JP2004176200A - 乾湿強度差の少ないセルロースエステル繊維 - Google Patents
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Abstract
【課題】乾燥時と比較して、湿潤時の強度低下が少ないセルロースエステル繊維を提供すること。
【解決手段】エステル置換度が2.5〜3.0であるセルロースエステルと多価アルコールエステル可塑剤を少なくとも含んでなるセルロースエステル組成物よりなる繊維であって、乾燥時の強度に対する、湿潤時の強度の割合が80〜100%であるセルロースエステル繊維。
【選択図】なし
【解決手段】エステル置換度が2.5〜3.0であるセルロースエステルと多価アルコールエステル可塑剤を少なくとも含んでなるセルロースエステル組成物よりなる繊維であって、乾燥時の強度に対する、湿潤時の強度の割合が80〜100%であるセルロースエステル繊維。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乾湿強度差の少ないセルロースエステル繊維に関する。より詳しくは、エステル置換度が2.5〜3.0であるセルロースエステルと多価アルコールエステル可塑剤とを少なくとも含んでなるセルロースエステル組成物よりなる繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
セルロースエステル、セルロースエーテルなどのセルロース系材料は、光合成により再生可能なバイオマス材料として、また生分解可能な材料として昨今の大きな注目を集めている。
【0003】
しかしながら、セルロースジアセテートやセルローストリアセテートに代表されるセルロースエステル繊維は、機械的特性、特に湿潤時の繊維強度が低いことが知られており、衣料用途で使用されるセルローストリアセテート繊維の強伸度物性について例示すると、乾燥強度は1.2cN/dtexであるのに対して湿潤強度は0.9cN/dtex以下であり、乾燥時の強度に対する湿潤時の強度の割合は75%以下である。また、セルロースジアセテート繊維については、乾燥強度は1.2cN/dtexであるのに対して湿潤強度は0.8cN/dtex以下であり、湿潤時は乾燥時と比較して、7割にも満たず、30%以上もの著しい強度低下が生じる(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
このように水存在下での強度低下に起因してセルロースエステル繊維は、染色工程で被る擦れにより著しくフィブリル化することや、洗濯時に被る擦れによってさえフィブリル化することが避けられない。
【0005】
【非特許文献1】
日本化学繊維協会編「繊維ハンドブック2002」p300
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、乾湿強度差の少ないセルロースエステル繊維を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前述した本発明の課題は、エステル置換度が2.5〜3.0であるセルロースエステルと多価アルコールエステル可塑剤とを少なくとも含んでなるセルロースエステル組成物よりなる繊維であって、乾燥時の強度に対する湿潤時の強度の割合が80〜100%であることを特徴とするセルロースエステル繊維によって解決することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のセルロースエステル繊維について詳細に説明する。
【0009】
本発明におけるセルロースエステル繊維は、エステル置換度が2.5〜3.0であるセルロースエステルと多価アルコールエステル可塑剤とを少なくとも含んでなるセルロースエステル組成物よりなる。
【0010】
本発明におけるセルロースエステルのエステル置換度は2.5〜3.0である。セルロースエステルのエステル置換度が2.5未満の場合、未置換水酸基が多すぎるため、湿潤時の強度低下が大きくなってしまう。なおセルロースのグルコース単位中に含まれる水酸基の数は3個であるため、エステル置換度の上限は3.0である。エステル置換度は2.6〜2.9であることが好ましい。
【0011】
本発明におけるセルロースエステルは、アシル部の炭素数が3個以上であるエステルを、グルコース単位あたり平均1個以上含んでなるものであることが好ましい。ここでいうグルコース単位あたり平均1個以上とは、アシル部の炭素数が3個以上であるエステルの置換度が平均1以上であることを意味する。具体的にはセルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースバリレートなどの1種の長鎖アシル基を有するセルロースエステル類や、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートバリレート、セルロースアセテートラウレート、セルロースアセテートステアレート、セルロースアセテートオレート、セルロースプロピオネートブチレートなど2種のアシル基を有するセルロース混合エステルが例示でき、アシル部の炭素数が18以下であるものが好ましい。なかでもセルロースアセテートプロピオネートは、適度な吸放湿特性を有しており、製造も容易である。そのためセルロースエステルとしてはセルロースアセテートプロピオネートが好ましい。
【0012】
本発明におけるセルロースアセテートプロピオネートは、アセチル基の置換度が0.1〜1.0で、かつプロピオニル基の置換度が1.5〜2.9であることが好ましい。湿潤時の強度低下を抑制するためには、この範囲の置換度を有したセルロースアセテートプロピオネートが好ましいものである。
【0013】
セルロースエステルの数平均分子量(Mn)は、機械的特性を良好にするため、15000以上であることが好ましい。20000以上であることがより好ましく、25000以上であることが最も好ましい。数平均分子量は高ければ高いほど好ましいが、溶融紡糸時のポリマーの熱流動性の観点から、数平均分子量は15万以下であることが好ましい。なお数平均分子量とは、GPC測定により算出した値をいい、実施例にて詳細に説明する。
【0014】
セルロースエステルに対して可塑化作用を有する多価アルコールエステルの含有量は、セルロースエステル100重量部に対して2〜25重量部であることが好ましい。多価アルコールエステルの含有量をセルロースエステル100重量部に対して2〜25重量部とすることで、セルロースアセテートプロピオネートに十分な熱可塑性を付与でき、生産効率の高い溶融紡糸法で生産できるだけでなく、繊維断面を任意に制御することや、複合繊維も可能となる。さらには後工程として繊維の延伸、仮撚加工などを容易にする。また繊度斑、染め斑なく、ヌメリ感等のない風合いの良好な品位を有した繊維を得ることができる。セルロースエステルに対して可塑化作用を有する多価アルコールエステルの含有量は、好ましくはセルロースエステル100重量部に対して3〜20重量部、より好ましくはセルロースエステル100重量部に対して5〜18重量部である。
【0015】
本発明で具体的に用いることができる多価アルコールエステルとしては、セルロースエステルとの相溶性が良く、また熱可塑化効果が顕著に表れるグリセリンエステル、ジグリセリンエステルなどグリセリン系のエステル化合物やポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールのエステル化合物などである。
【0016】
具体的なグリセリンのエステルとして、グリセリンジアセテートステアレート、グリセリンジアセテートパルミテート、グリセリンジアセテートミスチレート、グリセリンジアセテートラウレート、グリセリンジアセテートカプレート、グリセリンジアセテートノナネート、グリセリンジアセテートオクタノエート、グリセリンジアセテートヘプタノエート、グリセリンジアセテートヘキサノエート、グリセリンジアセテートペンタノエート、グリセリンジアセテートオレート、グリセリンアセテートジカプレート、グリセリンアセテートジノナネート、グリセリンアセテートジオクタノエート、グリセリンアセテートジヘプタノエート、グリセリンアセテートジカプロエート、グリセリンアセテートジバレレート、グリセリンアセテートジブチレート、グリセリンジプロピオネートカプレート、グリセリンジプロピオネートラウレート、グリセリンジプロピオネートミスチレート、グリセリンジプロピオネートパルミテート、グリセリンジプロピオネートステアレート、グリセリンジプロピオネートオレート、グリセリントリブチレート、グリセリントリペンタノエート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンプロピオネートラウレート、グリセリンオレートプロピオネートなどが挙げられるがこれに限定されない。
【0017】
この中でも、グリセリンジアセテートカプリレート、グリセリンジアセテートペラルゴネート、グリセリンジアセテートカプレート、グリセリンジアセテートラウレート、グリセリンジアセテートミリステート、グリセリンジアセテートパルミテート、グリセリンジアセテートステアレート、グリセリンジアセテートオレートが好ましい。
【0018】
ジグリセリンのエステルの具体的な例としてはジグリセリンテトラアセテート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンテトラブチレート、ジグリセリンテトラバレレート、ジグリセリンテトラヘキサノエート、ジグリセリンテトラヘプタノエート、ジグリセリンテトラカプリレート、ジグリセリンテトラペラルゴネート、ジグリセリンテトラカプレート、ジグリセリンテトララウレート、ジグリセリンテトラミスチレート、ジグリセリンテトラパルミテート、ジグリセリントリアセテートプロピオネート、ジグリセリントリアセテートブチレート、ジグリセリントリアセテートバレレート、ジグリセリントリアセテートヘキサノエート、ジグリセリントリアセテートヘプタノエート、ジグリセリントリアセテートカプリレート、ジグリセリントリアセテートペラルゴネート、ジグリセリントリアセテートカプレート、ジグリセリントリアセテートラウレート、ジグリセリントリアセテートミスチレート、ジグリセリントリアセテートパルミテート、ジグリセリントリアセテートステアレート、ジグリセリントリアセテートオレート、ジグリセリンジアセテートジプロピオネート、ジグリセリンジアセテートジブチレート、ジグリセリンジアセテートジバレレート、ジグリセリンジアセテートジヘキサノエート、ジグリセリンジアセテートジヘプタノエート、ジグリセリンジアセテートジカプリレート、ジグリセリンジアセテートジペラルゴネート、ジグリセリンジアセテートジカプレート、ジグリセリンジアセテートジラウレート、ジグリセリンジアセテートジミスチレート、ジグリセリンジアセテートジパルミテート、ジグリセリンジアセテートジステアレート、ジグリセリンジアセテートジオレート、ジグリセリンアセテートトリプロピオネート、ジグリセリンアセテートトリブチレート、ジグリセリンアセテートトリバレレート、ジグリセリンアセテートトリヘキサノエート、ジグリセリンアセテートトリヘプタノエート、ジグリセリンアセテートトリカプリレート、ジグリセリンアセテートトリペラルゴネート、ジグリセリンアセテートトリカプレート、ジグリセリンアセテートトリラウレート、ジグリセリンアセテートトリミスチレート、ジグリセリンアセテートトリパルミテート、ジグリセリンアセテートトリステアレート、ジグリセリンアセテートトリオレート、ジグリセリンラウレート、ジグリセリンステアレート、ジグリセリンカプリレート、ジグリセリンミリステート、ジグリセリンオレートなどのジグリセリンの混酸エステルなどが挙げられるが限定されない。
【0019】
この中でも、ジグリセリンテトラアセテート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンテトラブチレート、ジグリセリンテトラカプリレート、ジグリセリンテトララウレートが好ましい。
【0020】
ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどポリアルキレングリコールの水酸基にアシル基が結合した化合物の具体的な例として、ポリオキシエチレンジアセテート、ポリオキシエチレンジプロピオネート、ポリオキシエチレンジブチレート、ポリオキシエチレンジバリレート、ポリオキシエチレンジカプロエート、ポリオキシエチレンジヘプタノエート、ポリオキシエチレンジオクタノエート、ポリオキシエチレンジノナネート、ポリオキシエチレンジカプレート、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジミリスチレート、ポリオキシエチレンジパルミテート、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンジオレート、ポリオキシエチレンジリノレート、ポリオキシエチレンモノアセテート、ポリオキシエチレンモノプロピオネート、ポリオキシエチレンモノブチレート、ポリオキシエチレンモノバリレート、ポリオキシエチレンモノカプロエート、ポリオキシエチレンモノヘプタノエート、ポリオキシエチレンモノオクタノエート、ポリオキシエチレンモノノナネート、ポリオキシエチレンモノカプレート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノミリスチレート、ポリオキシエチレンモノパルミテート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレート、ポリオキシエチレンモノリノレート、ポリオキシプロピレンジアセテート、ポリオキシプロピレンジプロピオネート、ポリオキシプロピレンジブチレート、ポリオキシプロピレンジバリレート、ポリオキシプロピレンジカプロエート、ポリオキシプロピレンジヘプタノエート、ポリオキシプロピレンジオクタノエート、ポリオキシプロピレンジノナネート、ポリオキシプロピレンジカプレート、ポリオキシプロピレンジラウレート、ポリオキシプロピレンジミリスチレート、ポリオキシプロピレンジパルミテート、ポリオキシプロピレンジステアレート、ポリオキシプロピレンジオレート、ポリオキシプロピレンジリノレート、ポリオキシプロピレンモノアセテート、ポリオキシプロピレンモノプロピオネート、ポリオキシプロピレンモノブチレート、ポリオキシプロピレンモノバリレート、ポリオキシプロピレンモノカプロエート、ポリオキシプロピレンモノヘプタノエート、ポリオキシプロピレンモノオクタノエート、ポリオキシプロピレンモノノナネート、ポリオキシプロピレンモノカプレート、ポリオキシプロピレンモノラウレート、ポリオキシプロピレンモノミリスチレート、ポリオキシプロピレンモノパルミテート、ポリオキシプロピレンモノステアレート、ポリオキシプロピレンモノオレート、ポリオキシプロピレンモノリノレートなどが挙げられるがこれに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
【0021】
本発明において、エステル置換度が2.5〜3.0であるセルロースエステルと多価アルコールエステル可塑剤とを少なくとも含んでなるセルロースエステル組成物よりなる繊維は、乾燥時の強度に対する、湿潤時の強度の割合が80〜100%である。乾燥時の強度は1.0〜2.0cN/dtexであることが好ましい。1.0cN/dtex以上とすることにより、製織や製編時などの高次加工工程通過性が良好になり、また最終製品の強力も十分となり好ましい。一方、湿潤時の強度は、乾燥時の強度に対して、割合(湿潤強度/乾燥強度比)が80〜100%である。乾燥時の強度に対する湿潤時の強度の割合が80%未満の場合、水存在下での強度低下に起因して、染色工程で被る擦れにより著しくフィブリル化することや、洗濯時に被る擦れによってさえフィブリル化することが避けられない。湿潤強度/乾燥強度比は、好ましくは85〜100%、より好ましくは90〜100%である。
【0022】
本発明において、エステル置換度が2.5〜3.0であるセルロースエステルと多価アルコールエステル可塑剤とを少なくとも含んでなるセルロースエステル組成物よりなる繊維は、乾燥時および湿潤時の伸度が10〜50%であることが好ましい。伸度を10%以上とすることにより、製織や製編時など高次加工工程において糸切れし難くなる。また伸度を50%以下とすることにより、繊維は低い応力であれば変形することがなく、製織時の緯ひけなどによる最終製品の染色欠点を生じることがない。乾燥時および湿潤時の伸度は15〜45%が好ましく、20〜40%がより好ましい。
【0023】
本発明において、エステル置換度が2.5〜3.0であるセルロースエステルと多価アルコールエステル可塑剤とを少なくとも含んでなるセルロースエステル組成物よりなる繊維は、繊度やフィラメント数については任意の条件を選ぶことができる。衣料用のセルロース素材としては、25〜1000dtexの繊維が、長繊維糸として使用する場合には3〜1000フィラメントで構成されるマルチフィラメント繊度が10〜500dtexの糸条とするのが一般的である。繊維断面形状に関しては特に制限がなく、真円状の円形断面であっても良いし、また、多葉形、扁平形、楕円形、W字形、S字形、X字形、H字形、C字形、田字形、井桁形、中空などの異形断面糸でも良い。
【0024】
本発明において、エステル置換度が2.5〜3.0であるセルロースエステルと多価アルコールエステル可塑剤とを少なくとも含んでなるセルロースエステル組成物よりなる繊維の製造方法は、湿式紡糸法、乾式紡糸法、溶融紡糸法のいずれであっても良い。高品質な長繊維を生産性良く得ること、繊維断面を任意に制御できること、芯鞘複合、偏芯芯鞘複合、サイドバイサイド型複合、異繊度混繊などのように複合繊維等を得ることを考慮すると、溶融紡糸法が好ましい。
【0025】
本発明におけるエステル置換度が2.5〜3.0であるセルロースエステルと多価アルコールエステル可塑剤とを少なくとも含んでなるセルロースエステル組成物よりなる繊維は、衣料用フィラメント、衣料用ステープル、産業用フィラメント、産業用ステープル、医療用フィラメントとすることが可能であり、また不織布用繊維とすることも好ましく採用できる。また、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、糸摩擦低減剤、抗酸化剤、着色顔料、静電剤、抗菌剤等として、無機微粒子や有機化合物を必要に応じて含有することができる。
【0026】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお実施例中の各特性値は次の方法で求めたものである。
A.エステル置換度
80℃で8時間の真空乾燥により絶乾状態としたセルロースエステル0.9gを秤量し、アセトン35mlとジメチルスルホキシド15mlを加え溶解した後、さらにアセトン50mlを加えた。撹拌しながら0.5N−水酸化ナトリウム水溶液30mlを加え、2時間ケン化した。熱水50mlを加え、フラスコ側面を洗浄した後、フェノールフタレインを指示薬として0.5N−硫酸で滴定した。別に試料と同じ方法で空試験を行った。滴定が終了した溶液の上澄み液を100倍に希釈し、イオンクロマトグラフを用いて、有機酸の組成を測定した。測定結果とイオンクロマトグラフによる酸組成分析結果から、下記式により置換度を計算した。なおエステル置換度とは、アセチル基の置換度とアシル基の置換度の和である。
【0027】
TA=(B−A)×F/(1000×W)
DSace=(162.14×TA)/[1−(Mwace−(16.00+1.01)×TA+{1−(Mwacy−(16.00+1.01)×TA}×Acy/Ace]
DSacy=DSace×(Acy/Ace)
TA:全有機酸量(ml)
A:試料滴定量(ml)
B:空試験滴定量(ml)
F:硫酸の力価
W:試料重量(g)
DSace:アセチル基の置換度
DSacy:アシル基の置換度
Mwace:酢酸の分子量
Mwacy:他の有機酸の分子量
Acy/Ace:酢酸(Ace)と他の有機酸(Acy)とのモル比
162.14:セルロースの繰り返し単位の分子量
16.00:酸素の原子量
1.01:水素の原子量
B.数平均分子量の測定
合成したセルロースエステル(実施例1〜5および比較例2〜4のセルロースエステル)を濃度0.01重量%となるようにクロロホルムに完全に溶解させ、GPC測定用試料とした。この試料を用い、以下の条件のもと、Waters 2690でGPC測定を行い、ポリスチレン換算により数平均分子量(Mn)を求めた。
カラム:昭和電工製Shodex K−805L 2本連結
検出器:Waters2410 示差屈折計RI
移動層溶媒:クロロホルム
流速:1.0ml/分
注入量:200μl
比較例1のセルロースエステルについては、濃度を0.01重量%となるようにテトラヒドロフランに完全に溶解させ、GPC測定用試料とし、この試料を用い、以下の条件のもと、Waters 2690でGPC測定を行い、ポリスチレン換算により数平均分子量(Mn)を求めた。
カラム:東ソー製TSK gel GMH HR−H 2本連結
検出器:Waters2410 示差屈折計RI
移動層溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1.0ml/分
注入量:200μl
C.乾燥時における強度および伸度
オリエンテック社製テンシロンUCT−100型を用い、試料長20cm、引張速度20cm/minの条件で引張試験を行って、最大荷重の示す点の応力を繊度で除した値を繊維強度(cN/dtex)とした。また破断時の伸度を繊維の伸度(%)とした。なお乾燥時とは標準状態を指す。
D.湿潤時における強度および伸度
試料を別に設けた容器に入れ、水(20±2℃)中に10分間浸漬して十分に膨潤させた後、オリエンテック社製テンシロンUCT−100型を用い、試料長20cm、引張速度20cm/minの条件で引張試験を行って、最大荷重の示す点の応力を繊度で除した値を繊維強度(cN/dtex)とした。また破断時の伸度を繊維の伸度(%)とした。
E.湿潤強度/乾燥強度比
上記C、Dにより算出した強度値を用い、下式により算出した。
湿潤強度/乾燥強度比(%)={(湿潤強度)/(乾燥強度)}×100
実施例1
セルロース(日本製紙(株)溶解パルプ、α−セルロース92wt%)100重量部に、酢酸67重量部とプロピオン酸300重量部を加え、50℃で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸33重量部と無水プロピオン酸467重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、60℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースエステルを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースエステルの置換度は2.7(アセチル基0.3、プロピオニル基2.4)、数平均分子量(Mn)は7.6万であった。
【0028】
得られたセルロースエステル100重量部とセルロースエステル100重量部に対してグリセリンジアセテートモノオレート14重量部をエクストルーダーを用いて200℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレットを得た。
【0029】
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥により絶乾状態とし、単軸型溶融紡糸機を用いて、メルター温度235℃にて溶融させ、吐出量8.4g/分の条件で、0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を36ホール有する口金より紡出させた。
【0030】
紡出糸条は25℃のチムニー風(風速:0.3m/秒)によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1000m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(品種:84デシテックス−36フィラメント)の乾燥時の強度は1.16cN/dtex、伸度が25.9%であった。
【0031】
得られた繊維を20℃の水に10分間浸漬した後、湿潤時の強伸度を測定したところ、強度が1.12cN/dtex、伸度が25.6%であり、湿潤強度/乾燥強度比は96.6%であった。
【0032】
実施例2
セルロース(日本製紙(株)溶解パルプ、α−セルロース92wt%)100重量部に、酢酸67重量部とプロピオン酸300重量部を加え、50℃で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸17重量部と無水プロピオン酸500重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、60℃で1.5時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースエステルを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースエステルの置換度は2.6(アセチル基0.1、プロピオニル基2.5)、数平均分子量(Mn)は7.4万であった。
【0033】
得られたセルロースエステル100重量部とセルロースエステル100重量部に対してグリセリンジアセテートモノラウレート11重量部をエクストルーダーを用いて200℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレットを得た。
【0034】
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥により絶乾状態とし、単軸型溶融紡糸機を用いて、メルター温度230℃にて溶融させ、吐出量12.5g/分の条件で、0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を36ホール有する口金より紡出させた。
【0035】
紡出糸条は25℃のチムニー風(風速:0.3m/秒)によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、750m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(品種:167デシテックス−36フィラメント)の乾燥時の強度は1.12cN/dtex、伸度が29.9%であった。
【0036】
得られた繊維を20℃の水に10分間浸漬した後、湿潤時の強伸度を測定したところ、強度が1.10cN/dtex、伸度が29.9%であり、湿潤強度/乾燥強度比は98.2%であった。
【0037】
実施例3
セルロース(日本製紙(株)溶解パルプ、α−セルロース92wt%)100重量部に、酢酸67重量部とプロピオン酸300重量部を加え、50℃で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸80重量部と無水プロピオン酸420重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、60℃で40分加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースエステルを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースエステルの置換度は2.9(アセチル基0.8、プロピオニル基2.1)、数平均分子量(Mn)は7.5万であった。
【0038】
得られたセルロースエステル100重量部とセルロースエステル100重量部に対してジグリセリンテトラカプリレート18重量部をエクストルーダーを用いて210℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレットを得た。
【0039】
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥により絶乾状態とし、単軸型溶融紡糸機を用いて、メルター温度240℃にて溶融させ、吐出量6.2g/分の条件で、0.27mmφ−0.67mmLの口金孔を36ホール有する口金より紡出させた。
【0040】
紡出糸条は25℃のチムニー風(風速:0.3m/秒)によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、500m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(品種:124デシテックス−36フィラメント)の乾燥時の強度は1.10cN/dtex、伸度が30.2%であった。
【0041】
得られた繊維を20℃の水に10分間浸漬した後、湿潤時の強伸度を測定したところ、強度が0.97cN/dtex、伸度が31.0%であり、湿潤強度/乾燥強度比は88.2%であった。
【0042】
実施例4
セルロース(日本製紙(株)溶解パルプ、α−セルロース92wt%)100重量部に、酢酸67重量部とプロピオン酸300重量部を加え、50℃で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸50重量部と無水プロピオン酸450重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、80℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースエステルを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースエステルの置換度は2.5(アセチル基0.5、プロピオニル基2.0)、数平均分子量(Mn)は7.2万であった。
【0043】
得られたセルロースエステル100重量部とセルロースエステル100重量部に対してジグリセリンテトラアセテート15重量部をエクストルーダーを用いて210℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレットを得た。
【0044】
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥により絶乾状態とし、単軸型溶融紡糸機を用いて、メルター温度245℃にて溶融させ、吐出量6.3g/分の条件で、0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を24ホール有する口金より紡出させた。
【0045】
紡出糸条は25℃のチムニー風(風速:0.3m/秒)によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、750m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(品種:84デシテックス−24フィラメント)の乾燥時の強度は1.10cN/dtex、伸度が25.8%であった。
【0046】
得られた繊維を20℃の水に10分間浸漬した後、湿潤時の強伸度を測定したところ、強度が1.00cN/dtex、伸度が26.0%であり、湿潤強度/乾燥強度比は90.9%であった。
【0047】
実施例5
セルロース(日本製紙(株)溶解パルプ、α−セルロース92wt%)100重量部に、酢酸67重量部とプロピオン酸300重量部を加え、50℃で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸17重量部と無水プロピオン酸500重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、60℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースエステルを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースエステルの置換度は2.7(アセチル基0.1、プロピオニル基2.6)、数平均分子量(Mn)は7.7万であった。
【0048】
得られたセルロースエステル100重量部とセルロースエステル100重量部に対してポリエチレングリコール(分子量200)の両末端水酸基にラウリル基がエステル結合した化合物(両末端封鎖ポリエチレングリコール)11重量部をエクストルーダーを用いて200℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレットを得た。
【0049】
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥により絶乾状態とし、単軸型溶融紡糸機を用いて、メルター温度235℃にて溶融させ、吐出量6.3g/分の条件で、0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を12ホール有する口金より紡出させた。
【0050】
紡出糸条は25℃のチムニー風(風速:0.3m/秒)によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、750m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(品種:84デシテックス−12フィラメント)の乾燥時の強度は1.26cN/dtex、伸度が39.1%であった。
【0051】
得られた繊維を20℃の水に10分間浸漬した後、湿潤時の強伸度を測定したところ、強度が1.24cN/dtex、伸度が37.9%であり、湿潤強度/乾燥強度比は98.4%であった。
【0052】
比較例1
84デシテックス−20フィラメントのセルロースジアセテート繊維(エステル置換度2.4、数平均分子量(Mn)は4.0万)の乾燥時の強伸度測定を行ったところ、強度が1.17cN/dtex、伸度が32.1%であった。
【0053】
20℃の水に10分間浸漬した後、湿潤時の強伸度を測定したところ、強度が0.79cN/dtex、伸度が35.3%であり、湿潤強度/乾燥強度比は67.5%であった。
【0054】
比較例2
110デシテックス−26フィラメントのセルローストリアセテート繊維(エステル置換度2.9、数平均分子量(Mn)は8.7万)の乾燥時の強伸度測定を行ったところ、強度が1.19cN/dtex、伸度が28.8%であった。
【0055】
20℃の水に10分間浸漬した後、湿潤時の強伸度を測定したところ、強度が0.85cN/dtex、伸度が32.1%であり、湿潤強度/乾燥強度比は71.4%であった。
【0056】
比較例3
セルロース(日本製紙(株)溶解パルプ、α−セルロース92wt%)100重量部に、酢酸240重量部とプロピオン酸67重量部を加え、50℃で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸172重量部と無水プロピオン酸168重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、80℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースエステルを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースエステルの置換度は2.4(アセチル基1.9、プロピオニル基0.5)、数平均分子量(Mn)は6.4万であった。
【0057】
得られたセルロースエステル100重量部とセルロースエステル100重量部に対してグリセリンジアセテートモノオレート30重量部をエクストルーダーを用いて220℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレットを得た。
【0058】
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥により絶乾状態とし、単軸型溶融紡糸機を用いて、メルター温度245℃にて溶融させ、吐出量4.2g/分の条件で、0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を12ホール有する口金より紡出させた。
【0059】
紡出糸条は25℃のチムニー風(風速:0.3m/秒)によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、500m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(品種:84デシテックス−12フィラメント)の乾燥時の強度は1.03cN/dtex、伸度が29.8%であった。
【0060】
得られた繊維を20℃の水に10分間浸漬した後、湿潤時の強伸度を測定したところ、強度が0.74cN/dtex、伸度が33.8%であり、湿潤強度/乾燥強度比は71.8%であった。
【0061】
比較例4
セルロース(日本製紙(株)溶解パルプ、α−セルロース92wt%)100重量部に、酢酸100重量部とプロピオン酸200重量部を加え、50℃で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸150重量部と無水プロピオン酸350重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、60℃で1.5時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースエステルを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースエステルの置換度は2.4(アセチル基1.1、プロピオニル基1.3)、数平均分子量(Mn)は6.6万であった。
【0062】
得られたセルロースエステル100重量部とセルロースエステル100重量部に対してジグリセリンテトラアセテート20重量部をエクストルーダーを用いて210℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレットを得た。
【0063】
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥により絶乾状態とし、単軸型溶融紡糸機を用いて、メルター温度240℃にて溶融させ、吐出量8.4g/分の条件で、0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を36ホール有する口金より紡出させた。
【0064】
紡出糸条は25℃のチムニー風(風速:0.3m/秒)によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、500m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(品種:168デシテックス−36フィラメント)の乾燥時の強度は1.07cN/dtex、伸度が29.2%であった。
【0065】
得られた繊維を20℃の水に10分間浸漬した後、湿潤時の強伸度を測定したところ、強度が0.83cN/dtex、伸度が30.0%であり、湿潤強度/乾燥強度比は77.6%であった。
【0066】
実施例1〜5の条件、結果を合わせて表1に示し、比較例1〜4の結果を合わせて表2に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【発明の効果】
本発明におけるセルロースエステルと多価アルコールエステル可塑剤を少なくとも含んでなるセルロースエステル組成物よりなる繊維は、乾湿強度差の少ないセルロースエステル繊維である。この繊維は衣料用、医療用および産業用繊維、不織布などとして好適に用いることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、乾湿強度差の少ないセルロースエステル繊維に関する。より詳しくは、エステル置換度が2.5〜3.0であるセルロースエステルと多価アルコールエステル可塑剤とを少なくとも含んでなるセルロースエステル組成物よりなる繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
セルロースエステル、セルロースエーテルなどのセルロース系材料は、光合成により再生可能なバイオマス材料として、また生分解可能な材料として昨今の大きな注目を集めている。
【0003】
しかしながら、セルロースジアセテートやセルローストリアセテートに代表されるセルロースエステル繊維は、機械的特性、特に湿潤時の繊維強度が低いことが知られており、衣料用途で使用されるセルローストリアセテート繊維の強伸度物性について例示すると、乾燥強度は1.2cN/dtexであるのに対して湿潤強度は0.9cN/dtex以下であり、乾燥時の強度に対する湿潤時の強度の割合は75%以下である。また、セルロースジアセテート繊維については、乾燥強度は1.2cN/dtexであるのに対して湿潤強度は0.8cN/dtex以下であり、湿潤時は乾燥時と比較して、7割にも満たず、30%以上もの著しい強度低下が生じる(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
このように水存在下での強度低下に起因してセルロースエステル繊維は、染色工程で被る擦れにより著しくフィブリル化することや、洗濯時に被る擦れによってさえフィブリル化することが避けられない。
【0005】
【非特許文献1】
日本化学繊維協会編「繊維ハンドブック2002」p300
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、乾湿強度差の少ないセルロースエステル繊維を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前述した本発明の課題は、エステル置換度が2.5〜3.0であるセルロースエステルと多価アルコールエステル可塑剤とを少なくとも含んでなるセルロースエステル組成物よりなる繊維であって、乾燥時の強度に対する湿潤時の強度の割合が80〜100%であることを特徴とするセルロースエステル繊維によって解決することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のセルロースエステル繊維について詳細に説明する。
【0009】
本発明におけるセルロースエステル繊維は、エステル置換度が2.5〜3.0であるセルロースエステルと多価アルコールエステル可塑剤とを少なくとも含んでなるセルロースエステル組成物よりなる。
【0010】
本発明におけるセルロースエステルのエステル置換度は2.5〜3.0である。セルロースエステルのエステル置換度が2.5未満の場合、未置換水酸基が多すぎるため、湿潤時の強度低下が大きくなってしまう。なおセルロースのグルコース単位中に含まれる水酸基の数は3個であるため、エステル置換度の上限は3.0である。エステル置換度は2.6〜2.9であることが好ましい。
【0011】
本発明におけるセルロースエステルは、アシル部の炭素数が3個以上であるエステルを、グルコース単位あたり平均1個以上含んでなるものであることが好ましい。ここでいうグルコース単位あたり平均1個以上とは、アシル部の炭素数が3個以上であるエステルの置換度が平均1以上であることを意味する。具体的にはセルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースバリレートなどの1種の長鎖アシル基を有するセルロースエステル類や、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートバリレート、セルロースアセテートラウレート、セルロースアセテートステアレート、セルロースアセテートオレート、セルロースプロピオネートブチレートなど2種のアシル基を有するセルロース混合エステルが例示でき、アシル部の炭素数が18以下であるものが好ましい。なかでもセルロースアセテートプロピオネートは、適度な吸放湿特性を有しており、製造も容易である。そのためセルロースエステルとしてはセルロースアセテートプロピオネートが好ましい。
【0012】
本発明におけるセルロースアセテートプロピオネートは、アセチル基の置換度が0.1〜1.0で、かつプロピオニル基の置換度が1.5〜2.9であることが好ましい。湿潤時の強度低下を抑制するためには、この範囲の置換度を有したセルロースアセテートプロピオネートが好ましいものである。
【0013】
セルロースエステルの数平均分子量(Mn)は、機械的特性を良好にするため、15000以上であることが好ましい。20000以上であることがより好ましく、25000以上であることが最も好ましい。数平均分子量は高ければ高いほど好ましいが、溶融紡糸時のポリマーの熱流動性の観点から、数平均分子量は15万以下であることが好ましい。なお数平均分子量とは、GPC測定により算出した値をいい、実施例にて詳細に説明する。
【0014】
セルロースエステルに対して可塑化作用を有する多価アルコールエステルの含有量は、セルロースエステル100重量部に対して2〜25重量部であることが好ましい。多価アルコールエステルの含有量をセルロースエステル100重量部に対して2〜25重量部とすることで、セルロースアセテートプロピオネートに十分な熱可塑性を付与でき、生産効率の高い溶融紡糸法で生産できるだけでなく、繊維断面を任意に制御することや、複合繊維も可能となる。さらには後工程として繊維の延伸、仮撚加工などを容易にする。また繊度斑、染め斑なく、ヌメリ感等のない風合いの良好な品位を有した繊維を得ることができる。セルロースエステルに対して可塑化作用を有する多価アルコールエステルの含有量は、好ましくはセルロースエステル100重量部に対して3〜20重量部、より好ましくはセルロースエステル100重量部に対して5〜18重量部である。
【0015】
本発明で具体的に用いることができる多価アルコールエステルとしては、セルロースエステルとの相溶性が良く、また熱可塑化効果が顕著に表れるグリセリンエステル、ジグリセリンエステルなどグリセリン系のエステル化合物やポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールのエステル化合物などである。
【0016】
具体的なグリセリンのエステルとして、グリセリンジアセテートステアレート、グリセリンジアセテートパルミテート、グリセリンジアセテートミスチレート、グリセリンジアセテートラウレート、グリセリンジアセテートカプレート、グリセリンジアセテートノナネート、グリセリンジアセテートオクタノエート、グリセリンジアセテートヘプタノエート、グリセリンジアセテートヘキサノエート、グリセリンジアセテートペンタノエート、グリセリンジアセテートオレート、グリセリンアセテートジカプレート、グリセリンアセテートジノナネート、グリセリンアセテートジオクタノエート、グリセリンアセテートジヘプタノエート、グリセリンアセテートジカプロエート、グリセリンアセテートジバレレート、グリセリンアセテートジブチレート、グリセリンジプロピオネートカプレート、グリセリンジプロピオネートラウレート、グリセリンジプロピオネートミスチレート、グリセリンジプロピオネートパルミテート、グリセリンジプロピオネートステアレート、グリセリンジプロピオネートオレート、グリセリントリブチレート、グリセリントリペンタノエート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンプロピオネートラウレート、グリセリンオレートプロピオネートなどが挙げられるがこれに限定されない。
【0017】
この中でも、グリセリンジアセテートカプリレート、グリセリンジアセテートペラルゴネート、グリセリンジアセテートカプレート、グリセリンジアセテートラウレート、グリセリンジアセテートミリステート、グリセリンジアセテートパルミテート、グリセリンジアセテートステアレート、グリセリンジアセテートオレートが好ましい。
【0018】
ジグリセリンのエステルの具体的な例としてはジグリセリンテトラアセテート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンテトラブチレート、ジグリセリンテトラバレレート、ジグリセリンテトラヘキサノエート、ジグリセリンテトラヘプタノエート、ジグリセリンテトラカプリレート、ジグリセリンテトラペラルゴネート、ジグリセリンテトラカプレート、ジグリセリンテトララウレート、ジグリセリンテトラミスチレート、ジグリセリンテトラパルミテート、ジグリセリントリアセテートプロピオネート、ジグリセリントリアセテートブチレート、ジグリセリントリアセテートバレレート、ジグリセリントリアセテートヘキサノエート、ジグリセリントリアセテートヘプタノエート、ジグリセリントリアセテートカプリレート、ジグリセリントリアセテートペラルゴネート、ジグリセリントリアセテートカプレート、ジグリセリントリアセテートラウレート、ジグリセリントリアセテートミスチレート、ジグリセリントリアセテートパルミテート、ジグリセリントリアセテートステアレート、ジグリセリントリアセテートオレート、ジグリセリンジアセテートジプロピオネート、ジグリセリンジアセテートジブチレート、ジグリセリンジアセテートジバレレート、ジグリセリンジアセテートジヘキサノエート、ジグリセリンジアセテートジヘプタノエート、ジグリセリンジアセテートジカプリレート、ジグリセリンジアセテートジペラルゴネート、ジグリセリンジアセテートジカプレート、ジグリセリンジアセテートジラウレート、ジグリセリンジアセテートジミスチレート、ジグリセリンジアセテートジパルミテート、ジグリセリンジアセテートジステアレート、ジグリセリンジアセテートジオレート、ジグリセリンアセテートトリプロピオネート、ジグリセリンアセテートトリブチレート、ジグリセリンアセテートトリバレレート、ジグリセリンアセテートトリヘキサノエート、ジグリセリンアセテートトリヘプタノエート、ジグリセリンアセテートトリカプリレート、ジグリセリンアセテートトリペラルゴネート、ジグリセリンアセテートトリカプレート、ジグリセリンアセテートトリラウレート、ジグリセリンアセテートトリミスチレート、ジグリセリンアセテートトリパルミテート、ジグリセリンアセテートトリステアレート、ジグリセリンアセテートトリオレート、ジグリセリンラウレート、ジグリセリンステアレート、ジグリセリンカプリレート、ジグリセリンミリステート、ジグリセリンオレートなどのジグリセリンの混酸エステルなどが挙げられるが限定されない。
【0019】
この中でも、ジグリセリンテトラアセテート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンテトラブチレート、ジグリセリンテトラカプリレート、ジグリセリンテトララウレートが好ましい。
【0020】
ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどポリアルキレングリコールの水酸基にアシル基が結合した化合物の具体的な例として、ポリオキシエチレンジアセテート、ポリオキシエチレンジプロピオネート、ポリオキシエチレンジブチレート、ポリオキシエチレンジバリレート、ポリオキシエチレンジカプロエート、ポリオキシエチレンジヘプタノエート、ポリオキシエチレンジオクタノエート、ポリオキシエチレンジノナネート、ポリオキシエチレンジカプレート、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジミリスチレート、ポリオキシエチレンジパルミテート、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンジオレート、ポリオキシエチレンジリノレート、ポリオキシエチレンモノアセテート、ポリオキシエチレンモノプロピオネート、ポリオキシエチレンモノブチレート、ポリオキシエチレンモノバリレート、ポリオキシエチレンモノカプロエート、ポリオキシエチレンモノヘプタノエート、ポリオキシエチレンモノオクタノエート、ポリオキシエチレンモノノナネート、ポリオキシエチレンモノカプレート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノミリスチレート、ポリオキシエチレンモノパルミテート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレート、ポリオキシエチレンモノリノレート、ポリオキシプロピレンジアセテート、ポリオキシプロピレンジプロピオネート、ポリオキシプロピレンジブチレート、ポリオキシプロピレンジバリレート、ポリオキシプロピレンジカプロエート、ポリオキシプロピレンジヘプタノエート、ポリオキシプロピレンジオクタノエート、ポリオキシプロピレンジノナネート、ポリオキシプロピレンジカプレート、ポリオキシプロピレンジラウレート、ポリオキシプロピレンジミリスチレート、ポリオキシプロピレンジパルミテート、ポリオキシプロピレンジステアレート、ポリオキシプロピレンジオレート、ポリオキシプロピレンジリノレート、ポリオキシプロピレンモノアセテート、ポリオキシプロピレンモノプロピオネート、ポリオキシプロピレンモノブチレート、ポリオキシプロピレンモノバリレート、ポリオキシプロピレンモノカプロエート、ポリオキシプロピレンモノヘプタノエート、ポリオキシプロピレンモノオクタノエート、ポリオキシプロピレンモノノナネート、ポリオキシプロピレンモノカプレート、ポリオキシプロピレンモノラウレート、ポリオキシプロピレンモノミリスチレート、ポリオキシプロピレンモノパルミテート、ポリオキシプロピレンモノステアレート、ポリオキシプロピレンモノオレート、ポリオキシプロピレンモノリノレートなどが挙げられるがこれに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
【0021】
本発明において、エステル置換度が2.5〜3.0であるセルロースエステルと多価アルコールエステル可塑剤とを少なくとも含んでなるセルロースエステル組成物よりなる繊維は、乾燥時の強度に対する、湿潤時の強度の割合が80〜100%である。乾燥時の強度は1.0〜2.0cN/dtexであることが好ましい。1.0cN/dtex以上とすることにより、製織や製編時などの高次加工工程通過性が良好になり、また最終製品の強力も十分となり好ましい。一方、湿潤時の強度は、乾燥時の強度に対して、割合(湿潤強度/乾燥強度比)が80〜100%である。乾燥時の強度に対する湿潤時の強度の割合が80%未満の場合、水存在下での強度低下に起因して、染色工程で被る擦れにより著しくフィブリル化することや、洗濯時に被る擦れによってさえフィブリル化することが避けられない。湿潤強度/乾燥強度比は、好ましくは85〜100%、より好ましくは90〜100%である。
【0022】
本発明において、エステル置換度が2.5〜3.0であるセルロースエステルと多価アルコールエステル可塑剤とを少なくとも含んでなるセルロースエステル組成物よりなる繊維は、乾燥時および湿潤時の伸度が10〜50%であることが好ましい。伸度を10%以上とすることにより、製織や製編時など高次加工工程において糸切れし難くなる。また伸度を50%以下とすることにより、繊維は低い応力であれば変形することがなく、製織時の緯ひけなどによる最終製品の染色欠点を生じることがない。乾燥時および湿潤時の伸度は15〜45%が好ましく、20〜40%がより好ましい。
【0023】
本発明において、エステル置換度が2.5〜3.0であるセルロースエステルと多価アルコールエステル可塑剤とを少なくとも含んでなるセルロースエステル組成物よりなる繊維は、繊度やフィラメント数については任意の条件を選ぶことができる。衣料用のセルロース素材としては、25〜1000dtexの繊維が、長繊維糸として使用する場合には3〜1000フィラメントで構成されるマルチフィラメント繊度が10〜500dtexの糸条とするのが一般的である。繊維断面形状に関しては特に制限がなく、真円状の円形断面であっても良いし、また、多葉形、扁平形、楕円形、W字形、S字形、X字形、H字形、C字形、田字形、井桁形、中空などの異形断面糸でも良い。
【0024】
本発明において、エステル置換度が2.5〜3.0であるセルロースエステルと多価アルコールエステル可塑剤とを少なくとも含んでなるセルロースエステル組成物よりなる繊維の製造方法は、湿式紡糸法、乾式紡糸法、溶融紡糸法のいずれであっても良い。高品質な長繊維を生産性良く得ること、繊維断面を任意に制御できること、芯鞘複合、偏芯芯鞘複合、サイドバイサイド型複合、異繊度混繊などのように複合繊維等を得ることを考慮すると、溶融紡糸法が好ましい。
【0025】
本発明におけるエステル置換度が2.5〜3.0であるセルロースエステルと多価アルコールエステル可塑剤とを少なくとも含んでなるセルロースエステル組成物よりなる繊維は、衣料用フィラメント、衣料用ステープル、産業用フィラメント、産業用ステープル、医療用フィラメントとすることが可能であり、また不織布用繊維とすることも好ましく採用できる。また、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、糸摩擦低減剤、抗酸化剤、着色顔料、静電剤、抗菌剤等として、無機微粒子や有機化合物を必要に応じて含有することができる。
【0026】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお実施例中の各特性値は次の方法で求めたものである。
A.エステル置換度
80℃で8時間の真空乾燥により絶乾状態としたセルロースエステル0.9gを秤量し、アセトン35mlとジメチルスルホキシド15mlを加え溶解した後、さらにアセトン50mlを加えた。撹拌しながら0.5N−水酸化ナトリウム水溶液30mlを加え、2時間ケン化した。熱水50mlを加え、フラスコ側面を洗浄した後、フェノールフタレインを指示薬として0.5N−硫酸で滴定した。別に試料と同じ方法で空試験を行った。滴定が終了した溶液の上澄み液を100倍に希釈し、イオンクロマトグラフを用いて、有機酸の組成を測定した。測定結果とイオンクロマトグラフによる酸組成分析結果から、下記式により置換度を計算した。なおエステル置換度とは、アセチル基の置換度とアシル基の置換度の和である。
【0027】
TA=(B−A)×F/(1000×W)
DSace=(162.14×TA)/[1−(Mwace−(16.00+1.01)×TA+{1−(Mwacy−(16.00+1.01)×TA}×Acy/Ace]
DSacy=DSace×(Acy/Ace)
TA:全有機酸量(ml)
A:試料滴定量(ml)
B:空試験滴定量(ml)
F:硫酸の力価
W:試料重量(g)
DSace:アセチル基の置換度
DSacy:アシル基の置換度
Mwace:酢酸の分子量
Mwacy:他の有機酸の分子量
Acy/Ace:酢酸(Ace)と他の有機酸(Acy)とのモル比
162.14:セルロースの繰り返し単位の分子量
16.00:酸素の原子量
1.01:水素の原子量
B.数平均分子量の測定
合成したセルロースエステル(実施例1〜5および比較例2〜4のセルロースエステル)を濃度0.01重量%となるようにクロロホルムに完全に溶解させ、GPC測定用試料とした。この試料を用い、以下の条件のもと、Waters 2690でGPC測定を行い、ポリスチレン換算により数平均分子量(Mn)を求めた。
カラム:昭和電工製Shodex K−805L 2本連結
検出器:Waters2410 示差屈折計RI
移動層溶媒:クロロホルム
流速:1.0ml/分
注入量:200μl
比較例1のセルロースエステルについては、濃度を0.01重量%となるようにテトラヒドロフランに完全に溶解させ、GPC測定用試料とし、この試料を用い、以下の条件のもと、Waters 2690でGPC測定を行い、ポリスチレン換算により数平均分子量(Mn)を求めた。
カラム:東ソー製TSK gel GMH HR−H 2本連結
検出器:Waters2410 示差屈折計RI
移動層溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1.0ml/分
注入量:200μl
C.乾燥時における強度および伸度
オリエンテック社製テンシロンUCT−100型を用い、試料長20cm、引張速度20cm/minの条件で引張試験を行って、最大荷重の示す点の応力を繊度で除した値を繊維強度(cN/dtex)とした。また破断時の伸度を繊維の伸度(%)とした。なお乾燥時とは標準状態を指す。
D.湿潤時における強度および伸度
試料を別に設けた容器に入れ、水(20±2℃)中に10分間浸漬して十分に膨潤させた後、オリエンテック社製テンシロンUCT−100型を用い、試料長20cm、引張速度20cm/minの条件で引張試験を行って、最大荷重の示す点の応力を繊度で除した値を繊維強度(cN/dtex)とした。また破断時の伸度を繊維の伸度(%)とした。
E.湿潤強度/乾燥強度比
上記C、Dにより算出した強度値を用い、下式により算出した。
湿潤強度/乾燥強度比(%)={(湿潤強度)/(乾燥強度)}×100
実施例1
セルロース(日本製紙(株)溶解パルプ、α−セルロース92wt%)100重量部に、酢酸67重量部とプロピオン酸300重量部を加え、50℃で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸33重量部と無水プロピオン酸467重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、60℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースエステルを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースエステルの置換度は2.7(アセチル基0.3、プロピオニル基2.4)、数平均分子量(Mn)は7.6万であった。
【0028】
得られたセルロースエステル100重量部とセルロースエステル100重量部に対してグリセリンジアセテートモノオレート14重量部をエクストルーダーを用いて200℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレットを得た。
【0029】
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥により絶乾状態とし、単軸型溶融紡糸機を用いて、メルター温度235℃にて溶融させ、吐出量8.4g/分の条件で、0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を36ホール有する口金より紡出させた。
【0030】
紡出糸条は25℃のチムニー風(風速:0.3m/秒)によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1000m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(品種:84デシテックス−36フィラメント)の乾燥時の強度は1.16cN/dtex、伸度が25.9%であった。
【0031】
得られた繊維を20℃の水に10分間浸漬した後、湿潤時の強伸度を測定したところ、強度が1.12cN/dtex、伸度が25.6%であり、湿潤強度/乾燥強度比は96.6%であった。
【0032】
実施例2
セルロース(日本製紙(株)溶解パルプ、α−セルロース92wt%)100重量部に、酢酸67重量部とプロピオン酸300重量部を加え、50℃で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸17重量部と無水プロピオン酸500重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、60℃で1.5時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースエステルを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースエステルの置換度は2.6(アセチル基0.1、プロピオニル基2.5)、数平均分子量(Mn)は7.4万であった。
【0033】
得られたセルロースエステル100重量部とセルロースエステル100重量部に対してグリセリンジアセテートモノラウレート11重量部をエクストルーダーを用いて200℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレットを得た。
【0034】
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥により絶乾状態とし、単軸型溶融紡糸機を用いて、メルター温度230℃にて溶融させ、吐出量12.5g/分の条件で、0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を36ホール有する口金より紡出させた。
【0035】
紡出糸条は25℃のチムニー風(風速:0.3m/秒)によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、750m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(品種:167デシテックス−36フィラメント)の乾燥時の強度は1.12cN/dtex、伸度が29.9%であった。
【0036】
得られた繊維を20℃の水に10分間浸漬した後、湿潤時の強伸度を測定したところ、強度が1.10cN/dtex、伸度が29.9%であり、湿潤強度/乾燥強度比は98.2%であった。
【0037】
実施例3
セルロース(日本製紙(株)溶解パルプ、α−セルロース92wt%)100重量部に、酢酸67重量部とプロピオン酸300重量部を加え、50℃で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸80重量部と無水プロピオン酸420重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、60℃で40分加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースエステルを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースエステルの置換度は2.9(アセチル基0.8、プロピオニル基2.1)、数平均分子量(Mn)は7.5万であった。
【0038】
得られたセルロースエステル100重量部とセルロースエステル100重量部に対してジグリセリンテトラカプリレート18重量部をエクストルーダーを用いて210℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレットを得た。
【0039】
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥により絶乾状態とし、単軸型溶融紡糸機を用いて、メルター温度240℃にて溶融させ、吐出量6.2g/分の条件で、0.27mmφ−0.67mmLの口金孔を36ホール有する口金より紡出させた。
【0040】
紡出糸条は25℃のチムニー風(風速:0.3m/秒)によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、500m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(品種:124デシテックス−36フィラメント)の乾燥時の強度は1.10cN/dtex、伸度が30.2%であった。
【0041】
得られた繊維を20℃の水に10分間浸漬した後、湿潤時の強伸度を測定したところ、強度が0.97cN/dtex、伸度が31.0%であり、湿潤強度/乾燥強度比は88.2%であった。
【0042】
実施例4
セルロース(日本製紙(株)溶解パルプ、α−セルロース92wt%)100重量部に、酢酸67重量部とプロピオン酸300重量部を加え、50℃で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸50重量部と無水プロピオン酸450重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、80℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースエステルを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースエステルの置換度は2.5(アセチル基0.5、プロピオニル基2.0)、数平均分子量(Mn)は7.2万であった。
【0043】
得られたセルロースエステル100重量部とセルロースエステル100重量部に対してジグリセリンテトラアセテート15重量部をエクストルーダーを用いて210℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレットを得た。
【0044】
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥により絶乾状態とし、単軸型溶融紡糸機を用いて、メルター温度245℃にて溶融させ、吐出量6.3g/分の条件で、0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を24ホール有する口金より紡出させた。
【0045】
紡出糸条は25℃のチムニー風(風速:0.3m/秒)によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、750m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(品種:84デシテックス−24フィラメント)の乾燥時の強度は1.10cN/dtex、伸度が25.8%であった。
【0046】
得られた繊維を20℃の水に10分間浸漬した後、湿潤時の強伸度を測定したところ、強度が1.00cN/dtex、伸度が26.0%であり、湿潤強度/乾燥強度比は90.9%であった。
【0047】
実施例5
セルロース(日本製紙(株)溶解パルプ、α−セルロース92wt%)100重量部に、酢酸67重量部とプロピオン酸300重量部を加え、50℃で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸17重量部と無水プロピオン酸500重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、60℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースエステルを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースエステルの置換度は2.7(アセチル基0.1、プロピオニル基2.6)、数平均分子量(Mn)は7.7万であった。
【0048】
得られたセルロースエステル100重量部とセルロースエステル100重量部に対してポリエチレングリコール(分子量200)の両末端水酸基にラウリル基がエステル結合した化合物(両末端封鎖ポリエチレングリコール)11重量部をエクストルーダーを用いて200℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレットを得た。
【0049】
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥により絶乾状態とし、単軸型溶融紡糸機を用いて、メルター温度235℃にて溶融させ、吐出量6.3g/分の条件で、0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を12ホール有する口金より紡出させた。
【0050】
紡出糸条は25℃のチムニー風(風速:0.3m/秒)によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、750m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(品種:84デシテックス−12フィラメント)の乾燥時の強度は1.26cN/dtex、伸度が39.1%であった。
【0051】
得られた繊維を20℃の水に10分間浸漬した後、湿潤時の強伸度を測定したところ、強度が1.24cN/dtex、伸度が37.9%であり、湿潤強度/乾燥強度比は98.4%であった。
【0052】
比較例1
84デシテックス−20フィラメントのセルロースジアセテート繊維(エステル置換度2.4、数平均分子量(Mn)は4.0万)の乾燥時の強伸度測定を行ったところ、強度が1.17cN/dtex、伸度が32.1%であった。
【0053】
20℃の水に10分間浸漬した後、湿潤時の強伸度を測定したところ、強度が0.79cN/dtex、伸度が35.3%であり、湿潤強度/乾燥強度比は67.5%であった。
【0054】
比較例2
110デシテックス−26フィラメントのセルローストリアセテート繊維(エステル置換度2.9、数平均分子量(Mn)は8.7万)の乾燥時の強伸度測定を行ったところ、強度が1.19cN/dtex、伸度が28.8%であった。
【0055】
20℃の水に10分間浸漬した後、湿潤時の強伸度を測定したところ、強度が0.85cN/dtex、伸度が32.1%であり、湿潤強度/乾燥強度比は71.4%であった。
【0056】
比較例3
セルロース(日本製紙(株)溶解パルプ、α−セルロース92wt%)100重量部に、酢酸240重量部とプロピオン酸67重量部を加え、50℃で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸172重量部と無水プロピオン酸168重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、80℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースエステルを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースエステルの置換度は2.4(アセチル基1.9、プロピオニル基0.5)、数平均分子量(Mn)は6.4万であった。
【0057】
得られたセルロースエステル100重量部とセルロースエステル100重量部に対してグリセリンジアセテートモノオレート30重量部をエクストルーダーを用いて220℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレットを得た。
【0058】
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥により絶乾状態とし、単軸型溶融紡糸機を用いて、メルター温度245℃にて溶融させ、吐出量4.2g/分の条件で、0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を12ホール有する口金より紡出させた。
【0059】
紡出糸条は25℃のチムニー風(風速:0.3m/秒)によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、500m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(品種:84デシテックス−12フィラメント)の乾燥時の強度は1.03cN/dtex、伸度が29.8%であった。
【0060】
得られた繊維を20℃の水に10分間浸漬した後、湿潤時の強伸度を測定したところ、強度が0.74cN/dtex、伸度が33.8%であり、湿潤強度/乾燥強度比は71.8%であった。
【0061】
比較例4
セルロース(日本製紙(株)溶解パルプ、α−セルロース92wt%)100重量部に、酢酸100重量部とプロピオン酸200重量部を加え、50℃で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸150重量部と無水プロピオン酸350重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、60℃で1.5時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースエステルを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースエステルの置換度は2.4(アセチル基1.1、プロピオニル基1.3)、数平均分子量(Mn)は6.6万であった。
【0062】
得られたセルロースエステル100重量部とセルロースエステル100重量部に対してジグリセリンテトラアセテート20重量部をエクストルーダーを用いて210℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレットを得た。
【0063】
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥により絶乾状態とし、単軸型溶融紡糸機を用いて、メルター温度240℃にて溶融させ、吐出量8.4g/分の条件で、0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を36ホール有する口金より紡出させた。
【0064】
紡出糸条は25℃のチムニー風(風速:0.3m/秒)によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、500m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(品種:168デシテックス−36フィラメント)の乾燥時の強度は1.07cN/dtex、伸度が29.2%であった。
【0065】
得られた繊維を20℃の水に10分間浸漬した後、湿潤時の強伸度を測定したところ、強度が0.83cN/dtex、伸度が30.0%であり、湿潤強度/乾燥強度比は77.6%であった。
【0066】
実施例1〜5の条件、結果を合わせて表1に示し、比較例1〜4の結果を合わせて表2に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【発明の効果】
本発明におけるセルロースエステルと多価アルコールエステル可塑剤を少なくとも含んでなるセルロースエステル組成物よりなる繊維は、乾湿強度差の少ないセルロースエステル繊維である。この繊維は衣料用、医療用および産業用繊維、不織布などとして好適に用いることができる。
Claims (4)
- エステル置換度が2.5〜3.0であるセルロースエステルと多価アルコールエステル可塑剤とを少なくとも含んでなるセルロースエステル組成物よりなる繊維であって、乾燥時の強度に対する湿潤時の強度の割合が80〜100%であることを特徴とするセルロースエステル繊維。
- セルロースエステルが、アシル部の炭素数が3以上であるエステルをグルコース単位あたり平均1個以上含んでなるものであることを特徴とする請求項1記載のセルロースエステル繊維。
- セルロースエステルがセルロースアセテートプロピオネートであることを特徴とする請求項1あるいは2記載のセルロースエステル繊維。
- セルロースエステルのアセチル基の置換度が0.1〜1.0、プロピオニル基の置換度が1.5〜2.9であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースエステル繊維。
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