JP2010053488A - セルロース系繊維 - Google Patents

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Abstract

【課題】吸湿性と吸水性の双方に優れた値を示し、かつドライな表面風合いを有するセルロース系繊維を提供すること。
【解決手段】
20℃、65%RHにおける吸湿率が3〜15%であるセルロース系繊維であって、繊維表面には繊維軸方向に平行な凹部が形成されてなり、その凹部の平均長さが2〜8μm、平均幅が0.3〜2μmであることを特徴とするセルロース系繊維。
【選択図】なし

Description

本発明は表面に凹部を有するセルロース系繊維に関する。より具体的にはセルロース系ポリマーが主成分であり、繊維軸に平行な特定形状の凹部を有するため、吸湿性と吸水性の双方に優れたセルロース系繊維に関する。
繊維の表面形態を制御して新しい機能を付与することについては、古くから検討が行われている。例えば微細なシリカ粒子をポリエチレンテレフタレートなどの合成繊維に添加し、繊維の加水分解を行うことできわめて微細な凹凸構造(不規則な凹凸のランダム表面)を発現させうることが知られている(特許文献1など)。このランダムなシリカ粒子を添加した後、ポリエステルを加水分解して繊維表層を溶出除去した繊維は、その微細な凹凸形状によって繊維表面でいったん反射した白色光が再度繊維中へ進入することを可能とすることから、ポリエステル繊維の欠点であった黒発色性を大きく改善しうる技術として古くから採用されている。ただし、微細粒子を配合したポリエステル繊維の場合には、黒発色性には優れているものの、凹凸構造が微細かつランダムであるため吸水性向上の効果は小さいこと、繊維のベースポリマーがポリエステルであるため吸湿性がきわめて低いことから、着用快適性の観点からは通常のポリエステル繊維と大きく変わるものではなかった。
また、繊維軸に水平方向の筋状の凹部を有する繊維としては、ポリエチレンテレフタレートとは非相溶の易溶出ポリマーを配合してポリマーブレンド繊維を製造し、繊維化した後に易溶出ポリマーをアルカリ加水分解等の処理によって溶出することで、繊維軸に水平方向の筋状の凹部を形成させる技術が知られている(特許文献2参照)。この場合、シリカ粒子など微細な無機粒子を配合した場合とは異なり、繊維製造時の分子配向によって非相溶ポリマーは繊維軸方向に配向するため、繊維軸と平行方向の筋状の凹部を形成することとなる。得られた繊維は多数の溝が存在することによるきしみ感風合いが特徴となり、繊維の吸水性についても通常のポリエステル繊維より向上する。しかし、凹部の溝が長すぎるために摩擦を受けたときにフィブリル化されやすい問題があり、繊維のベースポリマーがポリエステルであるため吸湿性がきわめて低く、着用快適性の観点からは通常のポリエステル繊維と大きく変わるものではなかった。
一方、吸湿性の高いセルロース系繊維に関しては、セルロースアセテートなどのセルロースエステル繊維をアルカリ加水分解処理することが可能である。セルロースアセテートやセルロースアセテートプロピオネートなどセルロースエステル系繊維の加水分解に関しては、繊維表層のポリマー全体が溶出除去されるポリエステルの加水分解とは異なり、エステル側鎖が酢酸やプロピオン酸として脱離し、繊維を構成していたセルロース成分はそのまま残存するという違いがある。例えば、無機粒子を含有するセルロースアセテート繊維をアルカリ加水分解処理によってケン化を行い、さらにセルロースとなった繊維表層部分をセルラーゼで酵素処理することによって、クレーター状の微細な凹凸を形成させる技術が知られている(特許文献3)。この場合にはきわめて微細な凹凸となることによって特殊な風合いが得られるものの、繊維軸に対して平行な凹部が形成されるわけではなく、吸水性向上効果が期待できるものではなかった。
またセルロースアセテートプロピオネートを主成分とする繊維をアルカリ加水分解処理することによって、側鎖のアセチル基とプロピオニル基をケン化する技術が知られている(特許文献4)。特許文献4には繊維の内部構造としてミクロなボイドが発現することが示されているが、繊維表層には構造が発現するものではなく、吸水性向上のための繊維軸方向の特定の凹部形状についても何ら示唆されるものではなかった。
特開昭54−120728号公報 特開平9−241966号公報 特開平8−269812号公報 特開2004−183108号公報
本発明が解決しようとする課題は、上述の従来繊維では得られなかった、吸湿性と吸水性の双方に優れた値を示し、かつドライな表面風合いを有するセルロース系繊維を提供することにある。
上述の課題は、20℃、65%RHにおける吸湿率が3〜15%であるセルロース系繊維であって、繊維表面には繊維軸方向に平行な凹部が形成されてなり、その凹部の平均長さが2〜8μm、平均幅が0.3〜2μmであることを特徴とするセルロース系繊維によって解決が可能である。またこの場合、繊維の屈折率が1.40〜1.55であること、繊維の比表面積が4000cm/g以上であることが好適に採用できる。
本発明のセルロース系繊維は、セルロース系のポリマーを主体に構成されてなるため吸湿性に優れるのみではなく、繊維軸方向に平行な特定形状の凹部を有することで吸水性およびドライな風合いに優れるため、従来得られなかった高度な着用快適性が得られることから、衣料用繊維あるいはテキスタイルとして好適に用いることが可能である。
本発明のセルロース系繊維は、セルロース系ポリマーを主体に構成されてなる繊維であり、20℃、65%RHにおける吸湿率が3〜15%である。
20℃、65%RHにおける吸湿率が3%以上であれば着用時の夏季における暑熱感、冬季における静電気発生を抑制することができる。着用快適性の観点からは20℃、65%RHにおける吸湿率は5%以上がより望ましく、7%以上が最も望ましい。但し、あまりに吸湿率が高い場合には水分を吸収することによって重量が増すこととなるため、20℃、65%RHにおける吸湿率は15%以下であることが必要である。高い吸湿性能を得るためにはセルロース系ポリマーはセルロースであることが最も望ましいが、置換度が2.8以下のセルロースエステル、セルロースエーテル、セルロースカーバメート等のセルロース誘導体であってもよい。置換度が2.8以下のセルロースエステルとしては、例えばセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレートなどを用いることができ、置換度が2.8以下のセルロースエーテルとしてはメチルセルロース、エチルセルロースなどを用いることができる。また、繊維は繊維表層の鞘部がセルロースからなり、芯部がセルロースエステルからなるものであってもよい。この場合にはセルロースエステルが芯部に存在することによって湿潤における繊維の強度が低下しすぎることがないため好ましい形態として採用することができる。
本発明のセルロース系繊維の繊維表面は、繊維軸方向に平行な凹部が形成されてなるものである。繊維軸方向の凹部は水や汗などの液体との接触に際して拡散を良好にさせる効果があり、また織編物とした場合にはドライな風合いを発現させるものであるため、本発明において重要な要件である。
本発明におけるこの凹部の形状は、平均長さが2〜8μmであり、平均幅が0.3〜2μmのものである。平均長さとは、繊維表面を1500倍で撮影した電子顕微鏡撮影写真において視認可能な凹部10個について、繊維軸水平方向の上端と下端の距離を測定して求めた平均長さをいう。平均幅とは、同様に電子顕微鏡撮影写真において視認可能な凹部10個について、繊維軸垂直方向の左端と右端の距離を測定して求めた平均値をいう。
凹部の平均長さが2μm以上であれば、液体の拡散効果、織編物のドライ感効果が発現する。液体の拡散効果を良好にする観点で、凹部の平均長さは3μm以上、4μm以上とすることも好適に採用できる。逆に8μm以下であれば繊維のフィブリル化欠点が生じることがなく、繊維表面の品質劣化がないために好ましい。繊維のフィブリル化を防ぐ観点で、凹部の平均長さは7μm以下、6μm以下とすることも好適に採用できる。
凹部の平均幅に関しては0.3μm以上であれば、液体の拡散効果、織編物のドライ感効果が発現する。液体の拡散効果を良好にする観点で、0.5μm以上、0.7μm以上とすることも好適に採用できる。一方、平均幅が2μm以下であれば繊維軸方向への液体の拡散を良好とする効果があり、フィブリル化抑制の効果もある。フィブリル化抑制のためには凹部の平均幅を1.8μm以下、1.5μm以下とすることも好適に採用できる。
また、繊維の発色性の観点からは繊維の屈折率、すなわち繊維を構成するポリマー組成物の屈折率が1.40〜1.55であることが好ましい。屈折率は繊維に入射できる成分と表面で反射される成分の割合を決定する因子のひとつであり、屈折率が小さい値であるほど繊維の表面における反射光成分は少なくなって、より効率的な発色が可能となる。屈折率の値は小さければ小さいほど好ましいが、繊維形成性を有する熱可塑性ポリマー組成物では1.4程度が下限であり、1.45〜1.53程度であってもよい。ここで屈折率とは、JIS−K7105(1981)(屈折率)に基づいてアッベ屈折計にて測定した値をいう。なお、繊維が屈折率に差がある複合構造となっている場合には、各成分の屈折率とその成分の体積分率を乗じた値の総和を屈折率とするものとする。
屈折率が1.40〜1.55であるポリマー組成物の例としては、セルロースあるいはセルロース誘導体があげられるが、前述の、セルロースアセテートプロピオネート組成物、セルロースアセテートブチレート組成物が、屈折率が低く透明性も高い観点から好適に採用できる。
本発明の繊維は繊維の比表面積が4000cm/g以上であることが好ましい。これは繊維を用いた織物、編物などの繊維構造物において繊維表面への水分の拡散において比表面積が大きな場合に、より早い拡散速度が得られるためである。吸水性の観点からは比表面積は5000cm/g以上であることがより好ましく、6000cm/g以上であることが最も好ましい。繊維の比表面積の向上のためには繊維軸方向に平行な凹部が形成されてなり、その凹部の平均長さが2〜8μm、平均幅が0.3〜3μmである本発明の繊維形態をベースにして、凹部を多数、具体的には10万個/cm以上、より好ましくは50万個/cm以上有する繊維であることが好ましく採用できる。
また比表面積を向上させるためには繊維の直径を細く設定することも好適に採用することができる。具体的には単糸繊度が1dtex以下であることが好ましく、0.5dtex以下とすることも好ましく採用できる。後述の無機粒子の配合の観点から、単糸繊度を0.05dtex以下とすることは物理的に困難である。
本発明の、繊維軸方向に平行な凹部が形成されてなり、その凹部の平均長さが2〜8μm、平均幅が0.3〜2μであるセルロース系繊維は、セルロース誘導体を主体として構成されてなる組成物に平均粒径が0.2〜2μmの範囲にある無機粒子を配合したポリマー組成物を、特定紡糸速度で溶融紡糸した後、繊維の少なくとも表層に対して特定の加水分解処理を施すことによって繊維の少なくとも表層の一部を溶出除去することにより製造することができる。
繊維化に用いる組成物の主成分となるセルロース誘導体は、置換度が2.8以下のセルロースエステル、セルロースエーテル、セルロースカーバメート等のセルロース誘導体であってもよい。置換度が2.8以下のセルロースエステルとしては、例えばセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレートなどを用いることができ、置換度が2.8以下のセルロースエーテルとしてはメチルセルロース、エチルセルロースなどを用いることができる。溶融紡糸法にて繊維を製造する場合には、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートをベースポリマーとして採用することが、良好な熱可塑性の観点から好ましい。
セルロースアセテートプロピオネートあるいはセルロースアセテートブチレートは、熱流動性を向上させる目的で可塑剤を含む組成物とし、これを溶融紡糸に用いることができる。具体的に用いうる可塑剤としては、セルロースアセテートプロピオネートあるいはセルロースアセテートブチレートに混和するものであれば特に制限はなく用いることができる。例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなどのフタル酸エステル類、テトラオクチルピロメリテート、トリオクチルトリメリテートなどの芳香族多価カルボン酸エステル類、ジブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、ジオクチルセバケートなどの脂肪族多価カルボン酸エステル類、グリセリントリアセテート、ジグリセリンテトラアセテート、グリセリン混合エステルなどの多価アルコールの脂肪酸エステル類、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどのリン酸エステル類などを挙げることができる。
また高分子量の可塑剤として、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートなどのグリコールと二塩基酸とからなる脂肪族ポリエステル類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのオキシカルボン酸からなる脂肪族ポリエステル類、ポリカプロラクトン、ポリプロピオラクトン、ポリバレロラクトンなどのラクトンからなる脂肪族ポリエステル類などを挙げることができる。これらの高分子量可塑剤は共重合体であってもよいし、重合体の一部が修飾されているものであってもよい。さらには、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、一般式(1)で示されるポリエーテル類などを挙げることができる。
R1−O−{(CH2)nO}m−R2 ・・・(1)
(但し、R1とR2は、H、アルキル基およびアシル基よりなる群から選ばれた同一または異なる基を表す。nは2〜5の整数、mは3〜30の整数。)。
上記の一般式(1)で示されるポリエーテル化合物は、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートともに相溶性よく混和することができるため、好適に採用することができる。具体的なポリエーテル化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体およびそれらの末端封鎖物などを挙げることができる。
ポリマー組成物に配合する無機粒子としては、平均粒径が0.2〜2μmのものを用いることができるが、具体的に好適な例としては二酸化チタン粒子、炭酸カルシウム粒子をあげることができる。平均粒径が0.2μm以上であれば繊維の凹部の形状が繊維軸方向に平行な溝状形態を形成することができ、吸水性発現の観点から好ましい。逆に2μm以下であれば繊維を製造するにあたっての糸切れ防止はもちろん、繊維形態となった後の耐フィブリル性の発現の観点からも好ましい。
繊維に配合する無機粒子の量は、繊維全体の重量に対して0.2〜5重量%であることが好ましい。0.2重量%以上とすることによって、繊維軸方向に平行な凹部を形成させることができる。無機粒子の量が多いほど凹部の形成は顕著となり、繊維の比面積も増大することとなるが、5重量%よりも多い場合には繊維を製造するにあたっての糸切れ発生の問題、繊維形態となった後の耐フィブリル性が悪化する問題が発生することがある。
無機粒子を含有するセルロース誘導体組成物を用いた繊維の製造においては、最終的に得られる繊維表面の凹部の形状を繊維軸と平行とするため、繊維の紡糸速1500m/分以上とすることが好ましい。繊維に平行な凹部とするためには繊維の内部構造として分子配向がある程度進んでいることが重要であり、繊維の紡糸速度は従来セルロース系繊維で採用されている1000m/min以下ではなく、1500m/min以上、好ましくは2000m/min以上とすることがよい。紡糸速度の上限は用いる組成物の曳糸性によって適宜決定することができるが、セルロース系組成物の場合には5000m/min以上の場合には糸切れが多発するほか繊維の強度も低下するため採用は困難である。
繊維軸方向に平行な凹部を形成させるためには、無機微粒子を配合したセルロース誘導体を主成分とする繊維に対して、少なくとも繊維表層の一部を溶解除去する必要がある。溶解除去については、セルロース誘導体の側鎖を加水分解する手法を採用することができ、具体的にはアルカリ性の水溶液中に繊維を一定時間浸漬する方法を採用することができる。無機粒子を含有するセルロース誘導体成分を加水分解した場合には、側鎖が加水分解により取り除かれるともに粒子が存在した箇所を中心として凹部が形成される。繊維表面は加水分解により親水性の高いセルロースに再生され、凹部形状の繊維表面構成を発現するため吸湿性と吸水性の双方に優れた繊維構造とすることができる。
加水分解処理に用いるアルカリ性の水溶液は、セルロース誘導体を加水分解できるものであれば特段の限定はないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液、炭酸ナトリウムなどの弱酸と強塩基の塩の水溶液などが好適な例である。水酸化ナトリウム水溶液の場合には、水溶液中の水酸化ナトリウムの濃度を0.5〜4wt%とすることが好ましい。0.5wt%以上であれば処理時間が長くなりすぎることがなく効率的である。逆に4wt%以下であれば分子鎖切断などの副反応を抑制することができるため好ましい。炭酸ナトリウム水溶液の場合には、水溶液中の炭酸ナトリウムの濃度を2〜10wt%とすることが好ましい。2wt%以上であれば処理時間が長くなりすぎることがなく効率的である。逆に10wt%以下であれば分子鎖切断などの副反応を抑制することができるため好ましい。
アルカリ性水溶液を用いる繊維の加水分解処理においては、処理時の最高温度を40〜120℃とすることが好ましい。温度は高ければ高いほど加水分解速度が速くなるが、逆に分子鎖切断による強力低下を招くことがあるため、処理時の最高温度は、たとえば60〜110℃の範囲とすることや、さらに80〜100℃とすることも好適に採用できる。また、処理の効率化を図るために四級アンモニウム塩などのアルカリ加水分解を加速しうる化合物を併用することも問題なく採用することができる。
以下、実施例により本発明のより詳細な説明を行う。なお、各物性値は下記の方法により求めた。
A.繊維表面の凹部の形状(平均長さおよび平均幅)
測定試料についてSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて倍率1500倍で観察を行い電子顕微鏡写真を撮影する。得られた写真を元に、任意の10個の凹部を選択し、繊維軸方向に水平方向の上端と下端の距離を平均長さ(μm)、左端と右端の距離を平均幅(μm)とした。
B.吸湿性
維試料約1gを用意し、その絶乾時の重量(W0)を測定する。この試料を20℃・65%RHの状態に調湿された恒温恒湿器(ナガノ科学機械製LH−20−11M)中に24時間放置し、平衡状態となった試料の重量(W20)を測定し、下記式により求める。
吸湿率(重量%)={(W20−W0)/W0}×100
C.吸水高さ
トータル繊度範囲50〜160dtexの原糸で20ゲージの筒編み機を用い作成した筒編み地を試料とし、蒸留水に筒編み地試料の下端約2cmを漬浸して、10分後の水の吸い上げ長さを測定し、吸水高さ(mm)とした。なお、吸水高さは40mm以上を吸水性が優れているものと判定する。
D.ポリエステルの固有粘度[η]
オルソクロロフェノール10mlに対して試料0.1gを溶解して温度25℃でオストワルド粘度計を使用して測定した。
E.繊維の比表面積
島津製作所製ジェミニ2375を用い、窒素ガスの吸着量からBET1点法にて測定を行った。
F.ドライ感
トータル繊度範囲50〜160dtexの原糸で20ゲージの筒編み機を用い作成した筒編み地を試料とし、官能検査によってドライ感を判定した。ドライ感が明確に感じられるものを◎、ある程度感じられるものを○、感じられないものを×とし、○以上を合格とした。
製造例1
セルロース(コットンリンター)100重量部に、酢酸240重量部とプロピオン酸67重量部を加え、50℃で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸172重量部と無水プロピオン酸168重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、80℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースアセテートプロピオネート(CAP)を濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたCAPの平均置換度は2.7(アセチル基置換度2.0、プロピオニル基置換度0.7)であった。
実施例1
製造例1で得られたCAP80.7重量%、平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)17.5重量%、リン系酸化防止剤としてのビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%、さらに無機粒子として平均粒径0.5μmの二酸化チタン1.7重量%(CAPに対して2.1wt%)を用意し、二軸エクストルーダーを用いて225℃で混練し、5mm程度にカッティングしてCAP組成物ペレットを得た。
この組成物ペレットを80℃×6hr真空乾燥したものを用いて、単成分型溶融紡糸機にて紡糸温度260℃にて溶融し、0.25mmφ×0.5mmLの口金孔を48H有する口金を通じて紡出後、風温20℃、風速30m/分の条件で冷却して、紡糸速度2000m/分にて回転する第1ゴデットローラーで引き取り、同じく2000m/分で回転する第2ゴデットローラーを介して巻取った。得られた繊維の品種は84dtex−48filであり、紡糸時の糸切れは発生せず製糸性は良好であった。
得られた繊維を用いて筒編み地を作成し、80℃×20分の条件で精練を行ってPEGを全量溶出した。精練後の筒編地を一旦乾燥させ、水酸化ナトリウムが3wt%溶解したアルカリ浴中に浸漬し、98℃×60分の処理を行った。
繊維はアルカリ処理によって繊維の中央部まで完全にケン化されており、屈折率は1.52、単糸繊度は0.7dtexであり、比表面積は9500cm/gであった。また繊維表層には多数の凹部が形成されており、その平均長さは6.4μm、平均幅は1.5μmとなっていた。吸水性能を測定したところ69mmと、きわめて良好であることが分かった。20℃、65%RHにおける吸湿率は11%と非常に高い値であり、吸湿性にきわめて優れるものであった。また、筒編み地は明確にドライ感が感じられるものであった。
実施例2〜4
実施例1と同様にして得た繊維(84dtex−48f)を用いて、筒編み地を作成し、実施例1と同様に精練を行った。精練後の筒編地を一旦乾燥させ、実施例2では水酸化ナトリウムの濃度を2wt%、実施例3では水酸化ナトリウム1wt%、実施例4では炭酸ナトリウム3wt%とする他は、実施例1と同様にアルカリ処理を行った。
得られた繊維は繊維表層部分がケン化されてセルロースとなり、繊維中央部はセルロースアセテートプロピオネートのままである芯鞘複合状態の繊維となった。各種特性値は表1に示すとおりであり、それぞれ吸湿性および吸水性の双方に優れた繊維が得られた。また、いずれの実施例でも筒編み地はドライ感が感じられるものであり、特に実施例2では明確にドライ感が感じられるものであった。
Figure 2010053488
比較例1
固有粘度[η]が0.64であるポリエチレンテレフタレートに平均粒径が0.04μmの乾式法シリカ2.5wt%が均一に分散したペレットを作成し、160℃で7時間真空乾燥後、紡糸温度290℃、紡糸速度3700m/minで紡糸し、1.59倍で延伸して110dtex−48fの延伸糸を得た。
得られた繊維を用いて筒編み地を作成し、実施例1と同様にしてアルカリ処理を行った。単糸繊度は1.8dtexであった。繊維表面には繊維軸方向に平行な溝状ではなく長さ0.3μmのきわめて微細かつランダムな凹凸構造が発現した。吸水性を測定したところ、27mmと劣ったものであった。20℃、65%RHにおける吸湿率は0.1%であり吸湿性が劣っていた。
比較例2
固有粘度[η]が0.65のポリエチレンテレフタレートと固有粘度[η]が0.69で、5−スルホイソフタル酸ナトリウム10.0モル%およびイソフタル酸15モル%を共重合した変性ポリエステルを75/25の重量比率で溶融混合したポリマ流を紡糸温度292℃で吐出し、1500m/minの速度で巻取った。続いて、該未延伸糸を2.5倍で延伸して、84dtex−36fの延伸糸を得た。
得られた繊維を用いて筒編み地を作成し、実施例1と同様にしてアルカリ処理を行った。単糸繊度は1.9dtexであった。繊維表面には繊維軸方向に平行な凹部が観察されたが凹部の長さが58μmと長く、筒編み地には毛羽欠点が発生していた。吸水性を測定したところ、72mmと優れた値を示したが、吸湿性は0.1%であり吸湿性が劣っていた。
比較例3
二酸化チタン粒子を添加しない他は実施例1と同様にして繊維を製造し、筒編み地としてアルカリ処理を行った。得られた繊維は表面に凹部が存在しない滑らかな側面を有するものであった。吸湿率は11%と良好であったが、吸水性を測定したところ31mmと吸水性が劣っていた。
Figure 2010053488
実施例5〜6
実施例5ではCAPに対する二酸化チタンの配合量を0.5wt%とし、口金孔を72H有する口金を用いて84dtex−72filの繊維とする他は、実施例6ではCAPに対して0.5wt%となるように二酸化チタン粒子に変えて、平均粒径1.2μmの炭酸カルシウム粒子を用い、口金孔を72H有する口金を用いて84dtex−72filの繊維とする他は、実施例1と同様にして繊維を作成し、筒編み地を作成した。
得られた筒編み地は実施例1と同様に精練を行ってPEGを全量溶出した後、水酸化ナトリウムを2wt%溶解したアルカリ浴中に浸漬し、98℃×60分の処理を行った。繊維はアルカリ処理によって繊維の中央部まで完全にケン化されてセルロースとなっていた。各種特性値は表3に示すとおりであり、吸湿性と吸水性の双方に優れていた。また、筒編み地は明確にドライ感が感じられるものであった。
実施例7〜8
製造例1で得たCAPに変えて、セルロースアセテートブチレート(CAB、イーストマンケミカル社製)を用いる他は、実施例1と同様にして84dtex−48filの繊維を製造し、筒編み地を作成した。
得られた筒編み地は実施例1と同様に精練を行ってPEGを全量溶出した後、水酸化ナトリウムが4wt%溶解したアルカリ浴中に浸漬し、実施例7では98℃×120分の処理を、実施例8では98℃×60分の処理を行った。実施例7では繊維の中央部まで完全にケン化されてセルロースとなっており、実施例8では繊維表層部分がケン化されてセルロースとなり、繊維中央部はセルロースアセテートブチレートのままである芯鞘複合状態となった。各種特性値は表3に示す通りであり、
吸湿性と吸水性の双方に優れるものであった。また、筒編み地はドライ感が感じられるものであった。
Figure 2010053488
本発明のセルロース系繊維は繊維表面に特定の凹部構造を有することから、吸湿性と吸水性の双方に優れた値を示し、かつドライな表面風合いを有するものである。そのため、快適性、審美性を活かした衣料用繊維分野全般に好適に用いることができる。

Claims (2)

  1. 20℃、65%RHにおける吸湿率が3〜15%であるセルロース系繊維であって、繊維表面には繊維軸方向に平行な凹部が形成されてなり、その凹部の平均長さが2〜8μm、平均幅が0.3〜2μmであることを特徴とするセルロース系繊維。
  2. 繊維の屈折率が1.40〜1.55であり、繊維の比表面積が4000cm/g以上であることを特徴とする請求項1に記載のセルロース系繊維。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2012046832A (ja) * 2010-08-24 2012-03-08 Asahi Kasei Fibers Corp 吸水速乾性織物
JP2016169441A (ja) * 2015-03-11 2016-09-23 東レ株式会社 セルロース系繊維およびそれからなる人工毛髪

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