JP2004143428A - 顔料組成物及び印刷インキ - Google Patents
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Abstract
【課題】 流動性に優れた印刷インキや塗料を調製することが出来る、アセト酢酸アリリド系不溶性アゾ顔料を含有する顔料組成物を提供する。
【解決手段】 総炭素原子数6〜30のモノカルボン酸と、アセト酢酸アリリド系不溶性アゾ顔料とを含有する顔料組成物において、誘導結合プラズマ発光分析法による前記組成物中に含まれるコバルトとマンガンとの合計濃度が、30〜3000p.p.m.であることを特徴とする顔料組成物、前記顔料組成物と印刷インキ用ビヒクルとを含有してなる印刷インキ。
【選択図】なし
【解決手段】 総炭素原子数6〜30のモノカルボン酸と、アセト酢酸アリリド系不溶性アゾ顔料とを含有する顔料組成物において、誘導結合プラズマ発光分析法による前記組成物中に含まれるコバルトとマンガンとの合計濃度が、30〜3000p.p.m.であることを特徴とする顔料組成物、前記顔料組成物と印刷インキ用ビヒクルとを含有してなる印刷インキ。
【選択図】なし
Description
本発明は、顔料組成物及び印刷インキに関する。詳しくは、流動性に優れた印刷インキと、それを容易に調製することが出来る顔料組成物に関する。
印刷インキや塗料は、樹脂と溶剤からなるビヒクル中に有機顔料を微細な粒子として分散させることにより生産される。ビヒクル中に有機顔料を分散させる際、分散させるべき有機顔料の粒子を微細にする程、着色されたビヒクルの流動性は劣る様になることが、一般的である。従って、有機顔料を微細な粒子となる様に分散させた場合においても、流動性に優れた印刷インキや塗料を製造出来ることが、有機顔料には求められる。
このような課題を解決するために、有機顔料の粒子表面は各種表面処理剤等にて表面処理される。例えば、アセト酢酸アリリド系不溶性アゾ顔料を、炭素原子数6〜21の脂肪酸の様な鎖状モノカルボン酸で表面処理することにより、オフセット印刷インキ組成物の流動性を高める方法が開示されている(特許文献1参照)。
同様に、アセト酢酸アリリド系不溶性アゾ顔料を、各種ロジンの様な二環式又は三環式の環状構造を有するモノカルボン酸で表面処理することにより、オフセット印刷インキ組成物の中の顔料の分散性等を高める方法が開示されている(特許文献2参照)。
さらに、アセト酢酸アリリド系不溶性アゾ顔料を、活性二重結合を含まない炭素原子数が8〜22の脂肪酸金属塩で表面処理することにより紫外線硬化型印刷インキ組成物の流動性を高める方法が開示されている(特許文献3参照)。
この特許文献3において、活性二重結合を含まない脂肪酸としては、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ウンデセン酸等のような直鎖脂肪酸が例示されている。
この脂肪酸の金属塩形成の際に使用される金属原子としては、カルシウム、マンガン、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、ジルコニウム、銅、ニッケル、クロム、コバルト、アルミニウム、カドミウム、マグネシウム等が例示されている。
この特許文献3には脂肪酸の金属塩の添加量についての具体的な記載はないが、実施例1ではオレイン酸カルシウム由来のカルシウムが8261p.p.m.、実施例2ではステアリン酸カルシウム由来のカルシウムが8254p.p.m.、実施例3ではオレイン酸カルシウム由来のカルシウムが7712p.p.m.、実施例4ではオレイン酸バリウム由来のバリウムが21906p.pm.、実施例5ではオレイン酸マンガン由来のマンガンが10276p.p.m.、実施例6ではオレイン酸ストロンチウム由来のストロンチウムが15339p.p.m.、実施例7ではステアリン酸バリウム由来のバリウムが29560p.p.m.、実施例8ではステアリン酸カルシウム由来のカルシウムが10764p.p.m.、実施例9ではカプリル酸カルシウム由来のカルシウムが8760p.p.m.、実施例10ではカプリン酸カルシウム由来のカルシウムが8654p.p.m.、実施例11ではラウリン酸カルシウム由来のカルシウムが8551p.p.m.、実施例12ではミリスチン酸カルシウム由来のカルシウムが8450p.p.m.、実施例13ではパルミチン酸カルシウム由来のカルシウムが8351p.p.m.、実施例14にはアラキン酸カルシウム由来のカルシウムが8158p.p.m.、実施例15にはベヘン酸カルシウム由来のカルシウムが8066p.p.m.、実施例16にはステアリン酸カルシウム由来のカルシウムが5800p.p.m.含まれている計算になる。
すなわち、特許文献3には、カルシウムについては5800p.p.m.以上、バリウムについては21906p.p.m.以上、マンガンについては10276p.p.m.以上、ストロンチウムについては15339p.p.m.以上の金属を顔料に含ませることが記載されている。
また、脂肪酸の様な鎖状モノカルボン酸やアビエチン酸の様な三環式の環状構造を有するモノカルボン酸の様な各種モノカルボン酸の金属塩等で表面処理した有機顔料をカラートナーに使用する方法が開示されている(特許文献4、5参照)。
特許文献4には、不溶性アゾ顔料の表面処理剤として、具体的には、ステアリン酸、オレイン酸、アビエチン酸等の脂肪酸又は樹脂酸のアルミニウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、マグネシウム等の金属塩が挙げられている。そしてこの特許文献4には、これらの金属塩は、顔料自体と金属塩との合計に対して、0.5〜20重量%、好ましくは、1〜10重量%となるように用いることが良いとの記載がある。実施例1ではステアリン酸亜鉛由来の亜鉛が3107p.p.m.、実施例2ではステアリン酸亜鉛由来の亜鉛が10358p.p.m.含まれている計算になる。
特許文献5では、アセト酢酸アリリド系不溶性アゾ顔料の表面処理剤として、アビエチン酸又はその異性体、それらの金属塩又は変性体が挙げられており、具体的には、対応する金属塩として、カルシウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムの各金属塩が記載されている。そしてこれらは、顔料の0.1〜5重量%相当量を含めることも記載されている。イエロー現像剤の製造Aではアビエチン酸が用いられている。このアビエチン酸を前記含有量の下限値0.1重量%のアビアチン酸カルシウムに置換した場合、アビエチン酸カルシウム由来のカルシウムは62.5p.p.m.含まれている計算になる。
印刷業界においては、印刷物の生産性を高める観点から、印刷速度の高速化がめざましく進歩している。現在の印刷機の主流は、毎秒4メートルの印刷が可能な印刷機であるが、毎秒15メートルの印刷が可能な印刷機も開発されている。このような印刷速度の高速化にともない、印刷インキには、今まで以上に高い流動性が求められている。
塗料業界においても、発色性が鮮明な塗膜を得る目的で顔料を微細化した場合、それを含めた塗料の粘度が著しく高くなり、塗装の作業効率が低下する。顔料を微細化した場合でも、塗料調製の初期及び経時における各粘度のいずれもが低く、流動性に優れた塗料の開発が求められている。
しかしながら、前記した様な特許文献の表面処理有機顔料は、この様な要求水準のもとでは、いずれも、樹脂等と混合した際の流動性は劣ったものであった。
即ち、総炭素原子数6〜30のモノカルボン酸とアセト酢酸アリリド系不溶性アゾ顔料のみを含有する顔料組成物、総炭素原子数6〜30のモノカルボン酸金属塩とアセト酢酸アリリド系不溶性アゾ顔料のみを含有する顔料組成物では、いずれも、樹脂等と混合した際の流動性は劣ったものであった。
そこで、本発明者らは、総炭素原子数6〜30のモノカルボン酸と、総炭素原子数6〜30のモノカルボン酸金属塩との両方を併用する場合において、塩を形成する金属原子の種類とその含有量とを前記流動性に影響を及ぼす因子と推定し、これらの因子についての条件を種々振る実験を行うことで、それらを含む顔料組成物を樹脂等と混合した際の流動性について検討した。
前記した通り、各特許文献にあるような、アセト酢酸アリリド系不溶性アゾ顔料とモノカルボン酸又はその金属塩とを含有する顔料組成物は、いずれにせよ印刷インキ等の用途において十分な流動性を得ることができなかった。また、本発明者等によれば、前記した推定に基づく実験から、塩を形成する金属原子の種類やその含有量により、この流動性に大きな差異が生じることを見い出した。
すなわち本発明は、流動性に優れた印刷インキや塗料を調製することが出来る、アセト酢酸アリリド系不溶性アゾ顔料を含有する顔料組成物を提供することを目的とする。
発明者等は、流動性に優れた印刷インキや塗料を調製することが出来る、アセト酢酸アリリド系不溶性アゾ顔料を含有する顔料組成物を開発すべく、鋭意研究した結果、この流動性は、顔料中に含まれる金属原子の種類とその含有量とが密接に関係しており、同一金属含有量での対比においても金属原子の種類が異なると流動性が特異的に変化すること、しかも金属含有量が多くても少なくても、かえって流動性が低下することを見い出した。
即ち本発明は、総炭素原子数6〜30のモノカルボン酸と、アセト酢酸アリリド系不溶性アゾ顔料とを含有する顔料組成物において、誘導結合プラズマ発光分析法による前記組成物中に含まれるコバルトとマンガンとの合計濃度が、30〜3000p.p.m.であることを特徴とする顔料組成物を提供する。
また本発明は、前記顔料組成物と印刷インキ用ビヒクルとを含有してなる印刷インキを提供する。
また本発明は、前記顔料組成物と印刷インキ用ビヒクルとを含有してなる印刷インキを提供する。
本発明と従来の技術との相違点は、総炭素原子数6〜30のモノカルボン酸と、アセト酢酸アリリド系不溶性アゾ顔料とを含有する顔料組成物において、(1)金属原子として含ませる金属種としてコバルト及び/又はマンガンを選択して使用する点、(2)コバルト及び/又はマンガンを従来よりもかなり少ない量、即ち極微量、使用する点の2点である。本発明の根幹は、これら2点を必須条件として満たすように調製した顔料組成物だけが、特異的に流動性により優れた印刷インキ等を提供出来ることを見い出した点にある。
総炭素原子数6〜30のモノカルボン酸は、総炭素原子数6〜30の鎖状モノカルボン酸と、環状構造を有する総炭素原子数6〜30のモノカルボン酸とに分類出来る。本発明においては、これらを併せて、以下、特定モノカルボン酸と略記する。また、特定モノカルボン酸のコバルト塩をモノカルボン酸コバルト、特定モノカルボン酸のマンガン塩をモノカルボン酸マンガンと略記する。
本発明の顔料組成物は、特定モノカルボン酸と、アセト酢酸アリリド系不溶性アゾ顔料とを含有し、誘導結合プラズマ発光分析法によるコバルトとマンガンとの合計濃度が30〜3000p.p.m.という、特定金属原子を極微量の範囲で含む顔料組成物であるから、流動性に優れた印刷インキや塗料を提供出来るという格別顕著な効果を奏する。
本発明におけるアゾ顔料は、アセト酢酸アリリド系不溶性アゾ顔料である。アセト酢酸アリリド系不溶性アゾ顔料とは、この際のカップラー成分としてアセト酢酸アリリドを用いて製造された、分子内に親水性基を含まない一連のアゾ顔料をいう。そこには、モノアゾ顔料もジスアゾ顔料も包含される。以下、アセト酢酸アリリド系不溶性アゾ顔料をアゾ顔料と略記する。
一般的にアゾ顔料は、通常カップラー成分とジアゾニウム塩成分とを反応させることにより製造出来る。従って本発明におけるアゾ顔料は、例えば、このアセト酢酸アリリドを含むカップラー成分と、芳香族アミンのジアゾニウム塩成分とを、カップリング反応させることにより製造出来る。
アセト酢酸アリリドは、アセト酢酸と芳香族アミンとが脱水反応した構造を有する化合物である。アセト酢酸アリリドの芳香環上には置換基を有していてもいなくともよい。置換基を有するアセト酢酸アリリドとしては、例えば、非親水性基を有するアセト酢酸アリリドを用いることが出来る。この非親水性基は、低級アルキル基、低級アルコキシル基、ハロゲン原子、べンズイミダゾロン環残基、フタルイミド環残基からなる群から選ばれる少なくとも1つの非親水性基である。この様なアセト酢酸アリリドとしては、アセト酢酸アニリド又は前記置換基を有した対応する誘導体が挙げられる。
このアセト酢酸アニリド又はその誘導体としては、例えば、下記一般式(I)で示されるものが挙げられる。
CH3COCH2CONH−Z … 一般式(I)
(式中、Zは、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、塩素原子からなる群から選ばれる同一又は異なる1〜4個の置換基を有していてもよいフェニル基、又は、べンズイミダゾロン環残基もしくはフタルイミド環残基を示す。)
一般式(I)で示されるカップラー成分としては、例えば、アセト酢酸アニリド、アセト酢酸−o−トルイダイド、アセト酢酸−m−キシリダイド、アセト酢酸−o−アニシダイド、アセト酢酸−p−トルイダイド、アセト酢酸−o−クロロアニリド、アセト酢酸−2,5−ジメトキシアニリド、アセト酢酸−2,5,−ジメトキシ−4−クロロアニリド、5−アセトアセチルアミノベンズイミダゾロン、5−アセトアセチルアミノフタルイミド等が挙げられる。
尚、必要であれば、一般式(I)で示されるカップラー成分の一部を、親水性基を有するアセト酢酸アリリドに代替しても良い。親水性基を有するアセト酢酸アリリドとしては、例えば、一般式(II)で示される化合物が挙げられる。
CH3COCH2CONH−Y … 一般式(II)
(式中、Yは、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、水酸基、塩素原子からなる群から選ばれる同一又は異なる1〜4個の置換基を有していてもよいフェニル基であって、カルボン酸基、スルホン酸基及びこれらのアルカリ金属塩からなる群から選ばれる同一又は異なる1〜4個の置換基を有するフェニル基を示す。)
アセト酢酸アリリドは公知慣用の方法により水に溶解又は分散され、カップラ−成分が調製される。具体的には、塩基を含んだ水とアセト酢酸アリリドとを混合することで、カップラー成分を含むカップラー水溶液が得られる。このカップラー成分は前記した水溶液であっても水分散液であっても良い。以下、カップラー水溶液とカップラー水分散液を併せて、カップラー水溶液と略記する。
一方、前記カップラー成分と組み合わせるジアゾニウム塩成分は、公知慣用の方法により、芳香族アミンをジアゾ化することで調製出来る。芳香族アミンが芳香族モノアミンである場合は、芳香族モノアミン1モルに対して亜硝酸塩を1モル以上反応させることで、ジアゾニウム塩成分が調製される。芳香族アミンが芳香族ジアミンである場合は、芳香族ジアミン1モルに対して亜硝酸塩を2モル以上反応させることで、ジアゾニウム塩成分が調製される。尚、この後者のジアゾニウム塩成分は、テトラゾニウム塩成分と同一の意味である。
本発明におけるアゾ顔料は、ジアゾニウム塩成分の調製に用いる芳香族アミンの窒素原子数により各々異なるものとなる。ジアゾニウム塩成分の調製に用いる前記芳香族アミンとして、芳香族モノアミンを使用することによりモノアゾ顔料が得られ、一方、芳香族ジアミンを使用することによりジスアゾ顔料が得られる。
この芳香族アミンとしては、例えば、4−メチル−2−ニトロアニリン、4−メチル−2−ニトロアニリン、4−ニトロアニリン、2−ニトロアニリン、4−クロロ−2−ニトロアニリン、4−メトキシ−2−ニトロアニリン、2−メトキシ−4−ニトロアニリン、アミノベンゾチリフルオライド、4−アミノフタルイミド、2−メトキシアニリン、アンスラニル酸等の芳香族モノアミン、又は、3,3’−ジクロロベンジジンや2,2’,5,5’−テトラクロロベンジジンや3,3’−ジメトキシベンジジン等の芳香族ジアミンが挙げられる。
この芳香族アミンとしては、芳香環上に置換基を有さない芳香族アミン又は芳香環上に非親水性基を有する芳香族アミンが好ましい。カップラー成分の場合と同様に、必要であれば、これら芳香族アミンの一部を芳香環上に親水性基を有する芳香族アミンに代替しても良い。
前記した通り、公知慣用の方法により、芳香族アミンはジアゾ化され、ジアゾニウム塩成分が調製される。具体的には、酸を含んだ水と芳香族アミンとを混合し反応させることで、ジアゾニウム塩成分を含むジアゾニウム水溶液が得られる。このジアゾニウム塩成分は前記した水溶液であっても水分散液であっても良い。以下、ジアゾニウム水溶液とジアゾニウム水分散液を併せて、ジアゾニウム水溶液と略記する。
前記した様にして調製されたカップラー水溶液とジアゾニウム水溶液とを混合したり、これら両方を酸性としたpH緩衝剤を含む水に加えることにより、アゾ顔料を製造することが出来る。本発明におけるアゾ顔料は不溶性アゾ顔料であるため、アゾレーキ顔料を製造する際に必須とするレーキ化剤を用いることはない。このレーキ化剤は、カルシウム、アルミニウム、マンガン等の多価金属の無機塩である。従って、恣意的に、レーキ化剤を始めとする金属源を用いてアゾ顔料を製造しない限り、得られるアゾ顔料には、いかなる金属も全く含まれないものとなる。
本発明の顔料組成物におけるアゾ顔料は、前記した様に、モノアゾ顔料又はジスアゾ顔料である。
前記モノアゾ顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow (シー.アイ.ピグメント イエロー)1、2、3、5、6、9、61、62、62:1、65、73、74、75、105、111、116、120、151、154、167、168、169、175、180、181、194、203やC.I.Pigment Orange(シー.アイ.ピグメント オレンジ)1等が挙げられる。
前記ジスアゾ顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow (シー.アイ.ピグメント イエロー)12、13、14、16、17、55、63、81、83、87、126、127、136、152、170、172、174、176、188やC.I.Pigment Orange(シー.アイ.ピグメント オレンジ)16等が挙げられる。
アゾ顔料は、その分子中に水素結合能力を有する構造を含んでいる。前記一般式(I)の化合物の化学構造は化学反応によりアゾ顔料に取り込まれる。アゾ顔料中の水素結合能力を有する構造とは、前記一般式(I)の化合物の構造でいえば、カルボンアミド構造(−CONH−)やケト−エノール互変異性に基づくメチル基とメチレン結合に挟まれたカルボニル基である。この構造に基づく水素結合性の高い顔料は印刷インキや塗料のビヒクル中でフロキュレーション構造を形成し易く、流動性が低い顔料といわれている。しかしながら、これに代えて本発明の顔料組成物を用れば、印刷インキや塗料の流動性を飛躍的に高めることが出来る。水素結合能力を有する構造を2カ所に有するジスアゾ顔料は、同構造を1カ所にしか有さないモノアゾ顔料に比べて、後記するコバルト原子やマンガン原子との相互作用がより顕著に起こる。従って、ジスアゾ顔料はモノアゾ顔料に比べて、印刷インキや塗料の流動性の改良効果が大きくなるので、より好ましい。
即ち、前記アセト酢酸アリリドを含むカップラー成分のカップラー水溶液と、前記芳香族ジアミンのジアゾニウム塩成分を含むジアゾニウム水溶液とを必須成分として用いてカップリング反応させることにより得られるジスアゾ顔料は、対応する芳香族モノアミンのジアゾニウム塩成分を含むジアゾニウム水溶液を同様に用いて得られるモノアゾ顔料に比べて、特定モノカルボン酸や後記するモノカルボン酸コバルト及び/又はモノカルボン酸マンガンによる印刷インキや塗料の流動性の改良効果が大きい。
一方、ジスアゾ顔料同士における比較においても、C.I.Pigment Yellow(シー.アイ.ピグメント イエロー)12、13、14、17、126、136、174、176、188からなる群から選ばれる一種のジスアゾ顔料は、C.I.Pigment Yellow(シー.アイ.ピグメント イエロー)55、63、81、83、87からなる群から選ばれる一種のジスアゾ顔料に比べて、印刷インキや塗料の流動性の改良効果はより顕著に発現する点で特に好ましい。中でも、C.I.Pigment Yellow(シー.アイ.ピグメント イエロー)13、174は、この改良効果が最も大きい。
本発明の顔料組成物は、アゾ顔料が特定モノカルボン酸により処理されたものである。この処理後の両者の存在形態は特に制限されないが、アゾ顔料粒子の表面の一部又は全部が、例えば単分子膜の様に特定モノカルボン酸の薄層で被覆された様な状態、アゾ顔料粒子の微細孔空隙部分に特定モノカルボン酸が侵入している様な状態、或いはこれらの両方が組み合わさった状態であることが、本発明の効果を得る上では好ましい。本発明においては、この様な状態を表面処理されていると総称する。後記する顔料組成物の製造方法によれば、この様な状態は容易に形成出来る。
ここで特定モノカルボン酸としては、公知慣用のものが挙げられる。特定モノカルボン酸は、前記の通り、総炭素原子数6〜30の鎖状モノカルボン酸と、環状構造を有する総炭素原子数6〜30のモノカルボン酸とに分類出来る。中でも総炭素原子数6〜30の飽和又は不飽和の特定モノカルボン酸が好ましい。特定モノカルボン酸としては、具体的には、下記(1)〜(3)のモノカルボン酸が挙げられる。
(1)脂肪酸
脂肪酸とは、分子内に環式構造をもたない鎖式の飽和もしくは不飽和モノカルボン酸をいう。
この様な脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベベン酸、オレイン酸、ウンデセン酸等に代表される直鎖脂肪族カルボン酸、2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸等に代表される分岐鎖含有脂肪族カルボン酸が挙げられる。
脂肪酸とは、分子内に環式構造をもたない鎖式の飽和もしくは不飽和モノカルボン酸をいう。
この様な脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベベン酸、オレイン酸、ウンデセン酸等に代表される直鎖脂肪族カルボン酸、2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸等に代表される分岐鎖含有脂肪族カルボン酸が挙げられる。
(2)分子内にシクロパラフィンの環状構造をもつ飽和モノカルボン酸
この様なモノカルボン酸としては、例えば、ナフテン酸が挙げられる。
ナフテン酸とは、分子内にシクロパラフィンの環状構造をもつ飽和モノカルボン酸を主成分とするモノカルボンの総称である。市販のナフテン酸は、分子内にシクロペンタン環を一つ含有する単環式で総炭素原子数11の飽和モノカルボン酸を主成分とする。前記主成分の他に炭素原子数8の二環式の飽和モノカルボン酸等を含む場合が多い。
この様なモノカルボン酸としては、例えば、ナフテン酸が挙げられる。
ナフテン酸とは、分子内にシクロパラフィンの環状構造をもつ飽和モノカルボン酸を主成分とするモノカルボンの総称である。市販のナフテン酸は、分子内にシクロペンタン環を一つ含有する単環式で総炭素原子数11の飽和モノカルボン酸を主成分とする。前記主成分の他に炭素原子数8の二環式の飽和モノカルボン酸等を含む場合が多い。
(3)分子内にアルキル化ヒドロフェナントレンの環状構造をもつ三環式のモノカルボン酸
この様なモノカルボン酸としては、例えば、アビエチック型酸、ピマリック型酸及びこれらの各種変性物等が挙げられる。
アビエチック型酸の典型がアビエチン酸であり、ピマリック型酸の典型がピマール酸である。これらは、いずれもカルボキシル基を一つ有するモノカルボン酸である。このアビエチック型酸やピマリック型酸を主成分として含有する混合物は、一般的に、ロジンと呼ばれている。ロジンに含まれる成分を化学的に修飾した各種変性物は、変性ロジンと呼ばれている。これらは、市販のロジン又は変性ロジンとして入手出来る。
この様なロジンや変性ロジンとしては、例えば、アビエチック型酸を主成分とするロジン、このロジンを原料としてそこに含まれる成分の重合性二重結合に水素を付加させて得られる変性ロジン(水素添加ロジンという)、前記ロジンに含まれる成分を不均化させて得られる変性ロジン(不均化ロジンという)、前記ロジンに含まれる成分の重合性二重結合に無水マレイン酸を付加させて得られる変性ロジン(マレイン化ロジンという)、前記ロジンに含まれる成分の重合性二重結合にフマール酸を付加させて得られる変性ロジン(フマル化ロジンという)等が挙げられる。
この様なモノカルボン酸としては、例えば、アビエチック型酸、ピマリック型酸及びこれらの各種変性物等が挙げられる。
アビエチック型酸の典型がアビエチン酸であり、ピマリック型酸の典型がピマール酸である。これらは、いずれもカルボキシル基を一つ有するモノカルボン酸である。このアビエチック型酸やピマリック型酸を主成分として含有する混合物は、一般的に、ロジンと呼ばれている。ロジンに含まれる成分を化学的に修飾した各種変性物は、変性ロジンと呼ばれている。これらは、市販のロジン又は変性ロジンとして入手出来る。
この様なロジンや変性ロジンとしては、例えば、アビエチック型酸を主成分とするロジン、このロジンを原料としてそこに含まれる成分の重合性二重結合に水素を付加させて得られる変性ロジン(水素添加ロジンという)、前記ロジンに含まれる成分を不均化させて得られる変性ロジン(不均化ロジンという)、前記ロジンに含まれる成分の重合性二重結合に無水マレイン酸を付加させて得られる変性ロジン(マレイン化ロジンという)、前記ロジンに含まれる成分の重合性二重結合にフマール酸を付加させて得られる変性ロジン(フマル化ロジンという)等が挙げられる。
本発明において、水素添加ロジンや不均化ロジンは、それを生成する反応後において重合性二重結合の消失や一つの芳香環の形成はあっても、アビエチック型酸やピマリック型酸としてもともと存在していた分子中のカルボキシル基は反応後にも消失しないから、分子内にアルキル化ヒドロフェナントレンの環状構造をもつ三環式のモノカルボン酸である。また、マレイン化ロジンにしても、フマル化ロジンにしても、そこにマレイン化やフマル化がなされていないアビエチック型酸やピマリック型酸が含まれている限り、分子内にアルキル化ヒドロフェナントレンの環状構造をもつ三環式のモノカルボン酸ということが出来る。
つまり、総炭素原子数6〜30の脂肪酸は、本発明で定義する総炭素原子数6〜30の鎖状モノカルボン酸に包含される。一方、ナフテン酸、ロジン及び変性ロジンは、本発明で定義する環状構造を有する総炭素原子数6〜30のモノカルボン酸に包含される。前記した様な変性ロジンは、環状構造を有する総炭素原子数6〜30のモノカルボン酸がそこに含まれている限り、本発明で定義する環状構造を有する総炭素原子数6〜30のモノカルボン酸に分類する。
この様な特定モノカルボン酸としては、総炭素原子数8〜22の前記特定モノカルボン酸が好ましい。
この様な特定モノカルボン酸は、一種を単独で用いることも出来るし、異なる二種以上を併用することも出来る。必要に応じて、特定モノカルボン酸以外の一塩基酸や多塩基酸等を併用することも出来る。
本発明の顔料組成物を調製する際に用いる特定モノカルボン酸は、総炭素原子数6〜30の鎖状モノカルボン酸に比べて、環状構造を有する総炭素原子数6〜30のモノカルボン酸の方が、それを含む顔料組成物から印刷インキを調製し連続印刷した際の印刷トラブル頻度が低くなるので好ましい。
また、後者の環状構造を有する総炭素原子数6〜30のモノカルボン酸同士の比較においては、一般的に、分子内にシクロパラフィンの環状構造をもつ飽和モノカルボン酸よりも、分子内にアルキル化ヒドロフェナントレンの環状構造をもつ三環式のモノカルボン酸の方が、顔料組成物から調製した印刷インキや塗料を連続印刷したり連続塗工した際の非印刷部や非塗工部への汚れが少なくなる点、またそれらから得られる塗膜の透明性に優れる点からも好ましい。
より具体的にいえば、湿し水を用いた印刷方式であるオフセット印刷インキ用途に適した顔料組成物を得るには、印刷機上で過剰乳化を起こすトラブルを発生しにくく、流動性の改良効果も大きく、しかも透明性や長時間印刷時に被印刷媒体中の非印刷部分への汚れが発生しない点で、特定モノカルボン酸としては、分子内にアルキル化ヒドロフェナントレンの環状構造をもつ三環式のモノカルボン酸を用いることが特に好ましい。尚、余分な印刷インキが被印刷媒体に付着することで前記非印刷部分が汚れる現象がよく起こるが、これはPS版上の非印刷部分の感脂化が原因とされている。
前記した、分子内にアルキル化ヒドロフェナントレンの環状構造をもつ三環式のモノカルボン酸を含む水素添加ロジンや不均化ロジンは、乾燥硬化に寄与する活性二重結合を有しないため、例えば、それを含む本発明の顔料組成物を用いて調製された印刷インキ等を長期間保存した場合、印刷インキ等の表面が硬化する皮張り等のトラブルを引き起こしにくい点で最も好ましい。
本発明の顔料組成物における特定モノカルボン酸の含有量は、質量換算にて、アゾ顔料と特定モノカルボン酸との合計を100%とした際、3〜40%の範囲とすることが出来る。特定モノカルボン酸の含有量がこの範囲にあると、印刷インキや塗料の流動性改良効果が大きく、かつ印刷インキや塗料の調製時のアゾ顔料のビヒクル中における分散性も良好である。なかでも、特定モノカルボン酸の含有量が、前記基準で15〜35%の範囲である場合、後記するコバルト源及び/又はマンガン源との併用による流動性改良効果が特に大きく、かつ透明性や着色力の高い印刷インキや塗料が調製出来る点で、より好ましい。
素姓未知の顔料が、本発明の顔料組成物の様に、特定モノカルボン酸とアゾ顔料とを含有していることを特定するには、まず第一に、そこに特定モノカルボン酸が含まれていることを確認する必要がある。特定モノカルボン酸の存在有無は、未知顔料をトルエン、ターペン等の有機溶剤で溶剤抽出し溶剤溶解分を得て、脱溶剤することで得られたものについて、赤外線吸収スペクトル、滴定等の公知慣用の分析方法により確認することが出来る。
また本発明の顔料組成物は、前記した様な特定モノカルボン酸とアゾ顔料を含有しているばかりでなく、誘導結合プラズマ発光分析法によるコバルトとマンガンの合計濃度が、ある特定の範囲の濃度でなければならない。この分析の具体的な条件は、下記する通りである。
特定モノカルボン酸とアゾ顔料との混合物に含まれる金属又は金属化合物が、コバルト又はコバルト化合物のみである場合は、コバルト濃度のみを測定すれば良いし、特定モノカルボン酸とアゾ顔料との混合物に含まれる金属又は金属化合物が、マンガン又はマンガン化合物のみである場合は、マンガン濃度のみを測定すれば良い。
この誘導結合プラズマ発光分析法は、特定モノカルボン酸とアゾ顔料との混合物中に含まれるコバルト、コバルト化合物、マンガン、マンガン化合物の総量を求める分析法である。以下、コバルトとコバルト化合物を併せてコバルト源といい、マンガンとマンガン化合物を併せてマンガン源という。本発明の顔料組成物中に含まれるコバルト源は、前記分析方法によれば、例えば、無機化合物であっても有機化合物であっても、同様に検出される。このことは、マンガン源においても同様である。
コバルト源やマンガン源は、前記した特定モノカルボン酸と塩を形成しうる。特定モノカルボン酸も、アゾ顔料も、それ自体は、本来コバルトもマンガンを全く含まない物質である。従って、本発明の顔料組成物を調製するに当たって、特定モノカルボン酸やアゾ顔料として、コバルト源もマンガン源も含まないものを用いた場合には、それらの少なくともいずれかに、コバルト源やマンガン源を含ませることで、コバルトとマンガンの合計濃度が本発明で規定した特定範囲となるようにする。こうすることで、コバルト源やマンガン源の添加量に見合った当量の特定モノカルボン酸だけが、モノカルボン酸コバルトやモノカルボン酸マンガンに変換される。よって本発明の顔料組成物を調製する際には、予め特定モノカルボン酸とアセト酢酸アリリド系不溶性アゾ顔料中のコバルト源とマンガン源との合計含有率を求めて、それらがいずれも含まれていないこと(検出限界値以下であること)を確認の上、含ませるコバルト源やマンガン源の使用量を算定することが望ましい。
本発明の顔料組成物は、アゾ顔料と、特定モノカルボン酸と、前記分析法に基づく特定範囲の濃度のコバルト及び/又はマンガンとを含むものである。前記の様にしてコバルト源やマンガン源を特定モノカルボン酸に添加して顔料組成物を調製した場合は、この特定濃度のコバルト及び/又はマンガンは、モノカルボン酸コバルト及び/又はモノカルボン酸マンガンに由来するものとなる。尚、モノカルボン酸コバルトとは、前記した各種の特定モノカルボン酸に対応するコバルト塩を意味し、同様にモノカルボン酸マンガンとは、前記した各種の特定モノカルボン酸に対応するマンガン塩を意味する。ここでは、特に具体的な化合物名は例示しないが、これらはモノカルボン酸と二価金属との塩であるから、モノカルボン酸2モルとコバルト又はマンガン1モルとからなる化合物である。
本発明において、誘導結合プラズマ発光分析法によるコバルトとマンガンの合計濃度が30〜3000p.p.m.の範囲であると、流動性に優れた印刷インキや塗料を調製出来る顔料組成物が得られる。コバルトとマンガンの合計濃度が、前記範囲より低いと流動性の改良効果が不十分であり、前記範囲より高いと印刷インキや塗料の着色力が低下したり、印刷インキや塗料の一部が貯蔵中に硬化するというトラブルが発生しやすくなる。
特に、ナフテン酸の様な分子内にシクロパラフィンの環状構造をもつ飽和モノカルボン酸のコバルト塩やマンガン塩は、印刷インキ業界においては乾燥剤、塗料業界においては硬化促進剤と呼ばれているものであり、コバルトとマンガンの合計濃度が本発明で規定する範囲を超えて高くなるほどアゾ顔料との相互作用が大きくなって、印刷インキや塗料の流動性は低下する傾向にある。
誘導結合プラズマ発光分析法によるコバルトとマンガンの合計濃度が50〜1000p.p.m.の範囲、特に好ましくは50〜450p.p.m.の範囲であると、印刷インキや塗料の流動性を顕著に改良出来る。合計濃度が前記範囲にあると、印刷インキの着色力の低下を引き起こし難く、かつ、仮に印刷インキに用いられるワニスの不飽和度が高く硬化しやすい場合においても、印刷インキの一部が貯蔵中に硬化するというトラブルの発生も少なくなる。一方、金属の濃度一定の条件における対比では、コバルト源はマンガン源に比べ、流動性を改良する効果がより大きいため、コバルト源を単独で使用することが推奨される。
特定モノカルボン酸と、前記した様なコバルトやマンガンの濃度となるように極微量のコバルト源やマンガン源とを併用することで、対応した極微量のモノカルボン酸コバルトやモノカルボン酸マンガンが生成すると考えられる。主成分を遊離の特定モノカルボン酸として、極一部の成分をモノカルボン酸コバルトやモノカルボン酸マンガンであるように顔料組成物を調製すると、印刷インキや塗料の調製時において、最も流動性の改良効果が大きくなる。尚、遊離の特定モノカルボン酸とは、カルボキシル基が中和されていない特定モノカルボン酸を意味する。
オフセット印刷インキの用途に適した本発明の顔料組成物は、アゾ顔料自体を除けば、主成分が分子内にアルキル化ヒドロフェナントレンの環状構造をもつ三環式のモノカルボン酸であり、極一部の成分がモノカルボン酸コバルト及び/又はモノカルボン酸マンガンであって、この顔料組成物中の誘導結合プラズマ発光分析法によるコバルトとマンガンの合計濃度が、50〜3000p.p.m.の範囲であることが、流動性により優れた印刷インキを調製出来る上で好ましい。
本発明の顔料組成物は、印刷インキや塗料を調製する際の樹脂等と混合分散した際により高い流動性を得ようとするならば、アゾ顔料の製造時、例えば顔料自体の合成時や熟成時や、乾燥する前の湿潤した状態の未処理顔料に対して、特定モノカルボン酸による処理と、モノカルボン酸コバルト及び/又はモノカルボン酸マンガンによる処理とを行うことが好ましい。また、特定モノカルボン酸と、コバルト源及び/又はマンガン源とは、これらを同時にアゾ顔料の製造時に添加して、反応によりモノカルボン酸コバルト及び/又はモノカルボン酸マンガンを生成させるか、あるいはこれらを先に反応させておいて、予め特定モノカルボン酸とモノカルボン酸コバルト及び/又はモノカルボン酸マンガンとの混合物とした上で、それらをアゾ顔料の製造時に添加して処理すれば良い。
なかでも、カップラー成分を含むカップラー水溶液と、ジアゾニウム塩成分を含むジアゾニウム水溶液とを、カップリング反応させた後に、特定モノカルボン酸を添加するようにすると、透明性に優れ鮮明性にも優れた印刷物が仕上がる印刷インキや塗料を調製出来る顔料組成物が得られる。
アゾ顔料へのモノカルボン酸コバルト及び/又はモノカルボン酸マンガンによる処理は、アゾ顔料の合成後熟成前に特定モノカルボン酸による処理し、熟成後モノカルボン酸コバルト及び/又はモノカルボン酸マンガンで処理する方法、無機コバルト化合物及び/又は無機マンガン化合物の存在下でアゾ顔料を合成し熟成前に、特定モノカルボン酸で処理し、無機コバルト化合物及び/又は無機マンガン化合物をモノカルボン酸コバルト及び/又はモノカルボン酸マンガンに変換すると共に特定モノカルボン酸で処理する方法等がある。
特定モノカルボン酸とアゾ顔料とを含有する混合物を調製する好ましい方法は、カップリング反応させた後、反応液をアルカリ性に調整し、特定モノカルボン酸を特定モノカルボン酸のアルカリ金属塩(水溶性塩)溶液として添加し、次いで塩酸、硫酸、酢酸のような酸によって特定モノカルボン酸のアルカリ金属塩をもとの不溶性又は難溶性の特定モノカルボン酸としてアゾ顔料の粒子上に析出させる方法である。このような操作は酸析と呼ばれる。この方法は、アゾ顔料表面への均一な特定モノカルボン酸処理が行え、分散性や流動性に優れた印刷インキや塗料を調製出来る顔料組成物が得られる点で好ましい。この方法は、流動性の改良効果も大きくなるため推奨される。この方法は、特定モノカルボン酸とモノカルボン酸コバルト及び/又はモノカルボン酸マンガンとの併用による処理においても極めて有効である。
本発明において、アゾ顔料に対して、特定モノカルボン酸とモノカルボン酸コバルト及び/又はモノカルボン酸マンガンとを含ませる方法としては、
(I)アセト酢酸アリリドを含むカップラー成分のカップラー水溶液と、芳香族アミンのジアゾニウム塩成分を含むジアゾニウム水溶液とを、カップリング反応させることによりアゾ顔料を製造するいずれかの工程において、特定モノカルボン酸と、モノカルボン酸コバルト及び/又はモノカルボン酸マンガンとを添加する方法、
(II)アセト酢酸アリリドを含むカップラー成分のカップラー水溶液と、芳香族アミンのジアゾニウム塩成分を含むジアゾニウム水溶液とを、カップリング反応させることによりアゾ顔料を製造するいずれかの工程において、特定モノカルボン酸と、無機コバルト化合物及び/又は無機マンガン化合物としてのコバルト無機塩及び/又はマンガン無機塩を添加する方法、
等が挙げられる。以下、これらの製造方法は、それぞれ製造方法(I)、製造方法(II)と略記する。
(I)アセト酢酸アリリドを含むカップラー成分のカップラー水溶液と、芳香族アミンのジアゾニウム塩成分を含むジアゾニウム水溶液とを、カップリング反応させることによりアゾ顔料を製造するいずれかの工程において、特定モノカルボン酸と、モノカルボン酸コバルト及び/又はモノカルボン酸マンガンとを添加する方法、
(II)アセト酢酸アリリドを含むカップラー成分のカップラー水溶液と、芳香族アミンのジアゾニウム塩成分を含むジアゾニウム水溶液とを、カップリング反応させることによりアゾ顔料を製造するいずれかの工程において、特定モノカルボン酸と、無機コバルト化合物及び/又は無機マンガン化合物としてのコバルト無機塩及び/又はマンガン無機塩を添加する方法、
等が挙げられる。以下、これらの製造方法は、それぞれ製造方法(I)、製造方法(II)と略記する。
前記した製造方法(I)及び製造方法(II)のいずれにおいても、コバルト源やマンガン源は、カップラー水溶液、ジアゾニウム水溶液の一方又は両方に存在するように添加することが出来る。
製造方法(I)は、具体例には、下記工程1〜4をこの順に行う方法である。
<工程1>アセト酢酸アリリドを含むカップラー成分のカップラー水溶液と、芳香族アミンのジアゾニウム塩成分を含むジアゾニウム水溶液とを、カップリング反応させる。
<工程2>工程1で調製したカップリング反応液をアルカリ性に調整後、特定モノカルボン酸のアルカリ金属塩溶液を添加する。
<工程3>70〜100℃まで加熱後、モノカルボン酸コバルト及び/又はモノカルボン酸マンガンを添加する。
<工程4>塩酸、硫酸、酢酸等のような酸により特定モノカルボン酸のアルカリ金属塩を酸析して特定モノカルボン酸に変換する。
<工程1>アセト酢酸アリリドを含むカップラー成分のカップラー水溶液と、芳香族アミンのジアゾニウム塩成分を含むジアゾニウム水溶液とを、カップリング反応させる。
<工程2>工程1で調製したカップリング反応液をアルカリ性に調整後、特定モノカルボン酸のアルカリ金属塩溶液を添加する。
<工程3>70〜100℃まで加熱後、モノカルボン酸コバルト及び/又はモノカルボン酸マンガンを添加する。
<工程4>塩酸、硫酸、酢酸等のような酸により特定モノカルボン酸のアルカリ金属塩を酸析して特定モノカルボン酸に変換する。
製造方法(II)は、具体例には、下記工程1〜4をこの順に行う方法である。
<工程1>アセト酢酸アリリドを含むカップラー成分のカップラー水溶液及び/又は芳香族アミンのジアゾニウム塩を含むジアゾニウム水溶液に、無機コバルト化合物及び/又は無機マンガン化合物としてのコバルト無機塩及び/又はマンガン無機塩を添加する。
<工程2>工程1により調製されたカップラー水溶液とジアゾニウム水溶液とをカップリング反応させる。
<工程3>工程2で調製したカップリング反応液をアルカリ性に調整後、特定モノカルボン酸のアルカリ金属塩溶液を添加する。
<工程4>70〜100℃まで加熱後、塩酸、硫酸、酢酸のような酸により特定モノカルボン酸のアルカリ金属塩を酸析して特定モノカルボン酸に変換する。
<工程1>アセト酢酸アリリドを含むカップラー成分のカップラー水溶液及び/又は芳香族アミンのジアゾニウム塩を含むジアゾニウム水溶液に、無機コバルト化合物及び/又は無機マンガン化合物としてのコバルト無機塩及び/又はマンガン無機塩を添加する。
<工程2>工程1により調製されたカップラー水溶液とジアゾニウム水溶液とをカップリング反応させる。
<工程3>工程2で調製したカップリング反応液をアルカリ性に調整後、特定モノカルボン酸のアルカリ金属塩溶液を添加する。
<工程4>70〜100℃まで加熱後、塩酸、硫酸、酢酸のような酸により特定モノカルボン酸のアルカリ金属塩を酸析して特定モノカルボン酸に変換する。
コバルト無機塩及び/又はマンガン無機塩の具体例としては、硫酸マンガン、硫酸コバルト、塩化マンガン、塩化コバルト等が挙げられる。なお、製造方法(II)においては、工程3において添加される特定モノカルボン酸のアルカリ金属塩により、それに先立つ工程1で添加されたコバルト無機塩やマンガン無機塩の当量相当量が、モノカルボン酸コバルト及び/又はモノカルボン酸マンガンに変換される。
これらの方法では、特定モノカルボン酸と、モノカルボン酸コバルト及び/又はモノカルボン酸マンガンとが、アゾ顔料粒子の表面或いは微細孔空隙に作用し、アゾ顔料粒子の結晶成長やアゾ顔料粒子間の凝集を阻害する。即ち、アゾ顔料粒子の表面の一部又は全部が、例えば単分子膜の様に特定モノカルボン酸とモノカルボン酸コバルト及び/又はモノカルボン酸マンガンとの薄層で被覆された状態と、アゾ顔料粒子の微細孔空隙部分に特定モノカルボン酸とモノカルボン酸コバルト及び/又はモノカルボン酸マンガンとが侵入している状態との両方が組み合わさった状態が形成されていると推定される。
本発明において、前記(II)の方法は、透明性にも優れた塗膜の印刷インキや塗料を調製出来る顔料組成物が得られる点で、最も推奨される方法である。
塗膜の乾燥や硬化を促進する目的で、印刷インキや塗料の中に、乾燥剤や硬化促進剤として、モノカルボン酸コバルトやモノカルボン酸マンガンを添加することは公知である。すなわち、ニーダー、ロール、ビーズミルのような混練機械にて顔料を樹脂と溶剤からなるビヒクル中に分散後、本発明における場合よりも多くのコバルトやマンガンを含むモノカルボン酸コバルトやモノカルボン酸マンガンを添加して印刷インキや塗料を調製する方法は公知である。
しかしながら、この方法では、印刷インキ等の調整において、全く流動性の改良効果は発現しない。すなわち、顔料表面が樹脂や溶剤により湿潤された後から、モノカルボン酸コバルトやモノカルボン酸マンガンを添加しても、全く流動性の改良効果は発現しない。樹脂や溶剤に接するより前の段階で顔料組成物自体が既に本発明の構成を備えていることで、顔料粒子レベルにおける挙動を効果的に制御することが出来る。
本発明の顔料組成物が流動性に優れた印刷インキや塗料を調製出来る機構は明確とはなっていないが、本発明者等は、次のような機構ではないかと推定している。
<推定1>アセト酢酸アリリドを含むカップラー成分のカップラー水溶液と、芳香族アミンのジアゾニウム塩成分を含むジアゾニウム水溶液とを、カップリング反応させることにより得られるアゾ顔料には、その結晶表面にケトエノール互変異性やカルボンアミド結合により生成する水素結合性が高い部位が存在する。特に前記した通り、一般式(I)の様な構造を有するアセト酢酸アリリドを用いる場合は、この水素結合性が大きい。
<推定2>その水素結合性が強い部分は、分子内にアルキル化ヒドロフェナントレンの環状構造をもつ三環式のモノカルボン酸の様な特定モノカルボン酸による表面処理は困難であり、印刷インキや塗料中でアゾ顔料がフロキュレーション構造を形成し、流動性が低下する。これは前記した一般式(I)の様な構造を2つ有するジスアゾ顔料の場合は、それが1つだけのモノアゾ顔料に比べて顕著である。
<推定3>その水素結合性が強い部分に対して、コバルト及び/又はマンガンが吸着し、吸着したコバルト及び/又はマンガンが分子内にアルキル化ヒドロフェナントレンの環状構造をもつ三環式のモノカルボン酸の様な特定モノカルボン酸に対する吸着点となる。又は、二価の金属原子であって適当な原子半径を有するコバルト又はマンガンが中心原子となり、かつ、アゾ顔料と特定モノカルボン酸を配位子としたキレート構造を形成する。
<推定4>推定3の効果により、アゾ顔料結晶表面への特定モノカルボン酸処理(被覆)効率も高まり、顔料表面が親油性化(疎水化)される結果、印刷インキや塗料中に含まれる樹脂への吸着性が高まり、アゾ顔料がフロキュレーション構造を形成し難くなる。その結果、印刷インキや塗料の流動性が向上する。
なお、必要であれば、印刷インキの硬化性を抑制する目的で添加される皮張り防止剤や乾燥抑制剤、例えば、メチルエチルケトオキシム、メチルブチルケトオキシム、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン等を、本発明の顔料組成物に共存させることも出来る。
本発明の印刷インキは、前記した様に、本発明の顔料組成物と印刷インキ用ビヒクルとを必須成分として含有するものである。本発明の顔料組成物は、印刷インキ用ビヒクルと混練することにより、流動性に優れた印刷インキを調製することが出来る。印刷インキは、その組成により、オフセット印刷インキと、グラビア印刷インキ、フレキソ印刷インキに大別出来る。尚、オフセット印刷インキは平版印刷インキと呼ばれることがある。
オフセット印刷インキ用ビヒクルは、例えば、ロジン変性フェノール樹脂、石油樹脂、アルキッド樹脂又はこれらの乾性油変性樹脂等の樹脂と、必要に応じて、アマニ油、桐油、大豆油等の植物油と、n−パラフィン、イソパラフィン、アロマテック、ナフテン、α−オレフィン、脂肪族モノカルボン酸とモノアルコールとのエステル等の溶剤からなるものであって、それらの混合割合は、質量比で、樹脂:植物油:溶剤=20〜50部:0〜30部:10〜60部の範囲であることが好ましい。
本発明の顔料組成物を配合したオフセット印刷インキ用ビヒクルには、必要に応じて、インキ溶剤、ドライヤー(乾燥剤や硬化促進剤とも呼ばれる)、レベリング改良剤、増粘剤等の公知の添加剤を適宜配合してオフセット印刷インキとすることが出来る。
また、グラビア印刷インキ用ビヒクル及びフレキソ印刷インキ用ビヒクルは、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、石灰化ロジン、ライムロジン、ロジンエステル、マレイン酸樹脂、ギルソナイト、ダンマル、セラック、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂、ニトロセルロース、環化ゴム、塩化ゴム、エチルセルロース、酢酸セルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂等の樹脂混合物と、n−ヘキサン、トルエン、エタノール、メタノール、アセトン、酢酸エチル、乳酸エチル、セロソルブ、イソプロピルアルコール、クロルベンゾール、エチルエーテル、アセタールエチルエーテル、アセト酢酸エチル、酢酸ブチルセロソルブ、水等の溶剤からなるものであって、それらの混合割合は、質量比で、樹脂混合物:溶剤=10〜50部:30〜80部の範囲であることが好ましい。
本発明の顔料組成物を配合したグラビア印刷インキ用ビヒクル及びフレキソ印刷インキ用ビヒクルは、必要に応じて、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、アルミナ白、クレー、シリカ、シリカ白、タルク、ケイ酸カルシウム、沈降性炭酸マグネシウム等の体質顔料の他、補助剤として、可塑剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤等の公知の添加剤を適宜配合してグラビア印刷インキ、フレキソ印刷インキとすることが出来る。
以下、実施例、比較例及び試験例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の例中における「部」及び「%」は、特に断りのない限り、いずれも質量基準である。
<誘導結合プラズマ発光分析法によるコバルト、マンガン濃度の測定方法>
(顔料組成物等の分解)
下記実施例等により得られた顔料組成物に硝酸と過塩素酸を添加し、マイクロウェーブ試料分解装置(MILESTONE社製 MLS1200 MEGA型)にて顔料組成物を分解した。尚、この分解条件は下記の通りである。
(顔料組成物等の分解)
下記実施例等により得られた顔料組成物に硝酸と過塩素酸を添加し、マイクロウェーブ試料分解装置(MILESTONE社製 MLS1200 MEGA型)にて顔料組成物を分解した。尚、この分解条件は下記の通りである。
(操作1)顔料組成物0.5gに60%硝酸5mlを添加し、マイクロウェーブ試料分解装置に入れる。
(操作2)マイクロウェーブ試料分解装置の出力を500Wまで徐々に高め、500Wで15分間保持する。
(操作3)冷却後、60%硝酸1mlと70%過塩素酸3mlを添加し、マイクロウェーブ試料分解装置に入れる。
(操作4)マイクロウェーブ試料分解装置の出力を600Wまで徐々に高め、600Wで15分間保持する。得られた水溶液を濾過し、測定液とした。
(操作2)マイクロウェーブ試料分解装置の出力を500Wまで徐々に高め、500Wで15分間保持する。
(操作3)冷却後、60%硝酸1mlと70%過塩素酸3mlを添加し、マイクロウェーブ試料分解装置に入れる。
(操作4)マイクロウェーブ試料分解装置の出力を600Wまで徐々に高め、600Wで15分間保持する。得られた水溶液を濾過し、測定液とした。
(コバルト、マンガン濃度の測定)
誘導結合プラズマ発光分析装置(Inductively Coupled Plasma − Atomic Emission Spectrometer、SHIMADZU ICPS−1000IV型 株式会社島津製作所製)を用いて、顔料組成物の分解操作により得られた測定液のコバルト、マンガン濃度を測定した。そして、この測定値を顔料組成物の質量に対する百万分率(p.p.m.)に換算して表示した。
誘導結合プラズマ発光分析装置(Inductively Coupled Plasma − Atomic Emission Spectrometer、SHIMADZU ICPS−1000IV型 株式会社島津製作所製)を用いて、顔料組成物の分解操作により得られた測定液のコバルト、マンガン濃度を測定した。そして、この測定値を顔料組成物の質量に対する百万分率(p.p.m.)に換算して表示した。
誘導結合プラズマ発光分析装置によるコバルト及びマンガンの濃度の測定条件は、下記の通りである。
(誘導結合プラズマ発光分析装置の設定条件)
高周波出力 1.0(KW)
トーチ観察高さ 15(mm)
クーラントガス流量 14(l/min)
キャリアガス流量 1.2(l/min)
パージガス流量 0.9(l/min)
ソルベント・リンスタイム 50(秒)
サンプル・リンスタイム 20(秒)
コバルトの分析波長 228.616(nm)
マンガンの分析波長 257.610(nm)
(誘導結合プラズマ発光分析装置の設定条件)
高周波出力 1.0(KW)
トーチ観察高さ 15(mm)
クーラントガス流量 14(l/min)
キャリアガス流量 1.2(l/min)
パージガス流量 0.9(l/min)
ソルベント・リンスタイム 50(秒)
サンプル・リンスタイム 20(秒)
コバルトの分析波長 228.616(nm)
マンガンの分析波長 257.610(nm)
(誘導結合プラズマ発光分析装置への測定液の導入方法)
超音波ネブライザー(SHIMADZU UAG−1型:株式会社島津製作所製)を使用して、測定液を誘導結合プラズマ発光分析装置へ導入した。
超音波ネブライザー(SHIMADZU UAG−1型:株式会社島津製作所製)を使用して、測定液を誘導結合プラズマ発光分析装置へ導入した。
(検量線の作成)
測定元素標準液1000ppm(和光純薬工業株式会社製)を用いて、それを希硝酸で希釈して数点の検量線作製用試験液を調製し、これらを前記した分析装置・条件にて濃度を測定し、グラフ上にプロットし検量線を作成した。この操作をコバルトとマンガンの両方について行った。
測定元素標準液1000ppm(和光純薬工業株式会社製)を用いて、それを希硝酸で希釈して数点の検量線作製用試験液を調製し、これらを前記した分析装置・条件にて濃度を測定し、グラフ上にプロットし検量線を作成した。この操作をコバルトとマンガンの両方について行った。
尚、以下の各実施例等においては、コバルト源やマンガン源以外の各原料についても、前記した様にして、予めコバルト、マンガン濃度を測定し、いずれも測定限界値以下(≦1ppm)であることを事前に全て確認した上で、実験を行った。従って、以下の実施例等における顔料組成物中のコバルト及びマンガン合計濃度の発生源は、コバルト源又はマンガン源として、人為的に加えられたコバルト化合物のみ又はマンガン化合物のみによるものである。
100部の3,3’−ジクロロベンジジンに相当する3,3’−ジクロロベンジジン塩酸塩、123.6部の35%塩酸、142.6部の40%亜硝酸ナトリウムを使用して常法によりテトラゾ化を行い、5℃で2600部のテトラゾニウム水溶液を調製した。
一方、178.2部のアセト酢酸−m−キシリダイドを、198.2部の25%水酸化ナトリウムが含まれた水溶液に溶解し、20℃で1500部のカップラー水溶液を調製した。
また、攪拌機を有する反応容器に5.33部の90%酢酸、水4000部からなる15℃の酸性水溶液を調製した。この酸性水溶液に前記カップラー水溶液の一部を添加してpH5に調整し、緩衝溶液を調製した。
一方、178.2部のアセト酢酸−m−キシリダイドを、198.2部の25%水酸化ナトリウムが含まれた水溶液に溶解し、20℃で1500部のカップラー水溶液を調製した。
また、攪拌機を有する反応容器に5.33部の90%酢酸、水4000部からなる15℃の酸性水溶液を調製した。この酸性水溶液に前記カップラー水溶液の一部を添加してpH5に調整し、緩衝溶液を調製した。
緩衝溶液が調製された攪拌機を有する反応装置内に、テトラゾニウム水溶液を3時間かけて定量供給した。この間、反応容器内のpHが4.8〜5.2となるようにカップラー水溶液を供給した。なお、カップラー水溶液をすべて供給し終えた後は、希釈した水酸化ナトリウム溶液を供給した。
すべてのテトラゾニウム水溶液を添加した後、水酸化ナトリウムを加えてpH11に調整した。この中に、360部の不均化ロジンのナトリウム水溶液を添加した後、90℃まで加熱した。尚、この不均化ロジンのナトリウム水溶液は、不揮発分40%であり、この不均化ロジンは、アビエチン酸の不均化反応生成物であるモノカルボン酸を含有するものである。以下、アビエチン酸の不均化反応生成物をアビエチン酸不均化物という。
90℃で2時間熟成を行った後、2部のDICNATE(登録商標)3111を添加し、90℃で1時間熟成した。尚、このDICNATE(登録商標)3111は、ナフテン酸コバルトを約35%含む大日本インキ化学工業株式会社製の水性エマルションであって、構成成分のナフテン酸は、分子内にシクロペンタン環を一つ含有する単環式で総炭素原子数11の飽和モノカルボン酸を主成分として、その他に炭素原子数8の二環式の飽和モノカルボン酸等を含むものである。また、このDICNATE(登録商標)3111は、コバルトを3%含有する。
DICNATE(登録商標)3111を添加したアゾ顔料含有液に希釈酢酸を添加してpHを5.2に調整した。30分撹拌後、濾過、水洗した。
すべてのテトラゾニウム水溶液を添加した後、水酸化ナトリウムを加えてpH11に調整した。この中に、360部の不均化ロジンのナトリウム水溶液を添加した後、90℃まで加熱した。尚、この不均化ロジンのナトリウム水溶液は、不揮発分40%であり、この不均化ロジンは、アビエチン酸の不均化反応生成物であるモノカルボン酸を含有するものである。以下、アビエチン酸の不均化反応生成物をアビエチン酸不均化物という。
90℃で2時間熟成を行った後、2部のDICNATE(登録商標)3111を添加し、90℃で1時間熟成した。尚、このDICNATE(登録商標)3111は、ナフテン酸コバルトを約35%含む大日本インキ化学工業株式会社製の水性エマルションであって、構成成分のナフテン酸は、分子内にシクロペンタン環を一つ含有する単環式で総炭素原子数11の飽和モノカルボン酸を主成分として、その他に炭素原子数8の二環式の飽和モノカルボン酸等を含むものである。また、このDICNATE(登録商標)3111は、コバルトを3%含有する。
DICNATE(登録商標)3111を添加したアゾ顔料含有液に希釈酢酸を添加してpHを5.2に調整した。30分撹拌後、濾過、水洗した。
得られた、顔料水ペーストを60℃で乾燥した後、粉砕して、遊離のアビエチン酸不均化物を含む不均化ロジン(大部分)と分子内にシクロペンタン環を一つ含有する単環式で総炭素原子数11の飽和モノカルボン酸のコバルト塩を含むナフテン酸コバルト(極一部分)とで粒子表面が被覆されたC.I.Pigment Yellow 13顔料(顔料組成物1)を得た。この顔料組成物1中の誘導結合プラズマ発光分析法によるコバルト濃度は161p.p.m.であった。尚、遊離とはカルボキシル基が中和されていない形で存在することを意味する(以下同様。)。
実施例1において、DICNATE(登録商標)3111の2部を6部とすること以外は、実施例1と同様にして、遊離のアビエチン酸不均化物を含む不均化ロジン(大部分)とナフテン酸コバルト(極一部分)とで粒子表面が被覆されたC.I.Pigment Yellow 13顔料(顔料組成物2)を得た。この顔料組成物2中の誘導結合プラズマ発光分析法によるコバルト濃度は485p.p.m.であった。
100部の3,3’−ジクロロベンジジンに相当する3,3’−ジクロロベンジジン塩酸塩、123.6部の35%塩酸、142.6部の40%亜硝酸ナトリウムを使用して常法によりテトラゾ化し、5℃で2600部のテトラゾニウム水溶液を調製した。このテトラゾニウム水溶液の中に、1部の硫酸コバルト水溶液を添加した。尚、この硫酸コバルト水溶液は、コバルトを7.37%含有するものである。
一方、178.2部のアセト酢酸−m−キシリダイドを198.2部の25%水酸化ナトリウムが含まれた水溶液に溶解し、20℃で1500部のカップラー水溶液を調製した。
また、攪拌機を有する反応容器に5.33部の90%酢酸、水4000部からなる15℃の酸性水溶液を調製した。この酸性水溶液に前記カップラー水溶液の一部を添加してpH5に調整し、緩衝溶液を調製した。
一方、178.2部のアセト酢酸−m−キシリダイドを198.2部の25%水酸化ナトリウムが含まれた水溶液に溶解し、20℃で1500部のカップラー水溶液を調製した。
また、攪拌機を有する反応容器に5.33部の90%酢酸、水4000部からなる15℃の酸性水溶液を調製した。この酸性水溶液に前記カップラー水溶液の一部を添加してpH5に調整し、緩衝溶液を調製した。
緩衝溶液が調製された攪拌機を有する反応装置内に、テトラゾニウム水溶液を3時間かけて定量供給した。この間、反応容器内のpHが4.8〜5.2となるようにカップラー水溶液を供給した。なお、カップラー水溶液をすべて供給し終えた後は、希釈した前記水酸化ナトリウム水溶液を供給した。
すべてのテトラゾニウム水溶液を添加した後、水酸化ナトリウムを加えてpH11に調整した。この中に、360部の前記不均化ロジンのナトリウム水溶液を添加した後、90℃まで加熱した。
90℃で2時間熟成を行った後、希釈酢酸を添加してpHを5.2に調整した。30分撹拌後、濾過、水洗した。
すべてのテトラゾニウム水溶液を添加した後、水酸化ナトリウムを加えてpH11に調整した。この中に、360部の前記不均化ロジンのナトリウム水溶液を添加した後、90℃まで加熱した。
90℃で2時間熟成を行った後、希釈酢酸を添加してpHを5.2に調整した。30分撹拌後、濾過、水洗した。
得られた、顔料水ペーストを60℃で乾燥した後、粉砕して、遊離のアビエチン酸不均化物を含む不均化ロジン(大部分)と前記アビエチン酸不均化物のコバルト塩を含む不均化ロジンコバルト塩(極一部分)とで粒子表面が被覆されたC.I.Pigment Yellow 13顔料(顔料組成物3)を得た。この顔料組成物3中の誘導結合プラズマ発光分析法によるコバルト濃度は200p.p.m.であった。
実施例3において、テトラゾニウム水溶液の中に、硫酸コバルト水溶液1部に代わりに、塩化マンガン水溶液4部を添加すること以外は、実施例3と同様にして、遊離のアビエチン酸不均化物を含む不均化ロジン(大部分)と前記アビエチン酸不均化物のマンガン塩を含む不均化ロジンマンガン(極一部分)とで粒子表面が被覆されたC.I.Pigment Yellow 13顔料(顔料組成物4)を得た。ここで用いた塩化マンガン水溶液は、マンガンを8.2%含有するものである。この顔料組成物4中の誘導結合プラズマ発光分析法によるマンガン濃度は879p.p.m.であった。
比較例1
実施例1において、DICNATE 3111(登録商標)を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして、遊離のアビエチン酸不均化物を含む不均化ロジンのみで粒子表面が被覆されたC.I.Pigment Yellow 13顔料(顔料組成物5)を得た。この顔料組成物5中の誘導結合プラズマ発光分析法によるコバルト濃度は5p.p.m.以下、マンガン濃度は5p.p.m.以下であった。
実施例1において、DICNATE 3111(登録商標)を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして、遊離のアビエチン酸不均化物を含む不均化ロジンのみで粒子表面が被覆されたC.I.Pigment Yellow 13顔料(顔料組成物5)を得た。この顔料組成物5中の誘導結合プラズマ発光分析法によるコバルト濃度は5p.p.m.以下、マンガン濃度は5p.p.m.以下であった。
比較例2
実施例1において、DICNATE 3111(登録商標)の2部を60部とする以外は実施例1と同様にして、遊離のアビエチン酸不均化物を含む不均化ロジン(大部分)とナフテン酸コバルト(極一部分)とで粒子表面が被覆されたC.I.Pigment Yellow 13顔料(顔料組成物6)を得た。この顔料組成物6中の誘導結合プラズマ発光分析法によるコバルト濃度は4685p.p.m.であった。
実施例1において、DICNATE 3111(登録商標)の2部を60部とする以外は実施例1と同様にして、遊離のアビエチン酸不均化物を含む不均化ロジン(大部分)とナフテン酸コバルト(極一部分)とで粒子表面が被覆されたC.I.Pigment Yellow 13顔料(顔料組成物6)を得た。この顔料組成物6中の誘導結合プラズマ発光分析法によるコバルト濃度は4685p.p.m.であった。
比較例3
実施例3において、テトラゾニウム水溶液の中に、硫酸コバルト水溶液1部の代わりに、塩化カルシウム水溶液1部を添加すること以外は、実施例3と同様にして、遊離のアビエチン酸不均化物を含む不均化ロジン(大部分)と前記アビエチン酸不均化物のカルシウム塩を含む不均化ロジンカルシウム(極一部分)とで粒子表面が被覆されたC.I.Pigment Yellow 13顔料(顔料組成物7)を得た。ここで用いた塩化カルシウム水溶液は、カルシウムを10.0%含有するものである。この顔料組成物7中の誘導結合プラズマ発光分析法によるコバルト濃度は5p.p.m.以下、マンガン濃度は5p.p.m.以下であった。
実施例3において、テトラゾニウム水溶液の中に、硫酸コバルト水溶液1部の代わりに、塩化カルシウム水溶液1部を添加すること以外は、実施例3と同様にして、遊離のアビエチン酸不均化物を含む不均化ロジン(大部分)と前記アビエチン酸不均化物のカルシウム塩を含む不均化ロジンカルシウム(極一部分)とで粒子表面が被覆されたC.I.Pigment Yellow 13顔料(顔料組成物7)を得た。ここで用いた塩化カルシウム水溶液は、カルシウムを10.0%含有するものである。この顔料組成物7中の誘導結合プラズマ発光分析法によるコバルト濃度は5p.p.m.以下、マンガン濃度は5p.p.m.以下であった。
また、前記の誘導結合プラズマ発光分析法において、コバルト及びマンガンの分析波長に代えて、カルシウムの分析波長393.366(nm)で検量線を作製し、その他は同様の操作によりこの顔料組成物7のカルシウム濃度を測定した結果、カルシウム濃度は250p.p.m.であった。
比較例4
実施例3において、テトラゾニウム水溶液の中に、硫酸コバルト水溶液1部の代わりに、塩化カルシウム水溶液60部を添加すること以外は、実施例3と同様にして、遊離のアビエチン酸不均化物を含む不均化ロジン(大部分)と前記アビエチン酸不均化物のカルシウム塩を含む不均化ロジンカルシウム(極一部分)とで粒子表面が被覆されたC.I.Pigment Yellow 13顔料(顔料組成物8)を得た。この顔料組成物8中の誘導結合プラズマ発光分析法によるコバルト濃度は5p.p.m.以下、マンガン濃度は5p.p.m.以下であった。また、同様の分析法によるカルシウム濃度は>3000p.p.m.であった。
実施例3において、テトラゾニウム水溶液の中に、硫酸コバルト水溶液1部の代わりに、塩化カルシウム水溶液60部を添加すること以外は、実施例3と同様にして、遊離のアビエチン酸不均化物を含む不均化ロジン(大部分)と前記アビエチン酸不均化物のカルシウム塩を含む不均化ロジンカルシウム(極一部分)とで粒子表面が被覆されたC.I.Pigment Yellow 13顔料(顔料組成物8)を得た。この顔料組成物8中の誘導結合プラズマ発光分析法によるコバルト濃度は5p.p.m.以下、マンガン濃度は5p.p.m.以下であった。また、同様の分析法によるカルシウム濃度は>3000p.p.m.であった。
以下の方法により、実施例1、2、3及び4により得られた各顔料組成物1、2、3及び4と、比較例1、2、3及び4により得られた各顔料組成物5、6、7及び8とを、それぞれインキ化した。
ステンレス製容器に、ビヒクルとして、50℃に加熱した平版印刷インキ用ワニス(大日本インキ化学工業株式会社製のロジン変性フェノール樹脂を含有するワニス)87部と、13部の顔料組成物1を仕込み、ラボミキサーを使用して混合してミルベースを作製した。ミルベースを3本ロールを使用して練肉して、ベースインキを作製した。3本ロール上でベースインキに10部のAFソルベント7号(日本石油株式会社製)を徐々に加え、試験インキ1を作製した。
顔料組成物1に代えて同量の顔料組成物2を用いる以外は実施例5と同様にして試験インキ2を作製した。
顔料組成物1に代えて同量の顔料組成物3を用いる以外は実施例5と同様にして試験インキ3を作製した。
顔料組成物1に代えて同量の顔料組成物4を用いる以外は実施例5と同様にして試験インキ4を作製した。
比較例5
顔料組成物1に代えて同量の顔料組成物5を用いる以外は実施例5と同様にして試験インキ5を作製した。
顔料組成物1に代えて同量の顔料組成物5を用いる以外は実施例5と同様にして試験インキ5を作製した。
比較例6
顔料組成物1に代えて同量の顔料組成物6を用いる以外は実施例5と同様にして試験インキ6を作製した。
顔料組成物1に代えて同量の顔料組成物6を用いる以外は実施例5と同様にして試験インキ6を作製した。
比較例7
顔料組成物1に代えて同量の顔料組成物7を用いる以外は実施例5と同様にして試験インキ7を作製した。
顔料組成物1に代えて同量の顔料組成物7を用いる以外は実施例5と同様にして試験インキ7を作製した。
比較例8
顔料組成物1に代えて同量の顔料組成物8を用いる以外は実施例5と同様にして試験インキ8を作製した。
顔料組成物1に代えて同量の顔料組成物8を用いる以外は実施例5と同様にして試験インキ8を作製した。
比較例9
ステンレス製容器に、50℃に加熱した前記と同様の平版印刷インキ用ワニス87部と、比較例1により得られた顔料組成物(顔料組成物5)13部、0.041部のCo−NAPHTHENATE5%を仕込み、ラボミキサーを使用して混合してミルベースを作製した。ミルベースを3本ロールを使用して練肉して、ベースインキを作製した。3本ロール上でベースインキに10部のAFソルベント7号を徐々に加え、試験インキ9を作製した。なお、この試験インキ9は、試験例1において、実施例1により得られた顔料組成物(顔料組成物1)を用いて作成したインキと同量のコバルトを含有している。
尚、Co−NAPHTHENATE5%とは、大日本インキ化学工業株式会社製の、ナフテン酸コバルトを約42%含んでいるミネラルスピリット希釈溶液であり、コバルトを5.25%含有する。
ステンレス製容器に、50℃に加熱した前記と同様の平版印刷インキ用ワニス87部と、比較例1により得られた顔料組成物(顔料組成物5)13部、0.041部のCo−NAPHTHENATE5%を仕込み、ラボミキサーを使用して混合してミルベースを作製した。ミルベースを3本ロールを使用して練肉して、ベースインキを作製した。3本ロール上でベースインキに10部のAFソルベント7号を徐々に加え、試験インキ9を作製した。なお、この試験インキ9は、試験例1において、実施例1により得られた顔料組成物(顔料組成物1)を用いて作成したインキと同量のコバルトを含有している。
尚、Co−NAPHTHENATE5%とは、大日本インキ化学工業株式会社製の、ナフテン酸コバルトを約42%含んでいるミネラルスピリット希釈溶液であり、コバルトを5.25%含有する。
前記方法により作製した各試験インキを室温で3日間保存した後、下記方法により流動性を測定し、その結果を表1にまとめて示した。
<流動性の測定:ガラス板流動性の評価方法>
試験インキ1gを1分間、へらを用いて軽く混ぜ、傾斜角度70°のガラス板上部に、その試験インキをのせ、ガラス板の上で流動させる。この操作により、試験インキはその自重により、ガラス板上を落下する。そのまま1時間放置し、インキをのせたところからインキの流動部の先端までの距離を測定し、ガラス板流動性とする。尚、測定時の室温は25℃に設定した。ガラス板流動性の測定値が大きいものを流動性が高いと判断する。
試験インキ1gを1分間、へらを用いて軽く混ぜ、傾斜角度70°のガラス板上部に、その試験インキをのせ、ガラス板の上で流動させる。この操作により、試験インキはその自重により、ガラス板上を落下する。そのまま1時間放置し、インキをのせたところからインキの流動部の先端までの距離を測定し、ガラス板流動性とする。尚、測定時の室温は25℃に設定した。ガラス板流動性の測定値が大きいものを流動性が高いと判断する。
<透明性の評価方法>
黒インキを用いて黒帯を印刷した白い展色紙に、試験インキを展色し、黒帯の上の試験インキの展色状態を目視で観察する。黒帯の上に試験インキが展色されることにより黒帯が白く見えるものを不透明と判断し、目視判定1とする。黒帯上に試験インキが展色されているが展色されていないように見えるものを透明と判断し、目視判定5とする。不透明の1から透明の5の間を2,3,4と区分して、目視の結果に応じて、1〜5の数字をもって5段階評価する。
黒インキを用いて黒帯を印刷した白い展色紙に、試験インキを展色し、黒帯の上の試験インキの展色状態を目視で観察する。黒帯の上に試験インキが展色されることにより黒帯が白く見えるものを不透明と判断し、目視判定1とする。黒帯上に試験インキが展色されているが展色されていないように見えるものを透明と判断し、目視判定5とする。不透明の1から透明の5の間を2,3,4と区分して、目視の結果に応じて、1〜5の数字をもって5段階評価する。
表1
表1から、特定モノカルボン酸とアゾ顔料とからなる従来の顔料組成物から調製されたインキ(比較例5)や、特定モノカルボン酸とモノカルボン酸コバルトとアゾ顔料とからなる顔料組成物であってモノカルボン酸コバルトを本発明で規定する範囲を超えて多量に含む従来の顔料組成物から調製されたインキ(比較例6)は、流動性が劣るのに対して、特定モノカルボン酸と本発明で規定する範囲にあるモノカルボン酸コバルトとを含む本発明の顔料組成物を用いたインキ(実施例5)は、優れた流動性を示していることが明らかである。
印刷インキの流動性に与える顔料組成物中のモノカルボン酸金属塩の金属原子の種類間の対比では、コバルトはマンガンより格段に優れていることが、実施例7と実施例8の結果から明らかである。
特定モノカルボン酸とモノカルボン酸カルシウムを含み、モノカルボン酸カルシウムが本発明で規定する範囲にある顔料組成物から調製されたインキ(比較例7)及び特定モノカルボン酸とモノカルボン酸カルシウムを含み、モノカルボン酸カルシウムが本発明で規定する範囲を超えて多量に含む従来の顔料組成物から調製されたインキ(比較例8)は、顔料組成物中に含まれる金属の濃度の高低にかかわらず流動性が劣るのに対して、特定モノカルボン酸と本発明で規定する範囲の量のモノカルボン酸コバルトとを含む顔料組成物から調製されたインキ(実施例7)は、優れた流動性を示していることが明らかである。本発明の顔料組成物から調製されるインキの流動性の挙動は、極めて特異的である。
異なる金属でのほぼ同一濃度の対比において、特定モノカルボン酸とモノカルボン酸コバルトとを含む本発明の顔料組成物から調製されたインキ(実施例7)は、特定モノカルボン酸とモノカルボン酸カルシウムとを含む従来の顔料組成物から調製されたインキ(比較例7)に比べて、優れた流動性を示していることは明らかである。尚、この特定モノカルボン酸とモノカルボン酸カルシウムとを含む従来の顔料組成物から調製されたインキ(比較例7)は、特定モノカルボン酸とアゾ顔料とからなる従来の顔料組成物から調製されたインキ(比較例5)よりも更に流動性に劣っている。
また同一金属かつ同一好適濃度対比において、顔料として、特定モノカルボン酸とモノカルボン酸コバルトとを含む顔料組成物から調製されたインキ(実施例5)は、顔料として特定モノカルボン酸のみを含む顔料組成物を用いかつインキ調製時にモノカルボン酸コバルトを添加して得たインキ(比較例9)に比べて、格段に優れた流動性を示していることが明らかである。
さらに、本発明の顔料組成物から調製された印刷インキは、従来の評価方法に基づく着色塗膜の透明性評価の結果、従来と同等又はそれ以上の透明性を有していることがわかる。
本発明の顔料組成物は、アセト酢酸アリリド系不溶性アゾ顔料と、特定モノカルボン酸を含み、かつ金属原子として特定金属種を特定範囲の含有量で含むので、樹脂等へ分散した際の被着色物の流動性に優れることから、この特徴を活かして、流動性に優れた印刷インキや塗料の調製に使用可能である。
Claims (8)
- 総炭素原子数6〜30のモノカルボン酸と、アセト酢酸アリリド系不溶性アゾ顔料とを含有する顔料組成物において、誘導結合プラズマ発光分析法による前記組成物中に含まれるコバルトとマンガンとの合計濃度が、30〜3000p.p.m.であることを特徴とする顔料組成物。
- 総炭素原子数6〜30のモノカルボン酸が、環状構造を有する総炭素原子数6〜30のモノカルボン酸である請求項1記載の顔料組成物。
- 環状構造を有する総炭素原子数6〜30のモノカルボン酸が、分子内にアルキル化ヒドロフェナントレンの環状構造をもつ三環式のモノカルボン酸である請求項2記載の顔料組成物。
- 誘導結合プラズマ発光分析法による前記組成物中に含まれるコバルトとマンガンが、単環式〜三環式の環状構造を有するモノカルボン酸コバルト及び/又は単環式〜三環式の環状構造を有するモノカルボン酸マンガンである請求項1、2または3のいずれか記載の顔料組成物。
- 質量換算にて、総炭素原子数6〜30のモノカルボン酸と、アセト酢酸アリリド系不溶性アゾ顔料との合計を100%とした際、前記モノカルボン酸が3〜40%である請求項1、2、3または4のいずれか記載の顔料組成物。
- アセト酢酸アリリド系不溶性アゾ顔料が、アセト酢酸アリリド系不溶性ジスアゾ顔料である請求項1、2、3、4または5のいずれか記載の顔料組成物。
- アセト酢酸アリリド系不溶性アゾ顔料が、C.I.Pigment Yellow 12、13、14、17、126、136、174、176、188からなる群から選ばれる一種のジスアゾ顔料である請求項1、2、3、4または5のいずれか記載の顔料組成物。
- 請求項1、2、3、4、5、6または7のいずれか記載の顔料組成物と印刷インキ用ビヒクルとを含有してなる印刷インキ。
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EP4172273A4 (en) * | 2020-06-28 | 2024-03-20 | Dainippon Ink & Chemicals | DISAZOPIGMENT, PIGMENT COMPOSITION AND PRINTING INK |
EP4172279A4 (en) * | 2020-06-28 | 2024-03-27 | Dainippon Ink & Chemicals | PIGMENT COMPOSITION, PRINTING INK AND METHOD FOR MANUFACTURING PIGMENT COMPOSITION |
-
2003
- 2003-09-09 JP JP2003316749A patent/JP2004143428A/ja active Pending
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EP4172273A4 (en) * | 2020-06-28 | 2024-03-20 | Dainippon Ink & Chemicals | DISAZOPIGMENT, PIGMENT COMPOSITION AND PRINTING INK |
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