、抗Ig(H+L)抗体、抗Ig(G+A+M)抗体、抗Ig(G1+G2+G3+G4)抗体、抗IgA抗体、抗IgD抗体、抗IgE抗体、抗IgG抗体、抗IgG(Fc)抗体、抗IgG(H+L)抗体、抗IgG(γ)抗体、抗IgG1抗体、抗IgG2抗体、抗IgG3抗体、抗IgM抗体などがあげられ、免疫動物、由来としてはヒト、マウス、ラット、イヌ、ウマ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ロバ、モルモット、ネコ、ニワトリなどがあげられるがこれらに限定されない。
【0013】
本発明においてリガンド親和性物質を固定化する基材としては、血液などの細胞群を一度に大量に処理できる体外循環に使用可能な基材が好ましく、基材の形状としては平膜状、中空糸状、繊維状、粒子状、ゲル状、スポンジ状、カットファイバーなど何でもよいが、閉鎖系で圧力損失を伴わず、細胞を傷つけず体外循環できる利点から平膜状、中空糸状、繊維状が望ましい。また、表面積を確保し、細胞との相互作用を大きくする点から基材は多孔質であることが望ましい。基材が多孔質材料の場合は、製造条件を制御することにより孔の数や径の制御も可能である。
【0014】
基材に使用される素材は、医療用に用いられている素材が好ましく、医療用に用いられている高分子(ポリマー)がより好ましい。例えば、ポリ塩化ビニル、セルロース系ポリマー、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。この中でも特にポリスルホンは成形が容易で、成形したときの膜性能に優れているため、好適に用いられる。ポリスルホンとしては、主鎖に芳香環、スルフォニル基およびエーテル基をもつもので、例えば、次式(1)、(2)の化学式で示されるポリスルホンが好適に使用されるが、本発明ではこれらに限定されない。式中のnは、例えば50〜80の如き整数である。
【0015】
【化1】
【0016】
【化2】
【0017】
ポリスルホンの具体例としては、テイジンアモコ社製”ユーデル”(登録商標)ポリスルホンP−1700、P−3500、BASF社製”ウルトラソン”(登録商標)S3010、S6010、住友化学製”ビクトレックス”(登録商標)、テイジンアモコ社製”レーデルA”(登録商標)、BASF社製”ウルトラソンE”(登録商標)等のポリスルホンが挙げられる。又、本発明で用いられるポリスルホンは上記式(1)及び/又は(2)で表される繰り返し単位のみからなるポリマーが好適ではあるが、本発明の効果を妨げない範囲で他のモノマーと共重合していても良い。特に限定されるものではないが、他の共重合モノマーは10重量%以下であることが好ましい。
【0018】
また、ポリスルホンなど疎水性の高分子を使用する場合は、血液や細胞と接触するような用途で使用する際は、その接触面を親水化することが好ましい。親水化の方法としては、ポリビニルピロリドンやポリエチレングリコールなどのポリスルホン系高分子との相溶性に優れる親水性高分子を加工前のポリスルホン溶液に添加したり、血液や細胞との接触面を親水性の化合物でコーティングすることにより達成できる。これらのうちで血液適合性の観点からポリビニルピロリドンが好適に用いられる。使用するポリビニルピロリドンとしては、特に限定されないが、入手の容易さから、市販されている重量平均分子量110万、4.5万、2.9万、9000、2900のものが好適に用いられるが、もちろんそれ以外の分子量のものを使用してもかまわない。ポリビニルピロリドンの重量平均分子量は特に限定されるものではないが、2000〜2000000が好ましく、10000〜1500000がより好ましい。なお、ここで記したポリビニルピロリドンの重量平均分子量は、基材に使用する原料段階での分子量である。作製された基材においては、放射線架橋などの手段によりポリビニルピロリドンの分子量は原料段階での分子量より大きなものとなっている場合もある。これらのポリビニルピロリドンは、ホモポリマーが好適であるが、他のモノマーと共重合されたものであってもかまわない。ここで、他の共重合モノマーの量は特に限定するものではないが、10重量%以下であることが好ましい。
【0019】
ポリスルホン系材料に多孔質性を付与するには、あらかじめポリスルホン溶液にポリビニルピロリドンをブレンドさせることにより達成できる。
【0020】
基材としてポリスルホン系中空糸を用いる場合、ポリスルホン系中空糸は例えば以下のようにして製造できる。
【0021】
ポリスルホンとポリビニルピロリドン(重量比率20:1〜1:5が好ましく、5:1〜1:1がより好ましい)を良溶媒(N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジオキサンなどが好ましい)および良溶媒の混合溶液に溶解させた原液(濃度は、10〜30重量%が好ましく、15〜25重量%がより好ましい)を二重環状口金から吐出する際に内側に注入液を流し、乾式部を走行させた後凝固浴へ導く。この際、乾式部の湿度が影響を与えるために、乾式部走行中に膜外表面からの水分補給によって、外表面近傍での相分離挙動を速め、孔径拡大し、結果として透析の際の透過・拡散抵抗を減らすことも可能である。ただし、相対湿度が高すぎると外表面での原液凝固が支配的になり、かえって孔径が小さくなり、結果として透析の際の透過・拡散抵抗を増大する傾向がある。そのため、相対湿度としては60〜90%が好適である。また、注入液組成としてはプロセス適性から原液に用いた溶媒を基本とする組成からなるものを用いることが好ましい。注入液濃度としては、例えばジメチルアセトアミドを用いたときは、45〜80重量%、さらには60〜75重量%の水溶液が好適に用いられる。
【0022】
次にリガンド親和性物質を基材に固定化する方法について説明する。
【0023】
基材にリガンド親和性物質を固定化するためには基材表面に官能基を含有させる必要がある。官能基としてはアミノ基、カルボキシル基、硫酸基、水酸基、リン酸基、イソシアネート基、ニトロ基、アルデヒド基、ピリジルジスルフィド基などが挙げられるが、リガンド親和性物質の固定化反応の容易さと水溶液で中での安定性からアミノ基が好適である。
【0024】
基材にアミノ基を含有させる方法としては、a)あらかじめ成形のための溶液にアミノ基を有する物質をブレンドしておいてから成形する方法や、b)成形した材料にアミノ基を含有する物質を含む溶液に浸漬または付着させ、放射線照射により固定化する方法、c)基材に活性基を導入しておき、アミノ基含有物質を固定化する方法などが用いられる。活性基はクロロメチル基、クロロアセトアミドメチル基などが利用される。
【0025】
以下、それぞれの方法について説明する。
a)あらかじめ成形のための溶液にアミノ基を有する物質をブレンドしておいてから成形する方法:
アミノ基を含有させる部位としては、基材全体にアミノ基を含有させてもよいし、血液や細胞の接触させる部分だけにアミノ基を含有させてもよい。中空糸の内表面を用いる場合は、アミノ基含有高分子物質の溶液を中空糸の内側からろ過し、充填することにより中空糸内表面にアミノ基を集積させることができる。
【0026】
基材にアミノ基を含有させる際に使用するアミノ基を有する物質としては、ポリマーであっても低分子であってもよい。低分子の場合は、アンモニア、テトラエチレンペンタミン、デンドリマー、アグマチンなどが用いられる。ポリマーの場合は、ポリアルキレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリリジン、アジリジン(エチレンイミン)化合物を有するポリマー、ポリエチレンイミン誘導体、キトサン、グリシンエステル化ポリエチレングリコール、ヒドラジド化ポリエチレングリコール、ω−ヒドロキシ−α−アミンポリエチレングリコール、ω−アミノ−α−カルボキシルポリエチレングリコールおよびそれらに置換基の導入されたもの、およびこれらを構成するモノマー単位からなる共重合体などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0027】
これらアミノ基を有するポリマーの中でも毒性の低さ、入手のしやすさ、取り扱いのしやすさなどから、分岐状のポリエチレンイミンが特に好適に用いられる。ポリエチレンイミンは、分子量600以上1000万以下の直鎖状、分岐状のものが好ましく用いられる。より好ましくは分子量1000以上10万以下のものが用いられる。また、ポリエチレンイミンの誘導体としては、ポリエチレンイミンをアルキル化、カルボキシル化、フェニル化、リン酸化、スルホン化、メルカプト化、ピリジルジスルフィド化など、所望の割合で誘導体化したものが挙げられる。
b)成形した材料にアミノ基を含有する物質を含む溶液に浸漬または付着させ、放射線照射により固定化する方法:
また、上記の成形した基材にアミノ基を含有する物質を含む溶液に浸漬または付着させ、放射線照射により固定化する方法をとる際の放射線処理としては、湿潤状態でγ線・電子線などを照射すればよい。ここでいう湿潤状態とは、基材を乾燥させない状態のことを言う。その程度は特に限定されるものではないが、通常、基材が1重量%以上の水分を含んでいることが好ましい。例えば、ポリスルホン/ポリビニルピロリドンブレンド基材を十分水洗した後、1wt%のポリエチレンイミン水溶液に浸漬して、25kGyにてγ線照射して基材にアミノ基を含有させる方法をとる。
【0028】
放射線の吸収線量は湿潤状態で10〜50kGy程度が好ましく、20kGyを超える線量を照射した場合は、滅菌処理を同時に行うことも可能である。この際、吸収線量は線量測定ラベルをモジュールの表面に貼り付けるなどして測定することができる。得られたアミノ基含有の基材を医療用途に用いる場合は、リガンド親和性物質の固定化操作を無菌下で行うことが望ましい。
c)基材に活性基を導入しておき、アミノ基含有物質を固定化する方法:
基材に活性基を導入しておき、アミノ基含有物質を固定化する方法により基材にアミノ基を含有させるには、ポリスチレン基材をN−メチロール−α−クロロアセトアミド、ニトロベンゼン、硫酸、パラホルムアルデヒドの混合液で反応させ、クロロアセトアミドメチル化架橋ポリスチレン基材を得て、さらに、ポリエチレンイミンをトリエチルアミン、ジメチルスルフォキシドの混合溶液に溶解し、この溶液にクロロアセトアミドメチル化架橋基材を加えて攪拌、洗浄して、ポリスチレン基材へアミノ基を導入することもできるが、これらの方法に限定されない。
【0029】
以上のように、基材表面に活性基を含有させた後、この活性基を介してリガンド親和性物質を固定化するが、本発明においてはこの活性基とリガンド親和性物質の間にある種の結合を導入することにより、基材に固定化したリガンド親和性物質が外部刺激により脱離できる特徴をもつ。このことにより、基材上のリガンド親和性物質に結合したリガンドにより捕捉した物質を容易に回収することが可能となる。
【0030】
外部刺激としては、光、熱、pH、塩濃度、化学反応などがあげられるが、リガンド親和性物質の安定性などから化学反応により化学結合を切断してリガンド親和性物質が脱離される結合が好ましく、化学的な結合が切断される反応として、加水分解反応、酸化反応、還元反応、酵素反応などがあげられる。材料がセルロースである場合には、リガンド親和性物質を固定化して、セルラーゼを用いて、材料そのものを酵素処理したり、リガンド親和性物質をDNAを介して結合し、DNA分解酵素(DNase)で酵素処理したり、リガンド親和性物質そのものをパパイン等で消化することができるが、取り扱い性、コスト、水中での安定性や細胞の生存率維持の必要性から還元反応が好ましい。特に、ジスルフィド結合を還元剤による還元反応により切断させる反応は、タンパク質のリフォールディングなど生体内で良く行われる反応であり、リガンド親和性物質を脱離する反応として好適であるため、基材表面の活性基にジスルフィド結合を介してリガンド親和性物質を固定化することが望ましい。ここで使用する還元剤としてジチオスレイトール、メルカプトエタノール、システイン、還元型グルタチオンなどがあげられる。
【0031】
基材表面の活性基にジスルフィド結合を介してリガンド親和性物質を固定化する方法としては、リガンド親和性物質がタンパク質である場合は、タンパク質自身もジスルフィド結合を有することもあるので、リガンド親和性物質を直接基材表面の活性基に固定しても良いが、通常、メルカプト基同士の酸化反応、あるいはジスルフィド交換反応を利用してジスルフィド結合を形成させる方法をとる。ジスルフィド交換反応を利用する方法としては、ピリジルジスルフィド基とメルカプト基の交換反応を用いるのが反応性の点から好ましく、ピリジルジスルフィド基やメルカプト基を基材およびリガンド親和性物質に導入して結合させる。この際、通常架橋剤を利用する。
【0032】
上記のようなジスルフィド結合を介した固定化に利用できるような架橋剤としては、基材表面の官能基同士あるいはリガンド親和性物質同士の結合を防ぐため二種類の違った官能基と反応する活性化基をもつ架橋剤を使用することが好ましく、活性化基として、アミノ基と反応するN−ヒドロキシスクシンイミド基、イミドエステル基、ニトロアリールハライド基、メルカプト基と反応するマレイミド基、ピリジルジスルフィド基、チオフタルイミド基、活性化ハロゲン基、光化学反応により架橋するフェニルアジド基、ジアゾカルベン基、などを持つような架橋剤を利用することができる。なかでも、N−ヒドロキシスクシンイミド基とピリジルジスルフィド基を持つような架橋剤を利用することにより、上記で作製したようなアミノの基を有する基材やプロテインAなどのアミノ基を有するリガンド親和性物質にピリジルジスルフィド基を導入できる。また、このピリジルジスルフィド基を還元剤により還元することによりメルカプト基に変換できる。このような架橋剤として、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネート、スクシンイミジル−6−[3’(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノエートや水溶性のスルフォスクシンイミジル−6−[3’(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノエートなどが挙げられる。また、架橋剤として2−イミノチオランを利用すれば、1段階でメルカプト基を導入することができる。
【0033】
水に不溶性の架橋剤を用いる場合は、ジメチルスルホキシドやメタノールなどの可溶性の有機溶媒に溶解後、水系の反応液に添加することにより利用できるが、基材に反応させる際は、N−ヒドロキシスクシンイミド基とピリジルジスルフィド基を持つような架橋剤はポリスルホン系の基材に吸着しやすいため、メタノール、エチレンオキシド、グリセリンなどの架橋剤を溶解し、基材を溶解しない有機溶媒で洗浄することが望ましい。
【0034】
上記のような架橋剤などを利用して、基材にピリジルジスルフィド基が導入される場合には、例えば下記反応式(3)のような反応を用いてリガンド親和性物質を固定化できる。すなわち、リガンド親和性物質に上記のような架橋剤を利用してピリジルジスルフィド基を導入後、還元してメルカプト基を導入する、あるいは、リガンド親和性物質に2−イミノチオランを反応してメルカプト基を導入し、これらリガンド親和性物質のメルカプト基と、架橋剤と活性基を反応させて導入した基材表面のピリジルジスルフィド基とのジスルフィド交換反応によりジスルフィド結合を介してリガンド親和性物質を基材に固定化する。ここで、リガンド親和性物質にピリジルジスルフィド基を導入して還元する際には、リガンド親和性物質が抗体である場合、抗体自体の還元による失活を防ぐために酢酸緩衝液中などで還元することにより抗体自身の還元を抑えることができる。
【0035】
【化3】
【0036】
また、上記のような架橋剤などを利用して基材にメルカプト基が導入されている場合、例えば下記反応式(4)のような反応を用いて固定化できる。すなわち、リガンド親和性物質に上記のような架橋剤ピリジルジスルフィド基を導入したもの使用し、リガンド親和性物質のピリジルジスルフィド基と基材上のメルカプト基のジスルフィド交換反応によりジスルフィド結合を介してリガンド親和性物質を基材に固定化することができる。
【0037】
【化4】
【0038】
基材へ導入されるピリジルジスルフィド基あるいはメルカプト基の密度は高い方が望ましいが、反応に用いる架橋剤の濃度や反応時間により制御することができるので、適宜選ぶことができる。
【0039】
リガンド親和性物質へのピリジルジスルフィド基の導入率はリガンド親和性物質1モル当たり1モル以上であることが必要であるが、導入率を上げるためにピリジルジスルフィド化剤の仕込量を上げるとリガンド親和性物質がタンパク質の場合は失活したり、凝集したりするおそれがある。望ましくは仕込量はリガンド親和性物質1モルあたり10モル以下が望ましい。
【0040】
基材にリガンド親和性物質を固定化した際のリガンド親和性物質の濃度は、固定化密度を上げるためには高い方が望ましく、1mg/ml以上が望ましい。0.5mg/ml以下の場合は固定化されるリガンド親和性物質の量が少なくなり、機能が低下する恐れがある。
【0041】
以上に示したような反応を利用してリガンド親和性物質を基材にジスルフィド結合を介して固定化させる方法の例を具体的に以下に示すが、固定化の方法はこれらに限定されない。
【0042】
アミノ基を含有するポリスルホン基材を架橋剤としてN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネート(以下SPDP)を溶解したジメチルスルホキシド溶液に浸漬し反応させた後、メタノールで洗浄した平膜をジチオスレイトールを含むリン酸緩衝液で還元し、メルカプト基を有するポリスルホン平膜を得る。さらに、SPDPを溶解したジメチルスルホキシド溶液をプロテインA1モルに対して10モル添加し、室温で30分反応させて、プロテインAにピリジルジスルフィド基を導入した後、精製する。メルカプト基を有するポリスルホン平膜にピリジルジスルフィド基を導入したプロテインAを反応させ、プロテインAをポリスルホン平膜にジスルフィド結合を介して固定化した基材を作製する。この基材に還元剤としてジチオスレイトールを含むリン酸緩衝液に浸漬して、ジスルフィド結合を還元することによりプロテインAを脱離させることができる。
【0043】
次にリガンド親和性物質を固定化した基材にリガンドを結合させる方法を説明する。
【0044】
本発明で結合に使用するリガンドは、細胞や病因物質などのターゲット物質と相互作用をもつものであれば、合成品でも天然物でもよいが、特異性の点から抗体およびレセプターを好ましく用いることができる。用いる抗体としては、例えば、抗CD1a抗体、抗CD1b抗体、抗CD1c抗体、抗CD2抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗CD10抗体、抗CD11a抗体、抗CD11b抗体、抗CD11c抗体、抗CDw12抗体、抗CD13抗体、抗CD14抗体、抗CD15抗体、抗CD16a抗体、抗CD16b抗体、抗CD18抗体、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD23抗体、抗CD24抗体、抗CD25抗体、抗CD26抗体、抗CD27抗体、抗CD28抗体、抗CD30抗体、抗CD31抗体、抗CD32抗体、抗CD33抗体、抗CD34抗体、抗CD38抗体、抗CD40抗体、抗CD42a抗体、抗CD44抗体、抗CD45抗体、抗CD45RA抗体、抗CD45RO抗体、抗CD49d抗体、抗CD50抗体、抗CD54抗体、抗CD56抗体、抗CD57抗体、抗CD58抗体、抗CD61抗体、抗CD62L抗体、抗CD62P抗体、抗CD66抗体、抗CD69抗体、抗CD70抗体、抗CD71抗体、抗CD80抗体、抗CD81抗体、抗CD86抗体、抗CD95抗体、抗CD102抗体、抗CD105抗体、抗CD106抗体、抗CD109抗体、抗CDw119抗体、抗CD120a抗体、抗CD120b抗体、抗CD121a抗体、抗CDw121b抗体、抗CD122抗体、抗CD123抗体、抗CD126抗体、抗CDw128a抗体、抗CD130抗体、抗CDw131抗体、抗CD132抗体、抗CD133抗体、抗CD134抗体、抗CD105抗体、抗CD138抗体、CD152抗体、抗CD154抗体、抗CD199抗体、抗低比重リポ蛋白質(LDL)抗体、抗酸化LDL抗体、抗β2ミクログロブリン抗体、抗CCR1抗体、抗CCR2抗体、抗CCR3抗体、抗CCR4抗体、抗CCR5抗体、抗CCR7抗体、抗CXCR3抗体、抗CX3CR1抗体、抗CXCR5抗体、抗CXCR1抗体などが挙げられるが、これらに限定されない。また、レセプターとしては例えば、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR7、CXCR1、CXCR3、CX3CR1、CXCR5等のサイトカインレセプターやFcγ,Fcε等のイムノグロブリンレセプター、RAGE,LDLレセプター等のスカベンジャーレセプター等,T細胞レセプターや主要組織適合性抗原等の細胞認識レセプター等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの抗体やレセプターは単独で使用しても良いし、複数の抗体やレセプターを組み合わせても良い。抗体は、アフィニティーの高さからモノクローナル抗体が好ましい。
【0045】
これら抗体やレセプターは目的によって種々選定することができ、血液中の有用物質や病因物質を特異的に除去、回収する場合は細胞、無機物、タンパク質、DNA、脂質、糖、ウィルスなどがターゲットとして挙げられる。例えば、抗CD2抗体を用いればT細胞およびNK細胞を分離でき、抗CD3抗体を用いればT細胞をを分離でき、抗CD4抗体を用いればヘルパーT細胞を分離でき、抗CD8抗体を用いればサイトトキシックT細胞を分離でき、抗CD11aを用いれば白血球を分離でき、抗CD11bを用いれば単球を分離でき、抗CD14抗体を用いれば単球やマクロファージを分離でき、抗CD15抗体を用いれば顆粒球やミエロイド細胞を分離でき、抗CD16細胞を用いれば好中球あるいは休止期NK細胞を分離でき、抗CD19抗体を用いればB細胞を分離でき、抗CD22抗体を用いればB細胞を分離でき、抗CD27抗体を用いればナイーブB細胞やメモリーB細胞を分離でき、抗CD30抗体を用いれば活性化B細胞および活性化T細胞を分離でき、抗CD33細胞を用いれば単球、顆粒球およびミエロイド細胞を分離でき、抗CD34抗体を用いれば造血幹細胞を分離でき、抗CD45抗体を用いれば白血球を分離でき、抗CD56抗体を用いればNK細胞を分離でき、抗CD61抗体を用いれば巨核球及びその前駆細胞を分離でき、抗CD66抗体を用いれば顆粒球を分離でき、抗CD69抗体を用いれば活性化T細胞や活性化B細胞やNK細胞を分離でき、抗CD71抗体を用いれば赤芽球や活性化されたリンパ芽球を分離でき、抗CD105抗体を用いれば内皮細胞を分離できる。
【0046】
前述の方法でリガンド親和性物質を固定化した基材にリガンドを結合させる方法としては、例えば基材にリガンドを含む溶液を接触させることにより、リガンド親和性物質にリガンドが結合する方法があげられる。
【0047】
リガンドとして抗体を使用した場合、プロテインAやプロテインGは抗体のFc領域を認識して結合し、レクチンは抗体の糖鎖部分を認識して結合する。このため、抗体の基材表面上での方向性を制御することができる。また、このように基材上での抗体の方向性を制御するために、リガンド親和性物質として抗抗体を利用する場合には、抗体のFab領域以外を認識する抗抗体を利用することが好ましい。
【0048】
リガンドを結合させる方法としては、リガンドを含む溶液を入れた容器に基材をいれてエージングする、基材をカラムに詰めてリガンドを含む溶液を通過させる、等の方法をとることが出来るがこれらに限定されない。
【0049】
また、リガンドを結合させる前に、ウシ血清アルブミン、卵白アルブミン、ヒト血清、ウシ胎児血清、スキムミルクなどのブロッキング剤で基材をブロッキングして非特異な吸着を抑えた後、リガンドを結合させても良い。また、リガンドを含む溶液に使用する溶液としては、様々なpH値のリン酸バッファー、酢酸バッファー、トリス−塩酸バッファー、炭酸バッファー、クエン酸バッファー等が使用できるが、リガンドを失活させなければいずれのバッファーを使用しても良い。また、溶液中に塩化ナトリウムや上記のブロッキング剤、カチオン性、アニオン性、親水性、疎水性などのポリマーを含有していても良い。
【0050】
また、基材にリガンドを結合させる際のリガンド溶液のリガンド濃度を調整することにより、簡単にリガンドの固定化密度を制御できる。リガンド濃度を上げれば固定化密度は高くなり、リガンド濃度を下げれば固定化密度は低くなる。この方法による基材へのリガンドの固定化は、化学的な方法で固定化させるよりも比較的低濃度でも固定化させることが可能である。リガンドの固定化密度の濃度は固定化前後のリガンド溶液中のリガンド濃度を高速液体クロマトグラフィーなどを用いて測定することができる。
【0051】
本発明の材料をカラムとして利用する場合、特に中空糸を用いる場合、例えば以下のようにしてカラムを製造することができるが特に限定されるものではない。まず、中空糸膜を必要な長さに切断し、必要本数を束ねた後、筒状ケースに入れる。その後、両端に仮のキャップをし、中空糸膜両端部にポッティング剤を入れる。このとき遠心機でモジュールを回転させながらポッティング剤を入れる方法は、ポッティング剤が均一に充填されるために好ましい方法である。ポッティング剤が固化した後、中空糸膜の両端が開口するように両端部を切断し、中空糸膜モジュールを得ることができる。
【0052】
本発明のリガンド親和性物質を固定化した基材にリガンドを結合させた材料を利用すれば、上記で示したようなターゲットとなる有用物質や病因物質をリガンドにより捕捉でき、さらに、外部刺激によりリガンドと結合したリガンド親和性物質を基材から離脱させることにより、捕捉した有用物質や病因物質を回収することが可能である。なお、ターゲット物質を捕捉あるいは回収する際に使用する溶媒としては、様々なpH値のリン酸、酢酸、クエン酸などの緩衝液を用いることができ、さらに緩衝液の中にウシ血清アルブミンや抗体などのタンパク質あるいはカチオン性、アニオン性、親水性、疎水性などのポリマーなどを含有していても良い。
【0053】
さらに基材として多孔質材料を用いる場合は、透析やろ過機能を付与することができ、血液浄化、細胞分離用途のみならず、バイオリアクターなどの細胞培養用材料としても用いることができる。
【0054】
細胞を回収する際は全血と作用させてもよいし、血漿分画や単核球分画などにした後、作用させてもよい。
【0055】
以上のような方法で、回収した有用物質、病因物質を分析に用いることが可能である。また、回収する細胞が血液幹細胞細胞、神経幹細胞、T細胞であれば、その細胞を分析だけでなく、培養し、増殖、活性化させることにより癌や自己免疫疾患、アルツハイマー病などの治療に利用できる。例えば、リガンドとして抗CD4抗体を使用し、プロテインAをジスルフィド結合を介して基材に固定化した基材に抗CD4抗体を結合させた本発明の材料に、末梢血から分離した単核球成分を通してCD4陽性のT細胞を捕捉し、ジチオスレイトールなどの還元剤でプロテインAを脱離することにより、捕捉した細胞を大量に回収し、この細胞に様々な刺激を加えて増殖、活性化させた後、体内に戻すことにより、癌、アレルギー、感染症、臓器移植、あるいは自己免疫疾患の治療やワクチンとして用いることができる。
【0056】
また、例えば、リガンドとして抗CD34抗体(マウスIgG2a)を使用し、抗マウスIgG2a抗体をジスルフィド結合を介して基材に固定化した基材に抗CD34抗体(マウスIgG2a)を結合させた本発明の材料に、臍帯血を通して造血幹細胞を捕捉し、ジチオスレイトールなどの還元剤でリガンドを脱離することにより、造血幹細胞を大量に回収し、回収した造血幹細胞を培養して輸血医療に用いたり、様々な組織幹細胞に分化させることにより、肝疾患や神経疾患、血管傷害などの細胞療法に用いることができる。
【0057】
また、外部刺激によりジスルフィド結合を解離してリガンド親和性物質を脱離した後の材料は、表面にメルカプト基を有するので、再びピリジルジスルフィドを有するリガンド親和性物質を固定化し、再利用することもできる。
【0058】
【実施例】
[作製例1.ビーズ担体へのメルカプト基の導入]
CNBr活性化セファロース6MB(アマシャム社製)を0.1mM HClaq.で膨潤、洗浄し、0.5M NaClを含有する0.1M NaHCO3バッファー(pH8.3:カップリングバッファー)で手早く洗浄後、メルカプトエチルアミンを0.2M含有するカップリングバッファーを加え室温で2時間反応し、pH4の酢酸バッファーとカップリングバッファーで交互に3回洗浄し、セファロースビーズ表面にメルカプト基を導入した。
[作製例2.プロテインAのSPDP化]
NaClを0.15mM含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)に10mg/mlに溶解したプロテインA(シグマ社製)にSPDPを20mMに溶解したジメチルスルホキシド溶液をプロテインA1モルに対して10モル添加し、室温で30分反応させた後、PD−10カラム(ファルマシア社製)で高分子量分画に精製した。合成したSPDP化プロテインAの一部を25mMのジチオスレイトールを含むリン酸緩衝液で還元反応を行い、反応により生成するピリジン−2−チオンの吸収(343nm)を測定することにより、SPDP基の導入量を測定したところ、プロテインA1モルあたりのSPDP導入量は5.3モルであった。
【0059】
<実施例1>
作製例1.で得られたメルカプト基導入セファロースビーズ担体1mLに2.で得られたSPDP化プロテインAを1mg/ml含むリン酸緩衝液を1mL混合し、室温で3時間反応させ、プロテインAをセファロースビーズ担体にジスルフィド結合を介して固定化した。このジスルフィド基を介してプロテインAを固定化したビーズ担体をDTT(ジチオスレイトール、ピアース社製)1mMを含むリン酸緩衝液で室温で30分処理するとプロテインAが脱離されることが確認された。そこで、作製したプロテインAを固定化したセファロースビーズ担体1mLに1mg/mlの精製ヒト免疫グロブリンG(シグマ社製、以下IgG)を含むリン酸緩衝液1mLを加え室温で1時間結合させた。IgGの固定化は、固定化前後のIgG水溶液濃度の変化を高速液体クロマトグラフィーで測定することにより確認できた。結合後、リン酸緩衝液で洗浄した後、DTT1mMを含むリン酸緩衝液で室温で30分処理し、脱離したIgGを高速液体クロマトグラフィーで測定したところ、0.9mg脱離することが確認できた。
[作製例3.ビーズ担体へのプロテインAの固定化]
CNBr活性化セファロース6MB(アマシャム社製)を0.1mM HClaq.で膨潤、洗浄(15分間)し、0.5M NaClを含有する0.1M NaHCO3バッファー(pH8.3:カップリングバッファー)で手早く洗浄後、プロテインAを1mg/mL含有するカップリングバッファーを加え室温で2時間反応した。反応後、反応液を除去した後、0.2Mグリシンカップリングバッファーを加え室温で2時間反応し、過剰な活性基をブロッキングし、最後にpH4の酢酸バッファーとカップリングバッファーで交互に3回洗浄した。
【0060】
<比較例1>
作製例3.で作製したプロテインAを固定化したセファロースビーズ担体1mLに1mg/mlのIgG(シグマ社製)を含むリン酸緩衝液1mLを加え室温で1時間結合させた。結合後、リン酸乾燥液で洗浄した後、DTT1mMを含むリン酸緩衝液で室温で30分処理して、脱離するIgGを測定したところ0.02mgとほとんど脱離しなかった。
[作製例4.メルカプト基をもつ平膜の作製]
ポリスルホン(テイジンアモコ社製”ユーデル”(登録商標)P−3500)18重量部、ポリビニルピロリドン(BASF社製”K30”(登録商標))9重量部をN,N−ジメチルアセトアミド72重量部、水1重量部に加え、90℃、14時間加熱溶解した。この溶液を0.1mmスペーサー付きのガラス板に塗布し、ドクターブレードにて溶液を引き延ばしたものを水中にいれて、凝固させ、ポリスルホン/ポリビニルピロリドンブレンドからなる平膜状の材料を作製した。
【0061】
上記、ポリスルホン/ポリビニルピロリドンブレンド材料を十分水洗した後、1wt%のポリエチレンイミン(分子量1万、和光純薬製)水溶液に浸漬して、25kGyにてγ線照射した。放射線処理した支持体は、十分水洗した。
【0062】
上記のアミノ基を含有するポリスルホン平膜をNaClを0.15mM含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)にN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネート(ピアース社製、以下SPDP)を20mMに溶解したジメチルスルホキシド溶液を最終SPDP濃度が1.2mMとなるように添加した溶液に2.5時間浸漬した(室温)。反応させた平膜をメタノールで洗浄した後、水洗した材料を25mMのジチオスレイトールを含むリン酸緩衝液で還元し、表面にメルカプト基をもつポリスルホン平膜を得た。
【0063】
<実施例2>
作製例4.で作製した平膜1cm2を作製例2.で得られたSPDP化プロテインAを1mg/ml含むリン酸緩衝液1mlに室温で4.5時間浸漬した後、NaClを0.15mM含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)で洗浄することにより、プロテインAをポリスルホン平膜にジスルフィド結合を介して固定化したリガンド親和性物質固定化基材(実施例2)を作製した。
【0064】
ここで得られたプロテインA固定化平膜1cm2に1mg/mlのIgG(シグマ社製)を含むリン酸緩衝液1mLを加え室温で1時間結合、洗浄した後、外部刺激として1mMのジチオスレイトールを含むリン酸緩衝液に浸漬して、ジスルフィド結合を還元することにより抗体を20μg脱離させることができた。
【0065】
また、還元後のポリスルホン平膜1cm2を再度、SPDP化プロテインAを1mg/ml含むリン酸緩衝液1mlに室温で12時間浸漬することにより、再度プロテインAをポリスルホン平膜にジスルフィド結合を介して固定化することができた。
[作製例5.抗体へのSPDPの導入]
NaClを0.15mM含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)に精製ヒト免疫グロブリンG(シグマ社製、以下IgG)を5mg/mlとなるように溶解し、さらに、SPDPを20mMとなるように溶解したジメチルスルホキシド溶液を抗体1モルに対して10モル添加し、室温で30分反応させた後、PD−10カラム(ファルマシア社製)で高分子量分画を精製した。合成したSPDP化IgGの一部を25mMのジチオスレイトールを含むリン酸緩衝液で還元反応を行い、反応により生成するピリジン−2−チオンの吸収(343nm)を測定することにより、SPDP基の導入量を測定したところ、IgG1モルあたりのSPDP導入量は4.2モルであった。
【0066】
<比較例2>
作製例4.で作製した平膜1cm2を作製例5.で得られたSPDP化IgGを0.5mg/ml含むリン酸緩衝液1mlに室温で4.5時間浸漬した後、NaClを0.15mM含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)で洗浄した後、平膜を外部刺激として25mMのジチオスレイトールを含むリン酸緩衝液に浸漬して、ジスルフィド結合を還元したところにより抗体の脱離を確認できなかった。
[作製例6.メルカプト基をもつ中空糸の作製]
ポリスルホン(テイジンアモコ社製”ユーデル”(登録商標)P−3500)18部、ポリビニルピロリドン(BASF社製”K30”(登録商標))9部をN,N−ジメチルアセトアミド72部、水1部に加え、90℃、14時間加熱溶解した。この製膜原液を外径0.3mm、内径0.2mmのオリフィス型二重円筒型口金より吐出し芯液としてジメチルアセトアミド58部、水42部からなる溶液を吐出させ、乾式長350mmを通過した後、水100%の凝固浴に導き中空糸膜を得た。
【0067】
中空糸分離膜を10000本束ね、中空糸中空部を閉塞しないようにポリウレタン系ポッティング剤で両末端をモジュールケースに固定し、モジュールを作製した後、ポリエチレンイミン(分子量100万、BASF社製)0.1重量%を含む水溶液を中空糸内側から外側にかけてろ過をかけることにより、ポリエチレンイミンを中空糸内表面に集積して充填した後、25kGyでγ線照射した。中空糸を水洗した後、NaClを0.15mM含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)にSPDPを20mMに溶解したジメチルスルホキシド溶液を最終SPDP濃度が1.2mMとなるように添加した溶液を中空糸内部に室温で1時間灌流し、中空糸内表面をSPDP化した後、膜をメタノールで洗浄し、さらに水洗した膜を25mMのジチオスレイトールを含むリン酸緩衝液で還元し、内表面にメルカプト基をもつポリスルホン中空糸膜を得た。
【0068】
<実施例3>
作製例6.で得られたモジュールを解体して中空糸を取り出し、中空糸分離膜を36本束ね、中空糸中空部を閉塞しないようにエポキシ系ポッティング剤で両末端をモジュールケースに固定し、ミニモジュールを作製した。該ミニモジュールの直径は約7mm、長さは約10cmである。ミニモジュール内部に2.で得られたSPDP化プロテインAを1mg/ml含むリン酸緩衝液5mlを室温で20時間灌流し、洗浄することにより、プロテインAをポリスルホン中空糸膜内表面にジスルフィド結合を介して固定化し、さらに、”オルソクローンOKT3”(登録商標、抗ヒトCD3モノクローナル抗体、ヤンセンファーマ社)を0.2mg/ml含むリン酸緩衝液5mlを室温で20時間灌流し洗浄することにより、抗CD3抗体をポリスルホン中空糸膜内表面にジスルフィド結合を介して固定し、リガンドが固定化された材料を用いたカラムを得た。
【0069】
得られたカラムにヒト末梢血(ヘパリン含有)をAXIS SHIELD社製”リンフォプレップ”(登録商標)で処理して単核球成分を分離し、単核球成分1.0×107個をリン酸緩衝液3mlに懸濁し、該懸濁を実施例3のカラムに室温で1時間灌流させた。灌流前のCD3陽性細胞数は6.3×106個であったのに対し、処理後は3.5×105個であった。また、処理後のモジュールをリン酸緩衝液を1時間灌流させて洗浄した後、0.2mMのジチオスレイトールを含むリン酸緩衝液を5mlで1時間灌流させて得た細胞は5.6×106個であり、CD3陽性細胞の割合は9割以上であった。 以上のCD3陽性細胞の分析はフローサイトメーターにより行った。
【0070】
【発明の効果】
本発明のリガンド親和性物質固定化基材にリガンドを結合させれば、リガンドは方向性を持つことができ、基材からの表面効果を受けることなく、細胞の表面抗原などと適切に相互作用することが可能となる。
【0071】
またこのような方法によるリガンドの固定化方法は、化学結合によるリガンドの固定化方法より比較的低濃度でリガンドを作用させた場合でも、リガンドを固定化することができる。このため、少量高価なリガンドを使用する場合、少量のリガンドを使用するだけでリガンドを固定した材料を提供できる。
【0072】
さらに、リガンド親和性物質を外部刺激により基材から脱離できるようにすることにより、リガンド親和性物質と共にリガンドを材料から脱離できることから、この材料を用いたカラムを利用してリガンドとの相互作用により捕捉された細胞を、外部刺激により簡単、効率よく、大量に回収することができる。
Claims (24)
- リガンド親和性物質を固定化した基材であって、固定化したリガンド親和性物質を外部刺激によって脱離できることを特徴とするリガンド親和性物質固定化基材。
- リガンド親和性物質が抗体あるいは/またはレセプターに親和性を有する物質であることを特徴とする請求項1に記載のリガンド親和性物質固定化基材。
- リガンド親和性物質が、プロテインA、プロテインG、抗抗体、レクチンのうちのいずれか1種である請求項2に記載のリガンド親和性物質固定化基材。
- 基材の形状が繊維状、中空糸状または平膜状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリガンド親和性物質固定化基材。
- 基材が多孔質であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のリガンド親和性物質固定化基材。
- 基材がポリスルホン、セルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリエステル、ポリプロピレンからなる群より1つ以上選択される高分子化合物を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のリガンド親和性物質固定化基材。
- 基材が親水性高分子を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のリガンド親和性物質固定化基材。
- 親水性高分子がポリビニルピロリドンであることを特徴とする請求項7に記載のリガンド親和性物質固定化基材。
- 外部刺激により化学結合が切断されるものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のリガンド親和性物質を固定化基材。
- 外部刺激が還元剤による還元反応であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のリガンド親和性物質固定化基材。
- リガンド親和性物質と基材がジスルフィド結合を介して結合されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のリガンド親和性物質固定化基材。
- リガンド親和性物質がアミノ基を有し、かつ基材がメルカプト基を有するものであり、前記リガンド親和性物質のアミノ基と前記基材のメルカプト基を外部刺激により切断可能な架橋剤を利用してリガンド親和性物質を基材に固定化されたものであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のリガンド親和性物質固定化基材。
- リガンド親和性物質がメルカプト基を有し、かつ基材がアミノ基を有するものであり、前記リガンド親和性物質の前記メルカプト基と前記基材の前記アミノ基を外部刺激により切断可能な架橋剤を利用してリガンド親和性物質を基材に固定化されたものである請求項1〜11のいずれかに記載のリガンド親和性物質固定化基材。
- N−ヒドロキシスクシンイミド基とピリジルジスルフィド基あるいは/またはN−ヒドロキシスクシンイミド基とマレイミド基を有する架橋剤を利用してリガンド親和性物質が基材に固定化されたものであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のリガンド親和性物質固定化基材。
- 架橋剤がN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネートであることを特徴とする請求項14記載のリガンド親和性物質固定化基材。
- 細胞分離に用いる請求項1〜15のいずれかに記載のリガンド親和性物質固定化基材。
- 請求項1〜15のいずれかに記載のリガンド親和性物質固定化基材にリガンドを結合させた材料。
- リガンドが抗体あるいは/またはレセプターである請求項16あるいは17記載のリガンドを結合させた材料。
- 請求項17〜18のいずれかの材料を用いた体外循環に使用可能な細胞分離カラム。
- 請求項17〜18のいずれかの材料を用いた体外循環に使用可能な血液浄化カラム。
- 請求項17記載のリガンド親和性物質固定化基材にリガンドを結合させた材料を含む疾病治療用カラムであって、該疾病治療用カラムで得られた細胞が癌または自己免疫疾患または脳梗塞またはパーキンソン病またはアルツハイマー病または糖尿病または心筋梗塞または血管再生の治療に用いられる疾病治療用カラム。
- 前記細胞が造血幹細胞である請求項21に記載の疾病治療用カラム。
- 前記細胞が神経幹細胞である請求項21に記載の疾病治療用カラム。
- 前記細胞がT細胞である請求項21に記載の疾病治療用カラム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002347519A JP2004180703A (ja) | 2002-11-29 | 2002-11-29 | 脱離可能なリガンド親和性物質固定化基材、および該基材にリガンドを結合させた材料およびそれを用いたカラム |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002347519A JP2004180703A (ja) | 2002-11-29 | 2002-11-29 | 脱離可能なリガンド親和性物質固定化基材、および該基材にリガンドを結合させた材料およびそれを用いたカラム |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004180703A true JP2004180703A (ja) | 2004-07-02 |
Family
ID=32750694
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002347519A Pending JP2004180703A (ja) | 2002-11-29 | 2002-11-29 | 脱離可能なリガンド親和性物質固定化基材、および該基材にリガンドを結合させた材料およびそれを用いたカラム |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004180703A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2006094467A1 (fr) * | 2005-03-11 | 2006-09-14 | Guangzhou Bopu Biotechnology Inc. | Procede et systeme de purification du sang bases sur une absorption par affinite |
-
2002
- 2002-11-29 JP JP2002347519A patent/JP2004180703A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2006094467A1 (fr) * | 2005-03-11 | 2006-09-14 | Guangzhou Bopu Biotechnology Inc. | Procede et systeme de purification du sang bases sur une absorption par affinite |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
CN1196688A (zh) | 亲和性膜系统及其应用方法 | |
JP4942015B2 (ja) | リガンド固定化用基材および細胞選択吸着材 | |
JPS6241667A (ja) | 免疫グロブリンの吸着材およびこれを備えた吸着装置 | |
CA2375112C (en) | One step removal of unwanted molecules from circulating blood | |
JP2004194720A (ja) | リガンド固定化カラム | |
JP2004041341A (ja) | 体外循環用リガンド固定化材料およびそれを用いたカラム | |
JP2004180703A (ja) | 脱離可能なリガンド親和性物質固定化基材、および該基材にリガンドを結合させた材料およびそれを用いたカラム | |
JP2004180569A (ja) | 細胞分離カラム | |
JP2004045120A (ja) | 液体クロマトグラフ用カラム材料 | |
JP2004189627A (ja) | リガンドの脱離可能なリガンド−カチオン性ポリマー複合体および、該ポリマー複合体を固定化させた材料およびそれを用いたカラム | |
WO2008005960A2 (en) | Prion processing | |
JP2004189724A (ja) | 生理活性物質を含む材料およびその製造方法 | |
JPS6253669A (ja) | 免疫グロブリン物質の吸着材および吸着装置 | |
JP2004196777A (ja) | 生理活性物質含有材料およびその製造方法 | |
JP3084437B2 (ja) | 抗脂質抗体の除去装置 | |
JPH01158970A (ja) | 直接血液潅流用免疫グロブリン吸着材および吸着装置 | |
JPH0623758B2 (ja) | Bリンパ球分離材、分離方法および分離器 | |
JP2004283295A (ja) | リガンド固定化材料およびその製造方法 | |
JP3235671B2 (ja) | 生理活性物質固定化担体 | |
WO2000041718A9 (en) | Method and apparatus for selectively removing xenoreactive antibodies from blood, serum or plasma | |
JPH0316639A (ja) | 吸着体およびそれを用いた除去装置 | |
JP2004223118A (ja) | 体外循環用リガンド固定化材料の製造方法 | |
JP5250288B2 (ja) | 体液浄化システムの作動方法 | |
JP2008194304A (ja) | 自己抗体吸着材及び体外循環モジュール | |
JP3251547B2 (ja) | 免疫複合体の除去装置 |