JP2004180617A - ルーの製造方法及びそれを用いた食品 - Google Patents

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Abstract

【課題】バターと小麦粉を原料とし、乳蛋白などの凝固によって発生する細かい固形塊状物の発生を防ぎ、小麦粉臭がなく、焙焼香が付与された、滑らかな食感と焙焼香を有するルーを工業規模で製造する方法を提供する。
【解決手段】バターを品温30〜60℃で溶融する工程、バターの品温を30〜60℃に保持したまま小麦粉と混合する工程、混合物を加熱釜中で品温を30〜60℃に保持したまま、攪拌羽根の周速度0.2〜1.0m/sで全原料1kg当り1000〜100,000(W・s)の攪拌動力による仕事を与えて原料を混合する工程、釜内壁温度を120〜220℃に上昇させて加熱する工程、を以上の順序で遂行することを特徴とするルーの製造方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、バターと小麦粉を原料とし、乳蛋白などの凝固によって生成する細かい固形塊状物の発生を防ぎ、小麦粉臭がなく、焙焼香が付与された、滑らかな食感と焙焼香を有するルーを工業規模で製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ルーは、溶融したバターないしその他の油脂(菜種油、大豆油、コーン油などの植物油脂や動物油脂等で、油脂の性状が液体又は固体)に小麦粉を加えた後、均一に混合しながら加熱焙焼せしめたものである。ルー自体はそのままで喫食するものではないが、ホワイトルーにあってはブイヨンを加えて加熱することによってポタージュスープの原料としたり、牛乳を加えて加熱することによってホワイトソースやベシャメルソースの原料としたり、また、ブラウンルーないしブロンズルーにあっては、デミグラスソースの副原料とするなど、洋風料理に広く用いられている。
【0003】
工業的に製造されるルーは、上記のような食品の原料として用いられる他、粉末状ないし顆粒状に加工して、粉末スープの原料として用いたり、他の調味料や香辛料などを加えて固形状に成型してシチューやカレー用のルーを作る場合もある。
ルーは上記のようにスープないしソース類などに加工されるため、加工された食品の滑らかさがきわめて重要であって、舌にざらつくような固形物が発生した場合には、著しくその品質が損われることになる。
【0004】
そこで、一般的なルーの製造工程のポイントについて述べる。まず、レストランの厨房で専門の料理人がルーを製造する場合、調理人によりあるいは文献によって多少の違いはあるが、原料油脂としては風味の点でバターを用いるのが良く、バターと小麦粉の配合割合は、バター1質量部に対して、小麦粉1ないし1.5質量部が基準とされている。ここで言うバターは加塩バターではなく、無塩バターである(非特許文献1参照)。
【0005】
風味の点で好ましいとされているバターは、常温において固形状態であり、かつ品質劣化を防ぐために冷蔵ないし冷凍状態で保存されるのが普通である。従って、ルーの製造に先立っては、バターを均一に溶解するために包丁などで薄くスライスし、これを鍋などに投入して加熱溶解せしめた後、100℃近くに加熱して含まれている水分を蒸発させる。次に、該加熱溶融バターの中にほぼ同量の小麦粉を投入した後、木ベラなどを用いて速やかに充分に攪拌を行う。その後は、そのまま同じ鍋などで加熱攪拌を行う方法の他、オーブンに入れて時々攪拌を行いながら静置加熱を行う方法、電子レンジを用いて断続加熱攪拌を行う方法などがあるが、いずれも好ましい焙焼香や、スープやソースに仕上げた時の舌触りの滑らかさが重要視され、目的に応じて、バターと小麦粉の配合比、薄力、中力、強力といった小麦粉の種類、及び加熱溶解したバターと小麦粉を均一混合した後の加熱の方法を選んで行われている。
【0006】
また、ルーにはポタージュスープやホワイトソース、ベシャメルソースなどに用いられるホワイトルーと、デミグラスソースなどに加えられるブラウンルー、ブロンズルーといった違いがあるが、これらは、溶融せしめたバターと小麦粉を混合した後の焙焼工程において、到達温度と焙焼時間を変えることによって小麦蛋白に対する異なる加熱変性を行い、粘性などの違いを得たものであるが、その外観色の違いによって、この様な名称で一般に呼ばれる。しかしながら、これらのルーを作るに際しても、溶融バターと小麦粉を均一に混合せしめる工程までは一緒であり、また、これらのルーを使って得られた加工品については、ルーに由来する風味や滑らかさが必要な点は共通するものである。
【0007】
一方、工業的なルーの製造は、グラタンなどの冷凍食品に使われるホワイトソースや、各種形態のスープの原料として欠かせないものであり、固形化ないしは顆粒化して業務用素材としても販売されている。また、家庭向けのシチューやカレールーの製造としても使われている。
【0008】
工業的に生産されるルーの場合、価格の点などから、油脂原料としてはバター以外に菜種油、大豆油、コーン油などの植物油脂や動物油脂等、また、油脂の性状では液体油脂や固体油脂等が使われる場合がある。
【0009】
たとえば、グリセリン脂肪酸エステルとレシチンを添加した油脂を用いて、ベシャメルソースを製造する方法(特許文献1参照)、食用油脂を原料とした顆粒形状のルーの製造方法(特許文献2参照)、水分を含有する風味物質に対し蔗糖脂肪酸エステルなどを用いて乳化した油脂を原料とする固形ルーの製造方法(特許文献3参照)、小麦粉、食用油脂、調味料を含む原料に対してモノグリセリン脂肪酸エステルを用いた固形ルーの製造方法(特許文献4参照)、粘性と口どけを得るために野菜や果物の磨砕物、セルロースなどを添加する方法(特許文献5参照)などが提案されている。
【0010】
しかしながら、これらのバター以外の原料を用いたルーの製法では、味風味の点でバターを用いたルーには及ばない。特に、ホワイトソース、スープなどに利用する場合には、その差が顕著に顕われる。
【0011】
工業的なルーの製造において、バターを用いる場合でも、通常のバターを原料とするのではなく、バター脂が用いられるのが普通である。バター脂とは、バターを加熱して油脂区分のみを分離精製したものである。その理由は、元来、好ましい味風味を生じる機能を有するバター中の乳漿や乳蛋白が、工業的にルーの大量生産を行った場合には、焦げを発生したり、凝固して舌触りを悪くする場合が少なくないからである。
【0012】
【特許文献1】
特開昭60―94070号公報
【特許文献2】
特開昭64−39972号公報
【特許文献3】
特開平04−370078号公報
【特許文献4】
特開平06−98727号公報
【特許文献5】
特開平10−57022号公報
【非特許文献1】
島田淳子・下村道子:調理科学講座3 植物性食品I p105〜p118朝倉書店 1994年3月
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、工業的なルーの製造において、バターと小麦粉を均一に分散させ、固形塊状物の発生を防止し、焙焼工程においても小麦粉臭がなく、焙焼香が付与された、滑らかな食感を有するルーを工業的に製造する方法、及びその方法により製造されているルー、及び該ルーを用いた食品を提供することを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究の結果、味風味の良いルーの製造には油脂原料としてバターを用い、かつ、厳密に制御された条件下で小麦粉と混合し、焙焼香を付与する処理を行うことにより、工業的にルーを製造した場合であっても、バター中に含まれる乳漿や乳蛋白が焦げや凝固の原因となることを防ぐことができ、焙焼香、味風味、舌触りの滑らかさにおいて厨房規模で製造されるルーと比べて遜色がないルーの製造が可能なことを見いだし、本発明を完成するに至った。本発明は、以下の発明を包含する。
【0015】
(1)バターを品温30〜60℃で溶融する工程、バターの品温を30〜60℃に保持したまま小麦粉と混合する工程、混合物の品温を30〜60℃に保持したまま、加熱釜における攪拌羽根の周速度0.2〜1.0m/sで全原料1kg当り1000〜100,000(W・s)/kgの攪拌動力による仕事を与えて原料を混合する工程、釜内壁温度を120〜220℃に上昇させて加熱する工程、を以上の順序で有することを特徴とするルーの製造方法。
【0016】
(2)前記釜内壁温度を120〜220℃に上昇させて加熱する工程が、加熱時に釜内を攪拌させる攪拌羽根の回転数が40〜100rpmであり、品温115〜125℃に達するまでのC値(cooking value、基準温度70℃、計算開始温度70℃、Z値=50)が30〜60分であることを特徴とする上記(1)項記載のルーの製造方法。
【0017】
(3)前記バターの品温を30〜60℃に保持したまま小麦粉と混合する工程は、溶融バター20〜80質量部に対して小麦粉80〜20質量部の割合で混合する工程であることを特徴とする(1)項又は(2)項に記載のルーの製造方法。
【0018】
(4)上記(1)項〜(3)項のいずれか1項に記載の方法によって製造されているルー。
(5)ルーが、ホワイトルー、ブラウンルー及びブロンズルーのいずれかである上記(4)項記載のルー。
(6)上記(4)項又は(5)項に記載のルーを用いた食品。
(7)上記食品がホワイトソース又はスープである上記(6)項記載の食品。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明で言うルーとは、小麦粉とバターを原料として用いるものを指し、用いる小麦粉の種類や、小麦粉とバターその他の油脂原料との比率、ホワイトルーであるか、ブラウンルー、ブロンズルーといった焙焼の程度による仕上がり状態の違い、でき上がったルーからスープやソースなどを直接製造するか、一度冷やしてから次の製造工程に用いるか、固めたものを固形状のルーとして流通販売するか、顆粒状に仕上げるか、あるいはルーの製造時ないし製造後に調味料や香辛料などを加えるかについて問うものではない。
【0020】
また、ここでいう工業的なルーの製造とは、一回に製造する量を問うものではなく、自動攪拌機付きの加熱釜を用いて製造することを意味する。人手で攪拌混合を行う場合には、ダマなどが残っていても目視で確認してダマをつぶすことができるのに対して、自動攪拌機付きの加熱釜では、これを行うことが困難であるので、本発明はこのような自動攪拌機付きの加熱釜での製造時の課題を解決するためのものである。
【0021】
ルーを製造する焙焼釜は、釜の内部にルーの原料を保持せしめると共に、釜内壁の一部の面ないし全面を通じて加熱源からの熱をルー原料に伝達することによって原料を加熱せしめることが可能であると共に、釜と相対運動を行う攪拌機構を有していて、原料を混合することができる機能を有するものである。
【0022】
このような機能を有する加熱釜であれば、使用する加熱釜に限定はない。例えば、底板の周囲に、該底板に対してほぼ垂直に設けられた側壁を有しており、自転運転、もしくは自転と公転運動を行うことによって、該底板及び該側壁の全面ないし一部に接触するように運動を行う掻き取り羽根を具備している、図1に示す加熱釜(釜A)や、回転軸が水平に対し0度以上60度以下の傾斜角であり、加熱壁の回転中心軸と等しい回転中心軸を持ち、該加熱壁に接触しながら相対運動を行うことによって、該内壁面の掻き取りを行う機能を有する、図2に示すバッチ式(回分式)ないし連続式の加熱釜(釜B)や、回転軸が水平に対し0度以上60度以下の傾斜角であり、該円筒型の加熱壁の内側に掻き上げ羽根を固定して設け、該円筒型の加熱壁を回転せしめることによって掻き上げ羽根によって掻き上げ操作を行うことによって原料の攪拌を行う、図3に示すバッチ式(回分式)ないしは連続式の炒め釜(釜C)を用いることができる。
【0023】
本発明の方法において、ルーの製造に使用される加熱釜の加熱方式は特に限定されず、一般的にバッチ式(回分式)や連続式の加熱方式を採用することができる。また、溶融バターと小麦粉の加温混合を行う工程とその後の加熱壁温度が120〜220℃での加熱工程は、同一の釜で行っても良いが、異なる釜を用いても良い。例えば、溶融バターと小麦粉の加温混合を行う工程と、その後の加熱壁温度が120〜220℃の加熱釜での加熱工程を釜Aのみで行う方法、釜Bのみで行う方法又は釜Cのみで行う方法があるが、その他にも、溶融バターと小麦粉の加温混合を行う工程を釜Aで行い、その後の加熱壁温度が120〜220℃での加熱工程を釜Bで行う方法や、溶融バターと小麦粉の加温混合を行う工程を釜Bで行い、その後の加熱壁温度が120〜220℃の加熱工程を釜Aで行う方法など、当業者が生産効率やコストの点から適宜加熱方式を組み合わせることができる。
【0024】
ルーの製造に用いるバターの溶融方法については、加熱釜を用いて小麦粉の投入前に固形バターを溶かす方法、あるいは加熱保温機能を有するタンクを用いてルーの製造に用いるバターを予め溶融保温しておき、これを適宜計り出して用いる方法など当業者が適宜選択することができる。
【0025】
本発明の方法において、バターと小麦粉の比率は、バター2質量部に対して小麦粉8質量部の比率から、バター8質量部に対して小麦粉2質量部の範囲で行われる。また、なめらかな食感、焙焼香及びコストの点からは、バター3質量部に対して小麦粉7質量部の比率から、バター5質量部に対して小麦粉5質量部の範囲で行うのがより好ましい。バターの比率がこれより高いと粘度付与の点から好ましくなく、逆に、バターの比率がこれより低いとなめらかな食感、焙焼香の点から好ましくない。
【0026】
溶融したバター中に原料の小麦粉を混入した後の処理は、特に重要である。溶融バター中に小麦粉を投入する際には、バターは溶融状態であることが必要であり、かつ、その温度は高くとも60℃以下、好ましくは55℃以下、更に好ましくは50℃以下であることが必要である。必要量の小麦粉の投入を終えた後は、速やかに攪拌機構を動作させて溶融バターと小麦粉とを均一に混合せしめることが必要であり、この操作は長くとも30分以内、好ましくは15分以内に完了することが必要である。
【0027】
溶融バターと小麦粉を均一に混合した後は、次に述べる保温状態での攪拌混合を行うことが重要である。すなわち、該混合物の温度が高くとも60℃以下、好ましくは55℃以下、更に好ましくは50℃以下に保ちながら、攪拌の周速度は0.2〜1.0m/sで行うことが必要で、更に好ましくは0.4〜0.8m/sにて行うのがよい。攪拌動力による仕事は、ほぼ混合物1kgに対して、1000〜100,000(W・s)/kgで行うことが必要で、更に好ましくは2000〜5000(W・s)/kgで行うことが必要である。
【0028】
本発明の方法において、攪拌動力は攪拌羽根の正味動力をもって表せばよいが、釜Cなどの攪拌羽根を持たないタイプの加熱釜の場合には、釜の回転に必要な全動力から空動力を減じた値をもって表せばよい。
【0029】
本発明の方法において、小麦粉とバターを混合する工程の後の加熱は、釜内壁温度が120〜220℃で行うことが必要であり、特に130〜190℃で行うことが焦げ防止の点でより好ましい。
【0030】
また、本発明において小麦粉とバターを混合する工程の後の加熱において、釜を攪拌する攪拌羽根の回転数は40〜100rpmであることが好ましく、50〜80rpmであることが塊状物防止の点でより好ましい。
【0031】
本発明においてC値(cooking value)とは、一般に、基準温度(例えば100℃)以外の温度における食品の変化と同程度の変化を得るために必要な基準温度(例えば、100℃)における加熱時間である。C値は次式によって定義されている。
【0032】
【数式1】
Figure 2004180617
【0033】
ここで、tは温度Tにおける加熱時間(分)、Tは処理温度(℃)、Trは本発明では基準温度70℃、計算開始温度も70℃とした。Z値とは食品の反応速度を10倍に変えるのに必要とされる温度変化(℃)である。本発明では、Z値は50とした。
【0034】
品温115〜125℃に達するまでのC値が30分未満では焙焼香が少なく、小麦粉香が残存するため好ましくなく、C値が60分より大きいと焙焼香というよりは、焦げの香りが強くなるため好ましくない。更に好ましくは、品温115〜125℃に達するまでのC値を35〜55分に、より好ましくは、品温118〜123℃に達するまでのC値を40〜50分に調整することにより、好ましい焙焼香を有し、焦げがないルーを得ることができる。
【0035】
本発明の方法において、バターと小麦粉を含む原料を混合する工程の後の加熱工程は、釜内壁温度が120〜220℃であれば、通常の製造方法に従い原料を焙焼し、ルーを製造すればよい。すなわち、ホワイトルーの場合、C値が35〜55分となるように条件を設定し、ブラウンルーやブロンズルーであれば、ホワイトルーよりもC値を5〜50分程度高くすればよい。焙焼が終了した後の冷却についても特に問うものではなく、焙焼に用いた釜を用いて冷却してもよく、原料の冷却用に別途用意した釜ないしは冷却タンクを用いて冷却するのであってもよい。
【0036】
更に、本発明の方法におけるルーの製造方法の各工程の役割を説明する。まず、バターと小麦粉の加温混合工程では、小麦粉とバターを均一に分散させることが目的である。本発明者らは鋭意検討の結果、原料の加温混合工程では攪拌羽根の周速度を0.2〜1.0m/sにて行い、攪拌動力による仕事を全原料1kgあたり1000〜100,000(W・s)/kgにすることでバターと小麦粉が均一に混合されることを見出した。これは、小麦粉、バターに剪断をかけながら混合することにより、油脂が小麦粉の周りを覆いグルテンの水分吸収を抑制し、グルテン由来の塊状物生成が抑制されるためであると推定される。
【0037】
次に、釜内壁温度を120〜220℃に設定して加熱する。ここで、原料の水分蒸発を行う。原料の水分は6%以下に低減させることが好ましい。この工程を行うことで、いわゆる小麦粉臭が消失されると推定される。さらに、釜内壁温度を120〜220℃に保ったまま加熱することで、糖質や脂質の酸化分解生成物であるメチルケトン類を発現させ、好ましい焙焼香が発現されると推定される。
【0038】
本発明の方法において、釜内壁温度を120〜220℃に設定して加熱することが重要であるが、この時、攪拌羽根の回転数を40〜80rpmとし、品温115〜125℃に達するまでのC値を30〜60にすることで、工業的スケールにおいても小麦粉臭を低減させ、好ましい焙焼香を発現させることができる。
【0039】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の記載により限定されるものではない。
【0040】
実施例1
バターを6×6×12cmにカットした。加熱機としてニーダー〔梶原工業(株)KH−1E〕を用いた。この加熱機に上記原料バター80kgを投入し、釜内表面温度が60℃以内となるよう火力を調整し、品温50℃となるまで加温して溶解した。
【0041】
上記の溶解済みバターを、直火平釜〔中井機械工業(株)、KR−5000、200kg/バッチ〕に投入し、続いて小麦粉120kgを投入し、周速度0.2m/s、0.4m/s及び0.6m/sでそれぞれ原料が均一になるまで5000(W・s)/kgの攪拌動力で、約30分間混合した後、加熱を開始し、回転数20rpm、40rpm及び60rpmでそれぞれ釜内面温度が220℃以下となるように調整しながら、品温120℃に達するまでのC値が35分になるように加熱した。
【0042】
上記のようにして、原料加温混合の周速度0.4m/s及び0.6m/sにて製造された各ルーは甘い香りを有し、塊状物がなく滑らかな食感を有するものであった。しかし、周速度0.2m/sでは塊状物が発生し、滑らかな食感は得られなかった。表1に結果を示す。
ここで、塊状物量は、ルーサンプル10gにアセトン10gを加え均一に混ぜ、アセトンを揮発させて残った粉体を425μmのメッシュで篩分し、残ったサンプル量を初期ルーサンプル量にて除した値に100を掛けて算出した。数値である。
【0043】
【表1】
Figure 2004180617
【0044】
実施例2
バターを6×6×12cmにカットした。加熱機としてニーダー〔梶原工業(株)KH−1E〕を用いた。この加熱機に上記原料バター80kgを投入し、釜内表面温度が60℃以内となるよう火力を調整し、50℃まで加温溶解した。
【0045】
上記の溶解済みバターを、直火平釜〔中井機械工業(株)、KR−5000、200kg/バッチ〕に投入し、続いて小麦粉120kgを投入し、周速度0.4m/sで原料が均一になるまで5000(W・s)/kgの攪拌動力で、約30分間混合した後、加熱開始し、回転数が20rpm、40rpm及び60rpmとなるようにそれぞれ調整し、釜内面温度が220℃以下となるように調整しながら、品温120℃に達するまでのC値が35分になるように加熱した。
【0046】
上記のようにして、回転数を40rpm及び60rpmにして製造された各ルーは甘い香りを有し、塊状物がなく、滑らかな食感を有するものであった。しかし、回転数20rpmでは塊状物が発生し、滑らかな食感は得られなかった。結果を表2に示す。
【0047】
【表2】
Figure 2004180617
【0048】
実施例3
バターを6×6×12cmにカットした。加熱機としてニーダー〔梶原工業(株)KH−1E〕を用いた。この加熱機に上記原料バター80kgを投入し、釜内表面温度が60℃以内となるよう火力を調整し、50℃まで加温溶解した。
【0049】
上記の溶解済みバターを、直火平釜〔中井機械工業(株)、KR−5000、200kg/バッチ〕に投入し、続いて小麦粉120kgを投入し、周速度0.4m/sで原料が均一になるまで5000(W・s)/kgの攪拌動力で、約30分間混合した後、加熱開始し、回転数が40rpmとなるように調整し、釜内面温度が220℃以下となるように調整しながら品温120℃に達するまで、C値が15分、30分、45分、60分及び75分になるようにそれぞれ加熱した。
【0050】
上記のようにして、香り発現期のC値を30分、45分、60分にして製造された各ルーは甘い香りを有し、塊状物がなく滑らかな食感を有するものであった。しかしC値15分では焙焼香は少なく、C値75分では焦げ臭が発生した。表3に結果を示す。
【0051】
【表3】
Figure 2004180617
【0052】
実施例4
バターを6×6×12cmにカットした。加熱機としてニーダー梶原工業(株)KH−1E〕を用いた。この加熱機に上記原料バター80kgを投入し、釜内表面温度が60℃以内となるよう火力を調整し、50℃まで加温溶解した。
【0053】
上記の溶解済みバターを、直火平釜〔中井機械工業(株)、KR−5000、200kg/バッチ〕に投入し、続いて小麦粉120kgを投入し、周速度0.2及び0.4m/sでそれぞれ原料が均一になるまで5000(W・s)/kgの攪拌動力で、約30分間混合した後、加熱を開始し、回転数が40rpmとなるように調整し、釜内面温度が220℃以下となるように調整しながら、品温120℃に達するまでのC値が15分及び45分になるようにそれぞれ加熱した。
【0054】
上記のようにして、香り発現期のC値を15分及び45分として製造された各ルーを用いてホワイトソースを調製した。ホワイトソースは、上記ルーを10質量部、牛乳を90質量部加熱混合し、80℃達温したものを試料とした。周速度0.4m/sのサンプルのうち、C値45分品は焙焼香を有し、塊状物がなく滑らかな食感を有するものであったが、C値15分品では焙焼香は少なかった。また周速度0.2m/sでC値45分では滑らかな物性は得られなかった。表4に結果を示す。
【0055】
【表4】
Figure 2004180617
【0056】
【発明の効果】
本発明の方法による工業的なルーの製造において、バターに含まれる乳漿中の蛋白及び小麦粉中の蛋白に対して、該蛋白が加熱変性を起こす前に蛋白を均一に分散せしめると共に、バターの油分中に均一に分散せしめることができる。しかる後の焙焼によりルーを製造することによって、固形塊状物の発生を防止することができ、これによって、得られたソースやスープなどは厨房規模での手作りで行った場合と同等の滑らかなものが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法に使用することができる平釜Aを示す図。
【図2】本発明の方法に使用することができる軸(羽根)駆動の回転釜Bを示す図。
【図3】本発明の方法に使用することができる内釜駆動の回転釜Cを示す図。

Claims (5)

  1. バターを品温30〜60℃で溶融する工程、バターの品温を30〜60℃に保持したまま小麦粉と混合する工程、混合物の品温を30〜60℃に保持したまま、加熱釜における攪拌羽根の周速度0.2〜1.0m/sで全原料1kg当り1000〜100,000(W・s)/kgの攪拌動力による仕事を与えて原料を混合する工程、釜内壁温度を120〜220℃に上昇させて加熱する工程、を以上の順序で有することを特徴とするルーの製造方法。
  2. 前記釜内壁温度を120〜220℃に上昇させて加熱する工程が、加熱時に釜内を攪拌させる攪拌羽根の回転数が40〜100rpmであり、品温115〜125℃に達するまでのC値(cooking value、基準温度70℃、計算開始温度70℃、Z値=50)が30〜60分であることを特徴とする請求項1記載のルーの製造方法。
  3. 前記バターの品温を30〜60℃に保持したまま小麦粉と混合する工程は、溶融バター20〜80質量部に対して小麦粉80〜20質量部の割合で混合する工程であることを特徴とする請求項1又は2に記載のルーの製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法によって製造されているルー。
  5. 前記請求項4に記載のルーを用いた食品。
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