JP2004143325A - 導電性インク - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属成分と有機成分とからなる金属コロイド粒子を主成分とする固形分と、溶媒とからなる導電性インクであって、前記溶媒は、水と20℃における蒸気圧が17mmHg以下であるアルコール類化合物からなる導電性インク。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低い加熱温度によっても高い導電性を有する被膜が得られるとともに、描画前の乾燥によっても変質しないという相反する要求を両立する導電性インクに関する。
【0002】
【従来の技術】
導電性被膜の製造方法としては従来から、例えば、金属の真空蒸着、化学蒸着、イオンスパッタリング等が行われていた。しかしながら、これらの方法は真空系又は密閉系での作業を必要とするため、操作が煩雑で、装置が大がかりなためスペースを必要とし、費用がかさむ上、量産性に乏しい等の問題があった。
【0003】
メッキによって導電性被膜を形成する方法もあるが、この場合、多量の廃液を処理する必要があり、材料ロスが大きく余分な費用が掛かる上、環境に対する負荷が大きいという問題があった。
【0004】
導電性被膜で配線のパターンを形成するときには、フォトリソグラフィー法が広く用いられているが、この場合、基材上に形成された導電性被膜の必要部分をマスクする工程が余分に必要である。また、用いられる感光性樹脂や除去された金属被膜、及び、それらを溶解させた廃液が多量に排出されるため、処理費用がかさみ、環境負荷が大きい。
【0005】
これらの方法に対して、導電性被膜を形成する材料をコーティング剤として用い、基材上に描画する方法では、特別な装置を設ける必要もなく簡単な設備で生産できるため、広いスペースを必要とせず、費用も少なくてすむ。また、材料ロスや廃液もほとんど出ないことから、コスト面でも有利であり、環境負荷も小さくできる。
【0006】
上記コーティング剤としては、従来、銀や他の金属粒子を樹脂成分や有機溶媒で練り込んだ金属ペーストや、導電性インクと称されるものが用いられ、これらをディスペンサーやスクリーン印刷で塗布して導電性被膜を形成することが多い。
また、最近では粘度の低いコロイド状の金属分散液を導電性インクとして用いインクジェット方式で描画し、配線パターンを形成する方法も試みられている。
【0007】
導電性インクの溶媒としては、有機溶剤、非有機溶剤のいずれを用いることもできるが、非有機溶剤、特に水を用いることで、人体に対する影響や環境に対する負荷を低減することができる。
【0008】
このような導電性インクを用いて配線パターンを描画する場合は、描画後に導電性インクが速やかに乾燥する必要があると同時に、印刷前の導電性インクが乾燥によって変質してはならないという、相反する特性を満足させる必要がある。
【0009】
特にインクジェット方式の場合、インクが吐出されるノズルは非常に微細な構造をしており、乾燥による固形分の凝集が起こると、ノズル詰まりに直結し描画ができなくなるという問題があった。
また、描画後の配線パターンは、加熱処理することにより金属粒子同士が焼結し、高い導電性を発現するが、この熱処理温度が高いと描画を行う基材が変形や溶融、劣化等の損傷を受けるため、基材の材料選択が制約を受けてしまう。
【0010】
このため、上記導電性インクには、できるだけ低い温度で加熱処理ができる設計が求められる。しかし、このことは同時に、先に述べた乾燥時の変質という面では、金属粒子同士が凝集体を形成しやすいということに繋がり、両立させることが非常に困難であった。
【0011】
特許文献1及び特許文献2には基板上に配線パターンを形成するための銀コロイド液が記載されているが、描画後に速やかに乾燥することと、印刷前の乾燥による変質を防ぐことを両立しうるための溶媒は開示されていない。
【0012】
【特許文献1】
特開2001−35255号公報
【0013】
【特許文献2】
特開2001−35814号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低い加熱温度によっても高い導電性を有する被膜が得られるとともに、描画前の乾燥によっても変質しないという相反する要求を両立する導電性インクを提供することを目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、金属成分と有機成分とからなる金属コロイド粒子を主成分とする固形分と、溶媒とからなる導電性インクであって、上記溶媒は、水と20℃における蒸気圧が17mmHg以下であるアルコール類化合物からなる導電性インクである。ここで、アルコール類化合物とは、分子中に水酸基を1個以上有する炭化水素化合物を意味する。
以下に本発明を詳述する。
【0016】
本発明の導電性インクは、金属成分と有機成分とからなる金属コロイド粒子を主成分とする固形分と、溶媒とからなるものである。
上記金属成分は、イオン化列が水素より貴な金属よりなることが好ましく、このような金属としては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム等を挙げることができる。これらの金属は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記金属のなかでも、銀、銅、白金、パラジウムが好ましい。
【0017】
本発明の導電性インクは、銀とその他の金属との混合コロイド液であることが好ましい。銀を用いることにより、その導電性インクを用いて形成される被膜の導電率が良好となるが、電子材料として銀を用いる場合は、マイグレーションの問題を考慮する必要がある。銀とその他の金属とからなる混合コロイド液を用いることにより、マイグレーションが起こりにくくなる。上記その他の金属とは、上記の金、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウムである。なかでも、銅、白金、パラジウムが好ましい。
【0018】
上記のような混合コロイド液を用いる場合、導電性インク中の銀とその他の金属との比率としては、銀とその他の金属との合計量に対して銀の比率が30〜99重量%であることが好ましい。銀の比率が99重量%を超えると、マイグレーションを解決することが困難となる。銀の比率が30重量%未満であると、得られる導電性インクの導電性が低下することがある。より好ましい下限は40重量%であり、より好ましい上限は95重量%である。更に好ましい下限は60重量%であり、更に好ましい上限は90重量%である。
【0019】
上記有機成分としては、例えば、分散剤や還元剤として用いられる有機物を挙げることができる。上記還元剤としては、適当な溶媒に溶解し、還元作用を示すものであれは特に限定されないが、なかでも、タンニン酸、ヒドロキシ酸が好適に用いられる。タンニン酸や、ヒドロキシ酸は還元剤として機能すると同時に分散剤としての効果を発揮する。これらの分散剤や還元剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0020】
上記タンニン酸を用いると、金属コロイド粒子の分散安定性が向上し、導電性インクを乾燥・加熱処理することにより導電性に優れた被膜を得ることができる。
上記タンニン酸としては、一般にタンニン酸と称されるもの全てを用いることができ、ガロタンニン酸、五倍子タンニン等と表現されるものも含まれる。
【0021】
上記タンニン酸の含有量としては、金属イオン1価/gに対して、0.01〜6gであることが好ましい。これは、例えば、1価の銀イオンの場合は、銀イオン1g当たりのタンニン酸の含有量は0.01〜6gであり、3価の金イオンの場合は、金イオン1g当たりのタンニン酸の含有量は0.03〜18gである。タンニン酸の含有量が少なすぎると還元反応が充分に進まず、多すぎると過剰に吸着して被膜中に残存することがある。より好ましい下限は0.1gであり、より好ましい上限は1.5gである。
【0022】
上記COOH基とOH基とを合わせて3個以上有し、かつ、COOH基の数はOH基の数以上であるヒドロキシ酸又はその塩を用いると、金属コロイド粒子の分散安定性が向上し、導電性インクを乾燥・加熱処理することにより導電性に優れた被膜を得ることができる。上記ヒドロキシ酸としては、例えば、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三リチウム、りんご酸二ナトリウム、酒石酸二ナトリウム等を挙げることができる。
上記ヒドロキシ酸の含有量は少なすぎると効果が現れず、多すぎると不純物となり、被膜の導電性を阻害するので、金属イオン1価/gに対して、0.1〜15gであることが好ましい。
【0023】
本発明の導電性インクにおいて、上記金属成分と有機成分とからなる金属コロイド粒子の形態としては特に限定されず、例えば、上記金属成分からなる粒子の表面に有機成分が付着しているもの、上記金属成分からなる粒子をコアとして、その表面が有機成分で被覆されているもの、金属成分と有機成分とが均一に混合されてなる粒子等を挙げることができる。なかでも、上記金属成分からなる粒子をコアとして、その表面が有機成分で被覆されているもの、金属成分と有機成分とが均一に混合されてなる粒子が好ましい。
【0024】
上記金属コロイド粒子中の有機成分量としては、0.5〜30重量%が好ましい。0.5重量%未満であると、得られる導電性インクの貯蔵安定性が悪くなる傾向があり、30重量%を超えると、得られる導電性インクを用いてなる導電性被膜の導電率が悪くなる傾向がある。より好ましい下限は1重量%であり、より好ましい上限は20重量%である。なお、本発明の導電性インクにおいて、上記金属コロイド粒子の「有機成分」とは、金属成分とともに実質的に粒子を構成する有機物のことであり、金属中に最初から不純物として含まれる微量有機物、後述する製造過程で混入した微量の有機物が金属成分に付着したもの、洗浄過程で除去しきれなかった残留還元剤、残留分散剤等の有機物が微量、金属成分に付着したもの等は含まれない。また、本発明の導電性インクにおいて、上記「微量」とは、具体的には、金属コロイド粒子中1重量%未満をいう。
本発明の導電性インクにおいて、上記金属コロイド粒子は有機成分を含むものであるので、溶液中での粒子の分散安定性が高い。そのため、導電性インクの金属含量を上げても金属コロイド粒子が凝集しにくく、良好な分散性が保たれる。
【0025】
上記金属コロイド粒子の平均粒径は、1〜400nmであることが好ましい。上記金属コロイド粒子の平均粒径が1nm未満であっても、良好な導電性を有する被膜は得られるが、一般的にそのような微金属コロイド粒子の製造はコスト高で実用的でない。400nmを超えると、金属コロイド粒子の分散安定性が経時的に変化しやすい。より好ましい上限は70nmである。
【0026】
本発明の導電性インクにおいて、上記固形分の濃度は1〜70重量%であることが好ましい。ここで、固形分とは、導電性インクから大部分の溶媒をシリカゲル等により取り除いた後、70℃以下の温度で乾燥させたときに残存する固形分をいい、通常、この固形分は、金属コロイド粒子、残留分散剤及び残留還元剤等からなる。
【0027】
上記固形分の濃度が1重量%未満であると、得られた導電性インクの金属の含有量が少なすぎるので、導電性被膜を形成する際、必要な厚みを出すために何度も重ね塗る必要が生じ工業的に不利である。上記固形分の濃度が70重量%を超えると、粘性が上昇し取扱にくくなるので、これも工業的に不利である。より好ましい下限は3重量%であり、より好ましい上限は50重量%である。
【0028】
本発明の導電性インクは、固形分に対して10℃/分の昇温速度で熱重量分析を行ったときの100〜500℃の重量減少が7重量%以下であることが好ましい。
上記固形物を500℃まで加熱すると、有機物等が酸化分解され、大部分のものはガス化されて消失する。このため、500℃までの加熱による減量は、ほぼ固形分中の有機物の量に相当すると考えてよい。
【0029】
上記重量損失が多ければ金属コロイド液の分散安定性は優れるが、多すぎると不純物として金属被膜中に残留する有機物が、被膜の導電性を阻害する。特に100℃程度の低温での加熱で高い導電性を得るためには上記重量損失が7重量%以下であることが好ましい。一方、上記重量損失が少なすぎるとコロイド状態での分散安定性が損なわれるため、0.01重量%以上であることが好ましい。より好ましい下限は0.05重量%であり、より好ましい上限は4.5重量%である。
【0030】
上記溶媒は、水と20℃における蒸気圧が17mmHg以下であるアルコール類化合物からなるものである。上記20℃における蒸気圧が17mmHg以下であるアルコール類化合物を溶媒に用いることにより、描画後は溶媒が速やかに蒸発して被膜が乾燥するが、印刷前には溶媒は蒸発せず乾燥によるインクの変質が生じない。好ましい下限は0.001mmHgであり、好ましい上限は8.5mmHgである。
【0031】
上記アルコール類化合物としては、例えば、ブタノール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、エチレングリコール、グリセリン等を挙げることができる。なかでも、分子中に水酸基を2個以上有する多価アルコールが好ましく、例えば、1,3−プロパンジオールが常温での揮発抑制と加熱処理時の揮発の面で好適に用いられる。
【0032】
上記アルコール類化合物の含有量は、描画に用いる機械の特性や描画後の乾燥速度に対する要求に合わせて任意に選択できるが、少なすぎると効果が現れず、多すぎると金属コロイド粒子の分散安定性を低下させる可能性があるだけでなく、水を主溶媒として人体への影響や環境負荷を低減させる目的に反する。このため、固形分が多い場合には固形分100重量部に対して1.0〜30.0重量部であることが好ましく、固形分が少ない場合には水100重量部に対して1.0〜30.0重量部であることが好ましい。
【0033】
本発明の導電性インクは界面活性剤を含有していてもよい。上記界面活性剤を含有することにより、多成分溶媒系のインクに起こりがちな、乾燥時の揮発速度の違いによる被膜表面の荒れや固形分の偏りを抑え、均質な被膜を形成することが可能となる。上記界面活性剤としては特に限定されず、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤の何れを用いることもでき、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、4級アンモニウム塩等を挙げることができるが、フッ素系界面活性剤が少量の添加で効果が得られるので、好ましい。
【0034】
上記界面活性剤の含有量は少なすぎると効果が得られず、多すぎると被膜中で残量不純物となって導電性を阻害するので、溶媒100重量部に対して0.01〜0.5重量部であるのが好ましい。
【0035】
本発明の導電性インクは、更に液の特性を改質するための他の添加剤を含有していてもよい。
上記他の添加剤としては特に限定されず、例えば、消泡剤、レベリング剤、増粘剤等を挙げることができる。
【0036】
本発明の導電性インクは、金属コロイド粒子を主成分とする固形分と、溶媒とからなるので、電導度を10mS/cm以下とすることができる。従来の導電性インクは、存在する電解質成分の濃度に敏感に反応して凝集沈降し、貯蔵安定性が損なわれることがあったが、電導度が10mS/cm以下であると、この影響を充分に排除することができ、ガラス容器中での保管によるアルカリ分の流出や、空気中の炭酸ガスの溶解による経時的な電解質濃度の上昇による貯蔵安定性の悪化を防止することができる。更に、導電性インクの電導度が10mS/cm以下であると、導電性インクの分散安定性が高いので、固形分濃度が高い導電性インクの製作が容易となり、容積を減ずることができ、流通や運搬時の取り扱いが容易となる。高濃度の導電性インクは、後で適当な溶媒を用いて、使用に最適な濃度に調整してもよい。
【0037】
本発明の導電性インクを製造する方法としては特に限定されないが、例えば、まず金属コロイド粒子を含む溶液を製造し、ついで、その溶液の洗浄を行う方法等を挙げることができる。
上記金属コロイド粒子を含む溶液を製造する方法としては化学還元法による方法であれば特に限定されず、例えば、分散剤を用いて溶液中に分散させた金属塩又は金属イオンを、何らかの方法により還元させればよい。
【0038】
上記金属塩としては、分散媒中に溶解でき、何らかの手段で還元できるものであれば特に限定されず、例えば、硝酸銀、硫酸銀、塩化銀、酸化銀、酢酸銀、亜硝酸銀、塩素酸銀、硫化銀等の銀塩;塩化金酸、塩化金力リウム、塩化金ナトリウム等の金塩;塩化白金酸、塩化白金、酸化白金、塩化白金酸カリウム等の白金塩;硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、酸化パラジウム、硫酸パラジウム等のパラジウム塩等を挙げることができる。これらの金属塩は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0039】
上記金属塩を還元させる方法としては特に限定されず、還元剤を用いて還元させてもよく、紫外線等の光、電子線、熱エネルギー等を用いて還元させてもよい。
上記還元剤としては、分散媒に溶解し上記金属塩を還元させることができるものであれば特に限定されず、例えば、ジメチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、フェニドン、ヒドラジン等のアミン化合物;水素化ホウ素ナトリウム、ヨウ化水素、水素ガス等の水素化合物;一酸化炭素、亜硫酸等の酸化物;クエン酸三ナトリウム、グリコール酸ナトリウム等のヒドロキシ酸塩;硫酸第一鉄、酸化鉄、フマル酸鉄、乳酸鉄、シュウ酸鉄、硫化鉄、酢酸鉄、塩化錫、二リン酸錫、シュウ酸錫、酸化錫、硫酸錫等の低原子価金属塩;ホルムアルデヒド、ハイドロキノン、ピロガロール、タンニン、タンニン酸、サリチル酸、D−グルコース等の糖等の有機化合物を挙げることができる。これらの還元剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記の還元剤を使用する際には、更に、光や熱を加えて還元反応を促進させてもよい。
【0040】
上記金属塩、分散剤及び還元剤を用いて金属コロイド粒子を含む溶液を製造する方法としては、例えば、上記金属塩を純水等に溶かして金属塩溶液を調製し、その金属塩溶液を徐々に分散剤と還元剤とが溶解した水溶液中に滴下する方法等を挙げることができる。
【0041】
上記のようにして得られた金属コロイド粒子を含む溶液中には、金属コロイド粒子の他に、還元剤の残留物や分散剤が存在しており、液全体の電解質濃度が高くなっている。このような状態の液は、電導度が高いので、金属コロイド粒子の凝析が起こり、沈殿しやすい。上記金属コロイド粒子を含む溶液を洗浄して余分な電解質を取り除くことにより、電導度が10mS/cm以下の金属コロイド液を得ることができる。
【0042】
上記洗浄方法としては、例えば、得られた金属コロイド粒子を含む溶液を一定時間静置し、生じた上澄み液を取り除いた上で、純水を加えて再度攪拌し、更に一定期間静置して生じた上澄み液を取り除く工程を幾度か繰り返す方法、上記の静置の代わりに遠心分離を行う方法、限外濾過装置やイオン交換装置等により脱塩する方法等を挙げることができる。なかでも、脱塩する方法が好ましい。また、脱塩等した液は、適宜濃縮してもよい。
【0043】
複数の金属からなる導電性インクを製造する方法としては特に限定されず、例えば、銀とその他の金属とからなる導電性インクを製造する場合には、上記の方法にて、銀コロイド液とその他の金属のコロイド液とを別々に製造し、その後混合してもよく、銀イオン溶液とその他の金属イオン溶液とを混合し、その後に還元してもよい。
【0044】
本発明の導電性インクを基材上に塗布し、乾燥することにより導電性被膜を形成することができる。
上記基材としては特に限定されず、例えば、熱に強い金属、ガラス、セラミック等からなる比較的熱に強い基材;ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ビニル樹脂等の高温をかけると変形や分解のおそれがある高分子系の基材等を挙げることができる。
本発明の導電性インクによれば、100℃程度の低温加熱処理でも高い導電性を発現する被膜を形成することができるので、比較的熱に弱い基材上にも導電性被膜を形成することができる。
上記基材の形状としては、例えば、板状、フィルム状等を挙げることができる。
【0045】
上記基材と導電性被膜との密着性を上げるため、上記基材の表面処理を行ってもよい。
上記表面処理方法としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、UV処理、電子線処理等のドライ処理;基材上にあらかじめプライマー層や導電性インク受容層を設ける方法等を挙げることができる。
【0046】
上記基材上に本発明の導電性インクを塗布する方法としては特に限定されず、例えば、ディッピング、スクリーン印刷、スプレー方式、バーコート法、スピンコート法、インクジェット法、ディスペンサー法、刷毛による塗布等を挙げることができる。
【0047】
本発明の導電性インクより形成される導電性被膜は、ブラウン管の電磁波遮蔽、建材又は自動車の赤外線遮蔽、電子機器や携帯電話の静電気帯電防止材、曇ガラスの熱線、回路基材やICカードの配線、フラットパネルディスプレイの電極、樹脂に導電性を付与するためのコーティング、スルーホール又は回路自体等に好適に用いられる。
【0048】
本発明の導電性インクにより、100℃程度の低温加熱処理でも高い導電性を発現する被膜を形成することができると同時に、描画前の乾燥による導電性インクの変質の防止という相反する要求を両立することが可能となる。
このため、本発明によれば、基材の種類に制約を受けることなく導電性に優れた導電パターンを形成することができることに加えて、乾燥によるインクの変質が起こりにくいので、幅広い描画装置、印刷機械等に用いることができる。
【0049】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0050】
実施例1〜4及び比較例1〜5
各実施例及び比較例における導電性インクは、以下のようにして製造した。
10N−NaOH水溶液を3mL添加してアルカリ性にした水50mLに、クエン酸3ナトリウム2水和物17g、タンニン酸0.36gを溶解した。得られた溶液に対して3.87mol/L硝酸銀水溶液3mLを添加し、2時間攪拌を行い銀コロイド水溶液を得た。得られた銀コロイド水溶液に対し、導電率が30μS/cm以下になるまで透析することで脱塩を行った。透析後、3000rpm、10分の条件で遠心分離を行うことで、粗大金属コロイド粒子を除去した。この銀コロイド水溶液中の固形分を、乾燥重量法によって求め、得られた固形分について、セイコー電子工業社製TG/DTA300を用いて昇温速度10℃/分で室温から500℃までの大気中における熱重量変化を求め、100℃から500℃までの重量減少を計算した。銀コロイド水溶液中の固形分及び熱重量分析による重量減少を表1に示した。
【0051】
【表1】
【0052】
この銀コロイド水溶液に、表2に示した各種アルコール類化合物を添加した後、更にイオン交換水を添加して、最終固形分が15重量%になるように調整し導電性インクとした。得られた導電性インクをスライドガラス上に刷毛塗りし自然乾燥した後、ギヤオーブン中で120℃×1時間の条件で加熱処理し被膜を形成した。
【0053】
【表2】
【0054】
(評価)
(1)乾燥による導電性インクの変質
各実施例及び比較例において得られた導電性インクを自然乾燥し、一旦被膜化したものを再び溶媒に浸漬し、超音波をかけながら1分間放置し、状態変化を観察し再溶解性を評価した。
【0055】
(2)描画テスト
各実施例及び比較例において得られた導電性インクを用いて、市販のインクジェットプリンタによる描画テストを行い、インク充填後、ノズルが詰まって使用不可能になるまでに要する時間を評価した。
【0056】
(3)被膜の導電性
各実施例及び比較例において得られた被膜について、横川電機社製PORTABLE DOUBLE BRIDGE2769を用いてダブルブリッジ法により体積抵抗率を求めた。
評価結果を表3に示した。
【0057】
【表3】
【0058】
【発明の効果】
本発明は、上述の構成よりなるので、低温での加熱処理が可能であることから基材の種類に制約を受けることなく導電性に優れた導電パターンを形成することが可能であることに加えて、乾燥によるインクの変質が起こりにくいためパターニング適性に優れ、幅広い描画装置、印刷機械等に適用可能な導電性インクを提供することができる。特にインクジェット方式、ディスペンサーといった精細な描画を行う装置に広く応用することができる。
Claims (8)
- 金属成分と有機成分とからなる金属コロイド粒子を主成分とする固形分と、溶媒とからなる導電性インクであって、
前記溶媒は、水と20℃における蒸気圧が17mmHg以下であるアルコール類化合物からなる
ことを特徴とする導電性インク。 - アルコール類化合物は、分子中に水酸基を2個以上有する多価アルコールであることを特徴とする請求項1記載の導電性インク。
- 分子中に水酸基を2個以上有する多価アルコールは、1,3−プロパンジオールであることを特徴とする請求項2記載の導電性インク。
- 金属成分は、イオン化列が水素より貴な金属よりなり、タンニン酸を金属イオン1価/gに対して0.01〜6g含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の導電性インク。
- 金属成分は、金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム及びオスミウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属よりなり、導電度が10mS/cm以下であることを特徴とする請求項4記載の導電性インク。
- COOH基とOH基とを合わせて3個以上有し、かつ、COOH基の数がOH基の数以上であるヒドロキシ酸又はその塩を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の導電性インク。
- 固形分に対して10℃/分の昇温速度で熱重量分析を行ったときの100〜500℃の重量減少が7重量%以下であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の導電性インク。
- 界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の導電性インク。
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