JP2004006809A - Mn−Zn系フェライト、フェライト磁心及び通信機器用電子部品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Fe2O3換算で52.0〜54.0モル%、ZnO換算で18.0〜25.0モル%、残部酸化マンガンを主成分とし、副成分としてCaO換算で0.3wt%未満(0を含まず)のCaと、SiO2換算で0.015wt%未満(0を含む)のSi、TiO2換算で1.2wt%未満(0を含む)のTi、SnO2換算で0.7wt%未満(0を含む)のSnのうち少なくとも1種以上を含有することを特徴とした。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、xDSL用通信機器の伝送トランス、フィルタに使用されるMn−Zn系フェライト、フェライト磁心、通信機器用電子部品であって、特に信号が磁心を通過する際に発生する波形歪の少ない、広温度範囲でTHD特性に優れたMn−Zn系フェライト、フェライト磁心、通信機器用電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来高透磁率を有するMn−Zn系フェライトは各種トランス、フィルタ、xDSLモデム等の通信機器用電子部品に使用されているが、通信機器用電子部品の磁心として用いられるフェライトには高透磁率であることに加えて、通信信号が通信機器用電子部品を通過する際に発生する波形歪が少ないことが要求される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
特に高速・大容量の通信に対応したADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)に代表されるxDSL用通信機器に使用される磁心においては、信号が通過する際に発生する信号波形の歪が、情報伝送の際にエラーレートの増加を招くため、信号が出力する際の波形歪のよりいっそうの低減が要求され、その主要部材であるフェライト磁心の特性の改善が求められている。
【0004】
例えば、信号が磁心を通過する際に発生する出力波形の歪は、入力する基本波に対する三次高調波を中心とした高調波成分が出力基本波に含まれることにより生じる。それは磁界Hと磁束密度Bの非線形性・ヒステリシスカーブ特性に起因すると考えられる。かかる出力波形の歪に対しては、磁心にギャップを設けて、実効透磁率を下げることにより線形性を改善し、通信用トランスなどとして用いているのが現状である。しかし、この方法では保磁力低減等、BHループの線形性の本質的な改善には至っておらず、また必要なインダクタンスを得るためには巻線数の増加という負荷を伴うといった問題があった。そのためxDSL用通信機器に使用されるフェライト磁心そのものを改善することで、さらなる低歪化が必要とされていた。
【0005】
本発明は上記問題を解決するために鋭意検討した結果見いだされたものであり、入力波に対する出力波形の歪の小さい、広温度範囲でTHD特性に優れたMn−Zn系フェライト、フェライト磁心と、これを用いた通信機器用電子部品を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、Fe2O3換算で52.0〜54.0モル%、ZnO換算で18.0〜25.0モル%、残部酸化マンガンを主成分とし、副成分としてCaO換算で0.3wt%未満(0を含まず)のCaと、SiO2換算で0.015wt%未満(0を含む)のSi、TiO2換算で1.2wt%未満(0を含む)のTi、SnO2換算で0.7wt%未満(0を含む)のSnのうち少なくとも1種以上を含有するTHD特性に優れたMn−Zn系フェライトである。
本発明のMn−Zn系フェライトは、THD値と振幅透磁率μaとの比で表されるTHD/μaが、印加磁束密度30mT、周波数5kHz、0℃〜85℃の温度範囲において−125dB以下である。そして、初透磁率μiが3000以上であるのが好ましい。また、初透磁率μiのキュリー温度(Tc)が90℃以上160℃以下であり、セカンダリーピーク温度(Ts)が−20℃以上50℃以下であることが望ましい。
【0007】
第2の発明は、Fe,Mn,Znを主成分とし、副成分としてCaを必須とし、Si、Ti、Snのうち少なくとも1種以上を含有し、THD値と振幅透磁率μaとの比で表されるTHD/μaが、印加磁束密度30mT、周波数5kHz、0℃〜85℃の温度範囲において−125dB以下のフェライト磁心である。本発明においては、初透磁率μiが3000以上であることが好ましい。前記フェライト磁心は、Fe2O3換算で52.0〜54.0モル%、ZnO換算で18.0〜25.0モル%、残部酸化マンガンを主成分とし、副成分としてCaO換算で0〜0.2wt%(0を含まず)のCaと、SiO2換算で0.015wt%未満(0を含む)のSi、TiO2換算で1.2wt%未満(0を含む)のTi、SnO2換算で0.7wt%未満(0を含む)のSnのうち少なくとも1種以上を含有する組成を選択するのが好ましい。
【0008】
第3の発明は、第2の発明のフェライト磁心を用いて構成した通信機器用トランス等の通信機器用電子部品であり、xDSL用モデム等の通信機器である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0010】
本発明において出力波形の歪量を示す指標として用いているTHD/μaについて説明する。THD(Total Harmonic Distortion総高調波歪)は基本波Vb(V)に対する高調波成分Vh(V)の比であり、次式で与えられ、
THD=20×log10(Vh/Vb) [dB]
また、THD/μaは次式で与えられる。
THD/μa=20×log10((Vh/Vb)/μa) [dB]
ここで、μaは振幅透磁率である。高調波成分の割合をμaで除した値を歪の指標としているのは、例えばProceedings of The Eighth International Conference on Ferrite、509、2000にあるように、ギャップ形成等によるμa変化がTHDへ与える影響を除いて材料固有の評価をするためである。このTHD/μaを指標とすることによって、材料評価に用いるトロイダル形状における評価と実製品の形状における評価に相関関係を持たせることができる。
【0011】
本発明では、さらに巻線数、回路抵抗、インダクタンスなどのファクターの影響を除くように、以下に示すDistortion of Transformer Coefficient(DTC)も用いた。
【0012】
【式1】
【0013】
そして、前記DTCとTHD/μaとで得られ、次式で求められるTHDF特性を磁心特性の指標として併記した。これにより、実製品の形状・仕様の影響を極力排除して磁心特性の評価を行うことが出来る。
THDF=THD/μa+20×log10(1/DTC) [dB]
ここで、かかるTHD/μa、THDFは小さいほど出力波形の歪量が少ないことを示す。なおADSLの使用周波数は20kHz〜1.1MHzであるが、THDの測定に使用するオーディオアナライザーはその周波数範囲の低周波数側の一部しかカバーしていないうえ、かかる範囲でも十分な精度が得られない場合があるため、本発明においてはTHD/μaの測定の便宜上周波数を5kHzとした。
【0014】
また、THD/μaの値は印加磁束密度が増加するにつれて大きくなるが、実用される際の水準から本発明では30mTとした。すなわち、THD/μaの値は測定周波数、磁束密度によって異なり一義的でないため、本発明におけるTHD/μa値は上記測定条件における値を用い、材料評価の基準とした。
また、本発明におけるTHD/μaの評価は、ADSLモデムの使用環境温度から0℃〜85℃とした。周波数5kHz、印加磁束密度30mTの測定条件で−125dB以下(THDFで−104dB以下に相当)とすることにより実機での情報伝送のエラーレートが改善され実用上十分な水準とすることができる。より好ましくは0℃〜85℃での温度範囲において、周波数5kHz、印加磁束密度30mTの測定条件で−130dB以下(で−109dB以下に相当)とすることにより、より高い伝送特性を提供することができる。
【0015】
本発明における初透磁率μiは3000以上である。初透磁率が3000未満であると巻線数増加に起因する損失が増加するからである。
【0016】
本発明におけるMn−Zn系フェライトの主成分組成はFe2O3換算で52.0〜54.0モル%、より好ましくは52.0〜53.0モル%、ZnO換算で18.0〜25.0モル%、より好ましくは22.0〜25.0モル%、残部酸化マンガンとした。主成分をかかる範囲に限定したのは以下の理由による。
主成分であるFe2O3、ZnOおよび酸化マンガンの比を変化させることによってキュリー温度(Tc)および初透磁率μiが極大を示すいわゆるセカンダリーピーク温度(Ts)を制御することができるが、本発明において波形歪の指標としているTHD/μa値も上記主成分比によってその温度変化を制御することができる。すなわちTHD/μaの温度変化は図1に示すようにμiの温度変化と連動し、μiのセカンダリーピーク温度(Ts)で極小となる。THD/μaはセカンダリーピーク温度を超えると温度上昇に伴って増加した後、キュリー温度(Tc)に向かって再び減少する。このTsとTcの温度差が大きくなればなるほど、TsとTc間でのTHD/μaの増加が大きくなることが確認できた。したがって0℃〜85℃の範囲にいおいて安定したTHD/μaを得るためにはこれらTsおよびTcを一定の範囲に制御する必要がある。かかる目的を達成するためには、好ましくはTsは−20℃〜50℃かつTcは90〜160℃、さらに好ましくはTsは−20℃〜50℃かつTcは90〜140℃、よりさらに好ましくはTsは0℃〜40℃かつTcは100℃〜130℃である。
【0017】
次に主成分組成の限定理由について説明する。本発明において主成分組成は主に初透磁率μiとTHD/μaの温度依存性を制御する目的から限定する。Fe2O3が52.0モル%未満であるとTsが高温側にシフトする結果低温でのTHD/μaの増加が顕著となり、54.0モル%を超えるとTsが低温側にシフトする結果TsおよびTc間でのTHD/μaの増加が大きくなるからである。より好ましくは52.0〜53.0モル%とすることで0℃〜85℃の常用温度域でより小さいTHD/μa値を得ることができる。
【0018】
また、ZnOを上記範囲に限定したのは、ZnOが18.0モル%未満であるとTcが高温側にシフトする結果TsおよびTc間でのTHD/μaの増加が大きくなるからであり、25.0モル%を超えるとTcが低温側にシフトし実用温度の上限以下となり、実用に耐えないからである。
【0019】
また、本発明におけるMn−Zn系フェライトは副成分としてCaO換算で0.3wt%未満(0を含まず)のCaを含有する。なお、CaOは一般にはSiO2との複合添加によって粒界の電気抵抗を上げ、損失を低減する効果を有する。一方、十分な磁界を印加して測定したメジャ−ル−プでの保磁力は増加し、かかる保磁力の増加はBHル−プの線形性の低下、ヒステリシス損の増加を招くことになる。
しかし、xDSL用通信機器、例えばADSL用モデムでは、印加磁界の小さいいわゆるレ−リ−範囲で使用されるが、かかるマイナ−ル−プの範囲であると考えられる30mTではCaOの添加によって逆にHcは減少し、BHル−プの線形性が向上することが見出されたのである。すなわち本発明においてCaOの添加によって特にTHD/μaの値の低下に効果があることが見出されたものである。CaOを上記範囲に限定したのは、CaOを添加することによってTHD/μaの値が低下し、波形の歪を低減することができるが、CaOの含有量が多くなるにしたがい、CaOの効果が徐々に飽和し、特に0.3wt%以上となると焼結体の組織が不均一になり、初透磁率の低下が大きくなるとともに、THD/μaの値も劣化するからである。したがってCaOは0.3wt%未満(0を含まず)が好ましく、さらに好ましくは0.005wt%〜0.07wt%である。CaによるTHD/μa低減効果のメカニズムについては必ずしも明らかではないが、Caの添加により結晶粒径が微細化するとともに粒内の空孔が減少していることから、これら組織上の変化がTHD/μa低減に寄与しているものと考えられる。
【0020】
また、本発明においては磁心損失の低減の観点からSiO2換算で0.015wt%未満(0を含む)のSiを含有することが好ましい。SiO2を上記範囲に限定したのは、SiはCaとともに粒界層を構成することにより電気抵抗を上げ損失低減・相対損失係数tanδ/μiの改善に寄与するが、添加量が0.015wt%以上であると焼結時に異常粒成長が生じ初透磁率が低下するとともにTHD/μaが大きくなるからである。したがってSiO2は0.015wt%未満が好ましく、より好ましくは0〜0.005wt%である。
【0021】
また、本発明におけるMn−Zn系フェライトは副成分としてTiO2換算で0〜1.0wt%のTi(0を含まず)および/またはSnO2換算で0〜0.5wt%(0を含まず)のSnを含有する。一般にこれらTi、Snは安定な4価イオンとして粒内に固溶し、電気抵抗を増加させ主として渦電流損低減に寄与すると考えられているが、上述のとおりTHD/μaの低減の本質は、渦電流損低減ではなくBHループの非線形性の改善すなわちヒステリシス損の低減にある。しかし、本発明者らはTi、Snを含有させることにより、マイナーループにおけるHcが低下し、ヒステリシス損の低減を通してTHD/μaが低減されることを見出したものである。また、これらTi、Snは粒内に固溶し、Mn−Znフェライト焼結体中の結晶粒径の顕著な微細化を伴わないため、初透磁率の低下も小さく抑えることができる。Ti、SnによるTHD/μa低減の原因については明らかではないが、異方性磁界の低減或いは結晶粒内の不完全性の改善等を通してTHD/μa改善に寄与しているものと考えられる。
【0022】
Ti、SnはCaと複合含有させることでTHD/μa低減に特に大きな効果を示す。これは上述のようにCaは主として粒界に存在することで結晶粒径を微細化するとともに、粒内の空孔を減少させるなど結晶組織の変化によってTHD/μa低減に寄与すると考えられるのに対し、Ti、Snは粒内に固溶し結晶組織上は顕著な変化を伴わないため、THD/μa低減の機構が異なるためと考えられる。したがってCaとTi、SnのTHD/μa低減の効果は積算されるかたちで発揮されるため、これらを複合で含有させることによりTHD/μaを顕著に改善することが可能となる。
また、CaとTi、Snを複合で含有させることによってTHD/μaの絶対値が温度域にかかわらず改善されるため、THD/μaの温度変化が大きい場合でも広い温度域で良好なTHD/μaを維持することが可能である。
TiO2を上記範囲に限定したのは、TiO2を添加することによってTHD/μaの値が低下し、波形の歪を低減することができるが、TiO2の含有量が1.2wt%以上であると異常粒成長が生じ初透磁率の低下が大きくなるとともに、THD/μaの値も劣化するからである。したがっては1.2wt%未満(0を含む)が好ましく、より好ましくは0.05wt%〜0.2wt%である。また、SnO2を上記範囲に限定したのは、SnO2を添加することによってTHD/μaの値が低下し、波形の歪を低減することができるが、多量のSnO2は逆にTHD/μaの増大を招き、含有量が0.7wt%以上となると無添加の場合よりもTHD/μaの値が大きくなるからである。したがっては0.7wt%未満(0を含む)が好ましく、より好ましくは0.05wt%〜0.1wt%である。
【0023】
また、本発明においては初透磁率の向上、磁心損失の低減の観点からBi2O3換算で0〜0.015wt%、Nb2O5換算で0〜0.03wt%のBi、Nbを含有することができる。かかる範囲のBi2O3を添加することによっては粒成長を促進し、初透磁率の向上に寄与するが、0.015wt%を超えると粒成長が著しくなり、THD/μaの値が大きくなる。したがってBi2O3を添加する場合、0〜0.015wt%とするのが好ましく、より好ましくは0〜0.012wt%である。
【0024】
また、かかる範囲のNb2O5を添加することによって焼結性向上・相対損失係数tanδ/μi改善の効果を示すが0.03wt%を超えると異常粒成長し、その結果THD/μaが著しく大きくなる。したがってNb2O5を添加する場合は0〜0.03wt%が好ましく、より好ましくは0〜0.015wt%である。
【0025】
なお、本発明においては上記主成分、副成分以外の成分の含有を否定するものではなく、必要に応じて上記主成分、副成分以外の成分も含むことができる。
【0026】
本発明に係るMn−Znフェライトは、基本成分であるFe、Mn、Znおよび副成分であるCa、Si、Ti、Sn等を所定量とするほかは、通常のMn−Znフェライトの製造工程によって製造することができる。
【0027】
【実施例】
以下本発明に係るMn−Zn系フェライトについて以下具体的に説明する。
【0028】
(第1の実施例)
表1に示す組成比にFe2O3、ZnO、酸化マンガン(Mn3O4を使用)を計量・混合し、850℃で2時間仮焼した。これに、CaO(CaCO3を使用)、TiO2、Bi2O3、Nb2O5、SiO2を、フェライト磁心中の含有量が、CaO(なお本発明ではCaCO3を用いた)換算で0.005wt%、TiO2換算で0.02wt%、Bi2O3換算で0.012wt%、Nb2O5換算で0.01wt%、となるように添加し、湿式ボールミルにて5時間粉砕した。なお、これらにバインダーを添加し、スプレイドライヤーで造粒後リング形状、EP−13形状(AL=160nH/N2)に圧縮成形した後、1300℃にて5時間、酸素濃度を制御した窒素雰囲気中で焼結した。なお、得られたフェライト磁心には主成分中に不純物として混入して含まれるSiがSiO2換算で0.002wt%含有していた。
得られた外形25mm、内径15mm、高さ5mmのリング状焼結体の25℃における初透磁率および初透磁率とTHD/μaの温度依存性を測定した。リング形状の巻線数は、インダクタンスが3mHとなるよう調整した。THDの測定は図1に示すオーディオプレシジョン社製オーディオアナライザー(System Two)を使用し、測定周波数は5kHz、測定磁束密度は30mTとした。
【0029】
リング形状の試料の評価結果を表1および表2に示す。表中、本発明の範囲内のものを実施例とし、範囲外のものを比較例とした。表2に0℃〜85℃までの温度範囲における初透磁率μiとTHD/μaの最小値および最大値を測定温度とともに示すが、実施例に該当するものは0℃〜85℃までの温度範囲においてTHD/μaが−125dB以下(THDFで−104dB以下)であり、Fe2O3、ZnO、酸化マンガンを本発明の範囲とすることによって0℃〜85℃における温度範囲でTHD/μaが良好なMn−Zn系フェライトを得ることができる。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
(第2の実施例)
次に、Fe2O3を52.40wt%、ZnOを25.00wt%、残部酸化マンガン(Mn3O4を使用)を計量・混合し、これを850℃で2時間仮焼した。これにCaO(CaCO3を使用)、SiO2、TiO2、SnO2、Bi2O3、Nb2O5を、フェライト磁心中の含有量が表3に示した組成量となるように、適量添加した。
表3においてSiO2の組成量に括弧を付した実施例、比較例があるが、これは主成分中に不純物として混入してフェライト磁心に含まれるSiO2量を示したものであり、素原料中に添加してフェライト磁心に含まれるSiO2の総量と区別するようにした。なお、一般に不純物としてフェライト磁心には、V,Co,Ni,Zrなどの金属元素が含有される場合がある。なお、本実施例においてはTiO2、SnO2は、仮焼後の原料粉に添加したが、仮焼前に添加し、Fe2O3、ZnO、酸化マンガンとともに混合した後、仮焼することも可能であり、均一分布および特にSnの焼結時の飛散防止の観点からは仮焼前に添加することがより好ましい。
次に、湿式ボールミルにて5時間粉砕した後、これらにバインダーを添加し、スプレイドライヤーで造粒後リング状に圧縮成形した後、1300℃にて5時間、酸素濃度を制御した窒素雰囲気中で焼結した。得られた外形25mm、内径15mm、高さ5mmのリング状焼結体の20℃における初透磁率および初透磁率とTHD/μaの温度依存性を測定した。リング形状の巻線数、THDの測定条件は実施例1と同様の条件とした。また、コアロスPcvは25℃において30mT、5kHzの条件で測定した。
【0033】
リング形状の試料の評価結果を表3に示す。表中、本発明の範囲内のものを実施例とし、範囲外のものを比較例とした。なお、表中には明記されていないが、0.3wt%のCaOを含有する比較例5、1.2wt%のTiO2を含有した比較例6および0.015wt%のSiO2を含有した比較例8の試料の焼結体組織においては、いずれも異常粒成長が確認された。表3に示すようにCaO、SiO2、TiO2、SnO2を本発明の範囲とすることで、コアロス、THD/μaの小さいかつ初透磁率の高いMn−Zn系フェライトを得ることができ、特にCaOと、TiO2、SnO2を複合で添加することによってTHD/μaの改善に著効を示すことがわかる。
【0034】
【表3】
【0035】
(第3の実施例)
実施例1、比較例2、比較例3の条件で作製した図2に示すJIS規格C2561に規定するEP−13形状の磁心を2つ突き合わせ、内脚に巻線を配置して、ケース7に配置固定して、図3に示す斜視図として示す通信機機器用トランスとした。図4は、この通信機機器用トランスの等価回路であり、NP1:NP2:NS1:NS2=1:1:1:1で、NP1+NP2、NS1+NS2の巻線数はともに140ターンである。
【0036】
これらのフェライト磁心を使用した通信機機器用トランスを用いて、図7に回路ブロック図として示すxDSL用モデムを構成した。このxDSL用モデムは、図6に示すxDSLのデータ伝送線路において、例えば音声信号とデジタル信号とを分離するスプリッタとコンピュータ(PC)との間に配置されるものである。前記トランスはデジタル変復調や制御回路を含むLSIと電話線との間のラインカップリングに使用される。
通信機機器用トランスを図5に示す測定回路でTHDを評価した結果、実施例1のものは、周波数5KHz、0℃〜85℃の温度範囲において−125dB以下のTHD/μaであり、xDSLモデムも前記温度範囲で安定動作したが、比較例のものは例えば、0℃でのTHD/μaが、それぞれ−122.6dB、−115.5dBであり、この通信機機器用トランスを組み込んだxDSLモデムのエラーレートが大きくなるため実用に供することはできなかった。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、0℃〜85℃の広温度範囲で入力波に対する出力波形歪の小さいTHD特性に優れたMn−Zn系フェライト、フェライト磁心と、これを用いた通信機器用電子部品を提供することが出来る。また、フェライト材料として、特に、CaOおよびTiO2および/またはSnO2を本発明の範囲含有させることで出力波形歪を大幅に改善することができる。本発明のMn−Zn系フェライト磁心を使用することにより、高品質の通信機器用トランス、xDSL用モデムなどの通信機機器用電子部品の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】THD特性の測定回路図である。
【図2】EP−13形状の磁心形状を示す外観斜視図である。
【図3】通信機機器用トランスの形状の一例を示す外観斜視図である。
【図4】通信機機器用トランスの回路の一例を示す等価回路である。
【図5】THD特性の他の測定回路図である。
【図6】xDSLのデータ伝送線路の説明図である。
【図7】本発明のフェライト磁心を用いて構成したxDSL用モデムの回路の一例を示す回路ブロック図である。
Claims (9)
- Fe2O3換算で52.0〜54.0モル%、ZnO換算で18.0〜25.0モル%、残部酸化マンガンを主成分とし、副成分としてCaO換算で0.3wt%未満(0を含まず)のCaと、SiO2換算で0.015wt%未満(0を含む)のSi、TiO2換算で1.2wt%未満(0を含む)のTi、SnO2換算で0.7wt%未満(0を含む)のSnのうち少なくとも1種以上を含有することを特徴とするTHD特性に優れたMn−Zn系フェライト。
- THD値と振幅透磁率μaとの比で表されるTHD/μaが、印加磁束密度30mT、周波数5kHz、0℃〜85℃の温度範囲において−125dB以下であることを特徴とする請求項1に記載のTHD特性に優れたMn−Zn系フェライト。
- 初透磁率μiが3000以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のTHD特性に優れたMn−Zn系フェライト。
- 初透磁率μiのキュリー温度(Tc)が90℃以上160℃以下であり、セカンダリーピーク温度(Ts)が−20℃以上50℃以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のTHD特性に優れたMn−Zn系フェライト。
- Fe,Mn,Znを主成分とし、副成分としてCaを必須とし、Si、Ti、Snのうち少なくとも1種以上を含有し、THD値と振幅透磁率μaとの比で表されるTHD/μaが、印加磁束密度30mT、周波数5kHz、0℃〜85℃の温度範囲において−125dB以下であることを特徴とするフェライト磁心。
- 初透磁率μiが3000以上であることを特徴とする請求項5に記載のフェライト磁心。
- Fe2O3換算で52.0〜54.0モル%、ZnO換算で18.0〜25.0モル%、残部酸化マンガンを主成分とし、副成分としてCaO換算で0〜0.2wt%(0を含まず)のCaと、SiO2換算で0.015wt%未満(0を含む)のSi、TiO2換算で1.2wt%未満(0を含む)のTi、SnO2換算で0.7wt%未満(0を含む)のSnのうち少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項5又は6に記載のフェライト磁心。
- 請求項5乃至7に記載のフェライト磁心を用いて通信機器用トランスとしたことを特徴とする通信機器用電子部品。
- 請求項5乃至7に記載のフェライト磁心を用いたことを特徴とする通信機器。
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