JP2004161500A - Mn−Zn−Ni系フェライト - Google Patents

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聡志 後藤
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貴史 河野
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Abstract

【課題】高速デジタル通信機器、例えばxDSLモデム用トランスやデジタルアンプのインダクタにおいて、正確な信号伝達および変換のために要求される、総高調波歪の小さいMn−Zn−Ni系フェライトを提案する。
【解決手段】、Fe:53〜57mol%、ZnO:4〜11mol%およびNiO:0.5〜4mol%を含み、残部が実質的にMnOの基本成分中に、SiO:0.005〜0.05mass%およびCaO:0.02〜0.2mass%を含み、さらにB:10massppm以下およびP:20massppm以下を含有し、コアとして供した際の、−20℃から80℃の範囲における総高調波歪(dB)の変化率が負であり、かつその−20℃における総高調波歪の大きさが−85dB以下であること。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、デジタル通信機器の伝送トランスコアやデジタルアンプのインダクタコア等に用いられる、総高調波歪の小さいスピネル型Mn−Zn−Ni系ソフトフェライトに関する。
【0002】
【従来の技術】
フェライトと総称される酸化物磁性材料のうち、ソフトフェライトは小さな外部磁場に対しても十分磁化することから、電源、通信機器、計測制御機器等に広く用いられている。そのためソフトフェライトには、キュリー温度が高いこと、保持力が小さく透磁率が高いこと、飽和磁束密度が高いこと、損失が小さいことなどの特性が要求される。
【0003】
近年、通信機器において高速化、デジタル化の進展とともにメタリックケーブル(主に銅線)を使用した高速デジタル伝送技術が進歩し、xDSL(x Digital Subscriber Line)として急速に普及しつつある。このxDSLで使用されるモデム用トランスでは、透磁率が高いこと、入力波形に対する出力波形の歪が小さいこと等が要求される。特に、正確な信号伝送のためには、入力波形に対する出力波形の歪が小さいこと、すなわち総高調波歪(Total Harmonic Distortion:THD)が小さいことが重要である。
【0004】
なお、総高調波歪(THD)は次式で定義される。
THD(dB)=20・log10 [{Σ(V2j+11/2/V] ……(1)
ここに、Vは入力電圧(1次側電圧)、V 2j+1 は3次以降の奇数次高調波の測定電圧(2次側電圧)である。
また、一般に、高調波成分は第3次成分が支配的であるので、(1)式は次式(2)のように近似される。
THD(dB)=20・log10(V/V) ……(2)
ここに、Vは第3次の高調波の測定電圧である。
【0005】
さらに、音声信号を高周波でデジタル化して処理するデジタルアンプでは、スピーカ等でアナログの音声に戻す際にローパスフィルターが必要となり、このローパスフィルターに使用されるインダクタでも正確な信号伝送のために総高調波歪が小さいことと、損失が小さいことが必要となる。さらに、これらの用途でフェライトコアが使用されるときは、種々の要因で機器内の温度が上昇し、100℃程度までの高温環境で使用されることが多く、高温においても総高調波歪や損失の特性が劣化しないことが必須である。
【0006】
ここに、広帯域で高透磁率なMn−Zn系フェライトについては、特許文献1や特許文献2等に開示されているが、総高調波歪に関しては何も述べられていない上、損失に関する記載もない。
【0007】
なお、Mn−Zn系フェライトの総高調波歪に関しては、比初透磁率μ/μ(μの透磁率)が10000程度の高透磁率材について、非特許文献1において、化学組成の最適化、添加物と焼成条件の最適化による微細で均一な結晶組織を得ることにより、総高調波歪の低減が可能であることが述べられているが、コアの総高調波歪の温度依存性や損失についての具体的な内容については述べられていない。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−204025号公報
【特許文献2】
特開平10−50512号公報
【非特許文献1】
「Improved Ferrite for DSL Application」(J.G.BOEREK他、ICF8,Kyoto and Tokyo,Japan2000)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この発明の目的は、高速デジタル通信機器、例えばxDSLモデム用トランスやデジタルアンプのインダクタにおいて、正確な信号伝達および変換のために要求される、総高調波歪の小さいMn−Zn−Ni系フェライトを提案することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記の目的を実現するために鋭意研究を重ねた結果、高透磁率なMn−Zn系フェライトではなく、100kHz程度以上の高周波で鉄損が低くなるMn−Zn−Ni系フェライトを用いることによって、上記目的を達成できることを知見した。そこで、発明者らは、上記目的の実現に向け、MnO−ZnO−Fe三元系フェライトにNiO、SiOおよびCaOを含有させた成分組成に基づいて鋭意研究を行った。その結果、上記成分組成における,NiO含有量を幾分高くするとともに、微量添加成分としてPおよびBを含有させることにより、100kHz以上の周波数帯域での低損失の実現と総高調波歪の低減とが、広い温度範囲で同時に可能なことを見出した。さらには、Ta、ZnO、Nb、V、TiOおよびHfOのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を好適範囲で添加することが有効であることもわかった。
【0011】
この発明は、以上の知見に由来するものである。
すなわち、この発明は、Fe:53〜57mol%、ZnO:4〜11mol%およびNiO:0.5〜4mol%を含み、残部が実質的にMnOの基本成分中に、SiO:0.005〜0.05mass%およびCaO:0.02〜0.2mass%を含み、さらにB:10massppm以下およびP:20massppm以下を含有し、コアとして供した際の、−20℃から80℃の範囲における総高調波歪(dB)の変化率が負であり、かつその−20℃における総高調波歪の大きさが−85dB以下であることを特徴とするMn−Zn−Ni系フェライトである。
【0012】
ここで、−20℃における総高調波歪の大きさは、上記した(2)式における、入力電圧Vを様々に変化して求めたTHDのうちの最大値を意味する。
【0013】
さらに、この発明では、副成分として、Ta:0.005〜0.1mass%、ZrO:0.01〜0.15mass%、Nb:0.005〜0.05mass%、V:0.005〜0.05mass%、TiO:0.05〜0.3mass%およびHfO:0.005〜0.05mass%のうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を含有させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、この発明のMn−Zn−Ni系フェライトについて、その構成要件毎に、詳しく説明する。
まず、この発明における基本成分の限定理由は、以下のとおりである。なお、以下に述べるNiO、FeおよびZnO以外の基本成分は、実質的にMnOからなる。
Fe:53〜57mol%
Feの含有量は、少なすぎると飽和磁束密度が低下するため、これを高い値に維持するには53mol%以上とすることが必要である。一方、この発明に係るフェライト磁心材料のように、NiOを含む組成では、磁性イオンであるNi イオンがフェライトのスピネル化合物の格子点に入ることにより、他の格子点にある磁性イオンとの相互作用を介して磁気異方性定数K並びに飽和磁歪定数λsが変化するため、かかるNiOを従来に比べて多く含むことによって、磁気損失に関する三元系の最適組成範囲がFeリッチ側に広がると推測される。しかしながら、Feの含有量は、多すぎるとNiOを含む組成でも損失が大きくなることから、上限を57mol%とした。
【0015】
ZnO:4〜11mol%
ZnOの含有量が少なすぎると、飽和磁束密度が小さくなるが、FeとNiOとの組成を好適範囲に選択すれば、高い飽和磁束密度を維持することができる。また、損失の点では、ZnOの含有量が少ない場合、100kHzにおいて損失が増大するものの、500kHz程度の高周波帯域では低い損失およびTHDを示す。従って、ZnOの含有量は、4mol%以上とした。
【0016】
一方、ZnO量の含有量が多すぎると、室温での飽和磁束密度が小さくなるだけでなくキュリー温度が低下するために、コアの動作温度が100℃付近になる場合に、温度上昇に伴う、より急速な飽和磁束密度の低下を招く。また、損失の点では、ZnO量の含有量が多すぎると、NiOの含有効果がなくなってしまう。従って、ZnOの含有量は、上限を11mol%とした。
【0017】
NiO:0.5〜4mol%
NiOの含有量が0.5mol%に満たないと、損失に対するその含有効果が顕著でなく、飽和磁束密度も小さくなる。一方、NiOの含有量が多すぎると、100kHz程度の周波数帯域で損失が急激に増大し、THDも結果として増大するため、NiOの含有量は4mol%を上限とした。なお、従来技術との比較の意味で、NiOの含有量をmass%で表示すると0.3〜2.5mass%となる。この数値からも明らかなように、この発明にかかるフェライト磁心材料は、NiOの含有量を従来の材料に比べて幾分多めに設定している。
【0018】
この発明では、以上の基本成分に、SiO:0.005〜0.05mass%およびCaO:0.02〜0.2mass%を含有する。
すなわち、SiOおよびCaOは、焼結性を高めかつ粒界相を高抵抗化して低損失を実現するために、必要不可欠な添加成分である。SiOは、焼結促進の効果があり、この効果を充分に引き出すためには0.005mass%以上の添加が必要であり、多すぎると異常粒成長を起こすために、その上限を0.05mass%とした。ただし、この上限付近の添加量では、焼結温度を下げる等の考慮が必要である。
【0019】
一方、CaOは、SiOとともに粒界を高抵抗化して損失を小さくする効果があり、この効果を引き出すためには0.02mass%以上の添加が必要であり、0.2mass%を超えて添加すると焼結性に問題が生じることから、その上限を0.2mass%とした。
【0020】
さらに、副成分として、スピネルを形成しない、Ta、ZrO、Nb、V、TiOおよびHfOのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上の微量添加成分を加えると、さらに損失が少なく総高調波歪の小さい高性能のMn−Zn−Ni系フェライト磁心材料とすることができる。
【0021】
Taは、SiOおよびCaO共存下で比抵抗の増大に有効に寄与する添加成分である。このTaの含有量が0.005mass%に満たないとその添加効果に乏しく、一方、0.1mass%を超えると逆に損失とTHDの増大を招く。従って、Taは0.005〜0.1mass%の範囲で添加することが好ましい。
【0022】
ZrOは、SiO、CaOおよびTaの共存下において、Taと同様に粒界の抵抗を高めて、高周波での損失とTHDの低減とに有効に寄与する添加成分である。抵抗の増加に寄与する割合は、Taと比べると効果が少ないが、損失の低減に寄与する割合は大きく、特に極小温度付近から高温側での損失とTHDの低減に寄与する。このZrOの含有量が、0.01mass%に満たないとその添加効果に乏しく、一方、0.15mass%を超えると逆に比抵抗を高める効果が少なくなり、損失とTHDとが増大する。従って、ZrOの最適添加量は0.01〜0.15mass%とする。
【0023】
Nbは、SiOおよびCaOと粒界相を形成して粒界抵抗を高め、損失とTHD低減とに寄与する添加成分である。このNbの含有量が0.0050mass%未満ではその添加効果に乏しく、一方、0.05mass%を超えると過剰に粒界相に析出して、かえって損失とTHDを増大してしまう。従って、Nbは、0.005〜0.05mass%の範囲で添加することが好ましい。
【0024】
およびHfOは、ともに異常粒成長を抑制しかつ粒界抵抗を高める働きがある、添加成分である。この添加成分の含有量は、0.005mass%より少ないとその改善効果がなく、一方、0.05mass%より多すぎると損失とTHDが増大するため、それぞれV:0.005〜0.05mass%およびHfO:0.005〜0.05mass%の範囲で添加することが好ましい。
【0025】
TiOは、一部粒界に存在し焼成後の冷却過程で粒界再酸化を助長して、損失およびTHDを低下させる添加成分である。また、TiOは、スピネル格子の原子とも置換して、損失やTHDの極小温度をシフトさせる働きがある、添加成分でもある。しかしながら、その添加量が多すぎると、異常粒成長を引き起こす。従って、TiOは、0.05〜0.3mass%0.3mass%の範囲で添加することが好ましい。
【0026】
さて、上記した成分組成に規制することは勿論重要であるが、この規制だけでは損失に併せて総高調波歪を同時に十分低減することはなかなか難しく、発明者らが鋭意検討した結果、フェライト中の不純物、特にホウ素(B)と燐(P)の量を限定することにより,上記問題を解決できることを新たに見出した。
【0027】
すなわち、Mn−Zn系フェライトでの初透磁率に及ぼすホウ素の影響として、たとえば文献「フェライト」(平賀ら、丸善、1986)の92頁において、「結晶組織を不均一にして高い初透磁率の発現を阻害するので50ppm以下にしておかなければならない」ことが記載されているが、損失や総高調波歪への影響については全く述べられていない。一方、燐に関しては、上記文献には全く記述がない。
また、「J.Phys.IV,France,(1997)Colloque C1−128(ICF−7 Bordeaux,September,1996)」には、電源用低損失Mn−Znフェライトにおいて、鉄損と燐量との関係が示されているが、総高調波歪に及ぼす影響についてはまったく述べられていない。
【0028】
この点に関して、発明者らは、異常粒の発生や結晶粒の粒度分布のばらつきなど、組織が不均一になるのを抑え、低い損失を得るとともに低い総高調波歪を実現するには、Mn−Ni−Zn系フェライト中のホウ素を重量比(以下、同様)で10ppm以下および燐を20ppm以下で含有させることが必要であるのを、新たに見出したのである。
【0029】
すなわち、ホウ素やリンは結晶粒成長を促進し、結晶粒の単純な粗大化には効果が大きいが、添加量が多いと均一成長性の面で不利になり、所望の初透磁率と低い総高調波歪を得ることが難しくなる。なぜなら、結晶粒径が不均一になり、コアの磁化過程で磁壁移動が阻害され、磁化曲線の直線性が劣化して総高調波歪の増大につながるからである。総高調波歪は、原理的にヒステリシスのない直線的な磁化挙動であれば、大幅に低減することができる。発明者らは、この点に着目し、適当な初透磁率と低総高調波歪を得るにはホウ素とリンの量をそれぞれ重量比で10ppm以下と20ppm以下に、さらに好適には5ppm以下と10ppm以下に制御すればよいことを新たに見出したのである。なお、ホウ素およびリンは極く微量であっても、含有すれば本発明の効果を奏するが、好ましくはB:1ppm以上、P:2ppm以上とする。
【0030】
なお、ホウ素および燐は、Mn−Ni−Zn系フェライトの製造工程において一旦混入すると、焼成工程などの途中工程で除去することは非常に難しいため、特に原料酸化鉄の段階にてホウ素量と燐量が特定範囲を超えないように、含有させておくことが好ましい。
【0031】
また、この発明のMn−Ni−Zn系フェライトは、コアとして供した際の、−20℃から80℃の範囲における総高調波歪(dB)の変化率が負であることが肝要である。なぜなら、トランスやフィルターが組み込まれる電子機器は使用される環境や稼働条件でコアの温度が−20℃から100℃程度まで変化し、そのような状態でも低い総高調波歪が実現されないと、温度によって信号伝達が阻害される原因となるからである。−20℃を基準として高温になるほど総高調波歪が低くなる、すなわち温度変化率が負であればこの問題は回避される。ここで、高温域の温度を80℃としたのは、この温度まで少なくとも変化率が負であれば、それ以上の120℃程度までの温度域で総高調波歪が仮に上昇しても、なお十分低い値に維持できるからである。
【0032】
さらに、−20℃における総高調波歪の大きさが−85dB以下であることも重要である。なぜなら、通信機器内の半導体等各種回路での信号伝達における総高調波歪の大きさを考慮した場合、コアで少なくとも−20℃で−85dB以下であれば、前記−20℃から80℃までの変化率が負であることを勘案すれば、機器全体での総高調波歪の大きさを十分実用可能なレべルに抑えられるからである。
【0033】
この発明のMn−Ni−Zn系フェライトは、まず、上述した成分組成になるように原料酸化物を配合した混合粉を仮焼し、次いで、アトライターやボールミル等の粉砕手段により粉砕し、その粉砕粉を所望のコア形状に成形したのち、焼成することにより得られる。このときの焼成温度は、成分により異なるが、概ね1100℃〜1350℃であり、これより低い場合は焼結が進まず、高い場合は焼結密度は上がるものの異常粒成長を招き、コアの特性が著しく劣化する。また、この焼成過程では、酸素および窒素の混合雰囲気が必要であり、その際、酸素分圧をコントロールすることにより、粒界相の形成を制御して抵抗を高めることができる。
【0034】
【実施例】
次に、この発明に従う実施例について説明する。
実施例1
基本成分が表1に示す組成となるように、各成分の原料酸化物を配合し、次いで、ボールミルを用いて湿式混合してから乾燥し、その後、得られた原料混合粉を大気雰囲気中、950℃3時間で仮焼した。こうして得られた仮焼粉に対して、SiO:0.008mass%、CaCO:0.13mass%(CaO換算で0.0728mass%)、Ta:0.04mass%およびHfO:0.03mass%、さらに重量比でB:4ppmおよびP:7ppmを添加し、再度、ボールミルを用いて湿式混合粉砕して、JIS C2516に規定されるEP型磁心EP13のコアに成形後、大気中で昇温速度250℃/hで昇温し、1100℃からは窒素雰囲気として昇温速度を500℃/hに上げ、その後保持温度1320℃に達したあと2〜5時間の間、酸素濃度を10体積%以下に制御して焼成した。
【0035】
かくして得られた焼結体コアでトランスを形成し、これに1kHzでのインダクタンスが30mHとなるよう巻線を施し、インピーダンス50Ωのマッチング回路において、50kHzおよび5mTの条件で総高調波歪THDの温度依存性を測定した。一方、磁束密度は、2次側測定電圧と周波数およびコアの断面積、コイル巻数から計算した。なお、THDの測定には、オーディオアナライザ(Audio precision社system Two)を用いた。そして−20℃でのTHDの値とTHDが最小になる温度を求めた。さらに、1次側5巻、2次側5巻の巻線を施し、100kHzの周波数で最大磁束密度200mTの条件下で、電力損失を交流BHトレーサーにより0〜140℃で測定し、電力損失の極小値(Pcv/min)を求めた。これらの結果を、表1に示す。尚、鉄損極小値を示す温度とTHD最小値を示す温度はほとんど同じである。
【0036】
【表1】
Figure 2004161500
【0037】
また、50kHzおよび5mTのときのTHDの温度変化について、発明例および比較例の2例づつを、図1に示す。いずれの例においても−20℃からTHD最小温度までは、温度が上がるにつれてTHDは単調に低下し、THD最小温度を超えると温度が上がるにつれてTHDは単調に上昇した。
【0038】
図1から分かるとおり、この発明の例は、いずれの条件でもTHDの温度変化率は−20℃から80℃の範囲で負であり、THD最小値を示す温度は80℃以上となっており、しかも図1および表1に示すように、−20℃における値は−85dB以下である。また、鉄損最小値も低いMn−Zn−Ni系フェライト材となっている。
【0039】
実施例2
基本成分組成が、Fe:MnO:ZnO:NiOのモル比で54.7:37.1:6.8:1.4となるように、実施例1と同様にして仮焼粉を作製し、次いで、表2および表3に示す各種酸化物を添加し、実施例1と同様にして粉砕、造粒し、JIS C2516に規定されるEP型磁心EP13のコアに成形したものを、酸素分圧を制御した窒素および空気の混合ガス中において、1230〜1350℃で2〜6時間焼成し、焼結体試料とした。
【0040】
このようにして得られた焼結体試料について、実施例1と同様に、オーディオアナライザを用いて50kHzおよび5mTでの総高調波歪THDの温度依存性を、交流BHトレーサーを用いて100kHzおよび200mTでの電力損失の温度依存性を、それぞれ測定した。−20℃におけるTHDの値とTHDが最小になる温度、そして電力損失の極小値を、表2および表3に併せて示す。いずれの例においても−20℃からTHD最小温度までは温度が上がるにつれ、THDは単調に低下し、THD最小温度を超えると温度が上がるにつれ、THDは単調に上昇した。
【0041】
【表2】
Figure 2004161500
【0042】
【表3】
Figure 2004161500
【0043】
これらの表に示す結果から明らかなように、この発明のフェライト磁心材料は、−20℃から80℃の範囲における総高調波歪THD(dB)の変化率が負であり、かつその−20℃における(最大値の)大きさが−85dB以下を達成することができた。
【0044】
【発明の効果】
この発明のMn−Ni−Zn系フェライトは、総高調波歪と損失が小さく、また−20℃の低温から温度上昇につれて両者が低減するため、機器の温度上昇を考慮した広い温度範囲で正確な信号伝達、変換が要求される、高速デジタル通信機器、例えばxDSLモデム用トランスコアやデジタルアンプのインダクタコア等の用途に適した、有益な材料となり得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明例と比較例との25℃、50kHz、5mT、インピーダンス50ΩでのEP13コアの総高調波歪の温度変化を示す図である。

Claims (2)

  1. Fe:53〜57mol%、ZnO:4〜11mol%およびNiO:0.5〜4mol%を含み、残部が実質的にMnOの基本成分中に、SiO:0.005〜0.05mass%およびCaO:0.02〜0.2mass%を含み、さらにB:10massppm以下およびP:20massppm以下を含有し、コアとして供した際の、−20℃から80℃の範囲における総高調波歪(dB)の変化率が負であり、かつその−20℃における総高調波歪の大きさが−85dB以下であることを特徴とするMn−Zn−Ni系フェライト。
  2. 請求項1において、副成分として、
    Ta:0.005〜0.1mass%、
    ZrO:0.01〜0.15mass%、
    Nb:0.005〜0.05mass%、
    :0.005〜0.05mass%、
    TiO:0.05〜0.3mass%および
    HfO:0.005〜0.05mass%
    のうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を含むことを特徴とするMn−Zn−Ni系フェライト。
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