JP2004283295A - リガンド固定化材料およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】材料に生理活性物質が非特異的に吸着される問題を解決し、かつ簡単な作製方法で体外循環用途で利用できる滅菌されたリガンド固定化材料を提供する。
【解決手段】疎水性基材に疎水性部位を持つ生体物質を吸着させ、さらにリガンドが結合されたカチオン性高分子を吸着させたリガンド固定化材料。
【選択図】なし。
【解決手段】疎水性基材に疎水性部位を持つ生体物質を吸着させ、さらにリガンドが結合されたカチオン性高分子を吸着させたリガンド固定化材料。
【選択図】なし。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、血液中の有用物質あるいは病因物質を効率よく除去回収する、あるいは細胞分離、濃縮するための材料およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、リガンド、特に抗体を用いて、抗体と相互作用する特定の細胞を選択的に分離し、研究用・医療用に利用する試みがなされている。このような特定の細胞を分離回収、利用する技術として、例えばフローサイトメトリーによる方法や磁気ビーズ法などが提案されている(例えば、非特許文献1参照)が、いずれの方法も少量の細胞を対象としており、さらに、細胞と標識抗体とを反応させた後、分離作業をするという非常に煩雑な操作が必要であり、特定の細胞を大量に回収する際は、時間、コストがかかることが問題となっている。
【0003】
そこで、近年では特定の細胞を簡単、大量に分離・回収するため、抗体を固定化した材料を担体として用い、ここに血液細胞などの細胞群を流すことにより、抗体と相互作用する特定の細胞だけを除去したり、回収したりする技術が検討されている。例えば、ヒト表面抗原を認識する抗体を不織布に固定化し、特定の血球成分を除去する技術(特許文献1参照)や還元剤により切断可能なジスルフィド結合を介して、リガンドを材料に固定化する方法も検討されている(特許文献2参照)。しかし、これらの検討技術では抗体などのリガンドを基材に固定化する際に有機合成反応の手法を用いている。医療用途製品としてこれらの材料を利用する場合、製品を滅菌する必要があり、抗体などのリガンドは放射線や熱による滅菌により失活し、その機能を失ってしまうため、有機合成反応により抗体などの生理活性物質を固定する手法で医療用具を製造する場合は、製造プロセスをすべて無菌状態で製造する必要があり、この場合莫大な製造コストがかかることが問題である。
【0004】
また、一般に基材上に抗体などのリガンドを接触させると、基材にリガンドが非特異的に吸着されてしまうため、リガンドを基材に固定化する際の固定化量や基材から放出する際の放出量の制御ができず、これが問題となることがある。例えば、非特許文献2に記載された技術では還元剤によりジスルフィド結合を切断して、特定の細胞を捕捉したリガンドを放出させることができるが、放出されたリガンドが基材に再吸着してしまい、結果的に細胞を効率良く回収できないという問題点があった。
【0005】
【非特許文献1】
ポール・T・シャープ(P.T.Sharpe),「生化学実験法13−細胞分離法−」,第1版,東京化学同人,1991年,p151〜190
【0006】
【特許文献1】
国際公開第97/027878号パンフレット
【0007】
【特許文献2】
国際公開第96/31776号パンフレット
【0008】
【非特許文献2】
H.Kiefer,Eur.J.Immunol.,5巻,1975年,p624〜627
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明では、上記従来技術の問題を解消するものであり、リガンドを材料に固定化する際の滅菌に関わる問題を解決し、かつ基材に対するリガンドの非特異的吸着を抑制することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有する。すなわち、「疎水性基材に疎水性部位を持つ生体物質を吸着させ、さらにリガンドが結合されたカチオン性高分子を吸着させたリガンド固定化材料。」、「疎水性部位を持つ生体物質を水溶液状態で無菌ろ過滅菌し、別に滅菌された疎水性基材に無菌的に接触し吸着させ、さらに水溶液状態で無菌ろ過滅菌されたリガンドが結合されたカチオン性高分子を無菌的に接触し吸着させることを特徴とするリガンド固定化材料の製造方法。」である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、疎水性基材に疎水性部位を持つ生体物質を吸着させ、さらにリガンドが結合されたカチオン性高分子を吸着させたリガンド固定化材料である。
【0012】
本発明で用いられる疎水性基材の形状としては、平膜状、粒子状、中空糸状、繊維状、カットファイバーなど何でもよいが、平膜状、繊維状、中空糸状が好ましく体外循環用途、血液浄化用途、細胞培養用途として使用する場合、閉鎖系で圧力損失を伴わず、血球細胞などの細胞を傷つけず循環できる利点から特に中空糸状が望ましい。また、表面積を確保する点からこれらは多孔質であることがのぞましい。多孔質として用いる場合は、透析やろ過機能を付与することができ、血液浄化用途のみならず、バイオリアクターなどの細胞培養用途として用いることができる。多孔質材料の場合は、製造条件を制御することにより孔の制御も可能である。
【0013】
本発明における疎水性基材を構成する疎水性材料としては、医療用途として用いることができれば問題なく、具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンセルロース、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリアミド、ポリスルホン系ポリマー、ゼラチン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、コラーゲン、アガロースなどの高分子化合物、ステンレス、チタン、白金などの金属、ハイドロキシアパタイト、トリカルシウムホスフェートなどが挙げられる。なかでも、加工性等の点から、高分子化合物が好ましい。
【0014】
本発明で用いられる疎水性基材は、アニオン性表面を持つ基材であることが好ましい、これは表面をアニオン性にすることにより、リガンドが結合されたカチオン性高分子を静電相互作用により容易に吸着でき、さらに疎水性部位を持つ生体物質としてアルブミンの吸着量を増大することができるためである。
【0015】
疎水性基材表面にアニオン性を付与するためには、化学反応、グラフト反応、放射線架橋、共重合、ブレンド、加熱処理、加水分解処理、酸・アルカリ処理、イオン注入、真空蒸着、コーティング、スパッタリング、プラズマ放電など材料表面にアニオン性を付与できる方法であればどのような方法を用いても良い。
【0016】
これらの方法により、疎水性基材表面にアニオン性を付与するために用いられる物質としては、硫酸、デキストラン硫酸、ヘパリン、DNA、ポリアクリル酸、ポリビニル硫酸、アクリル酸、ビニル硫酸、パラスチレンスルホン酸ナトリウムなど、アニオン性の官能基をもつ低分子や高分子物質が一般に用いられる。例えば、疎水性基材がポリスチレンからなる材料の場合は、濃硫酸で処理してやることにより、表面に硫酸基を導入でき、表面にアニオン性官能基を導入できる。また、ポリメチルメタクリレートを通常のラジカル重合によって得る際、カルボキシル基や、スルホン酸基などのアニオン性基を含有するビニルモノマーと共重合したものを、材料に成形することにより、材料表面にアニオン性を付与できる。また、アニオン性ポリマーをポリメチルメタクリレートのようなポリマーとブレンドして成形することによって材料表面にアニオン性を付与することができる。ナイロンやポリエステルにアクリル酸をグラフトすることによってもアニオン性を付与することができる。また、金属の負イオン注入によってもアニオン性を付与することができる。
【0017】
特に、疎水性基材表面にアニオン性基として硫酸基を導入する場合、リガンド(例えば免疫グロブリンG)の該基材表面への吸着を抑制し、その反面、後で述べる疎水性部位を持つ生体物質(例えば血漿タンパクのアルブミン)をより多く吸着するようになるため、結果的にリガンドが結合されたカチオン性高分子を特異的により多く吸着させることができるので、アニオン性基として硫酸基を用いることが好ましい。また、アニオン性基として硫酸基を導入することは、後で述べる外部刺激によるリガンドの脱離後に、リガンドが基材に再吸着するのを防ぐことができるという点においても好ましい。
【0018】
また、本発明でリガンド固定化材料を作成するために、アニオン性表面を持つ基材に疎水性部位を持つ生体物質を吸着させる。これにより、基材表面の疎水性部位を生体物質でブロックすることにより、リガンドが基材へ非特異的に吸着されることを抑制することができ、また、還元剤などで基材から脱離したリガンドが再び基材に吸着されることを防ぐことができる。
【0019】
本発明に用いられる疎水性部位を持つ生体物質としては、フィブリノーゲン、アルブミン、グロブリンなどがあるが、特にアルブミンを用いることが好ましい。アルブミンは疎水性基材、特に硫酸基などのアニオン性表面を持つ疎水性基材に容易に吸着する。ここでいうアルブミンとは動植物の細胞や体液中の一連の可溶性タンパク質を指し、好ましく用いられるアルブミンの分子量は100以上5万以下である。このようなアルブミンとして、ヒトやウシなどの血清アルブミン、オボアルブミン、ラクトアルブミン、ロイコシン、レグメリン、リシンなどがあげられるがこれらに限定されない。これらは精製されているものを用いても良いし、血清や血漿、ミルクなどのアルブミンを含む混合物を用いても良い。特に、医療用途に用いる場合は自己の血漿や血清を用いることが望ましい。
【0020】
本発明において、アルブミンなどの疎水性部位を持つ生体物質を疎水性基材に吸着させるには、疎水性部位を持つ生体物質を含む溶液を疎水性基材の表面に接触させるだけでよい。
【0021】
疎水性の基材には、抗体などの疎水性部位を持つリガンドが非特異的に吸着されやすく、このことにより、リガンドを基材に固定化する際の固定化量や基材から放出する際の放出量の制御ができず問題となることがある。しかし、アルブミンなどの疎水性部位を持つ生体物質を疎水性基材に予め吸着させておきブロッキングしておけば、疎水性基材にリガンドが非特異的に吸着されることを抑制することができる。
【0022】
本発明では、以上のようにアニオン性表面を持つ疎水性基材に疎水性部位を持つ生体物質を吸着させた後、リガンドが結合されたカチオン性高分子を吸着させて、リガンド固定化材料を作製する。この際、リガンドを結合したカチオン性高分子の溶液を基材と混合するだけで基材に簡単にリガンドが結合されたカチオン性高分子を吸着させることができる。疎水性基材の表面がアニオン性であれば、リガンドが結合されたカチオン性高分子は静電相互作用により基材に良く吸着することができる。また、疎水性部位をもつ生体物質、例えばアルブミンを基材に吸着しておけば、このアルブミンにカチオン性高分子が吸着することにより、基材とリガンドが結合されたカチオン性高分子との固定化能が増大する。カチオン性高分子とアルブミンとは水溶液中での相互作用によりコンプレックスを形成するため、アルブミンを吸着させた疎水性基材はカチオン性高分子をより多く吸着する。なお、このとき、疎水性基材表面のアニオン性基として硫酸基を導入すると、リガンドが基材表面に吸着されるのを抑制することができるので、後で述べる外部刺激によるリガンドの脱離後にリガンドが基材表面に再吸着するのをある程度防ぐことができる。
【0023】
本発明に用いられるカチオン性高分子は窒素原子を含有するポリマー、すなわち1級、2級、3級アミノ基、4級アンモニウム塩のいずれか1種以上を有するアミノ基含有ポリマー、イミノ基含有ポリマー、アミド基含有ポリマーなどが好ましく用いられる。これらのポリマーを構成する原料成分の共重合体またはノニオン、アニオン性化合物との共重合体なども好ましく使用される。ここで、該カチオン性ポリマーは直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。また、分子量は好ましくは600以上1000万以下である。
【0024】
アミノ基含有ポリマーの例としては、ポリアルキレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ジアルキルアミノアルキルデキストラン、ポリヒスチジン、ポリアルギニン、キトサン、ポリオルニチン、ポリリジン、アジリジン(エチレンイミン)化合物を有するポリマー、およびそれらに置換基の導入されたもの、およびこれらを構成するモノマー単位からなる共重合体などが挙げられる。
【0025】
カチオン性高分子の中でも毒性の低さ、入手のしやすさ、取り扱いのしやすさ、アルブミンとの相互作用のしやすさなどから、直鎖状、分岐状のポリエチレンイミンやジエチルアミノエチルデキストランが特に好適に用いられる。
【0026】
さらに、ポリエチレンイミン誘導体として、ポリエチレンイミンをアルキル化、カルボキシル化、フェニル化、リン酸化、スルホン化など、所望の割合で誘導体化したものを用いることもできる。
【0027】
リガンドとカチオン性高分子を結合させるには、アミド結合、エステル結合、エーテル結合、ジスルフィド結合など様々な結合が利用できるが、結合の形成が簡単で、かつ外部刺激で簡単に切り離せるジスルフィド結合を利用してリガンドとカチオン性高分子を結合させることが好ましい。外部刺激によりジスルフィド結合が分解し、リガンドが基材から脱離することにより、リガンドで補捉した物質や細胞などを基材から放出、回収することができる。
【0028】
このようなジスルフィド結合を介してリガンドをカチオン性高分子に結合させるにはピリジルジスルフィド基を導入したカチオン性高分子とメルカプト基を持つリガンドの反応させることによって達成される。
【0029】
この反応に利用するために、カチオン性高分子にピリジルジスルフィド基を導入するためには、通常、カチオン性高分子が持つアミノ基と反応する活性基とピリジルジスルフィド基を持つ架橋剤を利用することが好ましい。このような架橋剤としては、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネート、スクシンイミジル6−[3’−(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノエートや水溶性のスルホスクシンイミジル6−[3’−(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノエートなどがあげられる。水に不溶性の架橋剤を用いる場合、ジメチルスルホキシドやメタノールなどの可溶性の有機溶媒に溶解後、カチオン性高分子を溶解した水系の反応液に添加することにより利用できる。カチオン性高分子へのピリジルジスルフィド基の導入率はカチオン性高分子1分子あたり1個以上であることが必要であるが、導入率を上げるためにピリジルジスルフィド化剤の仕込量を上げると失活したり、凝集したりするおそれがある。このため、仕込量はカチオン性高分子1モルあたり10モル以下であることが望ましい。
【0030】
また、カチオン性高分子がメルカプト基を持つ場合には、このメルカプト基に2,2’−ジチオジピリジン、4,4’―ジチオピリジンを反応させることによりピリジルジスルフィド基を導入できる。
【0031】
また、メルカプト基を持つリガンドについては、そのリガンド上にメルカプト基の数を十分に有する場合、そのまま反応に使用することも可能だが、リガンドが生理活性物質の場合、一般的に生理活性物質上のメルカプト基の数は少なく、反応性に乏しいため、生理活性物質にメルカプト基を導入する必要がある。この場合、生理活性物質にメルカプト基を導入する方法として、メルカプト基と他の反応性基を併せ持つ化合物を生理活性物質に反応させる方法やN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネートなどの架橋剤を利用してピリジルジスルフィド基を生理活性物質に導入した後、このピリジルジスルフィド基を還元してメルカプト基を導入する方法、あるいは、リガンドがタンパク質の場合には、還元剤によりタンパク質分子内のジスルフィド結合を還元してメルカプト基を生成する方法などがあげられる。
【0032】
メルカプト基と他の反応性基を併せ持つ化合物としては、2−メルカプトエタノール、6−メルカプト−1−ヘキサノール、メルカプトウンデカノール、2−アミノエタンチオール、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプトこはく酸、メルカプトウンデカン酸、メルカプト安息香酸、2−メルカプトスルホン酸、メルカプトフェノール、システインなどがあげられる、これら化合物のメルカプト基以外の反応性基を利用してリガンドに反応させれば、メルカプト基をリガンドに導入することができる。また、このような化合物以外にも2−イミノチオランを使用すれば、これがリガンドのアミノ基と反応して、リガンドにメルカプト基を簡単に導入することができる。
【0033】
また、上記のピリジルジスルフィド基やタンパク質分子内のジスルフィド基を還元する際に使用する還元剤としては、ジチオスレイトール、2−メルカプトエタノール、システイン、メルカプトエチルアミン、還元型グルタチオンなどがあげられる。
【0034】
また、リガンドが抗体の場合、抗体にピリジルジスルフィド基を導入して、還元する場合には、抗体自体の還元による失活を防ぐために、酢酸緩衝液中などで還元することにより抗体自身の還元を抑えることができる。
【0035】
また、抗体をペプシンで消化切断した後、還元剤で還元し、プロテインGカラムやゲルろ過カラムで精製することによって、抗体の可変部位にメルカプト基を導入したフラグメントを得ることも可能である。
【0036】
リガンドとカチオン性高分子をジスルフィド結合を介して結合させるには、上記の方法でピリジルジスルフィド基を導入したカチオン性高分子を含む溶液とメルカプト基を持つリガンドを含む溶液をそれぞれ作成し、これらを常温で混合して反応させることにより、容易にジスルフィド結合を介してリガンドをカチオン性高分子に結合させることができる。リガンドを含む溶液の溶媒としては、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液、炭酸緩衝液、グリシン−塩酸緩衝液、クエン酸緩衝液、HEPES緩衝液、MOPS緩衝液、ハンクス緩衝液など各種緩衝液が好ましく、緩衝液にジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノールなどの有機溶媒を添加しても良い。
【0037】
また、本発明で使用するリガンドはターゲット物質と相互作用をもつものであれば、合成物質でも天然物質でもよいが、特異性の点から天然物質であることが望ましい。天然物質は、a)細胞や病因物質などのターゲット物質と相互作用をもつものや、b)抗血栓性を有するもの、c)細胞を活性化するもの、d)アポトーシスを誘導するもの、e)増殖、分化因子、f)サイトカイン、g)接着因子などが好適に用いられる。
【0038】
a)細胞や病因物質などのターゲット物質と相互作用をもつもの:
細胞や病因物質などのターゲット物質と相互作用をもつものの場合、特異性の点から抗体およびレセプターを好ましく用いることができる。用いる抗体としては、例えば、抗CD1a抗体、抗CD1b抗体、抗CD1c抗体、抗CD2抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗CD10抗体、抗CD11a抗体、抗CD11b抗体、抗CD11c抗体、抗CDw12抗体、抗CD13抗体、抗CD14抗体、抗CD15抗体、抗CD16a抗体、抗CD16b抗体、抗CD18抗体、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD23抗体、抗CD24抗体、抗CD25抗体、抗CD26抗体、抗CD27抗体、抗CD28抗体、抗CD30抗体、抗CD31抗体、抗CD32抗体、抗CD33抗体、抗CD34抗体、抗CD38抗体、抗CD40抗体、抗CD42a抗体、抗CD44抗体、抗CD45抗体、抗CD45RA抗体、抗CD45RO抗体、抗CD49d抗体、抗CD50抗体、抗CD54抗体、抗CD56抗体、抗CD57抗体、抗CD58抗体、抗CD61抗体、抗CD62L抗体、抗CD62P抗体、抗CD66抗体、抗CD69抗体、抗CD70抗体、抗CD71抗体、抗CD80抗体、抗CD81抗体、抗CD86抗体、抗CD95抗体、抗CD102抗体、抗CD105抗体、抗CD106抗体、抗CD109抗体、抗CDw119抗体、抗CD120a抗体、抗CD120b抗体、抗CD121a抗体、抗CDw121b抗体、抗CD122抗体、抗CD123抗体、抗CD126抗体、抗CDw128a抗体、抗CD130抗体、抗CDw131抗体、抗CD132抗体、抗CD133抗体、抗CD134抗体、抗CD105抗体、抗CD138抗体、CD152抗体、抗CD154抗体、抗CD199抗体、抗低比重リポ蛋白質(LDL)抗体、抗酸化LDL抗体、抗β2ミクログロブリン抗体、抗CCR1抗体、抗CCR2抗体、抗CCR3抗体、抗CCR4抗体、抗CCR5抗体、抗CCR7抗体、抗CXCR3抗体、抗CX3CR1抗体、抗CXCR5抗体、抗CXCR1抗体などが挙げられるが、これらに限定されない。また、レセプターとしては例えば、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR7、CXCR1、CXCR3、CX3CR1、CXCR5等のサイトカインレセプターやFcγ、Fcε等のイムノグロブリンレセプター、RAGE、LDLレセプター等のスカベンジャ−レセプター等、T細胞レセプターや主要組織適合性抗原等の細胞認識レセプター等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの抗体やレセプターは、単独で基材に固定化しても良いし、複数の抗体やレセプターを組み合わせても良い。抗体は、アフィニティーの高さからモノクローナル抗体が好ましい。
【0039】
これら抗体やレセプターは目的によって種々選定することができ、例えば本発明の方法で作製した材料を血液中の有用物質や病因物質を特異的に除去、回収する用途に使用する場合には、細胞、無機物、タンパク質、DNA、脂質、糖、ウィルスなどがターゲットとして挙げられる。例えば、抗CD2抗体を用いればT細胞およびNK細胞を分離でき、抗CD3抗体を用いればT細胞を分離でき、抗CD4抗体を用いればヘルパーT細胞を分離でき、抗CD8抗体を用いればサイトトキシックT細胞を分離でき、抗CD11a抗体を用いれば白血球を分離でき、抗CD11b抗体を用いれば単球を分離でき、抗CD14抗体を用いれば単球やマクロファージを分離でき、抗CD15抗体を用いれば顆粒球やミエロイド細胞を分離でき、抗CD16抗体を用いれば好中球あるいは休止期NK細胞を分離でき、抗CD19抗体を用いればB細胞を分離でき、抗CD22抗体を用いればB細胞を分離でき、抗CD27抗体を用いればナイーブB細胞やメモリーB細胞を分離でき、抗CD30抗体を用いれば活性化B細胞および活性化T細胞を分離でき、抗CD33抗体を用いれば単球、顆粒球およびミエロイド細胞を分離でき、抗CD34抗体を用いれば造血幹細胞を分離でき、抗CD45抗体を用いれば白血球を分離でき、抗CD56抗体を用いればNK細胞を分離でき、抗CD61抗体を用いれば巨核球及びその前駆細胞を分離でき、抗CD66抗体を用いれば顆粒球を分離でき、抗CD69抗体を用いれば活性化T細胞や活性化B細胞やNK細胞を分離でき、抗CD71抗体を用いれば赤芽球や活性化されたリンパ芽球を分離でき、抗CD105抗体を用いれば内皮細胞、抗CD133抗体を用いれば神経幹細胞を分離できる。
【0040】
b)抗血栓性を有するもの:
リガンドにおいて、抗血栓性を有するものとしては、ヘパリン、トロンモボジュリン、ヒルジンなどがあげられる。これらを材料に固定化したものは、血液浄化用カラムやカテーテル、人工血管などに利用できる。
【0041】
c)細胞を活性化するもの:
細胞を活性化するものとして、インターフェロン、インターロイキン、抗CD3抗体やT細胞レセプター、主要組織適合性抗原等の細胞認識レセプター、スーパー抗原、フィトヘマグルチニン、リポポリサッカライド、コンナカバリンA、ピーナッツアグルチニン等が挙げられる。例えば、材料に抗CD3抗体を固定化したものを用いてリンパ球を培養すれば、培養によりリンパ球が活性化され、培養されたリンパ球をがん免疫療法に用いることができる。
【0042】
d)アポトーシスを誘導するもの:
アポトーシスを誘導するものとしては、腫瘍壊死因子(TNF)、FasリガンドやCD40リガンドなどある。
【0043】
e)増殖、分化因子:
増殖、分化因子としては、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)、FGF−2、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)、オステオネクチン、アンジオポイエチン、肝細胞増殖因子(HGF)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)、神経成長因子(NGF)、白血病阻害因子(LIF)、幹細胞増殖因子(SCF)、骨形成タンパク質(BMP)インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、腫瘍壊死因子−α、腫瘍壊死因子−β、ノッチリガンド(Delta1,Delta3,Delta4,Jagged1, Jagged2)などが挙げられる。また、同じ作用をもつ上記タンパクの遺伝子をもちいることもできる。
【0044】
f)サイトカイン:
サイトカインとして、インターロイキン−1α、インターロイキン−1β、インターロイキン−2、インターロイキン−4、インターロイキン−5、インターロイキン−6、インターロイキン−7、インターロイキン−8、インターロイキン−10、インターロイキン−11、インターロイキン−12、インターロイキン−13、インターロイキン−14、インターロイキン−15、インターロイキン−16、インターロイキン−17、インターロイキン−18、顆粒球刺激因子(G−CSF、)顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、MCP−1、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、Flk−2/Flt−3リガンド(FL)などが挙げられる。
【0045】
がん細胞を認識するものとして、マンノース6リン酸などが挙げられ、癌患者の血中に存在するガン細胞を除去し、転移を抑制のための血液浄化カラムに用いることができる。
【0046】
g)接着因子:
接着因子として、コラーゲン、プロテオグリカン、フィブロネクチン、ラミニン、カテニンやカドヘリン等のカドヘリンファミリー、I−CAMなどのIgスーパーファミリー、セレクチンファミリー、シアロムチンファミリーなどがあげられる。
【0047】
以上用いる天然物質は市販の天然物質や医薬品を用いても良いし、抗体の場合には、ハイブリドーマから作製してもよい。
【0048】
疎水性部位を持つ生体物質の水溶液を無菌ろ過滅菌し、別に滅菌された疎水性基材に無菌的に接触させて疎水性部位を持つ生体物質を吸着させ、さらに無菌ろ過滅菌されたリガンドが結合されたカチオン性高分子の水溶液を無菌的に接触させて吸着させることにより、容易に体外循環用のリガンド固定化材料を製造することができる。
【0049】
疎水性部位を持つ生体物質やリガンドが結合されたカチオン性高分子は医薬品と同様、無菌ろ過により滅菌できる。方法は、疎水性部位を持つ生体物質やリガンドが結合されたカチオン性高分子を生理食塩水、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液、炭酸緩衝液、グリシン−塩酸緩衝液、クエン酸緩衝液、HEPES緩衝液、MOPS緩衝液、ハンクス緩衝液などの各種緩衝液やDMEM培地、MEM培地、αMEM培地、RPMI1640培地、F16培地、DF培地などの各種培地、これら緩衝液や培地にジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノールなどの有機溶媒を添加した溶媒に溶解し、メンブレンフィルターに通過させてろ過滅菌する。メンブレンはニトロセルロース製、セルロース混合エステル製、PVDF製、PTFE製、ポリエーテルスルホン製などのメンブレンを使用することができ、メンブレンの孔径が0.45μm以下、より好ましくは0.22μm以下のメンブレンを使用する。水溶液が数10mlまでの少量場合は、シリンジフィルターを使用し、水溶液が100ml以上の大量となるときは、陰圧、陽圧でろ過を行うボトルトップタイプフィルターやステンレス製のフィルターホルダーを利用することが好ましい。無菌ろ過滅菌された疎水性部位を持つ生体物質やリガンドが結合されたカチオン性高分子はそのまま水溶液の状態で保存してもよいし、滅菌後、凍結乾燥した状態で保存しても良い。凍結乾燥されたものであれば、疎水性基材に接触させる前に滅菌済みの生理食塩水、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液、炭酸緩衝液、グリシン−塩酸緩衝液、クエン酸緩衝液、HEPES緩衝液、MOPS緩衝液、ハンクス緩衝液など各種緩衝液やDMEM培地、MEM培地、αMEM培地、RPMI1640培地、F16培地、DF培地などの各種培地、これら緩衝液や培地にジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノールなどの有機溶媒を添加した溶媒に再溶解してから用いられる。
【0050】
上記体外循環用のリガンド固定化材料の製造方法において、疎水性基材は放射線滅菌、エチレンオキシドガス滅菌、オートクレーブ滅菌、乾熱滅菌、煮沸滅菌、エタノールやグルタルアルデヒドによる化学薬品による滅菌などが医療用材料の滅菌において使用できるが、基材の性状を保つためにガンマ線や紫外線を用いた放射線滅菌を用いることが好ましい。
【0051】
疎水性基材に上記の無菌ろ過滅菌した疎水性部位を持つ生体物質やリガンドが結合されたカチオン性高分子の水溶液を無菌的に接触させる操作は、操作をクリーンベンチ内あるいは滅菌した器具を用いた閉鎖系内で行い無菌操作する。この操作の際、疎水性基材に疎水性部位を持つ生体物質やリガンドが結合されたカチオン性高分子を効率よく吸着させるには、ろ過滅菌したこれらの水溶液中に疎水性基材を浸漬し、攪拌機や振とう機を用いて水溶液を攪拌、振とうする、あるいは、疎水性基材をモジュールに充填してこれらの水溶液を通液し、環流するなどの方法を採ることにより達成できる。また、疎水性部位を持つ生体物質やリガンドが結合されたカチオン性高分子をさらに効率よく吸着させるために、加温雰囲気下でこれらの操作を行っても良いし、逆に、リガンドなどの熱変性を防ぐために低温条件下で操作行っても良い。このため、これらの操作を行う望ましい温度条件は4℃以上37℃以下で行うことが好ましい。
【0052】
本発明のリガンド固定化材料を利用すれば、上記で示したようなターゲットとなる有用物質や病因物質をリガンドにより捕捉できる。さらに、リガンドとカチオン性高分子をジスルフィド結合を介して結合していれば、還元剤による外部刺激によりリガンドを材料から脱離させることができ、リガンドにより捕捉した有用物質や病因物質を回収する事が可能である。また、ターゲット物質を捕捉あるいは回収する際に使用する溶媒として、様々なpH値のリン酸、酢酸、クエン酸などの緩衝液をもちいることができ、さらに緩衝液の中にウシ血清アルブミンや抗体などのタンパク質あるいはカチオン性、アニオン性などのポリマーなどを含有していても良い。リガンドを材料から脱離させる際の還元剤としては、ジチオスレイトール、2−メルカプトエタノール、システイン、メルカプトエチルアミン、還元型グルタチオンなどがあげられる。
【0053】
血球系の細胞を回収する際は全血と作用させてもよいし、血漿分画や単核球分画などにした後、作用させてもよい。
【0054】
以上のような方法で、本発明の材料により回収した有用物質、病因物質を分析に用いることが可能である。また、細胞の場合はそれを培養し、分析や治療などに利用できる。例えば、リガンドとして抗CD4抗体を使用し、このリガンドを固定化した本発明の材料に血液を通してCD4陽性のT細胞を捕捉し、ジチオスレイトールなどの還元剤で生理活性物質を脱離することにより、捕捉した細胞を大量に回収し、この細胞に様々な刺激を加えて活性化させ体内に戻すことにより、癌、アレルギー、感染症、臓器移植、あるいは自己免疫疾患の治療やワクチンとしてもちいることができる。また、材料上にCD4陽性細胞を補足したまま培養し、CD4陽性細胞の大量培養を行うこともできる。
【0055】
また、例えば、リガンドとして抗CD34抗体を使用し、このリガンドを固定化した本発明の材料に臍帯血を通して、造血幹細胞を捕捉し、ジチオスレイトールなどの還元剤で生理活性物質を脱離することにより、造血幹細胞を大量に回収し、回収した造血幹細胞を培養して輸血医療に用いたり、様々な組織幹細胞に分化させることにより、肝疾患や神経疾患、血管傷害などの細胞療法に用いることができる。
【0056】
また、例えば、リガンドとして抗CD133抗体を使用し、このリガンドを固定化した本発明の材料に臍帯血を通して、神経幹細胞を捕捉し、ジチオスレイトールなどの還元剤で生理活性物質を脱離することにより、神経幹細胞を大量に回収し、回収した神経幹細胞を培養して神経幹細胞移植に用いたり、様々な神経細胞に分化させることにより、パーキンソン病やアルツハイマー病など神経疾患、脳梗塞により壊死した神経細胞の修復などの細胞療法に用いることができる。
【0057】
【実施例】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
1.メルカプト基を持つヒト免疫グロブリン誘導体の作製
NaClを0.15mM含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)に5mg/mlに溶解した精製ヒト免疫グロブリンG(シグマ社製)にN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネート(以下、SPDPと略す)を20mMに溶解したジメチルスルホキシド溶液をヒト免疫グロブリンG1モルに対して10モル添加し、室温で30分反応させた後、PD−10カラム(ファルマシア社製)で高分子量分画に精製した。ヒト免疫グロブリンG1モルあたりのSPDP導入量は4.2モルであった。再度PD−10カラムを用いて酢酸緩衝液(0.5M酢酸、0.5M酢酸ナトリウム、pH4.5)に置換し、合成したSPDP化ヒト免疫グロブリンを25mMのジチオスレイトール(以下、DTTと略す)を含む酢酸緩衝液中で還元反応を行い、メルカプト基を有するヒト免疫グロブリン誘導体(以下、HS−IgGと略す)を合成した 。
【0059】
2.ピリジルジスルフィド基を持つポリエチルイミンの作製
150mMのNaCl、1mMのEDTAを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)にポリエチレンイミン(数平均分子量10000、以下PEI)を5mg/mlとなるように溶解した。この溶液3mlに、N−スクシンイミジル 3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネート(ピアース社製、以下SPDP)を20mMになるように溶解したジメチルスルホキシド溶液を0.5ml添加し、室温で30時間撹拌した。反応させた溶液をPD−10カラム(ファルマシア社製)で高分子量分画に精製し、ピリジルジスルフィド基を持つポリエチルイミン(以下、SDPD−PEIと略す)を作製した。
【0060】
3.ジスルフィド基を介してヒト免疫グロブリンGを結合させたポリエチルイミンの合成
1.で得られたSH−IgGを0.2mg/ml含むリン酸緩衝液と、2.で得られたSDPDP−PEIを2.1mg/ml含むリン酸緩衝液をモル比で1:1になるように混合し、室温で14時間反応させ、ヒト免疫グロブリンGをポリエチルイミンにジスルフィド結合を介して結合させた。結合は反応液を高速液体クロマトグラフィー(以下HPLC、測定条件は、カラム:東ソーTSKgelG3000SWXL、溶出液:0.5M酢酸バッファー、流速:0.5ml/min)を用いて分析し、高分子量側にシフトすることにより確認した。さらに、ヒト免疫グロブリンG−ポリエチレンイミン複合体の溶液にDTTを25mMとなるように添加して複合体を還元後再びHPLC測定すると、もとのヒト免疫グロブリンGとポリエチレンイミンのピークになることが確認され、複合体が分離していることがわかった。得られたジスルフィド結合を介して複合化されたPEI化抗体は無菌ろ過滅菌により滅菌した。
【0061】
4.表面アニオン性繊維の製造方法
50重量比の海成分(46重量比のポリスチレンと4重量比のポリプロピレンの混合物)と50重量比の島成分(ポリプロピレン)とからなる海島型複合繊維(厚さ:2.6デニール、島の数16)を溶融紡糸した。その繊維を3mmに切断した。98%硫酸1120ml中に95%PFA9.9gを投入した。その中に3mmに切断した繊維50gを投入し、5時間反応を行った。イオン交換水、温イオン交換水で洗浄し、表面アニオン性繊維を得た。この繊維に10kGyのガンマ線を照射することにより滅菌を行った。
【0062】
5.実施例1
150mMのNaCl、1mMのEDTAを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)1mlにウシ血清由来アルブミン(生化学工業株式会社製)を5mg/mlとなるように溶解し、ろ過滅菌により滅菌した。この溶液1mlに4.で作製した繊維をクリーンベンチ内で浸漬、振とうし、室温で30分反応させた。反応後の反応液に含まれるウシ血清由来アルブミンの濃度の吸光度(280nm)を測定したところ、吸光度が減少し、繊維にアルブミンが吸着していることが確認できた。このアルブミン吸着繊維を3.で合成したジスルフィド基を介してヒト免疫グロブリンGを複合化したポリエチレンイミンを0.2mg/ml含むリン酸緩衝液に室温で2時間浸漬、振とうさせた。2時間後のリン酸緩衝液に含まれるヒト免疫グロブリンGの吸光度(280nm)を測定したところ、吸光度が減少し、ヒト免疫グロブリンG−PEI複合体がアルブミン吸着繊維に固定されていることが確認された。また、この繊維を25mMのジチオスレイトールを含むリン酸緩衝液で還元反応し、脱離されたヒト免疫グロブリン量をHPLCおよび吸光度で測定したところ、還元処理により固定したヒト免疫グロブリンG90%以上がアルブミン固定化繊維から溶液中へ脱離された。
【0063】
6.比較例1
実施例1において、繊維にウシ血清由来アルブミンを吸着させずに、ヒト免疫グロブリンGを複合化したポリエチレンイミンを0.2mg/ml含むリン酸緩衝液に室温で2時間浸漬させた。2時間後のリン酸緩衝液に含まれるヒト免疫グロブリンGの吸光度(280nm)を測定したところ、吸光度が減少したが、この繊維を25mMのジチオスレイトールを含むリン酸緩衝液で還元反応し、脱離されたヒト免疫グロブリン量をHPLCおよび吸光度で測定したところ、ヒト免疫グロブリンGは繊維から溶液中へ脱離されなかった。
【0064】
7.硫酸基をもつ平膜の作製
ポリスルホン(テイジンアモコ社製”ユーデル”(登録商標)P−3500)18重量部、ポリビニルピロリドン(BASF社製”K30”(登録商標))9重量部をN,N−ジメチルアセトアミド72重量部、水1重量部に加え、90℃、14時間加熱溶解した。この溶液を0.1mmスペーサー付きのガラス板に塗布し、ドクターブレードにて溶液を引き延ばしたものを水中にいれて、凝固させ、ポリスルホン/ポリビニルピロリドンブレンドからなる平膜状の材料を作製した。上記のポリスルホン/ポリビニルピロリドンブレンド材料を十分水洗した後、1wt%のデキストラン硫酸(分子量50万、和光純薬製)水溶液に浸漬して、25kGyにてγ線照射して、表面に硫酸基をもつ平膜を作製した(滅菌を兼ねる)。
8.ヒト血漿の分離
ヒト末梢血(ヘパリン含有)を15mlチューブに6ml採血し、2000回転で20分遠心し、薄黄色の血漿層を回収した。この血漿をPSt製の細胞培養用のフラスコ中で37℃で30分インキュベートして、血小板を吸着させて除去した後、57℃の温浴で30分処理して非働化を行った。
【0065】
9.実施例2
8.で作製したヒト血漿を10%含むリン酸緩衝液をろ過滅菌し、クリーンベンチ内でこの溶液1mlに、7.で作製したアニオン性平膜浸漬、振とうし、室温で30分反応させアルブミンを含む血漿成分を吸着させた。この平膜を3.で合成したジスルフィド基を介してヒト免疫グロブリンGを複合化したポリエチレンイミンを0.2mg/ml含むリン酸緩衝液に室温で2時間浸漬、振とうさせ、2時間後のリン酸緩衝液に含まれるヒト免疫グロブリンGの吸光度(280nm)を測定したところ、反応液の吸光度が減少し、ヒト免疫グロブリンGとポリエチレンイミンの複合体が平膜に固定されていることが確認された。続いて、この平膜を25mMのジチオスレイトールを含むリン酸緩衝液で還元反応し、脱離されたヒト免疫グロブリン量をHPLCおよび吸光度で測定したところ、還元処理により7.6μg/cm2ヒト免疫グロブリンGがアニオン性平膜から溶液中へ脱離されることが確認された。
【0066】
10.比較例2
実施例2において、平膜にヒト血漿成分を吸着させずに、ヒト免疫グロブリンGとポリエチレンイミンの複合体を0.2mg/ml含むリン酸緩衝液に室温で2時間浸漬させた。2時間後のリン酸緩衝液に含まれるヒト免疫グロブリンGの吸光度(280nm)を測定したところ、吸光度が減少していたが、この平膜を25mMのジチオスレイトールを含むリン酸緩衝液で還元反応し、脱離されたヒト免疫グロブリン量をHPLCおよび吸光度で測定したところ、ヒト免疫グロブリンGの平膜から溶液中への脱離は確認できなかった。
【0067】
【発明の効果】
本発明により、基材に対する生理活性物質(リガンド)の非特異的吸着を抑制することができ、リガンド脱離後の再吸着を防ぐことができる。また、体外循環用の材料として滅菌に関わる問題を解決したリガンド固定化材料を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、血液中の有用物質あるいは病因物質を効率よく除去回収する、あるいは細胞分離、濃縮するための材料およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、リガンド、特に抗体を用いて、抗体と相互作用する特定の細胞を選択的に分離し、研究用・医療用に利用する試みがなされている。このような特定の細胞を分離回収、利用する技術として、例えばフローサイトメトリーによる方法や磁気ビーズ法などが提案されている(例えば、非特許文献1参照)が、いずれの方法も少量の細胞を対象としており、さらに、細胞と標識抗体とを反応させた後、分離作業をするという非常に煩雑な操作が必要であり、特定の細胞を大量に回収する際は、時間、コストがかかることが問題となっている。
【0003】
そこで、近年では特定の細胞を簡単、大量に分離・回収するため、抗体を固定化した材料を担体として用い、ここに血液細胞などの細胞群を流すことにより、抗体と相互作用する特定の細胞だけを除去したり、回収したりする技術が検討されている。例えば、ヒト表面抗原を認識する抗体を不織布に固定化し、特定の血球成分を除去する技術(特許文献1参照)や還元剤により切断可能なジスルフィド結合を介して、リガンドを材料に固定化する方法も検討されている(特許文献2参照)。しかし、これらの検討技術では抗体などのリガンドを基材に固定化する際に有機合成反応の手法を用いている。医療用途製品としてこれらの材料を利用する場合、製品を滅菌する必要があり、抗体などのリガンドは放射線や熱による滅菌により失活し、その機能を失ってしまうため、有機合成反応により抗体などの生理活性物質を固定する手法で医療用具を製造する場合は、製造プロセスをすべて無菌状態で製造する必要があり、この場合莫大な製造コストがかかることが問題である。
【0004】
また、一般に基材上に抗体などのリガンドを接触させると、基材にリガンドが非特異的に吸着されてしまうため、リガンドを基材に固定化する際の固定化量や基材から放出する際の放出量の制御ができず、これが問題となることがある。例えば、非特許文献2に記載された技術では還元剤によりジスルフィド結合を切断して、特定の細胞を捕捉したリガンドを放出させることができるが、放出されたリガンドが基材に再吸着してしまい、結果的に細胞を効率良く回収できないという問題点があった。
【0005】
【非特許文献1】
ポール・T・シャープ(P.T.Sharpe),「生化学実験法13−細胞分離法−」,第1版,東京化学同人,1991年,p151〜190
【0006】
【特許文献1】
国際公開第97/027878号パンフレット
【0007】
【特許文献2】
国際公開第96/31776号パンフレット
【0008】
【非特許文献2】
H.Kiefer,Eur.J.Immunol.,5巻,1975年,p624〜627
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明では、上記従来技術の問題を解消するものであり、リガンドを材料に固定化する際の滅菌に関わる問題を解決し、かつ基材に対するリガンドの非特異的吸着を抑制することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有する。すなわち、「疎水性基材に疎水性部位を持つ生体物質を吸着させ、さらにリガンドが結合されたカチオン性高分子を吸着させたリガンド固定化材料。」、「疎水性部位を持つ生体物質を水溶液状態で無菌ろ過滅菌し、別に滅菌された疎水性基材に無菌的に接触し吸着させ、さらに水溶液状態で無菌ろ過滅菌されたリガンドが結合されたカチオン性高分子を無菌的に接触し吸着させることを特徴とするリガンド固定化材料の製造方法。」である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、疎水性基材に疎水性部位を持つ生体物質を吸着させ、さらにリガンドが結合されたカチオン性高分子を吸着させたリガンド固定化材料である。
【0012】
本発明で用いられる疎水性基材の形状としては、平膜状、粒子状、中空糸状、繊維状、カットファイバーなど何でもよいが、平膜状、繊維状、中空糸状が好ましく体外循環用途、血液浄化用途、細胞培養用途として使用する場合、閉鎖系で圧力損失を伴わず、血球細胞などの細胞を傷つけず循環できる利点から特に中空糸状が望ましい。また、表面積を確保する点からこれらは多孔質であることがのぞましい。多孔質として用いる場合は、透析やろ過機能を付与することができ、血液浄化用途のみならず、バイオリアクターなどの細胞培養用途として用いることができる。多孔質材料の場合は、製造条件を制御することにより孔の制御も可能である。
【0013】
本発明における疎水性基材を構成する疎水性材料としては、医療用途として用いることができれば問題なく、具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンセルロース、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリアミド、ポリスルホン系ポリマー、ゼラチン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、コラーゲン、アガロースなどの高分子化合物、ステンレス、チタン、白金などの金属、ハイドロキシアパタイト、トリカルシウムホスフェートなどが挙げられる。なかでも、加工性等の点から、高分子化合物が好ましい。
【0014】
本発明で用いられる疎水性基材は、アニオン性表面を持つ基材であることが好ましい、これは表面をアニオン性にすることにより、リガンドが結合されたカチオン性高分子を静電相互作用により容易に吸着でき、さらに疎水性部位を持つ生体物質としてアルブミンの吸着量を増大することができるためである。
【0015】
疎水性基材表面にアニオン性を付与するためには、化学反応、グラフト反応、放射線架橋、共重合、ブレンド、加熱処理、加水分解処理、酸・アルカリ処理、イオン注入、真空蒸着、コーティング、スパッタリング、プラズマ放電など材料表面にアニオン性を付与できる方法であればどのような方法を用いても良い。
【0016】
これらの方法により、疎水性基材表面にアニオン性を付与するために用いられる物質としては、硫酸、デキストラン硫酸、ヘパリン、DNA、ポリアクリル酸、ポリビニル硫酸、アクリル酸、ビニル硫酸、パラスチレンスルホン酸ナトリウムなど、アニオン性の官能基をもつ低分子や高分子物質が一般に用いられる。例えば、疎水性基材がポリスチレンからなる材料の場合は、濃硫酸で処理してやることにより、表面に硫酸基を導入でき、表面にアニオン性官能基を導入できる。また、ポリメチルメタクリレートを通常のラジカル重合によって得る際、カルボキシル基や、スルホン酸基などのアニオン性基を含有するビニルモノマーと共重合したものを、材料に成形することにより、材料表面にアニオン性を付与できる。また、アニオン性ポリマーをポリメチルメタクリレートのようなポリマーとブレンドして成形することによって材料表面にアニオン性を付与することができる。ナイロンやポリエステルにアクリル酸をグラフトすることによってもアニオン性を付与することができる。また、金属の負イオン注入によってもアニオン性を付与することができる。
【0017】
特に、疎水性基材表面にアニオン性基として硫酸基を導入する場合、リガンド(例えば免疫グロブリンG)の該基材表面への吸着を抑制し、その反面、後で述べる疎水性部位を持つ生体物質(例えば血漿タンパクのアルブミン)をより多く吸着するようになるため、結果的にリガンドが結合されたカチオン性高分子を特異的により多く吸着させることができるので、アニオン性基として硫酸基を用いることが好ましい。また、アニオン性基として硫酸基を導入することは、後で述べる外部刺激によるリガンドの脱離後に、リガンドが基材に再吸着するのを防ぐことができるという点においても好ましい。
【0018】
また、本発明でリガンド固定化材料を作成するために、アニオン性表面を持つ基材に疎水性部位を持つ生体物質を吸着させる。これにより、基材表面の疎水性部位を生体物質でブロックすることにより、リガンドが基材へ非特異的に吸着されることを抑制することができ、また、還元剤などで基材から脱離したリガンドが再び基材に吸着されることを防ぐことができる。
【0019】
本発明に用いられる疎水性部位を持つ生体物質としては、フィブリノーゲン、アルブミン、グロブリンなどがあるが、特にアルブミンを用いることが好ましい。アルブミンは疎水性基材、特に硫酸基などのアニオン性表面を持つ疎水性基材に容易に吸着する。ここでいうアルブミンとは動植物の細胞や体液中の一連の可溶性タンパク質を指し、好ましく用いられるアルブミンの分子量は100以上5万以下である。このようなアルブミンとして、ヒトやウシなどの血清アルブミン、オボアルブミン、ラクトアルブミン、ロイコシン、レグメリン、リシンなどがあげられるがこれらに限定されない。これらは精製されているものを用いても良いし、血清や血漿、ミルクなどのアルブミンを含む混合物を用いても良い。特に、医療用途に用いる場合は自己の血漿や血清を用いることが望ましい。
【0020】
本発明において、アルブミンなどの疎水性部位を持つ生体物質を疎水性基材に吸着させるには、疎水性部位を持つ生体物質を含む溶液を疎水性基材の表面に接触させるだけでよい。
【0021】
疎水性の基材には、抗体などの疎水性部位を持つリガンドが非特異的に吸着されやすく、このことにより、リガンドを基材に固定化する際の固定化量や基材から放出する際の放出量の制御ができず問題となることがある。しかし、アルブミンなどの疎水性部位を持つ生体物質を疎水性基材に予め吸着させておきブロッキングしておけば、疎水性基材にリガンドが非特異的に吸着されることを抑制することができる。
【0022】
本発明では、以上のようにアニオン性表面を持つ疎水性基材に疎水性部位を持つ生体物質を吸着させた後、リガンドが結合されたカチオン性高分子を吸着させて、リガンド固定化材料を作製する。この際、リガンドを結合したカチオン性高分子の溶液を基材と混合するだけで基材に簡単にリガンドが結合されたカチオン性高分子を吸着させることができる。疎水性基材の表面がアニオン性であれば、リガンドが結合されたカチオン性高分子は静電相互作用により基材に良く吸着することができる。また、疎水性部位をもつ生体物質、例えばアルブミンを基材に吸着しておけば、このアルブミンにカチオン性高分子が吸着することにより、基材とリガンドが結合されたカチオン性高分子との固定化能が増大する。カチオン性高分子とアルブミンとは水溶液中での相互作用によりコンプレックスを形成するため、アルブミンを吸着させた疎水性基材はカチオン性高分子をより多く吸着する。なお、このとき、疎水性基材表面のアニオン性基として硫酸基を導入すると、リガンドが基材表面に吸着されるのを抑制することができるので、後で述べる外部刺激によるリガンドの脱離後にリガンドが基材表面に再吸着するのをある程度防ぐことができる。
【0023】
本発明に用いられるカチオン性高分子は窒素原子を含有するポリマー、すなわち1級、2級、3級アミノ基、4級アンモニウム塩のいずれか1種以上を有するアミノ基含有ポリマー、イミノ基含有ポリマー、アミド基含有ポリマーなどが好ましく用いられる。これらのポリマーを構成する原料成分の共重合体またはノニオン、アニオン性化合物との共重合体なども好ましく使用される。ここで、該カチオン性ポリマーは直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。また、分子量は好ましくは600以上1000万以下である。
【0024】
アミノ基含有ポリマーの例としては、ポリアルキレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ジアルキルアミノアルキルデキストラン、ポリヒスチジン、ポリアルギニン、キトサン、ポリオルニチン、ポリリジン、アジリジン(エチレンイミン)化合物を有するポリマー、およびそれらに置換基の導入されたもの、およびこれらを構成するモノマー単位からなる共重合体などが挙げられる。
【0025】
カチオン性高分子の中でも毒性の低さ、入手のしやすさ、取り扱いのしやすさ、アルブミンとの相互作用のしやすさなどから、直鎖状、分岐状のポリエチレンイミンやジエチルアミノエチルデキストランが特に好適に用いられる。
【0026】
さらに、ポリエチレンイミン誘導体として、ポリエチレンイミンをアルキル化、カルボキシル化、フェニル化、リン酸化、スルホン化など、所望の割合で誘導体化したものを用いることもできる。
【0027】
リガンドとカチオン性高分子を結合させるには、アミド結合、エステル結合、エーテル結合、ジスルフィド結合など様々な結合が利用できるが、結合の形成が簡単で、かつ外部刺激で簡単に切り離せるジスルフィド結合を利用してリガンドとカチオン性高分子を結合させることが好ましい。外部刺激によりジスルフィド結合が分解し、リガンドが基材から脱離することにより、リガンドで補捉した物質や細胞などを基材から放出、回収することができる。
【0028】
このようなジスルフィド結合を介してリガンドをカチオン性高分子に結合させるにはピリジルジスルフィド基を導入したカチオン性高分子とメルカプト基を持つリガンドの反応させることによって達成される。
【0029】
この反応に利用するために、カチオン性高分子にピリジルジスルフィド基を導入するためには、通常、カチオン性高分子が持つアミノ基と反応する活性基とピリジルジスルフィド基を持つ架橋剤を利用することが好ましい。このような架橋剤としては、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネート、スクシンイミジル6−[3’−(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノエートや水溶性のスルホスクシンイミジル6−[3’−(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノエートなどがあげられる。水に不溶性の架橋剤を用いる場合、ジメチルスルホキシドやメタノールなどの可溶性の有機溶媒に溶解後、カチオン性高分子を溶解した水系の反応液に添加することにより利用できる。カチオン性高分子へのピリジルジスルフィド基の導入率はカチオン性高分子1分子あたり1個以上であることが必要であるが、導入率を上げるためにピリジルジスルフィド化剤の仕込量を上げると失活したり、凝集したりするおそれがある。このため、仕込量はカチオン性高分子1モルあたり10モル以下であることが望ましい。
【0030】
また、カチオン性高分子がメルカプト基を持つ場合には、このメルカプト基に2,2’−ジチオジピリジン、4,4’―ジチオピリジンを反応させることによりピリジルジスルフィド基を導入できる。
【0031】
また、メルカプト基を持つリガンドについては、そのリガンド上にメルカプト基の数を十分に有する場合、そのまま反応に使用することも可能だが、リガンドが生理活性物質の場合、一般的に生理活性物質上のメルカプト基の数は少なく、反応性に乏しいため、生理活性物質にメルカプト基を導入する必要がある。この場合、生理活性物質にメルカプト基を導入する方法として、メルカプト基と他の反応性基を併せ持つ化合物を生理活性物質に反応させる方法やN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネートなどの架橋剤を利用してピリジルジスルフィド基を生理活性物質に導入した後、このピリジルジスルフィド基を還元してメルカプト基を導入する方法、あるいは、リガンドがタンパク質の場合には、還元剤によりタンパク質分子内のジスルフィド結合を還元してメルカプト基を生成する方法などがあげられる。
【0032】
メルカプト基と他の反応性基を併せ持つ化合物としては、2−メルカプトエタノール、6−メルカプト−1−ヘキサノール、メルカプトウンデカノール、2−アミノエタンチオール、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプトこはく酸、メルカプトウンデカン酸、メルカプト安息香酸、2−メルカプトスルホン酸、メルカプトフェノール、システインなどがあげられる、これら化合物のメルカプト基以外の反応性基を利用してリガンドに反応させれば、メルカプト基をリガンドに導入することができる。また、このような化合物以外にも2−イミノチオランを使用すれば、これがリガンドのアミノ基と反応して、リガンドにメルカプト基を簡単に導入することができる。
【0033】
また、上記のピリジルジスルフィド基やタンパク質分子内のジスルフィド基を還元する際に使用する還元剤としては、ジチオスレイトール、2−メルカプトエタノール、システイン、メルカプトエチルアミン、還元型グルタチオンなどがあげられる。
【0034】
また、リガンドが抗体の場合、抗体にピリジルジスルフィド基を導入して、還元する場合には、抗体自体の還元による失活を防ぐために、酢酸緩衝液中などで還元することにより抗体自身の還元を抑えることができる。
【0035】
また、抗体をペプシンで消化切断した後、還元剤で還元し、プロテインGカラムやゲルろ過カラムで精製することによって、抗体の可変部位にメルカプト基を導入したフラグメントを得ることも可能である。
【0036】
リガンドとカチオン性高分子をジスルフィド結合を介して結合させるには、上記の方法でピリジルジスルフィド基を導入したカチオン性高分子を含む溶液とメルカプト基を持つリガンドを含む溶液をそれぞれ作成し、これらを常温で混合して反応させることにより、容易にジスルフィド結合を介してリガンドをカチオン性高分子に結合させることができる。リガンドを含む溶液の溶媒としては、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液、炭酸緩衝液、グリシン−塩酸緩衝液、クエン酸緩衝液、HEPES緩衝液、MOPS緩衝液、ハンクス緩衝液など各種緩衝液が好ましく、緩衝液にジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノールなどの有機溶媒を添加しても良い。
【0037】
また、本発明で使用するリガンドはターゲット物質と相互作用をもつものであれば、合成物質でも天然物質でもよいが、特異性の点から天然物質であることが望ましい。天然物質は、a)細胞や病因物質などのターゲット物質と相互作用をもつものや、b)抗血栓性を有するもの、c)細胞を活性化するもの、d)アポトーシスを誘導するもの、e)増殖、分化因子、f)サイトカイン、g)接着因子などが好適に用いられる。
【0038】
a)細胞や病因物質などのターゲット物質と相互作用をもつもの:
細胞や病因物質などのターゲット物質と相互作用をもつものの場合、特異性の点から抗体およびレセプターを好ましく用いることができる。用いる抗体としては、例えば、抗CD1a抗体、抗CD1b抗体、抗CD1c抗体、抗CD2抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗CD10抗体、抗CD11a抗体、抗CD11b抗体、抗CD11c抗体、抗CDw12抗体、抗CD13抗体、抗CD14抗体、抗CD15抗体、抗CD16a抗体、抗CD16b抗体、抗CD18抗体、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD23抗体、抗CD24抗体、抗CD25抗体、抗CD26抗体、抗CD27抗体、抗CD28抗体、抗CD30抗体、抗CD31抗体、抗CD32抗体、抗CD33抗体、抗CD34抗体、抗CD38抗体、抗CD40抗体、抗CD42a抗体、抗CD44抗体、抗CD45抗体、抗CD45RA抗体、抗CD45RO抗体、抗CD49d抗体、抗CD50抗体、抗CD54抗体、抗CD56抗体、抗CD57抗体、抗CD58抗体、抗CD61抗体、抗CD62L抗体、抗CD62P抗体、抗CD66抗体、抗CD69抗体、抗CD70抗体、抗CD71抗体、抗CD80抗体、抗CD81抗体、抗CD86抗体、抗CD95抗体、抗CD102抗体、抗CD105抗体、抗CD106抗体、抗CD109抗体、抗CDw119抗体、抗CD120a抗体、抗CD120b抗体、抗CD121a抗体、抗CDw121b抗体、抗CD122抗体、抗CD123抗体、抗CD126抗体、抗CDw128a抗体、抗CD130抗体、抗CDw131抗体、抗CD132抗体、抗CD133抗体、抗CD134抗体、抗CD105抗体、抗CD138抗体、CD152抗体、抗CD154抗体、抗CD199抗体、抗低比重リポ蛋白質(LDL)抗体、抗酸化LDL抗体、抗β2ミクログロブリン抗体、抗CCR1抗体、抗CCR2抗体、抗CCR3抗体、抗CCR4抗体、抗CCR5抗体、抗CCR7抗体、抗CXCR3抗体、抗CX3CR1抗体、抗CXCR5抗体、抗CXCR1抗体などが挙げられるが、これらに限定されない。また、レセプターとしては例えば、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR7、CXCR1、CXCR3、CX3CR1、CXCR5等のサイトカインレセプターやFcγ、Fcε等のイムノグロブリンレセプター、RAGE、LDLレセプター等のスカベンジャ−レセプター等、T細胞レセプターや主要組織適合性抗原等の細胞認識レセプター等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの抗体やレセプターは、単独で基材に固定化しても良いし、複数の抗体やレセプターを組み合わせても良い。抗体は、アフィニティーの高さからモノクローナル抗体が好ましい。
【0039】
これら抗体やレセプターは目的によって種々選定することができ、例えば本発明の方法で作製した材料を血液中の有用物質や病因物質を特異的に除去、回収する用途に使用する場合には、細胞、無機物、タンパク質、DNA、脂質、糖、ウィルスなどがターゲットとして挙げられる。例えば、抗CD2抗体を用いればT細胞およびNK細胞を分離でき、抗CD3抗体を用いればT細胞を分離でき、抗CD4抗体を用いればヘルパーT細胞を分離でき、抗CD8抗体を用いればサイトトキシックT細胞を分離でき、抗CD11a抗体を用いれば白血球を分離でき、抗CD11b抗体を用いれば単球を分離でき、抗CD14抗体を用いれば単球やマクロファージを分離でき、抗CD15抗体を用いれば顆粒球やミエロイド細胞を分離でき、抗CD16抗体を用いれば好中球あるいは休止期NK細胞を分離でき、抗CD19抗体を用いればB細胞を分離でき、抗CD22抗体を用いればB細胞を分離でき、抗CD27抗体を用いればナイーブB細胞やメモリーB細胞を分離でき、抗CD30抗体を用いれば活性化B細胞および活性化T細胞を分離でき、抗CD33抗体を用いれば単球、顆粒球およびミエロイド細胞を分離でき、抗CD34抗体を用いれば造血幹細胞を分離でき、抗CD45抗体を用いれば白血球を分離でき、抗CD56抗体を用いればNK細胞を分離でき、抗CD61抗体を用いれば巨核球及びその前駆細胞を分離でき、抗CD66抗体を用いれば顆粒球を分離でき、抗CD69抗体を用いれば活性化T細胞や活性化B細胞やNK細胞を分離でき、抗CD71抗体を用いれば赤芽球や活性化されたリンパ芽球を分離でき、抗CD105抗体を用いれば内皮細胞、抗CD133抗体を用いれば神経幹細胞を分離できる。
【0040】
b)抗血栓性を有するもの:
リガンドにおいて、抗血栓性を有するものとしては、ヘパリン、トロンモボジュリン、ヒルジンなどがあげられる。これらを材料に固定化したものは、血液浄化用カラムやカテーテル、人工血管などに利用できる。
【0041】
c)細胞を活性化するもの:
細胞を活性化するものとして、インターフェロン、インターロイキン、抗CD3抗体やT細胞レセプター、主要組織適合性抗原等の細胞認識レセプター、スーパー抗原、フィトヘマグルチニン、リポポリサッカライド、コンナカバリンA、ピーナッツアグルチニン等が挙げられる。例えば、材料に抗CD3抗体を固定化したものを用いてリンパ球を培養すれば、培養によりリンパ球が活性化され、培養されたリンパ球をがん免疫療法に用いることができる。
【0042】
d)アポトーシスを誘導するもの:
アポトーシスを誘導するものとしては、腫瘍壊死因子(TNF)、FasリガンドやCD40リガンドなどある。
【0043】
e)増殖、分化因子:
増殖、分化因子としては、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)、FGF−2、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)、オステオネクチン、アンジオポイエチン、肝細胞増殖因子(HGF)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)、神経成長因子(NGF)、白血病阻害因子(LIF)、幹細胞増殖因子(SCF)、骨形成タンパク質(BMP)インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、腫瘍壊死因子−α、腫瘍壊死因子−β、ノッチリガンド(Delta1,Delta3,Delta4,Jagged1, Jagged2)などが挙げられる。また、同じ作用をもつ上記タンパクの遺伝子をもちいることもできる。
【0044】
f)サイトカイン:
サイトカインとして、インターロイキン−1α、インターロイキン−1β、インターロイキン−2、インターロイキン−4、インターロイキン−5、インターロイキン−6、インターロイキン−7、インターロイキン−8、インターロイキン−10、インターロイキン−11、インターロイキン−12、インターロイキン−13、インターロイキン−14、インターロイキン−15、インターロイキン−16、インターロイキン−17、インターロイキン−18、顆粒球刺激因子(G−CSF、)顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、MCP−1、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、Flk−2/Flt−3リガンド(FL)などが挙げられる。
【0045】
がん細胞を認識するものとして、マンノース6リン酸などが挙げられ、癌患者の血中に存在するガン細胞を除去し、転移を抑制のための血液浄化カラムに用いることができる。
【0046】
g)接着因子:
接着因子として、コラーゲン、プロテオグリカン、フィブロネクチン、ラミニン、カテニンやカドヘリン等のカドヘリンファミリー、I−CAMなどのIgスーパーファミリー、セレクチンファミリー、シアロムチンファミリーなどがあげられる。
【0047】
以上用いる天然物質は市販の天然物質や医薬品を用いても良いし、抗体の場合には、ハイブリドーマから作製してもよい。
【0048】
疎水性部位を持つ生体物質の水溶液を無菌ろ過滅菌し、別に滅菌された疎水性基材に無菌的に接触させて疎水性部位を持つ生体物質を吸着させ、さらに無菌ろ過滅菌されたリガンドが結合されたカチオン性高分子の水溶液を無菌的に接触させて吸着させることにより、容易に体外循環用のリガンド固定化材料を製造することができる。
【0049】
疎水性部位を持つ生体物質やリガンドが結合されたカチオン性高分子は医薬品と同様、無菌ろ過により滅菌できる。方法は、疎水性部位を持つ生体物質やリガンドが結合されたカチオン性高分子を生理食塩水、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液、炭酸緩衝液、グリシン−塩酸緩衝液、クエン酸緩衝液、HEPES緩衝液、MOPS緩衝液、ハンクス緩衝液などの各種緩衝液やDMEM培地、MEM培地、αMEM培地、RPMI1640培地、F16培地、DF培地などの各種培地、これら緩衝液や培地にジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノールなどの有機溶媒を添加した溶媒に溶解し、メンブレンフィルターに通過させてろ過滅菌する。メンブレンはニトロセルロース製、セルロース混合エステル製、PVDF製、PTFE製、ポリエーテルスルホン製などのメンブレンを使用することができ、メンブレンの孔径が0.45μm以下、より好ましくは0.22μm以下のメンブレンを使用する。水溶液が数10mlまでの少量場合は、シリンジフィルターを使用し、水溶液が100ml以上の大量となるときは、陰圧、陽圧でろ過を行うボトルトップタイプフィルターやステンレス製のフィルターホルダーを利用することが好ましい。無菌ろ過滅菌された疎水性部位を持つ生体物質やリガンドが結合されたカチオン性高分子はそのまま水溶液の状態で保存してもよいし、滅菌後、凍結乾燥した状態で保存しても良い。凍結乾燥されたものであれば、疎水性基材に接触させる前に滅菌済みの生理食塩水、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液、炭酸緩衝液、グリシン−塩酸緩衝液、クエン酸緩衝液、HEPES緩衝液、MOPS緩衝液、ハンクス緩衝液など各種緩衝液やDMEM培地、MEM培地、αMEM培地、RPMI1640培地、F16培地、DF培地などの各種培地、これら緩衝液や培地にジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノールなどの有機溶媒を添加した溶媒に再溶解してから用いられる。
【0050】
上記体外循環用のリガンド固定化材料の製造方法において、疎水性基材は放射線滅菌、エチレンオキシドガス滅菌、オートクレーブ滅菌、乾熱滅菌、煮沸滅菌、エタノールやグルタルアルデヒドによる化学薬品による滅菌などが医療用材料の滅菌において使用できるが、基材の性状を保つためにガンマ線や紫外線を用いた放射線滅菌を用いることが好ましい。
【0051】
疎水性基材に上記の無菌ろ過滅菌した疎水性部位を持つ生体物質やリガンドが結合されたカチオン性高分子の水溶液を無菌的に接触させる操作は、操作をクリーンベンチ内あるいは滅菌した器具を用いた閉鎖系内で行い無菌操作する。この操作の際、疎水性基材に疎水性部位を持つ生体物質やリガンドが結合されたカチオン性高分子を効率よく吸着させるには、ろ過滅菌したこれらの水溶液中に疎水性基材を浸漬し、攪拌機や振とう機を用いて水溶液を攪拌、振とうする、あるいは、疎水性基材をモジュールに充填してこれらの水溶液を通液し、環流するなどの方法を採ることにより達成できる。また、疎水性部位を持つ生体物質やリガンドが結合されたカチオン性高分子をさらに効率よく吸着させるために、加温雰囲気下でこれらの操作を行っても良いし、逆に、リガンドなどの熱変性を防ぐために低温条件下で操作行っても良い。このため、これらの操作を行う望ましい温度条件は4℃以上37℃以下で行うことが好ましい。
【0052】
本発明のリガンド固定化材料を利用すれば、上記で示したようなターゲットとなる有用物質や病因物質をリガンドにより捕捉できる。さらに、リガンドとカチオン性高分子をジスルフィド結合を介して結合していれば、還元剤による外部刺激によりリガンドを材料から脱離させることができ、リガンドにより捕捉した有用物質や病因物質を回収する事が可能である。また、ターゲット物質を捕捉あるいは回収する際に使用する溶媒として、様々なpH値のリン酸、酢酸、クエン酸などの緩衝液をもちいることができ、さらに緩衝液の中にウシ血清アルブミンや抗体などのタンパク質あるいはカチオン性、アニオン性などのポリマーなどを含有していても良い。リガンドを材料から脱離させる際の還元剤としては、ジチオスレイトール、2−メルカプトエタノール、システイン、メルカプトエチルアミン、還元型グルタチオンなどがあげられる。
【0053】
血球系の細胞を回収する際は全血と作用させてもよいし、血漿分画や単核球分画などにした後、作用させてもよい。
【0054】
以上のような方法で、本発明の材料により回収した有用物質、病因物質を分析に用いることが可能である。また、細胞の場合はそれを培養し、分析や治療などに利用できる。例えば、リガンドとして抗CD4抗体を使用し、このリガンドを固定化した本発明の材料に血液を通してCD4陽性のT細胞を捕捉し、ジチオスレイトールなどの還元剤で生理活性物質を脱離することにより、捕捉した細胞を大量に回収し、この細胞に様々な刺激を加えて活性化させ体内に戻すことにより、癌、アレルギー、感染症、臓器移植、あるいは自己免疫疾患の治療やワクチンとしてもちいることができる。また、材料上にCD4陽性細胞を補足したまま培養し、CD4陽性細胞の大量培養を行うこともできる。
【0055】
また、例えば、リガンドとして抗CD34抗体を使用し、このリガンドを固定化した本発明の材料に臍帯血を通して、造血幹細胞を捕捉し、ジチオスレイトールなどの還元剤で生理活性物質を脱離することにより、造血幹細胞を大量に回収し、回収した造血幹細胞を培養して輸血医療に用いたり、様々な組織幹細胞に分化させることにより、肝疾患や神経疾患、血管傷害などの細胞療法に用いることができる。
【0056】
また、例えば、リガンドとして抗CD133抗体を使用し、このリガンドを固定化した本発明の材料に臍帯血を通して、神経幹細胞を捕捉し、ジチオスレイトールなどの還元剤で生理活性物質を脱離することにより、神経幹細胞を大量に回収し、回収した神経幹細胞を培養して神経幹細胞移植に用いたり、様々な神経細胞に分化させることにより、パーキンソン病やアルツハイマー病など神経疾患、脳梗塞により壊死した神経細胞の修復などの細胞療法に用いることができる。
【0057】
【実施例】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
1.メルカプト基を持つヒト免疫グロブリン誘導体の作製
NaClを0.15mM含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)に5mg/mlに溶解した精製ヒト免疫グロブリンG(シグマ社製)にN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネート(以下、SPDPと略す)を20mMに溶解したジメチルスルホキシド溶液をヒト免疫グロブリンG1モルに対して10モル添加し、室温で30分反応させた後、PD−10カラム(ファルマシア社製)で高分子量分画に精製した。ヒト免疫グロブリンG1モルあたりのSPDP導入量は4.2モルであった。再度PD−10カラムを用いて酢酸緩衝液(0.5M酢酸、0.5M酢酸ナトリウム、pH4.5)に置換し、合成したSPDP化ヒト免疫グロブリンを25mMのジチオスレイトール(以下、DTTと略す)を含む酢酸緩衝液中で還元反応を行い、メルカプト基を有するヒト免疫グロブリン誘導体(以下、HS−IgGと略す)を合成した 。
【0059】
2.ピリジルジスルフィド基を持つポリエチルイミンの作製
150mMのNaCl、1mMのEDTAを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)にポリエチレンイミン(数平均分子量10000、以下PEI)を5mg/mlとなるように溶解した。この溶液3mlに、N−スクシンイミジル 3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネート(ピアース社製、以下SPDP)を20mMになるように溶解したジメチルスルホキシド溶液を0.5ml添加し、室温で30時間撹拌した。反応させた溶液をPD−10カラム(ファルマシア社製)で高分子量分画に精製し、ピリジルジスルフィド基を持つポリエチルイミン(以下、SDPD−PEIと略す)を作製した。
【0060】
3.ジスルフィド基を介してヒト免疫グロブリンGを結合させたポリエチルイミンの合成
1.で得られたSH−IgGを0.2mg/ml含むリン酸緩衝液と、2.で得られたSDPDP−PEIを2.1mg/ml含むリン酸緩衝液をモル比で1:1になるように混合し、室温で14時間反応させ、ヒト免疫グロブリンGをポリエチルイミンにジスルフィド結合を介して結合させた。結合は反応液を高速液体クロマトグラフィー(以下HPLC、測定条件は、カラム:東ソーTSKgelG3000SWXL、溶出液:0.5M酢酸バッファー、流速:0.5ml/min)を用いて分析し、高分子量側にシフトすることにより確認した。さらに、ヒト免疫グロブリンG−ポリエチレンイミン複合体の溶液にDTTを25mMとなるように添加して複合体を還元後再びHPLC測定すると、もとのヒト免疫グロブリンGとポリエチレンイミンのピークになることが確認され、複合体が分離していることがわかった。得られたジスルフィド結合を介して複合化されたPEI化抗体は無菌ろ過滅菌により滅菌した。
【0061】
4.表面アニオン性繊維の製造方法
50重量比の海成分(46重量比のポリスチレンと4重量比のポリプロピレンの混合物)と50重量比の島成分(ポリプロピレン)とからなる海島型複合繊維(厚さ:2.6デニール、島の数16)を溶融紡糸した。その繊維を3mmに切断した。98%硫酸1120ml中に95%PFA9.9gを投入した。その中に3mmに切断した繊維50gを投入し、5時間反応を行った。イオン交換水、温イオン交換水で洗浄し、表面アニオン性繊維を得た。この繊維に10kGyのガンマ線を照射することにより滅菌を行った。
【0062】
5.実施例1
150mMのNaCl、1mMのEDTAを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)1mlにウシ血清由来アルブミン(生化学工業株式会社製)を5mg/mlとなるように溶解し、ろ過滅菌により滅菌した。この溶液1mlに4.で作製した繊維をクリーンベンチ内で浸漬、振とうし、室温で30分反応させた。反応後の反応液に含まれるウシ血清由来アルブミンの濃度の吸光度(280nm)を測定したところ、吸光度が減少し、繊維にアルブミンが吸着していることが確認できた。このアルブミン吸着繊維を3.で合成したジスルフィド基を介してヒト免疫グロブリンGを複合化したポリエチレンイミンを0.2mg/ml含むリン酸緩衝液に室温で2時間浸漬、振とうさせた。2時間後のリン酸緩衝液に含まれるヒト免疫グロブリンGの吸光度(280nm)を測定したところ、吸光度が減少し、ヒト免疫グロブリンG−PEI複合体がアルブミン吸着繊維に固定されていることが確認された。また、この繊維を25mMのジチオスレイトールを含むリン酸緩衝液で還元反応し、脱離されたヒト免疫グロブリン量をHPLCおよび吸光度で測定したところ、還元処理により固定したヒト免疫グロブリンG90%以上がアルブミン固定化繊維から溶液中へ脱離された。
【0063】
6.比較例1
実施例1において、繊維にウシ血清由来アルブミンを吸着させずに、ヒト免疫グロブリンGを複合化したポリエチレンイミンを0.2mg/ml含むリン酸緩衝液に室温で2時間浸漬させた。2時間後のリン酸緩衝液に含まれるヒト免疫グロブリンGの吸光度(280nm)を測定したところ、吸光度が減少したが、この繊維を25mMのジチオスレイトールを含むリン酸緩衝液で還元反応し、脱離されたヒト免疫グロブリン量をHPLCおよび吸光度で測定したところ、ヒト免疫グロブリンGは繊維から溶液中へ脱離されなかった。
【0064】
7.硫酸基をもつ平膜の作製
ポリスルホン(テイジンアモコ社製”ユーデル”(登録商標)P−3500)18重量部、ポリビニルピロリドン(BASF社製”K30”(登録商標))9重量部をN,N−ジメチルアセトアミド72重量部、水1重量部に加え、90℃、14時間加熱溶解した。この溶液を0.1mmスペーサー付きのガラス板に塗布し、ドクターブレードにて溶液を引き延ばしたものを水中にいれて、凝固させ、ポリスルホン/ポリビニルピロリドンブレンドからなる平膜状の材料を作製した。上記のポリスルホン/ポリビニルピロリドンブレンド材料を十分水洗した後、1wt%のデキストラン硫酸(分子量50万、和光純薬製)水溶液に浸漬して、25kGyにてγ線照射して、表面に硫酸基をもつ平膜を作製した(滅菌を兼ねる)。
8.ヒト血漿の分離
ヒト末梢血(ヘパリン含有)を15mlチューブに6ml採血し、2000回転で20分遠心し、薄黄色の血漿層を回収した。この血漿をPSt製の細胞培養用のフラスコ中で37℃で30分インキュベートして、血小板を吸着させて除去した後、57℃の温浴で30分処理して非働化を行った。
【0065】
9.実施例2
8.で作製したヒト血漿を10%含むリン酸緩衝液をろ過滅菌し、クリーンベンチ内でこの溶液1mlに、7.で作製したアニオン性平膜浸漬、振とうし、室温で30分反応させアルブミンを含む血漿成分を吸着させた。この平膜を3.で合成したジスルフィド基を介してヒト免疫グロブリンGを複合化したポリエチレンイミンを0.2mg/ml含むリン酸緩衝液に室温で2時間浸漬、振とうさせ、2時間後のリン酸緩衝液に含まれるヒト免疫グロブリンGの吸光度(280nm)を測定したところ、反応液の吸光度が減少し、ヒト免疫グロブリンGとポリエチレンイミンの複合体が平膜に固定されていることが確認された。続いて、この平膜を25mMのジチオスレイトールを含むリン酸緩衝液で還元反応し、脱離されたヒト免疫グロブリン量をHPLCおよび吸光度で測定したところ、還元処理により7.6μg/cm2ヒト免疫グロブリンGがアニオン性平膜から溶液中へ脱離されることが確認された。
【0066】
10.比較例2
実施例2において、平膜にヒト血漿成分を吸着させずに、ヒト免疫グロブリンGとポリエチレンイミンの複合体を0.2mg/ml含むリン酸緩衝液に室温で2時間浸漬させた。2時間後のリン酸緩衝液に含まれるヒト免疫グロブリンGの吸光度(280nm)を測定したところ、吸光度が減少していたが、この平膜を25mMのジチオスレイトールを含むリン酸緩衝液で還元反応し、脱離されたヒト免疫グロブリン量をHPLCおよび吸光度で測定したところ、ヒト免疫グロブリンGの平膜から溶液中への脱離は確認できなかった。
【0067】
【発明の効果】
本発明により、基材に対する生理活性物質(リガンド)の非特異的吸着を抑制することができ、リガンド脱離後の再吸着を防ぐことができる。また、体外循環用の材料として滅菌に関わる問題を解決したリガンド固定化材料を提供することができる。
Claims (21)
- 疎水性基材に疎水性部位を持つ生体物質を吸着させ、さらにリガンドが結合されたカチオン性高分子を吸着させたリガンド固定化材料。
- 疎水性基材に疎水性部位を持つ生体物質を吸着させ、さらに該疎水性部位を持つ生体物質にリガンドが結合されたカチオン性高分子を吸着させたリガンド固定化材料
- 疎水性基材の形状が平膜状あるいは繊維状または中空糸状であることを特徴とする請求項1または2に記載のリガンド固定化材料。
- 疎水性基材が多孔質であることを特徴とする請求項3記載のリガンド固定化材料。
- 疎水性基材がポリスチレン、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリルからなる群より選択される1つ以上の高分子化合物からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のリガンド固定化材料。
- 疎水性基材がアニオン性表面を持つことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のリガンド固定化材料。
- 疎水性基材のアニオン性表面について、アニオン性が硫酸基由来であることを特徴とする請求項6記載のリガンド固定化材料。
- 疎水性部位を持つ生体物質が蛋白質および/またはペプチドであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のリガンド固定化材料。
- 蛋白質および/またはペプチドがアルブミンであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のリガンド固定化材料。
- リガンドとカチオン性高分子がジスルフィド結合を介して結合していることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のリガンド固定化材料。
- ジスルフィド結合が、ピリジルジスルフィド基を導入したカチオン性高分子とメルカプト基を持つリガンドの反応によるものであることを特徴とする請求項10記載のリガンド固定化材料。
- カチオン性高分子がアミノ基を有する高分子であり、これにN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネートを反応させてピリジルジスルフィド基を導入することを特徴とする請求項11記載のリガンド固定化材料。
- カチオン性高分子がポリエチレンイミンを含むことを特徴とする請求項12記載のリガンド固定化材料。
- メルカプト基をもつリガンドが、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネートを反応させた後、還元して得られたリガンドであることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載のリガンド固定化材料。
- メルカプト基をもつリガンドが、2−イミノチオランを反応させて得られたリガンドであることを特徴とする請求項14記載のリガンド固定化材料。
- メルカプト基をもつリガンドが、リガンドを還元して得られたリガンドであることを特徴とする請求項14に記載のリガンド固定化材料。
- リガンドが蛋白質および/またはペプチドであることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載のリガンド固定化材料。
- 蛋白質および/またはペプチドが、抗体、レセプター、サイトカイン、分化因子、増殖因子および接着因子からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項17記載のリガンド固定化材料。
- 体外循環用途に用いられる請求項1〜18のいずれかに記載のリガンド固定化材料。
- 疎水性部位を持つ生体物質の水溶液を無菌ろ過滅菌し、別に滅菌された疎水性基材に無菌的に接触させ、さらに無菌ろ過滅菌されたリガンドが結合されたカチオン性高分子の水溶液を無菌的に接触させることを特徴とするリガンド固定化材料の製造方法。
- 疎水性基材が放射線で滅菌されることを特徴とする請求項20記載のリガンド固定化材料の製造方法。
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-
2003
- 2003-03-20 JP JP2003077417A patent/JP2004283295A/ja active Pending
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