JP2004196777A - 生理活性物質含有材料およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】
外部刺激により脱離できる生理活性物質を含む材料の滅菌に関わる問題を解決し、生理活性物質と材料を別々に滅菌した後で、無菌的に混合することにより、容易に滅菌された外部刺激により脱離できる生理活性物質を含む材料を提供する。
【解決手段】
アクリル系ポリマー、特に含水率が10重量%以上である材料に、外部刺激により解離可能な生理活性物質とリンカーとの複合体が固定された生理活性物質を含む材料、または、外部刺激により解離可能な生理活性物質とリンカーの複合体を水溶液状態にし、アクリル系ポリマー、特に含水率が10重量%以上である材料に接触し固定させることを特徴とする生理活性物質を含む材料の製造方法、または、外部刺激により解離可能な生理活性物質とリンカーの複合体を水溶液状態で無菌ろ過滅菌し、ろ過滅菌した生理活性物質とリンカーの複合体の水溶液を別に滅菌されたアクリル系ポリマー、特に含水率が10重量%以上である材料に無
菌的に接触し固定させることを特徴とする生理活性物質を含む材料の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、外部刺激により脱離可能な生理活性物質を含む材料およびその製造方法、特に滅菌された外部刺激により脱離可能な生理活性物質を含む材料およびその製造方法に関するものであ。
近年、生理活性物質を含む材料が血液浄化用途、細胞分離用途、細胞培養用途、組織形成用途などの医療材料として利用されている。これら生理活性物質を含む材料の担体素材としては、セルロース、セルロース誘導体、アガロース、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスルホン系ポリマー、キチン、キトサン、ポリウレタンなどの高分子化合物が用いられ、担体の形状としては、ビーズ、繊維、中空糸膜、平膜、ゲルなどが用いられている。
しかし、これら担体になんらかの生理活性物質を含有させる際は、臭化シアンで活性基を表面に導入したり、スクシンイミド基、α−クロロアセトアミドメチル基などの活性基を表面に導入したり、担体官能基と生理活性物質の官能基を結合させてやるためにカルボジイミドなどを利用したりして、生理活性物質を共有結合などにより固定してやる必要があった(例えば、非特許文献1、特許文献1参照)。また、生理活性物質を固定したカラム担体を用いて目的物質を回収する技術として、プロテインGセファロース、キレートカラム、グルタチオンカラムなどが知られており、これらの技術は固定した生理活性物質が何らかの外部刺激で脱離できるような構造をもつことにより、一度生理活性物質に吸着した物質を、外部刺激により生理活性物質と共に脱離、回収することができるものとなっている(例えば、非特許文献2参照)。
ところで、アクリル系ポリマー、特にメタクリレート系ポリマーは生体適合性に優れており、眼内レンズやコンタクトレンズ、人工腎臓をはじめとして種々の分離膜やフィルム、ハイドロゲルなどに用いられている。しかし、現在利用されているアクリル系ポリマーに生理活性物質を固定する際は、アクリル系ポリマーに官能基を導入したり(非特許文献3参照)、架橋剤などを利用して共有結合により固定しているため、滅菌の必要な医療用途に用いる際は、前述のように無菌状態で製造を行わないといけないため、コスト面で問題、すなわち製造コストがかかってしまう問題があった。さらに医療用途の場合は製品を滅菌しなければならないが、抗体などの生理活性物質は、放射線や熱による滅菌により失活してしまうため、抗体などの生理活性物質を固定したような医療用具を製造する場合は製造プロセスをすべて無菌状態にして製造しなければならず、莫大な製造コストを必要としている。
一方、アクリル系ポリマーのような合成物質とポリアルキレングリコールと結合した物質との相互作用を利用した組成物に関する技術が知られており(特許文献2参照)、該技術によれば、アクリル系ポリマーへの生理活性物質の固定が可能であるが、固定された生理活性物質は脱離できないため、生理活性物質や生理活性物質と結合した物質、細胞を回収することができないという問題がある。
国際公開第97/027878号パンフレット ポール・T・シャープ(P.T.Sharpe),「生化学実験法13−細胞分離法−」,東京化学同人,第1版,1991年,p.151〜190p ファルマシアバイオテク株式会社,「アフィニティクロマトグラフィー」、1994年、p41〜102 伊藤嘉浩ら、「プロシーディングズ オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンシズ(Proceedings of National Academy of Sciences)」,ナショナル アカデミー オブ サイエンス オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ(National Academy of Sciences of the United States of America),1996年,93巻,p.3598−3601 特表2001−527539号公報
本発明では、上記の問題を考慮して、外部刺激により脱離できる生理活性物質を含む材料を提供し、生理活性物質を含む材料の滅菌に関わる問題を解決し、生理活性物質を含む物質と材料を別々に滅菌した後で、無菌的に混合することにより、容易に滅菌された外部刺激により脱離できる生理活性物質を含む、アクリル系ポリマーからなる材料を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は主として以下の構成を有する。
すなわち、「アクリル系ポリマーと、リンカーと生理活性物質を含有し、外部刺激により生理活性物質が脱離することを特徴とする生理活性物質含有材料。」、および「外部刺激により解離可能な生理活性物質とリンカーの複合体を水溶液状態にし、アクリル系ポリマーに接触し固定させることを特徴とする生理活性物質含有材料の製造方法。」である。
本発明により、外部刺激により脱離できる生理活性物質を含む材料の滅菌に関わる問題を解決し、生理活性物質と材料を別々に滅菌した後で、無菌的に混合することにより、容易に滅菌された生理活性物質を含む材料を提供することができる。
本発明は、アクリル系ポリマーと、リンカーと生理活性物質を含有し、外部刺激により生理活性物質が脱離することを特徴とする生理活性物質含有材料である。
本発明におけるアクリル系ポリマーとは、主としてアクリル酸、メタクリル酸およびこれらの誘導体の重合体であり、具体的にはポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリフェニルメタクリレート、ポリフェニルアクリレートなどが挙げられるが、生体適合性の点からポリメチルメタクリレートが望ましい。本発明で用いられるアクリル系ポリマーは、その他のモノマーを共重合することにより適宜、コポリマーとして用いてもよい。
本発明に好ましく用いられるポリメチルメタクリレートは、アイソタクチック構造部分とシンジオタクチック構造部分をもつが、アイソタクチックリッチのポリマーを単独で用いてもよいし、シンジオタクチックリッチのポリマーを単独で用いてもよい。しかし、アイソタクチシチの高いポリメチルメタクリレートと、シンジオタクチシチの高いポリメチルメタクリレートとは、ある条件下において構造的な絡み合い、いわゆるステレオコンプレックスを形成できるため、成形性の観点から両者をブレンドしてステレオコンプレックス構造をもたせたものが望ましい。
アイソタクチックポリメチルメタクリレートとしては、アイソタクチック構造(トライアド表示)が50%以上、好ましくは70%以上を含むものが用いられる。ポリメチルメタクリレートの立体構造は核磁気共鳴吸収法によって、定量的に求めることができる。アイソタクチックポリメチルメタクリレートは一般にグリニヤ試薬またはアルキルリチウムなどの有機金属化合物を用いる重合によって得られ、このような方法によれば、アイソタクチック構造の含量90%以上のポリマーを得ることも可能である。
一方、シンジオタクチシチの高いシンジオタクチックポリメチルメタクリレートは通常のラジカル重合によって得られる。この場合、カルボキシル基や、スルホン酸基などの陰イオン性基あるいは第4級アンモニウム基や、アミノ基などの陽イオン性基、さらにヒドロキシエチルメタクリレートやアクリルアミドなどの非イオン性基などを含有するビニルモノマーなどを1種類以上共重合することも可能である。また、ポリメチルメタクリレート単独重合品や分子量の異なったポリマー、あるいは異なる種類の共重合ポリマーなどを数種類混合して用いることも、必要に応じて行なわれる。
ポリメチルメタクリレート系ポリマーの平均分子量は、目的とする材料の構造や、機械的特性、さらに紡糸性などを考慮すると、通常10万以上が好ましい。
材料の形態としては、繊維状のもの、球状のもの、平膜状のもの、中空糸膜状のものなど特に限定されない。
本発明で使用されるポリメチルメタクリレート系ポリマーは、例えば公知の乾湿式紡糸法で製造できる。ポリメチルメタクリレート系ポリマーの原液の溶媒としては、ゾル−ゲル変化を示すポリメタクリレート系ポリマーを溶解する溶媒はすべて使用可能であるが、原液を冷却した時に適当な温度で、ゲル化する溶媒が好ましく使用される。さらに、凝固時に脱溶媒して製品とするための凝固剤としては、水が好ましく用いられるため、この水と置換容易な溶媒が特に好ましい。このため、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、酢酸、アセトン、メチルエチルケトン、およびこれらの相互混合物などが用いられる。
また、ポリメチルメタクリレート系ポリマーの原液のポリマー濃度も分子量と同様に材料の構造や機械的特性あるいは紡糸性に関与してくるものであり、得られる材料の構造および機械的特性を考慮すると、原液中のポリマー濃度は5〜30重量%、さらには10〜30重量%の範囲に設定されることが好ましい。
さらに、材料の細孔径制御のために、多価アルコールや水、塩などといった第3の添加剤を加えることも通常行なわれる手段である。
このようして得られるポリメチルメタクリレート系ポリマーの原液の粘度は繊維状や中空糸膜状に製造する場合、紡糸性と深く関わってくる要因であり、用いる口金の形状や寸法あるいは制御可能な温度範囲、ゾル−ゲル変化温度などを考慮して決定することが好ましい。通常、10〜8000ポイズであることが好ましく、さらには100〜3000ポイズであることが好ましい。すなわちポリマー濃度と分子量を適宜選択することで最適な紡糸原液条件を設定することが可能となる。
次に、本発明に好ましく用いられる中空糸膜状の含水ポリメチルメタクリレート系材料を製造する例を示す。
通常、中空糸膜の紡糸に用いられる乾湿式紡糸法は、吐出された糸条を空中で伸長し、所定の寸法に設定した後、凝固浴に導いて凝固・脱溶媒を行なう方法であり、一般に広く採用されている。
中空糸は内側に中空部分を形成させるための液体もしくは気体を、外側に重合体を溶液に溶かした紡糸原液を流すことができる多重スリットを用い、これらの液体、気体を凝固浴に吐出することにより得られる。内側に注入される液体としては、たとえば、該紡糸原液の溶媒および水やアルコールなどの凝固剤、これらの混合物、あるいは該共重合体やそれとの混合物の非溶媒であるような疎水性の液体、たとえば、n−オクタン、流動パラフィンなどの脂肪族炭化水素、ミリスチン酸イソプロピルの様な脂肪酸エステルなども使用できる。親水性の凝固剤を使用した場合には凝固剤に親和性の高い親水性ポリマ成分が膜内表面に移動し、凝固する。また、吐出糸条が空中での温度変化によってゲル化したり、凝固によって速やかに強固な構造を形成する場合には、自己吸引や圧入によって、窒素ガスや空気などの不活性気体を用いることができる。このような気体注入法は工程上からも非常に有利な方法である。温度変化によってゲル化をおこすような原液系の場合には、乾式部分において冷風を吹き付け、ゲル化を促進させることができる。中空糸の膜厚は紡糸原液の吐出量により、内径は注入液体もしくは気体の量によりコントロールする方法が一般的である。
吐出口金から浴液までの距離、いわゆる乾式部分の長さ(以下、乾式長と略)は、吐出ゾルの形状を目的寸法までに引き伸ばすために、一定距離を空中部分において、ゾルの状態でドラフトをかけることが好ましい。一方で、急激なドラフトは製糸安定性を低下させるため、ある程度乾式長を長くとることが好ましい。また同時に、乾式長が長すぎると、ゾルの変形が不安定となり、中空糸の寸法安定性が悪くなる傾向がある。したがって、乾式長は1mm以上、30mm以下であることが好ましく、さらに好ましくは2mm以上20mm以下に設定される。
吐出ゾルをゲル化させ中空糸形状を固定するための液浴は、ゲル化のみを行なわせることもあるが、ゲル化と共にその脱溶媒を同時に行なう方が工程上有利な場合が多く、凝固浴として用いられる。したがって、その組成および特にその温度が中空糸の透過特性にも影響を及ぼす可能性がある。一般的には凝固浴温が高くなると、膜の透過性(孔径)は大きくなるが、寸法安定性は低下する傾向にあるため、目的の中空糸の特性に応じた条件が選択され、通常5〜70℃であることが好ましく、さらには、20〜50℃であることが好ましい。凝固浴は通常、水やアルコールなどの凝固剤、または紡糸原液を構成している溶媒との混合物からなる。凝固浴の組成はその凝固性によって、紡糸安定性や中空繊維の膜構造に影響する。
かくして得られた中空糸状ゲルは、十分に水洗され、膜の空隙に水分子を含有した含水ゲル構造が得られる。含水ゲル構造はいったん乾燥すると、再び元の含水ゲル構造に戻すことは困難であるため、乾燥によって、その膜構造が破壊されないようグリセリンなどの保湿剤を付与して、モジュール化などが行われる。
乾燥したポリメタクリレート系多孔質材料の場合は、水に浸漬しても含水状態にはならないが、表面張力の小さいエタノールなどにいったん浸漬した後、水と徐々に置換させることにより、再び含水化させることが可能である。
得られた中空糸束は、通常の方法によって所定のケースに装填した後、ポリウレタンなどの封止剤などによってモジュール化する。さらに、洗浄および滅菌を行なって、医療における血液浄化やさらには濾過分離などの目的に供する。
含水状態のアクリル系ポリマーにリンカーと外部刺激により解離できるように複合した生理活性物質を含む水溶液を添加することにより、外部刺激により脱離できる生理活性物質をアクリル系ポリマーに固定することができる。これは疎水的相互作用および水素結合により固定されると考えられる。
本発明においては、含水状態は含水率が10重量%以上の状態である必要がある。ここでいう含水率(重量%)とは、水を含んだ材料中の水の重量を含水状態の材料の重量で割った値に100をかけた値のことをいう。具体的には、水を含んだ材料の表面の水を拭き取り、その重量を測定し、その後その材料を十分乾燥して乾燥重量を測定して、含まれていた水の重量を算出する。
本発明の生理活性物質含有材料においては、アクリル系ポリマーの含水率は高いほど、生理活性物質の固定化効率は高い。必要な固定化効率を得るために、含水率としては10重量%以上が必要であり、さらに望ましくは30重量%以上である。
アクリル系ポリマーを含水状態にするには、該アクリル系ポリマーが多孔質材料であることが好ましい。多孔質材料における空孔率が高いほど、より高い含水状態を達成できる。ここでいう空孔率とは、以下の式により算出される。
A:実際の材料の乾燥重量(g)
B:材料に空孔がないと仮定した場合の材料の重量(g)(材料に空孔がないと仮定した場合の体積に材料素材の比重をかけた値)
空孔率={1−(A/B)}×100
空孔率は高いほどよいが、含水率を10重量%以上とするためには30%以上が好ましく、さらに好ましくは50%以上であることが好ましい。
材料の形状としては平膜状、粒子状、中空糸状、繊維状、スポンジ状、カットファイバーなど何でもよいが、血液浄化用途、細胞培養用途の場合は、閉鎖系で圧力損失を伴わず、細胞を傷つけず循環できる利点から中空糸膜が望ましい。また、表面積を確保する点、含水状態とする点からこれらは多孔質であることがのぞましい。多孔質として用いる場合は、透析やろ過機能を付与することができ、血液浄化用途のみならず、バイオリアクターなどの細胞培養用途としても用いることができる。多孔質材料の場合は、製造条件を制御することにより孔の制御も可能である。
本発明におけるリンカーとは、アクリル系ポリマーと相互作用を有するものであれば、何でもよいが、中でもポリアルキレングリコールが好適に用いられる。
本発明におけるポリアルキレングリコールは、例えばポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールに代表される主鎖中に酸素原子を含む親水性の鎖状高分子であるが、ポリアルキレングリコールの一部が官能基等で修飾されたポリマーであってもよい。ポリアルキレングリコールの分子量は、特に限定されるものではなく、数平均分子量で1000〜100万程度のものが用いられるが、アクリル系ポリマーに対する吸着能を考慮した上での最適な分子量としては、例えば2000〜10万程度のものが好ましく用いられる。
本発明で使用する生理活性物質は、a)細胞や病因物質などのターゲット物質と相互作用をもつものや、b)細胞を活性化するもの、c)接着因子などがあげられる。これらは単独、または複数組み合わせて用いられる。以下、それぞれについて説明する。
a)細胞や病因物質などのターゲット物質と相互作用をもつもの:
細胞や病因物質などのターゲット物質と相互作用をもつものの場合、特異性の点から抗体およびレセプターを好ましく用いることができる。用いる抗体としては、例えば、抗CD1a抗体、抗CD1b抗体、抗CD1c抗体、抗CD2抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗CD10抗体、抗CD11a抗体、抗CD11b抗体、抗CD11c抗体、抗CDw12抗体、抗CD13抗体、抗CD14抗体、抗CD15抗体、抗CD16a抗体、抗CD16b抗体、抗CD18抗体、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD23抗体、抗CD24抗体、抗CD25抗体、抗CD26抗体、抗CD27抗体、抗CD28抗体、抗CD30抗体、抗CD31抗体、抗CD32抗体、抗CD33抗体、抗CD34抗体、抗CD38抗体、抗CD40抗体、抗CD42a抗体、抗CD44抗体、抗CD45抗体、抗CD45RA抗体、抗CD45RO抗体、抗CD49d抗体、抗CD50抗体、抗CD54抗体、抗CD56抗体、抗CD57抗体、抗CD58抗体、抗CD61抗体、抗CD62L抗体、抗CD62P抗体、抗CD66抗体、抗CD69抗体、抗CD70抗体、抗CD71抗体、抗CD80抗体、抗CD81抗体、抗CD86抗体、抗CD95抗体、抗CD102抗体、抗CD105抗体、抗CD106抗体、抗CD109抗体、抗CDw119抗体、抗CD120a抗体、抗CD120b抗体、抗CD121a抗体、抗CDw121b抗体、抗CD122抗体、抗CD123抗体、抗CD126抗体、抗CDw128a抗体、抗CD130抗体、抗CDw131抗体、抗CD132抗体、抗CD133抗体、抗CD134抗体、抗CD105抗体、抗CD138抗体、CD152抗体、抗CD154抗体、抗CD199抗体、抗免疫グロブリン抗体、抗低比重リポ蛋白質(LDL)抗体、抗酸化LDL抗体、抗β2ミクログロブリン抗体、抗糖化最終生成物(AGE)抗体、抗CCR1抗体、抗CCR2抗体、抗CCR3抗体、抗CCR4抗体、抗CCR5抗体、抗CCR7抗体、抗CXCR3抗体、抗CX3CR1抗体、抗CXCR5抗体、抗CXCR1抗体などが挙げられるが、これらに限定されない。また、レセプターとしては例えば、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR7、CXCR1、CXCR3、CX3CR1、CXCR5等のサイトカインレセプターやFcγ,Fcε等のイムノグロブリンレセプター、RAGE,LDLレセプター等のスカベンジャ−レセプター等,T細胞レセプターや主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスIおよびクラスIIやそれらに抗原ペプチドを複合したもの等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの抗体やレセプターは単独で固定しても良いし、複数の抗体やレセプターを組み合わせても良い。抗体は、アフィニティーの高さからモノクローナル抗体が好ましい。
これら抗体やレセプターは目的によって種々選定することができ、血液中の有用物質や病因物質を特異的に除去、回収する場合は細胞、無機物、タンパク質、DNA、脂質、糖、ウィルスなどがターゲットとして挙げられる。例えば、本発明における細胞分離用途として、抗CD2抗体を用いればT細胞およびNK細胞を分離でき、抗CD3抗体を用いればT細胞をを分離でき、抗CD4抗体を用いればヘルパーT細胞を分離でき、抗CD8抗体を用いればサイトトキシックT細胞を分離でき、抗CD11aを用いれば白血球を分離でき、抗CD11bを用いれば単球を分離でき、抗CD14抗体を用いれば単球やマクロファージを分離でき、抗CD15抗体を用いれば顆粒球やミエロイド細胞を分離でき、抗CD16細胞を用いれば好中球あるいは休止期NK細胞を分離でき、抗CD19抗体を用いればB細胞を分離でき、抗CD22抗体を用いればB細胞を分離でき、抗CD27抗体を用いればナイーブB細胞やメモリーB細胞を分離でき、抗CD30抗体を用いれば活性化B細胞および活性化T細胞を分離でき、抗CD33細胞を用いれば単球、顆粒球およびミエロイド細胞を分離でき、抗CD34抗体を用いれば造血幹細胞を分離でき、抗CD45抗体を用いれば白血球を分離でき、抗CD56抗体を用いればNK細胞を分離でき、抗CD61抗体を用いれば巨核球及びその前駆細胞を分離でき、抗CD66抗体を用いれば顆粒球を分離でき、抗CD69抗体を用いれば活性化T細胞や活性化B細胞やNK細胞を分離でき、抗CD71抗体を用いれば赤芽球や活性化されたリンパ芽球を分離でき、抗CD105抗体を用いれば内皮細胞、抗CD133抗体を用いれば神経幹細胞を分離できる。抗免疫グロブリン抗体を用いればB細胞を分離できる。また、抗酸化LDL抗体を用いれば酸化LDL、抗β2ミクログロブリン抗体を用いればβ2ミクログロブリン、RAGEを用いれば、AGEを回収できる。
b)細胞を活性化するもの:
細胞を活性化するものとして、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン−2、インターロイキン−4、インターロイキン−12、抗CD2抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD11a抗体、抗CD27抗体、抗CD28抗体、抗CD44抗体、抗CD45抗体、抗CD45RA抗体、抗CD45RO抗体やT細胞レセプター、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスIおよびクラスIIやそれらに抗原ペプチドを複合したもの等が挙げられる。例えば、本発明における細胞培養用途として、材料に抗CD3抗体や抗CD28抗体を固定化したものを用いてリンパ球を培養すれば、培養によりリンパ球が活性化され、培養されたリンパ球をがん免疫療法に用いることができる。
c)接着因子:
接着因子として、コラーゲン、プロテオグリカン、フィブロネクチン、ラミニン、カテニンやカドヘリン等のカドヘリンファミリー、I−CAMなどのIgスーパーファミリー、セレクチンファミリー、シアロムチンファミリーやこれらの活性部位を含む組み換え体などがあげられる。
用いる生理活性物質は市販の生理活性物質や医薬品を用いても良いし、抗体の場合には、ハイブリドーマから作製してもよい。
本発明における複合体とは、物質が複合したものをいい、本発明における複合とは、共有結合、イオン結合(静電相互作用)、疎水性相互作用による結合などのことをいう。
リンカーと生理活性物質を複合する場合には、官能基をもったリンカーを利用するのが望ましい。例えば、水酸基を有するもの、カルボキシル基を有するもの、アミノ基を有するもの、チオール基を有するもの、スクシンイミド基を有するもの、ピリジルジスルフィド基を有するもの、エポキシ基を有するもの、イミダゾリルカルバミン酸基、アルデヒド基、イソシアネート基、ビオチンをもつものが挙げられる。リンカーにポリアルキレングリコールのような高分子を用いる場合、官能基は高分子の末端にあっても、側鎖にあっても、主鎖あってもよい。末端官能基の場合は、両末端であっても、片末端であってもよい。
生理活性物質とリンカーを複合する場合は、リンカーと生理活性物質を外部刺激で解離できるようなスペーサーを介して結合される。これにより、生理活性物質を材料に固定した際、生理活性物質または生理活性物質と結合した物質、細胞などを外部刺激により回収することができる。
複合する場合は、生理活性物質中にある官能基、例えば、蛋白質の場合はアミノ基などを利用すればよい。
生理活性物質とリンカーを外部刺激で解離可能なスペーサーを介して複合する場合の外部刺激としては光、熱、pH、塩濃度、化学反応などがあるが、生理活性物質の安定性などから化学反応により化学結合を切断して生理活性物質が解離させるのが好ましく、化学的な結合が切断される反応として、加水分解反応、酸化反応、還元反応、酵素反応などがあげられる。リンカーと生理活性物質をスペーサーとしてセルロース分子を介して複合したものを、セルラーゼを用いて酵素処理したり、スペーサーとしてDNAを介して複合したものについて、DNA分解酵素(DNase)で酵素処理することができるが、取り扱い性、コスト、水中での安定性や細胞の生存率維持の必要性から還元反応が好ましい。特に、ジスルフィド結合をスペーサーとして利用する場合、還元剤による還元反応により切断させる反応は、タンパク質のリフォールディングなど生体内で良く行われる反応であり、生理活性物質を解離する反応として好適である。また、ここで使用する還元剤としてジチオスレイトール、メルカプトエタノール、システイン、還元型グルタチオンなどがあげられる。
リンカーにポリアルキレングリコールを用いる場合、該ポリアルキレングリコールにジスルフィド結合を介して生理活性物質を複合する方法としては、メルカプト基同士の酸化反応やあるいは下記のようなジスルフィド交換反応を利用してジスルフィド結合を形成させる方法をとる。ジスルフィド交換反応を利用する方法としては、ピリジルジスルフィド基とメルカプト基の交換反応を用いるのが反応性の点から好ましく、ピリジルジスルフィド基やメルカプト基を生理活性物質およびポリアルキレングリコールに導入して結合させる。この際、通常架橋剤を利用する。ポリアルキレングリコールにピリジルジスルフィド基を導入した場合は、生理活性物質にピリジルジスルフィド基を導入して還元し、メルカプト基を導入したものや生理活性物質が抗体である場合は、抗体をペプシンで消化し、抗体の可変部位のみに精製した後、生成するメルカプト基を用いて結合することができる。生理活性物質にピリジルジスルフィド基を導入して、還元する場合、生理活性物質が抗体である場合は、抗体自体の還元による失活を防ぐためには酢酸緩衝液中などで還元することにより抗体自身の還元を抑えることができる。ポリアルキレングリコールにメルカプト基を導入した場合は、生理活性物質にピリジルジスルフィド基を導入したものと反応させればよい。
生理活性物質やポリアルキレングリコールにメルカプト基やピリジルジスルフィド基を導入する場合に、スクシンイミド基を有する架橋剤を利用する場合は、生理活性物質中にアミノ基があればよく、ポリアルキレングリコールにもあらかじめアミノ基を導入しておけばよい。
上記のようなジスルフィド結合を介した複合化に利用できるような架橋剤としては、リンカー同士あるいは生理活性物質同士の結合を防ぐため二種類の違った官能基と反応する活性基をもつ架橋剤を使用することが好ましく、活性基として、アミノ基と反応するN−ヒドロキシスクシンイミド基、イミドエステル基、ニトロアリールハライド基、イミダゾリルカルバミン酸基、メルカプト基と反応するマレイミド基、ピリジルジスルフィド基、チオフタルイミド基、活性化ハロゲン基、光化学反応により架橋するフェニルアジド基、ジアゾカルベン基、などを持つような架橋剤を利用することができる。なかでも、N−ヒドロキシスクシンイミド基とピリジルジスルフィド基を持つような架橋剤を利用することにより、アミノ基を有するリンカーや抗体などのアミノ基を有する生理活性物質にピリジルジスルフィド基を導入できる。また、このピリジルジスルフィド基を還元剤により還元することによりメルカプト基に変換できる。このような架橋剤として、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネート、スクシンイミジル6−[3’−(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノエートや水溶性のスルフォスクシンイミジル6−[3’−(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノエートなどが挙げられる。水に不溶性の架橋剤を用いる場合は、ジメチルスルホキシドやメタノールなどの可溶性の有機溶媒に溶解後、水系の反応液に添加することにより利用できる。
メルカプト基を導入する場合は、2−イミノチオランを利用すれば、一段階でメルカプト基を導入できる。
生理活性物質へピリジルジスルフィド基を導入する場合、その導入率は生理活性物質1モルあたり1モル以上であることが必要であるが、導入率を上げるためにピリジルジスルフィド化剤の仕込量を上げると失活したり、凝集したりするおそれがある。望ましくは仕込量はリガンド1モルあたり50モル以下が望ましい。
なお、還元して脱離した生理活性物質が材料に吸着されるのを防ぐため、リンカーと生理活性物質の複合体をアクリル系ポリマーに固定する前後に、ポリアルキレングリコールの単体を固定化しておいて、アクリル系ポリマーを親水化させておくのがよい。または、あらかじめアクリル系ポリマーに親水性成分をブレンドしておいて該アクリル系ポリマーを親水化してもよい。リンカーと生理活性物質の複合体の固定化量を多くするという観点からは親水化処理は複合体を固定した後の方が望ましい。
生理活性物質含有材料を医療用として提供する場合は、滅菌されている必要がある。本発明の場合、生理活性物質を含む物質とアクリル系ポリマーは別々に滅菌され、その後、無菌的に混合し、生理活性物質を含む物質を固定することにより製造される。固定された生理活性物質はアクリル系ポリマーに強固に固定されており、洗浄により脱離されることはなく、外部刺激によってのみ脱離される。
生理活性物質の固定の確認は、固定に用いた生理活性物質を含む溶液中の混合前後の濃度を高速液体クロマトグラフィーなどを用いて測定することにより求めることができる。
生理活性物質を含む物質は医薬品と同様、無菌ろ過により滅菌される。滅菌された生理活性物質を含む物質は水溶液の状態でもよいし、滅菌後、凍結乾燥されたものでもよい。凍結乾燥されたものであれば、材料と混合する前に滅菌済みの生理食塩水などで溶解してから用いられる。
アクリル系ポリマーは含水状態で滅菌される必要があるので、滅菌を行う場合は、蒸気滅菌、放射線滅菌などが医療用の材料の滅菌においては好適に用いられる。
アクリル系ポリマーを親水化する際にはポリアルキレングリコール水溶液などの親水化剤も滅菌されている必要がある。滅菌方法は水溶液をろ過滅菌してもよいし、蒸気滅菌、放射線滅菌されたものでもよい。ポリアルキレングリコールを親水化剤に用いる場合、その分子量は特に限定されないが、親水化効果の観点からは分子量1000〜100万、より好ましくは2000〜10万が望ましい。
本発明の生理活性物質含有材料を血液浄化用カラムなどに利用する場合、特に中空糸を用いる場合は以下のようにして製造されるが、特に限定されるものではない。一例を示すと次の通りである。まず、中空糸膜を必要な長さに切断し、必要本数を束ねた後、筒状ケースに入れる。その後両端に仮のキャップをし、中空糸膜両端部にポッティング剤(例えば、二液混合型ポリウレタン系接着剤)を入れる。このとき遠心機でモジュールを回転させながらポッティング剤を入れる方法は、ポッティング剤が均一に充填されるために好ましい方法である。ポッティング剤が固化した後、中空糸膜の両端が開口するように両端部を切断し、中空糸膜モジュールを得る。
本発明の方法を利用すれば、上記で示したようなターゲットとなる有用物質や病因物質を生理活性物質により捕捉でき、さらに、外部刺激により生理活性物質を材料から脱離させることにより、捕捉した有用物質や病因物質を回収する事が可能である。また、ターゲット物質を捕捉あるいは回収する際に使用する溶媒として、様々なpH値のリン酸、酢酸、クエン酸などの緩衝液をもちいることができ、さらに緩衝液の中にウシ血清アルブミンや抗体などのタンパク質あるいはカチオン性、アニオン性などのポリマーなどを含有していても良い。
さらに素材として多孔質を用いるため、透析やろ過機能を付与することができる。
細胞を回収する際は全血と作用させてもよいし、血漿分画や単核球分画などにした後、作用させてもよい。
以上のような方法で、回収した有用物質、病因物質を分析に用いることが可能である。また、細胞の場合はそれを培養し、分析や治療などに利用できる。例えば、生理活性物質として抗CD4抗体を使用し、この生理活性物質を固定した本発明の材料に血液を通してCD4陽性のT細胞を捕捉し、ジチオスレイトールなどの還元剤で生理活性物質を脱離することにより、捕捉した細胞を大量に回収し、この細胞に様々な刺激を加えて活性化させ体内に戻すことにより、癌、アレルギー、感染症、臓器移植、あるいは自己免疫疾患の治療やワクチンとしてもちいることができる。
また、例えば、生理活性物質として抗CD34抗体を使用し、この生理活性物質を固定した本発明の材料に末梢血や臍帯血を通して、造血幹細胞を捕捉し、ジチオスレイトールなどの還元剤で生理活性物質を脱離することにより、造血幹細胞を大量に回収し、回収した造血幹細胞を培養して輸血医療に用いたり、様々な組織幹細胞に分化させることにより、肝疾患や神経疾患、血管傷害などの細胞療法に用いることができる。
また、例えば、生理活性物質として抗CD133抗体を使用し、この生理活性物質を固定した本発明の材料に末梢血や臍帯血を通して、神経幹細胞を捕捉し、ジチオスレイトールなどの還元剤で生理活性物質を脱離することにより、神経幹細胞を大量に回収し、回収した神経幹細胞を培養して神経幹細胞移植に用いたり、様々な神経細胞に分化させることにより、パーキンソン病やアルツハイマー病など神経疾患、脳梗塞により壊死した神経細胞の修復などの細胞療法に用いることができる。
用いる生理活性物質は市販の生理活性物質や医薬品を用いても良いし、抗体の場合には、ハイブリドーマから作製してもよい。
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
生理活性物質およびポリエチレングリコールの濃度は、高速液体クロマトグラフィーで測定した(溶離液:0.2M リン酸緩衝液、pH8.0、カラム:東ソー製 G3000SWXL、装置:東ソー社、HPLCシステム、流速:1.0ml/min)。
固定化率は、生理活性物質とポリエチレングリコールの複合体の濃度から下記式により求めた。
固定化率=生理活性物質とポリエチレングリコールの混合前の濃度−混合後の濃度/混合前の濃度
[作製例1 ステレオコンプレックス型ポリメチルメタクリレート(PMMA)中空糸の作製]
ポリスチレン換算のGPC法による重量平均分子量が40万のシンジオタクティック(syn)−PMMA137gと重量平均分子量が140万のsyn−PMMA80g、平均分子量が50万のアイソタクチック(iso)−PMMA35gをジメチルスルホキシド1185gと混合し、110℃で8時間撹拌し紡糸原液を調製した。
得られた紡糸原液を99℃に保温された外径/内径=2.1/1.95mmφの環状スリット型中空口金から、1.1g/minの割合で、空気中に吐出した。同時に中空内部には窒素ガスを注入した。乾式部分の長さは60cm、凝固浴には40℃の水を用いた。凝固した中空糸を水洗後、75℃、73%のグリセリン水溶液で5%の弛緩熱処理を行ってサンプリングした。該中空糸の内径/膜厚は200/30μmであった。得られた中空糸は25kGyでγ線滅菌した。
[作製例2 ステレオコンプレックス非形成型PMMA中空糸の作製]
ポリスチレン換算のGPC法による重量平均分子量が40万のsyn−PMMA198gと重量平均分子量が140万のsyn−PMMA154gをジメチルスルホキシド1655gと混合し、110℃で8時間撹拌し紡糸原液を調製した。
得られた紡糸原液を99℃に保温された外径/内径=2.1/1.95mmφの環状スリット型中空口金から、1.1g/minの割合で、空気中に吐出した。同時に中空内部には窒素ガスを注入した。乾式部分の長さは60cm、凝固浴には40℃の水を用いた。凝固した中空糸を水洗後、75℃、73%のグリセリン水溶液で5%の弛緩熱処理を行ってサンプリングした。該中空糸の内径/膜厚は200/30μmであった。得られた中空糸は25kGyでγ線滅菌した。
[作製例3 ステレオコンプレックス非形成型PMMA平膜の作製]
ポリスチレン換算のGPC法による重量平均分子量が40万のsyn−PMMA10重量%をジメチルスルホキシドと混合し、80℃で8時間撹拌し原液を調製した。この溶液を0.1mmスペーサー付きの80℃のガラス板に塗布し、ドクターブレードにて溶液を引き延ばしたものを水中にいれて、凝固させ、PMMAからなる平膜状の材料を作製した。得られた平膜は25kGyでγ線滅菌した。
[作製例4 ジスルフィド結合を介して結合したポリエチレングリコール(PEG)化抗CD3抗体の調製]
NaClを0.15mM含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)に5mg/mlに溶解したOKT3(抗CD3抗体、ヤンセンファーマ社製)にN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネート(ピアス社製、SPDP)を20mMに溶解したジメチルスルホキシド溶液を抗体1モルに対して10倍モル量添加し、室温で30分反応させた後、PD−10カラム(ファルマシア社製)で高分子量分画に精製した。OKT3が1モルに対してSPDP導入量は3.8モルであった。つぎに、NaClを0.15mM含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)に5mg/mlに溶解したアミノ化メトキシPEG(シェアウォーター社、分子量5000、片末端アミノ基、片末端メトキシ基)に上記SPDP溶液を5倍モル量添加し、30分室温で反応させた後、ジチオスレイトール(ピアース社製)を25mMとなるように添加した後、PD−10カラム(ファルマシア社製)で高分子量分画に精製し、片末端がメルカプト基のメトキシPEGを得た。1モルのSPDP化OKT3に対して片末端がメルカプト基のメトキシPEGを5倍モル量添加し、ジスルフィド結合を介して結合したPEG化OKT3を得た。得られたジスルフィド結合を介して結合したPEG化OKT3は無菌ろ過滅菌により滅菌した。
<比較例1>
作製例4で得られたPEG化抗体の510ppm水溶液1mlに25kGyでγ線滅菌されたポリサイエンス社のPMMAビーズ(200ミクロン、表面平滑球状、含水率0重量%)を0.1gを添加したが、PEG化抗体は固定されなかった。エタノール処理後、水置換したものでも固定されなかった。
<比較例2、3>
作製例4で得られたPEG化抗体の510ppm水溶液1mlに25kGyでγ線滅菌された松本油脂製のPMMAビーズ(M、5〜20ミクロン、表面微小凹凸球状、含水率0重量%)を0.1gを添加したが、PEG化抗体は固定されなかった。エタノール処理後、水置換したもの(含水率8重量%)でもあまり固定されなかった(PEG化抗体の15%)。
<比較例4>
作製例4で得られたPEG化抗体の510ppm水溶液1mlに25kGyでγ線滅菌された松本油脂製のPMMAビーズ(M−503、10〜30ミクロン、表面平滑球状、含水率0重量%)を0.1gを添加したが、PEG化抗体は固定されなかった。エタノール処理後、水置換したものでも固定されなかった。
<実施例1、比較例5>
作製例4で得られたPEG化抗体の510ppm水溶液1mlに25kGyでγ線滅菌された松本油脂製のPMMAビーズ(M−600、15〜40ミクロン、中空多孔質状、含水率0重量%)を0.1gを添加したが、PEG化抗体は固定されなかった(比較例5)。エタノール処理後、水置換した含水ビーズ(含水率40重量%)では固定され(55%)、抗体を固定した材料を作製することができた(実施例1)。
<実施例2、比較例6>
作製例4で得られたPEG化抗体の510ppm水溶液1mlに25kGyでγ線滅菌された松本油脂製のPMMAビーズ(M−610、5〜25ミクロン、中空多孔質状、含水率0重量%)を0.1gを添加したが、PEG化抗体は固定されなかった(比較例6)。エタノール処理後、水置換したもの(含水率50重量%)では固定され(80%)、抗体を固定した材料を作製することができた(実施例2)。
<実施例3、比較例7>
作製例4で得られたPEG化抗体の510ppm水溶液1mlに25kGyでγ線滅菌された東レ製人工腎臓“フィルトライザー”BG(PMMA製)から切り出した中空糸を乾燥したものを0.1gを添加したが、PEG化抗体は固定されなかった(比較例7)。エタノール処理後、水置換したもの(含水率30重量%)では固定され(40%)、抗体を固定した材料を作製することができた(実施例3)。
<実施例4>
作製例4で得られたPEG化抗体の510ppm水溶液1mlに25kGyでγ線滅菌された東レ製人工腎臓“フィルトライザー”BGから切り出した中空糸(含水率78重量%、空孔率70%)を0.46g(乾燥重量0.1g)を添加したところPEG化抗体は固定され(80%)、抗体を固定した材料を作製することができた。
<実施例5>
作製例4で得られたPEG化抗体の510ppm水溶液1mlに作製例3で得られたPMMA平膜(含水率75重量%)を0.36g(乾燥重量0.1g)を添加したところPEG化抗体は固定され(80%)、抗体を固定した材料を作製することができた。
<実施例6>
作製例4で得られたPEG化抗体の510ppm水溶液1mlに作製例1で得られた(含水率83重量%、空孔率80%)中空糸0.86g(乾燥重量0.15g)を添加したところPEG化抗体は固定され(95%)、抗体を固定した材料を作製することができた。
<実施例7>
作製例4で得られたPEG化抗体の510ppm水溶液1mlに作製例2で得られた中空糸(含水率79重量%、空孔率75%)0.96g(乾燥重量0.2g)を添加したところPEG化抗体は固定された(95%)、抗体を固定した材料を作製することができた。
<実施例8>
25kGyでγ線滅菌されたPMMA中空糸膜からなる人工腎臓(BK−1.0F)から切り出した中空糸のカットファイバー(2−3mm、乾燥重量0.09g)に作製例4で得られたジスルフィド結合を介して結合したPEG化OKT3(濃度:0.5mg/ml)を1ml添加した後、水洗した。PEG化OKT3は0.45mg固定された。得られたOKT3固定化材料に25mMのジチオスレイトールを含むリン酸緩衝液(pH7.5)を添加して、ジスルフィド結合を還元することによりOKT3を15マイクロg脱離させることができた。
<実施例9>
25kGyでγ線滅菌されたPMMA中空糸膜からなる人工腎臓(BK−1.0F)から切り出した中空糸のカットファイバー(2−3mm、乾燥重量0.09g)に作製例4で得られたジスルフィド結合を介して結合したPEG化OKT3(濃度:0.5mg/ml)を1ml添加後、水洗し、さらにろ過滅菌したポリエチレングリコール(5mg/ml、分子量3350)を1ml添加して、PMMAを親水化した後、水洗した。PEG化OKT3は0.45mg固定化された。得られたOKT3固定化材料に25mMのジチオスレイトールを含むリン酸緩衝液(pH7.5)を添加して、ジスルフィド結合を還元することによりOKT3を20マイクロg脱離させることができた。
<実施例10>
実施例9で得られたOKT3固定化材料に健常者血液から得た単核球からなる細胞1×106個を“ダルベッコ”リン酸緩衝液0.2mlに懸濁した液を添加して20分後、洗浄した材料に5mMのジチオスレイトールを含むリン酸緩衝液(pH7.5)を添加して、ジスルフィド結合を還元することによりOKT3に結合したCD3陽性細胞を脱離させた。還元液中には細胞が含まれていることを顕微鏡で確認できた。さらに、脱離した細胞を含む懸濁液にフルオレセインイソイチオシアネート(FITC)化された抗CD3抗体(ベクトンディキンソン社製)を添加し、フローサイトメトリーにより求められる細胞懸濁液中のCD3陽性細胞の比率(FITCでラベルされた細胞の比率)は58%から86%になり、CD3陽性細胞を分離することができた。

Claims (19)

  1. アクリル系ポリマーと、リンカーと生理活性物質を含有し、外部刺激により生理活性物質が脱離することを特徴とする生理活性物質含有材料。
  2. 含水率が10%以上であることを特徴とする請求項1記載の生理活性物質含有材料。
  3. 空孔率が30%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の生理活性物質含有材料。
  4. アクリル系ポリマーがポリメチルメタクリレートであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の生理活性物質含有材料。
  5. 生理活性物質が蛋白質および/またはペプチドであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の生理活性物質含有材料。
  6. 生理活性物質が抗体あるいはレセプターであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の生理活性物質含有材料。
  7. リンカーがポリアルキレングリコールであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の生理活性物質含有材料。
  8. 外部刺激が還元剤による還元反応であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の生理活性物質含有材料。
  9. 生理活性物質とリンカーがジスルフィド結合を介して結合していることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の生理活性物質含有材料。
  10. 血液浄化用途に用いられることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の生理活性物質含有材料。
  11. 細胞分離用途に用いられることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の生理活性物質含有材料。
  12. 細胞培養用途に用いられることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の生理活性物質含有材料。
  13. 外部刺激により解離可能な生理活性物質とリンカーの複合体を水溶液状態にし、アクリル系ポリマーに接触し固定させることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の生理活性物質含有材料の製造方法。
  14. 外部刺激により解離可能な生理活性物質とリンカーの複合体を水溶液状態にし、アクリル系ポリマーに接触し固定させた後、該アクリル系ポリマーを親水化することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の生理活性物質含有材料の製造方法。
  15. ポリアルキレングリコールで親水化することを特徴とする請求項14記載の生理活性物質含有材料の製造方法。
  16. 外部刺激により解離可能な生理活性物質とリンカーの複合体を水溶液状態で無菌ろ過滅菌し、ろ過滅菌した生理活性物質の水溶液を別に滅菌されたアクリル系ポリマーに無菌的に接触させることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の生理活性物質含有材料の製造方法。
  17. 外部刺激により解離可能な生理活性物質とリンカーの複合体を水溶液状態で無菌ろ過滅菌し、ろ過滅菌した生理活性物質の水溶液を別に滅菌されたアクリル系ポリマーに無菌的に接触させた後、該アクリル系ポリマーを親水化することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の生理活性物質含有材料の製造方法。
  18. 滅菌されたポリアルキレングリコールで親水化することを特徴とする請求項17記載の生理活性物質含有材料の製造方法。
  19. アクリル系ポリマーが放射線で滅菌されることを特徴とする請求項16〜18のいずれかに記載の生理活性物質含有材料の製造方法。
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