JP3748927B2 - 糖脂質抗体吸着材 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、体液より糖脂質抗体を簡便にしかも効率良く吸着除去するための体外循環治療用の吸着材に関する。
【0002】
【従来の技術】
ギラン・バレー症候群、ミラー・フィッシャー症候群等の免疫性神経障害では、糖脂質抗体の内のガングリオシドに対する抗体(抗ガングリオシド抗体)の患者血漿中での量が症状と相関し、血漿交換療法等により糖脂質抗体を除去することが治療上有効であることが報告されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
抗ガングリオシド抗体の吸着材としてイムソーバTR−350、PH−350(いずれも旭メディカル社製)が検討され、TR−350が抗ガングリオシド抗体の吸着能力を有することが報告されている(神経学会(1995.5.17〜19)、結城による)。しかし一方で、同じイムソーバTR−350が抗ガングリオシド抗体はほとんど吸着しなかったとの報告もあり(神経学会(1995.5.17〜19)、中谷ら)、安定にしかも充分な量の抗ガングリオシド抗体を吸着できるものではなかった。
しかもイムソーバTR−350はフィブリノーゲンを非常に高率に吸着することが知られており、加えて本発明者らの研究によると血液凝固第XII因子、高分子量キニノーゲンを非特異的にしかも効率良く吸着することがわかった。実際、TR−350での体外循環施行時には吸着によるタンパクの損失が有り、頻回に使用する場合は蛋白質の補給が必要となる場合があった。このためフィブリノーゲンや血液凝固第XII因子、高分子量キニノーゲンの吸着が少なく、糖脂質抗体の高い吸着能を有する、糖脂質抗体のより選択的な吸着材が求められている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはフィブリノーゲンや血液凝固第XII因子、高分子量キニノーゲンの非特異吸着が少なく、安定にしかも充分な量の糖脂質抗体を簡便にしかも効率よく吸着除去するための体外循環治療用の吸着材を得るべく鋭意研究した結果、本発明を成すに至った。
即ち本発明は、多孔質体表面に、アニオン性基を有する化合物を、好ましくは、アニオン性基量で2μeq/ml以上60μeq/ml以下有し、グロブリン特性値が0.2mg/ml以上20mg/ml以下である糖脂質抗体吸着材に関するものである。
本発明でいう糖脂質とは、極性基として糖をもつ複合脂質をいう。具体的に例示すると中性スフィンゴ糖脂質、酸性スフィンゴ糖脂質、中性グリセロ糖脂質、酸性グリセロ糖脂質等があげられるがこれらに限定されない。
本発明でいう糖脂質抗体は該糖脂質との結合性を有する抗体をいい、IgG、IgM等抗体のクラスにはよらない。いずれの糖脂質に対する抗体であっても良いが、臨床上特に酸性スフィンゴ糖脂質、更に特定するならばモノシアロ、ジシアロ、トリシアロ、テトラシアロ等のガングリオシドに対する抗体がより有用である。
本発明者らの研究によると、糖脂質抗体の吸着には水不溶性多孔質体表面の化合物のアニオン性基が関与しているのであるが、同時にこのアニオン性基は吸着材表面の親水性度との相互作用により、フィブリノーゲンや血液凝固第XII因子、高分子量キニノーゲンとの結合にも関与しており、これら蛋白等の共存物質の非特異吸着が、抗ガンブリオシド抗体吸着と競合し、抗ガンブリオシド抗体の吸着を阻害する場合があることがわかった。そこでアニオン性基量について詳細に検討した結果、驚くべきことに吸着材表面の親水性度を厳密な範囲に特定した時、糖脂質抗体を充分に吸着しつつ、且つフィブリノーゲンや血液凝固第XII因子、高分子量キニノーゲンの吸着が格段に少ない安定領域が存在することを見いだし、本発明を成すに至った。
【0005】
アニオン性基の量
多孔質体表面のアニオン性基の量は、吸着材としての容積1ml当たり30μeq(以下30μeq/mlと表す)以下では糖脂質抗体の吸着力が低下し、特にアニオン性基の量が2μeq/ml未満では吸着能力は極端に低下する。一方アニオン性基の量が55μeq/ml以上ではフィブリノーゲンの吸着が大きくなり、血液凝固第XII因子や高分子量キニノーゲンの吸着もまた増加してくる。特にアニオン性基の量が60μeq/mlを超えるとフィブリノーゲンや血液凝固第XII因子、高分子量キニノーゲンの吸着が非常大きくなり好ましくない。
好ましいアニオン性基の量は、中性塩分解法で測定する時2μeq/ml以上60μeq/ml以下である。更に30μeq/ml以上55μeq/ml以下であることがより好ましい。
【0006】
アニオン性基を有する化合物
本発明でいうアニオン性基を有する化合物とは、カルボキシル基、硫酸基、リン酸基等中性の水溶液中で陰性荷電を示す官能基を有する化合物をいい、化合物中のアニオン性基の数はいずれであってもよい。アニオン性基を有する化合物の一部を例示すると、アスパラギン酸、グルタミン酸、チロシン等のアミノ酸、或いはアミノ酸誘導体、タウリン、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン等の硫酸基を有する糖類、アクリル酸、スチレンスルフォン酸、エチレンスルフォン酸、等の合成物及びこれらを構成成分として有する高分子体等の合成化合物等が例示できる。また多孔体を構成する高分子鎖に直接アニオン性の官能基を保持せしめたものを含む。
【0007】
吸着材表面の親水性度
本発明でいう吸着材表面とは、多孔質体表面とアニオン性基を有する化合物、或いは被覆層等を有する場合は被覆層等も含めた、実使用時の吸着材としてフィブリノーゲン等の蛋白質との接触面をいう。吸着材表面の親水性度は、多孔質体表面或いは被覆層等を有する場合は被覆層と、アニオン性基を有する化合物との両者の相乗効果によって決まり、個々に定義することは困難である。
本発明者らの研究によると、吸着材表面の親水性度はグロブリン特性値で表すことができる。グロブリン特性値はヒトγグロブリン(コーンのフラクションII、III)水溶液と吸着材とを接触させた時のγグロブリン濃度の変化率より求めることができる。
グロブリン特性値の測定にあたり、まずヒトγグロブリン(コーンフラクションII、III、純度約99%)を精密に量り、PBS(−)で3.0mg/ml濃度に溶解した液を試験液とする。吸着材1容と試験液10容とをフラスコ中で、37℃90分間浸透下で混和する。3000rpm、5分間遠心分離して上清を回収する。試験液と上清それぞれの280nmでの吸光度を測定し、試験液に対する上清の吸光度の低下率を求めて、試験液の濃度より吸着材1mlあたりに吸着したヒトγグロブリン量を計算し、これをグロブリン特性値と定義する。
グロブリン特性値が吸着材1ml当たり3mg(3mg/mlと表す)以下では糖脂質抗体の吸着能力が低下し、特に0.2mg/ml未満ではアニオン性基の量によらず常に糖脂質抗体の吸着性をほとんど示さない。一方グロブリン特性値が12mg/ml以上ではアニオン性基の量によらずに、フィブリノーゲンや血液凝固第XII因子、高分子量キニノーゲンの吸着が大きく好ましくない。更に、グロブリン特性値が20mg/mlを超えるとフィブリノーゲンや血液凝固第XII因子、高分子量キニノーゲンをほぼすべて吸着してしまうため好ましくない。
糖脂質抗体の吸着能力を維持したままフィブリノーゲン等の非特異吸着を抑制できる好ましい親水性度は、グロブリン特性値で0.2mg/ml以上20mg/ml以下である。特に3mg/ml以上12mg/ml以下である時最も好ましい。
【0008】
多孔質体
本発明でいう多孔質体とは常温の水溶液中で固体状態にある、多数の孔構造を有するものをいい、いずれの形状であってもよい。形状を例示すると球状、粒状、チップ状、繊維状、平膜状、スポンジ状等があり、繊維状のものとしては繊維を単に束ねたものや織布状、不織布状、中空糸状のものなどがあげられる。これらの内、細密充填のしやすさ、アニオン性基を有する化合物を比較的均質に表面に保持させやすい点、実有効表面積を比較的多く確保できる点、及び体液循環時の体液の流通面より、球状及び粒状のものが好ましい。この時球状または粒状の平均粒径は、10μmから2500μmのものが使いやすいが、25μmから1000μmの範囲が好ましく、より好ましくは50μmから600μmである。
多孔質体の孔のサイズは、糖脂質抗体の吸着能力を確保するためには排除限界分子量で表すとき50万以上であることが望ましい。特にIgM型の糖脂質抗体を十分に吸着できるためには100万以上であることがより好ましい。
吸着能力は表面積によって大きく影響する。表面積が大きいと吸着能力は上がり、小さいと下がることは自明である。このため本発明の吸着材は、全細孔表面積が0.5m2 /ml以上であることが好ましい。より好ましくは1.0m2 /ml以上である。また、多孔質体表面の水酸基密度が多孔質体乾燥重量1gあたり6.5meq以上、20meq以下である時、アニオン性基を有する化合物による影響をあまり受けずに吸着材表面の至適な親水性度を比較的得やすく、好ましい。
多孔質体の材質は、表面にアニオン性基を有する化合物を保持できるものであれば、無機化合物、有機化合物を問わないが、体液との接触時に溶出物が少ないこと、多孔体の細孔の制御がより容易且つ精密にできることより、有機高分子化合物が好ましい。
このような例としては、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメタクリレートエステル、ポリアクリレートエステル、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール等のビニル系化合物の重合体及び共重合体、ナイロン6或いは66等のポリアミド系化合物、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系化合物、セルロース等の植物由来の多糖類系化合物等を例示することができる。
本発明において用いられる多孔質体の材料は、アニオン性基を有する化合物を保持できるものであれば以上に限定されるものではない。例示した中では、重合の容易さ、アニオン性基を有する化合物の導入の容易さより、ビニル系化合物の重合体及び共重合体がより好ましく用いられる。このような例としては、スチレン、酢酸ビニル、ビニルアルコール、アクリル酸、メタクリル酸、或いはこれらの誘導体があげられ、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート等の架橋性化合物との共重合体が強度的安定性の点より、より好ましい。
この中で特に好ましい例としては、化学的に安定で、且つ容易に官能基を導入できること、球形の50μmから1000μm程度の各種粒子径、孔径の多孔体粒子をつくれることより、酢酸ビニルとトリアリルイソシアヌレートとの共重合体や、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体などがあげられる。
【0009】
多孔質体表面にアニオン性基を有する化合物を保持させる方法
多孔質体表面にアニオン性基を有する化合物を保持させる方法には、アニオン性基を有する化合物を溶解した液中に浸漬、あるいは該液を噴霧することによってコーティングする方法、化学的に或いは放射線や電子線を用いてのグラフト法によって多孔質体表面にアニオン性基を有する化合物を共有結合する方法、或いは化学的方法により多孔質体表面の官能基を介して共有結合する方法などがある。この中でグラフト法、官能基を介しての共有結合法が使用時のアニオン性基を有する化合物の溶出の危険性がなく、好ましい。多孔質体が被覆層を有する場合はその被覆層表面に不溶化することもできる。
多孔質体或いはその被覆層表面に官能基を得る方法の1例としてはハロゲン化シアン法、エピクロルヒドリン法、ビスエポキシド法、ブロモアセチルブロミド法、ハロゲン化アセトアミド法等が知られている。具体的にはアミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基、酸無水物基、サクシニルイミド基、置換性ハロゲン基、アルデヒド基、アミド基、エポキシ基、トレシル基などがあげられる。
この中で加熱滅菌時の安定性、官能基の導入のしやすさ、アニオン性基を有する化合物の導入時のpHや反応温度が比較的温和な条件で行えることより、エピクロルヒドリン法やハロゲン化アセトアミド法が特に好ましい例としてあげられる。
【0010】
容器形状
本発明の吸着材は、体液の導出入口を備えた容器内に充填保持された吸着器として使用されるのが一般的である。本吸着材を単独で充填しても良く、他の吸着材と混合もしくは、積層してもよい。吸着器の容量は、体外循環に用いる場合10mlから1000ml程度が適当である。
吸着器は使用に先立って一般に滅菌処理することができる。滅菌処理の方法は、湿潤状態での熱滅菌(オートクレーブ)、γ線等による放射線、紫外線或いは電子線による滅菌、或いは活性酸素による滅菌などが例示できいずれの方法であってもよいが、一般に熱滅菌が汎用される。
該吸着器を体外循環で用いる場合には、大略次の二通りの方法がある。1つには、体内から取り出した血液を遠心分離もしくは膜型血漿分離器を使用して、血漿成分と血球成分とに分離して後、血漿成分を吸着器に通過させ浄化した後、血球成分と合わせて体内に戻す方法であり、他の1つは、体内から取り出した血液を直接吸着器に通過させ、浄化する方法である。この内、血漿成分を吸着器に通過させて浄化する血漿浄化法が、吸着器内での流れ抵抗が少なく、総吸着能力も高くできるためより好ましい。また、体液の通過方法としては、使用上の必要に応じ、或いは設備の装置状況に応じて、連続的に通過してもよいし、また断続的に通液してもよい。
【0011】
【実施例1】
酢酸ビニルとトリアリルイソシアヌレートとを重量%で75対25で仕込み、ヘプタノール、リン酸緩衝水溶液中での懸濁重合法により、60℃16時間重合反応を行い、ポリ酢酸ビニル製の球状の多孔質体を得た。多孔質体は、平均粒子径98μm、排除限界分子量約135万、窒素吸着法(BET法)による表面積が19.8m2 /mlであった。また、ケン化後の多孔質体表面の水酸基密度は、多孔質体乾燥重量1gあたり7.2meqであった。
この多孔質体に、水酸化ナトリウムを含むジメチルスルフォキシド中でエピクロルヒドリンを用いて30℃5時間反応させてエポキシ基を導入し、活性化多孔質体を得た。
次にpH9.8の炭酸緩衝液中で、多孔質体湿潤状態での容積1mlあたり12mgのトリプトファンを反応させ、トリプトファンのアミノ基と多孔質体のエポキシ基とを結合させて吸着材を得た。この吸着材は中性塩分解法で測定したとき、アニオン性基量は55μeq/mlであった。
グロブリン特性値の測定にあたり、まずヒトγグロブリン(シグマ社製、製品番号G4386、コーンフラクションII、III、純度約99%)を精密に量り、ダルベッコのPBS(−)で3.0mg/ml濃度に溶解した液を試験液とした。吸着材1容と試験液10容とをフラスコ中で、37℃、90分間浸透下で混和した。3000rpm、5分間遠心分離して上清を回収した。試験液と上清それぞれの280nmでの吸光度を測定し、試験液に対する上清の吸光度の低下率を求めて、試験液の濃度より吸着材1mlあたりに吸着したヒトγグロブリン量を計算した。
次にギランバレー症候群患者A、B、及びCの3種類のCPD加血漿(以下血漿A、血漿B、血漿C、いずれもGMI反応性の抗ガングリオシド抗体(IgG)を有する)を用いて吸着試験を行った。吸着材1容と血漿3容とをフラスコ中で静かに振盪しながら37℃で18分間反応し、反応前後の抗ガングリオシド抗体、フィブリノーゲン、血液凝固第XII因子の濃度を測定した。
抗ガングリオシド抗体濃度の測定は、シグマ社製ウシ脳由来ガングリオシドGMIを抗原、二次抗体をアルカリフォスファターゼ標識抗ヒトIgGヤギ抗体、酵素基質にパラニトロフェニルリン酸(ジシクロヘキシルアンモニウム塩)を用いて405nmでの吸光度の変化により求める、一般に行われる酵素免疫測定法により実施した。この時健常人10名の血漿を陰性対象として同時に測定し、吸光度の平均値+3標準偏差値を正常範囲の上限とした。各試験液は2倍階段希釈し、吸光度が正常範囲となる希釈倍率を測定した。吸着試験前の血漿の希釈倍率と吸着後の希釈倍率より、吸着試験前濃度を100とした時の吸着試験後の残存率を求めた。
フィブリノーゲン、血液凝固第XII因子はそれぞれトロンビン凝固時間法、発色性APTT法によって測定した。吸着試験前濃度を100とした時の吸着試験前濃度に対する吸着試験後の濃度の低下率を求めて吸着率とした。
結果を表1及び表2に示す。
【0012】
【実施例2】
実施例1において、多孔質体湿潤状態での容積1mlあたり9mgのトリプトファンを反応させ、他は同様に実施して吸着材を得た。この吸着材は中性塩分解法で測定したとき、アニオン性基量は43μeq/mlであった。患者血漿による吸着試験は血漿Aについてのみ実施した。
【0013】
【実施例3】
実施例1において、多孔質体湿潤状態での容積1mlあたり6mgのトリプトファンを反応させ、他は同様に実施して吸着材を得た。この吸着材は中性塩分解法で測定したとき、アニオン性基量は27μeq/mlであった。患者血漿による吸着試験は血漿Aについてのみ実施した。
【0014】
【実施例4】
実施例1において、多孔質体湿潤状態での容積1mlあたり4mgのトリプトファンを反応させ、他は同様に実施して吸着材を得た。この吸着材は中性塩分解法で測定したとき、アニオン性基量は16μeq/mlであった。患者血漿による吸着試験は血漿Aについてのみ実施した。
【0015】
【実施例5】
実施例1において、多孔質体湿潤状態での容積1mlあたり14mgのトリプトファンを反応させ、他は同様に実施して吸着材を得た。この吸着材は中性塩分解法で測定したとき、アニオン性基量は60μeq/mlであった。患者血漿による吸着試験は血漿Aについてのみ実施した。
【0016】
【実施例6】
実施例1において、pH9.8の炭酸緩衝液にかえて10%水酸化ナトリウム水溶液中で多孔質体湿潤状態での容積1mlあたり82mgのデキストラン硫酸(分子量5,000、硫黄含量17.2%)を反応させ、他は同様に実施して吸着材を得た。この吸着材は中性塩分解法で測定したとき、アニオン性基量は32μeq/mlであった。患者血漿による吸着試験は血漿Aについてのみ実施した。
【0017】
【実施例7】
実施例1で得た多孔質体10ml(湿潤状態での細密充填時の容積)、蒸留水30ml、ポリビニル硫酸カリウム(和光純薬、分子量24万)1.6gをガラス製サンプル瓶に入れた。これに、γ線を照射して重合し、吸着材を得た。この時のγ線照射量の実測値は9.8kGyであった。この吸着材のアニオン性基量は72μeq/mlであった。実施例6と同様に血漿Aを用いて吸着試験を実施した。
【0018】
【比較例1】
実施例1において酢酸ビニルとトリアリルイソシアヌレートとを重量%で65対35で仕込み、懸濁重合することでポリ酢酸ビニル製の球状の多孔質体を得た。多孔質体は、平均粒子径101μm、排除限界分子量約158万、窒素吸着法(BET法)による表面積が22.1m2 /mlであった。また、ケン化後の多孔質体表面の水酸基密度は、多孔質体乾燥重量1gあたり5.3meqであった。 この多孔質体を用いて、多孔質体湿潤状態での容積1mlあたり10mgのトリプトファンを反応させた他は実施例1と同様にして吸着材を得た。この吸着材は中性塩分解法で測定した時、アニオン性基量は45μeq/mlであった。患者血漿による吸着試験は血漿A、血漿B、血漿Cについて実施した。
【0019】
【比較例2】
比較例1において、多孔質体湿潤状態での容積1mlあたり3mgのトリプトファンを反応させ、他は同様に実施して吸着材を得た。この吸着材は中性塩分解法で測定したとき、アニオン性基量は12μeq/mlであった。患者血漿による吸着試験は血漿Aについてのみ実施した。
【0020】
【比較例3】
比較例1において、多孔質体湿潤状態での容積1mlあたり7mgのトリプトファンを反応させ、他は同様に実施して吸着材を得た。この吸着材は中性塩分解法で測定したとき、アニオン性基量は33μeq/mlであった。患者血漿による吸着試験は血漿Aについてのみ実施した。
【0021】
【比較例4】
市販のイムソーバTR−305より吸着材を取り出して吸着材を得た。この吸着材は中性塩分解法で測定したとき、アニオン性基量は65μeq/mlであった。比較例1と同様にして血漿Aを用いて吸着試験を実施した。
【0022】
表1に示すように、比較例1では患者血漿によって、抗ガングリオシド抗体の吸着性が低くなる(残存率が高くなる)場合があり、フィブリノーゲン濃度による影響を受けていると考えられた。一方、実施例1では患者血漿による抗ガングリオシド抗体の吸着性の変化はあまりなく、フィブリノーゲンによる吸着阻害を受けずに安定した吸着性を示した。
【0023】
表2に示すように、グロブリン特性値が20mg/ml以下の時、抗ガングリオシド抗体の吸着性を低下させることなく、フィブリノーゲンや血液凝固第XII因子の非特異吸着を抑制できる。一方、グロブリン特性値が20mg/ml以上の時は、アニオン性基の量によらずにフィブリノーゲンや血液凝固第XII因子の非特異吸着は多かった。グロブリン特性値が適正な範囲の吸着材によって初めて、選択的に抗ガングリオシド抗体を吸着できる。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、糖脂質抗体を簡便に、しかも効率良く吸着除去するための体外循環治療用の吸着材を提供することができる。
Claims (3)
- 多孔質体表面にカルボキシル基または硫酸基を有する化合物を有し、グロブリン特性値が0.2mg/ml以上20mg/ml以下である、糖脂質抗体吸着材。
- アニオン性基量が2μeq/ml以上60μeq/ml以下である請求項1記載の糖脂質抗体吸着材。
- グロブリン特性値が3mg/ml以上12mg/ml以下である請求項1記載の糖脂質抗体吸着材。
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