JP2004174975A - 転写材用ポリエステルフィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】加熱ロールや金型の汚れを軽減させ、清掃する頻度を著しく少なくすることのできる転写材用フィルムを提供する。
【解決手段】180℃で10分間加熱処理した後のフィルム表面オリゴマー量が0.01〜2.1mg/m2であることを特徴とする転写材用ポリエステルフィルムであり、当該フィルムの表面にコート層を設けてもよく、当該フィルムは、オリゴマー含有量が0.10〜0.70重量%のポリエステル原料から製造されることが好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】180℃で10分間加熱処理した後のフィルム表面オリゴマー量が0.01〜2.1mg/m2であることを特徴とする転写材用ポリエステルフィルムであり、当該フィルムの表面にコート層を設けてもよく、当該フィルムは、オリゴマー含有量が0.10〜0.70重量%のポリエステル原料から製造されることが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、転写材用ポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に転写材は、基材ポリエステルフィルムの片面に順次、離型層、図柄層および接着層などの転写層を積層して構成されている。目的に応じ、転写層としてハードコート層や金属蒸着層も積層されている。さらには、これら離型層や転写層に、帯電防止剤や抗菌剤等の機能性剤を加え、機能が付与されている。
これら転写材の転写方法としては、転写装置を用いて加熱ロールで被転写物に転写する、いわゆるホットスタンピング法や、射出成形機やブロー成形機の金型に接着層が成形樹脂と接するように転写材をセッティングした後、成形樹脂を射出またはブローし、成形と同時に転写し、冷却後金型より成形品を取り出す、いわゆる成形同時転写法が一般的に知られている(特許文献1〜5)。
【0003】
どちらの方法においても、加熱ロールや金型がポリエステルフィルム表面にあるポリエステルのオリゴマーによって汚れ、転写回数を重ねるにつれ、加熱ロールや金型に蓄積される。これらオリゴマーは、やがて被転写体へ転写した転写面に跡を付けたり、転写面の光沢を悪くしたりし、甚だしい場合には被転写体に歪みを与えたりする。成形同時転写法の場合は、流動する樹脂と転写材とが接触するのでこの傾向が強い。このため、被転写体の転写面や加熱ロールおよび金型を監視し、適宜加熱ロールや金型を清掃することが行われているが、加工効率を低下させる要因となっている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−196821号公報
【特許文献2】特開平7−237283号公報
【特許文献3】特開2000−255006号公報
【特許文献4】特開2000−280408号公報
【特許文献5】特開2000−344909号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の従来の問題点を解決しようとするものであり、その解決課題は、加熱ロールや金型の汚れを軽減させ、清掃する頻度を著しく少なくすることのできる転写材用フィルムを提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の状況に鑑み、鋭意検討した結果、特定構成のフィルムが特に有用であることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、180℃で10分間加熱処理した後のフィルム表面オリゴマー量が0.01〜2.1mg/m2であることを特徴とする転写材用ポリエステルフィルムに存する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の転写材用ポリエステルフィルムに用いるポリエステルとは、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸のようなジカルボン酸またはそのエステルとエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1−4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのようなグリコールとを溶融重縮合させて製造されるポリエステルである。
【0008】
これらの酸成分とグリコール成分とからなるポリエステルは、通常行われている方法を任意に使用して製造することができる。例えば、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとの間でエステル交換反応をさせるか、あるいは芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接エステル化させるかして、実質的に芳香族ジカルボン酸のビスグリコールエステル、またはその低重合体を形成させ、次いでこれを減圧下、加熱して重縮合させる方法が採用される。その目的に応じ脂肪族ジカルボン酸を共重合しても構わない。
本発明のポリエステルとしては、代表的には、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられるが、その他に上記の酸成分やグリコール成分を共重合したポリエステルであってもよく、必要に応じて他の成分や添加剤を含有していてもよい。
【0009】
これらポリエステルには、フィルムの走行性を向上する等の目的で、炭酸カルシウム、カオリン、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム等の無機粒子やアクリル樹脂、グアナミン樹脂等の有機粒子や触媒残差を粒子化させた析出粒子を含有させることができる。これら粒子の粒径や量は目的に応じ適宜決めることができる。また、適宜各種安定剤、潤滑剤、帯電防止剤等を加えることもできる。
【0010】
本発明は、180℃で10分間加熱処理した後のフィルム表面オリゴマー量が0.01〜2.1mg/m2であることを必要とするが、こらは、次の方法で求めたものである。すなわち、ポリエステルフィルムを180℃で10分間窒素ガス雰囲気のオーブンで熱処理し、その後着目すべき面のみジメチルホルムアミド(DMF)に3分間浸し、DMFに溶解したオリゴマー量を液体クロマトグラフィーにて定量化するという方法である。
なお、上記オリゴマー量を満足する表面の反対面に通常転写層が設けられる。
【0011】
本発明においては、オリゴマー含有量が0.10〜0.70重量%のポリエステル原料を用いることが好ましく、これは、通常の溶融重縮合反応で得たポリエステルのチップを減圧下あるいは不活性ガスの流通下で180℃から240℃にて1時間から20時間程度保つという固相重合によって得ることができる。この原料のみまたは、この原料と通常の原料を混合して単層のポリエステルフィルムを製膜してもよく、また2層以上の多層構成とし、転写層と反対側の表面層にのみこの原料を用いてもよい。多層構成の場合、内層には通常のポリエチレンテレフタレートを用いてもよく、また成形同時転写用では、成形性を向上する目的でイソフタル酸、テレフタル酸を共重合成分とした共重合ポリエステルやポリブチレンテレフタレートでもよい。
【0012】
本発明の製膜方法としては通常知られている製膜法でよく特に制限はない。例えば、まず、ロール延伸法により、60〜120℃で2〜6倍に延伸して、一軸延伸ポリエステルフィルムを得、次いで、テンター内で先の延伸方向とは直角方向に80〜130℃で2〜6倍に延伸し、さらに、150〜250℃で1〜600秒間熱処理を行なう製膜方法でよい。
本発明のポリエステルフィルムの厚みは12〜188μmの範囲が好ましい。
【0013】
本発明のフィルムに必要に応じて設けるコート層としては、シランカップリング剤やアクリル系樹脂やポリビニルアルコールを含む層が挙げられる。これらコート層は二軸延伸フィルムに従来技術でコートしてもよく、また、ポリエステルフィルムを製造する工程中で従来技術でコートしてもよい。例えば、逐次二軸延伸法においては縦一軸延伸後のフィルムにコートした後、横に延伸する方法、または、二軸延伸フィルム後にコートし乾燥する方法がある。方法に制約はないが、一軸延伸フィルムにコートし、次いで横延伸し、熱処理する方法は、コート層を均一に薄くできる等の特徴があり好ましい。
【0014】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における評価方法やサンプルの処理方法は下記のとおりである。また、実施例および比較例中の「部」は「重量部」を示す。
【0015】
(1)ポリエステル原料中のオリゴマーの測定方法
所定量のポリエステル原料をo−クロロフェノールに溶解した後、テトラヒドロフランで再析出して濾過し、線状ポリエチレンテレフタレートを除いた後、次いで得られた濾液を液体クロマトグラフィー(島津LC−7A)に供給してポリエステル中に含まれるオリゴマー量を求め、この値を測定に用いたポリエステル量で割って、ポリエステル中に含まれるオリゴマー量とする。
液体クロマトグラフィーで求めるオリゴマー量は、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた(絶対検量線法)。標準試料の作成は、予め分取したポリエチレンテレフタレートの環状三量体を正確に秤量し、正確に秤量したDMF(ジメチルホルムアミド)に溶解して作成した。
液体クロマトグラフの条件は下記のとおりとした。
移動相A:アセトニトリル
移動相B:2%酢酸水溶液
カラム:三菱化学(株)製MCIGELODS1HU
カラム温度:40℃
流速:1ml/分
検出波長:254nm
【0016】
(2)ポリマーの極限粘度[η](dl/g)の測定方法
ポリマー1gをフェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100ml中に溶解させ、ウベローデ型粘度計にて30℃で測定した。
【0017】
(3)ポリエステルフィルムの加熱処理とオリゴマーの測定方法
A4サイズのケント紙の上にオリゴマー量を測定する面が外側になるようにポリエステルフィルムを重ね合わせ、四隅をクリップして、ケント紙とポリエステルフィルムを止める。この状態でサンプルを窒素雰囲気下の180℃のオーブンに入れ、10分間静置した後取り出した。
次いで、ポリエステルフィルムのオリゴマーを測定する面を内向きとして底面が(12.5cm×20cm)となるように4辺を折って箱を作成し、この箱に約10mlのDMFを入れ3分間浸した後、DMFに溶解したオリゴマー量を定量し求めた。定量に際しては、最終的に10mlとした溶液中のオリゴマー量を、液体ロマトグラフィー(島津LC−7A)を用いて標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた(絶対検量線法)。
標準試料の作成は、予め分取したポリエチレンテレフタレートの環状三量体を正確に秤量し、正確に秤量したDMF(ジメチルホルムアミド)に溶解して作成した。
単位はmg/m2で示した。
液体クロマトグラフの測定条件は下記のとおりとした。
移動相A:アセトニトリル
移動相B:2%酢酸水溶液
カラム:三菱化学(株)製MCIGELODS1HU
カラム温度:40℃
流速:1ml/分
検出波長:254nm
【0018】
(4)転写時のロールの汚れや金型の汚れをの代用評価方法
転写時のロールの汚れや金型の汚れを評価するものとして、転写層と反対面となるフィルム表面を150℃のステンレス板で熱プレスし金属の汚れ程度を目視にて判定した。
プレス厚は5kg/cm2とし、一回30秒で200回実施し、評価の判定は以下のとおりとした。
○:ステンレス板に汚れは見えなかった。
△:ステンレス板に少し汚れは見えたが、実用的には問題ないレベルだった。
×:ステンレス板に白い汚れがはっきり見えた。
【0019】
実施例および比較例にて使うポリエステル原料は次の方法にて製造した。
すなわち、通常の溶融宿重合法にて平均粒径2.5μmの非晶質シリカを0.06部含有する溶融粘度0.58のポリエステルチップ(以降チップAと呼ぶ)および溶融粘度0.66のポリエステルチップ(以降チップBと呼ぶ)を製造した。チップAを窒素気流中で220℃にて10時間加熱しオリゴマー含有量の少ないポリエステルチップ(以降チップCと呼ぶ)を製造した。
チップBに含まれるオリゴマーの量は0.83重量%、チップCに含まれるオリゴマー量は0.24重量%だった。これらチップは、十分に乾燥し水分を50ppm以下にしてから使用した。
【0020】
実施例1
チップCを295℃にて溶融し、冷却したドラム上に溶融押し出して無定型シートを得、次いで85℃〜100℃にて縦に3.5倍に延伸して縦一軸延伸フィルムを得た。このフィルムを85℃〜110℃の雰囲気で横に4.0倍延伸し、次いで235℃にて熱処理して、厚さ38μmの2軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
このものの180℃で10分間熱処理した後の表面オリゴマー量は0.1mg/m2だった。プレス機による汚れの評価では、汚れはなく○であった。
【0021】
実施例2
ポリエステルCおよびにポリエステルBを別個の押し出し機に供給し、それぞれ溶融押し出し、フィードブロック内で溶融したポリエステルを合流して積層してスリット状ダイより、冷却ロール上にシート状に押し出し無定型シートを得、次いで85℃〜100℃にて縦に3.5倍に延伸して縦一軸延伸フィルムを得た。このフィルムを85℃〜110℃の雰囲気で横に4.0倍延伸し、次いで235℃にて熱処理して、厚さ38μmの2軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの層構成を各層の原料名で示すとチップC/チップB/チップCであり、各層の厚さは4μm/30μm/4μmであった。このものの180℃で10分間熱処理した後の表面オリゴマーは0.3mg/m2だった。プレス機による汚れの評価では、汚れはなく○であった。
【0022】
実施例3
チップCとチップBをその比チップC/チップBが3/7の割合で均一に混合した後チップを十分に乾燥し295℃にて溶融し、冷却したドラム上に溶融押し出して無定型シートを得、次いで85℃〜100℃にて縦に3.5倍に延伸して縦一軸延伸フィルムを得た。このフィルムを85℃〜110℃の雰囲気で横に4.0倍延伸し、次いで235℃にて熱処理して、厚さ38μmの2軸延伸ポリエステルフィルムを得た。このものの180℃で10分間熱処理した後の表面オリゴマー量は1.8mg/m2だった。プレス機による汚れの評価では、少し汚れは見えたものの問題はなく、△であった。
【0023】
実施例4
チップBを295℃にて溶融し、冷却したドラム上に溶融押し出して無定型シートを得、次いで85℃〜100℃にて縦に3.5倍に延伸して縦一軸延伸フィルムを得た。このフィルムにN−β(アミノエチル)γーアミノフ゜ロヒ゜ルトリメトキシシラン2%水溶液をク゛ラヒ゛アコーターで5μmコートし、90℃〜120℃の雰囲気で横に4.0倍延伸し、次いで235℃にて熱処理して厚み38μmの2軸延伸ポリエステルフィルムを得た。このものの180℃で10分間熱処理した後の表面オリゴマー量は0.3mg/m2だった。プレス機による汚れの評価では、汚れはなく、○であった。
【0024】
比較例1
実施例1のチップをチップBに変更して厚み38μmに2軸延伸ポリエステルフィルムを得た。このものの180℃で10分間熱処理した後の表面オリゴマー量は3.0mg/m2だった。プレス機による汚れの評価では、ステンレス板が白く汚れ、×であった。
以上、得られたフィルムの特性および実用特性をまとめて下記表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、転写時に、特に成形同時転写時に、転写ロールや金型の汚れの頻度が著しく軽減され、工業的な利用価値は大きい。
【発明の属する技術分野】
本発明は、転写材用ポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に転写材は、基材ポリエステルフィルムの片面に順次、離型層、図柄層および接着層などの転写層を積層して構成されている。目的に応じ、転写層としてハードコート層や金属蒸着層も積層されている。さらには、これら離型層や転写層に、帯電防止剤や抗菌剤等の機能性剤を加え、機能が付与されている。
これら転写材の転写方法としては、転写装置を用いて加熱ロールで被転写物に転写する、いわゆるホットスタンピング法や、射出成形機やブロー成形機の金型に接着層が成形樹脂と接するように転写材をセッティングした後、成形樹脂を射出またはブローし、成形と同時に転写し、冷却後金型より成形品を取り出す、いわゆる成形同時転写法が一般的に知られている(特許文献1〜5)。
【0003】
どちらの方法においても、加熱ロールや金型がポリエステルフィルム表面にあるポリエステルのオリゴマーによって汚れ、転写回数を重ねるにつれ、加熱ロールや金型に蓄積される。これらオリゴマーは、やがて被転写体へ転写した転写面に跡を付けたり、転写面の光沢を悪くしたりし、甚だしい場合には被転写体に歪みを与えたりする。成形同時転写法の場合は、流動する樹脂と転写材とが接触するのでこの傾向が強い。このため、被転写体の転写面や加熱ロールおよび金型を監視し、適宜加熱ロールや金型を清掃することが行われているが、加工効率を低下させる要因となっている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−196821号公報
【特許文献2】特開平7−237283号公報
【特許文献3】特開2000−255006号公報
【特許文献4】特開2000−280408号公報
【特許文献5】特開2000−344909号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の従来の問題点を解決しようとするものであり、その解決課題は、加熱ロールや金型の汚れを軽減させ、清掃する頻度を著しく少なくすることのできる転写材用フィルムを提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の状況に鑑み、鋭意検討した結果、特定構成のフィルムが特に有用であることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、180℃で10分間加熱処理した後のフィルム表面オリゴマー量が0.01〜2.1mg/m2であることを特徴とする転写材用ポリエステルフィルムに存する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の転写材用ポリエステルフィルムに用いるポリエステルとは、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸のようなジカルボン酸またはそのエステルとエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1−4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのようなグリコールとを溶融重縮合させて製造されるポリエステルである。
【0008】
これらの酸成分とグリコール成分とからなるポリエステルは、通常行われている方法を任意に使用して製造することができる。例えば、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとの間でエステル交換反応をさせるか、あるいは芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接エステル化させるかして、実質的に芳香族ジカルボン酸のビスグリコールエステル、またはその低重合体を形成させ、次いでこれを減圧下、加熱して重縮合させる方法が採用される。その目的に応じ脂肪族ジカルボン酸を共重合しても構わない。
本発明のポリエステルとしては、代表的には、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられるが、その他に上記の酸成分やグリコール成分を共重合したポリエステルであってもよく、必要に応じて他の成分や添加剤を含有していてもよい。
【0009】
これらポリエステルには、フィルムの走行性を向上する等の目的で、炭酸カルシウム、カオリン、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム等の無機粒子やアクリル樹脂、グアナミン樹脂等の有機粒子や触媒残差を粒子化させた析出粒子を含有させることができる。これら粒子の粒径や量は目的に応じ適宜決めることができる。また、適宜各種安定剤、潤滑剤、帯電防止剤等を加えることもできる。
【0010】
本発明は、180℃で10分間加熱処理した後のフィルム表面オリゴマー量が0.01〜2.1mg/m2であることを必要とするが、こらは、次の方法で求めたものである。すなわち、ポリエステルフィルムを180℃で10分間窒素ガス雰囲気のオーブンで熱処理し、その後着目すべき面のみジメチルホルムアミド(DMF)に3分間浸し、DMFに溶解したオリゴマー量を液体クロマトグラフィーにて定量化するという方法である。
なお、上記オリゴマー量を満足する表面の反対面に通常転写層が設けられる。
【0011】
本発明においては、オリゴマー含有量が0.10〜0.70重量%のポリエステル原料を用いることが好ましく、これは、通常の溶融重縮合反応で得たポリエステルのチップを減圧下あるいは不活性ガスの流通下で180℃から240℃にて1時間から20時間程度保つという固相重合によって得ることができる。この原料のみまたは、この原料と通常の原料を混合して単層のポリエステルフィルムを製膜してもよく、また2層以上の多層構成とし、転写層と反対側の表面層にのみこの原料を用いてもよい。多層構成の場合、内層には通常のポリエチレンテレフタレートを用いてもよく、また成形同時転写用では、成形性を向上する目的でイソフタル酸、テレフタル酸を共重合成分とした共重合ポリエステルやポリブチレンテレフタレートでもよい。
【0012】
本発明の製膜方法としては通常知られている製膜法でよく特に制限はない。例えば、まず、ロール延伸法により、60〜120℃で2〜6倍に延伸して、一軸延伸ポリエステルフィルムを得、次いで、テンター内で先の延伸方向とは直角方向に80〜130℃で2〜6倍に延伸し、さらに、150〜250℃で1〜600秒間熱処理を行なう製膜方法でよい。
本発明のポリエステルフィルムの厚みは12〜188μmの範囲が好ましい。
【0013】
本発明のフィルムに必要に応じて設けるコート層としては、シランカップリング剤やアクリル系樹脂やポリビニルアルコールを含む層が挙げられる。これらコート層は二軸延伸フィルムに従来技術でコートしてもよく、また、ポリエステルフィルムを製造する工程中で従来技術でコートしてもよい。例えば、逐次二軸延伸法においては縦一軸延伸後のフィルムにコートした後、横に延伸する方法、または、二軸延伸フィルム後にコートし乾燥する方法がある。方法に制約はないが、一軸延伸フィルムにコートし、次いで横延伸し、熱処理する方法は、コート層を均一に薄くできる等の特徴があり好ましい。
【0014】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における評価方法やサンプルの処理方法は下記のとおりである。また、実施例および比較例中の「部」は「重量部」を示す。
【0015】
(1)ポリエステル原料中のオリゴマーの測定方法
所定量のポリエステル原料をo−クロロフェノールに溶解した後、テトラヒドロフランで再析出して濾過し、線状ポリエチレンテレフタレートを除いた後、次いで得られた濾液を液体クロマトグラフィー(島津LC−7A)に供給してポリエステル中に含まれるオリゴマー量を求め、この値を測定に用いたポリエステル量で割って、ポリエステル中に含まれるオリゴマー量とする。
液体クロマトグラフィーで求めるオリゴマー量は、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた(絶対検量線法)。標準試料の作成は、予め分取したポリエチレンテレフタレートの環状三量体を正確に秤量し、正確に秤量したDMF(ジメチルホルムアミド)に溶解して作成した。
液体クロマトグラフの条件は下記のとおりとした。
移動相A:アセトニトリル
移動相B:2%酢酸水溶液
カラム:三菱化学(株)製MCIGELODS1HU
カラム温度:40℃
流速:1ml/分
検出波長:254nm
【0016】
(2)ポリマーの極限粘度[η](dl/g)の測定方法
ポリマー1gをフェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100ml中に溶解させ、ウベローデ型粘度計にて30℃で測定した。
【0017】
(3)ポリエステルフィルムの加熱処理とオリゴマーの測定方法
A4サイズのケント紙の上にオリゴマー量を測定する面が外側になるようにポリエステルフィルムを重ね合わせ、四隅をクリップして、ケント紙とポリエステルフィルムを止める。この状態でサンプルを窒素雰囲気下の180℃のオーブンに入れ、10分間静置した後取り出した。
次いで、ポリエステルフィルムのオリゴマーを測定する面を内向きとして底面が(12.5cm×20cm)となるように4辺を折って箱を作成し、この箱に約10mlのDMFを入れ3分間浸した後、DMFに溶解したオリゴマー量を定量し求めた。定量に際しては、最終的に10mlとした溶液中のオリゴマー量を、液体ロマトグラフィー(島津LC−7A)を用いて標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた(絶対検量線法)。
標準試料の作成は、予め分取したポリエチレンテレフタレートの環状三量体を正確に秤量し、正確に秤量したDMF(ジメチルホルムアミド)に溶解して作成した。
単位はmg/m2で示した。
液体クロマトグラフの測定条件は下記のとおりとした。
移動相A:アセトニトリル
移動相B:2%酢酸水溶液
カラム:三菱化学(株)製MCIGELODS1HU
カラム温度:40℃
流速:1ml/分
検出波長:254nm
【0018】
(4)転写時のロールの汚れや金型の汚れをの代用評価方法
転写時のロールの汚れや金型の汚れを評価するものとして、転写層と反対面となるフィルム表面を150℃のステンレス板で熱プレスし金属の汚れ程度を目視にて判定した。
プレス厚は5kg/cm2とし、一回30秒で200回実施し、評価の判定は以下のとおりとした。
○:ステンレス板に汚れは見えなかった。
△:ステンレス板に少し汚れは見えたが、実用的には問題ないレベルだった。
×:ステンレス板に白い汚れがはっきり見えた。
【0019】
実施例および比較例にて使うポリエステル原料は次の方法にて製造した。
すなわち、通常の溶融宿重合法にて平均粒径2.5μmの非晶質シリカを0.06部含有する溶融粘度0.58のポリエステルチップ(以降チップAと呼ぶ)および溶融粘度0.66のポリエステルチップ(以降チップBと呼ぶ)を製造した。チップAを窒素気流中で220℃にて10時間加熱しオリゴマー含有量の少ないポリエステルチップ(以降チップCと呼ぶ)を製造した。
チップBに含まれるオリゴマーの量は0.83重量%、チップCに含まれるオリゴマー量は0.24重量%だった。これらチップは、十分に乾燥し水分を50ppm以下にしてから使用した。
【0020】
実施例1
チップCを295℃にて溶融し、冷却したドラム上に溶融押し出して無定型シートを得、次いで85℃〜100℃にて縦に3.5倍に延伸して縦一軸延伸フィルムを得た。このフィルムを85℃〜110℃の雰囲気で横に4.0倍延伸し、次いで235℃にて熱処理して、厚さ38μmの2軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
このものの180℃で10分間熱処理した後の表面オリゴマー量は0.1mg/m2だった。プレス機による汚れの評価では、汚れはなく○であった。
【0021】
実施例2
ポリエステルCおよびにポリエステルBを別個の押し出し機に供給し、それぞれ溶融押し出し、フィードブロック内で溶融したポリエステルを合流して積層してスリット状ダイより、冷却ロール上にシート状に押し出し無定型シートを得、次いで85℃〜100℃にて縦に3.5倍に延伸して縦一軸延伸フィルムを得た。このフィルムを85℃〜110℃の雰囲気で横に4.0倍延伸し、次いで235℃にて熱処理して、厚さ38μmの2軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの層構成を各層の原料名で示すとチップC/チップB/チップCであり、各層の厚さは4μm/30μm/4μmであった。このものの180℃で10分間熱処理した後の表面オリゴマーは0.3mg/m2だった。プレス機による汚れの評価では、汚れはなく○であった。
【0022】
実施例3
チップCとチップBをその比チップC/チップBが3/7の割合で均一に混合した後チップを十分に乾燥し295℃にて溶融し、冷却したドラム上に溶融押し出して無定型シートを得、次いで85℃〜100℃にて縦に3.5倍に延伸して縦一軸延伸フィルムを得た。このフィルムを85℃〜110℃の雰囲気で横に4.0倍延伸し、次いで235℃にて熱処理して、厚さ38μmの2軸延伸ポリエステルフィルムを得た。このものの180℃で10分間熱処理した後の表面オリゴマー量は1.8mg/m2だった。プレス機による汚れの評価では、少し汚れは見えたものの問題はなく、△であった。
【0023】
実施例4
チップBを295℃にて溶融し、冷却したドラム上に溶融押し出して無定型シートを得、次いで85℃〜100℃にて縦に3.5倍に延伸して縦一軸延伸フィルムを得た。このフィルムにN−β(アミノエチル)γーアミノフ゜ロヒ゜ルトリメトキシシラン2%水溶液をク゛ラヒ゛アコーターで5μmコートし、90℃〜120℃の雰囲気で横に4.0倍延伸し、次いで235℃にて熱処理して厚み38μmの2軸延伸ポリエステルフィルムを得た。このものの180℃で10分間熱処理した後の表面オリゴマー量は0.3mg/m2だった。プレス機による汚れの評価では、汚れはなく、○であった。
【0024】
比較例1
実施例1のチップをチップBに変更して厚み38μmに2軸延伸ポリエステルフィルムを得た。このものの180℃で10分間熱処理した後の表面オリゴマー量は3.0mg/m2だった。プレス機による汚れの評価では、ステンレス板が白く汚れ、×であった。
以上、得られたフィルムの特性および実用特性をまとめて下記表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、転写時に、特に成形同時転写時に、転写ロールや金型の汚れの頻度が著しく軽減され、工業的な利用価値は大きい。
Claims (4)
- 180℃で10分間加熱処理した後のフィルム表面オリゴマー量が0.01〜2.1mg/m2であることを特徴とする転写材用ポリエステルフィルム。
- オリゴマー含有量が0.10〜0.70重量%のポリエステル原料から製造されることを特徴とする請求項1記載の転写材用ポリエステルフィルム。
- フィルム表面にコート層を有することを特徴とする請求項1または2記載の転写材用ポリエステルフィルム。
- ポリエステルフィルムがポリエチレンテレフタレートまたはその共重合ポリエステルからなるフィルムであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の転写材用ポリエステルフィルム。
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