JP2005336422A - 刺激応答性材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明では汎用成型品として医療用、検査用、研究用材料に用いることができる刺激応答性材料を提供する。
【解決手段】アクリル系ポリマーを含む基材にポリアルキレングリコールを含む物質を吸着させたことを特徴とする刺激応答性材料。
【選択図】なし

Description

本発明は、刺激応答性材料に関するものであり、アクリル系ポリマーを含む基材にポリアルキレングリコールを含む物質を吸着させた材料を利用することにより、冷却という刺激によりアクリル系ポリマーを含む基材からポリアルキレングリコールを含む物質を解離させることができる。
近年、刺激応答性材料、特にその利用のしやすさから温度に対する応答性を有する高分子を用いた材料が研究用途、医療用途において利用されつつある。例えば、リガンドが温度応答性高分子に結合したゲルあるいはコーティング物を利用して、物質の送達、除去、反応する方法(特許文献1)や標的物質と特異的に結合する部位をもつ物質とその特異的結合部位が刺激応答により変化する物質による刺激応答性分子(特許文献2)などが提案されている。また、例えば、水に対する上限または下限臨界溶解温度が0〜80℃にあるポリマーもしくはコポリマー(温度応答性高分子)で表面を被覆した細胞培養材料なども提案されている(特許文献3)。しかし、これらにおいてはN-イソプロピルアクリルアミドの重合物など特殊な温度応答性のポリマーを使用しているため、これらポリマーをゲル状にするために架橋処理を行ったとしても汎用の成型材料としての強度を持つことはできない欠点がある。また他の成型可能なポリマーと共重合、ブレンドしたり、この温度応答性高分子を成型品に被覆させることなども可能であるが、共重合やブレンドにより温度応答性の効果は低下してしまう。また、被覆させるには、加水分解したり、プラズマ処理などしたりして、官能基を導入してから架橋剤などを用いて化学的に被覆したり、電子線やγ線を照射するなどして被覆する必要があり、汎用材料として製造する場合、再現性や操作性、工程の増加、あるいはコストの面に問題となる。また、コーティングなどでは、被覆した高分子がはがれたり、被覆量が少なくなり十分な効果が期待できないという欠点がある。
一方、アクリル系ポリマー、特にメタクリレート系ポリマーは生体適合性に優れており、眼内レンズやコンタクトレンズ、人工腎臓をはじめとして種々の分離膜やフィルム、ハイドロゲルなど様々な用途に用いられており、非常に安定な汎用材料として世の中に広く使用されている。また一方で、このアクリル系ポリマーのような物質の基材表面とポリアルキレングリコール間の相互作用を利用したシステムに関する技術が知られており(特許文献4参照)、該技術によればアクリル系ポリマー基材へポリアルキレングリコールと結合した活性物質を吸着させることが可能であり、様々な用途への応用展開が期待されている。しかし、これらの方法ではポリアルキレングリコールと結合した活性物質はアクリル系ポリマーの基材に相互作用したままで様々なシステムや用途展開を行う必要があり、活性物質を基材から引き離して解離するためには、ポリアルキレンポリマーと活性物質との間の結合を化学的な方法や酵素的な方法により処理して切断する必要があると考えられ、このような処理を行うことは活性物質の活性に影響を与える恐れがあった。
国際公開第87/06152号パンフレット 国際公開第97/09068号パンフレット 特開平2−211865号公報 特表2001−527539号公報
本発明では、上記の問題点と、汎用成型品として医療用、検査用、研究用材料に用いられているアクリル系ポリマーからなる基材とポリアルキレングリコールからなる物質の相互作用について鋭意検討した結果、アクリル系ポリマーを含む基材にポリアルキレングリコールを含む物質を吸着させた材料を用い、該材料を冷却という容易に利用できる外部刺激を与えることにより、簡単にアクリル系ポリマーを含む基材からポリアルキレングリコールを含む物質を解離させることができることを見出した。
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有する。
(1)アクリル系ポリマーを含む基材にポリアルキレングリコールを含む物質を吸着させたことを特徴とする刺激応答性材料。
(2)該刺激応答性材料を冷却することによりアクリル系ポリマーを含む基材からポリアルキレングリコールを含む物質が解離することを特徴とする(1)記載の刺激応答性材料。
(3)アクリル系ポリマーを含む基材にポリアルキレングリコールを含む物質を20℃以上で吸着させたことを特徴とする(2)記載の刺激応答性材料。
(4)該刺激応答性材料を10℃以下に冷却することによりアクリル系ポリマーを含む基材からポリアルキレングリコールを含む物質が解離することを特徴とする(2)記載の刺激応答性材料。
(5)アクリル系ポリマーがポリメタアクリレートであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の刺激応答性材料。
(6)アクリル系ポリマーを含む基材の含水率が10重量%以上であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の刺激応答性材料。
(7)アクリル系ポリマーを含む基材の形状が中空糸状、繊維状、多孔状、微粒子状、平膜状のいずれかであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の刺激応答性材料。
(8)ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールあるいはポリプロピレングリコールであることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の刺激応答性材料。
(9)ポリアルキレングリコールの分子量が2500〜15000であることを特徴とする(8)記載の刺激応答性材料。
(10)ポリアルキレングリコールを含む物質がポリアルキレングリコールに生理活性物質を結合した物質であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の刺激応答性材料。
(11)生理活性物質が抗体および/またはサイトカインおよび/または増殖因子であることを特徴とする(10)記載の刺激応答性材料。
(12)(10)又は(11)に記載の刺激応答性材料を用いた徐放製剤。
(13)細胞または物質の分離精製に用いられることを特徴とする(10)又は(11)に記載の刺激応答性材料。
(14)細胞または物質を該刺激応答性材料に作用させて捕捉した後、冷却して該細胞または物質を分離することに用いられることを特徴とする(10)又は(11)に記載の刺激応答性材料。
(15)(13)又は(14)記載の刺激応答性材料を用いた細胞製剤の製造方法。
本発明を利用すれば、刺激(温度)応答により物質を放出する成型可能な汎用材料を容易に作製することができ、この刺激応答性材料を応用した分離、精製、部位特異的送達の手法を利用した医療用、検査用、研究用材料の製造方法として展開することができる。
本発明における刺激応答性材料における刺激とは、物質に対して作用してその状態を変化させ、何らかの反応をひき起す外的な要因を指し、例えば、温度、pH、光、酸化、還元、塩濃度があげられる。刺激応答材料は一般に、このような刺激の変化に応答して性質、状態を変化させる材料を指すが、本件発明における刺激応答性材料とは、このような刺激、特に温度変化、に応答して性質や状態が変化することにより、基材Aと物質Bが吸着したり、解離する用途に用いられる材料を指している。
本発明においては、アクリル系ポリマーを含む基材に対してポリアルキレングリコールを含む物質を吸着させた刺激応答性材料であるが、このような吸着は、水素結合、共有イオン結合(静電相互作用)、疎水性相互作用などの非共有結合的な相互作用、特に水素結合により吸着がおこっていると考えられるが、これは本発明を限定するものではなく、アクリル系ポリマーを含む基材にポリアルキレングリコールを含む物質を吸着させた該刺激応答性材料であれば良く、該刺激応答材材料を冷却するとアクリル系ポリマーを含む基材からポリアルキレングリコールを含む物質が解離される。
この材料においてアクリル系ポリマーを含む基材にポリアルキレングリコールを含む物質を吸着させる温度は20℃以上が好ましく、より好ましくは25℃以上、さらに好ましくは37℃以上であることが好ましい。温度を上昇させればアクリル系ポリマーを含む基材にポリアルキレングリコールを含む物質が素早く吸着されるため、20℃以上の温度でアクリル系ポリマーを含む基材にポリアルキレングリコールを含む物質を吸着させることにより、本発明の刺激応答性材料を容易に作製することができる。
また、該刺激応答性材料を冷却するとアクリル系ポリマーを含む基材からポリアルキレングリコールを含む物質が解離されるが、ここでいう冷却とは、該アクリル系ポリマーを含む基材に該ポリアルキレングリコールを含む物質を吸着させた温度以下にすることを指す、冷却する温度は10℃以下好ましく、さらに好ましく4℃以下に冷却することが好ましい。冷却する方法としては低温室などの10度以下の低温の雰囲気に該刺激応答性材料自体あるいは該刺激応答材料を含む水溶液をさらしたり、あるいは、氷浴やアルミ製の冷却ブロックなど10℃以下の物体に該刺激応答性材料を含む水溶液が入った容器を接触させて冷却しても良い。
冷却によりアクリル系ポリマーを含む基材から解離されたポリアルキレングリコールを含む物質は再度温度を上昇されることにより、再びアクリル系ポリマーを含む基材に吸着させることも可能であり。このような吸着、解離を繰り返して行うことも可能である。
本発明におけるアクリル系ポリマーを含む基材とはアクリル系ポリマーを含む様々な形状に成型することができる土台となる構造物を指し、全部がアクリル系ポリマーの基材、あるいは一部にアクリル系ポリマーを含む基材を指す。一部にアクリルポリマーを含む基材とは、基材中にアクリル系ポリマーが含まれていれば良く、例えばアクリル系ポリマーと他のポリマーの共重合物の基材、アクリル系ポリマーと他の物質を混合した基材、他の物質にアクリル系ポリマーをコーティングした基材、アクリル系ポリマーにそれ以外の物質を結合した基材、アクリル系ポリマーにそれ以外の物質を添加した基材、アクリル系ポリマーにそれ以外の物質を融合した基材、あるいはこれら基材の混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。また、アクリル系ポリマーが基材の表面に露出していることが好ましい。
本発明におけるアクリル系ポリマーとは、主としてアクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体などからなる重合体であり、具体的にはポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリフェニルメタクリレート、ポリフェニルアクリレートなどが挙げられるが、生体適合性の点からポリメタクリレート特にポリメチルメタクリレートが望ましい。
本発明で用いられるアクリル系ポリマーは、その他のモノマーを共重合することにより適宜、コポリマーとして用いてもよい。
本発明に好ましく用いられるポリメチルメタクリレートは、アイソタクチック構造部分
とシンジオタクチック構造部分をもつことができるが、アイソタクチック構造の比率が高いポリマーを単独で用いてもよいし、シンジオタクチック構造の比率が高いポリマーを単独で用いてもよい。しかし、アイソタクチック構造の比率が高いポリメチルメタクリレートと、シンジオタクチック構造の比率が高いポリメチルメタクリレートとは、ある条件下において構造的な絡み合い、いわゆるステレオコンプレックスを形成できるため、成形性の観点から両者をブレンドしてステレオコンプレックス構造をもたせたものが望ましい。
アイソタクチックポリメチルメタクリレートとしては、アイソタクチック構造(トライアド表示)が50%以上、好ましくは70%以上を含むものが用いられる。ポリメチルメタクリレートの立体構造は核磁気共鳴吸収法によって、定量的に求めることができる。アイソタクチックポリメチルメタクリレートは一般にグリニヤ試薬またはアルキルリチウムなどの有機金属化合物を用いる重合によって得られ、このような方法によれば、アイソタクチック構造の含量90%以上のポリマーを得ることも可能である。
一方、シンジオタクチシチの高いシンジオタクチックポリメチルメタクリレートは通常のラジカル重合によって得られる。この場合、カルボキシル基や、スルホン酸基などの陰イオン性基あるいは第4級アンモニウム基や、アミノ基などの陽イオン性基、さらにヒドロキシエチルメタクリレートやアクリルアミドなどの非イオン性基などを含有するビニルモノマーなどを1種類以上共重合することも可能である。また、ポリメチルメタクリレート単独重合品や分子量の異なったポリマー、あるいは異なる種類の共重合ポリマーなどを数種類混合して用いることも、必要に応じて行なわれる。
ポリメチルメタクリレート系ポリマーの平均分子量は、目的とする材料の構造や、機械的特性、さらに紡糸性などを考慮すると、通常10万以上が好ましい。
また、本発明で用いるアクリル系ポリマーを含む基材は含水状態で用いることが好ましく、ここでいう含水状態とは含水率が10重量%以上の状態であることをいい、本発明の刺激応答性材料に用いられるアクリル系ポリマーを含む基材は含水率が10重量%以上であることが必要である。含水率とは、水を含んだ材料中の水の重量を含水状態の材料の重量で割った値に100をかけた値のことをいう。具体的には、水を含んだ材料の表面の水を拭き取り、その重量を測定し、その後その材料を十分乾燥して乾燥重量を測定して、含まれていた水の重量を算出する。
本発明の刺激応答性材料は含水状態のアクリル系ポリマーを含む基材にポリアルキレングリコールを含む物質を水溶液状態にして接触させて吸着させることにより容易に作製することができるが、この際、アクリル系ポリマーを含む基材の含水率が高いほど、アクリル系ポリマーを含む基材に対するポリアルキレングリコールを含む物質の吸着効率は高い。したがって、アクリル系ポリマーを含む基材の含水率としては10重量%以上が必要であり、望ましくは30重量%以上である。
アクリル系ポリマーを含む基材の形状としては平膜状、粒子状、中空糸状、繊維状、スポンジ状、カットファイバー状、多孔状などどのような形状でもよい。本発明で使用されるアクリル系ポリマーは、例えば、このアクリル系ポリマーを溶解した原液をナイフコーターやバーコーターを使用して平膜状に成型することもできるし、アクリル系ポリマーを溶解した原液を水浴などの凝固浴に滴下することにより粒子状に成型することもできるし、乾湿式紡糸法で中空糸状や繊維状に成型・加工できる。アクリル系ポリマーの原液の溶媒としては、アクリル系ポリマーを溶解する溶媒はすべて使用可能であるが、原液を冷却した時に適当な温度で、ゲル化する溶媒が好ましく使用される。さらに、凝固時に脱溶媒して製品とするための凝固剤としては、水が好ましく用いられるため、この水と置換容易な溶媒が特に好ましい。このため、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、酢酸、アセトン、メチルエチルケトン、およびこれらの相互混合物などが用いられる。
また、アクリル系ポリマーの原液のポリマー濃度も分子量と同様に材料の構造や機械的特性あるいは紡糸性に関与してくるものであり、得られる材料の構造および機械的特性を考慮すると、原液中のポリマー濃度は5〜30重量%、さらには10〜30重量%の範囲に設定されることが好ましい。
さらに、このようなアクリル系ポリマーの基材を多孔状にするために、多価アルコールや水、塩などといった第3の添加剤を加えることも通常行なわれ、添加量により孔径を制御できる。
このようして得られるアクリル系ポリマーの原液の粘度は繊維状や中空糸膜状に製造する場合、紡糸性と深く関わってくる要因であり、用いる口金の形状や寸法あるいは制御可能な温度範囲、ゾル−ゲル変化温度などを考慮して決定することが好ましい。通常、10〜8000ポイズであることが好ましく、さらには100〜3000ポイズであることが好ましい。すなわちポリマー濃度と分子量を適宜選択することで最適な紡糸原液条件を設定することが可能となる。
次に、本発明に好ましく用いられるアクリル系ポリマーを含む基材の一種である中空糸膜状の含水ポリメチルメタクリレートを製造する例を示す。
通常、中空糸膜の紡糸に用いられる乾湿式紡糸法は、吐出された糸条を空中で伸長し、
所定の寸法に設定した後、凝固浴に導いて凝固・脱溶媒を行なう方法であり、一般に広く
採用されている。
中空糸は内側に中空部分を形成させるための液体もしくは気体を、外側に重合体を溶液に溶かした紡糸原液を流すことができる多重スリットを用い、これらの液体、気体を凝固浴に吐出することにより得られる。内側に注入される液体としては、たとえば、該紡糸原液の溶媒および水やアルコールなどの凝固剤、これらの混合物、あるいは該共重合体やそれとの混合物の非溶媒であるような疎水性の液体、たとえば、n−オクタン、流動パラフィンなどの脂肪族炭化水素、ミリスチン酸イソプロピルの様な脂肪酸エステルなども使用できる。親水性の凝固剤を使用した場合には凝固剤に親和性の高い親水性ポリマ成分が膜内表面に移動し、凝固する。また、吐出糸条が空中での温度変化によってゲル化したり、
凝固によって速やかに強固な構造を形成する場合には、自己吸引や圧入によって、窒素ガスや空気などの不活性気体を用いることができる。このような気体注入法は工程上からも非常に有利な方法である。温度変化によってゲル化をおこすような原液系の場合には、乾式部分において冷風を吹き付け、ゲル化を促進させることができる。中空糸の膜厚は紡糸原液の吐出量により、内径は注入液体もしくは気体の量によりコントロールする方法が一般的である。
吐出口金から浴液までの距離、いわゆる乾式部分の長さ(以下、乾式長と略)は、吐出ゾルの形状を目的寸法までに引き伸ばすために、一定距離を空中部分において、ゾルの状態でドラフトをかけることが好ましい。一方で、急激なドラフトは製糸安定性を低下させるため、ある程度乾式長を長くとることが好ましい。また同時に、乾式長が長すぎると、
ゾルの変形が不安定となり、中空糸の寸法安定性が悪くなる傾向がある。したがって、乾式長は1mm以上、30mm以下であることが好ましく、さらに好ましくは2mm以上20mm以下に設定される。
吐出ゾルをゲル化させ中空糸形状を固定するための液浴は、ゲル化のみを行なわせることもあるが、ゲル化と共にその脱溶媒を同時に行なう方が工程上有利な場合が多く、凝固浴として用いられる。したがって、その組成および特にその温度が中空糸の透過特性にも影響を及ぼす可能性がある。一般的には凝固浴温が高くなると、膜の透過性(孔径)は大きくなるが、寸法安定性は低下する傾向にあるため、目的の中空糸の特性に応じた条件が選択され、通常5〜70℃であることが好ましく、さらには、20〜50℃であることが好ましい。凝固浴は通常、水やアルコールなどの凝固剤、または紡糸原液を構成している溶媒との混合物からなる。凝固浴の組成はその凝固性によって、紡糸安定性や中空繊維の膜構造に影響する。
かくして得られた中空糸状膜は、十分に水洗され、膜の空隙に水分子を含有した含水状態として得られる。この含水状態がいったん乾燥すると、再び元の含水状態に戻すことは困難であるため、乾燥によって、その膜構造が破壊されないようグリセリンなどの保湿剤を付与して、モジュール化などが行われる。乾燥したポリメタアクリレートを含む多孔質材料の場合は、水に浸漬しても含水状態にはならないが、表面張力の小さいエタノールなどにいったん浸漬した後、水と徐々に置換させることにより、再び含水化させることが可能である。
アクリル系ポリマーを含む基材を含水状態にするには、一般に基材が多孔質であることが好ましい。多孔質材料における空孔率が高いほど、より高い含水状態を達成できる。ここでいう空孔率とは、以下の式により算出される。
A:実際の材料の乾燥重量(g)
B:材料に空孔がないと仮定した場合の材料の重量(g)(材料に空孔がないと仮定した
場合の体積に材料素材の比重をかけた値)
空孔率={1−(A/B)}×100
空孔率は高いほどよいが、含水率を10重量%以上とするためには30%以上が好ましく
、さらに好ましくは50%以上である。
以上のようにして作製した多様な形状のアクリル系ポリマーを含む基材にポリアルキレングリコールを含む物質を吸着させることにより多様な形状の刺激応答性材料を作製することができる。
本発明におけるポリアルキレングリコールを含む物質とはポリアルキレングリコール自体あるいはポリアルキレングリコールと他の物質が結合している物質を指し、その結合形式としては化学結合、イオン結合、水素結合、疎水性結合などが挙げられる。
本発明におけるポリアルキレングリコールとは、アクリル系ポリマー特にポリメチルメタクリレートと相互作用を有するものであれば、何でもよいが、、例えばポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールに代表される主鎖中に酸素原子を含む親水性の鎖状高分子が好適に用いられる。形状は1本鎖、あるいは分岐していてもよく、ポリアルキレングリコールの一部が修飾されたポリマーであってもよい。
ポリアルキレングリコールを含む物質をアクリル系ポリマーを含む基材に吸着させる際にはアクリル系ポリマーを含む基材を水溶液中に入れ、含水状態にするなどした後、ポリアルキレングリコールを含む物質を水溶液に溶解した溶液を添加して、20℃以上にして吸着させることで本発明の刺激応答性材料が作製できる。水溶液は純水でも良いし、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液、炭酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、グリシン緩衝液、MOPS緩衝液、HEPES緩衝液、MES緩衝液、ハンクス液などの緩衝液でも良い、また、MEM、DMEM、αMEM,WE、F12、RPMI1640、L−15、MCDB153などの細胞培養用の培養液を用いても良い。pHとしてはpH2〜13の間ならどの値をとっても良く、塩化ナトリウムや硫酸アンモニウムを添加して0.1mM以上の高イオン濃度の状態にしても良い。このような作製方法において、塩を全く含まない純水にポリアルキレングリコールを含む物質を溶解した水溶液を用いてアクリル系ポリマーを含む基材を吸着させれば、疎水性相互作用による非特異な吸着を抑制することができる。また、水溶液に塩化ナトリウムや硫酸アンモニウムを添加して高イオン濃度にすればイオン相互作用による吸着を抑制することもできる。一歩、アクリル系ポリマーを含む基材とポリアルキレングリコールを含む物質の吸着現象自体については塩濃度の影響はほとんど受けない。
また、アクリル系ポリマーを含む基材とポリアルキレングリコールを含む物質を吸着させる前に予め疎水性部位をもつ物質を含む水溶液でアクリル系ポリマーを含む基材表面の疎水性部位をブロッキングした後、ポリアルキレングリコールを含む物質を吸着させることも可能である。このようなブロッキングに使用できる疎水性部位をもつ物質としては、アルブミンなどの血漿成分やスキムミルクなどの乳性タンパクを使用できるがこれらに限定されないが、このようなブロッキングに利用する疎水性部位を持つ物質の分子量が大きいと、アクリル系ポリマーを含む基材へのポリアルキレングリコールを含む物質の吸着を阻害する傾向が見られるため、適宜検討する必要がある。
ポリアルキレングリコールを含む物質のポリアルキレングリコールの分子量は、特に限定されるものではなく、数平均分子量で1000〜100万程度のものが用いられるが、通常このような刺激応答性材料が使用される0℃〜100℃の温度範囲におけるポリアルキレングリコールのアクリル系ポリマー基材への吸着能と冷却状態における解離能を検討した結果、ポリアルキレングリコールの数平均分子量は1500以上50000以下が好ましく、さらに好ましくは2500以上15000以下である。分子量が2500以下だと、通常このような刺激応答性材料が好ましく使用される0℃〜40℃での温度範囲において吸着能が著しく損なわれ、吸着現象がほとんど起こらない。逆に、15000以上であると0℃〜40℃での温度範囲において一度吸着したポリアルキレングリコールを含む物質の基材からの解離が起きにくくなる傾向がある。
ポリアルキレングリコールを含む物質は、合成したものを用いてもよいし、市販されているものを用いてもよい。合成する場合は、例えば、ポリアルキレングリコールにアミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、スクシンイミド基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、2−ピリジルジスルフィド基、フェニルアジド基、アジド基、マレイミド基、ヨウ素基、臭素基、ビニルスルホン基、ヒドラジン基、ビオチン基、ストレプトアビジン基、などの活性基をあらかじめ導入しておいたものと、それらの官能基と反応する官能基を有する物質を混合して、結合させる方法がある。この際、カルボジイイミドなどの縮合剤などを添加しても良い。
ポリアルキレングリコールを含む物質の結合形式は、AB型でもよいし、ABA型のようにポリアルキレングリコールが挟み込む形式、逆にBAB型のようにポリアルキレングリコールの両端に物質が結合している形でもよい。また、くし型でも星形でもよく、結合の形式は限定されない。
ポリアルキレングリコールに結合している物質としては合成物質でも天然物でも良く、発光物質、蛍光物質、分解物質、生理活性物質などが挙げられるが、徐放製剤用あるいは細胞・物質の分離精製用として用いる場合、生理活性物質がより好ましく用いられる。本発明における生理活性物質とはわずかな量で生物の生理や行動に何らかの特有な作用を示す化学物質を指す。このような生理活性物質としては抗体、レセプター、サイトカイン・増殖因子、接着因子、プロスタグランジンなどの合成医薬、DNA、RNA、ビオチン、ストレプトアビジン、レクチン、人工ペプチド、酵素、補酵素、腫瘍マーカー、抗原、LPSなどバクテリアおよびウィルスの表面活性フラグメント、TSST−1などの毒素、あるいは、ヘパリン、ヒルジントロンボジュリンなどのアンチトロンビン等があげられる。 抗体としては例えば抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗CD11a抗体、抗CD11b抗体、抗CD14抗体、抗CD19抗体、抗CD34抗体、抗CD45抗体、抗CD133抗体などの表面抗原に対する抗体、抗低比重リポ蛋白質(LDL)抗体、抗酸化LDL抗体、抗β2ミクログロブリン抗体、抗CCR1抗体、抗CCR2抗体、抗CCR3抗体、抗CCR4抗体、抗CCR5抗体、抗CCR7抗体、抗CXCR3抗体、抗CX3CR1抗体、抗CXCR5抗体、抗CXCR1抗体などが挙げられるが、これらに限定されない。また、また、レセプターとしては例えば、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR7、CXCR1、CXCR3、CX3CR1、CXCR5等のサイトカインレセプターやFcγ,Fcε等のイムノグロブリンレセプター、RAGE,LDLレセプター等のスカベンジャ−レセプター等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、サイトカイン・増殖因子とは細胞膜上の特異的なレセプターに結合して細胞内にシグナル伝達して細胞を活性化する物質をさすが、これらとして、インシュリン、インターロイキン-1α、インターロイキン-1β、インターロイキン-2、インターロイキン-4、インターロイキン-5、インターロイキン-6、インターロイキン-7、インターロイキン-8、インターロイキン-10、インターロイキン-11、インターロイキン-12、インターロイキン-13、インターロイキン-14、インターロイキン-15、インターロイキン-16、インターロイキン-17、インターロイキン-18、顆粒球刺激因子(G-CSF、)顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、MCP-1、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、Flk-2/Flt-3リガンド(FL)、FasリガンドやCD40リガンドなどが、増殖、分化因子としては、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)、FGF-2、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)、オステオネクチン、アンジオポイエチン、肝細胞増殖因子(HGF)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インシュリン様増殖因子(IGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)、神経成長因子(NGF)、白血病阻害因子(LIF)、幹細胞増殖因子(SCF)、骨形成タンパク質(BMP)インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、腫瘍壊死因子-α、腫瘍壊死因子-βなどが挙げられるがこれらに限定されない。接着因子としては、コラーゲン、プロテオグリカン、フィブロネクチン、ラミニン、カテニンやカドヘリン等のカドヘリンファミリー、I−CAMなどのIgスーパーファミリー、セレクチンファミリー、シアロムチンファミリーなどやこれらの欠損、組換体があげられるがこれらに限定されない。
アクリル系ポリマーを含む基材とポリアルキレングリコールを含む物質を吸着させた刺激応答性材料をカラムとして利用する場合、特に、アクリル系ポリマーを含む基材の形状を中空糸状態で用いる場合は以下のようにして製造されるが、特に限定されるものではない。一例を示すと次の通りである。まず、アクリル系ポリマーの中空糸膜を必要な長さに切断し、必要本数を束ねた後、筒状ケースに入れる。その後両端に仮のキャップをし、中空糸膜両端部にポッティング剤(例えば、二液混合型ポリウレタン系接着剤)を入れる。このとき遠心機でモジュールを回転させながらポッティング剤を入れる方法は、ポッティング剤が均一に充填されるために好ましい方法である。ポッティング剤が固化した後、中空糸膜の両端が開口するように両端部を切断し、中空糸膜モジュールを得る。
本発明における刺激応答材料は徐放製剤として用いたり、細胞製剤の製造方法に利用することができる。本件特許における徐放製剤とは体内の体液中に医薬品などの生体に作用する物質を放出する材料を指し、細胞製剤とは組織や細胞を加工した医薬品や医療用具をさす。
例えば、医薬品として利用できる生理活性物質を結合させたポリアルキレングリコールを体内に導入できるような微粒子状に加工したアクリル系ポリマーを含む基材に吸着させておけば徐放製剤として利用できる。つまり、このような微粒子を患部に送達させた後、10℃以下の低温に患部を冷やすことにより、薬剤を患部付近に放出できるような材料を作製することもできる。この際、アクリル系ポリマーに金属粒子を内包させておき、磁気で指示することにより患部特異的に薬剤を送達させることも可能である。
また、例えばポリアルキレングリコールを含む物質を吸着させた平膜状のアクリル系ポリマーを含む基材上で細胞を接着、培養した後、材料を4℃以下に冷却してポリアルキレングリコールを含む物質を解離して細胞を分離すれば、人工皮膚のような細胞集合体からなる細胞シートが得られる。同様のことを中空糸の形状に加工したアクリル系ポリマーの基材上で行えば、中空糸の物質交換能を利用してこの基材上で連続培養しながら細胞を培養でき、細胞を接着、培養した後、細胞を分離すれば、血管様の管腔組織を製造できる。
また、例えば上記のアクリル系ポリマーの繊維や中空糸膜モジュールのカラムを利用して、抗体を結合したポリアルキレングリコールを吸着させておいてから、細胞を特異的に材料の抗体に認識させた後、温度を10℃以下にしてにすることで、細胞とともに抗体を結合したポリアルキレングリコールをアクリル系ポリマーの中空糸膜から脱離し、この際カラムから脱離した抗体に特異的な細胞を回収することにより細胞製剤の製造方法として使用できる。例えば、末梢血を体外循環することにより、白血球や血小板を捕捉させた後、回収することも可能である。
アクリル系ポリマーを含む基材とポリアルキレングリコールを含む物質を吸着させる前に、繊維状、微粒子状、平膜状、中空糸膜状、多孔状のアクリル系ポリマーの基材ををガンマ線、EOG、蒸気滅菌、乾熱滅菌で予め滅菌しておいた後、ポリアルキレングリコールを含む物質の溶液を濾過滅菌した後、混合して相互作用により吸着させることにより無菌的に刺激応答性材料を作製できることができる。このような方法をとることにより医療用途製品の製造への展開が容易になる。
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[ステレオコンプレックス型ポリメチルメタクリレート(PMMA)中空糸の作製方法]
ポリスチレン換算のGPC法による重量平均分子量が40万のシンジオタクチック(s
yn)−PMMA137gと重量平均分子量が140万のsyn−PMMA80g、平均
分子量が50万のアイソタクチック(iso)−PMMA35gをジメチルスルホキシド
1185gと混合し、110℃で8時間撹拌し紡糸原液を調製した。
得られた紡糸原液を99℃に保温された外径/内径=2.1/1.95mmφの環状ス
リット型中空口金から、1.1g/minの割合で、空気中に吐出した。同時に中空内部
には窒素ガスを注入した。乾式部分の長さは60cm、凝固浴には40℃の水を用いた。
凝固した中空糸を水洗後、75℃、73%のグリセリン水溶液で5%の弛緩熱処理を行っ
てサンプリングした。該中空糸の内径/膜厚は200/30μmであった。得られた中空
糸は25kGyでγ線滅菌した。
(実施例1)
上記と同様の方法で25kGyでγ線滅菌されたPMMA中空糸膜からなる東レ製人工腎臓“フィルトライザー”(登録商標)(BK−1.0F)の含水状態のPMMA中空糸を1cmにカットしたもの48本をチューブにいれ、市販のポリエチレングリコール6000(PEG6000、シグマアルドリッチ製 平均分子量7400〜9000)100μg/mLのリン酸緩衝液溶液(0.1M、pH7.4)を1mL添加して、37℃の温水浴中で2時間吸着させ、吸着後の上清中のPEG6000の濃度を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した(溶離液:0.2M リン酸緩衝液、pH8.0、カラム:東ソー製 G3000SWXL、装置:東ソー社、HPLCシステム、流速:1.0mL/min、温度:10℃)ところ、添加したPEG6000の80%以上が吸着していた。このPEG6000が吸着したPMMA中空糸を1mLのリン酸緩衝液中に添加し、氷浴中で4℃で冷却した後、リン酸緩衝液中に解離、放出されたPEG6000の濃度を同様にHPLCで分析したところ吸着したPEG6000のうち60%以上がPMMA中空糸より解離、放出されることが確認された。
(実施例2)
ポリエチレングリコール10000(PEG10000、メルク社製、平均分子量9000〜12500)を使用して実施例1と同様の方法を検討したところ、PEG10000の中空糸への吸着率は100%であり、吸着したPEG10000のうち50%以上が冷却により中空糸より解離、放出された。
(実施例3)
ポリエチレングリコール4000(PEG4000、シグマアルドリッチ製、平均分子量2700〜3400)を使用して実施例1と同様の方法を検討したところ、PEG4000は中空糸に60%吸着し、吸着したPEG4000のうち80%が中空糸より冷却により解離、放出された。
[抗体とPEGの結合体の作製方法]
1mg/mLのヒト抗体(シグマ社製)を溶解したリン酸緩衝液(0.1M、pH7.4)に対し、末端がスクシンイミド基で活性化されたポリエチレングリコールSUNBRIGHT MEGC−10TS(日本油脂製、平均分子量10000)をモル比で1:10で添加して室温で1時間撹拌した後、未反応のPEGを限外濾過(ミリポア製、ウルトラフリーカートリッッジ、カットオフ50kDa)で除去して、電気泳動及びHPLCで分析したところ、このポリエチレングリコールが複数個結合したヒト抗体(PEG化抗体)を得た。
(実施例4)
このPEG化抗体100μg/mLの水溶液を用いて実施例1と同様の方法でPMMA中空糸を1cmにカットしたもの48本に対し、吸着・放出させ、HPLCで分析したところ、PEG化抗体は95%吸着し、冷却によりそのうちの20%が放出された。
(比較例1)
未修飾のヒト抗体100μg/mLの水溶液を用いて実施例1と同様の方法でPMMA中空糸を1cmにカットしたもの48本に対し、吸着・放出させ、HPLCで分析したところ、ヒト抗体は100%吸着したが、冷却による放出は確認されなかった。
(実施例5)
PMMA中空糸を3%のウシ血清アルブミン(BSA)で一晩ブロッキングした後、中空糸を1cmにカットしたもの48本を用いて実施例4と同様にPEG化抗体の吸着・放出をHPLCで分析したところ、PEG化抗体は50%吸着し、氷浴での冷却によりそのうちの70%が放出された
[インシュリンとPEGの結合体]
1mg/mLのインシュリン(シグマ社製)を溶解したリン酸緩衝液(0.1M、pH7.4)に対し、末端がスクシンイミド基で活性化されたポリエチレングリコールmPEG−SPA(NEKTAR社製、平均分子量5000)をモル比で1:5で添加して室温で1時間撹拌した後、HPLCで分析したところ、PEG鎖が1本以上結合しているインシュリン(PEG化インシュリン)を得た。
(実施例6)
このPEG化インシュリン100μg/mLの水溶液を用いて実施例5と同様の方法でBSAを吸着したPMMA中空糸を1cmにカットしたもの48本に対し、吸着・放出させ、HPLCで分析したところ、PEG化インシュリンは60%吸着し、氷浴での冷却によりそのうちの20%の放出が確認された。
(比較例2)
未修飾のインシュリン100μg/mLの水溶液を用いて実施例6と同様の方法でBSAを吸着したPMMA中空糸を1cmにカットしたもの48本に対し、吸着・放出させ、HPLCで分析したところ、インシュリンは100%吸着したが、氷浴での冷却による放出は確認されなかった。
「カラムの作製方法」
東レ製人工腎臓“フィルトライザー”(登録商標)(BK−1.0F)のPMMA中空糸15cmに切断し、48本を束ねた後、直径0.7cm、長さ10cmの筒状ケースに入れた、その後両端に仮のキャップをし、中空糸膜両端部に二液混合型ポリウレタン系接着剤を入れる。ポッティング剤が固化した後、中空糸膜の両端が開口するように両端部を切断し、中空糸膜モジュールカラムを得た。
(実施例7)
上記と同様の方法で抗体として抗CD4抗体(ベクトン・ディッキンソン社製)を利用してPEG化した抗体を得、このPEG化抗CD4抗体の溶液(100μg/mL)15mLを上記で作製したカラムの中空糸の内腔側に室温で12時間灌流して、抗CD4抗体を中空糸内腔側面に固定した。このカラム中空糸の内腔側に、比重遠心法により末梢血から得た末梢血単核球(PBMC)1×106個/mLを含む10mLのリン酸緩衝液を室温で2時間灌流し、固定した抗CD4抗体によりCD4陽性細胞をカラムに捕捉した。捕捉後、室温下でリン酸緩衝液100mLを灌流することにより中空糸内腔側を洗浄した後、このカラムを低温室4℃雰囲気下に30分置き、さらに4℃に冷却したリン酸緩衝液50mLを1時間、内腔側で灌流して細胞を回収し、回収した細胞の表面抗原をフローサイトメトリーで分析したところ。95%以上がCD4陽性細胞であった。
(実施例8)
上記で作製した中空糸を1cm×48本分をすべて1mmの長さに切断してカットファイバーとし、上記で作製したPEGとインシュリンの結合体(PEG化インシュリン)を100μg/mLを1mL添加して37℃で2時間吸着させた。
96穴プレート中で1×105cells/mL密度のCHO細胞を播種し、無血清のDMEM中で37℃、5%CO2雰囲気下で培養した。この際、PEGとインシュリンの結合体を吸着させたカットファイバーを10本/ウェル添加して培養した。プレート全体を1日に30分4℃に冷却してインシュリンを放出させたところ。CHO細胞が3日で10倍に増殖した。
(比較例3)
上記実施例8と同様の細胞培養において37℃の雰囲気のまま培養を行ったところCHO細胞は増殖しなかった。

Claims (15)

  1. アクリル系ポリマーを含む基材にポリアルキレングリコールを含む物質を吸着させたことを特徴とする刺激応答性材料。
  2. 該刺激応答性材料を冷却することによりアクリル系ポリマーを含む基材からポリアルキレングリコールを含む物質が解離することを特徴とする請求項1記載の刺激応答性材料。
  3. アクリル系ポリマーを含む基材にポリアルキレングリコールを含む物質を20℃以上で吸着させたことを特徴とする請求項2記載の刺激応答性材料。
  4. 該刺激応答性材料を10℃以下に冷却することによりアクリル系ポリマーを含む基材からポリアルキレングリコールを含む物質が解離することを特徴とする請求項2記載の刺激応答性材料。
  5. アクリル系ポリマーがポリメタアクリレートであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の刺激応答性材料。
  6. アクリル系ポリマーを含む基材の含水率が10重量%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の刺激応答性材料。
  7. アクリル系ポリマーを含む基材の形状が中空糸状、繊維状、多孔状、微粒子状、平膜状のいずれかであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の刺激応答性材料。
  8. ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールあるいはポリプロピレングリコールであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の刺激応答性材料。
  9. ポリアルキレングリコールの分子量が2500〜15000であることを特徴とする請求項8記載の刺激応答性材料。
  10. ポリアルキレングリコールを含む物質がポリアルキレングリコールに生理活性物質を結合した物質であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の刺激応答性材料。
  11. 生理活性物質が抗体および/またはサイトカインおよび/または増殖因子であることを特徴とする請求項10記載の刺激応答性材料。
  12. 請求項10又は11に記載の刺激応答性材料を用いた徐放製剤。
  13. 細胞または物質の分離精製に用いられることを特徴とする請求項10又は11に記載の刺激応答性材料。
  14. 細胞または物質を該刺激応答性材料に作用させて捕捉した後、冷却して該細胞または物質を分離することに用いられることを特徴とする請求項10又は11に記載の刺激応答性材料。
  15. 請求項1〜14のいずれかに記載の刺激応答性材料を用いた細胞製剤の製造方法。
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