JP2004153434A - 受信機、デジタル−アナログ変換器および同調回路 - Google Patents
受信機、デジタル−アナログ変換器および同調回路 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】FM受信機100は、アンテナ1、高周波受信回路2、局部発振器3、2つのDAC4、6、制御部8、混合回路9、中間周波増幅回路10、検波回路11、低周波増幅回路12、スピーカ13を含んで構成されている。DAC4、6は、所定の温度係数を有しており、周囲温度の変化に対応して出力電圧が変動する。周囲温度の変化に伴ってVCO31の特性が変化してこのVCO31に印加される制御電圧が変化したときに、同じようにDAC4、6の出力電圧も変化する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スーパーヘテロダイン方式を採用した受信機、デジタル−アナログ変換器および同調回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、AM放送やFM放送等の放送波を受信する受信機では、その受信方法としてスーパーヘテロダイン方式が採用されている。スーパーヘテロダイン方式は、受信した放送信号に対して所定の局部発振信号を混合することにより、受信信号の周波数(受信周波数)には依存しない一定の周波数を有する中間周波信号に変換し、その後、検波処理や増幅などを行って音声信号を再生する受信方式であり、他の受信方式に比べて感度や選択度等が優れているという特徴をもっている。
【0003】
このようなスーパーヘテロダイン方式を採用する受信機では、ローカル発振器とアンテナ同調回路、RF同調回路の全部を同じDC電圧で制御している(例えば、特許文献1の従来技術の欄を参照。)。これらの回路には共振回路が含まれており、これらの共振回路の共振周波数は、その一部を構成する可変容量ダイオードの容量を可変することにより変更することができる。このように共通のDC電圧で各共振周波数を制御する場合には、各共振回路に含まれる可変容量ダイオードは類似した温度特性を有するため、受信機の温度が変化したときに各共振回路の共振周波数が同じ方向に変化する傾向があり、特別な温度補償回路を用いなくてもトラッキングエラーが所定範囲に収まるようになっている。
【0004】
また、このように共通のDC電圧で各共振回路を制御する従来方式では、受信周波数の可変範囲が広い場合等に、その下限周波数と上限周波数の両方において発生するトラッキングエラーを少なくすることが難しいため、アンテナ同調回路とRF同調回路の各同調周波数の制御をこのDC電圧とは別にD/A変換器で発生したDC電圧で行う受信機もある(例えば、特許文献1の実施例の欄を参照。)。一般には、ローカル発振を制御するDC電圧が温度で変化しても、D/A変換器から出力されるDC電圧が同じように変化しないため、別の温度補償回路が必要になる。例えば、アンテナ同調回路やRF同調回路の一部に温度補償用コンデンサが用いられる。
【0005】
また、D/A変換器を用いた受信機において温度補償用コンデンサを用いずにトラッキングエラーの拡大を防止する他の従来技術としては、ローカル発振を制御するDC電圧をD/A変換器の参照電圧として用いることにより、DC電圧の変動をD/A変換出力に反映させた受信機が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開平4−358422号公報(第8−14頁、図1−図8)
【特許文献2】
特開2002−111527号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した特許文献1に開示されているように、D/A変換器を用いてアンテナ同調回路やRF同調回路の同調周波数を制御する場合に温度補償用コンデンサを用いることにより、温度が変動した際のトラッキングエラーの拡大を防止することができるが、一般に温度補償用コンデンサは高価であり、部品コストおよび受信機全体のコストが上昇するという問題があった。例えば、複数の温度係数の中から任意のものが選択可能な温度補償用セラミックスコンデンサが市販されているが、これらは汎用のコンデンサやその他の素子に比べて高価である。
【0008】
また、上述した温度補償用コンデンサは、一般的な半導体製造プロセスとは異なるプロセスによって製造されるため、他の部品とともに半導体基板上に一体形成することができないという問題があった。したがって、部品の1チップ化を図る場合にも、この温度補償用コンデンサは外付け部品として組み付ける必要があり、組み付け工数の増加によるコスト上昇につながっていた。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、部品コストを低減することができるとともに、温度補償用の部品を半導体基板上に形成することができる受信機、デジタル−アナログ変換器および同調回路を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、本発明の受信機は、同調電圧に応じた受信周波数が設定された高周波受信回路と、制御電圧に応じた周波数の局部発振信号を生成する局部発振器と、高周波受信回路から出力される信号と局部発振信号とを混合する混合回路と、所定の受信周波数に対応する設定データを出力する設定データ生成手段と、設定データ生成手段から出力される設定データに対応する同調電圧を生成するとともに、この同調電圧が所定の温度係数で周囲温度に応じて変化するデジタル−アナログ変換器とを備えている。
【0011】
また、本発明のデジタル−アナログ変換器は、入力データに対応する出力電圧を生成するとともに、この出力電圧が所定の温度係数で周囲温度に応じて変化している。また、本発明の同調回路は、上述したデジタル−アナログ変換器を用いて生成される同調電圧に応じて同調周波数が設定されており、周囲温度が変化したときに、温度係数に応じてデジタル−アナログ変換器によって生成する同調電圧を可変することにより、同調周波数を一定に維持している。
【0012】
デジタル−アナログ変換器が所定の温度係数を有しているため、局部発振器に印加される制御電圧が周囲温度に応じて変化したときに同調電圧を同じように変化させることが可能になる。したがって、高価な温度補償用コンデンサを用いて高周波受信回路や同調回路を構成する必要がなくなり、部品コストを低減することが可能になる。
【0013】
また、上述した高周波受信回路および局部発振器のそれぞれには、制御電圧あるいは同調電圧によって静電容量値が変更可能な可変容量ダイオードとコイルとを接続した共振回路が含まれていることが望ましい。このように、高周波受信回路と局部発振器を同じような構成とすることにより、周囲温度に対する発振周波数あるいは同調周波数の変化の傾向を一致させることができ、同調電圧を生成するデジタル−アナログ変換器の温度係数を調整するだけで温度補償を行うことが可能になる。
【0014】
また、上述したデジタル−アナログ変換器は、所定の温度係数を有する素子を含んで構成される温度係数設定部を有しており、温度係数設定部全体の素子定数が、周囲温度に応じて変化することが望ましい。このように、デジタル−アナログ変換器の一部に温度係数設定部を備えることにより、デジタル−アナログ変換器全体の温度特性を所定範囲内で任意に設定することが可能になる。
【0015】
また、上述した温度係数設定部は、半導体製造プロセスによって形成される互いに温度係数が異なった複数の抵抗を含んでおり、デジタル−アナログの温度係数が所定値となるように複数の抵抗の接続形態を設定することが望ましい。これにより、温度係数設定部を含むデジタル−アナログ変換器や受信機のその他の構成部品を半導体基板上に形成することが可能になり、製造の容易化、部品点数の低減等に伴うコストダウンが可能になる。
【0016】
また、上述したデジタル−アナログ変換器は、入力される設定データの値に応じた電流値が設定される電流源と、この電流源によって生成される電流が流れる温度係数設定部とを備えており、温度係数設定部の両端電圧を同調電圧として出力することが望ましい。デジタル−アナログ変換器をこのように構成することにより、温度係数設定部の温度係数に応じてデジタル−アナログ変換器の出力電圧を変化させることが容易となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した一実施形態のFM受信機について、図面を参照しながら説明する。
図1は、一実施形態のFM受信機の構成を示す図である。同図に示すFM受信機100は、アンテナ1、高周波受信回路2、局部発振器3、2つのデジタル−アナログ変換器(DAC)4、6、制御部8、混合回路9、中間周波増幅回路10、検波回路11、低周波増幅回路12、スピーカ13を含んで構成されている。
【0018】
高周波受信回路2は、アンテナ1から入力される放送波に対して、所定の同調周波数近傍の成分のみを選択的に通過させる同調動作を行うとともに、同調後の信号に対して高周波増幅を行うものであり、アンテナ同調回路20、RF増幅回路22、RF同調回路24を含んで構成されている。
【0019】
アンテナ1が接続されたアンテナ同調回路20の出力をRF増幅回路22で増幅し、さらにその増幅出力をRF同調回路24に通すことにより、選択性を向上させることができる。また、アンテナ同調回路20とRF同調回路24のそれぞれには、同調周波数を可変するための可変容量ダイオードが含まれており、可変容量ダイオードに印加する逆バイアスの同調電圧を変えることにより、アンテナ同調回路20とRF同調回路24の各同調周波数が連動して変更される。すなわち、高周波受信回路2では、アンテナ同調回路20とRF同調回路24に印加される同調電圧に応じた受信周波数(同調周波数)の放送波が選択される。
【0020】
局部発振器3は、電圧制御発振器(VCO)31、分周器32、基準信号発生器33、位相比較器34、ローパスフィルタ(LPF)35を含んで構成されている。
VCO31は、ローパスフィルタ35によって生成される制御電圧に対応した周波数の発振動作を行って局部発振信号を出力するものであり、VCO共振回路91と増幅器92を備えている。VCO共振回路91は、コイルとコンデンサからなる並列共振回路であり、共振周波数を可変するための2つの可変容量ダイオードがコンデンサと並列に接続されている。そして、印加される逆バイアスの制御電圧に応じて可変容量ダイオードの容量が変化することにより、VCO共振回路91の共振周波数が変化する。また、増幅器92は、発振に必要な所定の増幅動作を行う。
【0021】
分周器32は、VCO31から入力される局部発振信号を所定の分周比Nで分周して出力する。分周比Nの値は、制御部8によって可変に設定される。基準信号発生器33は、周波数安定度の高い所定周波数の基準信号を出力する。
位相比較器34は、基準信号発生器33から出力される基準信号と分周器32から出力される信号(分周後の局部発振信号)との間で位相の比較を行い、位相差に応じたパルス状の誤差信号を出力する。ローパスフィルタ35は、位相比較器34から出力されるパルス状の誤差信号の高周波成分を除去して平滑化することにより、制御電圧を生成する。これらのVCO31、分周器32、位相比較器34、ローパスフィルタ35がループ状に接続されて、PLL(位相同期ループ)が構成されている。
【0022】
なお、上述した高周波受信回路2内のアンテナ同調回路20およびRF同調回路24のそれぞれに含まれる可変容量ダイオード、および局部発振器3内のVCO共振回路91に含まれる可変容量ダイオードのそれぞれは、電圧対容量の特性がほぼ同じものが用いられている。また、これらの可変容量ダイオードを含んで構成される各共振回路は、可変容量ダイオードとコンデンサとコイルを互いに並列に接続した同じ構成を有している。このように、高周波受信回路2と局部発振器3内のVCO31を同じような構成とすることにより、周囲温度に対する発振周波数あるいは同調周波数の変化の傾向を一致させることができ、DAC4、6の温度係数を調整するだけで温度補償を行うことが可能になる。
【0023】
DAC4は、高周波受信回路2内のアンテナ同調回路20に対して印加する同調電圧を生成する。DAC6は、高周波受信回路2内のRF同調回路24に印加する同調電圧を生成する。具体的には、これらのDAC4、6は、設定データ生成手段としての制御部8から入力される設定データの値に応じた電圧を生成する。また、これらのDAC4、6は、所定の温度係数を有しており、出力電圧の値が周囲温度に応じて変化する。DAC4、6の詳細については後述する。
【0024】
制御部8は、FM受信機100の全体動作を制御するものであり、MPU81、メモリ82、操作部83を含んで構成されている。MPU81は、操作部83から入力される受信周波数の設定値に応じて局部発振器3内の分周器32の分周比Nを設定したり、DAC4、6のそれぞれに入力するデータを設定する等の所定の制御動作を行う。メモリ82は、MPU81の動作プログラムを格納する。操作部83は、各種の操作キーを備えており、受信周波数の設定等を行うために用いられる。
【0025】
混合回路9は、高周波受信回路2から出力される受信信号と、局部発振器3から出力される局部発振信号とを混合して、その差成分に対応する信号を出力する。
中間周波増幅回路10は、混合回路9から出力される信号を増幅するとともに所定の中間周波数(10.7MHz)近傍の周波数成分のみを通過させることにより、中間周波信号を生成する。
【0026】
検波回路11は、中間周波増幅回路10から出力される中間周波信号に対して検波処理を行い、音声信号を復調する。低周波増幅回路12は、検波回路11から出力される音声信号を所定のゲインで増幅する。スピーカ13は、低周波増幅回路12から出力される増幅後の音声信号に基づいて音声出力を行う。
【0027】
図2は、DAC4の詳細構成を示す図である。なお、DAC6もDAC4と同じ構成を有しており、詳細な説明は省略する。
図2に示すように、DAC4は、FET110、111、120、121、122、130、131、132、…、140、141、142と、電流源112と、アナログスイッチ123、133、…、143と、インバータ回路124、134、…144と、温度係数設定部150とを含んで構成されている。
【0028】
FET110、111、電流源112とFET120、121とを用いて第1のカレントミラー回路が構成されており、インバータ回路124、FET122およびアナログスイッチ123によって構成される切替回路によってその動作の有効/無効が制御される。この第1のカレントミラー回路は、DAC4の入力データの第1ビットd1に対応している。この第1ビットd1が“1”のとき、すなわちインバータ回路124に入力される信号がハイレベルのときに、アナログスイッチ123およびFET122がともにオン状態になるため、第1のカレントミラー回路の動作が有効になって、所定の電流I1が流れる。
【0029】
また、FET110、111、電流源112とFET130、131とを用いて第2のカレントミラー回路が構成されており、インバータ回路134、FET132およびアナログスイッチ133によって構成される切替回路によってその動作の有効/無効が制御される。この第2のカレントミラー回路は、DAC4の入力データの第2ビットd2に対応している。この第2ビットd2が“1”のとき、すなわちインバータ回路134に入力される信号がハイレベルのときに、アナログスイッチ133およびFET132がともにオン状態になるため、第2のカレントミラー回路の動作が有効になって、所定の電流I2が流れる。
【0030】
同様に、FET110、111、電流源112とFET140、141とを用いて第nのカレントミラー回路が構成されており、インバータ回路144、FET142およびアナログスイッチ143によって構成される切替回路によってその動作の有効/無効が制御される。この第nのカレントミラー回路は、DAC4の入力データの第nビットdnに対応している。この第nビットdnが“1”のとき、すなわちインバータ回路144に入力される信号がハイレベルのときに、アナログスイッチ143およびFET142がともにオン状態になるため、第nのカレントミラー回路の動作が有効になって、所定の電流Inが流れる。
【0031】
本実施形態では、DAC4に入力されるnビットのデータは、第1ビットd1が最下位ビットに、第nビットdnが最上位ビットに対応している。また、第1のカレントミラー回路によって生成される電流I1を1とすると、第2、第3、…第nのカレントミラー回路によって生成される電流I2、I3、…、Inはその2(=21)倍、4(=22)倍、…、2(n−1)倍となるように、各FETのゲート幅(チャネル幅)Wやゲート長(チャネル長)Lが設定されている。
【0032】
上述した第1〜第nのカレントミラー回路が並列に接続されて電流源が形成されており、2以上のカレントミラーが同時に動作すると、これら複数のカレントミラー回路によって生成される各電流が加算される。したがって、入力データの各ビットの値に対応して上述した第1〜第nのカレントミラー回路を選択的に動作させることにより、この入力データの値に対応した電流を生成することが可能になる。このようにして生成された電流が温度係数設定部150に供給される。
【0033】
温度係数設定部150は、温度係数が異なる複数の抵抗を組み合わせて構成される合成抵抗であり、この合成抵抗全体の素子定数(抵抗値)が周囲温度に応じて変化する。一般に、半導体製造プロセスによって半導体基板上に形成される抵抗は、不純物の種類や濃度を工夫することにより、3種類程度の温度係数を容易に実現できることが知られている。例えば、半導体基板上にポリシリコンで抵抗を形成する場合には、不純物濃度やp形にするかn形にするかによって、−数千〜+数百ppm/°Cの温度係数を容易に実現することができる。あるいは、ポリシリコンの代わりに、半導体基板上に形成されたp形領域あるいはn形領域の拡散抵抗を利用する場合も同様である。温度係数が大きく異なる3種類の抵抗R1、R2、R3が半導体基板上に形成可能である場合を考えると、これら3種類の抵抗R1〜R3の値や接続方法を工夫することにより、温度係数設定部150全体としての温度係数を所定範囲で自由に設定することができる。
【0034】
図3は、3種類の抵抗を直列接続した温度係数設定部150の構成を示す図である。3種類の抵抗R1〜R3のそれぞれの抵抗値をr1、r2、r3、それぞれの温度係数をa1、a2、a3とすると、図3に示す温度係数設定部150全体の温度係数b1は、
b1=(a1r1+a2r2+a3r3)/(r1+r2+r3)
となる。また、温度係数設定部150に供給される電流をIとすると、温度係数設定部150の一方端に現れるDAC4の出力電圧Voutは、
Vout=(r1+r2+r3)I
となり、この出力電圧Voutは、周囲温度が1°C変化したときに、ΔV=(a1r1+a2r2+a3r3)Iだけ変動する。
【0035】
図4は、3種類の抵抗を並列接続した温度係数設定部150の構成を示す図である。図4に示す温度係数設定部150全体の温度係数b2は、
となる。また、温度係数設定部150の一方端に現れるDAC4の出力電圧Voutは、
Vout=r1r2r3I/(r1r2+r2r3+r3r1)
となり、この出力電圧Voutは、周囲温度が1°C変化したときに、ΔV=a1a2a3r1r2r3I/(a1a2r1r2+a2a3r2r3+a3a1r3r1)だけ変動する。
【0036】
図5は、3種類の抵抗を直列および並列接続した温度係数設定部150の構成を示す図である。図5に示す温度係数設定部150全体の温度係数b3は、
b3=(a1r1+a2a3r2r3/(a2r2+a3r3))
/(r1+r2r3/(r2+r3))
となる。また、温度係数設定部150の一方端に現れるDAC4の出力電圧Voutは、
Vout=(r1+r2r3/(r2+r3))I
となり、この出力電圧Voutは、周囲温度が1°C変化したときに、ΔV=(a1r1+a2a3r2r3/(a2r2+a3r3))Iだけ変動する。
【0037】
このように、本実施形態のFM受信機100に含まれるDAC4、6は、所定の温度係数を有しており、MPU81から入力されるデータが一定であっても、温度が変化するとその出力電圧Voutが変化するようになっている。これにより、周囲温度が変化しても、アンテナ同調回路20やRF同調回路24の同調周波数を一定に維持することが可能になる。
【0038】
特に、DAC4、6は、所定の温度係数を有する抵抗R1〜R3を含んで構成される温度係数設定部150を有しており、温度係数設定部150全体の素子定数(抵抗値)が周囲温度に応じて変化するようになっている。このため、DAC4、6全体の温度特定を所定範囲内で任意に設定することが可能になる。また、この温度係数設定部150と電流源とを組み合わせてDAC4、6を構成し、電流源から供給される電流を温度係数設定部150に流すことにより、温度係数設定部150の温度係数に応じてDAC4、6の出力電圧を変化させることが容易となる。
【0039】
しかも、この温度係数は、温度係数設定部150内の3種類の抵抗R1〜R3の接続方法を変更したり、抵抗R1〜R3の各温度係数を変更することにより、ある程度任意に設定することが可能となる。したがって、ローパスフィルタ35からVCO31に印加する制御電圧が周囲温度に応じて変化したときに、同じようにDAC4、6の出力電圧を変化させることが可能になり、温度変化に伴うトラッキングエラーの拡大を防止することができる。
【0040】
また、本実施形態のDAC4、6やアンテナ同調回路20、RF同調回路24等は、温度補償用コンデンサ等の高価な部品を用いずに構成されているため、部品コストを削減することができる。しかも、DAC4、6内の温度係数設定部150は、CMOSプロセスあるいはMOSプロセス等の半導体プロセスを用いて、不純物の種類や濃度を制御することにより実現できるため、温度補償用の部品を半導体基板上に形成することができる。このため、FM受信機100を構成する各部品を半導体基板上に形成する際に外付け部品を減らすことが可能になり、さらにコストダウンを図ることが可能になる。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、FM受信機100に含まれるDAC4、6に温度係数を持たせる場合を考えたが、AM受信機等の他の受信機やその他の送信機、通信機に含まれるDACに温度係数を持たせるようにしてもよい。
【0042】
また、上述した本実施形態では、入力データの各ビットの値に応じた電流を生成するDAC4、6について説明したが、その他の方式を用いたDAC、例えばR−2R抵抗形や荷重抵抗形のDACを用いた受信機等に本発明を適用するようにしてもよい。これらの場合には、所定の動作電圧を生成する電源内に温度係数設定部150を備え、電源によって生成される動作電圧の値を周囲温度に応じて変化させればよい。また、この方法は、図2に示した電流形のDAC4、6に適用することもできる。すなわち、図2において、温度係数設定部150を抵抗値が固定の抵抗に置き換えるとともに、温度係数設定部150を含んで出力電圧が周囲温度に応じて変化する電源を備え、この電源の出力電圧をFET110、120、130、…、140のそれぞれのドレインに印加すればよい。
【0043】
また、上述した実施形態では、DAC4、6に含まれる温度係数設定部150を、温度係数が異なる3種類の抵抗R1〜R3を組み合わせて構成する場合について説明したが、半導体プロセスにおいて拡散や打ち込みにより添加する不純物の種類や濃度を変更することにより、温度係数が異なる4種類以上の抵抗を形成することができる場合には、これら4種類以上の抵抗を組み合わせて温度係数設定部150を構成するようにしてもよい。あるいは、2種類の抵抗を組み合わせて、または1種類の抵抗を用いて所定の温度係数が得られる場合には、2種類あるいは1種類の抵抗を用いて温度係数設定部150を構成するようにしてもよい。
【0044】
また、上述した実施形態では、DAC4、6全体の温度係数を温度係数設定部150内の抵抗の組み合わせを工夫して所望の値にしたが、DAC4、6内の温度係数設定部150以外の各構成が無視できない温度係数を有する場合には、これらの各構成と温度係数設定部150とを含むDAC4、6全体の温度係数が所定の値となるように温度係数設定部150の温度係数を設定すればよい。
【0045】
また、上述した実施形態では、アンテナ同調回路20、RF同調回路24およびVCO31のそれぞれに、可変容量ダイオードとコイルとが並列接続された共振回路が含まれる場合について説明したが、これらの素子が直列接続された共振回路が含まれるようにしてもよい。
【0046】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、デジタル−アナログ変換器が所定の温度係数を有しているため、局部発振器に印加される制御電圧が周囲温度に応じて変化したときに同調電圧を同じように変化させることが可能になる。したがって、高価な温度補償用コンデンサを用いて高周波受信回路や同調回路を構成する必要がなくなり、部品コストを低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態のFM受信機の構成を示す図である。
【図2】DACの詳細構成を示す図である。
【図3】3種類の抵抗を直列接続した温度係数設定部の構成を示す図である。
【図4】3種類の抵抗を並列接続した温度係数設定部の構成を示す図である。
【図5】3種類の抵抗を直列および並列接続した温度係数設定部の構成を示す図である。
【符号の説明】
4、6 DAC(デジタル−アナログ変換器)
20 アンテナ同調回路
24 RF同調回路
31 VCO(電圧制御発振器)
110、111、120、121、122、…、142 FET
112 電流源
123、133、…、143 アナログスイッチ
124、134、…、144 インバータ回路
150 温度係数設定部
Claims (8)
- 同調電圧に応じた受信周波数が設定された高周波受信回路と、
制御電圧に応じた周波数の局部発振信号を生成する局部発振器と、
前記高周波受信回路から出力される信号と前記局部発振信号とを混合する混合回路と、
所定の受信周波数に対応する設定データを出力する設定データ生成手段と、
前記設定データ生成手段から出力される設定データに対応する前記同調電圧を生成するとともに、この同調電圧が所定の温度係数で周囲温度に応じて変化するデジタル−アナログ変換器と、
を備えることを特徴とする受信機。 - 請求項1において、
前記高周波受信回路および前記局部発振器のそれぞれには、前記制御電圧あるいは前記同調電圧によって静電容量値が変更可能な可変容量ダイオードとコイルとを接続した共振回路が含まれていることを特徴とする受信機。 - 請求項2において、
前記デジタル−アナログ変換器は、所定の温度係数を有する素子を含んで構成される温度係数設定部を有しており、
前記温度係数設定部全体の素子定数が、周囲温度に応じて変化することを特徴とする受信機。 - 請求項3において、
前記温度係数設定部は、互いに温度係数が異なっており、半導体製造プロセスによって形成される複数の抵抗を含んでおり、
前記デジタル−アナログ変換器の温度係数が所定値となるように前記複数の抵抗の接続形態を設定することを特徴とする受信機。 - 請求項3において、
前記デジタル−アナログ変換器は、入力される前記設定データの値に応じた電流値が設定される電流源と、この電流源によって生成される電流が流れる前記温度係数設定部とを備えており、前記温度係数設定部の両端電圧を前記同調電圧として出力することを特徴とする受信機。 - 入力データに対応する出力電圧を生成するとともに、この出力電圧が所定の温度係数で周囲温度に応じて変化することを特徴とするデジタル−アナログ変換器。
- 請求項6において、
所定の温度係数を有する素子を含んで構成される温度係数設定部を備えており、
前記温度係数設定部全体の素子定数が、周囲温度に応じて変化することを特徴とするデジタル−アナログ変換器。 - 請求項6または7に記載のデジタル−アナログ変換器を用いて生成される同調電圧に応じて同調周波数が設定される同調回路であって、
周囲温度が変化したときに、前記温度係数に応じて前記デジタル−アナログ変換器によって生成する前記同調電圧を可変することにより、前記同調周波数を一定に維持することを特徴とする同調回路。
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